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小児がん患児をもつ母親に対するトータルケア・システムの一考察

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Academic year: 2022

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人間科学研究 Vol. 27, Supplement(2014)

修士論文要旨

1.研究背景

 小児がんは、事故を除いた小児の死因の第1位であるが、

新しい抗腫瘍剤の開発や支持療法の改善、骨髄移植等と いったここ20年での医療技術の進歩により、多くのがんサ バイバーが社会へと進出している。しかし、晩期障害や PTSD症状の影響で、退院後に社会不適応となる多くのサ バイバーが出現し、多くの研究がなされる中、両親の病気 の捉え方が患児のPTSD症状の抑制につながることが示唆 され、本研究では、両親が病気を前向きに捉えることで、患 児の退院後の生活のQOLの向上につながると考えた。

 多くの家族研究により患児だけでなく家族にも直接的な 支援をする必要性が示唆されている。特に母親は、家族に 対する母親役割を担うとともに、治療の選択や患児の精神 を安定させる役割など多くの負担がかかることが研究で明 らかとなっており、本研究では今後において、母親へのトー タルケアが必要であると考えた。しかし、母親が前向きに 闘病生活を捉えるためのニーズを総括的に捉えた研究や、

それらに対応するトータルケア・システムに関する研究は 少ない。そこで、本研究では母親が前向きな闘病姿勢を獲 得するためのニーズを明らかにし、その結果を踏まえた トータルケア・システムの構築を検討することとした。

2.目的

①入院中の小児がん患児をもつ母親のニーズを明らかにする。

②医療スタッフの協同による母親へのトータルケア・シス テムを検討する。

3.方法 研究Ⅰ

対象者:関東にあるA病院血液腫瘍科に入院中の患児をも つ母親7名を対象とした。

調査期間:2013年5月~6月

調査方法:半構造化面接(平均36分/ 1人)面接内容は、協 力者の了解を得て録音し、逐語録を作成した。

分析方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチ(戈木 2010)によって質的分析を行った。

研究Ⅱ

対象者:A病院の血液腫瘍科に介入している医療スタッフ

(医師4名、看護師5名、保育士1名、栄養士1名、院内学 級教師1名、ピアであるボランティアスタッフ1名)13名 を対象とした。

調査期間:2013年6月~9月

調査方法:半構造化面接(平均43分/ 1人)面接内容は、協 力者の了解を得て録音し、逐語録を作成した。

分析方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチ

(戈木 2010)によって質的分析を行った。

4.結果および考察 研究Ⅰ

 母親へのインタビューから、母親がもつニーズと して、「正確な情報の取得」、「家族の理解」、「体験的 知識の取得」、「学校とのつながり」、「患児の闘病姿 勢」の5つが考えられ、本研究では、母親に対して の「正確な情報の提供」、「家族の理解の促し」、「体 験的知識の提供」、「学校とのつながりの促し」、「患 児のケア」の5つの支援をすることで、母親を前向 きな闘病姿勢の獲得につなげる一助となると考えた。

研究Ⅱ

 医療スタッフのインタビューから、研究Ⅰで得られた母 親のニーズに対する支援状況が明らかとなり、各スタッフ が自身の専門性に沿った多角的な支援を展開していた。ま た、トータルケアの実現には「多職種間での情報交換」が 必要不可欠であり、活発な情報交換をすることでケアの質 を向上させ、トータルケアを実現させていた。この「多職 種での情報交換」を可能にしたものは、コメディカルスタッ フによる「自らの働きかけ」やメディカルスタッフの「職 種の理解」だけでなく、A病院の「協力体制」の存在、あ るいは職種間の「コーディネーター」を医療スタッフの誰 かしらが担っていたことであった。これら要素が揃うこと で、医療スタッフ同士は活発な情報交換をすることで、ケ アの質を向上させ、トータルケアを実現させていた。本研 究は、以上の結果をもとに、協力体制を構築し、活発な情 報交換によって高い質の支援を展開できるトータルケア・

システムを検討した。

5.総合考察

 本研究で得られたトータルケア・システムは、早期から 家族の意思疎通の調整や家族関係の調整を行うことや、母 親が前向きな闘病姿勢を獲得することで、家族が抱える問 題の解決や、患児のPTSD症状を発症するリスクを低減さ せる一助となると考えられたが、母親だけでなく、患児に 対しても前向きな闘病姿勢を獲得させる必要性がある。

 また、このシステムは、小児がんだけでなく、他の長期 入院を必要とする疾病で入院している患児の母親に対する トータルケア・システムの一助となると考えられるが、多 様な専門職が配置され、小児がんの病棟が独立している場 合での活用の可能性が示唆され、大学病院などの多様な疾 病を扱う病院では、希少な病気である小児がんを専門とし た体制は構築しにくいことが考えられる。

6.結論

 母親が患児のがんの発症から現在までに抱えるニーズが 明らかとなったとともに、トータルケア・システムの構成 要素に関する示唆を得ることができた。

 そのため、本研究は、今後の小児がん領域でのトータル ケアの質の向上が指摘される中で、ひとつの示唆になった と考える。

小児がん患児をもつ母親に対するトータルケア・システムの一考察

A Study of Total Care Systems to the Mothers having a Pediatric Inpatient with Cancer

大崎 水緒(Mio Osaki)  指導:小野 充一

図1 トータルケア・システム

多職種間での情報交換 入院生活

患児に対するケア 母親に対するケア

協力体制 の 構築

がんの確定

前向きな 闘病姿勢 医師

看護師

医師

看護師

保育士

院内学級教師

栄養士

ボランティアスタッフ

チームの形成

対処できない問題 ケアの向上

正確でわかり やす い説明

相談窓口 の紹介

個々での活発な 情報交換

定期的な

カンファレンス 知識の共有 わかりやすい

説明の継続 治療決定

患児の気持ちに 合わせた対応 病状に合わせた

学習

食生活への 理解の促進 食生活の 質の向上

母親の安定によ る患児の安定 母親と触れ合 う機会の提供

親役割の 代行 遊び の

提供

遊び相手

退院後を 考えた支援 愛着ある

関わり

家族内の 意思疎通の調整

早期の復学支 援に関する助言 気持ちを打ち明

ける場の提供

患児と触れ合 相談業務 う機会の提供

学校と母親の 仲介 学校への 情報提供

退院後の 食生活の理解 食生活への

意識向上

気持ちの 表出の促し 医療者との

仲介 自己決定へ

の導き 連携の必要性があると考えられる職種

ソーシャル ワーカー

心理士 (またはCLS) 薬剤師

復学支援

薬の理解 の促進

患児や母親の 精神的ケア きょうだい

への説明 薬の説明

きょうだいへの 説明

参照

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