■ 公園の池のミシシッピアカミミガメ
石神井、善福寺、井の頭など主要な公 園の池にはイシガメやクサガメのほか、
外来種のミシシッピアカミミガメが多く みられます。ミシシッピアカミミガメは 公園の池のほか多摩川やその支流なども 含め、多くの水域に定着しています。ミ シシッピアカミミガメが定着している場
所の特徴としては、「市街地に近い水域」であることが挙げられます。縁 日やペットショップで購入、飼育していた「ミドリガメ」が大きくなり、
飼いきれなくなった飼い主が「善意で」近くの水域に放してしまうことが 原因と考えられます。
ミシシッピアカミミガメは同所的に生息するイシガメなどの生息場所を 奪っている可能性があるため、安易な放逐は避けなければなりません。
■ 東京のゲンジボタル ― たとえ国内からの移入でも問題
ゲンジボタルは遺伝子のミトコンドリア DNA
*のタイプによって 6 つの グループ(東北、関東、中部、西日本、北九州、南九州)に分けられます。
東京にもともといたのは「関東型」のグループですが、東京都内の 21 か 所でミトコンドリア DNA を調べたところ、関東型のみだったのは 6 か所 で、それ以外は西日本型や中部型が混在しており、関東型が全くいない場 所もありました(鈴木 , 2001)。西日本型や中部型が広く混在しているこ とは、それらの遺伝子を持つ他地域の個体が人為的に移入され定着した可 能性を示しています。
ところでもし、もともとホタルが生息している場所に他地域の雌を種
たね外来種により生じる問題
東京における実例
ミシシッピアカミミガメ
[東京都におけるゲンジボタルの遺伝子型分布](鈴木 , 2001 を改変)
お魚ポスト(稲田公園):飼いきれなくなっ た魚を引き取り、里親を探す取り組みが 行われている。
ボタル(繁殖させるときの元となる個体)として持ってきた場合、どのよ うなことが起こるでしょうか。ミトコンドリア DNA は母性遺伝するため に、他地域のミトコンドリア DNA の遺伝子は急速に広がる可能性が非常 に高いと言われています。そのため、種ボタルを導入すると、長い年月を かけて獲得したその地域に固有の遺伝的特徴をあっという間に失わせてし まう原因になりうるのです。
■ タマゾン川と化した多摩川
観賞用やペットとして飼われていた外 国産の生き物が日本の河川に放され、生 態系を脅かしています。とりわけ多摩川 は人口密集地の東京・神奈川を流れる都 市河川であることから投棄や放流も多く、
今では 200 種類を超える外来魚が住み ついていると言われています。その中に
は南米原産の熱帯魚も多く、「まるでアマゾン川のようだ」ということで、
出典 : 鈴木浩文 (2001) ホタルの保護・復元における移植の三原則―東京都におけるゲ ンジボタルの遺伝子調査の結果を踏まえて―. 全国ホタル研究会誌 , (34): 5-9.
今では「タマゾン川(多摩ゾン川)」と呼ばれるようになってしまいました。
多摩川に外来種が増えた理由の一つは、ブラックバスやブルーギルにみ られるように、釣り人たちが自分たちの趣味のために違法に外来魚を放流 したもの。二つ目は、ペットとして飼っていた熱帯魚やカメなどを投棄し たものです。大きくなって飼えなくなった、餌代が高い、興味が無くなった、
別の品種を買うために以前のものが邪魔になった…理由はさまざまでしょ うが、飼い主からすれば、かわいがって育てていたペットを殺すには忍び なく、自然いっぱいの多摩川に「逃がしてやる」といった優しい気持ちな のでしょう。このような誤った感覚により、今では 200 種を超える外来 魚が確認されるに至っています。
人の生命・身体への危害
毒を持っている外来種にかまれた り刺されたりする危険があります。
身近な例ではセアカゴケグモの咬傷 による被害があります。重症化した 場合には抗毒素血清による治療が必 要になります。国内では死亡した例 はありませんが、血清開発以前にオー ストラリアで死者が出ています。
セアカゴケグモは今年、東京都でも初めて確認され、関東 1 都 6 県全て で記録があることになりました。1995 年に大阪で確認されて以来、確実 に分布を拡げているので注意が必要です。ただし、セアカゴケグモは攻撃 的ではないため見つけても慌てずに対処すれば、かまれることはまずあり ません。
< 参考文献 > Braitberg, G. & L. Segal, 2009. Spider bites: Assessment and management.
Australian Family Physician, 38(11): 862-867.
外来種により生じる問題
セアカゴケグモ(雌)
農林水産業への影響
外来種の中には、畑を荒らした り、漁業の対象となる生物を捕食し たり、危害を加えたりするものもい ます。
東京都内ではアライグマやハクビ シンによる農作物の被害の例があり ます。東京都環境局がまとめた資 料によると、平成 23 年度の東京都 における獣類による農業被害金額の うち、ハクビシンによる被害金額は 699 万円でイノシシに次いで 2 番 目に大きく、全体の 2 割を占めて います。アライグマによる被害金額 は 6 万円でハクビシンに比べて少 額ですが、平成 15 年以降継続して 被害が確認されています。
都内における平成 23 年度の有害 鳥獣捕獲および狩猟による捕獲数はアライグマ 132 頭、ハクビシン 393 頭となっており、経年的には概ね平成 15 年以降右肩上がりで増加してい ます。また、平成 23 年度の捕獲地域はアライグマはそのほとんどが多摩 地域、ハクビシンは都心から山間地までの広い範囲です。捕獲地域が概ね 多摩地域に限定されているアライグマについては、分布域をこれ以上拡げ ない対策が必要です。
※ p. 124 〜 131 で使用した外来種の写真のうち、グリーンアノール、ニューギニアヤリガタリクウズムシ、
ミシシッピアカミミガメ、セアカゴケグモ、アライグマの写真は環境省のホームページ「外来種写 真集」(http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/asimg.html)から転載させていただきました。
外来種により生じる問題
ハクビシン:スイートコーン、ブドウ、トマト、
ジャガイモ、イチゴなどに被害。
アライグマ:スイートコーン、カボチャ、
スイカ、ブドウ、ナシなどに被害。
過眼線
顎線 ホオジロ
暗渠(あんきょ): フタをしたり地下に 埋設したりして地上に水面が出て いない水路。地上に水面が出てい る水路は開
か い渠
き ょという。
一年草(いちねんそう): 発芽後、1 年 以内に開花・結実し、枯れる草本。
栄養葉(えいようよう): シダ植物にお いて胞子を生じない葉のこと。光 合成を行うのは主にこの葉である。
越年草(えつねんそう): 一年草のうち、
秋に発芽し、冬越しをした後、夏 までに開花・結実する草本。
奥山(おくやま): ⇒里山(さとやま)
参照。
開出毛(かいしゅつもう): 茎や葉の 面に対してほぼ直角に伸びる毛(植 物)。
崖線(がいせん): 河川や海の浸食作 用によって形成された連続する崖 地。多摩川沿いなどにみられる。
傾斜地であることから開発されず に緑地が残り、崖線の下部は湧水 があることも多く、多様な生物が 生育・生息している。
過眼線(かがんせん): 目の前後に入 る帯状の線(鳥類)。
顎線(がくせん): くちばしの基部から
殻斗(かくと): ブナ科植物において、
実の一部または全部をおおう構造 物。いわゆるドングリのお皿。
花序(かじょ): 花のつき方。並び。小 さな花が集まって咲く場合、花 の集合のことを指す場合もある。
⇒ p.136 参照。
花被片(かひへん): 花は通常、花弁 とその外側の萼
が くに分けられ、花弁 と萼の区別がつきにくい場合、そ れらをまとめて花被と呼ぶ。チゴ ユリの花被片は 3 枚が花弁(内花 被片)で、もう 3 枚が萼(外花被片)。
距(きょ): 花において、つけ根より後 ろに細長く突出した部分。スミレ はこの部分に蜜がある。
極相林(きょくそうりん): 自然状態で 植生が変化することを植生遷移と いう。遷移が進んで構成樹種が安 定した森林のことを極相林という。
堅果(けんか): 堅い皮に包まれた果実。
クリも堅果である。
根出葉(こんしゅつよう): 地表付近か ら葉が出ているため、根や地下茎 から出ているようにみえる葉のこ と。このうち、地表に密着して越 冬するものをロゼット葉といい、タ ンポポのものが代表的である。
里山(さとやま): 人が持続的に利用
するために管理されてきた人里近
くの森林。それに対して、普段は
人が入り込まない森林を奥山とい
う。
ドキュメント内
東京の環境指標種100
(ページ 129-134)