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東京の環境指標種100

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【表紙の写真】

上段左:多摩川上流部(奥多摩町)

上段中:丘陵地の谷戸(町田市)

上段右:増上寺、芝東照宮周辺の緑地(港区)

下段上左から:ユリカモメ、キアゲハ

下段下左から:エイザンスミレ、トウキョウダルマガエル、ホトケドジョウ

各種の解説は本文参照。

(3)

はじめに

………

2

東京の自然環境の概要

………

5

環境別・東京の環境指標種一覧

………

10

この本の見方

………

14

東京の環境指標種

─各種の解説─

………

15

  

森林の指標種

………

16

生き物コラム

東京の固有植物

………

62

  

草地・耕作地の指標種

………

64

  

都市部の指標種

………

74

  

河川の指標種

………

87

生き物コラム

東京都の河川の現状と課題

―電気に頼らないために

100

  

池沼・水田の指標種

………

102

生き物コラム

水生昆虫の宝庫だった「武蔵野三池」

…………

112

  河口・干潟の指標種

………

114

世界自然遺産・小笠原諸島、生き物の分布が

興味深い伊豆諸島

―東京都の島嶼部

………

122

外来種:概論と紹介

………

126

用語解説

………

132

植物の形態用語

………

136

体の大きさの表し方

………

137

東京都版レッドリスト 2010

………

138

フィールドノートの書き方

………

157

さくいん

………

158

(4)

はじ め に

東京大学名誉教授 

大場 秀章

 東京(都)の人口は 13,286 千(2013 年)に達する。人口密度は日本の

都道府県では最も高く、1km

2

あたり 6,070(小数点以下は切り捨て)人で、

2 位の大阪府(4,659 人)や 3 位の隣県神奈川(3,759 人)を大きく引

き離している。世界でも有数の人口を抱える大都市・東京だが、都心か

ら電車で 1 時間も乗れば、全山ほぼ緑に被

おお

われた良好な自然環境があり、

かつ生物の多様性が高い高尾山などの山陵とそれに続く丘陵地がある。

 会議などで最近東京を訪れた海外の著名な生物や環境などの専門家

は、この大都市と隣り合う生物の宝庫の存在に一様に驚

きょう

が く

する。

 しかし、島嶼

し ょ

部を除く東京の樹林地の面積の割合・緑被率は、今から

約 80 年前の 1932 年を 100 とすると、減少の一途をたどり、1990 年

には半減している。つまり、かつては連綿と東京の大半に広がっていた

樹林地は減少し、今や都心部や東部では樹林地の大半が姿を消し、都心

部ではまとまった樹林地といえば皇居、明治神宮、自然教育園など少数

が残るだけである。

 こうした樹林地の分断は、多くの生物の移動を妨げ、遺伝子交流の範

囲を狭め、温暖化や乾燥化などの環境変化に適応した子孫を出現しにく

くすることが危惧される。良好な自然環境をこれ以上の消失や悪化から

護っていくことが強く求められている。

 本冊子は、私たちの居住地やハイキングなどで出かける奥多摩などで、訪

れたそれぞれの場所の自然が良好に保たれているかどうかを、そこに暮らす

代表的な植物や動物を通して学ぶことを意図して編集されたものである。

この本で用いた地形・環境区分

 東京は、東京湾からほぼ西に、本州の脊

せ きりょう

山脈の一つ、関東山地にい

たる一画を占める。これを東西に区分するなら、地形の違いにより、東

部の海沿いの「低地」、標高 2000m にも達する西部の「山地」、その中

(5)

西多摩 南多摩 北多摩 区 部 多摩川 秋留台地 草花丘陵 関東山地 多摩丘陵 多摩川低地 狭山丘陵 武蔵野台地 荒川 【凡 例】 山地 地形区分 台地 丘陵地 低地 標高区分 100未満 100‑200m 200‑400m 400‑600m 600m以上 河川 ■ 東京都の地形・地域区分図

間を占める「台地」、および「丘陵地」の 4 つに区分できる。

 大地に根を張って暮らす植物は、温度や降水量などの影響を強く受け

る。気温は 1000m 登ると 5 〜 6℃低下する。そのため、高度による気

温低下を反映した、異なる植生が帯状に重なる垂直分布が生まれる。気

温の違いが生んだそれぞれの植生帯は、単に植物相が異なるだけでなく、

そこに暮らす動物にも影響する。

 植 生とは、地 球の表 層を被う植物のことを指し、森林や草原などの

景観や、群落をつくる植物相の違いなどによる分別が行われる。東 京

は、植物にとって十分な降水量があり、放置すればどこも森となりうる

が、降水量が少ないと草原、さらに減れば荒原となると予測される。また、

森林を伐採すれば草原状に、強度の除草を続ければ荒原や植物が皆無に

近い裸地ができる。また、痩せ地など、土壌が貧弱だと降水量は十分でも、

火山荒原や河川敷のように森林にならないこともある。

 そこで、本書では、東京の自然の多様さへの理解を深めるために、東

京を地形の違いにより区分した「山地」、「丘陵地」、「台地」、「低地」の

※本図の標高区分には「国土地理院 基盤地図情報 数値標高モデル(10m メッシュ)」のデータを使用し、  地形区分は、出版元の許可を受けて下記文献の図をトレースして作成した。

(6)

4 つの地形区分に、水圏環境が卓越する「水域」を加えた 5 つを地形区

分とし、それぞれで地域の環境の指標となる種、すなわち環境指標種

を選び、それぞれの種についての解説を試みた。丘陵、台地、低地の 3

地域では、景観を異にする「森林」、「草地・耕作地」、「都市部」の 3 つ

に、また水域では「河川」、「池沼・水田」、「河口・干潟」の 3 つに細分し、

それぞれの指標種を表にまとめて一覧できるようにした。

環境指標種を選ぶにあたって

 13 に細分されたそれぞれの環境の特色を示す代表的な種を、それぞれ

の区分の「環境指標種」とし、専門家の立場から検討を行い、植物や哺

乳類など 9 つの生物群について、各群ごとに数種を選定した。

 選定では、自然環境が良好な状態で保たれなければ生存が脅かされる

ような絶滅危惧種だけでなく、それぞれの地域を代表する生態系を特徴

づける種も候補として、多角的な討議を経て決定した。その際、知名度

が高く、かつ類似種からの識別が容易であることも重視された。

 この冊子に掲載された植物・動物は、単にその種の生存を提示するだ

けでなく、都市部を除いて、その種が生存することで地域の自然環境が

良質な状態で維持されていることを示している。

 都市部は人間が高密度で居住し、人間生活に都合がいいように地形や

地表面などが改変されている。コンクリートやアスファルトで固められた

大地は、雨水も溜らず乾燥し、アルカリ性が強く、強い照りかえしを受け、

植物は根さえ十分に張れない。これは元来、日本でみられなかった立地

である。

 この過度に改変された立地では在来種の生育は難しく、かろうじて外

来種だけが育つところも少なくない。本冊子では都市部に限り、植物で

の指標種に外来種であるメキシコマンネングサとナガミヒナゲシが仲間入

りした。これらと競合する、あるいは共存できる在来種はみられない。

 本書が都民の皆様と首都東京を訪れる方々にとって、東京に共に生き

る多様な動物・植物とその現況を知るうえで役立つことを期待しています。

(7)

奥多摩の山地(日原) •

森林

[地 形] [みられる環境] •

森林

草地・

耕作地

都市部

森林

草地・

耕作地

都市部

森林

草地・

耕作地

都市部

河川

池沼・水田

河口・干潟

 東京都の本土部(島嶼

し ょ

部を除く地域)は、関東平野の南西部に位置して

います。その西端には標高 2000m を超える雲取山をはじめとした山々が

連なる関東山地があります。東に向かって次第に標高は下がり、多摩丘陵、

狭山丘陵などの丘陵地、さらに台地を経て、荒川や多摩川の下流域周辺の

沖積低地

へと続きます。このように、山地から低地の臨海部にいたるさま

ざまな地形環境を有していることが、東京の自然環境の特徴の一つと言え

るでしょう。それぞれの

地 形環 境には、森林や

草 地、河川や 干 潟、人

の 手が加わった耕作地

や 都 市 部など、動 植物

が生息、生育するさまざ

まな場が存在します。

 山地は東京の西部の大半を占

めています。現在は多くがスギ

やヒノキの人工林になっていま

すが、パッチ状に自然状態を維

持した植生や伐採後に生じた二

次林もみられます。大きな高低

差を反映して、山地には複数の

植生帯が出現します。最も標高

の高い雲取山周辺にはオオシラビソ、コメツガを主要な樹種とする亜高山

性針葉樹林、これより下部にはブナ林、ミズナラ林などの夏緑広葉樹林(落

東京の自然環境の概要

多様な植生帯にまたがる西部山地の樹林

(8)

町田市小野路の谷戸

葉広葉樹林)、さらにその下方にはシラカシやアラカシなどの常緑広葉樹か

らなる照葉樹林が出現します。林床では、カタクリやフクジュソウ、エイザ

ンスミレなど、花の目立つ山野草が多く生育しています。こうした草花に

出会える山地は、ハイキングなどの行楽地にもなっています。

 動物も、樹林性の種を中心に多数の種が生息しています。哺乳類では樹

上で主に生活するホンドリスやムササビ、広い行動圏を持つツキノワグマな

ど、鳥類では猛禽類のクマタカや夏鳥

のセンダイムシクイ、オオルリなど

が生息しています。また、林床にはジムグリやタカチホヘビなどの爬

虫類、

渓流沿いではタゴガエルやカジカガエルなどの両生類、樹液を出す落葉広

葉樹の多い林ではアオカナブンやミヤマクワガタなどが生息しています。

 奥多摩には石灰岩が露出した露頭が各所にあり、好石灰岩植物と呼ばれる

チチブミネバリ、イワシモツケなどが生育しています。鍾乳洞ではコキクガ

シラコウモリ、モモジロコウモリなどの洞窟性コウモリが確認されています。

  東 京の丘 陵 地 は、樹 林 の 分

断化や孤立化が進行しています。

小山田緑地などのように、保全

が図られている緑地を中心にコ

ナラやクヌギ、ミズキ、エノキ

などの落葉広葉樹林、スギ、ヒ

ノキの人工林などがみられます。

また、丘陵地の辺縁には浸食作

用により形成された谷戸

と呼ばれる細長い谷が並走しており、その多くは

水田として利用されています。かつて丘陵地には、伐採後に切り株から伸び

出た枝(萌芽枝)を育てた雑木林と呼ぶコナラやクリの人工林が広範囲にみ

られ、里地・里山

と呼ばれる独特な景観を生み出していました。しかし、現

存する雑木林はわずかしかありません。雑木林の林床にはイチリンソウやチ

谷戸が育む雑木林と湿地

(9)

野川と国分寺崖線の緑地

ゴユリなどが生え、春に可憐な花を開きます。日当たりのよい谷戸では、春

にカントウタンポポやスミレ、夏にはホタルブクロやヤマユリ、秋にはカント

ウヨメナ、ノコンギクなど、季節に応じて特色ある花を開く草本がみられます。

 まとまった面積を有する樹林では、樹上性のムササビが生息するほか、行

動範囲が広くさまざまな環境を利用するキツネやタヌキなどの哺乳類が生息

します。鳥類では猛禽類のオオタカをはじめ、アオゲラやメジロなど、昆虫

類ではクヌギなどの樹液に集まるノコギリクワガタやオオムラサキなどが生

息しています。

 谷戸の水田や周辺の草地では、ヒガシニホントカゲやニホンカナヘビなど

の爬虫類のほか、トウキョウサンショウウオ、ヤマアカガエルなどの両生類、

オニヤンマ、ヒガシキリギリス、ゲンジボタル、キアゲハなどの昆虫類が生

息しています。

 現在、市街地の中核部分になっ

ている台地には、かつてコナラ

やクヌギ、エゴノキを主体とし

た落葉性の二次林が広範囲にみ

られました。その面影は、国分

寺崖線

沿いの斜面や石神井公

園、井の頭公園などの大規模な

都市公園

などにみることができ

ます。また、かつての景観の保全が図られているごく小規模な緑地や公園

緑地、社

しゃ

そう

りん

(古くから神社の周りに維持されてきた樹林)なども点在し

ています。

 このような緑地は、街中に孤立した状態で存在するため、地上を歩行し

て移動する動物の出現が極端に少なくなり、多くは飛翔移動が可能なアブ

ラコウモリなどの哺乳類、オナガやコゲラ、ウグイスなどの鳥類、カナブン、

がいせん

線沿いに残された貴重な緑地

(10)

増上寺、芝東照宮周辺の緑地

ゴマダラチョウなどの昆虫類です。このほかでは、住宅地の周辺にも生息

するタヌキやヤモリ、アオダイショウ、アズマヒキガエルなどがみられます。

 また、国分寺崖線沿いにみられる緑地のうち、「神明の森みつ池特別保

護区」では、市街化の進んだ地域ではほとんどみられなくなったゲンジボ

タルなどの昆虫類が生息しています。

 東京の低地は、臨海部や多摩

川、荒川などの大河川沿いに分

布し、高層ビルが建ち並ぶ都市

化が最も進んだ地域です。まと

まりのある緑地としては、皇居

や明治神宮のほか、多摩川や荒

川の河川敷、臨海部に整備され

た公園、それに建設予定地のよ

うな一時的にできた草地を挙げることができます。これらの緑地は、台地

部の緑地と同様に孤立して存在しています。

 皇居には、武蔵野の自然を残すことを目的に植栽されたモチノキ、ス

ダジイ、タブノキから構成される常緑広葉樹林、クヌギを中心とした落葉

広葉樹林とがあり、ここには猛禽類のオオタカをはじめ、メジロやオナ

ガ、シジュウカラ、ウグイスなど多数の樹林性の鳥類をみることができます。

また、敷地内では昔から生息していたと考えられるアズマモグラ、ヒバカリ、

ベニイトトンボ、コオイムシなど、都市部ではほとんどみられなくなった動

物が確認されています。

 多摩川や荒川の河川敷や、東京港野鳥公園、葛西臨海公園などでは、コ

サギ、カルガモ、スズガモ、キアシシギ、コアジサシ、ユリカモメ、ヒバリ、

オオヨシキリなどの水辺や草地を生息地とする多種の野鳥がみられます。

孤立した緑地と広い水辺

(11)

多摩川上流域 東京湾の干潟

 奥多摩の山間を流れる渓流は夏で

も水温が低く水も澄んでおり、ヤマ

メやカジカなどの冷水性の魚類が生

息しています。また、カゲロウ類や

カワゲラ類、トビケラ類を主とする

水生昆虫類が多く生息します。渓流

沿いでは、魚類や水生昆虫を捕食す

るヤマセミやカワガラスなどの鳥類もみられます。

 多摩川の中流域は、河川敷が広く礫

れき

河原もみられ、イカルチドリなどの

鳥類やカワラバッタなどの礫河原に特徴的な昆虫類がみられます。川の中

には、オイカワやアユ、ギバチなどの魚類やハグロトンボ、シロタニガワカ

ゲロウなどの水生昆虫、シマイシビル、ヌカエビなどの小動物が多数生息

しています。また、谷戸を流れる細流には、ホトケドジョウやゲンジボタル、

カワニナ、サワガニなど、都市近郊で姿を消しつつある小動物がみられます。

 湖沼や池、水田などの止水環境では、カイツブリやカルガモ、カワセミな

どの多くの水辺の鳥類や、コイやモツゴ、ミナミメダカなどの魚類がみられ

ます。

 多摩川、荒川の河口や臨海部の浅

瀬(干潟)は、広大な水面を有する

ため、多くの水鳥がみられるほか、

干潟は特にシギ、チドリ類が春や秋

の渡り時の中継地点(餌場、休息場)

として利用します。干潟などの浅瀬

には、干潟に特徴的なトビハゼをはじめ、ボラやコトヒキ、マハゼなどの

魚類の稚魚、ヤマトオサガニやアシハラガニ、アサリ、ゴカイ類など多くの

底生動物が生息しています。これらの豊富な小動物は、鳥類(特に渡り鳥)

の重要な餌資源となっています。

河川や湖沼、干潟など多様な水域

(12)

環境別・東京の環境指標種一覧

この冊子では、環境区分を陸域では「森林」「草地・耕作地」「都市部」

の 3 つに、水域では「河川」、「池沼・水田」、「河口・干潟」の 3 つに

分け、この環境区分別に指標種 100 種を分類群順に掲載しました。た

だし、複数の環境区分にまたがる場合は、どちらか 1 か所にのみ掲載

しています(

の種が複数の環境区分の指標種になっている種です)。

地形区分は、「森林」では山地・丘陵・台地・低地の 4 つに、「草地・

耕作地」と「都市部」では丘陵・台地・低地の 3 つに分けました。 た

だし、必ずしも 1 種が 1 つの地形区分に当てはまるのではなく、複数

にまたがることもあります。

森林の指標種

分類群 種 名 山 地 地 形 区 分丘 陵 台 地 低 地 掲載ページ

植物(木本)

モミ

16

イヌブナ

17

タマアジサイ

18

マメザクラ

19

アズマイバラ

20

シバヤナギ

21

クヌギ

22

コナラ

23

クサボケ

24

スダジイ

25

シラカシ

26

植物(草本)

マメヅタ

27

エイザンスミレ

28

カントウマムシグサ

29

チゴユリ

30

イチリンソウ

31

ムラサキケマン

32

ミズヒキ

33

(13)

分類群 種 名 山 地 地 形 区 分丘 陵 台 地 低 地 掲載ページ

哺乳類

ツキノワグマ

34

ムササビ

35

鳥類

オオルリ

36

オオタカ

37

アオゲラ

38

メジロ

39

オナガ

40

ウグイス

41

虫類・両生類

タゴガエル

42

トウキョウサンショウウオ

43

アオダイショウ

44

昆虫類

ミヤマクワガタ

45

アオカナブン

46

ミヤマカラスアゲハ

47

クロカナブン

48

オオムラサキ

49

ノコギリクワガタ

50

ウラナミアカシジミ

51

カナブン

52

ゴマダラチョウ

53

コクワガタ

54

シロテンハナムグリ

55

甲殻類

ニホンヒメフナムシ

56

クモ類

ジグモ

57

ジョロウグモ

58

貝類

ハコネギセル

59

ヒダリマキマイマイ

60

ミスジマイマイ

61

★ヒダリマキマイマイ、ミスジマイマイは都市部の指標種でもある。

森林の指標種

●代表する地形区分 ○それ以外に分布している主な地形区分

(14)

分類群 種 名 丘 陵地 形 区 分台 地 低 地 掲載ページ

都市部の指標種

植物(草本)

ナガミヒナゲシ

75

メキシコマンネングサ

76

哺乳類

アブラコウモリ

77

鳥類

シジュウカラ

78

ツバメ

79

スズメ

80

爬虫類・両生類

アズマヒキガエル

81

ヒガシニホントカゲ

82

ニホンヤモリ

83

昆虫類

ヤマトシジミ

84

ナミアゲハ

85

クモ類

アダンソンハエトリ

86

貝類

ウスカワマイマイ

74

ヒダリマキマイマイ

60

ミスジマイマイ

61

草地・耕作地の指標種

分類群 種 名 丘 陵地 形 区 分台 地 低 地 掲載ページ

哺乳類

カヤネズミ

64

鳥類

モズ

65

ヒバリ

66

ムクドリ

67

カワラヒワ

68

爬虫類・両生類 ニホンカナヘビ

69

昆虫類

ヒガシキリギリス

70

キアゲハ

71

ベニシジミ

72

クモ類

コガネグモ

73

貝類

ウスカワマイマイ

74

★ ウスカワマイマイは都市部の指標種でもある。

(15)

河口・干潟の指標種

分類群 種 名 掲載ページ

植物(草本)

ヒメガマ

114

ヨシ

115

鳥類

キンクロハジロ

116

キアシシギ

117

ユリカモメ

118

魚類

トビハゼ

119

甲殻類

ヤマトオサガニ

120

貝類

シオフキ

121

河川の指標種

分類群 種 名 掲載ページ

哺乳類

イタチ

87

鳥類

コサギ

88

オオヨシキリ

89

爬虫類・両生類 カジカガエル

90

魚類

オイカワ

91

ホトケドジョウ

92

昆虫類

ハグロトンボ

93

オニヤンマ

94

カワラバッタ

95

ゲンジボタル

96

甲殻類

サワガニ

97

クモ類

アオグロハシリグモ

98

貝類

カワニナ

99

★ イタチ、アオグロハシリグモは 池沼・水田の指標種でもある。

池沼・水田の指標種

分類群 種 名 掲載ページ

哺乳類

イタチ

87

鳥類

カルガモ

102

カイツブリ

103

爬虫類・両生類 トウキョウダルマガエル 104

魚類

モツゴ

105

ミナミメダカ

106

昆虫類

クロイトトンボ

107

ギンヤンマ

108

ショウジョウトンボ

109

ヘイケボタル

110

クモ類

アオグロハシリグモ

98

貝類

ヒメモノアラガイ

111

★ イタチ、アオグロハシリグモは 河川の指標種でもある。

(16)

97 丘 陵 台 地 低 地 水 域 山 地 森   林 都 市 部 草 地 ・ 耕 作 地 河   川 池 沼 ・ 水 田 河 口 ・ 干 潟 黒褐色の個体。礫の間に身を隠している(左)。白みがかった焦 茶色の個体。陸上の倒木の下で見つけた個体(右上)。モクズガ ニの幼ガニ。成体と異なり、鋏に毛がない(右下)。

サワガニ

 多摩川水系の上中流域や、崖がい線せん* 残された樹林内の沢、谷戸*の水路に みられます。体(甲)の色は地域によっ て変化に富んでおり、東京都では、黒 褐(黒紫)色の個体が多いようです。水 質の汚濁に弱いとされ、きれいな水の 指標になります。 川の上流に住むカニ  本種のように川の上流に生息するカ ニの 仲間 はわずかしかいません。海 と川を行き来するモクズガニは、まれ に沢に入り込み、サワガニのように石 の下などに隠れていることがあります。 モクズガニは、サワガニよりもずっと 大きく、鋏はさみに毛が生えていますが、サ ワガニと同大の幼ガニは鋏の毛もない ため、見間違うことがあります。外来 生物のアライグマによる捕食が懸念さ れています。 [ 形態・生態など ] 体(甲)の 色は 色 彩変 異 があ り、赤褐色や灰青 色など多様 である。雑食性で、水生昆虫、 ミミズ、貝、魚の死体、藻類、 水 草などを食べる。湿り気が あれば陸上にも出る。冬には、 水辺から離れた湿った場所の 石の下などに穴を掘り越冬す る個体もいる。産卵期は夏。 [ 大きさ ] 甲幅 25mm 前後 [ 分布の概要 ] 本州、四国、九州 日本固有種 [ みられる時期 ] 主に 4 〜 10 月 エビ目 サワガニ科 めずらしさ 〉〉★ ★ ★

この本の見方

東京(東京都本土部)全体の中で、 どれくらいめずらしいかを 4 段階 (★なし〜★3 つ)で表しました。 ★の多い方がめずらしい生き物です。 [ 形態・生態など ] 表題の種の形態(形や 色の特徴)や生態につ いて記しています。 [ 大きさ ] p.137 に 示 し た 部 位 の長さを記しています。 [ 分布の概要 ] 表題の種の国内分布の 概要を記しています。 [ 花の時期 ] または [ みられる時期 ] 動物の場合は、成体・ 成虫がみられる主な時 期を記しています。 [環境区分] 表題の種が生育・生息 する代表的な環境区分 をタグで示しています。 [地形区分] 表題の種が分布する代 表 的 な 地 形 区 分 を グ レーで示してあります (それ以外の地形区分 にも分布している場合 もあるのでご注意くだ さい)。 表題の種と同じ環境にみられる他の 生き物、または表題の種の幼体や幼 虫、関連するものなどの写真です。 表題の種とともにみられる他の生き物が、なぜ そこに生育・生息するのかや、表題の種にまつ わるさまざまな話題について記しています。

のマークがついた用語は、巻末の用語解 表題の種が東京ではどのような環境 に生育・生息しているかについて記 しています。可能なものは、個体数、 生息地の増減にも触れています。

(17)

東京

環境指標種

(18)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

モミ

 主に南多摩・西多摩 の丘 陵 や山 地

の急な尾根などで、カヤやツガ、アセ

ビなどとともに森をつくります。また、

御神木として神社などに植栽されてい

ます。

クリスマスツリーの木

 日本でモミの木といえばクリスマス

ツリーの木としてお馴染みです。本場

のヨーロッパでは冬も青々としている

針葉樹を神が宿る木として崇

あが

める風習

があり、ドイツトウヒやヨーロッパモミ

などをクリスマスツリーに利用します。

 モミの仲間は世界に 46 種、日本にモ

ミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラ

ビソ、トドマツの 5 種が知られています。

モミと日本産の他種とは、若木の葉先が

2 裂し先が鋭くとがること、球果(松かさ)

をつくる苞

ほうりん

の先端部分が種

しゅ

りん*

の合わ

せ目から突出していることで区別されます。

[ 形態・生態など ]

常緑針葉樹。線形の葉は長さ

15 〜 30mm、 幅 2 〜 3mm

で、先 端がわずかに凹むのが

特 徴。雄 花・雌 花 ともに、前

年 枝 に つ い た 葉 の 腋 に 生じ

る。球果(松かさ)は長さ 6 〜

10cm、 直 径 約 3cm の 円 柱

状で、くすんだ緑色をしている。

材は白色で美しく、清 浄 感 が

あり、棺や卒

塔 婆に用いられ

と ば

る。また、彫 刻、建 築、家 具

としても利用される。

[ 大きさ ]

大きい個体では樹高 30m

[ 分布の概要 ]

本州、四国、九州

[ 花の時期 ]

5 月

裸子植物 マツ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

尾根筋のモミ(左)。

(19)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

イヌブナ(左)。 側脈

イヌブナ

 南多摩や西多摩の山地の斜面の上部

から尾根にかけてみることができます。

出現する標高は同じ仲間のブナより低

く、多くは 500 〜 1700 mの範囲です。

イヌブナは多くの場合、モミやアワブキ、

クマシデなどの樹種と一体となった林を

つくります。高尾山のイヌブナ林が有名

で、標 高 300 〜 500m の 範 囲に出 現

します。

イヌブナとブナの違い

 ブナによく似ていますが、ブナより材

質が劣ることからイヌブナと名づけられ

ました(

「イヌ」= 否(いな)

、違う、役に

立たないの意味)

。また、ブナと比べて樹

皮が黒いことから「クロブナ」という別

称もあります。ブナは樹皮が白く凹凸が

少ないこと、葉の側脈が 7 〜 11 対ある

こと、葉裏の長い絹状の毛が早くに脱落

することなどでイヌブナと区別されます。

[ 形態・生態など ]

落葉広葉樹。樹皮は灰黒色で、

多数のいぼ状の皮目が目立つ。

葉はやや薄い洋紙質で長楕円

形 に な り、 長 さ 5 〜 10cm、

幅 3 〜 6cm。葉の先は鋭くと

がり、基部はくさび形、縁には

波状の鈍い鋸歯がある。側脈

は 10 〜 14 対あり、葉の裏面

に突出する。若 葉 では両 面に

長い軟毛が生 え、やがて表面

は無 毛になり、裏 面脈 上の 毛

は黄 葉時まで残る。葉が展開

するのと同時に花が開く。

[ 大きさ ]

樹高 20 〜 25 m

[ 分布の概要 ]

本 州(岩 手 県・石 川 県 以 西 )、

四国、九州

[ 花の時期 ]

4 〜 5 月

真正双子葉類 ブナ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

(20)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

タマアジサイ

 南多摩、西多摩の山地の沢筋など、

やや湿った環境でみることができます。

昆虫を誘引するための「花」

 タマアジサイという名前は、全体の形

がアジサイに似ており、つぼみが球状で

あることに由来します。花には 2 種類あ

り、一つは雄しべ・雌しべが退化し、萼

がく

が花弁のようになった花で、装飾花と呼

ばれています。もう一つは普通花とい

い、装飾花に囲まれた花序

の中央部分

に多数できる小さな花です。普通花は

花弁が小さい上、すぐ脱落するため、開

花後は紫色で直立する雄しべが目立ち

ます。装飾花は訪花性昆虫を誘引する

働きがあると考えられています。

 タマアジサイ以外に装飾花を持つの

は、同じアジサイ科のヤマアジサイやノ

リウツギ、レンプクソウ科のヤブデマ

リなどです。

[ 形態・生態など ]

落 葉 低 木。葉 は 対生し、長さ

10 〜 25cm、 幅 4 〜 10cm

の長楕円形〜倒卵形。葉の先

は鋭くとがり、基部は円形〜く

さび形で、縁には歯牙状の細か

い鋸歯がある。両面とも触ると

ざらざらする硬い毛がある。花

期は 7 〜 9 月、枝先に直径 10

〜 15cm の 散 房 花 序 を 出 す。

装飾花は白〜紫色で、萼片は 3

〜 5 個で長さ 7 〜12mm。両

性花

は紫色である。開花前の

花序は総苞

に包まれ、球形を

している。

[ 大きさ ]

樹高 2m

[ 分布の概要 ]

本州

[ 花の時期 ]

7 〜 9 月

真正双子葉類 アジサイ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

花期のタマアジサイ。離脱した花 弁が葉の上に落ちている(左)。 開花前のつぼみ。多数の花からな る(右)。

(21)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

花期のマメザクラ (左)。 葉の縁はギザギ ザの上にさらに 細かいギザギザ が入り(重鋸歯)、 切れ込んだ状態 (欠刻状)になる (右)。

マメザクラ

 北多摩、南多摩、西多摩の丘陵から

山地にかけてみられます。

フォッサ・マグナ要素の植物

 日本の国土は南北に細長いため、亜

熱帯から寒帯にいたる気候がみられま

す。さらに降 水 量 や 積 雪 量、土 壌な

ど地域により異なっています。そのた

め、限られた一部の地域だけに偏った

分布をしている植物も少なくありませ

ん。マメザクラもその一つで、

「フォッサ・

マグナ地域」と呼ばれる、富士・箱根・

伊豆・八ヶ岳などの地域に生えていま

す。これらの地域に偏在する種のこと

を「フォッサ・マグナ要素」と呼んでい

ます。フォッサ・マグナ要素の植物とし

ては、マメザクラのほかに、ハコネラン、

ウメウツギ、カナウツギ、ハコネコメツ

ツジ、フジアザミなどがあります。

[ 形態・生態など ]

落葉小高木。樹皮は暗灰色で、

浅く不規則に割れて皮目が点在

する。葉 は 互 生し、長さ 2 〜

5cm とサクラの仲間の中では

最も小さく、倒卵形〜卵形。葉

の先端は尾状に長くとがり、基

部はまるく、縁には欠刻状の重

鋸歯がある。葉 柄は長さ 5 〜

9mm で、斜めに生えた毛が多

い。蜜

み つ

せ ん*

は普通、葉身側につ

く。開花は葉の展開前かほぼ同

時。前年枝の葉腋に白色または

淡 紅色の花が散 形 状に 1 〜 3

個つく。

[ 大きさ ]

樹高 3 〜 8m

[ 分布の概要 ]

本州(関東地方、中部地方)

[ 花の時期 ]

3 月下旬〜 5 月上旬

真正双子葉類 バラ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

(22)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

ア ズ マ イ バ ラ (左)。 アズマイバラと ノイバラの托葉 の比較。いずれ も托葉は葉柄に 合着し、縁に腺 歯があるが、切 れ込み方は全く 異なる(右上)。 テリハノイバラ (右下)。 撮影:畔上能力 撮影:畔上能力 アズマイバラ ノイバラ

アズマイバラ

 北多摩、南多摩、西多摩の丘陵から

山地にかけてみられます。

「イバラ」と総称される低木のバラ

 「イバラ」とはノイバラとそれに似た

テリハノイバラ、ヤブイバラ、モリイバ

ラなどの低木性の野生バラを漠然とい

う名称です。アズマイバラという名は、

東国(関東地方〜東海地方)に限られ

ていることに因

ちな

みます。ノイバラは托

たく

よう

が櫛

くし

の歯状に深く切れ込み、しかも

その切れ込みの先が腺になって終わり

ます。アズマイバラの托葉は縁に間隔

をおいてふぞろいの突起があるだけで、

櫛の歯状には切れ込みません。ヤブイ

バラはアズマイバラに類似しています

が、葉の表面に毛が生えています。また、

テリハノイバラは葉の表面に光沢があ

ることや、茎が長くはって伸びることで

見分けることができます。

[ 形態・生態など ]

落葉低木。地際で枝分かれし、

斜めに伸長するが、枝には鉤

か ぎ が た

のトゲがあり、他のものに寄り

かかって伸びるものも多い。托

葉の縁にはまばらに腺歯がある。

葉は互生し、長さ 5 〜 8cm に

なり、奇数羽状複葉で、5 〜7

小葉からなる。頂小葉は長さ 2

〜 4cm の卵状楕円形で、側小

葉より大きい。縁には鋭い鋸歯

がある。やや厚く、表面は少し

光沢があり、両面とも無毛。花

は白く、直径 2 〜 3cm で、枝

先に 2 〜 4 花をつける。

[ 大きさ ]

樹高 2m

[ 分布の概要 ]

本州(宮城県〜愛知県)

[ 花の時期 ]

5 〜 6 月

真正双子葉類 バラ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

(23)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

シバヤナギ

 主に丘陵地の日当たりのよい乾きや

すい崖地や斜面に生育していますが、

丘陵地の谷戸

の、草刈りが行き届い

た斜面にも出現します。

多様な植物を育む「裾

すそ

り」

 丘陵地の谷戸を利用した田んぼでは、

「裾刈り」と呼ばれる草刈りが行れてき

ました。これは田んぼに日光を十分取

り込めるよう、周辺斜面の草木を刈る

作業のことをいいます。裾刈りででき

た草地は樹林と水辺をつなぐ植生の推

移ゾーンになっていて、樹林地の植物と

草地の植物、それに湿地の植物が入り

混じって生えています。丘陵地に生育し

ているシバヤナギの多くが、このような

裾刈り草地でみることができます。

 シバヤナギの花序

は細長く、しかも

花が少し間隔をおいてついているのが

特徴的です。

[ 形態・生態など ]

落葉 広葉低 木。多くの枝をつ

くり、水平状に伸びる小 枝を

持つ。葉は互生し、長楕円形で、

長 さ 4 〜 12cm、 幅 1.3 〜

4cm になり、先端は尾状に伸

び、縁には短い鋭い鋸歯が出

る。開花は葉の展開と同時で、

花序は長さ 3 〜 9cm になる。

雌雄異株で、雌株と雄株がある。

[ 大きさ ]

樹高 1 〜 2m

[ 分布の概要 ]

関東地方南部〜愛知県

[ 花の時期 ]

4 月

真正双子葉類 ヤナギ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

斜面に生えるシバヤナギ(左)。 裾刈りされた谷戸(右)。

(24)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

クヌギ

 武蔵野の雑木林を代表する樹木の一

つです。薪や炭として利用され、今で

も丘陵地や台地を中心に、区部から西

多摩の山地にいたる広い範囲でみるこ

とができます。

樹液を出し、ドングリがなる木

 縦長の深い裂け目のある、灰褐色の

暗い樹肌が特徴的で、樹液には昆虫が

よく集まります。クヌギとクリは葉がよ

く似ていますが、クリは葉の縁の鋭い

鋸歯が針状の部分まで緑色をしており、

クヌギのそれは緑色を欠き、半透明で

す。球形のドングリはムササビやリス

類、ネズミ類が食べます。

 西日本に多いアベマキはクヌギに類似

し、よく似たドングリがなります。クヌギ

の葉は、成熟すると裏面の毛は脱落して

無毛になりますが、アベマキでは毛は落

ちずに残り、ずっと白色をしています。

[ 形態・生態など ]

落 葉 広 葉 樹。葉は互 生し、長

楕 円 形 で、 長 さ 8 〜 15cm、

幅 3 〜 5cm に なる。葉 の 縁

はやや波打ち、先 端には針状

の鋸歯がある。葉の表面は無

毛、 裏 面は緑色で脈状と脈 腋

を除き無毛となる。果 実は堅

で あり、直 径 2 〜 2.3cm

の 球 形 で、 翌 年 の 秋 に 熟 す。

堅果の下半分を被う殻斗

には

線状の鱗

り ん

ぺ ん

よ う*

が密生する。

[ 大きさ ]

樹高 15 〜 20m

[ 分布の概要 ]

岩手県・山形県以南

[ 花の時期 ]

4 〜 5 月

真正双子葉類 ブナ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

クヌギ(左)。

(25)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

コナラの葉は先端に近い部分が最大幅になる(左)。 コナラ クヌギ

コナラ

 区部から西多摩の山地にいたる広い

範囲に分布しています。武蔵野の雑木

林を代表する樹木の一つです。

コナラとクヌギの違い

 コナラはシイ(スダジイ)林やシラカ

シ林を伐採した後に生じる、二次林を

代表する樹種で、雑木林をつくります。

コナラやクリなどは伐採後に切株から

多くの芽(萌芽)が現われ、それを幹

に仕立てて作られた人工的な林が雑木

林で、萌芽林あるいは萌芽再生林とも

いいます。地際から複数の幹が叢

そう

せい

(株

立ち)しているのが雑木林の特徴です。

雑木林にコナラが多いのは、炭として

質がよく、萌芽性もよいためで、古く

からコナラは薪や炭の原料として用い

られてきました。

 秋になるドングリは多くの動物たち

の貴重な食料となります。

[ 形態・生態など ]

落 葉 広 葉 樹。葉は互 生し、倒

卵 形で、長さ 5 〜 15cm、幅

4 〜 6cm になり、縁には鋭く

粗い鋸歯がある。葉の表面は

無毛、裏 面は灰褐色で伏毛が

生える。果実は堅果

、長楕円

形で、長さ 1.6 〜 2.2cm。そ

の 年 の 秋に熟す。樹皮は、割

れ目の底部に白色で平滑な部

分が 現われるため、樹肌に縦

方向の白筋が目立つ。

[ 大きさ ]

樹高 15 〜 20m

[ 分布の概要 ]

北海道〜九州

[ 花の時期 ]

4 月下旬

真正双子葉類 ブナ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

(26)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

クサボケ

真正双子葉類 バラ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

クサボケ( 左 )。 撮影:畔上能力

[ 形態・生態など ]

落葉小低木。幹は地をはうかま

たは斜上してよく分枝し、小枝

はトゲになる。葉は互生し、長

さ 2 〜 5cm、 幅 1 〜 3.5cm

で、 倒卵形〜広倒卵形で鈍頭ま

たは円頭。基部はくさび形で縁

には鈍い鋸歯がある。両 面と

も無毛で扇形の托葉が目立つ。

葉腋に朱赤色の花が 4 〜 5 個

つく。花には両性花

と雄花が

あり、雄花には両性花にある 5

つの雌しべがない。秋に黄 色

で洋 梨 状の果 実が実り、果 実

は長さ10cm になることもある。

[ 大きさ ]

樹高 30 〜100cm

[ 分布の概要 ]

本州、九州

[ 花の時期 ]

4 〜 5 月

 区部から西多摩の明るい雑木林の林

床や草地環境でみることができます。

ボケとクサボケ―その名の由来

 同じ仲間であるボケは中国原産の観

賞用の園芸植物です。クサボケは在来

の野生種です。両種とも観賞に用いら

れています。クサボケはボケのように

高さが 1m を超えることはありません。

花色もクサボケは朱色に近く、ボケは

紅色に近いという違いがあります。ち

なみにボケの名は中国名の木

も っ か

瓜がな

まったものといわれています。クサボ

ケにはシドミという別名もあります。

 果 皮には細 胞 膜が 石のように硬く

なった石細胞があります。石細胞は普

通、植物の果皮に多くみられますが、

果肉にみられることもあります。例え

ばナシのシャリッとした食感は果肉に

石細胞があるからです。

(27)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

スダジイ

 区部から西多摩の山地にいたる広い

範囲でみられ、常緑で極相林

の林冠

をつくる樹木です。また、公園や庭園、

神社などに植栽されています。

「シイ」のドングリ

 東京で「シイ」「シイノキ」といいえ

ばスダジイですが、関東地方南部以西

の西日本では同じ仲間のツブラジイ(別

名コジイ)もそう呼ばれています。

 日本の常緑広葉樹林はシイ・カシ類や

タブノキ、モチノキといった常緑樹を主要

木とした森林で、照葉樹林と呼ばれるこ

とがあります。照葉樹林は日本から南と

南西方向に広がり、赤道を越え、オース

トラリア北部に広がっています。照葉樹

林には共通した植物も多く、この森林の

発達した地域には文化的にも共通する

ものがあることが明らかにされていま

す。

[ 形態・生態など ]

常 緑 広 葉 樹。葉 をよく茂らせ

てまるみのある大きな樹冠

形 成 する。葉 は互 生 で、2 列

に並びやや斜め下向きにつく。

葉 身 は 楕 円 形 で、 長 さ 5 〜

15cm、 幅 2.5 〜 4cm の 広

楕円形で厚い革質である。先

端は急に細くなり尾 状に伸び

る。全 縁 もしくは上半 部に波

状の鋸歯がある。果実は堅果

で、 長さ 1.2 〜 2cm の卵状長

楕円形で、食べられる。

[ 大きさ ]

大きいものでは樹高 20m 以上

[ 分布の概要 ]

本 州(福 島 県・新 潟 県 以 西 )、

四国、九州

[ 花の時期 ]

5 月下旬〜 6 月

真正双子葉類 ブナ科

めずらしさ 〉〉

★ ★ ★

スダジイ(左)。 スダジイの実(ドングリ)(右)。

(28)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

シラカシの葉と花。シイ・カシ・ナラ類は小さな花が穂のようになっ

シラカシ

 区部から西多摩の山地にいたる広い

範囲にみられます。また、公園や庭園

などにも植栽されています。

「カシ」のいろいろ

 普通、東京など関東で「カシ」とい

えばほとんどの場合はシラカシを指し

ています。しかし、東海地方ではウラ

ジロガシ、山陰地方ではアラカシ、四

国と九州ではアカガシやイチイガシを

指すそうです。

 シラカシはアラカシによく似ていて、

区別が難しいことがあります。国外に

は同種とみる専門家もいるくらいです。

アラカシの葉は裏面が淡い褐色になり、

縁の上半分にだけ鋸歯が現われます。

シラカシの葉は裏面が淡い緑色で、鋸

歯は目立ちませんが全周にあります。

[ 形態・生態など ]

常緑広葉樹。幹の直径は 80cm

ほどになる。葉は互生し、狭長

楕円形で、長さ 7 〜14cm、幅

2.5 〜 4cm になり、やや革質。

先端は鋭くとがり、基部はくさ

び形、全周に浅くてやや鋭い鋸

歯がまばらに出る。花は新枝の

下部や前年の葉 腋から出る短

枝 から垂れ下がる。果 実は堅

で、長さ 1.5 〜1.8cm の卵

形である。

[ 大きさ ]

樹高 20m

[ 分布の概要 ]

本 州(福 島 県・新 潟 県 以 西 )、

四国、九州

[ 花の時期 ]

5 月

真正双子葉類 ブナ科

めずらしさ 〉〉

★ ★ ★

(29)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

マメヅタ

 主に山地の湿った岩上や樹上に生え

ています。まれにコンクリート法

のりめん

ど、人工的な環境下に生えていること

があります。

着生シダ植物

 東京でみられる他の着生シダ類とし

ては、シノブ、ミツデウラボシ、ノキシ

ノブ、イワオモダカなどがあります。こ

れらの着生シダ類は樹木や岩に付着し

ているだけで、他の植物の内部に侵入

し栄養を吸収する寄生植物とは区別さ

れます。

 マメヅタを含め着生シダ類は乾いた

場所には少なく、うっそうとした森の

中や、川沿いや沢の近くの空中の湿度

が高い立地でよくみられます。

[ 形態・生態など ]

樹木や岩に着生するシダ植物。

根茎は径約 1mm、細く長くは

い、不規則に分岐し、まばらに

葉をつける。葉には栄養葉

胞子葉

があるが、いずれも全

縁で肉厚。栄養 葉は円形〜楕

円形で長さ 1 〜 2cm、幅 1 〜

1.5cm。胞子葉は線 形〜へら

形で、長さは普通 2cm くらい

で幅 2 〜 5mm、胞子嚢群

葉の裏面主脈の左右に縦に伸

びるようにつく。

[ 大きさ ]

栄養葉は長さ 1 〜 2cm、幅 1

〜1.5cm、胞子葉 の 長さは普

通 2cm くらい、幅 2 〜 5mm

[ 分布の概要 ]

東北地方南部以南〜南西諸島

[ みられる時期 ]

周年

シダ植物 ウラボシ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

マメヅタ(左)。 樹木の幹いっぱいに着生する(右)。

(30)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

エイザンスミレ

真正双子葉類 スミレ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

花期のエイザンスミレ(左)。 撮影:畔上能力

[ 形態・生態など ]

多年 草。葉は 3 全裂し、さら

に側葉が 2 裂して鳥

と り あ し

足状にな

る。花後は長さ幅ともに大きく

なる。花期は 3 〜 5 月、直径

2cm の淡紅色〜白色の花を咲

かせる。側弁は有毛で、距

き ょ*

や や 太く、 長 さ 6 〜 7mm で

ある。また、花 は 香りのよい

ものがある。

[ 大きさ ]

草高 5 〜15cm

[ 分布の概要 ]

本州、四国、九州

[ 花の時期 ]

3 〜 5 月

 南多摩、西多摩の丘陵地と山地の林床

や落葉広葉樹林の林床などでみること

ができます。

アリが種を運ぶ

 植物は子孫を残し繁栄を続けるため

に、種子を散布する仕組みを発達させ

ています。風や水流を利用するもの、

動物にくっつけて運んでもらうものな

どさまざまです。スミレの仲間は、種

子をアリに運んでもらう「アリ散布」と

いう方法を採用しています。スミレの

種子の表面には「エライオソーム」と

いうアリの餌になる小さな付属物があ

ります。これがアリを誘引して種子を

巣まで運ばせます。巣まで運ばれた種

子はエライオソームだけがアリの餌に

なり、種子そのものは巣の外に捨てら

れます。そして種子はやがて芽を出し、

新しい個体へと成長していくのです。

(31)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

カントウマムシ グサ。ムラサキ マムシグサとも 呼ばれてきた偽 茎が紫色がかっ た株(左)。 偽茎が緑色の株 (右)。

カントウマムシグサ

単子葉類 サトイモ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

 北多摩、南多摩、西多摩の林床など

でみることができます。

性転換をする植物

 カントウマムシグサはサトイモの仲

間のテンナンショウ属の一員です。テ

ンナンショウ属の植物は種子から発芽

して、ある程度の大きさに成長するま

での何年間かは、 葉だけで過ごします。

地下茎(イモ)がある程度の大きさに

なると開花して雄花だけの雄株になり

ます。さらに成長して地下茎に栄養分

が貯まると、その株は雌花だけを持つ

雌株に転換します。しかし、一度雌性

になった株でも、地下茎が縮小して小

さくなると再び雄株に戻ることもあり

ます。つまりテンナンショウ属の仲間

は栄 養状態によって雄 雌 性が 変化す

る、 いわゆる性転換をする植物なので

す。

[ 形態・生態など ]

外形 の 変 異 が 著しい 多年 草。

筒状の葉

よ う

しょう

が重なり茎 のよう

に見える偽茎には、紫褐色の

斑 点 が あ る。葉 は 2 個 つ き、

小 葉 は 7 〜 15 個 で あ る。花

期 は 4 〜 6 月で、仏

ぶ つ え ん ほ う

炎 苞

淡緑色〜淡柴色で白い筋があ

る。舷

げ ん

部(

花弁の広がった部分

は長く伸び、筒部をおおう。花

の付属体は 6 〜 7mm。

[ 大きさ ]

草高 30 〜 80cm

[ 分布の概要 ]

本 州( 関 東 地 方以 西 )、四 国、

九州

[ 花の時期 ]

4 〜 6 月

(32)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

花期のチゴユリ(左)。 雑木林に生える花の白い同じイヌサフラン科のホウ チャクソウ(右)。

チゴユリ

 北多摩、南多摩、西多摩の雑木林な

ど、落葉広葉樹林の林床や林縁などに

生えています。

春の雑木林を彩る白いユリ

 チゴユリはユリに似て小さく、

「稚児ユ

リ」の名前は、その小さくかわいらしい

姿に因

ちな

んでいます。樹林に被われた丘

陵や台地などの平坦地や斜面に生育し

ますが、そこにはホウチャクソウやナル

コユリも生えていることがあります。ホ

ウチャクソウの名前は、寺院などの軒下

に吊り下がっている宝鐸(ほうたく、ほ

うちゃく)に花の形が似ていることから

名づけられました。ナルコユリは花が茎

から垂れ下がる様子を鳴子(田畑を野

鳥の食害から守るための音が出る道具)

に因んだ命名だと思われます。いずれ

のユリも春、雑木林の落葉広葉樹が葉

を広げ始めた直後から花を開きます。

[ 形態・生態など ]

多年 草。茎は枝 分かれしない

か、ときに分枝 する。葉 は長

さ 4 〜 7cm で楕円形または長

楕 円 形で、表 裏とも無 毛。縁

に半円形の突起があり、柄は

ほとんどない。花期は 4 〜 5

月、茎頂に 1 〜 2 個の白色の

花をつける。花

へ ん*

は長さ約

1.5cm の 披 針 形で、6 個が広

鐘状に開く。

[ 大きさ ]

草高 20 〜 30cm

[ 分布の概要 ]

本州、四国、九州

[ 花の時期 ]

4 〜 5 月

単子葉類 イヌサフラン科

めずらしさ 〉〉

★ ★ ★

撮影:畔上能力

(33)

 

草 地 ・ 耕 作 地

 

イチリンソウ

 北多摩、南多摩、西多摩の雑木林の

林床や樹林の林縁などに生える多年草

です。早春の限られた時期にだけ花な

ど地上部が姿を表わします。

スプリング・エフェメラル

 落葉樹が展葉

する直前は太陽の光が

林床にもよく届き、温度がある程度高く

なります。イチリンソウはその時期に花

を咲かせ、夏には地上部が枯れて、その

後は地中で春の訪れを待ちます。このよ

うな植物を早春植物またはスプリング・

エフェメラルと呼びます。イチリンソウ

のほかに同じキンポウゲ科のニリンソウ

やセツブンソウ、ユリ科のカタクリなど

がそうです。早春植物は成長に直射光を

必要とするため、葉が茂った林床では暮

らせません。落葉広葉樹林では春の展

葉前まで直射光が差し込むため、早春

植物に向いた環境が生まれるのです。

[ 形態・生態など ]

多年 草。根 茎は横にはい、茎

は太く直立する。根

こ んしゅつ

よ う*

は 1

〜 2 回 3 出複葉で、小葉は羽

状に深裂し、裂片は欠刻する。

茎葉は 3 枚が輪生し、多少鞘

さ や

状に広がった葉 柄がある。花

期は 4 〜 5 月、茎頂に花茎を

2 〜 3 個立て、先 端に直径 約

2cm の白色花を咲かせる。

[ 大きさ ]

草高 10 〜 25cm

[ 分布の概要 ]

本州〜九州

[ 花の時期 ]

4 〜 5 月

真正双子葉類 キンポウゲ科

めずらしさ 〉〉

★ ★

花期のイチリン ソウ(左)。 ニリンソウ(右)。

参照

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