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博 士 ( 医 学 ) 渡 辺 直 也

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 渡 辺 直 也

学 位 論 文 題 名

CO ― オ キ シ メ ー タ ー に よ る

へ モ グ ロ ビ ン 分 析 の 法 医 診 断 学 的 応 用

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  死 因 や 死 戦 期 の病 態 を 解 明す る 方 法 の1っと し て 死 体血 中 の へ モグ ロ ビ ン に着 目 し た 研究 が あ る . 一 酸 化 炭 素 ヘ モ グ ロ ビ ン(COHb)の 測 定 は 焼 死 や 一 酸 化 炭 素(CO)中 毒 死 と 関 連   し て 法 医 学 の 分野 で も 一 般的 だ が , 他に も 薬 物 など に よ る メト ヘ モ グ ロビ ン(MetHb)の 生 成 や , 窒 息 の 診 断 な ど で の 酸 素 ヘ モ グ ロ ビ ン(02Hb)の 有 用 性 な ど が 報 告 さ れ て お り , 法 医 学 的 な 利 用 価 値 が 見 出 さ れ て い る . 本 研 究で は 解 剖 およ び 死 体 検案 例 の 死 体血 に つ い て CO― オ キ シ メ ー タ ー を 用 い て 各 ヘ モ グ ロ ビン の 値 を 測定 し , 死 因や 死 後 経 過時 間 等 と の関 連について検討した.

  【 材 料 と 方 法 】2001年6月‑‑2002年9月 に 行 な った 法 医 解 剖例 の 中 か ら, 血 液 採 取が 可 能 で 且 つ 死 因 が 確 定 で き た53例 を 対 象 と し た. こ の う ち左 心 血 を 採取 で き た もの は50例, 右 心 血 は51例 , 上 矢 状 静 脈 洞 血 は17例 で あ っ た . 死 体 検 案 例 ( 検 案 例 ) で は2001年11月

〜2002年9月 に 行 な っ た 検 案 例 の う ち 心 臓 血 が 採 取 で き た23例 を 対 象 とし た , 死 後経 過 時 間以 外 の 検 討項 目 に つ いて は 上 記 の中 か ら さ らに , 腐 敗 など に よ る 測定 値 へ の影 響がな いと 考 え ら れ る 解 剖 例46例 , 検 案 例21例 に つい て 検 討 した . 死 後 経過 時 間 に 関す る 検 討 では 全 例( 解 剖 例53例 , 検 案例23例) で 検 討 を行 な っ た .解 剖 例 で は左 心 房 , 右心 房 ,上矢 状静脈 洞を そ れ ぞ れ直 視 下 に 穿刺 し て 血 液を 採 取 し た. 検 案 例 では 前 胸 壁 より 経 皮 的に 心臓を 穿刺   し て 血 液を 採 取 し た. 各 ヘ モ グロ ビ ン の 測定 は 血 液 試料 を 直 接CO− オ キシ メ ーター に注入   して行ない,自動分析により同時にトータルヘモグロビンくT‑Hb,g/dl),02Hb(%),COHb(%),

MetHb(%)の値を得た.

  【 結 果 と 考 察 】1. 死 因 と 各 ヘ モ グ ロ ピ ン 値 左 心 血 の02Hbは く10% が35例(81.4% ) . 10―20% は7例(16.3% ) .20% 以 上 は22.6% の1例 で あ っ た . 右 心 血 の02Hbで は く10% が40例(90.9% ) .10一20% は3例(6.8% ) .20% 以 上 は23.8% の1例 で あ っ た . 検 案 例 の02Hbで は16例(76.2% ) が く10% .10−20% は4例(19% ) .20% 以 上 は52.1% の1 例で あ っ た . 02Hbを 死因 別 に み ると , こ れ まで の 報 告に みられ るよう に多く の死因で く10%

,の 値 が 多 かっ た . さ らに10―20% の グル ー プ を みて も 死 因 によ る 偏 り はみ ら れず,20%ま では 多 く の 死因 の 死 戦 期に 共 通 の 非特 異 的 な 低酸 素 状 態 の範 囲 内 と 考え ら れ た. また, 後で 述 べ る よ う にT‑Hbが 低 い と02Hbが や や 高 く な る 傾 向 が あ り ,02Hb 10―20% グ ル ー プ の T‑Hbは8g/dl以 下 の 低 い 値 が 多 か っ た こ と か ら , 本 来02Hbが10% 以 下 と 同 じ 意 義 の も の がT‑Hb低 値 の た め に10一20% に 入 っ て い る も の も あ る と 考 え ら れ た . こ のT‑Hbの 影 響 を ふま え た 考 えか ら も , やは り02Hb 20% 以 下は 非 特 異 的な低 酸素の 範囲と してよ いと思 われ,

この範囲の値は,積極的な診断価値は低いと考えられた.

   窒 息 や溺 死 を 疑 って い る と きに02Hbが 約20% を 超 え る値 を 示 す 場合 は , 診断 の再考 を要 す る と い う 考 え が あ る が , 本 研 究 で は 窒 息, 縊 死 , 溺死 を 合 わ せた23例 中21例 は02Hbが 20% 以 下 で あ っ た . 残 り の2例 も 約20% の 範 囲 内 とも 考 え ら れ, あ る い はま た , こ の2

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例は低体温と空気塞栓の影響が考えられる例外的な例でもあり,本研究でも窒息・溺死では 02Hbが通常20%以下であるという考えを支持できる結果であった.

  今回唯ー02Hbが50%以上を示した例は墜落による外傷性ショック死で,即死例であった.

他の研究でも極めて死戦期の短い例では高い値を示したと報告されている.この即死による 02Hb高値は生活反応に準じたものとして利用できる可能性がある.

  左心血と 右心血 の02Hbの差を見たところ,比較的大きな乖離が2例にみられた.左心血

>右心血であったものは真冬の溺死例(左心血22.6%,右心血0.1%)で,乖離の原因とし て低体温による影響が加わった可能性が考えられた.右心血>左心血であったものは頭蓋底 骨折による吸引性窒息例(左心血2.9%,右心血23.8%)であった.左心血よりかなり高い 右心血の02Hbについて,空気塞栓に起因するという報告があり,この例も頭蓋底骨折部か ら 入 っ た 空 気 に よ り 右 心 血 の02Hbが 高 く な っ た と 説 明 で き る と 思 わ れ る .   脳の静脈血(上矢状静脈洞血)と´い職血の02Hbの関係について,頚部圧迫による窒息例で,

循環を遮断された脳の血液と,酸欠状態になった体循環の血液との間で02Hbに差がみられ るかを調べる目的があった.結果は,絞扼頚による窒息の5例をみると確かに左右の心臓血 より脳の静脈血の方が02Hbが高かったが,他の死因でも同様の値をとるものが少なくなく,

頚部圧迫に特徴的とは言えなかった.また,今回窒息例に限らず他の死因でも右心血だけで なく左心血と比べても脳の静脈血の方が02Hbが高い例が多かったことは,その原因として 生 前 よ り 死 後 の 影 響 の 方 が 考 え や す い こ と を 示 唆 し て い る と 思 わ れ た ,   Me虹Ibが異常値(1.5%以上)を示した6例はほとんどが正常値より数%高いだけであっ た.異常 値を示 した原因 として治療に使われた医薬品,新生児や小児のMetHb還元能の未 成熟さなどが考えられた.

  COHbが 異 常値 を 示した のは焼死 例とCO中 毒例だけ であっ た.80%を 超える 高値を示 した1例では 左右心臓 血のCOHb値 に乖離( 左83%, 右55.8%)がみられた.COHbが70% を超える高値になると左右心臓血の値に乖離がみられ左心血が高い値を示すことがあり,そ の理由は高濃度のCOを吸入することで急死してしまい死戦期が短いためと考えられている・

本例も死因は焼死となっているが,急性CO中毒の関与が強く死戦期が短かったものと考え られる.この左右の乖離の所見は,COへの暴露から死亡までの時間が非常に短時間であっ たニとを推定する手がかりになると考えられる.

2.T‐Hbの 値による 影ITーHbと 他のヘモ グロビ ンとの相 関をみた ところ ,右心血のT. Hbと02Hbの間 に緩い逆 相関が 認められ た.左心 血でははっきりした相関は認められなか ったが右 心血と 同様の傾 向がみられた.いずれもT・Hbの値が低くなるほど02Hbの値がや や高 く な る傾 向 が ある .02Hb測 定 値を 解 釈 する 上 で この こ と に注 意 が 必要で ある.

3.死 後経過 時間によ る影聾死 後経過 時間とOよ珊 の検討では,冬の左心血と夏の右心血 において一応相関がみられたが,例数が少なく幾っかの特殊な値に影響されているようにも みえ,正しい評価はできないと思われた.死後変化の影響がなく評価対象となりうるのは死 後 経 過 時 間 が ど れ く ら い ま で の も の か と い っ た 指 標 は 得 ら れ な か っ た .   MetHbと 死後経過 時間の間に相関はみられなかった.今回調べた死後経過時間の範囲内

(〜4.5日)では,溶血などによって経時的にMe虹Ibが増えてくるような傾向はみられなかっ た.筆者 が血vitr0で行な った血液試料の保存に関する研究でも,初期値が0かOに近い場 合は,MetHbが増加してくるのが室温では1週間後くらいからであったので,その点では死 体の心臓内でもほば同様の傾向を示すものと考えられた,

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

CO −オキシ メーターによる

ヘモグロビン分析の法医診断学的応用

    死因や死戦期の病態を解明する方法の1っとして死体血中のへモグロビン分析の有用性   が 報 告 され てい る. 一酸 化炭 素ヘ モグ ロビ ン(COHb)の 他 にも ,メ 卜ヘ モグ ロビ ノ     (MetHb)や酸 素ヘ モ グロ ビン(02Hb)の 法医 学的 な利 用価 値が 見出 されている,本研   究では死体血についてCO―オキシメーターを用いて 各ヘモグロビンの値を測定し,死因   や死後経過時間等との関連について検討した,

    法医解剖例及び死体検案例(検案例)の中から血液採取が可能で且つ死因が確定できた   解剖例53例,検案例23例を対象とした,解剖例では 左心血,右心血および上矢状静脈洞   血,検案例では心臓血(右心血)を採取した.各ヘモグロビンの測定は血液試料を直接CO   −オキシメーターに注入して行なぃ,自動分析により同時に卜ータルヘモグロビン(T‑Hb,   g/dl),02Hb(%),COHb(%),MetHb(%)の値を 得た,

    02Hbは多くの死因でく10%の値が多かった.10−20%のグループでも死因による偏り   はみられなかった.また,後述するようにT‑Hb が 低いと02Hbがやや高くなる傾向があ   るが,このグループのT‑Hbは低い値が多く,本来10%以下と同じ意義のものが10―20%   に入っているものも多いと考えられた,したがって ,02Hb 20%までは多くの死因の死戦   期にみられる非特異的な低酸素状態の範囲内と考えられ,この範囲の値は積極的な診断価   値は低いと考えられた,

.  窒 息 , 縊 死 , 溺 死 を 合 わ せ た28例中26例 は02Hbが20% 以下 であ った .残 りの2例   は低体温と空気塞栓の影響が考えられる例外的な例 であり,本研究でも窒息・溺死では   02Hbが 通 常 20% 以 下 で あ る と い う 考 え を 支 持 で き る 結 果 で あ っ た .     今回唯一02Hbが50%以上を示した例は墜落による 即死例であった.他にも即死例で高   値を示した報告がある.即死による02Hb高値は生活反応として利用できる可能性がある,

    2例 で左 右心 臓血 の02Hb値に 乖離 がみ られた,1例は真冬 の溺死例(左心血22.6%,

  右心血0.1%)で,原因 として低体温による影響が考えられた,もう1例は頭蓋底骨折に   よる吸引性窒息例(左心血2.9%,右心血23.8%)で,頭蓋底骨折部から入った空気によ

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一 敬

浩  

  政

沢 木

寺 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

り右心血の02Hbが高くなったと考えられた.

  頚部圧迫による窒息例で,循環を遮断された脳の血液と,酸欠状態になった体循環の血 液と の間で02Hbに差がみ られるか を調べた,絞扼頚による窒息例で確かに左右の心臓血 より 脳の静脈 血の方 が02Hbが高か ったが,他の死因でも同様の値をとるものが少なくな く,頚部圧迫に特徴的とは言えなかった,

  MetHbが異常値を示した例はほとんどが正常値より数%高いだけであった.異常値の原 因 と して 治 療 に使 わ れ た医 薬品, 小児のMetHb還元 能の未 成熟さな どが考 えられた ,   COHbが異 常 値 を示 し た 焼死例 とCO中毒 例のうち ,80%を 超える高 値を示 した1例・

で左 右心臓血 のCOHb値に 乖離(左83%,右55.8%)がみられた,その理由は高濃度のCO 吸入 により急 死し死 戦期が短 かかったためと考えられた,この乖離の所見は,COへの曝 露から死亡までの時間を推定する手がかりになると考えられる,

  右心 血のT‑Hbと02Hbの問に逆 相関が 認められ ,左心 血でも同 様の傾 向がみら れた.

T‑Hb値が 低いと02Hb値がやや 高くな る傾向が あり,02Hb測定値を 評価す る際に注 意が 必要である.

  死後経過時間と02Hbの検討では,冬の左心血と夏の右心血において相関がみられたが,

例数が少なく幾っかの特殊な値に影響されているようにもみえ,正しい評価はできなぃと 考え られた.MetHbと死後経過時間の間に相関はみられなかった,今回調べた死後経過時 間の範囲内(〜4‑5日)では,溶血などによって経時的にMetHbが増えてくるような傾向は みられなかった.

  公開 発表に際 しては ,副査の 吉木教授から02Hbの死後の低下にっいての質問があり,

前沢 教授から は左心 血,右心 血のCOHb値の乖離から推定される死亡までの経過時間につ いて ,並びにT‑Hbが低値 ,高値を とる原因にっいての質問があった,さらに主査からは 今後行ないうる実験にっいて質問があった。いずれの質問に対しても,申請者は自ら行な っ た 基 礎 的 研 究 の 結 果 や 法 医 解 剖 の 経 験 に 基 づ く 等 し て 概 ね 妥 当 に 解 答 し た ,   この 論文は, 死体血 液のHbを分 析して蓄積したデータから死因や死後経過時間等の推 定基準を求めようとしたもので,その論旨は妥当なものと評価され,今後さらにデータを 蓄積したり動物実験で確認することによりさらに有益な知見が得られるものと期待される,

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や取得単位なども 併せ 申請者が 博士( 医学)の 学位を 受けるの に充分な 資格を 有するも のと判 定した,

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参照

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