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氏 名 河野孝彦

学 位 の 種 類 博士(理学)

報 告 番 号 甲第 562 号 学 位 授 与 年 月 日 2021 年 3 月 31 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号) 第4条第1項該当

学 位 論 文 題 目 On the Multiplicative Relations of Gauss Sums

(ガウス和の乗法的関係式について)

審 査 委 員 (主査) 杉山 健一(立教大学大学院理学研究科教授)

ガイサ、トーマス(立教大学大学院理学研究科教 授)

横山 和弘(立教大学大学院理学研究科教授)

青木 昇(立教大学大学院理学研究科教授)

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Ⅰ.論文の内容の要旨

(1) 論文の構成

本学位論文は、整数論において重要な役割を演じるガウス和についての研究 である。ここでの研究テーマは、いくつかのガウス和の積が1の冪根と整数の 積になる乗法的関係式についてであり、ある特別な無限族について、その正確 な形を決定することを目標としている。

第1章では、準備としてガウス和の乗法的関係式の一般的な枠組みを述べ、

その上で申請者が得た新しい関係式を証明している。続く第2章ではガウス和 の乗法的関係式に対応する代数的ガンマ単項式を考察している。第3章では、

ある虚2次体の環類体を詳細に調べて、第1章で得たガウス和の乗法的関係式 の特別な場合について第2章の結果を用いることにより、ガウス和の乗法的関 係式がある2次形式と深く関連していることを解明している。

(2) 論文の内容要旨

ガウス和は標数pの有限体Fの乗法的指標χと加法的指標ψの積のF上の和と して定義される整数論的な量である。ガウス和は整数論の様々な場面に表れる 興味深い対象であるが、一般にはその値の具体的な表示を得ることは困難であ る。しかし、ガウス和のいくつかの積が簡単な値になる場合がある。特に、そ れが p の冪と 1 の冪根の積となるとき、その関係式はガウス和の乗法的関係 式と呼ばれる。その代表的な例として、ダヴェンポート・ハッセ関係式とノル ム関係式と呼ばれる二つの基本的な関係式がある。ハッセはすべての乗法的関 係式がそれらから得られると予想したが、山本によって、その予想に反例が存 在することが示された。また、山本は、すべての乗法的関係式に対して、その 2乗はダヴェンポート・ハッセ関係式とノルム関係式の組み合わせから得られ ることを示した。しかし、その平方根を取ってガウス和そのものを得る際の符 号決定は一般には難しい問題であることが知られている。1960年代以降、多く の研究者によってガウス和の乗法的関係式の具体的な形の研究が進められてい るが、まだ完全な解決には至っていない。本学位論文において、申請者は指標 χの位数mが4を法として3と合同な素数ℓの4倍である場合に対して、ガウス 和の乗法的関係式についての詳細な研究を行った。

本論文の概要は次の通りである。まず、第 1 章では基礎的な知識と記号を準

備し、ガウス和の乗法的関係式がどのように構成されるかなどを一般的な枠組

みの中で説明している。その過程で、上述のダヴェンポート関係式とノルム関

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係式を復習し、本論文で扱いやすい形に整えてある。その上で、χの位数がm

=4ℓの場合に、ガウス和の乗法的関係式でダヴェンポート関係式とノルム関係 式の組み合わせからは得られないものを一つ具体的に構成している(Theorem 1.2.1)。山本の研究により、m=4ℓの場合には、ダヴェンポート関係式とノ ルム関係式を合わせると、それですべての乗法的関係式が得られることが知ら れている。更に、申請者は位数4のヤコビ和を用いて、対応するガウス和の積 の形を具体的に決定した(Theorem 1.3.9)。この二つの結果についてはマスカ ットによる、m=12 の場合(つまりℓ=3の場合)の先行研究の一般化になってい る。

次に、第2章ではガウス和の乗法的関係式に対応するガンマ単項式を考察し ている。コブリッツとオーガスにより代数的ガンマ単項式と呼ばれるガンマ関 数のいくつかの特殊値の積は代数的数であり、円分体上のあるクンマー拡大を 生成することが証明されている。この結果はガウス和の乗法的関係式のガンマ 関数版の類似になっているとみることができる。更に、ドリーニュはこのクン マー拡大のクンマー指標とガウス和の乗法的関係式に現れる 1 の冪根εが密 接に関係していることを示す明示的な関係式を証明した。申請者は、m=4ℓの場 合に、ガンマ単項式を具体的に計算し、それにドリーニュの定理を適用するこ とにより、εの値をある実2次体の基本単数を用いて表す公式を得ることに成 功した(Theorem 2.0.1)。この関係式は、ガウス和の乗法的関係式が2次体の 整数論と密接に関係していることを示唆している。

第 3 章では、第1章で得られた乗法的関係式のある特別な場合においては、

その符号がある特別な整数係数 2 元 2 次形式による素数 p の表示と関係し ていることを論述している。第1章と第2章では、素数pとしては4ℓを法とし て1と合同な素数を考えていたが、申請者は2次形式との関連を得るためには、

より強くpは8ℓを法として1と合同な素数である必要があるという事実を明 らかにした。そして、その条件下で素数 p の適当な冪乗を主形式と呼ばれる特 別な 2 次形式で表したとき、その整数解の ℓ を法とした合同条件によりガウ ス和の乗法的関係式の符号が完全に決定できることを主張する結果を得ている

(Theorem 3.0.1)。この定理の証明のために、申請者は判別式が -8ℓ の虚2 次体の導手4の環類体について詳細な研究を行い、ドリーニュの定理によって 代数的ガンマ単項式で得られたクンマー拡大の類体論的な性質を明らかにした。

その結果をもとに、更に環類体と2次形式の一般論を用いることによりTheorem

3.0.1を得ている。

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Ⅱ.論文審査の結果の要旨

(1) 論文の特徴

ガウス和の定義に現れる乗法的指標をχとするとき、ガウス和の乗法的関係 式のうちダヴェンポート・ハッセ関係式とノルム関係式の組み合わせから得ら れないものについてのこれまでの研究は、単発的なものを除いては、指標χの 位数mが二つの奇素数の積の場合のみであった。本学位論文での研究は、これ まで考察されて来なかったmが4の倍数である場合を扱っている。この場合に はmが奇数の場合には起こらなかった困難さがある。この困難さの要因の一つ は、ガウス和を定義するときに用いる素イデアルの取り方に依り、ガウス和の 乗法的関係式の形が異なってしまうことにある。申請者はこの困難を克服する ために、プライマリ素元を使うという新しいアイデアにより、素イデアルの取 り方を統制する方法を考案した。更に、ガウス和の乗法的関係式が整数係数2 元2次形式と関連するための条件を明確にし、その条件下での2次形式との関 連を明らかにした。

(2)論文の評価

ガウス和の乗法的関係式の研究において、プライマリ素元を用いるというア イデアはこれまでにない新しいものである。この結果はm=12の場合ですら新 しいものであり、申請者の研究により、より一般的な場合においても極めて重 要な知見が得られたと言うことができる。また、ガウス和の乗法的関係式の問 題と2次形式との関連はこれまでそれほど深く研究されて来なかったが、申請 者の研究はこの方面への新しい道筋を与えるものと期待される。ただし、一般 の場合に2次形式との関連を見出すことは難しく、申請者はまずガウス和を定 義する際の素数pにある合同条件を課している。実はこの条件は便宜上のもの ではなく、本質的に必要な条件であることも申請者は指摘している。この事実 はこれまでほとんど考慮されなかった指摘であり、申請者のこの分野における 理解の深さを表していると思われる。

以上のように、申請者はガウス和の研究において重要な貢献をしている。ま

た、そこでの研究方法は、申請者の代数的整数論の知識の深さ、問題処理能力

の高さ及び優れた分析力と洞察力を意味しているとことから、博士学位論文審

査委員会は、本論文は博士論文の価値があると判断する。

参照

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