52 (東女医大誌 第45巻 第2号頁 102∼103 昭和50年2月)
〔シンポジウム〕
抗生物質使用法の進歩
抗生物質外用療法と皮膚ブドウ球菌感染症
東京女子医科大学皮膚科学教室教授 肥 田 野 信
ヒ ダ ノ アキラTopical Antibiodc Treatment
Aldτa H】DANO, M,D.
Department of Dermatology, Tokyo Women,s Medical College
The merit of topical use of antibiotics is to obtain high concentration of antibiotics on the skin Iesions without systemic side ef琵cts. Nevertheless, percutaneous sensitization and systemic ef艶ct by local absorption shouId be considcred. Neomycin sul毎te is the most important topical antibiotics.
Recent investigations of the staphylococci量solated倉om the Iesions ofに。−called staphylococcal
scalded skin sylldrome were reported.
L 治療の対象となる原因微生物 皮膚疾患を起こす原因として最も重要な細菌は 黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusであり, 真菌も重要である.このほかに緑膿菌がしばしば 問題になるが,表皮ブドウ球菌は時に皮膚の炎症 を起こすものの治療上は余り問題にならない. 且 抗生剤外用療法の意義 これにはメリットとデメリットがある. 1)外用した抗生剤は皮膚の表面に分布するほ か,毛嚢から多少吸収されるのみであるので,表 在性感染にしか適用できず,真皮以下の細菌感染 には役立たない. 2)局所に大量の抗生剤を適用しうる. 3) 全身的作用を顧慮せずに済むので,全身的 毒性のある抗生剤も使用できる(フラジオマイシ ン). 4)外用によって経皮感作を成立させうるの で,全身的に用いられる抗生剤の外用には注意が 必要である(ペニシリン,ゲンタマイシン)。 皿・外用に用いられる抗生剤 日常用いられる抗生剤の抗菌作用を表1に示 す. このうも外用にも内用にも用いられるのはエリ スロマイシン,フシジンで,残りは外用専門剤で ある.その中で最:も広く用いられているのはフラ ジオマイシンである. フラジオマイシンの特徴は,SM, KMに似た 作用を持つことで,腸管からは吸収されず,第8 脳神経障害と腎障害が著しいので,全身的には用 いられない.抗菌力は強力とされ,副腎皮質ステ ロイドと合剤にして消炎効果を増強させたものも 使用されている.海外では,本剤による接触皮膚 炎がかなりあるとされているが,本邦ではそれ程 重視されてはいない. 一102一
53 表1 抗生物質の試験管内抗菌作用 、\ 病原菌 抗生物質
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エリスロ マイシン 黄色ブドウ球菌 0.01 溶血レンサ球菌 肺炎球菌 ジフテリア菌 ズィ膜炎菌 大 腸 菌 変 形 菌 緑 膿 菌 0.07 0.04 0.12 0.12 50 >100 ≧100 バントラ シ ン 1.25 0.62 0.31 0.31 0.078 >100 >100 グラミンジンJ
0.83 L25 1.25 12.5 2.0∼2,5 >100 >100 >100 <100 フラジオ マイシン 0.195 50 100 L56 3.3 1.56 1.56 62.5 ミ カ マイシン 0.4 0.1∼1.6 0.4∼0.8 0.1 >100 50 100 フシジン 0.095 25 25 0.06 1.56 >100 >100 >100 1V・抗真菌剤 白癬に対して用いられる外用剤は数多いが,抗 生剤としてはバリオチンとグリセオフルビンが主 なもので,後者は内服と外用の両方がある. カンジダに対しては,ナイスタチン,ピマリシ ン,トリコマイシンが主な抗生剤である.その他 抗生物質ではないが,クロトリマゾールと5FC (5フルオロサイトシン)が近年試みられて,か なりの有効性を示している. V・皮膚ブ菌感染症 大別すると表在性感染症と毛嚢を中心とした感 染症の2群があり,前者の代表的なものは膿痂疹 であるが,そのほか近年注目をあびているものに,いわゆるStaphylococcal Scalded Skin Syn−
drom6(以下SSSSと略)がある. このSSSSの症状は,三囲や口囲の発赤・亀 裂,Nikolsky現象,狸紅熱様紅斑,発熱,接触点 などである. 本症は新生児(この年令では典型的なRitter皮 膚炎),乳幼児に多く,ブ菌が咽頭から100%に分 離され,眼脂,皮膚病変からも分離される,おそ らく咽頭で増殖したブ菌の毒素が,血行性に皮膚 に至って病変を起こすのであろうと考えられてい る、 SSSSから分離されたブ菌の型は,都立衛生 研究時微生物部の研究では,コアグラーゼ1型菌 が大部分で,5型が少数ある.逆に膿痂疹から分 離されたブ菌は大部分が5型で,1型は少ない. コァグラーゼ1型と5型はファージタイプではそ れぞれ皿群(又は皿・IV群)と1群にほぼ相当し ている.そしてこれらのブ菌から新生マウスに皮 膚Nikolsky現象を起こすexfoliatinなる毒素 (分子量22,000のタン白)が分離され,これが病 変を起こすのではないかと考えられている. 結 び 外用抗生物質につき概説し,あわせて表在性ブ 菌感染症,なかんずくSSSSについての最近の 研究を紹介した. 文 献 1)藤森一平:小林太刀夫,高木敬次郎監修:臨床 家のための薬理学,金原出版(1971),348頁, 一103一