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博 士 ( 工 学 ) 大 嶺 裕 幸

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 大 嶺 裕 幸

学 位 論 文 題 名

移 動 体 通 信 用 マ イ ク ロ ス ト リ ップ ア ン テ ナに 関 す る 研究 学 位 論 文内 容 の 要 旨

  本研究は、移動体通信を目的としたマイクロストリップアンテナの解析法ならぴに設計 法についての研究成果をまとめたものである。

  移動体通信に対するユーザニーズの増大、移動体通信技術の適用範囲の拡大等により、

市場は拡大の一途である。携帯電話をはじめ、列車電話、船舶電話、そして自動車電話 等の移動体通信、さらに新たに衛星利用の移動体通信も登場してきた。山間部や離島で の利用も可能となり、広範囲なサーピスエリアを提供するものである。すでにインマル サット、N‑STARが実用化されてお.り、災害時の臨時利用等にもその有効性を発揮して いる。従来の大型地球局からより小形の可搬型の地球局で衛星との通信が可能になり、

衛星のパーソナル利用も可能になってきた。さらには、低軌道から中軌道に打ち上げた 衛星との通信も多く計画されている。海上、空中での利用も可能であり、どこにでも持 ち運ベ、利用できるようになる。通信のパーソナル化とぃう大きな流れの中で移動体通 信の果たす役割は大きい。

  このように通信のパーソナル化に伴い、当然通信機器には小形化が要求される。中で も比較的容積の大きいアンテナには小形化の要求が強い。薄型で高利得化が可能なアン テナとしてマイクロストリップアンテナ(Microstrip Antenna;以下MSAと略する)が ある。MSAはホイップアンテナ等の線状アンテナに比ベエッチング加工によって簡単に 製作できるため、量産化に適している特長を有している。又、薄型の構造であるため通 信 機器 の表 面に 張り 付け るこ とも でき 、移動体搭載に適した構 成が可能となる。

  しかしながら、移動体搭載用MSAとしては以下のような問題点がある。移動体に搭載 する際、移動体での散乱波の影響により利得、サイドロープ、交差偏波、軸比が変化す るため、搭載する移動体を考慮したMSAの設計が必要である。又、移動体搭載用アンテ ナとして普及するためには薄形化、低コスト化が必須である。さらには、マルチメデイ ア化が進む中、画像情報を扱うためにはより広帯域な特性が必要となり、ミリ波帯への 高周波数化が進むのは必須である。しかし、ミリ波帯のMSAの研究開発の実績がまだ少 ないため、損失等ミリ波帯特有の課題が多く残されており設計法が確立されていない。

  本論文ではこのような問題 に対し、まずMSAの基本的な設計を行うために必要とな る、任意アンテナ形状に適用できる円偏波MSAの解析法を示した。次に、薄形で高利得 特性を有するMSAを提案し、その設計法を示した。又、給電回路と一体化したコンパク トな構成が可能な広帯域特性を有するMSAを提案し、移動体の影響を考慮した設計法を 示した。さらに、ミリ波帯でのMMICー体化アンテナの設計法を示し実験的にその有効 性を検証した。以下に本論文の要旨を示す。

  第1章では、研究の背景と目的及ぴ論文の構成を述ぺた。

  第2章では、境界要素法を用いた一点給電円偏波MSAの解析法を示した。複雑な形状

‑ 180

(2)

MSA

の 負 荷 を求 め る ために 摂動法 を用い 、繰り 返し計 算で形状 に適し た負荷 を求め る 方 法を提 案した 。負荷 による 収束性 を示し、境界が複雑であっても十分計算できることを 明 ら か に した 。 外 部 境界 に 切 り 欠き を 設 け た円 形MSAと 方形MSA、 及び内 部にシ ョート ピ ン を 設 けた 円 形

MSA

につい て入カ インピ ーダン ス、軸 比の計算 値と測 定値の 比較を 行 い 、この 解析法 の有効 性を示 した。 また、給電点と切り欠きの位置関係を変えることで給 電 ピ ン の イ ン ダ ク タ ン ス を 相 殺 し 、 整 合 が 可 能 と な る こ と を 示 し た 。

  

3

章 で は 短絡 導 体 で 縮退 を 解 い た高 利 得 特性 を有す る新し い円偏波 アンテ ナMSADS

(Microstrip antenna with diagonal short)

及びその設計法を提案した。、パッチ導体の中心 部 を45° 角度をオ フセッ トさせ 短絡することで、高利得特性が得られるだけでなく円偏波 を 励振す ること ができ る。従 って、 ロープロフんイルな構成を保持したままで高利得特性 が 得られ る特長 がある 。短絡 導体の 幅、長さを変えることで円偏波を励振する最適な寸法 が存在することを明らかにした。

  

第4章で は給電 回路とー 体型の 新しい タイプ のロー プロフ んイルな構成の共平面給電形

ARMSA (Annular‑Ring‑MicrostripAntenna)

を提 案した 。円偏 波を励 振するた めの給 電回 路 として のブラ ンチラ イン形 ハイプ リッドを環状リング内部に挿入することによって、コ ン パクト な構成 となる 特長を 有して いる。又、無給電素子を設けることで広帯域な特性を 得 られる だけで なく、 低イン ピーダ ンス化を図ることができ、ブランチライン形′ヽイプ リ ッ ド を 環状 リ ン グ 内部 に イ ン ピー ダ ン ス 整合 回路無 しに直 結させ ている 。さら に、

ARMSA

と 無給 電 素 子 をそ れ ぞ れ

L‑C‑G

の 並 列共 振 器 で 表示 し 、

2

つ の 共 振器の 共振周 波 数を一致させることで広帯域特性が得られることを明らかにした。

  

5

章 で は 、移 動 体 衛星通 信用車 載アン テナと してTM2・ モード 励振MSAの 利得と 軸比 の 設計法 につい て述べ た。日 本にお ける移動体衛星通信を考え、地板の影響を考慮した軸 比 と利得 の最適 設計法 を示し た。利 得及ぴ軸比と比誘電率の関係を示し、高利得が得られ 且 つ軸比 も良く なると ぃう2つ の条件 を満足 する最 適な誘 電率が存在し、その値は1.5〜

1

.7であることを明らかにした。このアンテナは、移動体衛星通信用車載アンテナとして実 用 化 さ れ 、E‐

V

( 科学 技術 試験衛 星V号) を用い た試験 を行い、 その有 効性が 確認さ れ た。

  

6

章 で は 、

Gns

基 板 上 に 構 成 し た

M

C

と 放 射 素 子 を 一 体 化 し た

MMIC

MonoHmic

crowaveIn

他g眦dC迎uit) 一体化 アンテ ナとし て、ス ロットを介して放射素子と結合さ せ る 開 口 結合 形

MSA

の ミリ波 帯を考 慮した 設計法 と、40GHz帯 及ぴ90く 班z帯で の試作 結 果 に つ い て 述 べた 。 放 射 素子 の 基 板 に石 英 基 板 ,給 電 回 路 の基 板 に

GaAs

基 板 を用 い

87

.1ゲ。 の高い 放射効率 とVSWRく

2

で帯域幅3.1ワ。とぃう広帯域特性を実現した.この 形 式 の 応 用 例 と し て 、

40GHz

で の

MMIC

周 波 数 変 換 回 路 を ー 体 化 した 開 口 結 合形

MSA

の 試 作 結 果 に つ い て 示 し た . さ ら に 、

W

帯 (

90GHz

) に お い て も

MMIC

周 波 数 変 換回 路 を 一 体 化 し た ア ン テ ナ の 試 作 を 行 い 、

MMIC

ア ン テ ナ と し て 実 用 化 さ れ た 。

  

第7章では、結論を述ぺ、論文全体の成果を要約した。

181

(3)

学位論文審査 の要旨

学位論文題名

移動体通信用マイク ロストリップアンテナに関する研究

  本論文は、移動体通信を目的としたマイクロストリップアンテナの解析法ならびに設計 法についての研究成果をまとめたものである 。

  近年の移動体通信の発達には目覚ましいものがあり、その市場は拡大の一途をたどって いる。携帯電話をはじめ、列車電話、船舶電話、そして自動車電話等の移動体通信、さら に新たに衛星利用の移動体通信も登場してきており、衛星のパーソナル利用も可能になっ てきた。通信のパーソナル化という大きな流れの中でどこにでも持ち運べ、利用できる移 動体通信の果たす役割は大きい。

  このように通信のパーソナル化に伴い、当然通信機器には小形化が要求される。薄型で 高利得化が可能なアンテナとしてマイクロス トリップアンテナ(Microstrip Antenna;以 下MSAと略 する )が ある 。製作が容易であり 、量産性に優れているため、移動体搭載に 適した構成が可能となる。しかしながら、搭載する移動体によルアンテナ特性が変化する ため、搭載する移動体を考慮したMSAの設計が必要である。

  本 論文 では この よう な課 題に対し、まずMSAの基本的な設計を行うために必要となる 任意 アン テナ 形状 に適 用で きる円偏波MSAの 解析法を示した。次に、薄形で高利得特性 を有 するMSAを 提案 し、 その設計法を示した 。又、給電回路と亠体化したコンパクトな 構成 が可 能な 広帯 域特 性を 有するMSAを提案 し、移動体の影響を考慮した設計法を示し た。さらに、ミリ波帯でのrvnvnc一体化アン テナの設計法を示し実験的にその有効性を 検証した。以下に本論文の要旨を示す。

  第1章では、研 究の背景と目的及び論文の構成を述べた。

  第2章で は、 境界 要素 法を 用い た一 点給 電円 偏波MSAの解析法を示した。複雑な形状 のMSAの負 荷を 求め るた めに摂動法を用い、 繰り返し計算で形状に適した負荷を求める 方法を提案した。負荷による収束性を示し、境界が複雑であっても十分計算できることを 明ら かに した 。外 部境 界に 切り 欠 きを 設け た円 形MSAと方形MSA、及び内部にショート ピン を設 けた 円形MSAに ついて入カインピー ダンス、軸比の計算値と測定値の比較を行 い、この解析法の有効性を示した。また、給電点と切り欠きの位置関係を変えることで給

182

彦 則

精 正

藤 柴

伊 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

電 ピ ン の イ ン ダ ク タ ン ス を 相 殺 し 、 整 合 が 可 能 と な る こ と を 示 し た 。   第3章で は短絡 導体で縮 退を解 いた高利 得特性 を有する 新しい円 偏波ア ンテナMSADS (Microstrip antenna with diagonal short)及びその設計法を提案した。パッチ導体の中 心部を45゜角度をオフセットさせ短絡することで、高利得特性が得られるだけでなく円偏 波を励振することができる。従って、ロープロファイルな構成を保持したままで高利得特 性が得られる特長がある。短絡導体の幅、長さを変えることで円偏波を励振する最適な寸 法が存在することを明らかにした。

  第4章で は給電回路と一体型の新しいタイプのロープロファイルな構成の共平面給電形 ARMSA  (Annular‑Ring Microstrip Antenna)を提案した。円偏波を励振するための給電 回路としてのブランチライン形ハイブリッドを環状リング内部に挿入することによって、

コンパクトな構成となる特長を有している。又、無給電素子を設けることで広帯域な特性 が得られるだけでなく、低インピーダンス化を図ることができ、ブランチライン形ハイブ リ ッ ドを環 状リン グ内部に インピ ーダンス 整合回 路無しに 直結させ ている 。さらに 、 ARMSAと 無給 電 素 子 をそ れ ぞ れL‑C‑Gの 並列共 振器で表 示し、2つの 共振器の 共振周 波 数 を 一 致 さ せ る こ と で 広 帯 域 特 性 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。   第5章 で は、 移 動 体 衛星 通 信 用車 載 ア ンテ ナ と してTM21モ ード励 振MSAの 利得と 軸 比の設計法について述べた。日本における移動体衛星通信を考え、地板の影響を考慮した 軸比と利得の最適設計法を示した。利得及び軸比と比誘電率の関係を示し、高利得が得ら れ且 つ軸比 も良くな るとい う2つ の条件を満足する最適な誘電率が存在し、その値は1.5

〜 1.7であることを明らかにした。このアンテナは、移動体衛星通信用車載アンテナとし て実 用化さ れ、ETS‑V(科学 技術試験 衛星V号)を用いた試験を行い、その有効性が確認 された。

  第6章 で は、GaAs基 板 上 に構 成 し たMMICと 放 射 素子 を 一 体化 したMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)一体化アンテナとして、スロットを介して放射素子と結合 さ せ る開 口 結 合形MSAの ミ リ 波 帯を 考 慮 した 設 計 法と 、40GHz帯及 び90GHz帯 での 試 作結 果につ いて述べ た。放 射素子の 基板に石英基板,給電回路の基板にGaAs基板を用い 87.1%の高い放射効率とVSWRく2で帯域幅3.1%という広帯域特性を実現した.この形式 の 応 用 例 と し て 、40GHzで のMMIC周 波 数 変換 回 路 を一 体 化 した 開 口 結合 形MSAの 試 作 結 果に つ い て示 し た . さら に 、W帯 (90GHz)に お い てもMMIC周 波数変換 回路を 一 体 化 し た ア ン テ ナ の 試 作 を 行 い 、 MMICア ン テ ナ と し て 実 用 化 さ れ た 。   第7章では、結諭を述ベ、論文全体の成果を要約した。

  これを要するに、本論文は移動体通信用マイクロストリップアンテナに関して、有益な 多 く の新知 見を得 ており、 アンテ ナ工学の 分野に 貢献する ところ大 なるも のがある 。   よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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