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合成及び天然高分子の微生物分解に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 土 井 明 夫

学 位 論 文 題 名

合成及び天然高分子の微生物分解に関する研究

学位論文内容の要旨

  1960―70年代 に於て ,プ ラスチ ックな どの合 成高分 子化 合物の 廃棄物 が社会的な問題となり,

世 界的に 合成高 分子の 微生物 分解 の研究 が行わ れた。 その 結果, ポリビ ニルアルコール,ポリエ チ レング リコー ルなど ,一部 のものにっいては微生物によって分解されることが明らかにされた。

し カヽし ,汎用 プラス チック など多くの合成高分子にっいては,きわめて難分解性であることが次 第 に明ら かにな ってき ている 。ま た,天 然ゴム の微生 物分 解にっ いては 従来から多数の報告があ る が,そ の多く はゴム 製品の 微生 物によ る劣化 防止の 観点 からな された ものであり,ゴム高分子 の 分解機 構等に っいて は殆ど 明ら かにな ってい なかっ た。

  本 研究で は,こ のよ うな背 景の中 で,

  1.プ ラスチ ックと して大 量に 使用さ れてい るポリ エチレ ン, ポリス チレン 及び合 成ゴ 厶原料     で あるポ リブ タジェ ン,ポ リイソ ブレ ンを取 り上げ ,これ らの合 成高分子の低分子量の同族     体 である オリ ゴマ― にっい て,分 子量 数百か ら数千 の比較 的高分 子量まで炭素源として利用     す る能カ のあ る菌を 新しく 自然界 から 分離し て,こ れらの 物質の 分子量と生分解性の関係を     検 討した 。

  2.固 体 状 態 の 天然 ゴ ム を 炭 素源 と し て よ く 生育 す るNocor匝a属の 放 線 菌 を 新し く 分 離 し     て ,この 菌株 による ゴム手 袋の分 解に っいて 研究し ,さら に配合 ・加硫条件の明らかな一連     の ゴムサ ンプ ルの分 解試験 を行っ た。 また, 丿血nとんo肌0nos属の細 菌の菌体外酵素による     ラ テック ス状 態の天 然ゴム の分解 にっ いても 研究し た。

  本 研究に よって ,合 成高分 子のオリゴマー分解菌の場合には生分解可能な分子量の上限があり,

そ れ以上 高分子 量のポ リマー は分解され難いことが明らかになった。一方,天然ゴムにっいては,

加 硫 状 態 の 天 然 ゴ ム が | 怕cor匝a属の 放 線 菌 菌 株に よ っ て , ラ テッ ク ス 状 態 の天 然 ゴ ム は ニ 髄凡と んom0凡ロs属の 細菌菌 株が細胞外に分泌する酸素添加酵素によって,それぞれゴ厶高分子 中 の二重 結合が 切断さ れるこ とを 見いだ して, 炭化水 素型 の高分 子化合 物の生分解に関する微生 物 学的お よび高 分子化 学的研 究の 発展に 寄与し た。

(2)

本 研究の 結果を 要約す ると,

1, 土 壌よ り 分 離 し たAlcaligenes属の 細菌No.559株は ,カチ オン重 合及 びポリ スチレ ンの熱   分 解に よっ て得ら れる化 学構造 の異な るス チレン の2量体を 資化ま たは分 解す る能カ を持っ   て いたが ,対応 する 構造を 持つ3量体は,いずれも菌の作用を受けなかった。No.559株によっ   て 分解 され なかっ たアニ オン重 合型の スチ レン2量体 にっい ても, 分解活 性を 示す混 合菌群   を 得るこ とが出 来た 。この 場合に も3量体は やはり 分解されなかったが,対応する単量体(ヘ   キ シルベ ンゼン )は 分解さ れた。

2. 軟 化剤 と し て ス ク ワラ ン を加 えてか ら超 音波処 理を行 うこと によ って, 分子量600あ るい   は それ 以 上 の 固 形の パ ラ フ ィ ン ワッ ク ス が 培 地中 に よ く 分 散さ れ る よ うに なり, 同時に   Acinetobacter属の 細菌No.351株に よる生 分解性 も改善 された 。こ のよう な方法 によっ て平   均 分子量600か ら800の市 販のポ リエチ レンワ ックス も微 生物に よって ある程 度分解,資化さ   れ るよう になっ た。

3.  Acinetobacter属 の細 菌No.351株憾 分子 量500以下の ブタジ ェンオ リゴ マーしか分解しな   か ったが ,Moraxella属の 細菌No.912株は分 子量1,000以上 のブ タジエ ンオリゴマーを分解   す ること が出来 た。 分子量2,000以 上のオ ルゴマ ―は培 地に 分散さ せるこ とが困難であり,

  分 散条件 によっ て微 生物分 解性に 差がみ られた 。ま た,分子量10,000以上のポリマ―は培地   に 分 散 さ せ る こ と が 出 来 ず , ほ と ん ど 生 分 解 も さ れ な か っ た 。   . 4.土壌 より 分離し た細菌No.502株は 分子量 約1,000の合 成のイソプレンオリゴマーを炭素源と   し て生育 するこ とが 出来た 。本菌 株は分 子量1,000以下 のオ リゴマ ーでも 完全には分解でき   ず ,また 分子量2,500以 上のオ リゴマーを分解することが出来なかった。これは,オリゴマ一   中 に 存 在 す る 分 枝 構 造 が 分 解 に 対 し て 阻 害 的 に 働 く た め と 推 定 さ れ た 。 5. 土 壌よ り 新 し く 分 離し たNocardia属 の 放 線 菌No.835株 は, 固体状 態の天 然ゴム 及び 合成   の イソプ レンゴ ムを 唯一炭 素源と してよく生育したが,ブタジエンゴ厶,ク口口プレンゴム,

  ス チレン ブタジ ェン ゴム等 の合成 ゴム類 には生 育で きなか った。 ゴム手 袋の分解過程の研究   に よって ,架橋 状態 のゴム 高分子 鎖が直 接微生 物に よって 切断さ れるこ とを示した。また,

  分 解中間 体とし て生 成する イソプ レンオ リゴマ ーの 化学構 造を決 定し, ゴム分子鎖中の二重   結 合の切 断反応 を明 らかに した。

6. 硫 黄と 加硫促 進剤の 量を変 えた 一連の 加硫天 然ゴム サン プルを 作成し て,No.835株によ る   分 解試験 を行っ た結 果,硫 黄ある いは促進剤の量が多いほど分解しにくくなる傾向を示した。

  ま た,こ こで用 いた 一連の サンプ ルでは 架橋密 度が 生分解 性を支 配する 主要な要因であるこ

(3)

    と が示 され た 。充 填剤 として 炭酸カルシウムを加 えた場合はほとん ど生分解性に影響 を与え     な か っ た が , カ ー ボ ン ブ ラ ッ ク を 配 合 し た サ ン プ ル は 明 ら か に 分 解し に くく なっ た 。   7. 新 し く 分 離 し たXanthomonas属の 細菌No.35株は 培 養濾 液中 に ゴ厶 分解 酵 素を 生産 す る     こ とが 示さ れ た。 粗酵 素によ るゴムラテックスの 分解反応生成物の 化学構造を決定し ,ゴ厶     分 解の 酵素 反 応を 定式 化 する こと が 出来 た。 | 02気相 中における反応生成 物(ALP:A,)     に1 Oの取 り 込み がみ られた ことから,ゴムの分 解反応は少なくと も部分的に酸素添 加酵素     によるもの と推定された。

  以 上 ,天 然及 び 合成 の炭 化水素 型のポルマ一及びオ リゴマーを唯一炭 素源として生育す る微生 物を 分 離し て, 高 分子 化合 物の微 生物分解に及ぼす分 子量の影響を明ら かにした。合成高 分子の オリゴマーの場 ムロは,各々のオ リゴマーの化学構造に対応して固有の分解微生物が分離されたが,

オツ ゴ マー の分 子 量も また 微生物 による分解性に大き な影響を及ぼすこ とが示された。高 分子量 のポ リ マー が分 解 され 難い 理由と しては,分解菌の基 質特異性の他にも ,固体状の高分子 を微生 物の 培 養液 中に 細 かく 分散 させる ことが難しいこと, および合成高分子 の多くがミクロ分 枝構造 を持っことなど が挙げられる。ゴ 厶分角罕菌の場合に は分解可能な分子 量の上限はなく,架橋した ゴ厶 製 品や 溶剤 不 溶性 のゲ ル粒子 のように実際上無限 大の分子量を持っ と見なされるもの でも分 解さ れ た。 これ は ,本 研究 で明ら かになったようにゴ ム分解菌が天然ゴ ムの分子鎖を切断 する能 カを 持 っこ とに よ って 初め て可能 になったものと考え られる。結論とし て,高分子量のポ ルマー の分 解 菌は 分子 鎖 の切 断能 カを持 っことが必要であり ,分子鎖中に微生 物によって切断可 能な結 合を持っようナ ょ高分子は生分解 可能であることが推 定された。

学位論文審査の要旨

  本 論文 は 和文86頁 , 図46,表16,引用文献128,研究史,7章,和文 および英文総括から なり ほか に参 考 論文9編が 付さ れ てい る。

プ ラ スチ ック な どの 合成 高分子化合物の廃 棄物は埋立地にお いてもいっまでも腐 らず,焼却処

男 守

房  

  敏

田 間

冨 本

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

理においても高温て炉を傷めるなど,社会的な問題となヮている。合成高分子の微生物分解の研 究も盛んに行われているが,汎用プラスチックなど多くの合成高分子にっいては,きわめて難分 解性であることが次第に明らかになってきている。一方,天然ゴムの微生物分解にっいては従来 から多数の報告があるが,その多くはゴム製品の微生物による劣化防止の観点からなされたもの で あ り , ゴ ム 高 分 子 の 分 解 機 構 等 に っ い て は 殆 ど 明 ら か に な っ て い な か っ た 。   本研究では,4種類の炭化水素型の合成高分子のオリゴマーを炭素源として利用する能カのあ る菌を新しく自然界から分離して,これらの物質の分子量と生分解性の関係を検討すると共に,

天然ゴムの微生物による分解機構を研究して,合成及び天然の炭化水素型の高分子の微生物分解 に及ぼす化学構造と分子量の影響を明らかにしたものである。

  第二編,研究史でIま,合成高分子及び天然ゴムの微生物分解に関する研究史にっいて述べられ ている。

  第三編合成高分子オリゴマーの微生物分解,第一章では,土壌より分離したスチレンオリゴマー の分解微生物は化学構造の異なる4種類のスチレンの2量体を資化または分解する能カを持って いるが,対応する構造を持つ3量体はいずれも菌の作用を受けなかったことが述べられている。

  第二章でtま,工チレンオリゴマーの微生物分解にっいて述べられており,市販のポリエチレン ワックスの培地中への分散条件を改善することによって,生分解性も向上することを示した。

  第三章では,ブタジエンオリゴマーの微生物分解にっいて述べられており,下記の内容が含ま れている。

    1.Acinetobacter属の細菌No.351株は分子量500以下のブタジエンオリゴマーしか分解しな     かったが,Moraxella属の細菌No.912株は分子量1,000以上のブタジェンオルゴマーを分解     することが出来た。

  2.分子量2,000以上のオルゴマーは培地に分散させることが困難であり,分散条件によヮて     微生物分解性に差がみられた。

  第四章では,イソプレンオIJゴマーの微生物分解にっいて述べられており,下記の内容が合ま れている。土壌より分離した細菌No.502株は分子量約1,000の合成イソプレンオリゴマーを炭素源 として生育することが出来た。オリゴマ一中に存在する分枝構造が分解に対して阻害的に働くこ とが推定された。

  第四編天然ゴムの微生物分解第一章では,加硫天然ゴムの微生物による分解機構にっいて述 べられており,下記の内容が含まれている。

    1.土壌より新しく分離したNocardia属の放線菌N0835株は,固体状態の天然ゴム及び合成

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    のイソプレンゴムを唯一炭素源としてよく生育したが,その他の合成ゴムには生育できな     かった。

  2.分解中間体として生成するイソプレンオリゴマーの化学講座を決定し,ゴム分子鎖中の二     重結合の切断反応を明らかにした。

  第二章では,加硫ゴムの配合薬剤の生分解に対する効果にっいて述べられており,下記の内容 が含まれている。

  1,硫黄あるいは促進剤の量が多いほど分解し難くなる傾向を示し,架橋密度が生分解性を支     配する主要な要因であることが示された。

  2.充填剤として炭酸カルシウムを加えた場合はほとんど生分解性に影響を与えなかったが,

    カ ー ボ ン ブ ラ ッ ク を 配 合 し た サ ン プ ル は 明 ら か に 分 解 し に く く な っ た 。   第三章では,ゴム分解酵素による天然ゴムラテックスの分解にっいて述べられており,下記の 内容が含まれている。

  1.新しく分 離したXanthomonas属の細菌No.35株が培養濾液中に生産するゴム分解酵素に     よるゴムラテックスの分解生成物の化学構造を決定し,ゴム分解の酵素反応を定式化するこ     とが出来た。

  2, 't'02気相中における反応生成物(Ai.P 2A,)に| Oの取り込みがみられたことから,ゴ     ム の 分 解 反 応 は 少 な く と も 部 分 的 に 酸 素 添 加 酵 素 に よ る も の と 推 定 さ れ た 。   以上の様に,天然ゴム及び合成のオリゴマーの微生物分解にっいて微生物学および高分子化学 の両面から解析を行い,炭化水素型の高分子の生分解に及ぼす化学構造及び分子量の影響に関す る研究にっいて基礎的な貢献を果たした。

  よって,審査員一同は別に行った学力確認試験の結果と併せて,本論文の提出者土井明夫は博 士(農学)の学位を受けるのに充分な資格があるもと認定した。

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