Title 強いπ供与性架橋配位子により新奇な電子配置を有するランタン型複核錯体( はしがき )
Author(s) 海老原, 昌弘
Report No. 平成14年度-平成15年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2) 課題番号14540513) 研究成果報告書
Issue Date 2003
Type 研究報告書
Version
URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/675
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はしがき
金属原子間結合を持つクラスター錯体に関する研究は,過去30年あ革りの間に大
きく発展してき牢・近年では?一金属クラスター錯体を素子として,磁気特性や竜導性
などの機能を持った集合系を構築しようとする研究も盛んに行われている.この中で,
フロンティア軌道の組み合わせを考慮して集合体構築を目指すフロンティアオービ
タルエンジニアリングは,1つの重要な方向性である.この場合に,必要とするフロ
ンティア軌道をどのような配位子と金属の組み合わせで得るかが重要なポイントと
なる・本研究者は,これまでに金属間に結合を持つ新たな錯体を合成し,その構造を
決定するとともに,酸化還元電位や電子スペクトルなどの分子物性の測定と評価を行
ってきた・ランタン型複核錯体は金属間に結合を持つ錯体の中で最も基本的なもので
あり,その研究例も多い・このランタン型複核由体を錯体素子として考えた場合に,
電子状態と酸化数が異なる様々なものが素子として使えることが多様な集積型錯体
につながると考えられ昂.
本研究ではラ㌢タン型のロジウムとルテニウム複核錯体を中心に研究を行った」こ
の内ロジウム複核錯体に閲したは化合物を単離することはできなかったが,ルテニケ
ムに閲したは数種の錯体を得ることができた・ルテニウム複核錯体はRu25・の酸化状
態のものが最も多く報告されており,それ以外ではRuz射およびRuヱ6・のものが知られ
ている・これらの電子配置についてみると,Ruz5+に関しては¢Z冗482∂*が2のものがほ
とんどであり!これ以外には¢ユ花482が3-のものが一例知られているのみである.強い
花供与性架橋配位子をもつランタン型複核錯体を合成し,その電子状態について研究
,そ行い,トルテ土ウム錯体に関しては,Ru王子+と-しては2例日となる¢2が抽*3の電子状
態の錯体を得ることができたご
本研究における成果は以下のようにまとめられる.
1・イオウ原子上の冗型ローンペアーにより,冗供与性が非常に強いと考えられる
4,5-ジメチル」2-アミノチアゾラート(dmar)を架橋配位子とするランタン型ルテニウ
ム複核錯体【Ru2(dmaり.Cl】を合成し,Ⅹ線構造解析を行うとともに,その磁性などから
電子状態が¢2冗4抽*3であることを明らかにした・また,一電子酸化体である
【Ru2(dmat).Cl]PF6を合成し,ルテニウム錯体においてが軌道の電子が構造に与える影
響を初めて明らかにした.また,
2・アルキリジンをアキシァル配位子としてもつルテニウム複核錯体を合成し,その
構造を明らかにし,アキシァルに塩化物イオンをもつ錯体に比べて餌や嘩離がわ
ずかに伸びることを見いだした・Ru一触距離や酸化還元電位におよぼすアルキリジ
ン配位子の影響は,Gヱが6玩*3の電子状態の錯体においてもG2冗4∂Z8*が2の電子状態の
錯体と同程度であることが分かった.
3・酢酸および4,5-ジメチルー2-アミノチアゾラート混合配板子錯体を合成し,その構
造を明らかにした・Ru-Ru距離からこの錯体の電子状態はG2嘩Zが3ではなく
G2が828*が2であると推定された.