博 士 ( 医 学 ) 大 渡 隆 一 郎 学 位論 文 題 名
Developmental and functional analyses of CD8+ NK1 . 1+T ●
cells in the classIrestricted TCR transgenlCn11Ce (MHC クラス I 拘束性TCR トランスジェニックマウスにおける CD8+ NKl.1+T 細 胞 の 分 化 と 機 能 の 解 析 )
学位論文内容の要旨
はじめに
マ ウ ス のNKl.1゛T(NKT)細 胞 は 主 にCD4゛CD8ー(CD4゛NKT細 胞 ) とCD4 ̄CD8―(double negative: DN NKT細胞 ) の ポ ピ ュ レ ー シ ョ ンか ら構 成さ れ、 胸腺 、脾 臓、 肝臓 、骨髄 な ど の り ン パ 系 臓 器 に 分 布 す る 。NKT細 胞 は 、 非 多 形 性 のMHC様 分 子 、CD1を 発 現 し て い るCD4+CD8゛胸 腺細 胞によ り正 の選 択を 受け るこ と、 分化 の場 とし ては 胸腺 が重要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 判 明 し て い る 。NKT細 胞 は 、 抗CD3抗 体刺 激 に よ り 、 通 常のT細 胞と比 較し て早 期に 、か つ大 量の サイ 卜カ イン(IL―4、IFNー ア)を分泌する。
これ らの 作用 により、腫瘍の拒絶反応、アレルギーや自己免疫疾患などの種々の免疫学的 生体応答に関与していると考えられている。
最 近NKT細 胞 の サ ブ ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン と し て 、CD4‑CD8゛(CD8゛NKT細 胞 ) の ポ ピ ュ レーションが存在することが報告されているが、その分化や機能につしゝては以前から報告 のあるCD4+ NKT細胞、DN NKT細胞と比較して不明の部分が多い。
本 研 究 で は 、MHCク ラ スI拘 束 性T細 胞 受 容 体(TCR)ト ラン スジ 工二 ック マウ ス( ′Fgm) の2C Tgm (V a3.1/Vロ8.2;Ld十LSPFPFDLに 特 異 的TCR; ク 口/夕 イ プ 抗 体182) を 種 々 のMHCパ ッ ク の マ ウ ス と 交 配 し 、 胸 腺 、 脾臓 、 肝 臓 に お け る 、182゛NKT細胞の 分 化 に 対 す るMHC分 子 の 影 響 に つ い て 検討 し た 。 ま たCD1分 子 の 役 割に つ い て 検 討 す る た め 、CDl‑/‑2C Tgmを 作 成 し 、 同 様 の 解 析 を 行 っ た 。 最 後 に 正 の 選 択 のMHCバ ッ ク 、 負 の 選 択 のMHC/ヾ ッ ク に お い て 分 化 す る182゛NKT細 胞 の サ イ トカ イ ン 産 生 能 に ついて検討した。
方法と結果
1.T細胞 の分 化に際 して 、TCRa鎖 の発 現に 関し ては 対立 遺伝 子排 除が 不完全 に働 く場 合 が あ る こ と が 知 ら れ てい る 。 内 因 性TCRa鎖 の 発 現 を 完 全 に 排除 し、 さら に異 なるMHC /ヾ ック を導 入する ため 、2C Tgmをrecombination activating gene (Rag)ノックアウト マウスと交配し、正の選択バックの2C Tgm Ragl―/−(H―2b/b)、負の選択バックの2C Tgm Rag2一/・(H−2b/dもし くはHー2d/d)を作成した。同様に2C TgmをBlO.BR (H―2k/k)と交 配し、中立の選択パックの2C Tgm (H−2k/k)を作成した。
胸 腺 、脾 臓、 肝臓 いず れの 臓器 でも 、通常 のT細胞 が負 の選 択を 受ける2C Tgm Rag2‑/‑
(H―2b/d)の 場合 には 、最 も多 くの割合の182゛NKT細胞が認められ、これらは主にDN NKT 細 胞 で 、CD8゛NKT細 胞 も 少 数 分 化 しう る こ と が 判 明 し た 。 正 の 選択/ヾッ クの2C Tgm Ragl―/−(H―2b/b)においては、CD8゛NKT細胞が、メジャーポピュレーションとして分化 し た 。CD8分 子 に は CD8aaとCD8a口 の2種 が あ り 、 p鎖 は TCRを 介 し た 細 胞 内 シ グ ナル 伝達 を増強 する 役割 があ るこ とが 判明 して いる 。2C Tgm Raglナ(H−2b/b)におい て 分 化 す るCD8゛NKT細 胞 のCD8分 子 は 、aBヘ テ 口 ダ イ マ ー で あ っ た 。 一 方 、2C Tgm Rag2‑/‑ (H―2b/d)で 分 化 す るCD8+NKT細 胞 のCD8分 子 はaaホ モ ダ イ マ ー で あ っ た 。 中 立 の 選 択 バ ッ ク で あ る2C Tgm (H−2k/k)で は 、 い ず れ の 臓 器 でも182+NKT細 胞は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ た 。 ま た い ず れ のH−2バ ッ ク の2C Tgmに お い て もCD4+NKT 細胞は産生されなかった。
2. 182+NKT細 胞 の 分 化 に お け るCD1分子 の役 割を 検討 する ため 、2C Tgm(Hー2b/b) を CD1−/―マウス(Hー2did)と交配し、CD1−/−2C Tgm (H―2b/dもしくはHー2d/d)を作成した。
CD1―/ー2C Tgmにおいては、2C Tgm Rag2―/―(Hー2b/dもしくはH−2d/d)とほぼ同様の割 合 の182+NKT細 胞 が 認 め ら れ た 。 以 上 の 結 果 は 、2C Tgmで はH−2夕イ プの 違し ゝが 分 化 す る182+NKT細 胞 の 割 合 と フ ウ ノ タ イ プ を 決 定 す る 因 子 で あ る こ と 、CD1分 子 は 182+NKT細胞の分化には関与しないことを示す。
3. 各H―2バ ッ ク の2C Tgmに お い て 分 化 し た 、182+NKT細 胞 の サ イ ト カ イ ン 産 生 能 を 解 析 す る た め に 、2C Tgm Raglナ(H―2b/b)と2C Tgm Rag2‑/‑ (H−2b/d)に、 抗CD3抗 体(2:0ルg/PBS 200ul) を尾 静脈 より 静注 した 。90分後 にこ れら のマウ スよ り脾 臓を 回 収 し で2時 間 培 養 し 、 上 清 中 のIL―4、IFNーア の濃 度をELISAに て測定 した 。IL‑4は い ず れのマウスでも産生されなかった。IFN‑アについては、2C Tgm Rag2―/―(H―2b/d)に おいて、対照のB6マウスより強い産生がみられ、2C′I、gm Raglー/−(H―2btb)においては 弱 い産 生が みられ た。IFN‑ア産 生に主に寄与している細胞は、2C Tgm Raglナ(H−2b/b冫 に お いて はCD8+NKT細胞 であ り、2C Tgm Rag2― /―(H―2b/d)に おしゝ てはDN NKT細 胞 であった。
考 察
こ れ ま でTCR Tgmを 用 い て 、NKT細 胞 の 分 化 が 解 析 さ れ 、 ク ラ スI拘 束 性TCR Tgm で は 、BM3.3お よ びH−Yに つ い て 、 ク ラ スII拘 束 性TCR Tgmで はD011.10に つ い て の 報 告 が あ る 。BM3.3お よびHーYTgmで は 、い ずれ も負 の選 択のHー2バ ック で、DN NKT 細 胞の 分化 が促 進さ れる こと が判 明し てい る。
本 研 究 で は 、2C Tgmを 用 い てNKT細 胞 分 化 を 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 こ れま での 報告 と 同 様、 負の 選択 のパ ック ではDN NKT細 胞が メジ ャーポ ピュ レー ショ ンとして分化した。
し か し 少 数 な が ら 負 のH−2/ヾ ッ ク に お い て、CD8+NKT細胞 も分 化しう るこ と、 また 、 正 のH→2バ ッ ク で はCD8+NKT細 胞 が メ ジ ャ ニ ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン と し て 分化 する こと が 判 明 し た 。 正 常B6マ ウ ス で はCD8+NKT細 胞 は マ イ ナ ー ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン で あ る こ と か ら 、 こ の こ とは 興味 深い 現象 と考 えられ た。 実際 従来 報告 され てい るinvariant TCR を も つ NKT細 胞 は 、 主 に CD4+とDN NKT細 胞 よ り 構 成 さ れ 、 こ れ ら は 抗CD3抗 体 刺 激 に よ りIL―4とIFN‑アを 産 生 す る 。 こ れ に 比 較 し て 本 研 究 に て 示 したCD8゛NKT細 胞 はIL―4分泌 能を 欠いて いた 。
本 研 究 に お い て、NKT細 胞が 従来 考え られ てき たよ うに 単一 で均 質なポ ピュ レー ショ ン
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で はないこと 、またNKT 細胞の中で も
CD4また はCD8 分子 の発現の違 いにより、機能 に差異がみられることが明らかになった。
最 近
CD8+NKT細胞 が
CD8+T細胞 と比較して 腫瘍細胞を 殺傷する能 カが強いこ とが報
告されており、腫瘍性疾患治療に対するCD8+NKT 細胞の応用研究が重要と考えられた。
学 位 論 文審 査 の 要 旨 主査
副査 副査
教授 教授 教授
西 村 孝 司 福 田 諭 小野江和則
学 位論文 題名
Developmental and funCtionalanalySeSOfCD8 十 NK1 . 1 十 T CenSintheClaSSIreStriCtedTCRtranSgeniCmiCe
(MHC クラスI 拘束性TCR トランスジェニックマウスにおける
CD8゛NKl.1 ゛T 細胞の分化と機能の解析)
マウスのNKI.1゛T(NKT)細胞 は、主にCD4゛CD8・(CD4゛NKT細胞)とCD4'CD8・(double negative: DN NKT細胞)の ポピュレ―ションから構成され、胸腺、脾臓、肝臓、骨髄などのりンパ系臓器に分布する。マウスのNKI.l゛T細胞のサ プポピュレーションとして、CD4.CD8+ (CD8+ NKT細胞)が存在することが報告された。しかし、その分化や機能につい
ては不明の部分が多い 。申請者は、MHCクラスI拘 束性T細胞受容体(TCR)卜ラン スジェニックマウス(Tgm)の2C Tgm を種々のRag‑'‑、MHCバックのマウスと交配し、胸腺、脾臓、肝臓における、ク口/夕イプ陽性(IB2゛)NKT細胞の分
化に対 するMHC分子の影響について検討した。さらにCD1分子の役割について検討するため、CDI゛2C Tgmを作成し、
同様に解析した 。最後に正の選択のMHCバッ ク、負の選択のMHCバックに おいて分化するIB2+NKT細胞 のサイトカ イン産生能について検討した。その結果、胸腺、脾臓、肝臓いずれの臓器でも、通常のT細胞が負の選択を受ける2C Tgm Rag2゛(H ̄2川)の場合には、最も多くの割合のIB2゛NKT細胞が認められ、これらは主にDN NKT細胞で、CD8゛NKT細胞 も少数分化しうること、正の選択バックの2C Tgm Ragl"・(H−2m)においては、CD8+NKT細胞が、メジャーポピュレーシ
ヨンとして分化することが判明した。また2C Tgm Ragl‑'(H―2m)において分化する、CD8+NKT細胞のCD8分子はaロ ヘテ口ダイマーであり、 2C Tgm Rag2゛(H‑2¨′d)で分化するCD8+NKT細胞のCD8分子はaロホモダイマーであった。中立
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の選 択 バッ クで あ る2C Tgm(H−2k′k)では、いず れの臓器でも182+NKT細胞は ほとんど認められ なかった。またい ずれの H‑2バッ クの2C Tgmにお い ても 、CD4゛NKT細胞 は 産生 され なかった。CDIエ2C Tgm(H.2d′d)にお いては、CDI+'+2C Tgm
(H.2川) とほ ぽ 同様 の割 合 の182゛NKT細胞 が認 め られ た。 以 上の結果 から、申請者は2C TgmではH‑2夕イプの違いが 、 J
分 化 す るIB2゛NKT細 胞 の 割 合 と フ ウ ノ タイ プを 決 定す る因 子 であ るこ と 、CDI分子 はIB2゛NKT細胞 の 分化 には 関 与し ない と結論した。次にIB2゛NKT細胞のサイ 卜カイン産生能をmwvoで解析した。IFN‑アについては、2C Tgm Rag2"・(H.2h′d) において、対照のB6マウスより強い産生がみられ、2C Tgm RaglI′I(H−2hm)におしゝては弱い産生がみられた。IL‐4は、い ずれのマ ウスでも産生され なかった。fFN‑ア産 生に主に寄与して いる細胞は. 2C Tgm Ragl"・(Hー2h′h)においてはCD8+NKT 細胞であり、2C Tgm Rag2+ (H̲2h′d)に おいてはDN NKT細 胞であった。
学位 発 表後 、副 査の福田教授か ら、機能解析の刺激 条件について、使 用したマウスにつ いて、臨床応用の可 能性につしゝ て 、 副 査 の 小 野 江 教 授 か ら 、 ク ラ スI拘 束 性TCR卜 ラ ンス ジェ ニ ック マウ ス とク ラスII拘束 性TCR卜ラ ン スジ ェニ ッ ク マ ウス で分 化 するNKT細 胞の 違 いに つい て 、Thl/Th2バラ ン スに つし ゝ て、 主査 の 西村 教授 か ら、CD4゛NKT細胞との違い につ いて 質問が なされた。申請者 は自身の研究結果 、あるいは文献的知 識に基づいて、誠 実かつ、概ね適切 に回答し得た。
こ の 論 文 に よ り 、NKT細 胞 が 従 来 考 え ら れ て き た よう に単 ー で均 質な ポ ピュ レー ン ヨノ では な いこ と、 ま たNKT細胞 の 中 で もCD4ま た はCD8分 子 の 発 現 の 違 い に よ り 、 機 能 に 差 異 が み ら れ る こ と が 判 明 し 、 今 後 のNKT細 胞の 研究 に 、 示唆と方向性 を与えた点が高く 評価された。
審 査員 一 同は 、こ れ らの 成果 を 高く 評価 し 、大 学院 課 程に おけ る 研鑽 や取 得 単位など も併せ申請者が博 士(医学)の学 位 をを受けるのに充分 な資格を有するも のと判定した。