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猪山勝利*

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(1)

地域学習集団への行政援助に問する研究

猪山勝利*

I.問題の所在

本稿は,地域学習集団に対する行政援助の現代的な基本構造を明らかにすることを目的として いる。

いわゆる社会教育関係団体論ではなく,現代の学習集団を『地域学習集団論』として発展させ ることの問題意識やその現代的意義については,本センターの年報‰4(1990年度)の拙稿「地 域学習集団に関する基礎的研究」において論究した(1)。その論稿で述べたように,従来の学習集 団と行政の関係は,団体の認定と補助金問題を中心とする行政関係論か育成助言論が大半であり,

総合的な行政援助論について研究がなされてこなかったのである。従来の社会教育関係団体の研 究が,団体と行政の行政関係を中心にしてきたのは,日本の近代社会教育行政成立以来,学習集 団を行政統制下の教化団体として位置づけてきたことへの歴史的反省として,第2次大戦後は学 習集団を行政権力から自由な自主的,民主的な団体として位置づける法概念が形成されたからで あった(2)。すなわち,現行社会教育法第12条の「不当な統制的支配」禁止規定,第11条の「求め に応じ」規定などの法概念に示される団体の自主性確保と団体の主体性にもとづく行政援助の視 点,つまり「社会教育の自由」の視点からの行政論が中心になったのである(3)。

筆者も,学習集団の自由を確保する視点から,学習集団に対する行政統制批判についてはその 論点を継承するが,現代的な学習集団への行政関係については新たな視点を設定することが求め

られていると考える。すなわち,学習集団に対する行政関係を「社会教育の保障」の視点から再 構築することである。すでに,社会教育の自由の視点からつねに論争の焦点となってきた「補助 金支出」問題についても,癖たな視点が提起されており(4),生涯学習時代の現代こそ,本格的な

「社会教育の保障」の視点からの学習集団に対する行政援助論が形成されるべきであろう。そう でなければ生涯学習推進政策の行政方針にみられるような「受益者負担論(5)」を強化させること にもなり,学習集団の基盤の弱体さが逆に「社会教育の自由」性をゆるがすことにもなるのであ る。本稿は,現代的な「社会教育の保障」の視点から,これからの学習集団とりわけ地域学習集 団への行政援助の基本構造を明らかにすることを目的としている。

II.社会教育団体援助論

最近,団体指導論を中心に社会教育団体論を展開している坂本登氏の社会教育団体に対する本

*長崎大学教育学部教育学教室教授

(2)

格的な行政援助論が出版された。タイトルも『社会教育の団体と行政j (日常出版, 1988年)で あり,社会教育団体に対する行政援助論としては,その総合性において画期的な労作である。坂 本氏の社会教育団体に対する行政援助の内容は,図 1の通りであり,総合的な行政援助論となっ

ている。

活 動 の 振 興 ・ 促 進

「活動費の援助

「直接的援助一寸一事業の共同企画・実施 物 質 的 援 助 一 寸 」教材・資料等の提供

I 活動の場・施設・設備の提供

」間接的援助一一ト施設等の使用料の減額・免除

」活動情報提供

「組織化の援助 ト指導者の養成 非物質的援助一一ト指導者の派遣・斡旋

ト理念・アイディアの提供・援助

」事業・活動の後援・協賛 図l 団体援助の内容

※坂本登『社会教育の団体と行政』日常出版, 1988年, 68頁より

図 1の「団体援助の内容」構造が示すように,坂本氏の援助論は従来の行政対応論を超えた総 合的なものであり,これからの学習集団への行政援助論としては基本となる論であると言える。

氏は,社会教育団体に対する行政援助の目的を「活動の振興・促進」とし,行政援助を物質的 援助と非物質的援助に大別し,それぞれの個別援助を11領域に類別して構造化している。これら 11領域の援助内容は,すでに現行社会教育行政が展開している援助であり,その意味において現 実的な援助論となっているo

ところで坂本氏の行政援助論が従来の行政関係論を超えた総合的な援助論であることを認めた 上で,氏の援助論に若干の問題点があることを指摘せざるを得ない。

第 1は,援助の対象となる社会教育団体の位置づけをめぐる問題である。氏も従来の団体認定 論をふまえた上で,認定主体,認定基準の検討を行っているが,基本的には昭和46年の社会教育 審議会答申の「社会教育に関する団体」規定を採用している。周知のように,昭和46年答申の社 会教育団体規定については,小川氏も指摘しているように,

r

政策」主体的とらえ方であるとの 批判がなされている(6)。筆者は,その分類基準のあり方については別稿で論じることとして,団 体の主体性に対する位置づけについて言及したい。すなわち,答申の論理を受けて坂本氏も基本 的には,団体を政策対象となる社会教育「指導」団体としている点である。したがって,援助の 対象となる団体は,制度・政策形式主体としての位置づけを与えられず,指導援助を受ける団体,

すなわち行政被指導,被援助団体の位置づけになっているo 筆者は,前稿(1)でも指摘したように,

これからの学習団体は社会協同主体として,

r

現代的公共性

J

(7)を担う主体として学習集団の主 体性を位置づけることが,生涯学習施策の推進にとっても,学習集団の発展にとっても基本とな

‑29一

(3)

ると考える。

第2は,援助内容が「サービス

J

論になっており,主体形成論が欠落していることであるo す なわち,

r

活動の振興・促進」を目的とし,

r

集団J形成そのものへの援助が弱体であることであ る。これについては,非物質的援助の領域で「組織化の援助」などがあげられているが,公共性 形成の共同主体として位置づけ,その基盤整備をする援助や活動「発展」論が弱体であることで

ある。

第3に,学習集団への新たな現代的援助を展開するためには,援助を行う行政自体の現代的あ り方が関われるが,そのことについては,ほとんどといってよいほど触れられていないのであるD

先に指摘したように,学習集団と行政がともに生涯学習・社会教育の現代的公共性を形成する主 体となるには,行政そのもののあり方も問わざるをえないし,行政体の現代的組織性が問題にな

るのである。

第4に,援助内容の「教育主義」の問題である。前稿で記したように門学習集団は学習活動 に終始するわけではなく,学習の発展として「学習発展活動」を展開するのであり,とくに基礎 教育でなく〈創造・発展学習)(9)を展開する学習集団はさまざまな活動を展開するのである。し たがって,学習集団に対する行政援助は,学習発展的視点、をとる必要があるが,氏の視点、はそれ

らの援助性が弱体であると言えよう。

以上のような基本問題性をもっ行政援助論をさらに批判的に発展させる構造論をつぎに提示し,

現代学習集団に対する行政援助論の基礎的提起としたいと考える。

III.地域学習集団への行政援助論

1.行政援助の視点、と構成

地域学習集団への現代的行政援助の内容を示す前に,行政援助の視点と構成について述べてお きたい。

地域学習集団への行政援助の現代的視点は以下の 3点が基本的に設定される必要がある。

第 1に,地域学習集団は行政とは独立した自由な集団であり,

r

社会セクター」における主体 性をもった学習集団として位置づけることである。その主体性は,教育指導上の主体として位置 づけるだけでなく,生涯学習・社会教育体系の主体的な構成体として位置づける必要がある。

2に,地域学習集団に対する援助は,教育指導的サービスに止まらず,学習集団が自主的,

主体的に活動を推進するための基礎的基盤整備の側面を拡充することである。したがって,行政 援助を考察する場合は,行政体そのものの充実・拡充の視点を設定する必要があろうo

第3に,現代の地域学習集団がいわゆる〈基礎教育〉性とともに〈創造・発展〉学習を展開し はじめているので,その援助の質的向上とともに,活動発展性の援助を拡充する必要があり,教 育主義的援助は克服される必要がある。

以上のような基本的視点、を設定した上で,以下では,地域学習集団に対する行政援助の構成に ついて述べていくことにする。

(4)

地域学習集団に対する行政援助は,基礎的整備と組織・活動の振興援助に大別される。従来の 行政援助論は後者の活動援助を中心としていたが,筆者はそれと並ぶ比重をもって「基礎的整備

J

援助の設定をすべきだと考える。そうでなければ,行政援助は援助基盤の貧困さによって,質の 低い活動援助に止まるか,学習集団援助どころか社会教育行政施策の展開を学習集団への低い援 助とオーバーラップさせて担わせる統制主義に陥るからである。以上の基本構成の上で,それぞ れが基本的に3つの領域に類別できる。

( 1 .基礎的整備)

1 ‑1 生涯学習・社会教育計画

生涯学習・社会教育計画の中に,学習集団の意義とそれへの行政援助の基本計画を明記するこ とである。

1 ‑2 社会教育制度(行政・施設)への参画

社会教育委員,各種社会教育施設の運営委員への参加をさらに拡充して,地域学習集団の主体 性とともに,制度形成や運営へ参画する制度創造性を援助することである。

1 ‑3 援助基盤の整備

図2に示すような施設・職員・財政・情報などの行政援助の整備を拡充することが,具体的な 行政援助の内容を「社会教育の保障」にふさわしいものとして豊かにできるのである。

(II. 組織・活動の振興援助) II‑4  組織化の援助

地域学習集団は,自主的に組織化していくことが一般的であるが,公的学習の発展として組織 されることも増加している。あるいは,情報提供も組織化を促進するのであり,組織化への行政 援助の強化が重要であろう。

II‑5  活動の助成・援助

この領域は,従来も学習団体への援助・指導としてとりくまれてきたが,多面的な援助を拡充 すべきであり,とくに活動助成費の質的増額,学習資料の作成・提供などさらに強化される必要 があるo

II‑6  活動発展の援助

先に指摘したように,現代の地域学習集団は,創造学習を発展させたり,学習を生かした種々 の活動を展開しはじめているので,行政援助も「教育主義jの限界に閉じこもらず,積極的な発 展援助を創造することが求められる。

以上の領域を構造化したものが,図2に示す「地域学習集団への行政援助の構造」であるo

‑31‑

(5)

1.基礎的整備

し 生 涯 学 習 ・ 社 会 教 育 計 画 一 1‑1 計画に学習集団への援助規定 2.社会教育制度参画 ‑ 2 

3.援助基盤の整備 1 1  ‑3  1‑4  ト 1‑5  ト 1‑6 

L ‑1 ‑ 7  II.組織・活動の振興援助

4.組織化の援助

II‑1  II‑2  II‑3  II‑4  5 活動の助成・援助

~II

II 6 II 7 II 8 活動発展の援助

~II

II一1

行政・施設への参画 施設・設備の整備 専門職員の整備 財政の充実

情報・広報システムの形成

行政間・社会一行政問のネットワーク化

情報の提供 施設・設備の提供 組織事業の提供 相談・助言 活動助成費

学習資料の作成・提供 リーダーの養成

指導者・講師の養成・斡旋・派遣 他集団との交流・協同活動の場づくり 活動の後援・協同企画・共催

II‑11  地域活動ネットワーク化の援助 図2 地域学習集団への行政援助の構造

2.行政援助の内容

上掲図2に示したように,地域学習集団に対する行政援助は多面的であり 6領域はさらに,

1.基礎的整備で7項目, II.組織・活動の振興援助で11項目あり,合計すれば18項目となる。

以下,各項目毎に援助内容の基本的あり方を述べていきたい。

1 ‑1 生涯学習・社会的教育計画に学習への援助規定

学習団体の現代的位置づけからして,生涯学習・社会教育計画の中に,学習団体の意義とその 援助方策を本格的に位置づける計画論はほとんどない。意欲的な社会教育計画論だと定評のある 木全力夫編著「社会教育計画論」においても,事業計画のうち少年期の事業計画の項に「少年団 体の援助事業

J

が設定され,指導者・育成者の養成が述べられているにとどまる (9)。学習者主体 の観点を基本とした倉内史郎編著『社会教育計画』も,多様な学習機会のひとつとして,ボラン タリーな団体の学習活動を評価しながら,実際の計画策定においては, I集団学習による教育方 法上の効果と多数の学習者を対象にできるω」という教育事業展開の方法上の位置づけをするに とどまり,本格的な計画上の主体的位置づけがなされていないのであるo このように,従来の社 会教育計画論においては,学習集団の本格的な位置づけと援助施策の形成がなされることが少な かったのである。したがって,今後の計画には主体的な位置づけと学習集団への援助を本格的に

(6)

構築することが求められている。

1 ‑2 社会教育制度(行政・施設)への参画

周知のように,現在世界の学校で始まっている教育機関への住民参加制度は,日本では第2次 大戦後の社会教育法制において法定されている。社会教育計画策定にかかわる社会教育委員制度 (社会教育法第四章)や社会教育施設の運営委員(社会教育法第29条「公民館運営審議委員j,

図書館第14条「図書館運営協議員 j,博物館法第20条「博物館運営協議会」など)制度である。

これらの制度は,その権限や委員構成に弱体な問題性を内包しているが,現段階において地域学 習集団の生涯学習・社会教育計画,行政への参画制度として高く評価できる。

問題は制度運用であるが,地域学習集団を公正に総合的に選出することや実質的な審議・協議 の機会として委員会を運用することである。そのためにも,地域学習集団関のネットワーク化や 行政学習の拡充がなされるとともに,東京都町田市でなされたような「委員準公選制」などの拡 充も今後の課題である。

1 ‑3 施設・設備の整備

地域学習集団の行政要求の第 1に掲げられるのが施設・設備要求であることは,現在も変わり ない。大阪大学人間科学部の友田泰正グループの研究においても,施設増設要求に対する学習集 団の要求は強い(100

施設については,基本的施設の「地区・校区」区域の設置とともに,多面的学習要求に対応す る「専門施設」の整備が現代的に求められている。その意味では,住民・地域学習集団の要求を 基盤に,施設構成や施設内容(学校開放も含めて)を現代的に再検討する団体にきていると思わ れるo施設面の第2は,使いやすい施設・設備づくりである。この点ではほとんどの施設が行政 事業主体に内部構成されているが,これからは一部の青少年施設に見られる集団室を設置したり,

情報・印刷などの住民開放設備の整備が求められる。施設面の第3は,自由な開放であり,使用 規則・使用料・使用時間などが改革されるべきである。この点については,本年度の田崎論文「地 域学習集団の法的研究一公民館使用条例を中心として‑j を参照にしてほしい。

1 ‑4 専門職員の整備

学校と対比しても「教育機関性」の弱体な社会教育施設の現況においては円専門性のある職 員制度の形成はなされつつあるが,学校教諭のような「専門職制度

J

は未確立といってよい。と

くに,地域学習集団が対応する公民館などの諸施設では,主事,指導員といわれる職員配置であ れ専門指導性に全面的に対応することが困難であるo この根本的解決については法制の改革が 必要であるが,現行法においても自治体において職員の研修・研究システムを拡充するなどの人 事行政の運用をなすべきであろう。

そのことを前提にしたうえで,職員は施設貸与・設備の自由な開放など条件整備や情報・事業 の共同開催など地域学習集団に対する専門的援助を拡充していくことが,強く求められているo しかし,法定されているように,集団の運営に統制を及ぽしたり,干渉をしたりすることは禁じ られており,集団の主体性の育成を基本とすることは言うまでもない。

‑33‑

(7)

‑ 5 財政の充実

前記した社会教育施設・整備や専門職職員の配置を豊かなものにするためには,財政の充実,

拡充が求められていることは言うまでもない。とともに,財政の中に生涯学習・社会教育の「社 会セクター

J

における主体的位置を占める地域学習集団育成費の「目

J

を設定していくことが求 められるo この点については,憲法89条規定を積極的にとらえる兼子仁氏の論理を前提としたう えで円一括補助金でなく,

r

集団助成費jとして財政支出の目を積極的に創出すべきと考える。

この点では,財政統制批判の論理から,施設充実の基盤整備費にくみかえる論があるが円筆者 は先に記したように基盤整備の充実や財政統制禁止をふまえたうえで,集団の助成をする直接支 出をすべきと考えるo その際,支出方式は一括補助金ではなく, IIの組織・活動の振興援助の内 容に対応して支出すべきであるo すなわち,一括補助金方式,補助金支出方式のいずれでもない,

地域学習集団の助成費方式を創出するのである。

‑ 6 情報・広報システムの形成

現在,生涯学習の推進方策の中では学習情報の提供が大きな課題となっている。しかし,その 大半はパソコンを活用したニューメディア方式が主体である。筆者はかつて,生涯教育情報提供 調査を試みたことがあるが川地域住民・地域学習集団の情報入手では,パーソナル情報,市町 村の行政広報,社会教育広報紙,集団の情報誌の順であった。つまり,地域学習集団にとっては,

ニューメディアやマスコミを通した情報システムは基底であり,広報紙や情報紙の比重は高いの であるo したがって,今後はニューメディアやマスコミメディアシステムの確立とともに,オー ルドメディアと言われる広報紙や「学習情報ノfンフレツトJなどを総合化した情報・広報システ ムが創出されるべきであろう。なお,地域学習集団は情報の「受け手

J

としてだけでなく,シス テムにおいて「創り手jとして位置づけていくべきであろう。

‑ 7 行政間,社会・行政問のネットワーク化

教育行政以外のいわゆる一般行政においても,現在しだいに学習活動ないし学習関連事業が多 面的に展開されはじめているo その学習主体の大半は,地域住民,地域学習集団の構成員であり,

そこからさまざまな問題が生じている。類似事業の重複で行政のムダや住民の「学習多忙jを生 んでいることや総合的取組みがないため学習←→活動間の結合がうまくいかないこと,さらに 一般行政事業に教育行政的な住民の主体性育成論理がないために,学習定着性が弱体であること である。したがって,これらの問題性を失くすためには教育行政・一般行政の独自性や主体性を 保持した上で,情報ネットワークや事業ネットワーク化を促進していく必要がある。そのために も,社会教育施設と行政専門施設,社会教育専門職員と行政専門職のネットワークシステムが早 急に構築される必要があろう。

II‑l  情報の提供

情報の提供は,第 1に,施設・指導者などの人材・学習機会・地域学習集団・社会教育行政な ど地域学習集団の学習基盤づくりを促進するものが基本となる。第2に,行政情報や広報に地域 学習集団を積極的に紹介することが,住民の参加意識を促進することにもなり,地域学習集団へ

(8)

の援助になる。第3に,行政情報や広報づくりに地域学習集団を参画させることも,地域学習集 団の広報活動を強化させる援助となるのである。そのためにも,前記したように行政の情報・広 報システムの構築がなされる必要があろうo

II‑2  施設・設備の提供

施設の提供は貸与のみならず,行政施設に住民学習室を設置するなど,現状よりもっと積極的 な施設行政を展開する必要がある。施設提供の第2は,使用手続きの簡素化,使用時間の延長,

使用料の無料性など使用がさらに便利になるような施設運営が重要である。

第3に,設備の使用については,印刷、情報機器,視聴覚機具・教材,図書・資料などを整備 し,活用しやすい運用システムを創出する必要がある。第4に,施設・設備の運用を地域集団と 協議する「施設運営連絡協議会」の設置が求められる。

II‑3  組織事業の提供

組織事業とは行政が提供する学習機会に,地域学習集団の組織化,組織強化,組織発展と結合 する事業のことである。第 1に,組織化に結びつくものには,終了後は地域学習集団への参加や 組織化に結びつく事業を開設し,事業展開時や展開終了時には学習集団の組織化となるように事 業展開することが大事であるo

2に,組織強化とは集団運営論事業やリーダー育成講座などを開設して,組織運営などの充 実を図ることである。第3に,組織発展とは,学習をさらに深化させる事業や学習を生かした活 動へのつなぎや事業を一般行政とのネットワーク化などを通して創設していくことであるo 第 1 や第2の事業はこれまでも多く開設され,展開されてきたが,第 3の事業の創造がこれからは重 要な課題となっているo

II‑4  相談・助言

相談,助言は従来「教育指導性」に内包されていたが,一般に「教育指導性」は元来そうでな いにもかかわらず「伝達性」の側面が強かったのである。したがって,教育指導性を地域学習集 団の主体性を生かした「相談・助言」機能に転換することが求められる。第2に,相談・助言は

「求めに応じて(社会教育法第11条)Jなされるべきで,干渉や統制にならないようにすること は言うまでもない。第3に,相談・助言は多様であるが,質的に高い専門性をもったレベルで展 開すべきであり,とくに情報提供,運営技術,学習展開方法など,地域学習集団が主体的に受け

とめていくものを中心に行うことである。

II‑5  活動助成費

Iの5で述べたように,地域学習集団への援助費を予算書に独立した「目」として設定するこ とを提案した。その項でも述べたように,従来の一括的補助金ではなく,新たな対応性のある予 算編成をすべきであろう。つまり,総務費の中の団体補助金ではなく,学習集団助成費として目 をおこし,積極対応をしていく必要がある。第2に,その節構成は図2の行政援助の構造のIIの

し 2, 6, 7, 8, 9,11を中心に構成する必要がある。従来も 2や7については組みこまれ ていたが,今後はし 6, 8, 9,11も積極的に導入すべきであろう。第3に,施設費の目にお

‑35‑

(9)

いても事業費の中に,地域学習集団を助成する予算が組みこまれる必要があることは言うまでも ない。

11‑6  学習資料の作成・提供

学校と異なり,生涯学習・社会教育領域においては学習指導要領・教科書のような国家的基準 による教育課程は作成されていなし3。それは住民の主体性,地方自治性,地域個性を重視する法 概念からじても当然であった。しかし,そのことは一定のシビルミニマムさえ至らない地域さえ 生じ,大きな地域格差を生じている。地域学習集団では主体的な情報蒐集力や学習方法技術力の 高い集団もあり,そのような集団では自主的に学習資料の作成も容易であるが,多くの地域学習 集団では力量の低い集団が多い。したがって,一方向に学習資料を作成して押しつけるのではな く,一定のシビルミニマムレベルをふまえた学習プログラムや学習資料の作成づくりを専門的に 助成していくことが求められる。とくに,自主的な学習活動を展開する基礎資料としての学習プ

ログラムの開発への専門助成は集団の発展の基礎力でもあり,これから重視すべき課題となって いる刷。

11‑7  リーダーの養成

従来の社会教育論は,そのほとんどが「社会教育指導者

J

論として一括され,集団のリーダー,

集団指導の講師やコーチ,集団助成の行政専門職が明確に類別されることが少なかった。それは,

集団育成の社会教育主事,社会教育施設職員の視点,つまり社会教育行政の視点、から把握されて きたからである。この視点、を転換し,集団自体の主体的立場から主体的視点を設定すれば,第 1 にはインリーダーとしての学習リーダーが第1義的に重要であるし,第2に専門内容指導者や コーチが重要であり,さらに行政専門職というように位置づけがなされるべきである。

第2に,インリーダーも大規模な団体リーダが主体となってきたために,それら三種の指導者 の明確な類別がなされなくてもよかったと言える。しかし,現代ではグループ・サークルから団 体まで多様な集団が胎頭しており,それらの明確な類別とその養成についての新たな援助論が形 成される必要があるD 第2のアウトリーダーである「指導者・講師」については,次項で触れる

ので,本項ではインリーダーたる「学習リーダー」への援助について述べることとする。

学習リーダーへの援助は,第1に基礎的援助,第2に研究援助,第3に活動的援助に分けられ ょう。

1の基礎的援助は,情報の提供や個人的な助言や相談援助がつねに行われることである。第 2の研修援助とはリーダー養成講座やリーダー合宿などの学習組織化である。これらの研修援助 はこれまでかなりの実績があるが,プログラムに講師の知主体の講義主体ではなく,実技性や受 諾者の自主学習の比重を増加していく必要がある。第3に,これから力を入れていくべき「活動 的援助

J

とは,リーダー間交流,集団を超えた活動への参加や運営参画など集団を広い視野から

とらえる力量と活動推進力の養成が重要になっているD

11‑8  指導者・講師の養成・斡旋・派遣

学習集団の活動を専門的に指導する講師・コーチの行政援助は,第 1に,従来斡旋や人材ノf

(10)

クづくりなどの情報提供が主体であった。しかし第2に、近年は関東地区を中心に「講師派遣制 度」も確立しはじめており,財政援助も含めた積極的援助システムが進展している。第3に,ニ れからは講師やコーチも学習集団の内容指導だけでなく,集団の主体的運営助成や学習から活動 への発展などについても配慮・指導できるように,

r

講師・コーチ」養成講座などが行政援助と して開設されていくべきであろう。そうでないと,専門内容指導の優位性から集団を受動化して いく例もしばしば見受けられ,学習者の主体性をスポイルするからであるD

II‑9  他集団との交流・協同活動の場づくり

学習集団が学習を深化させたり,学習を生かした活動を推進するには,同種・異種の集団交流 によるインパクトは大きい。従来も体育祭・文化祭など大きな行事やイベントによって集団交流 援助がなされてきたが,これからは情報交換援助,リーダー交流会,小規模協同活動交流の場づ くりを拡充することが求められる。第2は,今後は協同企画にもとづく種々の協同活動や地域活 動づくりを提供・援助していく方式が拡充されるべきであろう。その際,学習集団間の協同活動 だけでなく,他の社会組織との協同活動の場づくりがもっと進められてよいと思われる。

II ‑10  活動の後援・協同企画・共催

学習集団が展開する社会協同性,公共性のあるものについて,

r

承認的後援j援助をなすこと によってー,広く住民参加を広げることは,これまでも多く行われてきた。これからも,この種の 後援は数を増すと思われるo

2に,これからの課題として,民間と行政が協同企画・共催していく活動も増加していくと 思われる。学習集団が主体性と力量を増大していけば,その活動は公共性をもっ度合いが増すし,

公的事業も社会協同性と共同することによって,住民の社会協同性を促進する公的事業を拡充で きょう。ただし,その共催の集団が行政恋意にもとづくもの,すなわち特定集団に傾斜するので はなく,公平性の原理によって,運用する共同援助方式を創設すべきであろう。その点では,共 催する集団の公募方式なども,これからの課題であるo

II‑ll  地域活動ネットワーク化の援助

地域学習集団が学習を通して他の集団とネットワーク化したり,学習活動を発展させた地域活 動を展開することも近年増加しつつあるo これらの活動の発展を援助することも,これからの行 政援助の新たな課題であるO

援助の形態としては,事業補助金の支出による援助があるが,これらは一括補助金ではなく,

公共性のある報告書作成費や広報紙の発行費あるいは会場借上げ費などへ財政援助することが望 まししユ。第2に,情報提供や広報援助の形態で,住民参加度や多数の集団参加を促進することで ある。第3に,学習集団と他の地域組織が連関しうるような交流集会やイベントの開催をする援 助もこれからの課題であろう。さらに第4として,学習集団の学習が活動へと発展する実践学習 や発表・展示などの援助も拡充していくことが求められている。

以上のように,地域学習集団に対する行政援助の基本課題を試論的に提起したが,今後は具体 的な援助分析を通して,さらに体系的,実践的な行政援助論を構築することが必要であろう。

‑37‑

(11)

く注〉

(1) 猪山勝利「地域学習集団に関する基礎的研究j長崎大学教育学部教育実践研究指導センター 年報N.o4, 1990年。

(2)  小川利夫「社会教育関係団体のあり方」小川利夫編『住民の学習権と社会教育の自由

J

勤早 書房, 1976年, 96頁"‑'110頁。

(3)小川利夫向上論文, 94頁"‑'96頁。

(4) 兼子 仁「社会教育と現代教育法の原理」吉田昇編『社会教育法の成立と展開

J

東洋館出版,

1971年。

(5)  国生 寿「生涯学習振興法と生涯学習政策の現段階」吉富・国生他編『生涯学習と社会教育 計画

J

学文社, 1992年, 59頁"‑'62頁。

(6)小川利夫同上論文, 111頁。

(7)  山本英治編『現代社会と共同社会形成

J

垣内出版, 1982年, 70頁"‑'75頁。 (8) 猪山勝利向上(1)論文, 25頁。

(9)木全力夫編『社会教育計画論』東洋館出版, 1988年, 157頁"‑'168頁。 (

1)0倉内史郎編『社会教育計画』学文社, 1991年, 11頁。

。1) 友田泰正編『グループ・サークルーその実態と援助方策‑.]大阪大学人間科学部社会教育論 講座, 1991年, 100頁"‑'103頁。

2) 猪山勝利「社会教育制度の現代的課題」態谷忠泰編『転換期の教育』協同出版, 1981年,183 頁"‑'188頁。

(13) 兼 子 仁 同 前 論 文 。 (

14) 小川利夫同前論文, 116頁。 (

1)5猪山勝利『生涯教育情報提供に関する調査報告書

J

長崎県教育委員会, 1981年。 (

16)  岡本包治『学習プログラムの研究』全日本社会教育連合会, 1973年。

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