ジホスフィンジオキシド配位子を有する発光性銅一価錯体の合成
理工学研究科 理工学専攻 応用錯体化学研究室 D156102 西 達也
本論文は、ホスフィンスルフィドおよびホスフィンオキシド配位子を有する銅一価錯体 の合成および発光特性の研究成果について述べた論文であり、以下の 5 章で構成されてい る。
第 1 章の「序論」では、発光性金属錯体、特に銅一価錯体の特徴を述べ、当研究室が合 成 し た[Cu(dppaS2)(BINAP)] (dppaS2= N,N-bis(diphenylphosphino)amide disulfide, BINAP = 2,2’-bis(diphenylphosphino)-1,1’-binaphthyl)錯体がジクロロメタン溶液中で約100 μsと長寿命 発光を示したことを述べた。また、ホスフィンオキシドは銅一価と相性が悪いと考えられ てきたため、ホスフィンオキシドを配位子として用いた銅一価錯体の報告例が限られてい ることも述べた。そこで、本論文の目的として、ホスフィンオキシドと様々なホスフィン 配位子を用いた銅一価錯体の合成を行い、発光特性の調査を行った。
第 2 章の「モノホスフィン配位子を用いた銅一価錯体」では、ホスフィン配位子として リン原子を一つ持つモノホスフィン配位子を用いたホスフィンオキシド錯体の合成し発光 特性調を査長した。また、モノホスフィン配位子を用いたホスフィンスルフィド錯体も併 せて合成し、発光特性の比較および量子化学計算を用いた発光機構の比較も行った。
第 3 章の「ジホスフィン配位子を用いた銅一価錯体」では、ホスフィン配位子としてリ ン原子を二つ持つジホスフィン配位子を用いたホスフィンオキシド錯体の合成を行い、そ れらの錯体の発光特性を評価した。また、ホスフィンスルフィド錯体の中で唯一強発光性 を示す[Cu(dppaS2)(BINAP)]と比較し、ホスフィンスルフィド錯体とホスフィンオキシド錯 体の発光機構の違いを検討した。加えて、固体発光の酸素依存性についてもこれらの錯体 を用い調査した。
第 4 章の「架橋型ホスフィン配位子を用いた銅一価錯体」では、溶液中においてより高 効率な発光性銅一価錯体の合成を目的として、励起状態中における構造変化の抑制に期待 できる多核構造に着目した。そこで、多核錯体を形成しやすいことが知られている dppm(1,2-bis(diphenylphoshino)methane)配位子をジホスフィン配位子として用いた銅一価錯 体の合成を行った。比較として、dppm配位子のみを用いた銅一価錯体も合成しその発光特 性についても調査を行った。
第 5 章の「総括」では、本研究で得られた成果を総括し、ホスフィンオキシド配位子を 有する銅一価錯体は固体状態で比較的強い青色発光を示すものが多く、青色発光材料への 応用の可能性を示したことを述べた。