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(プロロセンチンの全合成と絶対配置の決定)

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Academic year: 2021

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(1)

学 位 論 文 題 名

Total Synthesis and Determination of the Absolute Stereochemistry of Prorocentin

(プロロセンチンの全合成と絶対配置の決定)

学位論文内容の要旨

  

渦鞭毛藻Prorocentr um属を起源とする海産天然物は興味深い生物活性を有することから、多く の科学者の興味を集めている。しかし、これらの多くは天然供給量が少なく、立体構造が決定さ れていないことが、更なる生物学的研究の障害となっている。申請者は全合成化学的な立体化学 決定と物質供給によるこの課題の解決の一例として、プロロセンチン(Fig.1)を標的とした合成研

        u M e

″唹イ蚶 ぎ

    OH Me

  

プロロ センチ ンは

2005

年に単離され、平面構造と

Cll‑C26

とC28‑C32の部分相対配置がそれ ぞれ決定されているものの、全体の絶対配置は未決定であった。そこで、申請者はプロロセンチ ンの絶対配置の決定と合成供給法の確立を目的として合成研究を開始した。申請者は、プロロセ ンチン の提出構 造

1

の全合成によって、1のB環上水酸基の位置の誤りを見出し、2のように構 造改訂を行った。また、2の全合成を達成し、天然物の絶対配置を2の鏡像異性体となる3と決 定 し た 。 さ ら に 、 よ り 効 率 的 な 合 成 経 路 を 確 立 し 、

3

の 全 合 成 を 達 成 し た 。

  1

及び

2

の合成経路の立案に当たり、合成の効率化を指向した収束的な経路を採用し、Cl‑C6 (4)、

C8‑C20

(7,

8

)、及ぴC21‑C35 (9)の

3

っのセグメントに分割した

(Scheme1

)。また、プロロセンチ ンの考え得る全ての立体化学を構築可能とするために、各セグメントの合成には両工ナンチオマ ーを容易に得られる方法を採用した。不安定だと予想されるA環部エポキシドは合成の最終段階 で構築することとし、その前駆体は4と5または6の鈴木‐宮浦クロスカップリングによって合成 する。5または6のCD環スピロアセタールはジオールのアセチレンケトンヘの分子内2重共役付 加 で 構 築 し 、 そ の 前 駆 体 は

7

ま た は

8

9

と の 連 結 で 合 成 す る こ と に し た 。

1 or 2

5: R1=OTBS, R2=H 6: R1=H, R2=OTBS

  PBTyぷ露 Me

eTBDPSOJ¥  ,‑SRH+,2.M '.uMe

     7:R1=OTBS.RLH.R3=   2' OTES  9BSO M        8: R1=H, R2.OTBS, R3=TMS        Scheme1

  

まず、

1

の合成を行った

(Scheme2

)。末端アルキン10とエポキシド11から

12

へと誘導し、

Pd

触媒を用いた

6‑endo

環化によって

13

とし、選択的な水酸基の導入でC8‑C20セグメント(7)を合成 した。別途合成した末端エンイン

9

と連結してジオール14へ導き、Cs2C03と

PPTS

で順次処理す ると2段階の共役付加が進行し、80%の収率で単一のスピロアセタール15を与えた。さらに、B

2361    ,l o 

‑   F

― 鐡

,―   

  

‑¥

(2)

ヨ ー ド オ レ フ イ ン

5

へ と 誘 導 後 、 ジ ェ ニ ル ボ ラ ン

4

と の 鈴 木 カ ッ プ リ ン グ に よ っ て ト リ エ ン 部 を 合 成 し 、

TBAF

に よ る 全 て の

TBS

基 の 脱 保 護 と エ ポ キ シ ド の 構 築 に よ ル プ ロ ロ セ ン チ ン の 提 出 構 造 の 全 合 成 を 達 成 し た 。

    10

. → 叭

p孟 ヨ →     ODMB     11

    1) 4, Ba(OH)2 PdCl2(dppf)  ̲ 61%

    2) TBAF, 56%

Me

PMP Pdf6 mtPoh;2)N)2       MS 4A       THF. 83%

Me

5     S c h e m e 2     1 5

  

合 成 し た

1

と 天 然 物 の

NMR

ス ペ ク ト ル を 比 較 す る と 、

B

環 付 近 で 大 き な 差 異 が 見 ら れ 、 構 造 改 訂 が 必 要 で あ る こ と が 判 明 し た 。 検 討 の 結 果 、

B

環 上 水 酸 基 の 位 置 を

16ax

か ら

17eq

^ と 変 更 し た

2

を 改 訂 構 造 と し 、

2

を 次 の 合 成 標 的 と し た 。

  

基 本 的 な 合 成 計 画 は 変 更 せ ず 、 改 訂 し た

B

環 部 の 合 成 を 新 た に 行 っ た

(Scheme3

) 。 ま ず 、 メ チ ル ケ ト ン

16

と ア ル デ ヒ ド

17

を ア ル ド ー ル 反 応 で 連 結 し 、 エ ポ キ シ ア ル コ ー ル

18

へ と 誘 導 後 、

CSA

で 処 理 す る と 高 収 率 で

6

exo

環 化 体

19

が 得 ら れ た 。

B

環 部 ア ル デ ヒ ド

8

へ と 変 換 し 、

1

と 同 様 の 方 法 で 、 分 子 内

2

重 共 役 付 加 、 鈴 木 カ ッ プ リ ン グ 等 を 鍵 反 応 と し て

2

の 全 合 成 を 達 成 し た 。

O

6      Scheme 3      21

、く

19

S

  

合 成 し た

2

と 天 然 物 の

NMR

ス ペ ク ト ル は 完 全 に 一 致 し 、 構 造 改 訂 の 妥 当 性 が 証 明 さ れ た 。 ま た 、

Cll‑C26

C28‑C32

部 分 の 相 対 関 係 が 正 し い こ と が 確 認 さ れ た 。 し か し 、 旋 光 度 の 比 較 の 結 果 、 同 程 度 の 大 き さ で 符 号 が 反 対 で あ っ た た め 、 天 然 型 の プ ロ ロ セ ン チ ン は

2

の 鏡 像 異 性 体 と な る

3

で あ る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、

B

環 部 の 合 成 に お い て 立 体 選 択 性 が 低 い こ と や 、 最 終 段 階 で の 脱 保 護 等 の 課 題 が 残 さ れ て い た た め 、 よ り 効 率 的 な 合 成 経 路 の 構 築 と 天 然 物 の 合 成 供 給 を 目 的 と し た

3

の 合 成 研 究 を 行 っ た 。

  

エ ナ ン チ オ マ ー 間 で 共 通 の

Cl‑C6

セ グ メ ン ト は そ の ま ま 利 用 し 、

C21‑C35

セ グ メ ン ト は 、 同 様 の 方 法 で 対 掌 体 を 合 成 し た 。

C8‑C20

セ グ メ ン ト は 新 た に 求 核 ・ 電 子 剤 を 反 対 に し た ア ル デ ヒ ド

21

と ケ ト ン

22

を 用 い 、 立 体 選 択 的 な ア ル ド ー ル 反 応 と 、 続 く 還 元 に よ っ て 効 率 良 く 構 築 す る こ と が で き た

(Scheme4

) 。 さ ら に 、

6‑exo

環 化 に よ っ て ア ル デ ヒ ド

24

へ と 誘 導 し 、 保 護 基 の 検 討 の 末 、 上 述 の 方 法 論 を 用 い た

3

の 効 率 的 全 合 成 に 成 功 し た 。

 PBBO  Me C

/

H + MEa¥DO::S

¥) OTBS   TESC

      O H

      , D M B     H M S   3

      ‑   B D P S O : J   <

      T B D I o

    Scheme4

  

以 上 、 申 請 者 は プ ロ ロ セ ン チ ン の 全 合 成 研 究 を 行 い 、

(1)

提 出 構 造

1

の 全 合 成 と構 造 改 訂 、

(2)

改 訂 構 造

2

の 全 合 成 と 天 然 物 の 立 体 化 学 の 決 定 、(3)天 然 型 立 体 配 置

3

の 効 率 的 全 合 成 を 達 成 し た 。

237

  

   2

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 准教授

鈴木 及川 谷野 村上 藤原

孝紀 英秋 圭持 洋太 憲秀

     学位論文題名

TotalSyntheSiSandDeterminationoftheAbSOlute     StereOChemiStryofProrOCentin

     (プロロセンチンの全合成と絶対配置の決定)

   渦鞭毛藻 Prorocen 缸 um 属を起源とする海産天然物は興味深い生物活性を有するこ とから、多くの科学者の興味を集めている。しかしこれらの多くは天然供給量が少な く、また立体構造が決定されていないことが、更なる生物学的研究や全合成研究の障 害になっている。著者はプロロセンチンを標的とした研究を展開し、合成化学的なア プローチによる立体化学決定を行い、また効率のより合成ルートの確立によって物質 供給への道を拓いた。

  2005 年に単離されたプロロセンチンは抗がん作用を持つ海産天然物であるが、平面 構造と一部の相対配置のみが決定されているだけで、全体の絶対配置も未決定詮物質 である。そこで、著者はプロロセンチンの完全な相対構造ならぴに絶対配置の決定と 合成供給法の確立を目的として合成研究を開始した。プロロセンチンは、6 員環エー テルが縮合したスピロ環状アセタール(BCD 環)、エポキシド(A 環)、5 員環エーテ ル(E 環)、およぴ共役トリエン (C3 ― C8) を構造的な特徴する。著者は収束的合成計 画を立案するとともに、各セグメントについては両鏡像体の合成が可能なルートを考 案した。分子内での二重のへテロマイケル付加などを鍵段階として、プロロセンチン の提出構造に相当する化合物の全合成を行ったところ、スペクトルの不一致から提出 構造に誤りがあることを見出した。水酸基の位置を修正することで構造改訂を行い、

その改定構造に対応する化合物の全合成を達成し、天然物の絶対配置が改定構造の鏡 像異性体であることを明らかにした。さらに、合成経路上の問題点を解決しながら、

より効率的な合成経路を確立し、天然物に相当する鏡像異性体へのルートを確立し、

天然型プロロセンチンの全合成を達成した。

   本論文の内容は、海産天然物全合成研究における大きな進展であると共に、有機合 成化学分野の発展に寄与するものである。よって著者は、北海道大学博士(理学)の 学位を授与される資格あるものと認める。

238

参照

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