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博 士 ( 工 学 ) 大 鐘 武 雄

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 大 鐘 武 雄

学 位 論 文 題 名

陸 上 移 動 通 信 に お け る 多 重 波 伝搬 ひず みと そ の 補 償 方 法 に 関 する 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  陸 上移 動通 信,すなわち,携帯電話や車載用電話は現在需要 の急激な伸びを示し,平成 4年11月 現在 では,各事業者合計で 約160万局に到達している. また,世界的に見ると,こ れま での アナ ログFM方 式か らデ ィジ タル 方式 によ るサ ー ピス へと 移り変わりつっある.

  このディジタル方式はヨ―ロッパで採用されているGSM(Group Special Mobile)方式と,

北米 方式 ,日 本方式の3種類が実用 化されている.GSM方式は伝 送速度270kbpsの8チャネル TDMA方式,北米および日本方式は伝送速度48. 6kbps,42 kbpsの3チャネルTDMA方式となって いる .こ れら は各チャネルの伝送速度が10〜16kbps程度の速度 であるが,今後,ISDNへの 対応 も検 討さ れており,FPLMTSという世界標準の構想では1920kbpsまでの高速伝送も考慮 されている.このような高速伝送の実現に際し課題となるのが選択性フェージングである.

これ は陸 上移 動通信における伝搬環境が複雑であるため,送受 信機間に複数のパスが存在 し, これ らの 行路長差によって生ずる到達時間差が符号間干渉 を発生させる現象である.

選択 性フ ェー ジング対策としては,各到来波の遅延時間差を調 整して合成する方式である 適応 等化 器に 関して研究が進められてきた.しかし,適応等化 器はシンポル長で規格化し た 遅 延 時 間 差 が 大 き く な る と 処 理が 複雑 とな り, 実現 が非 常 に困 難に なっ てし まう .   一 方, 近年 ,選択性フェージング対策として,アダプティブ ァレーによる遅延波除去技 術が 提案 され てきた.アダプティブァレーは,複数のアンテナ に適切な重み付けを行うこ とに よっ て指 向性パターンを自由に変化させ,非希望波を抑圧 し,アレーの出カを最適に 制御 する 技術 である.これを選択性フェージング対策技術とし て適用した場合は,遅延波 を不要ナょ到来波として抑圧する動作となる.このアダプティブァレーの最も大きな特長は,

直接 波と 遅延 波との相互相関の減少,すなわち,遅延時間差の 増加に伴い,遅延波の抑圧 特性 が向 上す ることである.しかし,具体的な通信形態を仮定 したモデルでの誤り率特性 に関する検討例は少なく,特に通信分野の研究者に対して具体的ナょ有効性を示すには今一 歩至らなかった.

  そ こで ,本 論文は伝送速度,変調方式,伝搬路モデルを具体 的に定義し,これらの環境 の下 でア ダプ ティブァレーの誤り率特性を検討することを目的 とした.そのため,都市内 の多 重波 伝搬 の様子を測定し,伝搬波モデルに反映させ,計算 機シミュレーションによる 特性 評価 を行 うとともに,その有効性を補強するために,アダ プティブァレーを適用した GMSK(Gaussianーfiltered Minimum Shift Keying)伝送装置を試作し,実際の多重波伝搬条 件下において誤り率特性を評価した.本論文ではこれら の検討を8章からなる構成にまとめ たものである.

  第1章ではこれまで述べた 陸上移動通信の現状および将来動向から本研究の背景にっいて

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述べている.

  第2章で はァ ダプティブァレ一技術の検討の前に,陸上移動多重 波伝搬によるフェージン グ発 生の しく みに っい て解 説し て いる .また,その一般的な対策 技術である適応等化技術 にっいて調査し,遅延時間の大きい到来波の 等化には処理量の増加が生じることナょどの問 題点にも言及している.

  第3章お よび 第4章は ,選 択性 フ ェー ジング対策技術としてのア グプティブァレ一技術の 評価 の前 に, 多重 波が 種々 の方 向 から 到来する遅延波で構成され ていることを確認するこ とを 目的 とし ている.第3章では市街地及び郊外地が混在する東京 都小金井市付近の地域に おい て,Coxが 提案したPN相関法により複素遅延プロファイルを測 定した結果,遅延一ドッ ブラ ース ペク トル 特性 が周 囲の 地 形地 物とよく対応しているとと もに,市街地と郊外地と では多重波の発生構造に差異があることを明 らかにしている.

  第4章で は遅 延一ドップラースペクトルによる解析では分離でき なかった左右の到来波の 縮退を,2素子の アンテナアレ―と簡易ナょ2波分離アルゴリズムにより解くことができるこ とを明らかにした.この推定手法を用いた測 定系を使用し,実際に遅延一到来方向推定を行 った結果では,得られた到来波の情報と実際 の反射物体の位置とがよく一致することから,

十分ナょ信頼性が得られていることが明らか とナょった.

  第5章で は高 速のディジタル陸上移動通信における選択性フェー ジング対策技術としてア ダプ ティ ブァ レ一 技術 を提 案し , 変調 方式としてGMSK,アレーの 制御アルゴリズムとして CMA(Constant Modulus Algorithm)を採用して,計算機シミュレー ションにより誤り率特性 の検 討を 行っ た. 第3章 の結 果か ら進 行方 向前方および後方から到来する2っの到来波を仮 定した伝搬路モデルにおいて誤り率特性を検 討した結果,選択性フェージング下において,

アダ プテ ィブ ァレ ーの ない 場合 に 生じ ていた軽減困難誤りがなく なることがわかった.誤 り率ix io‑。での所要Eb/N。は,て 1Tの場合で約10. 5dB,r 4Tの場合は約9dBであり,rが 大き い程 向上 する こと がわ かっ た .ま た,一様フェージング下に おいても,アダプティブ アレーのナょい場合に比ベ誤り率ixio‑。で約15dBの改善が得られ,一様フェ―ジング対策と しても有効であることがわかった.

  第6章で は, 試作した高速GMSK伝送用アダプティプァレ―装置の 概要について,特に新し く採用したDBF(Digital Beam Forming)方式や蓄積一括復調方式,ベースバンドでのGMSK同 期検波方式等の新技術にっいて述べている.

  第7章では,第6章で述べたCMAアダプティプァレーを適用した高速GMSK伝送装置を用いて,

東京 都内 にお ける3っの地域において伝送実験を行い,誤り率特性 ,および指向性パターン の解析を行った結果にっいて述べている.

  郵 政省 通信 総合 研究 所構 内で の 走行 実験では,一様フェージン グ条件下での誤り率特性 の測 定を 行い ,ア グプ ティ ブァ レ ーが 最大比合成型空間ダイバー シチと等価な動作を行う ことによって雑音の影響を低減することを明 らかにした,

  さ らに ,緩 やか な選 択性 フェ ー ジン グの影響下である東京都小 金井市内での測定では,

誤り率ix io‑ で約17. 8dBの改善が得られること,また,さらに厳しい選択性フェージング の影響を受ける東京都中央区での測定では, 誤り率ix io‑ における利得が約21. 5dBなるこ とか ら, 厳し い選 択性 フェ ージ ン グ下 でもァダプティブァレーが 良好に動作し,選択性フ エージングの影響が大きいほどその改善効果 が高いことが明らかとナょった.特に第7章の結 果は ,計 算機 シミ ュレ ーシ ョン で 確認 された有効性が実際の伝搬 環境でも得られることを 証明した点で,その意義が非常に大きい.

  第8章は これ ら本論文で得られた結果をまとめて,選択性フェー ジング対策としてのアダ ブティブァレー技術の有効性を結諭づけてい る.

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学 位 論 文 審査 の 要旨 主 査    教 授    伊 藤 精 彦 副 査    教 授    栃 内 香 次 副 査    教 授    北 島 秀 夫 副 査    助 教 授    小 川 恭孝

学 位 論 文 題 名

陸 上 移 動 通 信 に お け る 多 重 波 伝 搬ひ ずみ と そ の 補 償 方 法 に 関 す る研 究

  携帯 電話 や車 載用 電話 に代 表さ れる 陸上移動通信は需要の急激な 伸びを示すと 共 にこ れま での アナ 口グFM方 式か らデ ィジタル方式によるサービス へと変わりつ っ ある 。今 後、ISDNに対 応す るた め高 速伝送方式が検討されており 、世界標準の 構 想で は約2Mbpsの高速伝送も考慮されている。このような高速伝送 において問題 と なる のが 選択 性フ ェー ジン グす なわ ち多重波伝搬ひずみである。 これは陸上移 動 通信 にお ける 伝搬 環境 が複 雑で ある ため、送受信機間に複数のパ スが存在し、

こ れら の行 路長 差に よっ て生 ずる 到達 時間差が符号間干渉を発生さ せる現象であ る 。選 択性 フェ ージ ング 対策 とし ては 、各到来波の遅延時間差を調 整して合成す る 方式 であ る適 応等 化器 に関 して 研究 が進められてきた。しかし、 適応等化器は シンボル長で規格化 した遅延時間差が大きくナょると処理が複雑となり、実現が非 常に困難になる。

  一方 、近 年、 選択 性フ ェー ジン グ対 策として、アダプティブァレ ーによる遅延 波 除去 技術 が提 案さ れて きた 。ア ダプ ティブァレーは、複数のアン テナに適切な 重 み付 けを 行う こと によ って 指向 性パ ターンを自由に変化させ、非 希望波を抑圧 し 、ア レ― の出 カを 最適 に制 御す る技 術である。このアダプティブ ァレーの最も 大きナょ特長は、遅延時間差の長い多重伝搬波ほどその抑圧特性.が向上することで あ る。 しか し、 具体 的な 通信 形態 を仮 定したモデルでの誤り率特性 に関する検討 例は少ナょく、特に 通信分野の研究者に対して具体的な有効性を示すには至らなか った。

  本論 文は 多重 波伝 搬ひ ずみ の特 性を 明確化すると共に具体的な通 信系における ア ダプ ティ ブァ レー のフ ェー ジン グ軽 減効果の検討を行うことを目 的としたもの で主要な成果は以下 の諸点に要約される。

  1) 選択 性 フェ ージ ング の考 察を 行う ため 多重 波伝 搬構 造の 解明 を行った。具 体 的に は、 市街 地及 び郊 外地 が混 在す る東京都小金井市付近の地域 において、PN 相関法により複素遅 延プ口ファイルを測定した。その結果、遅延一ドップラ―スペ ク トル 特性 が周 囲の 地形 地物 とよ く対 応しているとともに、市街地 と郊外地とで

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は多重波 の発生構造に差異があることを明らかにした。

  2)ア ダプ ティ ブァ レー によ る選 択性 フェ ― ジン グ軽 減効果を評価するため、

変 調方 式と してGMSK(Gaussian‑filtered Minimum Shift Keying)、アレ―の制御 アルゴリ ズムとしてCMA(Constant Modulus Algorithm)を採用して、計算機シミュ レ ーシ ョン によ り 誤り 率特 性の 検討を行った。伝搬実験の結果をもとに進行方向 前 方お よび 後方 か ら到 来す る2っの 到来 波を 仮 定し た伝 搬路モデルにおいて誤り 率 特性 を検 討し た とこ ろ、 選択 性フェージング下において、アダプティブァレ―

のない場 合に生じていた軽減困難誤りがナょくナょることがわかった。また、アダプ テ ィ ブ ァ レ ー は 一 様 フ ェ ー ジ ン グ 対 策 と し て も 有 効 で あ る こ と がわ かっ た。

  3) 高 速GMSK伝 送用 ア ダプ ティ ブァ レ一 装置 を試 作し 、東 京都 内に おけ る3つ の 地域 にお ぃて 伝 送実 験を 行い 、誤り率特性、および指向性パタ―ンの解析を行 っ た。 郵政 省通 信 総合 研究 所構 内での走行実験では、ー様フェージング条件下で の 誤り 率特 性の 測 定を 行い 、ア ダプティブァレーが最大比合成型空間ダイバーシ チ と等 価な 動作 を 行う こと によ って雑音の影響を低減することを明らかにした。

また、緩 やかな選択性フェージングの影響がある東京都小金井市内での測定では、

誤り率ix ioー で約17. 8dBの改善が得られること、さらに厳しい選択性フェージン グの影響 を受ける東京都中央区での測定では、誤り率ix ioー における利得が約2 l. 5dBとなることから、選択性フェ ージングの影響が大きいほどァダプティブァレ ーの改善 効果が高いことが明らかとナょった。

  これ を要 する に 、著 者は 、陸 上移動通信における多重波伝搬ひずみ特性の解明 を 行う とと もに ア ダプ ティ ブァ レーによるひずみの補償法に関して有益な新知見 を 得 た も の で あ り 、 移 動 体 通 信 工 学 の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 で あ る 。   よっ て著 者は 、 北海 道大 学博 士(工学)の学位を授与される資格あるものと認 める。

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参照

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