湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想
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(2) た「制憲」の思想が温存されることにもつながったとい. となく、「自主憲法制定論」や「押し付け憲法論」といっ. プラットフォームを醸成する機会を失い、研鑽を経るこ. 社会ではその後、憲法典の改正を十分に議論するための. 憲論を抑える力を持っていた。しかし同時に、戦後日本. となり、憲法と現実の乖離を重大視する改憲派の明文改. の解釈と運用で憲法秩序を創造する空間を切り拓く契機. 法典だけでなく法の外側を含んだ秩序として捉え、憲法. の相克のなかで登場した「生きた憲法論」は、憲法を憲. のでもあった。「自主憲法制定論」や「憲法無効論」と. 鮮明にあらわれたのと同時に、その潮流をせき止めるも. をめぐる議論を軸として検討する。. 一らによる安全保障基本法構想および「平和的生存権」. のような意味を持つものであるかを、憲法学者の深瀬忠. 争後に澎湃した改憲論を取り上げ、これらが歴史的にど. この一九九〇年代の改憲論、 特に「平 そこで本稿では、 和主義」という憲法価値が動揺する契機となった湾岸戦. 題として残されている。. この転換の歴史的意味を問うことが、筆者の研究上の課. の復古主義的な改憲論とは明らかに様相が異なっており、. これまでの改憲論、特に一九五〇年代から六〇年代初頭. この一九九〇年代の改憲論(明文ないし、 解釈改憲論)は、. 「 改 憲 」 で は な く「 解 釈 法 の 確 定 」 に 収 斂 し た 議 論 と し. これまで安定的に解釈法の規範性が保たれてきた。この. のが、湾岸戦争を画期としたPKO協力法をめぐる議論. て き た。 そ し て、 九 条 と 集 団 安 全 保 障 が 論 点 に な っ た. 団的自衛権、九条と集団安全保障の問題として論じられ. える。 戦後日本において改憲論議の重要論点となってきたの は、憲法第九条と安全保障の問題である。この問題は、 一方、「生きた憲法論」が深く浸透していたからこそ、 政府の解釈、判例、専門家集団の学説の諸作用によって、 その時々の政治状況のなかで、九条と自衛隊、九条と集. て注目されるのが、一九九〇年代、湾岸戦争時に日本の. 国際貢献のあり方をめぐって活発化した改憲論議である。 である。周知の通り、PKO協力法成立後、宮沢喜一内. 二.
(3) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. 郎や羽田孜などによる「改革フォーラム二一」が賛成し. 然ながら、安全保障基本法構想についてもこうした分析. 戦後憲法史研究は、護憲派と改憲派の二項対立ないし 解釈改憲派を加えた三つ巴の図式を前提としてきた。当. 閣に野党から内閣不信任案が出され、自民党内の小沢一. たことで可決され、総選挙の結果、細川護煕連立政権が. 貢献のあり方が問われ、自衛隊の国際貢献をめぐって改. たのが冷戦の終結である。冷戦終結で改めて日本の国際. にとって大きな転換点になる。その転換点の発端になっ. 細川内閣という非自民非共産の連立政権は、五五年体制. での研究では、安全保障基本法構想が生み出された思想. れた「蟻の一穴」としてみられている。一方で、これま. 基本法方式は、もっぱら護憲派が改憲論に引きずりこま. 手段であるとして批判的に検討されている ②。安全保障. 全保障基本法構想は、同時代の護憲派論者から、改憲の. 誕生し、選挙制度改革を中心とした政治改革が行われた。 枠組みのなかで多数の識者に論じられてきた。特に、安. 憲論議が活発化した。東西冷戦が終わり、新たな国際秩. 的背景やそれがもたらした政治的帰結、その歴史的意味. 渡辺も大枠としては、新自由主義と新たな帝国主義への. 序が模索されるなかで、国連の平和維持活動や国連の集. ここで着目すべきことは、九〇年代の改憲論議のなか で、護憲派と改憲派がその垣根を越えて、日本の国際社. 過程のなかで、実質的改憲論として安全保障基本法方式. については十分に考察されてこなかった。. 会での役割をめぐって新たな安全保障政策、すなわち安. を 評 価 し て い る。 一 九 五 五 年 体 制 が 成 立 し て 以 来 続 い. 団安全保障に自衛隊が参加できるか否かをめぐって、明. 全保障基本法を構想した点である。これまでの改憲論議. た「護憲派対改憲派」という枠組みを刷新し、明文改憲. 文改憲や憲法解釈の変更の是非が問われた。. とは異なり、護憲派と改憲派のあいだに「国際貢献」と. に関しての新たな可能性がひらかれたと解しながらも ④、. こ の 九 〇 年 代 の 改 憲 論 議 に 関 す る 先 行 研 究 と し て は、 小沢一郎の政治動向に着目した渡辺治の研究がある ③。. いう共通認識が成立したのである。. 三.
(4) 論議を位置づけし直し、通時的に分析する必要がある。. 本の憲法史に安全保障基本法を中心とした九〇年代改憲. 制約されていたことは否めない。よって、いま一度、日. 時代の研究であるため、当然ながら、当時の政治状況に. いる。このような渡辺の研究は、一九九〇年代という同. 格好の方便となり、改憲動向を大きく前進させたとして. 障基本法は社会党が自衛隊合憲論へ政策転換するための. 渡辺は、護憲派と改憲派の対立の緩衝材となった安全保. 歴史的意味を考察したい。. 機におけるPKO協力法前後の憲法九条をめぐる議論を. 的平和保障基本法試案」の検討を主軸に据えて、湾岸危. したがって、本稿では、安全保障基本法構想の思想的 淵源として、深瀬忠一をはじめとした憲法学者の「総合. できる。. に対する護憲派の鋭敏な危機意識があったとみることが. あり、その背景には日本国憲法が置かれている政治状況. によって彩られた世界秩序構想のなかで出てきた経緯が. 第一章 護憲論の創造的展開と安全保障構想. 跡付けることで、九〇年代の憲法の運用と解釈の転換の. 本稿では、具体的には、護憲派の側から安全保障基本 法というアイデアがでてきたことに着目する ⑤。安全保. 再編の起爆剤となった点に注目し、このアイデアが護憲. ―「平和的生存権」をめぐって―. 障基本法方式が政治のアクターの意図を超えて、与野党. 派、 改 憲 派、 解 釈 改 憲 派 の 三 つ 巴 に よ る 三 す く み 状 態. 憲方法として評価するのは、事態が含意する意味を矮小. る議論が行われた。その議論は、湾岸危機を契機にした. 冷戦が終結し、新たな国際秩序が模索されるなかで、 護憲派と目される憲法学者のあいだで、安全保障に関す. (五五年体制)を打開するような可能性を有していたこ. 化することになるのではないだろうか。安全保障基本法. 国際貢献をめぐる九条改憲論議のベースとなり、結果と. とを重視する。このアイデアを単なる改憲派の戦略的改. 方式は、もともとは深瀬忠一らによる豊かなヴィジョン. 四.
(5) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. は、射撃訓練や大砲実弾演習によって難聴などの健康被. 長 沼 事 件( 一 九 六 九 ~ 一 九 八 二 年 ) で あ る。 恵 庭 事 件. 全国憲法研究会が総合的平和保障の研究に取り組む 契機となったのは、恵庭事件(一九六三~一九六七年)、. である。. 問題を漸次的に解消することを企図した具体的立法構想. イデアである。それは、自衛隊の違憲性を直視して違憲. に関する研究の到達点が、安全保障基本法方式というア. 研究会が日本平和学会と提携して行った総合的平和保障. 結成した憲法問題研究会の後継組織ともいえる全国憲法. 民党の憲法調査会に対抗するために護憲派の憲法学者が. 案」 (以後、「試案」と明記)をあげることができる。自. その代表的な議論として深瀬忠一、小林直樹をはじめ とする憲法学者らが策定した「総合的平和保障基本法試. あったのか。そのことを、本章でみていきたい。. 憲派の憲法学者が模索した新たな安全保障政策とは何で. し て、 政 界 再 編 に 一 定 の 影 響 を 与 え る こ と に な る。 護. 保安林解除処分を取り消し、自衛隊は九条が禁じる戦力. 性があるとして、 「平和的生存権」の裁判規範性を認め、. 対象とされ、住民の「平和的生存権」が脅かされる危険. 判決では、基地が建設されたら有事の際に、敵国の攻撃. れに対して、住民は自衛隊違憲論を展開し、保安林の解. 有保安林の指定を解除して保安林の伐採を認めたが、そ. 空ミサイル基地を建設することを決定し、農林大臣は国. 長沼事件は、六七年、政府は第三次防衛整備計画にも とづき、北海道夕張郡長沼町に航空自衛隊のナイキ地対. し、検察も控訴を断念し、無罪が確定している。. の、自衛隊法第一二一条には該当しないという判決をだ. 注目された。札幌地方裁判所は、憲法判断を避けたもの. たため、自衛隊の合憲性がはじめて問われた裁判として. 衛隊法第一二一条違反(防衛用器物損壊)として起訴さ. ついに自衛隊島松演習場の通信線を切断したことで、自. 庭町の牧場経営者野崎兄弟が度重なる抗議を無視され、. 除は違法であるとして訴訟を提起した事件である。一審. れた事件である。被告人側が自衛隊違憲論で国側と争っ. 害、家畜の流産や乳量低下などの被害を受けた北海道恵. 五.
(6) まずは、憲法学者が二つの憲法訴訟をどのように評価 したのかをみていきたい。深瀬は、恵庭事件の判決が確. 案」である。. ウムを幾度も開催し、議論を積み重ねた。その成果が「試. た二つの憲法訴訟を受けて、全国憲法研究会はシンポジ. 憲法学界に甚大な衝撃を与えた。恵庭・長沼事件といっ. た判決は憲法判例史上はじめてのことであったことから、. を裁判規範として認めた。司法が自衛隊の違憲性を認め. 為 論 に も と づ い て 破 棄 さ れ た も の の、「 平 和 的 生 存 権 」. に該当するとして違憲判決を出した。第二審では統治行. が自覚され、実質的に示されたのである ⑥。. 体的侵害・抑制から保護する裁判規範でもあること. 憲法第九条は、統治権の制約の法規範であるのみな. 効果であることこそが最も重要である。すなわち、. 的に防衛したことが、国民にとって身近でリアルな. 体的に保障されている平和的人権の総体)を、実質. 権利」が、第九条と第一三条(第三章)によって具. いう「恐怖と欠乏から免かれ平和のうちに生存する. 乳牛酪農牧場の平和な生活が象徴する、憲法前文の. 告農民―一般国民―の「平和的生存権」 (北海道の. に国民の平和に生きる基本的人権が重罰等により侵. ること、今一つは、自衛隊の国防・軍事目的のため. 眼の前に、自衛隊の合憲性は未決着にとどまってい. 条戦争放棄が国家の軍事権に対する制限だけでなく、「平. 和に生存する権利」を人類普遍の原理としてとらえ、九. 判規範として認めた点にある。日本国憲法の前文の「平. このように、恵庭判決の意義は、第九条は「平和的生 存権」を安全保障政策の実施に伴う侵害から保護する裁. らず、国民の平和的生存権を国防軍事目的による具. 定したことの憲法意義について次のように述べている。. 害・抑圧されることが、裁判所により拒否され、保. 和的生存権」保障を具体的に示した憲法規範として解釈. すなわち、一つは、「憲法の番人」である裁判所の. 護が確定したこと。とりわけ、無罪判決により、被. 六.
(7) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. されていたのである。. 自衛隊の違憲性を指摘したのみならず、軍事的安全保障. それ自体が住民生活に被害を与える「構造的暴力」であ. り「平和的生存権」を法的権利として認めた点、そして、. 深瀬は、長沼事件の判決の意義について次のようにい う。. この判決の①歴史的意義は、「憲法の番人」として. とみる。憲法学界では、この二つの憲法訴訟の判決とむ. が示された点に、長沼事件が有する画期的な意味がある. 以外の自衛の手段を総合的に研究されるべきという所見. の厳正な解釈・適用によって、明確に自衛隊を違憲. ひとり自衛隊を違憲の戦力と断ずるのみならず、そ. ことである。(中略)③判決の積極的創造的見解が、. 法的権利(訴の利益)であることを明示的に認めた. されてはならない「平和的生存権」を本件において. 辺に及ぶおそれの強いミサイル基地設置によって侵. 界の国民の「平和的生存権」をも保障しなければならな. を強調する。つまり、その平和的生存保障体制は、全世. を、日本国憲法の「平和的生存権」は含意していること. る状況から国民を解放するための「積極的平和」の要請. 病、非識字などの構造的暴力により平和が侵害されてい. 戦 争 だ け で な く、 治 安 軍、 秘 密 警 察、 飢 餓、 貧 困、 疫. 深瀬は、二つの判決が示した意味を考察し、そこから 日本国憲法にもとづく平和的生存保障体制を導き出した。. と判断したことである。(中略)②その画期的意義は、 きあい、憲法理論として昇華する努力が行われた。. れ に か わ る、 軍 「 事力によらない自衛」手段が多々. 長沼町民が、有(戦)時に最初に攻撃され被害が周. あり、「総合的」に発見・整備される可能性と要請. いという思想を包含しているというのである。立憲制の. が、恵庭事件、長沼事件をめぐる憲法訴訟が示したもの. 秩序を構成する要件の一つは裁判所の違憲審査権である. を明記したことである ⑦。. 深瀬は、はじめての自衛隊違憲判決であること、国防. 七.
(8) ある。二つの憲法訴訟から、深瀬は日本国憲法前文の「恐. は、日本国憲法下の立憲制が有する豊富なヴィジョンで. 案」は、 総論及び各論三章、全一七条から構成されている。. としては裁判所に通用する裁判規範を重視する実定法解. 「試案」で示された総合的平和保障の目的と手段の論 理 に つ い て、 『平和憲法の創造的展開』、 『戦争放棄と平. 深瀬は、「平和憲法は、恵庭事件・長沼裁判を通じて、 その立体的構造と多面的性格と地方・国境の壁をこえて. 釈論がウェイトを占めていて、政治部門に対する立法・. 怖と欠乏から免かれ」た「平和的生存権」の裁判規範的. 国際社会に向う射程を知るにいたった。すなわち、平和. 行政の憲法学的指針や統制の政策や技術といった憲法政. 和的生存権』を参照しながら、深瀬の論議を中心にみて. 憲法は、核時代の戦争も軍備もない世界平和をめざす政. 策論とその立法学の研究が軽視されていたことが、なし. 保障と公権力に対する法的制限規範、そして国民生活と. 治道徳的理想を示し、軍事化の抑制・歯止め(「憲法上. 崩し的な解釈改憲が進行したひとつの要因であると分析. いく。. の制約」。集団的自衛権・海外派兵、攻撃兵器、徴兵制. されている ⑨。その点を反省し、日本国憲法の理念を貫. 行 政・ 立 法 権 力 の 行 使 を 指 導 統 制 す る 憲 法 原 則 を 読 み. 違憲等)となる法的規範であるのみならず、国民の身近. 徹するためには、政策や立法論の創造が必要であること. 取ったのである。. な平和的生存権(を戦争・軍備・戦争準備から守る)の. が強調されている。 「試案」の第一条では基本的指針と. 最初に、平和構想を「基本法方式」で提起したことの 狙いについて、憲法学の問題として、実践的な技術の学. 裁判的規範であるという立体的構造と多面的性格が明ら. 目的が示されている。. 日本国の安全と平和の保障は、平和憲法の精神に従. かとなった ⑧」と述べている。こうした判例と解釈学説 の進展の延長線上に、「試案」が構想されたのである。 では、次に「試案」の具体的内容をみていきたい。「試. 八.
(9) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. も仮想敵国視せず、平和的な外交的・経済的・文化. の撤廃をめざす不断の軍縮努力および如何なる国を. れている。こうした基本的指針は「汝平和を欲するなら. 破壊といった構造的暴力から人類を解放することが謳わ. 「平和的生存権」の保障を至高の目的とし、そのため に核戦争のみならず飢餓、貧困、疾病、資源浪費、環境. い、国際連合の平和維持機能の強化と全面完全軍備. 的・研究教育的協力を促進すること等を総合し、全. 本命題に立脚している。「平和的生存権」は、その権利. 世界の諸国民の相互理解と信頼の回復と確立に努め、 ば、平和に備え、平和的生存権を培え」という哲学的根 かつ、公正な世界的世論によって支持されるに値す. 基本とする。右の基本的指針は、核時代の戦争の絶. 網羅することで培われるものとされる。. 化的人的交流、教育、研究、安全保障といった全領域を. る平和国民となるよう最大限努力することをもって、 を尊重するという価値に基づく活動が、外交、経済、文. 滅的惨禍からわが国国民のみならず、人類の現在お. する権利を確保し享受できるようにすることを目的. ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存. 境破壊等の矛盾から人類を解放し、全世界の国民が. ますます激化する飢餓、貧困、疾病、資源浪費、環. 軍備による諸国民の過重な負担およびそれによって. らず全人類の「平和的生存権」を防衛することを目的に、. にむけて発展的に解消する。平和隊は、日本国民のみな. は自衛隊を平和隊に改編し、世界連邦的平和組織の樹立. 全と平和を確保する総合的平和保障戦略によって、まず. 強化に積極的に貢献する。そのことを通じて、日本の安. 格差といった課題を解決するために国連の平和維持機能. よび将来の世代を救い、またそのような戦争の誘発 普遍的な世界平和を追求する立場から、東西南北の調 を不可避ならしめる軍拡競争の悪循環を絶ち、かつ、 停役となり、軍事的緊張の緩和に尽力し、軍縮や貧富の. とする ⑩。. 全面完全軍縮をめざす普遍的世界平和組織の秩序の建設. 九.
(10) に寄与する組織として位置づけられている。. 抗組織を設置する。. 衛庁・自衛隊を平和省・平和隊に改編し、警備隊、国連. して、以下のような基本的形態を目標とし、窮極的には. め、次条(一二条)その他の諸条件の総合的整備と併行. 立を維持し、国民さらには人類の平和的生存権を守るた. 行例として、平和憲法の理念と法規に従い、わが国の独. を強化し、世界的及び国際地域的な軍縮努力の先導的実. 本的方針として、「自衛隊は、国際連合の平和維持機能. 和地帯の確保を実現する。自衛隊の平和憲法的改編の基. 辺国、そして東アジア・太平洋地域での非核・軍縮・平. および非核三原則などの実行例を提示し、日本とその周. が示され、その世界的な軍縮を促進するために平和憲法. 置かれ、平和的生存権が尊重される新たな世界連邦的恒. すべての国の自衛組織は世界連邦的平和組織の統制下に. 軍縮と提携して国内での軍縮を漸進的に実施することで、. 遣隊を含む世界平和組織に発展的に解消される。世界的. 平和組織の樹立に際して、世界警察隊および世界災害派. 救助隊、国際協力隊、国民的総抵抗組織は、世界連邦的. 力する。最終的に、警備隊、国連平和維持待機隊、災害. 軍縮にむけて国連平和維持隊と国連警察軍の実効化に協. 的軍縮を促進し、国連の平和維持機能を強化、全面完全. 基地の撤廃、日米中ソ相互不可侵友好条約締結など世界. 自衛隊体制の改編と併行して、日米安保体制を平和的 協力関係である日米友好協力基本条約に転換させ、米軍. 平和維持待機隊、災害救助隊、国際協力隊、国民的総抵. 具体的には、国連やその関連機関を中心とした全面完 全軍縮のプログラム、米ソ等の核戦力や通常戦力に関す. 世界連邦的平和組織の樹立に向け漸進的に根本的な改編. 久平和秩序が築かれる。. る軍縮計画と実施について日本が積極的に関与すること. を 行 い、 全 国 民 の 支 持 を 得、 真 に 世 界 平 和 に 寄 与 す る. 自主的な平和隊に発展的に解消していく ⑪」と定められ、 以上のような平和構想が、恵庭事件・長沼事件での判 決を受けとめ、深瀬をはじめとする憲法学者らの精力的. 平和隊整備計画・長期総合計画に基づいて、段階的に防. 一〇.
(11) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. な共同研究を通じてたどり着いた「試案」の核心部分で. 救命ボートになる。後述するが、この田英夫の「防衛基. この案が安全保障政策で窮地にたたされていた社会党の. 隊を縮小解体する点にある。社民連が社会党に提言した. て実現するために、自衛隊を認めた上で、漸次的に自衛. られている ⑫。田英夫の狙いは、九条の理念を立法によっ. 行使、核兵器保持の禁止、非核三原則の堅持等々が定め. を明記し、自衛隊の保有、専守防衛、集団的自衛権の不. ある。田英夫の「防衛基本法」要綱では、個別的自衛権. 響を受けたのが社民連の田英夫の「防衛基本法」要綱で. 九条に抵触しないという憲法解釈を踏まえ、国連協力法. の武力行使を伴わない国連活動への自衛隊の参加は憲法. 法の枠内でのPKO参加を実現するために、内閣法制局. の参加を検討し、法案作成に着手した ⑭。国連局は、憲. 省国連局政治課は、自衛隊の国連PKOや停戦監視団へ. とが明らかとなっている ⑬。佐藤栄作内閣のもとで外務. な政策に昇華するために、PKO参加を模索していたこ. ら、理念の領域にとどまっている国連中心主義を具体的. 日本のPKO参加問題に関しては、外務省は六〇年代か. 冷戦後、地域紛争が多発するなかで、国連の平和維持 活動が大きくその性格を変えることになる。これまで、. 第二章 PKO協力法と政府の九条解釈の動揺. 本法」要綱から着想を得た基本法方式が社会党の従来の. を起草したのである。最終的に、国連協力法案は、国連. ある。この「試案」は社民連という小政党を介して、政. 自衛隊違憲論に転換をもたらし、与野党再編の媒介項に. 憲章第六章の「紛争の平和的解決」による措置に協力す. 治の世界に波及していくことになる。この「試案」に影. なったのである。. ることを趣旨とする内容になった。作成過程で、東京新. 聞にスクープされ、社会党など野党にベトナム戦争に自. 衛隊を参加させる企てとして批判され頓挫することにな. 一一.
(12) 法制局も自衛隊の国連協力に関する憲法解釈を研磨して. たが、その後も外務省はPKO参加を模索し続け、内閣. にもとづく国際貢献を模索していた。その試みは頓挫し. られているという見解を堅持したうえで、国連中心主義. る。佐藤内閣は、自衛隊の海外派遣は憲法によって禁じ. 軍』の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛. への参加を一律に論ずることはできないが、当該『国連. 軍』は、個々の事例によりその目的が異なるので、それ. 海外派兵」に関する質問の答弁書で、 「いわゆる『国連. を持ち出して、政府の見解を質した。それは「自衛隊の. 反対する野党は、一九八〇年一〇月三〇日の鈴木答弁書. 隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えてい. きた。それは太平内閣の総合安全保障構想や竹下内閣の 「国際協力構想」として結実することになる ⑮。. 次のようにいう。. とで ⑯、戦後日本の従来の安全保障にかかわる憲法解釈. た。ここではPKO協力法案をめぐる議論をみていくこ. そして、五五年体制に代わる新たな政治体制が求められ. 際環境の変化のなかで、日本でも新たな安全保障政策、. もう御承知のように閣議で決定されて出されてくる。. が文書で行われております。この答弁書というのは、. かできないかという質問主意書に対する政府の答弁. ありまして、ここで、国連軍に自衛隊が参加できる. 昭和五十五年の十月三十日、政府答弁書というのが. る」というものである。たとえば、公明党の市川雄一は. 念願のPKO参加にみちをひらく転機となったのが、 湾岸危機である。冷戦崩壊前後に、アメリカ主導の「多. がいかに変わったのかを確認する。. に重いんですが、さらに閣議決定という手続上の重. 国籍軍」による紛争の介入が顕著になる。そのような国. 海部内閣の国連平和協力法の審議では、同法が集団的 自衛権、集団安全保障に関する従来の政府解釈に抵触す. みもこの答弁書には加わっている。. したがって、国会で総理が答えたということも非常. るかどうかという点が問題となった。国連平和協力法に. 一二.
(13) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. 目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊. そういう前提でお伺いするのですが、「「国連軍」の ます ⑰。. ですが、法制局長官の御答弁をいただきたいと思い. がこれに参加することは憲法上許されないと考えて. 武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加. は明快です。したがって、多国籍軍の目的・任務が. 加することは憲法上許されない」、こう政府答弁書. が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参. 国連軍の参加の場合でも、「「国連軍」の目的・任務. い答弁を繰り返された。したがって、決議の明快な. 性を確保するためという非常にその辺、皆さん苦し. まえているのか、踏まえていないのかという、実効. ずっと議論されておりましたように、国連決議を踏. れる手続のきちっとしたもの、多国籍軍は、ここで. 任務が、国連軍というのは国連決議に基づいて行わ. ことは憲法上許されないと。これは国連軍の目的・. 行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加する. 自衛隊の海外派遣をこれまでの憲法解釈の枠内で行う. は変わらないと述べている。. おります ⑱」として、国連協力に関する従来の政府解釈. ども、今の基本的な考え方は変わらないだろうと思って. またいろいろなことはあり得るだろうとは思いますけれ. 国連軍が多国籍軍にかわりました場合、その多国籍軍も. の関連で議論がされているところでございます。そこが、. そういう意味におきまして、これは我が国の武力行使と. を申し上げて、たしか答弁書になっていたと思いますが、. ることは憲法上許されないわけではない、かようなこと. 任務が武力行使を伴わないものであれば、これに参加す. に参加することは許されない、反面、その国連軍の目的・. 目的・任務が武力行使を伴うようなものであれば、これ. 「 (中略) 市川の質問に対して、工藤敦夫法制局長官は、 今おっしゃられましたように、いわゆる国連軍は、その. いる。」この主語を、多国籍軍の目的・任務が武力. することは憲法上許されない、こう当然読めるわけ. 一三.
(14) 中に入り込んでやれば、それはもうまさに我が国の自衛. 任務に武力行使を伴うもの、そういういわゆる国連軍の. 長官は、「(中略)いわばそういう武力行使、その目的・. ために、政府は次のような論理を展開した。工藤法制局. して次のように批判する。. し、市川は、この参加と協力との違いが明確ではないと. 憲法九条には抵触しないと強弁するしかなかった。しか. 国連の指揮下に服さない協力を参加と区分することで、. 日本が人的支援を行うには、内閣法制局は自衛隊員が参. 衛隊を参加させることは憲法上できなかった。その上で、. で組織された多国籍軍の任務は武力行使を伴うため、自. ているわけであります ⑲」と述べている。アメリカ主導. こに一つのはっきりした限界があろうか、かように思っ. 横から、その武力の行使をしているとは見られない、こ. 力行使をしていると見られるというものと、あくまでも. 加、横から協力する、それの中に入り込んでみずから武. 務と関連づけていたとしても、それに対していわゆる参. よろしいのですが、が、武力行使、これをその目的・任. の武力行使と、いわゆる国連軍、あるいは多国籍軍でも. う意味で参加ということを申し上げたわけであって、そ. とだけではない、まだもう一つのメルクマールがあ. だ単に自衛隊が武力行使をするかしないかというこ. の指揮下にある。この参加と協力という問題は、た. 題は、非常に難しい問題。国連軍は国連という一つ. いわけですから、その指揮に入る入らないという問. いのか、多国籍軍というのは統一した指揮者がいな. れた。(中略)多国籍軍の指揮下に入るのか入らな. か入らないかが一つのメルクマールだ、こう答弁さ. 会では、法制局長官は、国連軍の場合は指揮に入る. て、参加、協力の明快な基準を、この間の予算委員. する。我々は参加と協力の区別がつかない。したがっ. 前提としているわけですから、これに自衛隊が協力. 今回の平和協力法も、多国籍軍がこれは武力行使を. 隊がみずから武力行使をしたと同様な形になる、そうい. 加する平和協力隊が多国籍軍に協力するという体をとり、. 一四.
(15) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. り明快にする必要があると思いますよ。それを伺い. ルクマールを置いて判断をされるのか、これはやは. クマールというのは幾つあるんですか。どういうメ. りますと長官答えているじゃないですか。そのメル. 行使と一体になるようなもの、これは許されない、いわ. こから混乱するかもしれませんが、協力の中でも武力の. よろしかろうと思います。ただ私は、ちょっと議論がこ. 与する形態、こういうものは、当然これは協力と考えて. 入るとかいうことでなくて、そういう別の関与形態、関. ます。 」と、平和協力隊の業務が多国籍軍と一体では. い、こういうことは従来申し上げているところでござい. ば武力の行使そのものと密着しているんだから許されな. たい ⑳。. 市川は国連のように統一した指揮権を有さない多国籍 軍という組織の性格上、参加と協力との区別は明確にで. 政府は、野党から国連軍への平和協力隊の参加と協力 についての統一見解を出すことを迫られ、中山国務大臣. きないとして、政府の矛盾点を指摘した。それに対して、 ないことを強調するほかなかった。. ないではないか、こういう仰せですが、私は確かに数日. は次の政府見解を示した。. 工藤法制局長官は、「ただ、それではどうなるかわから. 前に、指揮のもとに入る、これが一つのメルクマールだ. しての一体性、一員としてといいますか、そういうふう. 入って、いわばそれの一体性といいますか、その組織と. ら申し上げます。. 委員お尋ねの過日の政府見解につきまして、これか. ろ う、 こ う い う ふ う に 申 し 上 げ ま し た。 指 揮 の も と に. な行動を予定する、そういう関与の仕方というのは明ら. 二 昭 和 五 五 年 一 〇 月 二 八 日 付 政 府 答 弁 書 に い う. 一 いわゆる「国連軍」に対する関与のあり方とし ては、 「参加」と「協力」とが考えられる。. かにといいますか、参加だろうと思います。それに対し まして、そういう指揮下に入るとかあるいは組織の中に. 一五.
(16) 「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に 入り、その一員として行動することを意味し、平和. 以上でございます 。. 三 これに対し、「協力」とは、「国連軍」に対する 右の「参加」を含む広い意味での関与形態を表すも. て、憲法上許されないと考えている。. 衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであっ. 自衛隊が当該「国連軍」に参加する場合と同様、自. した。こうした国連平和協力法は、佐藤内閣から、大平. 海部内閣は、自衛隊とは別部隊の平和協力隊を設置す ることで国連の平和維持活動への協力を合憲化しようと. この点を野党から批判される。. 一体化しないことを担保する法制上の仕組みがなかった。. である。しかしながら、国連平和協力法には武力行使と. 協力隊が当該「国連軍」に参加することは、当該「国 このように、武力行使と一体化しないのなら、多国籍 連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、 軍の活動に「協力」することは憲法上問題ないというの. のであり、当該「国連軍」の組織の外にあって行う. 内閣の総合安全保障論、一九八八年の竹下内閣のもとで. は憲法上許されないが、当該「国連軍」の武力行使. 当該「国連軍」の武力行使と一体となるようなもの. ら離脱し、小沢一郎の主導のもと、社会党を外した自民. いだで幹事長・書記長会談が行われた。社会党が協議か. 国 連 平 和 協 力 法 案 は 審 議 未 了、 廃 案 と な っ た が、 一九九〇年一一月八日に、自民、社会、民社、公明のあ. るものである。. 提唱された「国際協力構想」の延長線上に位置づけられ. 「参加」に至らない各種の支援をも含むと解される。 四 右の「参加」に至らない「協力」については、 当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うもの. と一体とならないようなものは憲法上許されると解. 公の「国連平和協力に関する三党合意覚書」がまとめら. であっても、それがすべて許されないわけではなく、. される。. 一六.
(17) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. したことは、国連に対する協力が資金・物資だけでなく. 連中心主義を貫く。②今国会の審議の過程で各党が一致. れた。三党合意覚書は、①憲法の平和原則を堅持し、国. 団安全保障について小沢調査会の答申案は次のような大. 胆な憲法解釈の変更を政府に求める。集団的自衛権、集. 保障に自衛隊は参加できることを可能にするために、大. 人的協力も必要であるということ。③自衛隊とは別個に、 胆な解釈を提起する。. る。以上の六点に関する三党の合意に基づいて、国際平. に基づき立法作業に着手し早急に成案を得るよう努力す. 従事することができるものとする。⑥この合意した原則. 緊急援助隊派遣法の定めるところにより災害救助活動に. 動に対する協力を行うものとする。⑤この組織は、国連. の組織は、PKO、国連決議に関連して人道的な救援活. る、集団的自衛権とは別の概念、即ち、国連が国際. 章、さらには日本国憲法前文にすでに内包されてい. は同時に国連の設立の趣旨や国連憲章第六章、第七. 基づく実力行使は認められていない。しかし、我々. は、自衛以外の実力行使、あるいは集団的自衛権に. ているが、現在の政府の憲法第九条の解釈において. 国連軍への参加は、ある程度の実力行使を前提とし. 国連の平和維持活動に協力する組織をつくること。④こ. 和協力法案の作成が行われた。. まわり、内外からの批判を招いたことを深刻にとらえた。. が廃案となり、湾岸戦争で人的協力ができず後手後手に. とする)が設置された。小沢調査会は、国連平和協力法. 一九九一年五月に、自民党内に小沢一郎を会長とする 「 国 際 貢 献 に 関 す る 特 別 調 査 会 」( 以 下、「 小 沢 調 査 会 」. が国としても、憲法第九条に関し、この概念にした. 社会で広く認められていることを承知している。我. 全保障」という名称が適切と考えられる)が、国際. 自衛権との混同を避けるために、むしろ「国際的安. 措置を担保する集団的安全保障という概念(集団的. 社会の平和秩序の維持のために、実力行使も含めた. そこで、小沢調査会はPKOのみならず国連の集団安全. 一七.
(18) であって、憲法第九条の禁止する我が国の「国際紛. 調して行われる平和の維持・回復のための実力行使. 連軍の活動は、国際的な合意に基づき、国際的に協. への参加が可能になるものと考える。すなわち、国. がえば、新たな政府解釈を行うことにより、国連軍. 小沢調査会の「国際的安全保障」という概念が依拠して. バーの反発が強かった。憲法調査会のメンバーの批判は、. 小沢調査会の答申案は、左右からの批判を招いた。そ の な か で も 自 民 党 内 で の 対 立、 特 に 憲 法 調 査 会 の メ ン. 国憲法の基本理念から導き出されている。. そのための実力行使は、憲法第九条には抵触しない. のではないというものである。憲法調査会は現行の政府. を掲げているのであって、国連軍参加を念頭においたも. 争解決手段としての戦争・実力行使」には該当せず、 い る 憲 法 前 文 は、 非 武 装 で 平 和 を 追 求 す る と い う 理 想. と考えられる 。. 解釈を変えるべきでないとして、小沢調査会の答申が出. 後者の武力行使を国連憲章や日本国憲法の前文を論拠に. 主権国家としての武力行使と、国際的な合意に基づく 平和の維持回復のための国連軍の武力行使を峻別して、. 会党のなかでも小沢調査会に同調して、国連中心の安全. とっても衝撃的であったのである。しかし、公明党や社. 調査会の答申案は社会党などの野党だけでなく自民党に. た段階で反対することを申し合わせた 。それほど小沢. して、憲法九条の規制外に位置づけている。ただし、国. 事項にとどめている 。集団的自衛権との混同を避ける. 行使といいきれるか疑義が残る場合があるとして、検討. 国際的な合意に基づいた平和の回復・維持のための実力. 加することは憲法上許されない」という従来の憲法解釈. 「国連軍」の目的・ しかし、内閣法制局はあくまでも「 任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参. な安全保障政策構想は与野党再編を促すことになる。. 連の指揮下に置かれない多国籍軍の武力行使に関しては、 保障構想を提起する動きも存在した。小沢調査会の新た. ために提起した「国際的安全保障」という概念が、日本. 一八.
(19) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. 公明、民社の三党合意覚書にはない自衛隊本体によるP. を堅持する。この時期、小沢調査会の設置には、自民、. につながったのである。. 障をめぐる憲法論議のプラットフォームを醸成すること. れた自衛隊のPKO参加をめぐる議論が、九条と安全保. 当然ながら、国際平和協力法案をめぐる国会の議論で は、その法案が成立すれば平和協力隊ではなく自衛隊本. 第三章 内閣法制局の世界連邦的国連中心主義. KO参加を可能にするように働きかける狙いがあった。 海部内閣は、一九九一年九月に国際平和協力法案を国会 に提出した。これは、前年の国連平和協力法案のような. た。内閣法制局は冷戦後の国際環境の変化に対応する目. 体による国連の平和維持活動が可能になるため、従来の. 多国籍軍への参加を明確に禁じながらも、自衛隊本体の. 的から、武力行使を事実上伴う国連の平和維持活動への. 政府解釈との整合性が厳しく問われることになった。社. PKF活動参加と人道的救援活動を可能するものであっ. 自衛隊の参加協力のため、「平和維持隊への参加に当たっ. ような歯止めが追加され、国際平和協力法案は一九九二. 三年後の見直しなど自衛隊の海外派遣が派兵にならない. 結、二年を超えて引き続き業務を行う場合の国会承認、. したのである。宮沢内閣のもとで、PKF本体業務の凍. がそれに協力することは可能ではあるとした解釈を展開. 武力行使を伴う国連の活動に一体化しないなら、自衛隊. 党との対立もまた、こうした憲法解釈の枠内での対立で. 融通性を持っていたからである。政府と小沢一郎、社会. 連参加についての憲法解釈は状況の変化にも対応できる. ことが可能であったのは、内閣法制局が研磨してきた国. のである。従来の憲法解釈の基本を維持しながら、その. 内でPKOへの自衛隊参加の道筋を切りひらこうとした. みになりながら、あくまでも政府は従来の憲法解釈の枠. ての基本方針」 (いわゆる「参加五原則」) を編みだして、 会党や共産党の違憲論と小沢調査会の解釈改憲論に板挟. 年六月一五日に成立する。この一年半にわたって続けら. 一九.
(20) 日本の国際貢献のあり方が問われるなかで、国連の平 和維持活動に人的貢献を行っていく点では、与野党のあ. しかなかった。. るものであります 」と述べている。非軍事での分野で. 救援活動を行うために国際平和協力隊を派遣しようとす. 設して、国連等からの要請にこたえようとするものであ. ります。第三には、国際平和維持活動及び人道的な国際. いだに対立はなかった。具体的な争点となったのは、国. るものであります。そして、その第一は、国際平和協力. として積極的に国際的な平和活動を推進していこうとす. 府案と一番性格の違う点は、非軍事・民生・文民を基調. ました国際平和活動に関する法律案は、まず第一は、政. 田哲は、法案の趣旨について、「私たちが提案をいたし. 動等に関する法律案」を参議院に提出した。社会党の野. 社会党が国際平和協力法の対案として「国際平和協力活. に参加することは憲法上問題ないとして、一定の理解を. 来、常設の国連軍ができた場合、国際公務員としてそれ. 解釈の変更に対して理解を求める。その際、宮沢は、将. 総裁選のまえに宮沢喜一と面会した小沢は、宮沢に 「国際的安全保障」という観点にもとづいた大胆な憲法. るものである。. 案後の、自民、公明、民社の三党合意の枠組みを踏襲す. 動に協力するという案は、先にみた国連平和協力法案廃. 連協力の主体が自衛隊であるか、文民であるかにあった。 自衛隊とは別組織で国連の平和維持活動や人道的救援活. 活動の基本原則として、協力活動の範囲について非軍事・. 隊とは別個の組織として、国連平和維持活動及び人道的. 明確に否定しているものであります。二つ目には、自衛. そして、自衛隊の海外派兵や武力の行使、武器の携帯を. 田は自衛隊とは別組織での国連協力を主張していたが、. た。社民連の江田五月と小沢一郎との対談のなかで、江. 国連中心主義の立場から、国連常設軍の創設を認めてい. は改憲が必要であると答えている 。基本的に、宮沢は、. 民生・文民、この立場を明確にしていることであります。 示しながらも、自衛隊を武力行使のために海外に出すに. 救援活動を行うための組織として国際平和協力機構を創. 二〇.
(21) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. ることは憲法上許されないという批判 に対して、林法. めであって、そういった活動に日本が経済的な負担をす. スエズに派遣された国連緊急軍は、各国の軍隊の寄せ集. が協力することは憲法上問題ないが、第二次中東戦争で. 高一の、国連警察軍が実際に生まれて、その活動に日本. なったことで、国連協力問題が再熱した。社会党の中村. 一九五八年に日本は安全保障理事会の非常任理事国と. 連してくるのかについては、国会で本格的に議論された。. う。国連加盟後、日本の国連協力が九条とどのように関. こうした構想は内閣法制局の国連協力についての憲法 解 釈 か ら 導 き 出 さ れ た と い え る。 こ の こ と を み て い こ. れていたのである 。. 別なく、自衛隊とは別組織でのPKO参加構想が共有さ. 後に小沢も国連待機軍構想を提唱するに至る。与野党の. 体の性格と日本の憲法との違いは一がいに言えない. ると思います。従いまして、その国際警察軍それ自. 戦監視のために派遣する、いろいろな目的があり得. 察軍を全く治安維持のために派遣する、あるいは休. ますカシミールの選挙というようなことで、国際警. す場合もございます。あるいは、問題になっており. の地域の警察権を維持する警察的な目的のために出. いましょうし、あるいはスエズのように、ある程度. 合として制裁行動をやるという場合の警察軍もござ. の目的から申しましても、ある一国に対して国際連. 的に作るという場合もございましょうし、また、そ. 連合の安保理事会なりあるいは総会の決議に基いて、. 国際連合自身が持つ場合もございましょうし、国際. ます。御承知のように、今御指摘のあったように、. 各国がそれぞれの国の軍隊の性格を維持しつつ連合. 制局長官は次のように反論している。. これは、一般に国際警察軍と呼ばれておりますもの. これはまさに国際警察活動でもありますし、いわゆ. しても、今度のエジプトの関係から考えますならば、. 問題があると思います。しかし、いずれにいたしま. についても、実は内容もいろいろ違いがあると思い. 二一.
(22) い、かように考えております 。. とは、私は、憲法九条にすぐ入ってくる問題じゃな. 合の加盟国としてそれに応分の負担をするというこ. 議があり、それが各国に勧告された場合に、国際連. ますし、また、そういうものに対して国際連合の決. る治安維持の目的を持ってやっておることでござい. 国際社会で高く評価されたにも関わらず、自衛隊の国連. あるとして、この要請を拒否している。国連外交として. 政府は憲法には違反しないが自衛隊法に違反する疑いが. 総 長 か ら 国 連 監 視 団 へ の 自 衛 隊 の 派 遣 要 請 が あ っ た が、. の撤退に貢献した。このとき、ハマーショルド国連事務. 団の増強する独自案を安保理に提出し、米英の中東から. 協力を拒否した政府に対して、自民党からも批判が出て. 権が倒れたことで、近隣諸国に革命が波及するのを恐れ. で知られている。イラクで起きた革命で、中東の西側政. 国連加盟後、日本の国連外交の真価が問われた五八年 のレバノン危機では、岸内閣は独自外交を展開したこと. 九条の埒外であるという認識を示していた。. 国連加盟国として日本がその活動に協力することは憲法. 会論議を追っていく。. その差異を浮き彫りにするために、国連協力に関する国. とについて与党と野党とのあいだに微妙な差異があった。. こでは、国連中心主義を具体的な政策に昇華していくこ. 言の撤回に追い込まれた。国会で、野党は池田内閣の自. 発言が波紋を呼び、辞任を求める声が高まり、松平は発. いた。一九六一年にレバノン紛争で日本が国連監視団へ 林法制局長官は治安維持を目的とし、国連総会の決議 にもとづく派遣であれば国連警察活動に相当するとして、 の派遣申請を断ったことを批判する松平康東国連大使の. た米英は国連決議を経ないまま軍を派遣し、ソ連やアラ. 衛隊の国連軍への参加問題に対する考えを追及した。そ. ブ連合などのアジア・アフリカ諸国の非難を招いた。岸. 一九六一年二月二三日の衆議院で、松平発言に関して 社会党の石橋政嗣が緊急質問を行った。石橋は保守内閣. 内閣は、米英軍の撤退の条件をつくるために、国連監視. 二二.
(23) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. が憲法の拡大解釈によって、自衛隊の海外派兵を国連協 力の名のもとで合憲化しようとしているのではないかと いう疑念を持つとして、どのような事例なら、国連の要. いまするから、最後の御答弁をお願いいたします 。. は当然のことであります。しからば、自衛隊法を改. 衛隊法上はできない、こう申しておりますが、これ. ら明快に答弁していただきたいのです。総理は、自. るのかどうかということについて、一つ総理の口か. であろうと、可能なのかどうか、憲法上許されてい. う形であろうと、国連当局の要請に応ずるという形. の海外派兵、それが、かりに国連軍に編入するとい. 私がお尋ねしましたうちで、日本の憲法上、自衛隊. い純然たる国内的警察の場合、あるいは、世界治安. う判断はできません。すなわち、戦争目的を持たな. 体的の事例でないと、憲法上違憲なりやいなやとい. につきましては、先ほど申し上げましたごとく、具. 連警察軍に今派兵ができるかできないかという問題. 合、これを排除する実力は持っておりまするが、国. であります。わが国は、自分の国が侵略を受けた場. 能あるいは組織等、いろいろの場合が考えられるの. 国連の警察軍につきましては、その目的、任務、機. 国連協力にはどのような憲法上の限界があるのかを明 確にすべきとしていう石橋の主張に対して、池田勇人総. 正しさえすれば憲法上派兵は可能と、このようにお. 維持機関としては、ほんとうに国家間の闘争のため. 請による自衛隊の海外派兵が憲法上可能になるかを追及. 考えになっておるのか、もし、問題別によって可能. でない治安問題につきましてできるかできないかと. 理は、次のような答弁を行った。. な場合もあるというならば、その限界を明確にお示. いうことになりますと、憲法論としてはいろいろ議. した 。. しを願いたい、このようにお尋ねいたしたのでござ. 二三.
(24) かも、世界治安維持のためならば、憲法上考えられ. 私は考えられる、ほんとうに警察目的であって、し. 兵する場合において、憲法第九条の問題との関係は. のであります。これが純然たる警察目的のために派. 考え、具体的の場合でないと判断はできないという. ては、その警察軍の目的、任務、機能、組織等から. 論がございましょう。私は、その憲法論につきまし. 点一つお尋ねをしておきたい 。. こういうように総理大臣はお考えなのですか。その. 具体的な事例いかんによっては憲法違反ではない、. ることについて、今の憲法のもとにおいても個々の. が一緒になって国連軍あるいは国連警察軍として出. 出動した場合、その目的その他によっては、自衛隊. 場合によっては名称を変えて国連警察軍というのが. 私がお尋ねをしたいのは、今の国連軍あるいはまた. これに対して池田総理は次のような答弁をしている。. る場合もあるということを言っているのであります。 ただ、問題は、今の自衛隊法におきましては、海外 派兵を認めておりません。この問題は、具体的な場 合でないと違憲の問題の判断はつかないと私は申し. 私は、憲法論といたしましては、軍事目的でない、. 池田総理の答弁は、国連協力にあたっての憲法的限界 に関しては予見的なことはいえないというものであった。. 安維持という純然たる警察目的の場合に、今の自衛. 構が高度化すると申しまするか、ある特定の国の治. 上げているのであります 。. すなわち一国と一国との戦闘行為に参加するという. 三月四日の衆議院予算委員会で上記の池田答弁を踏まえ. 隊法、それらは別といたしまして、憲法上できるか. んじゃなくて、ほんとうに国連というものがその機. て、社会党の横路節雄は次のように追及した。. できぬかということにつきましては、私はできる場. 二四.
(25) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. 合もあると考えております 。. 私は思っておるわけでございます。その点はお答え. したことがあるつもりでございます。それからまた、. 国連の行動が、たとえば朝鮮事変の場合のように、. 各国が主権国家として自分の軍隊を動かす、もちろ. うようなまあ国際問題に関連をいたしますが、一国. り国境監視とか、あるいは選挙の監視とか、そうい. はありますけれども、それが純然たる警察的、つま. あるいは国連緊急軍と申しますか、いろいろの名称. 称は国連軍と申しますか、国連警察軍と申しますか、. 私あると思いますが、たとえば国連の、いわゆる名. いわゆる――これは前にもここでお答えしたことが. えております。しかし現在の場合におきましても、. 今お読みになりました点は、私まさにその通りに考. はそのほかの部分もあるわけでございます。それで、. 今横路委員が私の答弁をお読みになりましたが、実. ついては国連がまさに指揮している、そういう場合. いう責任はございますけれども、それ以上の行動に. でございます。そうして各国は、人員を供出したと. 長なら事務総長の指揮のもとに全部動いているわけ. としての各国の行動はございません。国連の事務総. ります。この場合には、その行動は、実は主権国家. 供出して一つの緊急軍というようなものを作ってお. したとえばレバノンの場合のように、各国が兵員を. りでございます。そのことも申し上げました。しか. ということは、今横路委員がお読み上げになった通. ことはちょっと日本の今の憲法ではできないだろう. 連合軍のような形で動かしております。あの場合の. また、林法制局長官は国連の活動が憲法に違反しない 具体的事例について次のように言う。. の治安の確保というような観点から出てくれば、こ. があるわけでございます。そういういろいろの目的. ん国連軍の旗を持っておりますけれども、いわゆる. れはやはり九条二項の問題ではないんじゃないかと. 二五.
(26) 者も反対論のないところだと考えております 。. 申し上げました通りで、これはおそらくいかなる学. と思う。将来の理想的形態のことは、これはそこで. だ。この点は総理が仰せられたのと実は私は同じだ. とか、組織とか、これによって私は判断すべきもの. 武力侵略の禁止のための法規を定め、国際司法裁判所の. するための国際的手段を強化拡大をする。そのためには、. 軍備が撤廃された世界において、他国の侵略行為を防止. に 伴 っ て、 国 内 治 安 維 持 の た め、 兵 力 を 除 い て 一 切 の. 月十八日にいわゆる西欧側の軍縮案として、軍縮の進行. 強化、そしてそこで国連の警察軍を創設をする、となっ. 特 別 協 定 が 成 立 し な い で、 ま だ 実 現 し て い な い。 実 現. 国連憲章に定められた国連軍なるものは、これに関する. に対して、「間違いである。これはなぜかといいますと、. 横路は、池田や林がいう国連警察軍に自衛隊が派遣さ れることは個別具体的な事例ではあり得るという見解. いものであることを示唆していた。. このように林は、レバノン危機での国連監視団につい ては、政府が判断基準としている国連の理想的形態に近. いた。林修三は世界連邦政府創設を無限遠点におき、そ. 林法制局長官は国連軍の自衛隊の協力に関して積極的 であったが、後任者の高辻正巳の解釈は大きく異なって. 日本は人員を派遣できるとする。. 国際環境が作り出された場合に限り憲法に違反しないで. 国内治安のための警察力以外の武力が一切廃止された完. わゆる日本が主権国家としての行動ではないのだ 」と、. ているわけです。そこで初めて林法制局長官が言ったい. していないわけです、総理大臣。だから今のは、変則的. れにむかって漸次的に前進していく継起点として現状の. 全軍縮が達成し、国連憲章の特別協定で国連軍ができる. な国連軍や国連警察軍やいわゆる国連緊急軍と言っても. 連の理想的形態の一片を見出して、自衛隊の国連協力の. いいでしょう。そこで今林法制局長官が言っているのは、 国連をとらえながらも、現実の国連の活動のなかに、国 今の軍縮会議において、一つは西側の軍縮案、昨年の三. 二六.
(27) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. りますと、いま申し上げた姿と違っております。まあ典. るいは一九六四年のサイプラスとかいうようなことにな. 近東国連軍とか、あるいは一九六〇年のコンゴとか、あ. 辻は、「一九五〇年の朝鮮国連軍とか、一九五六年の中. 化問題は取り上げられた。この国連軍常設化問題で、高. 化の動きに前向きな主張を行った。国会でも国連軍常設. 本は、第一九回国連総会における一般演説で国連軍常設. 長 に 国 連 軍 常 設 化 の 提 案 を 行 っ た。 こ れ に 対 し て、 日. れに触発されたソ連が国連総会及び安全保障委員会の議. 諸国が国連待機軍を設置する国内法上の措置をとり、そ. 国連に協力するべきとしている 。一九六四年に、北欧. 法九八条第二項の趣旨に基づいて国連待機軍を設置して. 活路をひらこうとしていた。退官後ではあるが、林は憲. が残れば九条に抵触することになる。現実には国連の行. らである。国連軍が常設されても主権国家としての意思. 九条が禁じるのは、主権国家としての武力行使であるか. 内閣法制局が、自衛隊を国連の活動に提供することに 関しては、ときに積極的な姿勢をみせていたのも、憲法. 場に近づいている。. 的形態を世界連邦政府から一歩も動かさない社会党の立. 六五年以降は政府の解釈はより厳格になり、国連の理想. 九条に抵触しているとして、消極的な姿勢をみせていた。. は目的や機能を問わずに、それに人員を提供することは. 連待機軍それ自体は否定していないが、現状の国連軍で. 得ないだろうというようなことでございます 」と、国. のは、やはり憲法九条上多大の疑問があるといわざるを. け て お る。 そ う い う も の に は や は り い ま の 憲 法 の 規 定. 国が実は集団的にと申しますか、その勧告に応じて出か. あれは、御承知のとおりに、総会が勧告をしまして、各. の条件とし、当面は国連協力を非軍事分野に限定しなが. 的形態に国連の実態が近づくことを国連軍への人的貢献. するのは困難である。したがって、内閣法制局は、理想. 権国家としての意思が一切介在しない国連の行動を想定. 型的には朝鮮の場合をお考え願うといいのでありますが、 動といっても様々な目的や機能、組織の様態があり、主. からいいますと、日本の兵力が武力の行使をするという. 二七.
(28) 国連待機軍両方の可能性を想定していたといえる。. らも、理想形の国連への兵力提供にあたっても自衛隊と. 念を具現化するための過程と手続きを指し示す平和基本. をつくろう」は、従来の護憲論を脱却するため、憲法理. 法の制定を提言するものであった 。その平和基本法要. 綱(案)では、安全保障を国民生活におけるさまざまな. 脅威から国民の「平和的生存権」を守る安全保障の義務. を国が有すると謳い、個別的自衛権の行使を認め、日本. る。. 本法方式による九条解釈の変更や維持を提起したのであ. る。改憲派と護憲派双方は、それぞれの狙いのもとで基. 必至であった。それが安全保障基本法をめぐる議論であ. 自衛隊の海外派遣によって九条改憲議論が惹起するのは. ようとする立場との鋭い対立があった。戦後はじめての. 衛隊の活動領域を拡大しようとする立場と、逆に抑制し. PKO協力法成立後の国際貢献のあり方をめぐる憲法 論議では、九条のもとで国連の平和維持活動に関して自. 「共同提言」は、どのような問題意識から出てきたの だろうか。それは、「世界戦争の時代の終焉」によって、. 貢献を任務とする国際救難隊を設置して参加協力する。. 組し、非軍事を中心とした国連の平和維持活動に、国際. の装備、定員の削減を行い、最終的には国土警備隊に改. 和基本法を制定して最小限防御力にみあった形で自衛隊. 設立に努めることが示されている。経過措置として、平. 集団安全保障を基軸とし地球規模の集団安全保障機構の. 全保障政策の確立にあたって、地域的安全保障と国連の. の最小限防御力の保持を認めている。冷戦後の新たな安. 第四章 安全保障基本法の諸相と核時代の立憲主義思想. 一九九三年に雑誌『世界』に掲載された、古関彰一、 鈴木佑司、高橋進、高柳先男、前田哲男、山口定、山口. 九条と自衛隊、日米安保条約をめぐる国内の対立に終止. の主権のおよぶ領土、領海、領空を防衛する実力として. 二郎、和田春樹、坪井善明による「共同提言『平和基本法』. 二八.
(29) 湾岸戦争時の憲法第九条をめぐる議論と安全保障基本法構想. 精神は自衛隊と安保によって歪曲されてきたし、逆に自. 符をうつ必要があるという現状認識からである。憲法の. 釈に回帰するのか。それは、「従来の政府の九条解釈の. である。ではなぜ、 「共同提言」が憲法制定期の九条解. た民族感情や宗教対立が爆発し、地域紛争が激化してい. れている。米ソの対立が終わり、これまで抑えられてき. この歪みを憲法の精神に即して正していく必要性が説か. が提言されている。従来、自衛権は、主権国家の「固有. で あ っ た。 こ う し た 危 機 意 識 か ら 自 衛 権 の 新 た な 解 釈. としているように、自衛力の拡大に歯止めをかけるため. 度 化 し、 潜 在 的 な 攻 撃 可 能 性 を 持 っ た こ と で あ っ た 」. 衛隊と安保は憲法の存在によって歪曲されてきたとして、 問題性は、たとえば自衛という名目で装備がどんどん高. る。地域紛争を解決するには、対立の原因に対して、政. 治的経済的文化的に働きかけることが重要とされている。 の権利」として捉えられていたが、それを国連などの集. 項であらゆる戦力を禁止しているため、結果的に自衛戦. はなく、九条一項は自衛戦争を否定してはいないが、二. 「共同提言」は、自衛隊違憲論に立ちながらも、あら ゆる戦争を放棄したものとして九条一項を捉える解釈で. なってくる。. の 安 全 保 障 と し て、 国 連 の 集 団 安 全 保 障 が よ り 重 要 に. そうした国際社会の変化に即応して、地球規模での共通. PKO協力法の成立によって自衛隊の海外派遣が可能 になったことで、自衛力の拡大化を抑制する動きが生じ. である。. 主義を基調とした平和基本法の制定が提唱されているの. を防止することにあった。このように「共同提言」では、. 全保障に服するものとして解釈することで自衛権の濫用. 直しているのである 。その狙いは、自衛権を国連の安. そこから地球規模での「共通の安全保障」が要請される。 団安全保障システムによって賦与された権利として捉え. 争も禁止されるという立場にたっている 。このような. ていた。「共同提言」に参加した山口二郎は、PKO協. 自衛権を制限する枠組みをつくる第一歩として国連中心. 立場は、憲法制定期の吉田茂内閣がとっていた九条解釈. 二九.
(30) 基本法という準憲法的規範によって自衛隊という実力組. はもはや期待できないという認識を持っている 。平和. なっている現状を顧みれば、解釈改憲による自己規制に. ける日本の軍事的コミットメントを可能にする道具と. 力法の制定にみられるように、解釈改憲が国際社会にお. いる。つまり、平和基本法制定によって九条にもとづい. るという問題の整理が必要となるのである 」と述べて. 方向を明確にし、長期的課題として、条文の改正を捉え. ロールするための枠組みを作るとともに、憲法の発展の. には、基本法によって、規範から乖離した現実をコント. ない。他方で、明文の憲法改正を実現することは、具体. るという便法は、あくまで過渡的なものでなければなら. 山口は「憲法の最高規範性は、つねに尊重されなけれ ばならないので、基本法によって、憲法の機能を代行す. の制定が提唱されていた。. は困難であることから、過渡的な措置として平和基本法. の理想を具体化する方向で憲法を改正することは現状で. の理想を実現する手立てが具体的に示されていない。そ. の思想からきている 。日本国憲法には、九条戦争放棄. 蝋山政道のいう九条のインブルメンテーション(具現化). 法と国際法が矛盾する場合には、国際法優位説と憲法優. 憲法解釈は、国際法優位説から導き出されている。「憲. その先に九条の明文改憲が想定されている。このような. 参加を可能にする安全保障基本法の制定を提言している。. い う 立 場 か ら、 将 来 の 九 条 改 憲 の た め の 経 過 措 置 と し. り、PKOや国連の強制措置にも自衛隊は参加できると. 現行憲法でも集団的及び個別的自衛権の行使は可能であ. 改憲派の側からも安全保障基本法の制定が提唱されて いる。一九九二年一二月に読売新聞憲法問題調査会は、. が提起されていたのである。. 織をハンドリングする法的枠組みをつくるという発想は、 た憲法秩序を形成、醸成する過程の最終局面で明文改憲. 的な政策や法制度の整備の蓄積によって、国民の意識を. 位説があるが、確立された国際法規を成文化した条約や、. て、集団的自衛権や国連の集団安全保障措置に自衛隊の. 啓発することなしにできるはずはない。そこで、中期的. 三〇.
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