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(1) 論文の構成

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 中司 桂輔 学 位 の 種 類 博士(理学)

報 告 番 号 甲第 560 号 学 位 授 与 年 月 日 2021 年 3 月 31 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号) 第4条第1項該当

学 位 論 文 題 目

Circular Orbits of Particles around Compact Objects and Their Observability

(コンパクト天体周辺での粒子の円軌道とその観測可能 性)

審 査 委 員 (主査) 田中 秀和 (立教大学理学研究科教授)

原田 知広 (立教大学理学研究科教授)

山田 真也 (立教大学理学研究科准教授)

(2)

Ⅰ . 論文の内容の要旨

(1) 論文の構成

第1章の序論では、研究テーマの背景と研究に至った動機が示されている。

第2章は本研究の基礎となる事項として、ブラックホール周辺の時空とブラッ クホールを中心とする粒子の円運動について解説されている。特に、静止した ブラックホールと回転するブラックホール周辺の時空におけるテスト粒子の 円運動について具体的に説明されている。第3章においては、2つの静止した ブラックホール周辺における時空構造と、円軌道を描くテスト粒子の運動につ いて解析的・数値的な結果が詳細に示されている。第4章では、回転するブラ ックホールの周辺で円軌道を描く光源から発せられた光について、詳細な解析 が行われている。第5章では、結果のまとめと考察を行っている。

(2) 論文の内容の要旨

ブラックホールは直接観測することは出来ないが、その性質の理解はブラッ クホール周辺の強重力場中で起こる現象を理論的及び観測的に調べることによ り可能となる。近年、強重力場中の現象に関する観測的研究が行われており、

光学や重力波などにより強重力場中で起こる現象について活発に調べられてい る。特に、ブラックホールの影の撮影に成功するなどその進展は著しいものが ある。

本論文では、テスト粒子のブラックホール周辺での円運動に着目し、その軌 道を入念に調べている。円軌道は動径方向の座標にのみ依存し角度依存性が無 いので、軌道を求めるときの基準となるものである。

本研究では、これまで詳しく調べられていなかった2つの場合について研究 を行っている。

第1の場合は、2つのブラックホールが静止している時空でのテスト粒子の

円軌道である。この連星ブラックホール周辺の時空構造は、1つの静止したブ

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ラックホール周辺の時空とは異なった構造をしており、テスト粒子の軌道を調 べることにより、その時空構造の違いを知ることが出来ると期待される。そこ で、始めに2つのブラックホールが同質量の場合のテスト粒子の円軌道を計算 し、その安定軌道と不安定軌道を2つのブラックホール間の距離との関係とし て求めた。特に、2つのブラックホールの距離に依っては、テスト粒子が安定 円軌道をとる領域が2つに分離する現象が起こることを見出した。更に、2つ のブラックホールの質量が異なる場合についても解析し、同質量のブラックホ ールの場合からの変化を論じている。

第2の場合は、高速回転しているブラックホールの周辺で光源が円軌道を描 くときに、光源からの光が無限遠方の観測者に到達する確率を調べた。これ は、ブラックホール周辺の降着円盤などで自然に実現される状態に対応する状 況設定である。特に、光源の軌道半径が事象の地平面の半径に近づく場合の光 の脱出確率を調べ、円運動をする光源から発せられた光は、観測者に対して静 止した光源から発せられた光に比べて、無限遠方の観測者に到達する確率が大 幅に増大するという結果を得た。更に、光源に対して前方に放たれた光は、光 源の固有運動による青方偏移が重力により引き起こされる赤方偏移より大きく なり、遠方の観測者が観測するのに十分なエネルギーを得る可能性を示唆し た。

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Ⅱ . 審査結果の要旨

(1) 論文の特徴

本論文では、ブラックホール周辺でのテスト粒子の円運動に着目し、その軌 道を入念に調べている。その特徴は、これまで詳しく調べられていなかった連 星系を成すブラックホール及び高速回転をしているブラックホールの周辺で円 軌道を描く物体の運動に着目した点である。

(2) 論文の評価

ブラックホールは直接観測することは出来ないが、その性質はブラックホ ール周辺の強重力場中での現象を調べることにより知ることが可能となる。

本研究では、先行研究においては詳しく調べられていなかった、連星系を成 すブラックホール及び高速回転をしているブラックホールの周辺で円軌道を 描く物体の運動に着目し、詳しい解析を行った点は評価に値する。

申請者は、設定した状況におけるブラックホール周辺の時空構造とその時 空内でのテスト粒子の円軌道を一般相対性理論の枠組みで計算した。まず、

連星ブラックホールについては、安定軌道と不安定軌道の生じる領域を入念

に調べて、ブラックホール間の距離や質量比などにより、いくつかのパター

ンが存在することを示した。また、高速回転しているブラックホール周辺の

光源から放出された光の脱出確率と、その光が無限遠方の観測者に到達する

可能性について調べた。この問題は、光源の運動だけでなく光自体の経路も

重力の影響を受けるため複雑な問題となる。申請者は、従来の研究で扱われ

ていた観測者に対して静止している光源から観測者に届く光の確率に比べ

て、ブラックホール周辺で円軌道を描いて運動している光源から発せられた

光が観測者に届く割合及びそのエネルギーが増加することを示した。これら

の成果は、ブラックホール周辺における強重力場中での現象に理論的知見を

与えるのみならず、ブラックホール周辺から得られる情報を用いてブラック

ホールの性質を調べようとする観測にも大いに資するものであり評価できる

点である。このように、本研究は当該分野の発展に大きく寄与するものであ

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る。よって、審査委員会では学位論文として高い評価を与えた。

申請者は研究結果を得るために様々な数学的手法と数値計算の手法を駆使 しており、理論物理学分野における研究能力は卓越したものがある。また、

本研究は一般相対性理論と宇宙物理学に関する深い知識を必要とするもので あり、申請者が博士号の学位に相応しい学問的力量を持つ事を示すものとい える。

上述の研究成果は既に学術雑誌3編に発表されている。

(Phys. Rev. D99, 124033 (2019), Phys.Rev.D100,104006 (2019), Phys. Rev.

D101,044044 (2020)) その内の2編は申請者が筆頭著者の論文である。他の 1編については筆頭著者ではないが、申請者が主体的に研究を押し進めた成果 であることを確認した。

2021 年 1 月 7 日、午後3時30分から本論文に関する公聴会が開かれた。申

請者は論文の内容を明快に説明し、また質問に対する応答も満足すべきもので

あった。

参照

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