1次元走化性・増殖系の分岐解析
著者 山本 耕士朗
URL http://hdl.handle.net/10236/9637
2011年度 修士論文要旨
1 次元走化性・増殖系の分岐解析
関西学院大学大学院 理工学研究科 数理科学専攻 大崎研究室 山本耕士朗
水槽内の水の上下の温度差が臨界点を超えることで対流パターンが現れるように, 一様な 状態が不安定化することでパターンが出現する. 不安定化そのものを正確に把握するには, 一様状態のまわりで線形化固有値を調べればよいが, 不安定化によってどのような状態が 現れるかは, その系の非線形性やモードの相互作用を考慮する必要があるため自明ではな い. したがって, これらを解析するために局所分岐解析を用いる. 局所分岐は, 全体の高次 元ダイナミクスを不安定化する複数個のモードに対応した低次元の中心多様体に縮約して 調べる. 分岐解析とは,この標準形と中心多様体上の方程式系を確定することで, どのよう な分岐構造でどのようなパターンを生じるか調べることである.
一般に, 一様な状態から分岐が起こるとき, ある特定の波数付近の周期波の不安定化に よることが多い. しかし,この現象は不安定化する波数が連続的にあるため, 厳密な扱いは 難しい. そこで, 有限区間に周期境界条件を課し, 方程式をフーリエ級数に展開すること で, 偏微分方程式を加算無限個のフーリエ係数に関する常微分方程式系にできる. また, 臨 界点の近くでは有限個の主要なモードに対応するフーリエ係数のみの常微分方程式系に還 元することができる. これによりパターン形成のダイナミクスが明らかになる.
既に, Armbruster,-Guckenheimer-Holmesによって, Kuramoto-Sivashinsky方程式の (1,2)モードに対して分岐解析が行われている. 本論文では三村・辻川系と呼ばれる走化 性・増殖系の空間1次元の場合において,(n, n+ 1), (n,2n)モードに対する標準形の導出 を行うことで, より多くのモードにおける分岐解析を可能にすることを目的としている.
空間1次元における走化性・増殖系は次の式で与えられる.
ut =auxx−b(uvx)x+c(u), (t, x)∈(0,∞)×I, vt =dvxx+f u−gv, (t, x)∈(0,∞)×I,
ux(t,0) =ux(t, L) =vx(t,0) =vx(t, L) = 0, t∈(0,∞).
ここで c(u) = pu(1 − u), p > 0, I は区間 (0, L) ⊂ R を表す. この式は,(u, v) ≡ (0,0),(1, f /g) で定数定常状態となる .
変数を(u∗, v∗) = (u−1, v−f /g), とし,フーリエ級数に展開することで u∗(t, x) =u0+ ∑
l∈N
ul(t) cos(lαx), v∗(t, x) =v0+∑
l∈N
vl(t) cos(lαx)
1
となる.
ここで u = (u∗, v∗) , α = π/L , N0 = N ∪ {0} とすることで,フーリエモードの方 程式
tu˙m =Mmt
um−
( Nm
0 )
, m∈N0
を得ることができる. ここで
Mm =
( −Am bm2α2 f −Bm
) , Am=am2α2+p, Bm =dm2α2+g,
Nm = bα2 2
∑
|m1−m2|=m m1, m2∈N0
(m1−m2)m2um1vm2 − ∑
m1 +m2 =m m1, m2∈N0
(m1+m2)m2um1vm2
+ p 2
∑
|m1−m2|=m m1, m2∈N0
um1vm2 + ∑
m1 +m2 =m m1, m2∈N0
um1vm2
.
である. さらに,
tu˜m = Φ−m1 tum, Φm =
( Bm −Am
f f
) . とすると Mm は対角化でき
tu˜˙m = (
µm 0
0 −Am−Bm+O(ϵ0) )
tu˜m−Φ−m1
( Nm
0 )
, m∈ S
tu˙m =Mmtum−
( Nm
0 )
, m∈N0\S. となる. ここでµm= 12
{−Am−Bm+√
(Am−Bm)2+ 4f bα2m2
}である.
この式に対して中心多様体縮約を用いて標準形の導出を行うことで,標準形と中心多様 体上の方程式系を確定することができる. 本論文では(n, n+ 1), (n,2n)モードに対して 標準形の導出を行うことで, 隣り合うモードと2倍のモードにおける分岐解析を可能に した.
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