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氏 名 唐戸 信嘉
学 位 の 種 類 博士(文学)
報 告 番 号 甲第423号
学 位 授 与 年 月 日 2016年3月31日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)
第4条第1項該当
学 位 論 文 題 目 The Changing Horizons of History: Thomas Hardy and
Victorian Philology, Folklore, and Anthropology
(変遷する歴史の地平:トマス・ハーディとヴィクトリア朝
の文献学、民俗学、人類学)
審 査 委 員 (主査)新妻 昭彦
藤巻 明
丹治 愛(法政大学文学部教授)
Ⅱ.論文審査の結果の要旨
(1)論文の特徴
本論文は Thomas Hardy の歴史認識と、ヴィクトリア朝の文献学、民俗学、
人類学との影響関係をハーディの作品のなかで検証し、ヴィクトリア朝人文科 学がハーディの歴史認識形成にどのように関連したかを明らかにするものであ る。これにより、ハーディ研究のみならず、ひろくヴィクトリア朝文化・文学 における文献学、民俗学、人類学の影響の研究に寄与するものである。
以下、本論文の特徴を論文構成に従って叙述する。
第1章では、これまでドーセットの詩人として扱われるだけであった William
Barnes の文献学者としての業績に着目し、バーンズの影響下で書かれた The
Return of the Native を検討することにより、文献学とハーディの故郷ドーセット
の過去との関わりが論じられている。
第2章では、ハーディの唯一の歴史小説である The Trumpet-Major を取り上げ、
民衆の歴史への関心と方法論から、当時の民俗学との関連が考察される。
第3章においては、
A Laodicean,The Mayor of Casterbridge,The Woodlanders
といった
1880 年代の諸作品をとりあげ、進歩史観や社会進化論と総称される、
19 世紀に隆盛をきわめた歴史モデルとの関連が論じられる。これに伴い、過去 と現在との隔絶と、過去に対する現在の優越の意識が、それまでのハーディの 歴史認識を妨げることが示される。
第4章以降は、代表作である Tess of the D’urbervilles と Jude the Obscure といっ た 1890 年代の作品において、第3章で示された歴史観をハーディがどのように 乗り越えたかに関し、ヴィクトリア朝人文科学との関連から詳論されることに なる。
まず第4章においては、Max Müller や Ernest Renan らの文献学者が明らかに した印欧語族に関する学説とハーディの古代ギリシアの理想化との関連を扱い、
第5章では、人類学における「残存」の概念と、この概念をハーディがどのよ うに小説中で扱い、社会進化論による歴史モデルを覆す手段としたかが論じら れる。第6章では、人類学者 Edward Westermarck が出版した The History of Human
Marriage の婚姻制度に関する研究と、Jude での婚姻制度批判との関連が明らか
にされる。
第7章では、1895 年以降、詩人に転身したハーディが、19 世紀的社会進化論 や進歩史観が解体されていく 20 世紀に、それまで自ら構築した歴史観を Henri
Bergson の時間論によって再確認していくことをハーディの詩作品において検