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吸引通気式堆肥化処理技術の開発 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 阿 部 佳 之

学 位 論 文 題 名

吸引通気式堆肥化処理技術の開発 学位論文内容の要旨

  家畜 ふんの堆肥化処理は,家畜 ふんを取り扱い陸のよい有機質資材,っまり堆肥に変換できるこ とから ,わが国の耕畜連携を前提 とした循環型農業を実現する上で基盤的な技術として認められて いる。 しかし,堆肥化反応が促進 されるほど,アンモニア揮散量が増加することが知られており,

飼養環 境や作業環境の改善,ある いは土壌の酸陸化や地球温暖化を防止する観点からアンモニア揮 散の低 減化対策が求められている 。

  1970年 代にアメリカ 農務省で開発された吸引通気 方式(Beltsvijle方iQによる 堆肥化処理は,

強制吸 引通気によって堆肥原料の 腐熟を促進する方式である。さらに同時に,堆肥原料を通過した 排気が 通気配管の一箇所に集めら れることから,堆肥化過程で揮散するアンモニアの回収は比較的 容易に 行える技術である。ただし ,吸引通気方式は圧送通気式に比べて堆肥原料の熱や水分の放散 効率が 劣っているほか,通気配管 の目詰まりが発生しやく送風機が腐食しやすいなど,技術的に未 解決の 問題も少なくない。そこで 本論文では,これら吸引通気方式の問題点を整理して技術的な改 善を図 るとともに,吸引通気方式 による堆肥化過程でのアンモニア揮散の低減とアンモニアの資源 として の回収性能について,実施 設レベルで検証した。

1. 吸 引 通 気 方 式 に お け る 堆 肥 化 反 応 と ア ン モ ニ ア 揮 散 低 減 効 果 の 検 討   容量430Lの 反応漕を供試し,吸引通気 方式と圧送通気方式とを比較 するための基礎試験を行つ た。墓楚試験 では,瑚巴イ噛程の瑚噺澣成分の変イ匕を調査するとともに,吸引通気方式によるア ンモニア揮散 の低減効果とその回収性能について検討した。その結果,乳牛ふん(含水率67%)の 4週間の堆肥 化期間のうち,一週間に一度 の切り返し作業を行えば,吸引通気方式における堆肥原 料の温度や有 機物分解率,成分のばらっきが改善され,吸引通気方式の有機物分解率は圧送通気方 式と同等であ ることを確認した。また,吸引通気方式の場合,堆肥原料表面で測定されたアンモニ ア は最 大で22ppmで あり , 圧送 通気 方式 の場 合 の900ppmに比べ て明らかに少なかった。吸引 通 気方式によっ てアンモニア揮散が抑制された結果,試験開始時の堆肥原料全窒素のうち4.6%をドレ イン中に,ま た,14.5%を希硫酸トラップで回収することが可能であった。なお,圧送通気方式の 場合は唯肥化 過程で14.4%の窒素が減少したが,そのほとんどは堆肥原料表面からアンモニアとし て揮散したも のと考えられる。吸引通気方式では,通気に含まれる水分が堆肥原料中で結露しにく いために,圧 送通気方式に比較して堆肥原料の含水率を低減できる副次的な効果が確認された。し かし,堆肥原 料から持ち出された水分の多くは,反応槽底部の空間部で,あるいは吸引後の配管内 で結露して, ドレインとして発生するも のであった。

2.吸引通気方式に おける堆肥化反応特性と窒素 収支

  吸引通気方式にお けるアンモニア揮散の低減効果とその回収性能をさらに詳細に検討するため,

副資材の種類(乾燥 ふん,戻し堆肥,オガクズ,モミガラの4条件)や堆肥原料の含水率(60〜75%

‑ 65 ‑

(2)

の4条件 )を変えて,前項と同様の試験装置と方法によって堆肥化試験を行った。その結果,吸引 通気方 式による乳牛ふんの堆肥化処理では,堆肥原料のかさ比重を500〜700kg/m3に調製すること で通気陸に改善が見られ,これにより吸引通気方式の有機物分解率は既報の圧送通気方式とほぼ同 等になった。吸引通気方式による堆日巴化では,堆肥原料からのアンモニア揮散を抑制でき,アンモ ニアはドレイン中に,あるいは希硫酸によるアンモニアトラップで回収できた。その回収量は有機 物分解率や堆肥原料のアンモニウム態窒素含有量に影響を受け,試験開始時の堆肥原料の全窒素に 対して3.8‑23.2%の範囲にあった。条件によちては 堆肥原料から12,O00ppmの高濃度の状態で アンモニアが吸引されたことから,吸引通気方式の場合は,リン酸キ晞弼溌による中和反応でアン モニアを回収することが現実的と考えられる。また,吸引通気方式では,堆肥化反応が良好である ほど堆肥原料中の水分が低減されるが,その分ドレインの発生量は増加し,4週間の堆8巴fb畳程で は , ド レ イ ン の 発 生 量 が 堆 肥 原 料 現 物 に 対 し て 最 大 で38% に 達 す る 条 件 を 認 め た 。

3.高濃度アンモニア回収装置の開発

  高濃度のアンモニアを回収するために,リン酸や希弼溌を薬液とする洗浄・薬液方法を検討し,

スプレー塔と充填塔の機能を併せ持っアンモニア回収装置を開発した。薬液が堆肥化反応熱等によ り加温されることで薬液とアンモニアの反応速度が向上した結果,開発した回収装置は従来機種よ りも小型化された。また,薬液が40〜50℃程度に加温されるためにその溶解度が高まり,25%程度 の高 濃度の 薬液を 用いて も,ア ンモニア回収の結果生じる塩の再結晶は見られ虎配管やポンプが 詰まるトラフシレは発生しなかった。アンモニア回収装置の性能試験を行った結果,薬液反応筒(¢

150mm)で の空 塔速度 が0.44〜4.4m渺の範 囲であ れば,10,000ppmの アンモニ アのう ち95.7〜 99.9%を回収でき,薬液温度が高いほどアンモニア回収率は向上した。アンモニア回収装置を約 10n3の 吸 引 通気 式 堆 肥 舎に 設 置 し てそ の 性 能 を検 証 し た 。3畜試の 実証試 験にお いて最 大で 36,OO(抑mのアンモニアが吸引排気中に含まれていたが,薬液の温度が低温であった時期を除き,

本 回 収 装 置 に よ っ て 99% 以 上 の ア ン モ ニ ア が 回 収 さ れ る こ と を 確 認 し た 。

4.吸引通気式堆肥化処理技術の実証

  リニ アクレ ーンに よる切 り返し 装置が 装備された堆肥化施設(約34m3fl)を吸引通気方式に改 修し,吸引通気方式を実施設レベルで検証した。なお,通気口の日詰まりを防止する配管方法を考 案するとともに,送風機を改良して耐食陸の強化を図ったことから,トラフシレの少ない安定的な堆 肥化 処理が 可能に なった。この堆肥化施設を供試して,夏期と冬期の2回に分けて乳牛ふんの堆肥 化試験を行い,圧送通気方式を比較対照にして吸引通気方式によるアンモニア揮散の低減化とその 回収性能を検討した。その結果,吸引通気方式は,圧送通気方式に比べて堆肥化反応に伴う質量や 水分,容量などが見かけ上大きく減少したが,本施設の吸引通気方式は圧送通気方式に比べて通気 のデ ットス ペース 淵浅滴5分)が 生じやす く,有 機物分 解率が1〜2割低くなった。しかし,冬期 試験における圧送通気方式では堆肥原料の全窒素量の9.6%がアンモニアとして揮散したのに対し,

吸引 通気方 式では この9.6% 量の9割 がアン モニア 回収装 置で回収 され,残りの1割はれき汁,あ るい はドレ インと して回 収された 堆肥原 料表面で測定されたアンモニア揮散は圧送通気方式に比 べて明らかに抑制されたことからも,吸引通気方式によるアンモニア揮散の低減化とその回収効果 は実証されたものと考えられる。

  現 在 は本 研 究 の 内容 で 特 許 出願 を 行い ,その 権利取 得に向 けた手 続きを 進めてい る(特 願 2006‑094900)。今後は,分解率の向上,吸引通気方式を採用した場合の経済性や環境への影響評価 を蓄積して,吸引通気方式の技術普及を図る予定にある。

‑ 66

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 准教授

松田 木村 近藤 近江谷

学 位 論 文 題 名

從三 俊範 誠司 和彦

吸 引通 気式堆肥化処理技術の開発

  

本 論文 は , 全

6

章 か ら なる 総 頁 数128の和 文 論 文で あ る 。論 文には 図24,表15,写真

12

, 引 用文献

110

件が 含まれ ,別に参 考論文5編が 添えられ ている 。

  

家 畜ふん の堆肥化 処理は ,家畜ふ んを取 り扱い性のよい有機質資材に変換できることから,

わ が 国の 耕畜連 携を前提 とした 循環型農 業を実 現する上 で基盤的 な技術 として認 められ てい る 。 しか し,堆 肥化反応 が促進 されると ,酸性 雨や土壌 の酸性化 等をも たらすア ンモニ アが 堆 肥 原 料 か ら 揮 散 す る た め , そ の 揮 散 の 低 減 化 対 策 が 求 め ら れ て い る 。

  1970

年 代 にア メ リ カ農 務 省 で開 発され た吸引 通気方式

(Beltsville

方 式)に よる堆肥 化処 理 は ,堆 肥原料 を通過し た排気 が通気配 管の一 箇所に集 められる ことか ら,堆肥 化過程 で揮 散 す るア ンモニ アの回収 は比較 的容易に 行える 方式であ る。しか し,吸 引通気方 式は圧 送通 気 式 に比 べて通 気配管の 目詰ま りが発生 しやく 送風機が 腐食しや すいな ど,技術 的に未 解決 の 問 題も 少なく ない。そ こで本 論文では ,吸引 通気方式 に関する これら の問題点 を整理 して 技 術 的な 改善を 図った。 また, 本方式に よる堆 肥化過程 のアンモ ニア揮 散の低減 化と, アン モ ニアの 資源とし ての回 収効果に ついて実 施設レ ベルで検 証した 。

1

. 吸 引 通 気 方 式 に お け る 堆 肥 化 反 応 と ア ン モ ニ ア 揮 散 低 減 効 果 の 検 討

  

容量

430L

の 反 応 槽を 供 試 し, 吸 引 通気 方 式 と圧 送 通 気方 式 とを比較 するため の基礎 試験 を 行 った 。 そ の 結果 , 含 水率 を

67

% に 調 製し た 乳 牛ふ ん の

4

週 間の堆肥 化期間に おいて ,

1

週 間 に一 度の切り 返し作業 を行え ば,通気 方向に 分布した 堆肥原 料の温度 や有機物 分解率 , 成 分 のば らっきが 改善され ,均一 な堆肥化 処理が 可能であ った。 また,吸 引通気方 式は, 圧 送 通 気方 式に比べ て堆肥原 料表面 からの揮 散アン モニア濃 度を低 く抑制で きること が明ら か と な った 。

2

. 吸引 通 気 方 式に お け る堆 肥 化 反応 特 性 と窒 素 収 支

  

吸引 通気方式 における アンモ ニア揮散 の低減 効果とア ンモニ アの回収 性能をさ らに詳 細に 検 討す るため ,副資材 の種類 や堆肥原 料の含 水率を変 えて,前 項と同 じ試験装 置と方 法によ っ て吸 引通気 方式によ る堆肥 化試験を 行った 。その結 果,吸引 通気方 式では, 堆肥原 料のか

‑ 67

(4)

さ比重を500 〜700kg/m3 に調製することで通気性に改善が見られ,これにより有機物分解率 は既報の圧送通気方式とほば同等になった。吸引通気方式による堆肥化では,堆肥原料から のアンモニア揮散を抑制でき,全窒素のうちの3.8 〜23.2 %のアンモニアが吸引排気やドレイ ンに含まれており,希硫酸を薬液としたアンモニア卜ラップ等で回収された。排気中のアン モニア濃度は最大で12 ,OOOppm であったことから,吸引通気方式の場合は,既往の生物脱 臭法や吸着法で回収することは困難であり,薬液による中和反応でアンモニアを回収するこ とが現実的と考察された。

3 .高濃度アンモニア回収装置の開発

   吸引通気方式排気を対象にした高濃度アンモニア回収装置を開発した。本装置はりン酸や 希硫酸を薬液とする洗浄・薬液方式であり,スプレー塔と充填塔の機能を併せ持っタイプに 分類される。薬液が堆肥化反応熱等により加温されることで薬液とアンモニアの反応速度が 向上し,開発装置は従来機種よりも小型化された。開発装置を堆肥約lOrri3 処理の吸引通気 式堆肥舎に設置してその性能を検証した結果,最大でアンモニア36 ,OOOppm が吸引した排 気 中 に 含 ま れ た が , 本 回 収 装 置 に よ っ て そ の う ち の 約 99 % が 回 収 さ れ た 。

4 .吸引通気式堆肥化処理技術の実証

   リニアクレーンによる切り返し装置が装備された堆肥化施設(約34jr13/ 槽)を吸引通気方 式に改修し,吸引通気方式を実施設レベルで検証した。通気口の目詰まりを防止する配管方 法を考案するとともに,送風機を改良して耐食性の強化を図ったことから,トラブルの少な い安定的な堆肥化処理が可能になった。吸引通気方式は,圧送通気方式に比べて堆肥化反応 に伴って質量や水分,容量などが見かけ上大きく減少したが,有機物分解率は1 〜2 割低く なった。しかし,圧送通気方式では堆肥原料の全窒素量の9.6 %が堆肥原料表面からアンモニ アとして揮散したのに対し,吸引通気方式ではこの揮散量の9 割がアンモニア回収装置で回 収さ れ, 残りの1 割はれき汁,あるいはドレインとして回収されることが実証された。

   本研究によって吸引通気式堆肥化処理技術が実証され,堆肥化過程で発生するアンモ ニア揮散の低減化とその回収が技術的に可能となった。本研究内容に基づぃて特許出願 が行われ,その権利取得に向けた手続きが進められている(特願2006‑094900) 。また,

開放型の堆肥化施設においても堆肥化過程の窒素収支が得られたことなど,学術的な価 値も高く評価される。よって,審査員一同は,阿部佳之が博士(農学)の学位を受ける のに十分な資格を有するものと認めた。

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