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シオフキ

ドキュメント内 東京の環境指標種100 (ページ 123-129)

シオフキ

 湾内の砂質干潟に生息しています。

東京湾では、海底付近の酸素が少ない 海水が海面付近に湧き昇り海水が青白 くなる現象が、湾の奥で夏〜初秋にか けてみられることがあります。

 この現象は「青

あおしお

潮」と呼ばれています。

青潮が発生すると、本種を含む多くの 水生生物が影響を受けて大量死する場 合があります。

砂質干潟の貝類

 湾内の砂質干潟にはアサリ、サルボ オ、ホソウミニナ、アラムシロなどの貝 類が多く生息しています。

 シオフキ、アサリ、サルボオなどの 二枚貝は海水を大量に濾

過することか ら、水質浄化に役立っています。

[ 形態・生態など ]

三 角形 をしており、殻は全 体 的に丸みを帯びている。殻

か くひょう

表 には明らかな成長肋

ろ く

が密にあ る。湾内の砂質干潟に生 息す る。繁殖期は 5 〜 9 月。えら に粘液 が多く、砂抜きが 難し いことから、食材としてはアサ リに比べるとあまり人 気が な い。

[ 大きさ ] 殻

かくちょう

長 40mm [ 分布の概要 ] 本州、四国、九州 [ みられる時期 ] 周年

マルスダレガイ目 バカガイ科

めずらしさ

★ ★ ★

小笠原の島々は海岸から急傾斜に なっている場所が多い(母島)。

 ここでは視点を少し変え、本土 から離れた島々の自然環境と生き 物を紹介します。まずは世界自然 遺 産の小笠 原諸島、そして、伊豆 諸島についても触れます。いずれも 行政区分上は東京都に属しますが、

本書で紹介する「東京」の自然とは だいぶ異なります。

■ 小笠原諸島の成り立ち

 2011 年、小笠原諸島は日本で 4 番目の世界自然遺産に登録されました。

登録の理由の一つは「独自に進化した特異な生態系」でしたが、この生態 系はどのように成り立ったのでしょうか。それには小笠原諸島が海洋島で あったことが大きく影響しています。

 海洋島とはどのような島のことでしょうか。海洋島とよく対比されるのは、

大陸とつながったことのある島、例えば本州や南西諸島といった大陸島で す。それに対して、海洋島は一度も大陸とつながったことがない島のことで す。東京から 1000㎞ほど離れた絶海の孤島・小笠原諸島は海洋島なのです。

■ 海洋島の生き物から進化の過程がみえてくる

 島ができてから現在にいたる長い間、海洋島にたどり着けるのはごく限 られた生き物だけでした。それらの生き物の多くは、隔離された環境で先 住者のいないさまざまなニッチ(生態的地位)に適応した結果、小笠原諸 島固有の生き物へと進化しました。特に陸産貝類と維管束植物で固有種の

世界自然遺産・小笠原諸島、生き物の

分布が興味深い伊豆諸島 ―東京都の島嶼

し ょ

割合が非常に高く、さまざまな進化の過程がみられることが、世界遺産登 録の際に高く評価されました。

■ 海洋島の生態系は特殊で脆弱

 海洋島は固有種が多い一方、動植物相のバランスが大陸島とはかなり異 なります。例えば外来種を除くと裸子植物はシマムロのみ、哺乳類はオガ サワラオオコウモリと過去に 1 例だけ確認があるオガサワラアブラコウモ リのみ、爬

虫類はオガサワラトカゲとミナミトリシマヤモリのみで、両生類 はもともといませんでした。

 このように限られた生き物どうしが生態系をつくるため、独自な生態系 ができ上がります。例えば小笠原諸島にはミミズがいないため、分解者

の役割を陸産貝類や甲殻類が担いました。また、肉食の哺乳類がいないた め、大型捕食者を頂点としない生態系が成立しました。このことは、小笠 原諸島の生態系は、外来の捕食者が現れるとすぐ壊れてしまう脆弱な生態 系であるともいえます。

■ 小笠原諸島を代表する生き物

[ マルハチ ]

 木生シダで、葉が脱落した後にできる 幹の模様が円の中に逆さにした漢字の

「八」を書いたようにみえることから、こ の名がつきました。母島の乳房山などに 群生地があります。

[ アホウドリ ]

 明治時代以降に羽毛をとるために乱 獲され、個体数が激減しました。当時は それほど個体数が多かったのです。戦後 まもなく伊豆諸島の鳥島に生き残った少

マルハチ:円内は名前の由来となった幹の模様。

アホウドリ:小笠原諸島での繁殖が期待され

数の個体をもとにして保護増殖事業が始まり、約 3000 羽がみられるほど に復活しました。また 媒

なこうど

島でも繁殖の可能性が高くなっています。

[ マボロシオオバッタ ]

 1984 年以降の標本がなく、本種が新 種記載された 2003 年にはすでに絶滅 していたのかもしれません。標本が研究 機関に残されていたことで、本種の存在 が世に知られるようになりました。この ことは、 「生き物を採集して標本を保存し ておくこと」の重要性を物語っています。

■ 外来種の脅威

 小笠原諸島の生態系は壊れやすいと いうことを書きました。残念ながら、そ れは現実となっているのです。

 人の手によって小笠原諸島に持ち込ま れた外来種の中には在来種の生存の脅 威になっているものが多くいます。捕食 者では、ネコ(⇒鳥類)、クマネズミ(⇒

陸産貝類や水鳥類)、オオヒキガエル(⇒

地表性の小動物)、グリーンアノール(⇒

昼行性の昆虫類)、ニューギニアヤリガ タウズムシ(⇒陸産貝類)などです(( ) 内は被食者)。

 グリーンアノールは主に樹上で活動し、

樹上性・飛翔性昆虫をはじめとした節 足動物に壊滅的な打撃を与えているト カゲです。駆除しても追いつかないほど

マボロシオオバッタ:現在もどこかで生き残っ ているだろうか。

グリーンアノール:トンボ、チョウ、コウチュ ウなどさまざまな昆虫を食べる。

ニューギニアヤリガタリクウズムシ:陸産貝 類をはじめ、陸生ウズムシ類などを捕食する。

ヤスデ、ヤモリの死体を食べた観察例があり、

食性は幅広いと考えられている。世界各地に 移入され、陸産貝類を絶滅の危機に追いやっ 所蔵:北海道大学農学部昆虫体系学教室

の個体数が父島・母島に生息しており、ついに 2013 年には兄島でも確認 されました。

 また、家畜として持ち込まれたノヤギは植生を破壊し、在来植物に打撃 を与えてきました。その結果、それらの植物に依存していた動物を含む生 態系は大きな影響を受けてきたのです。そこで、ノヤギを排除する努力が 続けられ、聟

むこ

島のように排除に成功した島では植生が回復しています。と ころが今度は、防除が難しい外来植物のギンネムが勢力を拡大してきつつ あります。これが外来種対策の難しいところです。

■ 伊豆諸島の特異な生き物

 伊豆諸島の生き物は距離的に近い本 州からやってきた祖先が起源と考えられ る場合が多いのですが、祖先が琉球列 島から渡ってきたと考えられる種もいま す。また、近年の分子系統学的手法に より、オカダトカゲのように島から本土 への再移住も行われたと考えられる生

き物もいることが分かってきました。さらに、わずかながら、分布が特異 な生き物もいます。例えば、近縁種が日本でなく中国にいるミクラミヤマ クワガタです。

 ミクラミヤマクワガタは御蔵島と神津島のみに分布するクワガタムシで す。頭部の耳状突起や大顎

あご

の発達度が弱く、地上を徘徊し樹液に来ないと いう生態的な特徴があります。本種は形態的特徴から系統的には本土や奄 美の種よりも中国の種に近いと判断されるため、当初は、本種の祖先が中 国大陸から日本本土経由で伊豆諸島に侵入し、その後、本土で絶滅して御 蔵島と神津島に取り残されたという説が有力でした。しかし、DNA 解析 によると遺伝的距離が中国産の種と非常に近いため、地史的に新しい時代 に祖先が中国からやってきた可能性があるのです。そのため、古黄河の大 氾濫によって伊豆諸島に流されてきた可能性も挙げられています。

ミクラミヤマクワガタ:地上を徘徊して移動 する。

外来種とは?

 野生生物は、本来持つ移動能力や気候や地形などの条件によって、生息 できる地域が制限されています。しかし、めずらしい動物や昆虫がペット として輸入されたり、植物が鑑賞や栽培などの目的で持ち込まれたりする ことが増えた結果、こうした動植物の放逐や逃避、逸

いっ

しゅつ

などにより、本来 その地域に生息しないはずの生物が定着してしまうケースが増えています。

このように国内外を問わず動植物が持つ本来の移動能力を超えて、意図的・

非意図的に移動させられた生物は「外来種」と呼ばれ、その地域に固有の 生物である「在来種」と区別されます。日本の野外に生息・生育する外来 種は、わかっているだけで約 2000 種にもなります。

 こうした外来種の中には、私たちの生活の中で身近な生き物として親し まれているものもあります。ペットとしてよく見かけるミドリガメは標準 和名を「ミシシッピアカミミガメ」といい、1950 年代以降アメリカからペッ トとして輸入されています。また、釣り魚として有名なオオクチバス(ブ ラックバス)やニジマス、水田や水路にいるアメリカザリガニ、市街地で 見かけるタンポポの多くもセイヨウタンポポという外来種です。

 このほかにも、漁業や農業のために導入された種、害獣や害虫などを駆 逐する天敵として導入された種など、私たちの周囲には、さまざまな外来 種が存在しています。

 しかし、こうした外来種の定着が、近年、大きな問題として注目を集め ています。

        失われる地域固有の生態系

 地域固有の生態系は、長い期間をかけて在来種間で食う・食われるといっ たことを繰り返し、微妙なバランスのもとで成立しています。ここに外か

外来種:概論と紹介

外来種により生じる問題

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