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図 17-1 ハンチントン病患者脳の肉眼所見 左は 38 歳の自殺者の脳 ( 重量 1680g) 右は 48 歳のハンチントン病患者の脳 ( 重量 1100g) 大脳全般ならびに線条体の萎縮が著明である 光顕所見 1) 線条体 ~HD に認められる線条体の病理学所見をヴァンサッテルらは次

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第17章

ハンチントン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病

1 . ハ ン チ ン ト ン 病 1 . 1 概 念 、 疫 学 ハ ン チ ン ト ン 病(HD)は 1872 年アメリカの G・ハンチントンによって始めて記載された 常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 疾 患 で あ る 。浸 透 率 は 50%であり、親が HD である場合、その子の半 数 は HD となる。多くは中年以降期に発症して慢性に経過し、舞踏様不随意運動、認知症、 精 神 症 状 を 呈 す る 。 認 知 症 症 状 は 発 症 初 期 か ら 認 め ら れ る こ と も あ る 。 注 意 障 害 、 記 憶障 害 、 遂 行 機 能 障 害 が 認 め ら れ る 。 失 語 、 失 認 、 失 行 は 通 常 認 め ら れ な い 。 精 神 症 状 と して は 、 感 情 の 易 変 性 、 易 刺 激 性 、 易 怒 性 が 多 い 。 妄 想 、 幻 覚 、 強 迫 観 念 な ど も 認 め ら れ る 。 発 症 年 齢 は 10 歳末満から 80 歳代まで広範囲に及ぶが、多くの症例は中年期発症である。 30 歳代後半から 40 歳前後までに約半数の保因者が発症する。経過は進行性で、10~15 年 の 経 過 で 死 亡 す る こ と が 多 い 。 本 症 の 有 病 率 に は 地 域 差 な い し 民 族 差 が 認 め ら れ る 。 欧 米 に お け る 有 病 率 は 人 口 10 万 人 あ た り 4~10 人である。日本では人口 10 万人あたり 0.1~0.4 人で、欧米の約 20 分の 1 程 度 で あ る 。 1 . 2 病 理 学 所 見 1 . 2 . 1 肉 眼 所 見 HD の特徴的な病理学所見は、大脳皮質の広汎な萎縮と線条体の極めて高度な萎縮であ る ( 図 1 7 - 1 ) 。HD の約 80%で大脳皮質の萎縮が認められ、特に前頭葉、後頭葉、嗅 内 皮 質 、 海 馬 台 で 顕 著 で あ る 。 脳 重 量 も 全 般 に 減 少 す る 。 そ の 程 度 は 線 条 体 の 萎 縮 の 程度 と 相 関 す る 。 脳 室 も 拡 大 し 、 そ の 程 度 も 線 条 体 の 萎 縮 の 程 度 と 相 関 す る 。 前 額 断 で は 、皮 質 は 薄 く な り 、 白 質 、 線 条 体 、 視 床 も 萎 縮 し て い る 。 デ ・ ラ ・ モ ン テ ら に よ れ ば 、 萎 縮の 程 度 は 、 大 脳 皮 質 21~29%、白質 29~34%、視床 28%、尾状核 57%、被殻 64%である。 17-1

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図 1 7 -1 ハンチントン病患者脳の肉眼所見 左は 38 歳の自殺者の脳(重量 1680g)、右は 48 歳のハンチントン病患者の脳 ( 重 量1100g)。大脳全般ならびに線条体の萎縮が著明である。 1 . 2 . 2 光 顕 所 見 1 ) 線 条 体 ~HD に認められる線条体の病理学所見をヴァンサッテルらは次の5段階に 分 類 し て い る ( 図 1 7 ― 2 参 照 ) 。 段 階 0 ~ 遺 伝 的 も し く は 臨 床 的 に HD と診断されるが、肉眼的にも光顕的にも HD の所 見 が 認 め ら れ な い 。30%程度の神経細胞脱落と反応性グリアが認められる。 段 階 Ⅰ ~ 肉 眼 的 に は 尾 状 核 尾 お よ び 尾 状 核 体 の 萎 縮 が 認 め ら れ る 。 神 経 細 胞 脱 落 と グリ オ シ ス は 尾 状 核 尾 で 顕 著 で あ り 尾 状 核 体 で は よ り 軽 度 で あ る 。 中 程 度 の 繊 維 性 ア ス ト ロサ イ ト が 尾 状 核 頭 と 被 殻 に 認 め ら れ る 。神 経 細 胞 脱 落 は 軽 度 で あ る が 尾 状 核 体 で は 50%に達 す る 。 淡 蒼 球 は ほ ぼ 保 た れ て い る 。 段 階 2 ~ 尾 状 核 尾 の 顕 著 な 萎 縮 が 認 め ら れ る 。 尾 状 核 頭 と 被 殻 の 萎 縮 は そ れ 程 顕 著 では な い 。 神 経 細 胞 脱 落 と グ リ オ シ ス は 尾 状 核 尾 、 尾 状 核 体 、 尾 状 核 頭 内 側 で 顕 著 で あ る 。尾 状 核 頭 外 側 や 被 殻 で は そ れ ほ ど 顕 著 で は な い 。 淡 蒼 球 は 保 た れ る 。 段 階 3 ~ 肉 眼 的 に 尾 状 核 と 被 殻 に 著 し い 萎 縮 が 認 め ら れ る 。尾 状 核 体 で は 75%の萎縮を 示 し 、 尾 状 核 尾 は 紐 状 に 萎 縮 し て 見 え る 。 淡 蒼 球 も 萎 縮 し 、 特 に 外 側 で 顕 著 で あ る 。 細胞 17-2

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脱 落 と グ リ オ シ ス は 尾 状 核 全 体 と 被 殻 で 顕 著 で あ る 。 尾 状 核 頭 の 外 側 の 細 胞 は 比 較 的 保た れ て い る 。 淡 蒼 球 外 側 に 繊 維 性 ア ス ト ロ サ イ ト が 僅 か に 認 め ら れ る 。 淡 蒼 球 内 側 は 保 たれ て い る 。 段 階 4 ~ 尾 状 核 と 被 殻 に 極 度 の 萎 縮 が あ る 。 尾 状 核 頭 は 紐 状 に 縮 み 黄 褐 色 と な る 。 被殻 も 正 常 に 比 べ て 非 常 に 萎 縮 す る が 、 尾 状 核 よ り は 軽 度 で あ る 。 淡 蒼 球 も 萎 縮 す る 。 神 経細 胞 脱 落 と グ リ オ シ ス は 線 条 体 全 般 で 重 度 で あ る 。 図 1 7 - 2 線 条 体 尾 状 核 : 尾 状 核 は 頭 を 前 方 に 尾 を 下 方 に 向 け た オ タ マ ジ ャ ク シ 型 で 、 前 方 ( 4 ) を 頭 、 後 方 ( 6 ) を 尾 、 両 者 の 中 間 ( 5 ) を 体 と 呼 ぶ 。 被 殻 : 8 、 淡 蒼 球 : 内 節 ( 1 2 ) 、 外 節 ( 1 3 ) 線 条 体 細 胞 の 神 経 伝 達 物 質 に は 次 の5 種類が知られている。第一は介在細胞に属するア セ チ ル コ リ ン 細 胞 ( 大 型 細 胞 ) 、 第 二 は 線 条 体 か ら 淡 蒼 球 外 節 お よ び 内 節 さ ら に 黒 質 に線 維 を 送 る GABA、第三は線条体から淡蒼球内節および黒質に線維を送るサブスタンス P 細 胞 、 第 四 は や は り 線 条 体 か ら 出 て 淡 蒼 球 外 節 に 線 維 を 送 る エ ン ケ フ ァ リ ン 細 胞 、 第 五 は小 型 の 介 在 細 胞 に 属 す る ソ マ ト ス タ チ ン 細 胞 で あ る 。 こ れ ら の う ち ア セ チ ル コ リ ン 細 胞 はほ ぼ 正 常 に 残 存 し て い る 場 合 と 高 度 に 変 性 し て い る 場 合 が あ る と 考 え ら れ 、 病 理 学 所 見 とよ く 対 応 し て い る 。GABA 細胞、スブスタンス P 細胞およびエンケファリン細胞はいずれも 17-3

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高 度 に 変 性 す る 。 す な わ ち 、 こ れ ら の 細 胞 は 線 条 体 で 著 明 に 変 性 す る 小 型 ・ 中 型 神 経 細胞 に 属 す る と 考 え る こ と が 出 来 る 。な か で も HD で最も早くから変性するのは GABA 細胞で あ ろ う と さ れ て い る 。一 方 、異 質 一 線 条 体 系 の ド ー パ ミ ン 細 胞 は HD ではほぼ正常に保た れ る 。 2 )大 脳 皮 質 及 び 白 質 ~HD の大脳皮質および白質には一見明瞭な変化は認められない。 詳 細 な 病 理 学 的 検 索 の 結 果 と し て は 、 ① 皮 質 の 全 般 的 な 粗 鬆 化 、 ② 皮 質 Ⅲ 層 、 Ⅴ 層 、 Ⅵ層 に お け る 大 型 錐 体 細 胞 の 脱 落 、 ③ 短 い 投 射 線 維 は 保 た れ る が 長 い 投 射 線 維 が 失 わ れ る 、な ど の 報 告 が あ る 。 線 条 体 の 病 変 が 軽 度 の 場 合 ( 段 階 1 お よ び 2 ) 、 大 脳 皮 質 は ほ ぼ 保 たれ る 。 線 条 体 の 病 変 が 重 度 の 場 合 ( 段 階 3 、 4 ) 、 大 脳 皮 質 の 変 化 が 明 ら か と な る 。 3 ) 視 床 、 視 床 下 部 、 黒 質 ~ 段 階 1 お よ び 2 で は 視 床 ほ ぼ 保 た れ て い る 。 段 階 3 、 4で は 萎 縮 が 認 め ら れ る 。 神 経 細 胞 脱 落 と グ リ オ シ ス が 主 た る 所 見 で あ る 。 視 床 下 部 外 側 核で も 萎 縮 が 認 め ら れ る 。 黒 質 で も 萎 縮 と 神 経 細 胞 脱 落 が 認 め ら れ る 。 1 . 3 臨 床 像 1 . 3 . 1 神 経 症 状 発 症 は 緩 徐 で 、 協 応 障 害 、 動 作 の ぎ ご ち な さ 、 手 足 の 落 ち 着 き の な い 運 動 な ど が 認 め ら れ る 。進 行 す る と 舞 踏 様 不 随 意 運 動 が 出 現 す る 。不 規 則 な 、目 的 の な い 、非 対 称 の 運 動 で 、 あ た か も 踊 っ て い る よ う な 奇 妙 な 不 随 意 運 動 で あ る ( こ の た め 「 ハ ン チ ン ト ン 舞 踏 病 」と 呼 ば れ た ) 。 手 足 に 出 現 す る こ と が 多 い が 、 し か め 面 や 瞬 目 の よ う な 顔 面 の 不 随 意 運 動も 多 い 。 そ れ に 伴 っ て 歩 行 障 害 、 構 音 障 害 、 眼 球 運 動 障 害 が 出 現 す る 。 1 . 3 . 2 高 次 脳 機 能 障 害 1 . 3 . 2 . 1 注 意 認 知 症 を 伴 う HD では、発病初期から注意障害が認められる。WAIS の一般記憶課題と 注 意 集 中 課 題 を 比 較 す る と 、ATD では記憶障害が重度であるため、注意集中課題の成績が 一 般 記 憶 課 題 成 績 を 大 き く 上 回 る 。HD では両者間の差が小さい。これは HD には記憶障 害 と 同 程 度 の 注 意 障 害 が あ る こ と を 意 味 す る 。HD を対象とした実験的研究では、①右側 の 刺 激 に 対 し て は 左 手 で 反 応 し 左 側 の 刺 激 に は 右 手 で 反 応 す る 課 題 で の 成 績 低 下 、 ② 予測 し う る 刺 激 へ の 反 応 時 間 に 比 し て 予 測 出 来 な い 刺 激 へ の 反 応 時 間 の 遅 れ 、 ③ 二 つ の 刺 激の い ず れ に 反 応 す る か を 内 的 に 制 御 す る 課 題 で の 成 績 の 低 下 、 な ど が 報 告 さ れ て い る 。HD 17-4

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で は 、 外 的 刺 激 の 変 化 に 応 じ て 注 意 を 転 換 さ せ る 課 題 は 比 較 的 良 好 に 遂 行 し う る が 、 内的 に 注 意 を 転 換 す る 課 題 で は 成 績 が 低 下 す る 。HD における注意障害の特徴は内的注意転換 障 害 で あ る 。 1 . 3 . 2 . 2 遂 行 機 能 目 標 達 成 の た め 、 い く つ か の 行 動 を 組 み 合 わ せ て 実 行 し 、 そ の 結 果 に 基 づ い て 行 動 を 変 更 す る 機 能 、す な わ ち 遂 行 機 能1はHDで障害される。対連合学習において、課題途中で対 を 形 成 す る 刺 激 を 変 更 す る と 、HD 成績は 低下する。これは行動の柔軟性の低下、ある い は 不 適 切 な 反 応 を 抑 制 す る こ と の 障 害 と 考 え ら れ て い る 。HDで は試行毎に反応を変え る 交 代 反 応 課 題 で も 障 害 を 示 す 。 こ の 事 実 も 反 応 抑 制 の 障 害 と 考 え ら れ て い る 。 の 行 動 の 柔 軟 性 の 低 下 は よ り 複 雑 な 認 識 課 題 で も 認 め ら れ る 。 提 示 さ れ る 刺 激 を 手 掛 か り に 特 定 の 概 念 を 構 成 す る 言 語 推 論 課 題 は HD で障害される。この課題では提示される刺激 の 属 性 を 手 掛 か り に あ る 概 念 を 仮 定 す る 。 も し 概 念 に 合 わ な い 刺 激 が 提 示 さ れ た ら 概 念を 変 更 す る 必 要 が あ る 。 刺 激 に 対 応 さ せ て 概 念 を 変 更 す る こ と が HD では障害される。 前 述 の ご と く 、 H D は 遺 伝 性 疾 患 で あ る 。HD 遺伝子保因者は臨床症状が無くても健常 者 に 比 し て 種 々 の 遂 行 機 能 課 題 の 成 績 が 低 下 す る と 報 告 さ れ て い る 。 ① 視 覚 弁 別 課 題 、② WAIS の絵画構成及び符号課題、③行動の組織化課題、④複雑な精神運動課題、などで HD 遺 伝 子 保 因 者 の 成 績 は 低 下 す る 。HD 遺伝子保因者の遂行機能障害の特徴は HD に類似す る 。 1 . 3 . 2 . 3 記 憶 ・ 学 習 1 ) 作 業 記 憶 ~HD では一定時間作業記憶に情報を保持することに障害がある。連続的 に 刺 激 が 提 示 さ れ 、刺 激 の 種 類 や 提 示 位 置 が 変 化 し た 場 合 に 反 応 す る 課 題 で HD の成績は 低 下 す る 。 特 に 刺 激 が 複 雑 な 場 合 や 刺 激 の 空 間 的 提 示 位 置 が 手 掛 か り と な る 課 題 で 成 績は 不 良 と な る 。 た だ し 提 示 刺 激 の 単 純 な 想 起 課 題 で は 障 害 は 認 め ら れ な い 。 2 ) エ ピ ソ ー ド 記 憶 ~HD では過去経験の想起に多少の障害が認められる。語リストの 自 由 再 生 課 題 で は コ ル サ コ フ 症 候 群 患 者 よ り 軽 度 で あ る が 成 績 低 下 が 認 め ら れ て い る 。再 認 は 正 常 範 囲 に 止 ま る と 報 告 さ れ て い る 。HD の再生の誤りは「ファルス・ポジティブ」 す な わ ち 提 示 さ れ な い 刺 激 を 再 生 す る 誤 り が 多 く 、 「 フ ァ ル ス ・ ネ ガ テ ィ ブ 」 す な わ ち提 1 詳 細 は 第 2 2 章 参 照 。 17-5

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示 さ れ た 刺 激 を 再 生 し な い 誤 り は 少 な い 。 こ れ は 刺 激 の 記 銘 ・ 保 持 は 保 た れ て お り 、 反応 バ イ ア ス が 「 再 生 」 側 に 偏 っ て い る こ と を 意 味 す る 。 こ の 事 は 、 ①HD の系列位置曲線で 初 頭 効 果 は 減 少 し て い る が 初 頭 刺 激 の 再 認 は 可 能 で あ る こ と 、 ②HD の忘却曲線(刺激提 示 後 の 時 間 経 過 に 伴 う 想 起 成 績 の 低 下 )は 正 常 で あ る こ と 、な ど か ら も 確 認 出 来 る 。 HD の 再 生 障 害 は 発 病 前 に 獲 得 し た 記 憶 の 再 生 で も 認 め ら れ る 。HD の自伝的記憶の障害は生 活 歴 全 般 に 渡 っ て 同 じ 程 度 に 認 め ら れ る 。 以 上 の ご と く 、HD では記憶そのものは保たれ想起が障害されていると考えられている が 、HD では記銘時のコード化が不十分であるために想起が障害されとする考えも提出さ れ て い る 。 こ の 仮 説 に 従 え ば 、 よ り 適 切 な コ ー ド 化 を 支 援 す る 手 続 き 、 例 え ば 刺 激 提 示時 間 を 延 長 す る 、 イ メ ー ジ を 思 い 浮 か べ 易 い 語 を 提 示 す る 、 刺 激 を よ り 深 く 処 理 す る よ う教 示 す る 、 な ど の 手 続 き は 想 起 の 成 績 を 向 上 さ せ る と 考 え ら れ る 。HD を対象としたコード 化 に 関 す る 研 究 で は 、 コ ー ド 化 障 害 説 を 支 持 す る 研 究 、 支 持 し な い 研 究 が い ず れ も 報 告さ れ て い る 。 コ ー ド 化 障 害 説 の 当 否 は 現 時 点 で は 不 明 で あ る 。 HD には記憶想起戦略の選択に障害があるとする研究もある。HD は適切な想起戦略を 採 用 出 来 な い た め に 想 起 が 障 害 さ れ る 。 そ の 根 拠 と し て 次 の 研 究 結 果 が 報 告 さ れ て い る。 HD は「自分はこの事を思い出せるか否か」の判断の正確さでは健常者と違わない。しか し こ の 判 断 を 頼 り に 再 生 時 に よ り 多 く を 思 い 出 そ う と す る 努 力 の 面 で 健 常 者 に 劣 る 。 HD に特異的なエピソード記憶障害として、嗅覚に関連したエピソード記憶の障害が知 ら れ て い る 。 ハ ミ ル ト ン ら の 研 究 で は 、 嗅 覚 刺 激 、 言 語 刺 激 、 絵 画 刺 激 各 10 個について 再 認 検 査 が 実 施 さ れ た 。 健 常 統 制 群 に 比 し て 、HD では嗅覚刺激の再認のみが障害されて い た 。 他 の 刺 激 の 再 認 成 績 は 健 常 者 と 差 が な か っ た 。 カ リ フ ォ ル ニ ア 嗅 覚 学 習 検 査 と いう 嗅 覚 に 関 す る 記 憶 検 査 で も HD は成績低下を示した。HD には嗅覚刺激弁別障害が認めら れ る 。 嗅 覚 記 憶 の 障 害 は こ の 感 覚 水 準 で の 嗅 覚 障 害 に 起 因 す る 可 能 性 が あ る 。 し か し 、嗅 覚 再 認 の 成 績 と 嗅 覚 弁 別 障 害 の 程 度 は 必 ず し も 一 致 し な い 。 前 頭 葉 眼 窩 部 は 嗅 覚 処 理 に関 係 し て い る 。前 頭 葉 ― 線 条 体 回 路 の 損 傷 が 嗅 覚 記 憶 の 固 定 化 を 阻 害 し て い る 可 能 性 が あ る 。 3 ) 意 味 記 憶 ~HD に認められる高次の言語障害としては語生成の障害がある。特定の 音 で 始 ま る 語 の 生 成 ( 語 音 生 成 ) 、 特 定 の 意 味 範 疇 の 語 の 生 成 ( 範 疇 生 成 ) に お い て HD が 障 害 を 示 す こ と は 多 く の 研 究 が 報 告 し て い る 。ATD では範疇生成で障害が重度である。 HD では両課題が同程度に障害される。これは意味記憶の障害ではなく、記憶検索の障害 と 考 え ら れ て い る 。 こ の こ と は 、 ① 課 題 遂 行 中 に 検 索 の 手 掛 か り を 与 え る と 成 績 が 向 上す 17-6

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る 。 ② 範 疇 生 成 中 に 意 味 範 疇 を 切 り 替 え る と 成 績 が 低 下 す る 、 な ど の 事 実 に よ っ て 裏 付け ら れ て い る 。HD の意味記憶に障害がないことは呼称課題でも明らかにされている。HD で は 呼 称 で 軽 度 の 障 害 が 認 め ら れ る 。 そ れ は 「 へ び 」 を 「 ひ も 」 と 呼 称 す る 様 な 知 覚 的な 誤 り で あ っ て 、 意 味 構 造 自 体 の 障 害 で は な い 。 こ の 点 で 意 味 構 造 自 体 に 異 常 が あ る ATD の 呼 称 障 害 と は 区 別 さ れ る 。 4 ) 言 語 学 習 ~ デ ィ ・ デ ィ エ ゴ ・ バ ラ グ ら に よ れ ば 、HD では人工的な言語の語尾変化 の 規 則 を 学 習 す る 課 題 で 障 害 を 示 す 。こ の 言 語 学 習 障 害 は 臨 床 的 に HD を示す症例のみな ら ず HD 遺伝子保有者ではあるが臨床的には発症していない被験者でも認められた。 5 ) 運 動 学 習 、 技 能 修 得 ~HD では新たな運動技能の学習が障害される。すなわち非宣 言 的 記 憶( 潜 在 記 憶 )が 障 害 さ れ る 。円 盤 の 回 転 を 尖 筆 で 追 従 す る 円 盤 追 跡 課 題 で は 、HD の 成 績 は 非 常 に 不 良 で あ る 。 最 初 の 数 試 行 で は 多 少 成 績 は 向 上 す る が 、 そ れ 以 降 成 績 は横 ば い と な る 。対 照 的 に 、ATD や健忘患者では明らかな成績向上が認められる。この HD に お け る 運 動 学 習 障 害 の 程 度 は 認 知 症 の 程 度 と は 相 関 す る が 、 運 動 障 害 の 程 度 と は 相 関 しな い 。 HD では知覚学習でも障害が認められる。対象の位置を指さす課題で、被験者にプリズ ム 眼 鏡 を 着 用 さ せ る と 対 象 の 位 置 が ず れ て 見 え る た め 、 正 確 な 指 さ し が 出 来 な く な る 。健 常 者 、ATD では数試行で正しい指さしが可能になる。HD では試行を続けても指さしの誤 り は 減 少 し な い 。 た だ し 全 て の 運 動 学 習 、 技 能 学 習 が 障 害 さ れ る 訳 で は な い 。HD では鏡映描写(文字や 図 形 を 左 右 逆 に 描 く ) 、 ② コ ン ピ ュ ー タ ・ ス ク リ ー ン 上 を ラ ン ダ ム に 運 動 す る 点 の 追 跡、 な ど の 課 題 の 学 習 は 可 能 で あ る 。 し か し 、 コ ン ピ ュ ー タ ・ ス ク リ ー ン 上 を 規 則 的 に 運 動す る 点 の 追 跡 課 題 の 学 習 は 困 難 で あ る 。 す な わ ち 、HD では将来を予測して行う運動や動作 の 学 習 が 障 害 さ れ る 。 第 2 2 章 で 詳 し く 述 べ る が 、 将 来 の 予 測 に は 前 頭 葉 、 特 に そ の 背外 側 が 関 係 し て い る 。 線 条 体 と 前 頭 葉 間 に は 密 接 な 線 維 連 絡 が あ る 。 前 頭 葉 - 線 条 体 間 の回 路 離 断 が HD における運動学習、技能学習障害の機序と考えられる。 6 )プ ラ イ ミ ン グ ~ 非 宣 言 的 記 憶 の 研 究 法 と し て プ ラ イ ミ ン グ2が よ く 用 い ら れ る 。HD で は プ ラ イ ミ ン グ は 保 た れ て い る 。 グ ラ フ ら は 語 幹 完 成 課 題 を 用 い てHDにお けるプライ ミ ン グ を 検 討 し て い る 。 例 え ば ま ず 「 ホ テ ル 」 ( プ ラ イ ミ ン グ 刺 激 ) を 提 示 し て 好 き か嫌 い か を 判 断 さ せ る ( 練 習 課 題 ) 。 次 に 「 〇 テ 〇 」 ( 課 題 刺 激 ) を 提 示 し て ど ん な 語 か 判断 2 第 1 1 章 参 照 。 17-7

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す る 課 題 ( 語 幹 完 成 課 題 ) を 遂 行 さ せ る ( 検 査 課 題 ) 。HDは検査 課題において練習課題 で 提 示 し た プ ラ イ ミ ン グ 刺 激 を 有 意 に 多 数 回 答 し た 。ATDではこのような傾向は認められ な か っ た 。 ① 練 習 課 題 で 絵 画 を 提 示 し 、 課 題 刺 激 と し て 絵 画 の 一 部 が 欠 け た 不 完 全 な 絵画 を 提 示 し て 同 定 さ せ る 課 題 、 ② 練 習 課 題 で は 二 つ の 語 を 提 示 し て 両 者 の 意 味 的 関 連 を 判断 す る 、 検 査 課 題 で は 一 つ の 語 を 提 示 し て 練 習 課 題 で そ れ と 対 で 提 示 し た 語 を 再 生 す る 、な ど の 課 題 で もHDではプライミングが認められた。 以 上 の 事 実 は プ ラ イ ミ ン グ に 前 頭 葉 ― 線 条 体 回 路 は 関 与 し な い こ と を 意 味 す る 。 前 述の ご と く 、HD ではある種の運動学習は障害される。第11章で述べたように、スクエアは 運 動 学 習 と プ ラ イ ミ ン グ を 共 に 非 宣 言 的 記 憶 に 分 類 し た ( 図 1 1 - 2 参 照 ) 。HD の研究 か ら 考 え る と 両 者 は 明 ら か に 異 な っ た 神 経 機 構 に 担 わ れ て い る 。 1 . 2 . 3 . 4 視 空 間 認 識 HD の重症化と共に視空間認識が障害される。①WAIS の積木模様、②時計模写、③迷 路 検 査 、 ④ 図 形 の 空 間 配 置 認 識 検 査 、 ⑤ 視 覚 記 銘 検 査 、 ⑥ 視 覚 的 推 論 検 査 、 ⑦ 視 覚 的 概念 形 成 検 査 、⑧ 視 覚 的 見 当 識 検 査 、な ど の 課 題 で HD の成績は不良である。図形を内的表象 と し て 保 持 し そ れ に 操 作 を 加 え る 心 的 回 転 課 題 で は 、HD の正答率は健常者と同じである が 反 応 時 間 が 遅 延 す る 。 す な わ ち 、 内 的 表 象 は 保 た れ て い る が そ の 処 理 時 間 が 遅 く な って い る 。こ れ はHD におけるより一般的な症状である「精神緩慢」の視空間認識における現 れ と 考 え ら れ る 。時 計 の 自 発 描 写 課 題 と 模 写 課 題 を 比 べ る と 、ATD では模写の成績が良好 で あ る が 、HD では差が認められない。ATD では時計の表象自体が障害されているので、 モ デ ル が あ る 模 写 で 成 績 が 良 好 で あ る 。HD では表象は保たれ視覚構成行為の遂行が障害 さ れ て い る の で 、 自 発 描 画 、 模 写 と も 同 程 度 に 障 害 さ れ る 。 1 . 2 . 3 . 5 構 音 、 動 作 HD では発話面で、①運動過剰性構音障害、②文法構造の単純化、③発話量の減少、④ 発 話 の 緩 慢 化 、 ⑤ 発 話 の と ぎ れ 、 休 止 の 増 大 、 な ど が 認 め ら れ る 。 HD では、①反応時間の遅延、②円滑で効率的な動作の遂行、③最近行った動作の意図 的 再 生 、 な ど の 障 害 に 加 え 、 よ り 高 次 の 運 動 機 能 、 す な わ ち 過 去 に 学 習 し た 要 素 動 作 を組 み 合 わ せ 統 合 す る 運 動 プ ロ グ ラ ミ ン グ で も 障 害 が 認 め ら れ る 。ハ ミ ル ト ン ら は HD の三分 の 一 に 観 念 運 動 失 行 の 基 準 を 満 た す 運 動 障 害 が 認 め ら れ る と 報 告 し て い る 。 17-8

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1 . 3 . 3 精 神 症 状 HD に合併する精神疾患の頻度は、鬱病 34%、統合失調症 12%、行動・人格障害 42%、 と 報 告 さ れ て い る 。行 動・人 格 障 害 で は 攻 撃 型 が 最 も 多 い 。鬱 と 躁 を 繰 り 返 す 双 極 性 障 害 、 躁 病 、軽 躁 の 頻 度 は よ り 低 く 10%未満と推定されている。最も中心となる精神症状は鬱で あ る 。鬱 の 原 因 と し て HD の主病変である尾状核の変性がまず考えられるが、運動障害の 程 度 と 鬱 と の 間 に は 関 連 は 認 め ら れ な い 。精 神 症 状 を 呈 す る HD ではその家族も精神疾患 患 者 が 認 め ら れ る 事 か ら 、 精 神 症 状 の 背 景 に は 何 ら か の 遺 伝 的 要 因 が 関 係 し て い る 可 能性 も あ る 。 HD では妄想、幻覚のような明確な精神病症状は少なく、妄想の前段階である妄想気分 程 度 の 場 合 が 多 い 。 HD では狭義の精神疾患以外の精神症状も出現する。いらいらもしばしば家族によって 認 め ら れ て い る 。 介 護 者 に と っ て は 大 き な 負 担 と な る 。 ア ル コ ー ル 摂 取 、 薬 物 の 影 響 さら に 鬱 病 の 初 期 症 状 の 可 能 性 も あ る 。 強 迫 症 状 、 極 度 の 心 気 症 傾 向 、 な ど の 症 状 も 認 め られ る 。 最 も 多 い 強 迫 症 状 は 攻 撃 お よ び 汚 染 に 関 す る 強 迫 観 念 で あ る 。 特 定 の 行 動 ・ 動 作 をせ ず に は い ら れ な い 強 迫 動 作 も 認 め ら れ る 。 HD では睡眠障害が認められる。頻度は夜間覚醒が最も多い。睡眠時間の減少、睡眠位 相 の 変 化 な ど も 報 告 さ れ て い る 。 HD の自殺率は高い。これは鬱病が多いことにも起因しているであろう。いらいら、感 情 的 不 安 定 、 衝 動 傾 向 な ど を 示 す HD で自殺頻度は高い。 精 神 症 状 は 発 症 初 期 に 多 く 、 認 知 症 が 進 行 す る と 減 少 す る 。 1 . 4 画 像 解 析 所 見 1 . 4 . 1 形 態 画 像 解 析 所 見 HD の MRI 画像では、尾状核、被殻、淡蒼球の萎縮が認められる(図17-3)。白質 を 含 む 前 頭 葉 領 野 の 萎 縮 も 認 め ら れ る 。発 症 年 齢 、CAG レピート(後述)の長さは尾状核 萎 縮 の 程 度 と 相 関 す る 。HD 遺伝子保有者では発症しない段階でも大脳基底核の萎縮が認 め ら れ る 。 病 理 学 の 項 で 述 べ た よ う に 、HD では病像が進行するにつれて大脳皮質にも病変が出現 す る 。こ れ に 対 応 す る 所 見 は 形 態 画 像 解 析 に お い て も 認 め ら れ る 。ロ サ ら に よ れ ば HD の 進 行 に 伴 うMRI 所見の変化は図17-4上図に示すごとくである。彼らによれば、HD の 17-9

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臨 床 症 状 と 皮 質 萎 縮 領 野 と の 間 に は 対 応 関 係 が 存 在 す る ( 図 1 7 - 4 下 図 ) 。 言 語 流 暢性 (verbal fluency)は 運動前野、上側頭回、上前頭回の萎縮と相関し、ストループ検査成 績 (stroop)は右運動前野、中心傍回、後頭葉の萎縮と相関し、数字置換(symbol digit) は 右 運 動 前 野 、 後 頭 葉 の 萎 縮 と 相 関 す る 。 図 1 7 - 3 ハ ン チ ン ト ン 病 患 者(a)は健常者(b)に比して尾状核頭(矢印) の 萎 縮 が 著 明 で あ る 。 図 1 7 - 4 ハ ン チ ン ト ン 病 患 者 の MRI 所見 17-10

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1 . 4 . 2 機 能 画 像 解 析 所 見 SPECT では、MRI などで尾状核の萎縮が検出される以前から、HD の大脳基底核領域 に 血 流 量 低 下 が 認 め ら れ る 。 前 頭 葉 の 血 流 量 低 下 を 認 め た 研 究 も 報 告 さ れ て い る 。 PET では、線条体領域に糖代謝の低下、ドーパミン受容体の減少、などの知見が報告さ れ て い る ( 図 1 7 - 5 ) 。 こ の 所 見 は 遺 伝 子 保 因 者 で も 認 め ら れ る 場 合 が あ る ( 図 1 7- 5 ) 。 MRS では、HD の被殻、尾状核頭、で NAA(N-アセチルアスパルテート)比の低下が 認 め ら れ て い る 。 ク ラ ー ク は 迷 路 課 題 遂 行 時 の 脳 活 動 性 をfMRI により測定し、HD と健常者を比較した。 HD では、後頭葉、頭頂葉、感覚―運動領野の活動性が健常者より低下し、左中心回と右 中 前 頭 回 の 活 動 性 は 逆 に 上 昇 し て い た 。 図 1 7 - 5 ハ ン チ ン ト ン 病 患 者 お よ び 遺 伝 子 保 因 者 の PET 画像 患 者 ( 右 ) お よ び 遺 伝 子 保 因 者 ( 中 ) で は 線 条 体 で 糖 代 謝 (18FDG)および ド ー パ ミ ン 受 容 体 結 合 能 ( [11C]raclopride)が低下している。 他 の 遺 伝 子 保 因 者 ( 左 ) で は い ず れ も 正 常 で あ っ た 。 17-11

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1 . 5 発 症 機 序 1 . 5 . 1 ハ ン チ ン チ ン 遺 伝 子 と そ の 異 常 1983 年グスラらによって HD の遺伝子 IT15 が4番染色体の短腕に存在することが明ら か に さ れ た 。IT15 がコードしているタンパクはハンチンチンと命名された。IT15 は4番 染 色 体 短 腕 の 末 端( テ ロ メ ア )に 近 い 4p16.3 に位置する。図17-6は IT15 が存在する 4 番 染 色体短腕 先端のテロ メアまでの 約 6Mb の 領 域の概略 である。IT15 の大きさは約 200kb で、67 のエクソンより構成されている。3,144 アミノ酸残基、分子量 348kDa のタ ン パ ク が コ ー ド さ れ て い る と 推 定 さ れ る 。特 徴 的 な 配 列 と し て 、第 1 エクソンにシトシン・ ア デ ニ ン・グ ア シ ン(CAG)の3塩基を単位とする反復配列(レピート)が存在する。こ の 配 列 は ポ リ グ ル タ ミ ン に 翻 訳 さ れ る 。 HD における IT15 の発現は病理学的変化の著明な線条体や大脳皮質に特異的というわ け で は な く 、 脳 全 体 に 広 範 囲 に 発 現 し て い る 。 特 に 海 馬 、 小 脳 顆 粒 層 、 プ ル キ ン エ 細 胞、 橋 核 な ど に お い て 著 明 で あ る 。 ま た 脳 ば か り で な く 、 全 身 臓 器 で 発 現 し て お り 、 大 腸 、肝 臓 、膵 臓 、睾 丸 な ど に お い て 発 現 が 確 認 さ れ て い る 。IT15 およびハンチンチンの生理的機 能 の 詳 細 は 不 明 で あ る が 転 写 と 細 胞 内 輸 送 に 関 係 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 図 1 7 - 6 ハ ン チ ン ト ン 病 の 遺 伝 子 IT15 左 が セ ン ト ロ メ ア 側 、 右 端 は テ ロ メ ア 。 上 段 は DNA マーカーの地図。 D4S10が ハ ン チ ン ト ン 病 と の 連 鎖 が 最 初 に 証 明 さ れ た G8 プローブの位置。 黒 い 領 域 は 遺 伝 学 的 解 析 か ら 狭 め ら れ た ハ ン チ ン ト ン 病 遺 伝 子 の 候 補 領 域 。 下 段 は 候 補 領 域 の 拡 大 図 。 こ の 領 域 に 同 定 さ れ た 転 写 単 位 と と も に 示 す 。 矢 印 は 転 写 方 向 。 17-12

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CAG レピートは健常者集団でも反復回数が異なり高度の多型性を示すが、HD では異常 に 伸 長 し て い る 。 正 常 染 色 体 に お け る 分 布 は 民 族 集 団 に よ り 多 少 の 差 違 が あ る が お お むね 一 峰 性 で あ る 。 後 藤 ら の 調 査 結 果 で は 、 日 本 人 で は 反 復 回 数 7 回から 29 回に分布し、17 回 が 最 頻 値 で あ っ た 。 反 復 回 数 が 36 回を超えると HD が発症する。多くの症例の反復回 数 は 40 回以上で症例によっては 100 回以上に及ぶ。反復回数と発症年齢との間には負の 相 関 関 係 が 認 め ら れ 、反 復 回 数 の 多 い 症 例 ほ ど 若 年 で 発 症 す る 。CAG はグルタミンをコー ド す る 遺 伝 子 で あ る の で 、CAG レピートの反復増大はグルタミンが多数連結したグルタミ ン 鎖( ポ リ グ ル タ ミ ン )を 生 じ る 。こ の ポ リ グ ル タ ミ ン を 含 む ハ ン チ ン チ ン( ポ リ Q ハン チ ン チ ン ) が HD の発症の原因と考えられる。実際、HD の線条体の細胞の細胞体、核、 軸 索 末 端 に は ポ リ Q ハンチンチンの沈着が認められ、レピートの反復数と線状体の病理学 的 変 化 の 重 症 度 と の 間 に は 明 瞭 な 相 関 が 認 め ら れ る 。 ま た 、 異 常 に 伸 長 し た ハ ン チ ン チン 遺 伝 子 に 対 応 す る ポ リ グ ル タ ミ ン が 実 際 に 発 現 し て い る こ と は 、 ハ ン チ ン チ ン を 抗 体 とし た 免 疫 組 織 学 的 研 究 に よ り 証 明 さ れ て い る 。 こ れ ら の 事 実 は ポ リ Q ハンチンチン沈着が HD 発症に重要な役割を果たしていることを示唆する。しかし、ポリ Q ハンチンチン沈着 に よ り 神 経 細 胞 の 脱 落 な い し 細 胞 死 が ど の よ う な 機 序 に よ り 生 じ る か は 十 分 に 解 明 さ れて い な い 。 現 時 点 で は 「 機 能 獲 得 」 説 が 有 力 で あ る 。 す な わ ち 、 異 常 伸 長 し た リ ピ ー ト を持 つ 疾 患 遺 伝 子 か ら 翻 訳 ・ 合 成 さ れ た タ ン パ ク が 正 常 で は 有 し な い 性 質 を 帯 び る た め に 発症 す る と の 説 で あ る 。 具 体 的 に は ① ア ポ プ ト ー シ ス 過 程 の 促 進 、 ② ミ ト コ ン ド リ の 抗 酸 化機 能 の 妨 害 、 ③ 核 ― 細 胞 質 間 あ る い は 細 胞 体 ― 軸 索 間 の 物 質 輸 送 の 妨 害 、 な ど の 可 能 性 が指 摘 さ れ て い る 。 異 常 ハ ン チ ン チ ン は 正 常 と は 異 な っ た 特 異 な 物 理 化 学 的 性 質 を 持 つ こ とも 確 認 さ れ て い る 。 HD 脳ではポリ Q ハンチンチンの沈着が認められる。その機序は不明であるが、タンパ ク の 分 解 に 関 与 す る ユ ビ キ チ ン 系 の 機 能 低 下 が 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る 。 ハ ン チン チ ン は 全 身 の 臓 器 に 出 現 す る が 、そ の 沈 着 は 脳 に の み 認 め ら れ る 。こ れ ら の 事 実 は HD の 発 症 に 関 与 す る 遺 伝 子 は ハ ン チ ン チ ン 遺 伝 子 だ け で は な い こ と を 示 唆 す る 。 1 . 5 . 2 ハ ン チ ン ト ン 病 の 表 現 型 模 写 遺 伝 子 型 は 異 な る が 同 じ 表 現 型 が 現 れ る 現 象 を 「 表 現 型 模 写 」 と い う 。HD 同様の臨床 症 状 を 示 し 、家 族 発 症 歴 が あ り HD 類似の病理学所見を示すにもかかわらず IT15 の CAG レ ピ ー ト 増 大 が 認 め ら れ な い 症 例 (HD 表現型模写)が知られている。①16番染色体上 17-13

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の 遺 伝 子 変 異 に 伴 う CAG/CTG レピート増大例、②20番染色体上のプリオン・タンパク ( 次 節 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 参 照 ) の 遺 伝 子 変 異 例 、 ③ 4 番 染 色 体 上 の 遺 伝 子 変異 例 、 な ど が 報 告 さ れ て い る 。 1 . 5 . 3 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 CAGレピートの異常伸長による疾患はHDだけではない。脊髄小脳変性症(SCA)3の 中 のSCA1、SCA2、SCA3(マシャドージョセフ病)、SCA6、SCA7、SCA8、SCA12、SCA17、 歯 状 核 赤 核 淡 蒼 球 ル イ 体 萎 縮 症(DRPLA)、 フ リ ー ド ラ イ ヒ 病 な ど 、 球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症4 (SBMA)などの変性疾患でもCAGレピートの異常伸長があることが明らかになった。さ ら に 脆 弱 性 X 症 候 群5で は シ ト シ ン ・ シ ト シ ン ・ グ ア シ ン (CCG)レ ピートの異 常伸長、 筋 強 直 性 ジ ス ト ロ フ ィ ー6で は シ ト シ ン ・ チ ニ ン ・ グ ア ニ ン (CTG)レ ピー トの異 常伸 長 が 発 見 さ れ た 。 そ こ で こ れ ら の 疾 患 は 一 括 し て 「 ト リ プ レ ッ ト ・ レ ピ ー ト 病 」 と 呼 ば れて い る 。ト リ プ レ ッ ト・レ ピ ー ト 病 の 中 で グ ル タ ミ ン を コ ー ド す るCAGレピートの異常伸長 が あ る 疾 患 を 「 ポ リ グ ル タ ミ ン 病 」 と い う 。 す な わ ち 、HDはポリグルタミン病である。 2 . ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 . 1 概 念 、 疫 学 、 診 断 基 準 ヤ コ ブ 病 (JCD)は感染性異常型プリオンの脳内感染増殖により認 2 2 . 1 . 1 研 究 史 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ 知 症 を 来 す 致 死 性 の 疾 患 で あ る 。 プ リ オ ン の 異 常 に よ る 疾 患 は 「 プ リ オ ン 病 」 と 呼 ば れて い る 。 ヒ ト の プ リ オ ン 病 に は JCD の外、ゲルストマン・シュトロイスラー・シェインカ ー 病 (GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)がある。JCD はその名が示す通りクロイツフェ ル ト に よ っ て 初 め て 記 載 さ れ た 。 彼 が 記 載 し た 症 例 は 若 い 女 性 で 、 急 激 に 進 行 す る 認 知症 を 主 症 状 と し ミ オ ク ロ ー ヌ ス 発 作 を 伴 っ て い た 。22 歳で死亡し、剖検で神経細胞の脱落と グ リ オ シ ス が 認 め ら れ た 。 そ の 後 ヤ コ ブ が 5 例 の 症 例 を 系 統 的 に 記 載 し た 。 ク ロ イ ツ フェ 3 脊 髄 お よ び 小 脳 の 退 行 性 変 性 疾 患 。 運 動 失 調 を 主 症 状 と す る 。 種 々 の 類 型 が あ る 。 マ シ ャ ド ー ジ ョ セ フ 病 、 歯 状 核 赤 核 淡 蒼 球 ル イ 体 萎 縮 症 、 フ リ ー ド ラ イ ヒ 病 な ど 。 4 筋 萎 縮 、 筋 力 低 下 を 主 症 状 と す る 。 5 X 染 色 体 末 端 が 明 瞭 に 染 色 さ れ な い た め こ の 名 称 が あ る 。 精 神 薄 弱 や 種 々 の 身 体 症 状 を 主 症 状 と す る 。 6 筋 萎 縮 と 筋 力 低 下 を 主 症 状 と す る 遺 伝 性 疾 患 。 17-14

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ル ト は 海 綿 状 脳 症 に つ い て は 記 載 し て い な い が 、 グ リ オ シ ス を 伴 う 海 綿 状 脳 症 が CJD 脳 の 病 理 学 所 見 の 中 心 を な す と 考 え ら れ て い る ( 後 述 ) 。 1950 年代、ニューギニアの先住民に奇妙な致死性の神経疾患が存在することが知られ、 「 呼 ば れ る ヒ ツ ジ の 疾 患 が 知 ら れ て い ー 感 わ れ て い る と タ ン パ ク 病 の 家 系 に PrP 遺伝子の変異が発見された。遺伝性プリオン病の点 突 ク ー ル ー 」 と 命 名 さ れ た 。 ク ー ル ー は ヒ ト か ら ヒ ト へ 感 染 す る こ と が 知 ら れ て い た が、 そ れ ま で 知 ら れ て い た 脳 炎 と は 異 な り 脳 に 炎 症 性 の 所 見 は 見 出 さ れ な か っ た 。 そ の か わり 海 綿 状 脳 症 と 呼 ば れ る 神 経 細 胞 の 脱 落 が 認 め ら れ た 。 一 方 、ヨ ー ロ ッ パ で は 200 年以上前からスクレピーと た 。1936 年スクレピーが伝播性疾患であることが確認された。この疾患は感染後数ヶ月 か ら 数 年 の 長 い 潜 伏 期 間 を 経 て 発 症 し 、 亜 急 性 の 経 過 を と る 神 経 症 状 を 呈 す る 。 病 理 学的 に は ク ー ル ー と 同 じ く 神 経 細 胞 脱 落 と 海 綿 状 脳 症 を 呈 す る 。 両 者 の 類 似 性 に 気 づ い た ガジ ュ セ ッ ク と ギ ッ ブ ス は ク ー ル ー 患 者 の 脳 を チ ン パ ン ジ ー に 移 植 し た 。 約 2 年 間 の 潜 伏 期を 経 て チ ン パ ン ジ ー は ク ー ル ー 類 似 の 神 経 症 状 を 発 症 し 、 病 理 学 的 に も 同 じ 所 見 が 得 ら れた 7。 こ れ に よ り ク ー ル ー が ス ク ル ピ ー と 同 じ く 伝 播 性 疾 患 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 ニ ュ ー ギ リ ア で は 人 肉 食 の 風 習 が あ り 、 ク ー ル ー 感 染 者 の 脳 を 食 べ る こ と に よ っ て ク ー ル ー病 が 発 症 し た と 考 え ら れ る 。 人 肉 食 風 習 が 失 わ れ る に 伴 い ク ー ル ー 発 症 は 急 激 に 減 少 し た 。 プ ル シ ナ ー ら は ス ク ル ピ ー に 感 染 し た マ ウ ス の 脾 臓 の 物 理 化 学 的 解 析 か ら 、 ス ク ル ピ 染 に 特 異 的 な タ ン パ ク 分 画 を 同 定 し 、 こ れ を 「 プ リ オ ン(prion)」 と命 名した8。 プ ル シ ナ ー は こ の 事 実 を 根 拠 に 海 綿 脳 症 を 呈 す る 諸 疾 患 の 原 因 は プ リ オ ン ・ タ ン パ ク で あ り 、こ の タ ン パ ク が 疾 患 の 伝 播 に 関 与 す る と す る 「 プ リ オ ン 病 」 仮 説 を 提 唱 し た9 個 体 か ら 個 体 へ の 疾 患 の 伝 播 が 細 菌 や ウ ィ ル ス で は な く タ ン パ ク に よ っ て 担 い う 仮 説 は そ れ ま で の 定 説 と 対 立 す る 。 当 然 激 し い 論 争 が 起 こ っ た 。 し か し 、 1 ) プ リ オ ン ・ タ ン パ ク (PrP) 遺伝子が正常細胞にも存在し正常なプリオン・ が 作 ら れ て い る 。 2 )遺 伝 性 プ リ オ ン 然 変 異 を 導 入 し た マ ウ ス も 発 症 、 患 者 類 似 の 病 変 を 示 す 。 7 こ の 業 績 に よ り ガ ジ ュ セ ッ ク は 1976 年ノーベル医学生理学賞を受賞した。

8 プ ル シ ナ ー は“proteinaceous infection particle(タンパク感染物質)”の頭文字にウィル

ス (virus)の別名である“virion”に関連をもたせる on を加えてこのように名付けた。 9 CJB の原因はウィルスであってプリオン説は誤りであると主張する研究者がいる。これ は 誤 解 で あ る 。プ リ オ ン 説 は「 正 常 な プ リ オ ン・タ ン パ ク(PrPC)が 異 常 な プ リ オ ン・タ ン パ ク(PrPSc)に 変 化 す る こ と に よ り プ リ オ ン 病 が 発 症 す る 」と い う も の で あ り 、こ の 変 化 が ウ ィ ル ス に よ っ て 生 じ る 可 能 性 を 排 除 し て い る 訳 で は な い 。 プ ル シ ナ ー も 原 因 ウ ィ ル ス の 存 在 を 否 定 し て い な い 。 17-15

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3 )PrP 遺伝子を除去したノックアウトマウス(PrP が作れない)では実験的感染が起 こ ら な い 。 タ ー の 異 常 プ リ オ ン・タ ン パ ク(PrPSc)遺 伝 子 を 導 入 し た ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク オ ン・タ ン パ ク(PrPSc の 、 プ リ オ ン 病 の 概 念 は 広 く 受 け 入 れ ら れ る こ と に な っ た10 . 1 . 2 プ リ オ ン 病 因 に よ っ て 以 下 の ご と く 分 類 さ れ る 。 わ ち 現 時 点 で は 原 因不 の 経 路 で 個 体 か ら 個 体 へ PrPScが 伝 達 さ れ る こ と 3 ) 遺 伝 性 プ リ オ ン 病 ~PrPC遺 伝 子 変 異 に よ っ て 発 症 す る も の 。 ・ シ ュ ト ロ イ ス ラ ー ・ シ ェ イ ン カ ー 病 (GSS) . 1 . 3 疫 学 に よ れ ば 、CJD の疫学は以下のごとくである。CJD は世界的にほぼ 4 )ハ ム ス マ ウ ス は ハ ム ス タ ー と 同 一 の 潜 伏 期 間 で 発 症 す る 。 こ の 事 実 に よ り 感 染 性 プ リ オ ン ・タ ン パ ク に よ っ て 種 を 超 え て 疾 患 が 伝 播 す る こ と が 確 証 さ れ た 。 5 )正 常 細 胞 に み ら れ る PrPCと プ ル シ ナ ー が 抽 出 し た 異 常 プ リ 一 次 構 造 は 同 一 で 立 体 構 造 に 差 違 が あ り 、PrPCに 多 い α ヘ リ ッ ク ス 構 造 がPrPScで は β シ ー ト 構 造 に 変 わ る 。 な ど 事 実 が 明 ら か に な り 2 プ リ オ ン 病 は そ の 発 症 原 1 ) 孤 発 性 プ リ オ ン 病 ~ 遺 伝 、 感 染 な ど の 要 因 に よ ら な い 、 す な 明 な も の 。 孤 発 性 CJD(古典型、変異型) 2 ) 伝 達 性 プ リ オ ン 病 ~ 何 ら か の 未 知 に よ っ て 生 じ る も の 。 ① 医 原 性 CJD ② 新 変 異 型 CJD ③ ク ー ル ー ① 家 族 性 CJD ② ゲ ル ス ト マ ン ③ 致 死 性 家 族 性 不 眠 症(FFI) 2 横 山 ・ 長 田 の 総 説 共 通 し て 年 間 100 万人に約 1 例の頻度で発症する。日本における疫学知見は以下のごとく で あ る 。 年 間 有 病 率 は 100 万人対男性 0.49、女性 0.67 である。年次患者数は増加傾向で 10 こ の 業 績 に よ り プ ル シ ナ ー は 1997 年ノーベル医学生理学賞を受賞した。 17-16

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あ る 。CJD 中孤発性が 85.3%、家族性 5.3%、硬膜移植例 5.2%であった。新変異型 CJD は 2005 年英国渡航歴のある男性で発症が確認された。 2 . 1 . 4 診 断 基 準 HO の孤発型 CJD の診断基準は表17-1のごとくである。日本 表 1 7 - 1 WHO の孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)診断基準 た は ウ ェ ス タ ン プ ロ ッ ト や 免 疫 染 色 法 で B. 上 を 満 た す 。 状 徴 候 PSD)の存在。 C. を 満 た す が 脳 波 上 PSD がない場合。 Ⅰ Ⅰ . 拡 ssible)に該当する例で、脳波上 PSD が 表 1 7 - 2 厚 生 省 研 究 班 の プ リ オ ン 病 診 断 基 準 1998 年公表された W で は 厚 生 省 研 究 班 が 1997 年表17-2に示す CJD、GSS、FFI の診断基準を公表してい る 。 Ⅰ . 従 来 か ら 用 い ら れ て い る 診 断 基 準 A.確実例(definite) 特 徴 的 な 病 理 学 所 見 ま 脳 に 異 常 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク を 検 出 。 ほ ぼ 確 実 例 (probable) 1 . 急 速 進 行 性 認 知 症 。 2 . 次 の 4 項 目 中 2 項 目 以 a.ミオクローヌス b.視覚または小脳症 c.錐体路または錐体外路 d.無動性無言 3.脳波上周期性同期性放電( 疑 い 例 (possible) 上 記 のB の 1 および 2 大 診 断 基 準 (WHO、1998) 上 記 の 診 断 基 準 の C の疑い例(po な く て も 脳 脊 髄 液 中 に 14-3-3 タンパクが検出され臨床経過が 2 年未満の 場 合 、 ほ ぼ 確 実 例 (probable)とする。 17-17

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A.古典型 CJD の診断 : 特 徴 的 な 病 理 学 所 見 を 有 す る 例 、 ま た は ウ ェ ス タ ン プ 型 で は 2. し 、 脳 波 で 3. 徐 々 に 進 行 し 、 ン ・ 2. 3. 状 か 痙 性 対 麻 痺 に 認 知 症 を 合 併 し て い る が 、 C. 的 に 頑 固 な 不 眠 、 記 憶 障 害 、 認 知 症 、 交 感 神 経 興 奮 状 態 、 組 織 か 2. 診 実 例 と 臨 床 像 が 同 一 で 、 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク 遺 伝 子 の コ ド 3.診断 と 同 一 で 、 免 疫 プ ロ ッ ト 法 で 脳 か ら 異 常 プ リ . 2 病 理 学 所 見 基 準 1.診断確実例(definite) ロ ッ ト 法 や 免 疫 染 色 法 で 脳 に 異 常 な プ リ オ ン ・ タ ン パ ク を 検 出 し え た 症 例 ( 新 変 異 ウ ェ ス タ ン プ ロ ッ ト 法 に て イ ギ リ ス の 症 例 と 同 一 の パ タ ー ン が 検 出 さ れ る ) 診 断 ほ ぼ 確 実 例 (probable):病理学所見がない症例で、進行性認知症を示 周 期 性 同 期 性 放 電 (PSD)を認める。さらにミオタローヌス、錐体路/錐体外路障害、 小 脳 症 状 、 視 覚 異 常 、 無 動 性 無 言 の う ち2 項目以上を示す症例(新変異型では、イギ リ ス 例 と 臨 床 ・ 病 理 像 が 同 一 で あ る が 、 脳 組 織 の ウ ェ ス タ ン プ ロ ッ ト 法 が 未 検 索 ) 診 断 疑 い 例 (possible):診断ほぼ確実例と同じ臨床像を示すが、PSD を欠く症例 B.ゲルストマン・シュトロイスラー・シェインカー病症候群の診断基準 1.診断確実例(definite):小脳症状、あるいは痙性対麻痺で発症し、 認 知 症 が 加 わ る 。 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク 遺 伝 子 の 変 異 が 認 め ら れ 、 病 理 学 所 見 で は プ リ オ タ ン パ ク 陽 性 の ア ミ ロ イ ド 斑 が み ら れ る 症 例 。 多 く は 家 族 性 で あ る が 、 孤 発 例 も 存 在 す る 診 断 ほ ぼ 確 実 例 (probable):臨床症状とプリオン・タンパク遺伝子の変異が確実例と同 じ で あ る が 、 病 理 学 検 索 未 実 施 の 症 例 診 断 疑 い 例 (possible):進行性小脳症 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク 遺 伝 子 未 検 索 の 症 例 致 死 性 家 族 性 不 眠 症 の 診 断 基 準 1.診断確実例(definite):臨床 ミ オ ク ロ ー ヌ ス が み ら れ 、病 理 学 的 に は 視 床 の 選 択 的 海 綿 状 変 性 が 認 め ら れ る 。さ ら に 脳 ら 、免 疫 プ ロ ッ ト 法 で 異 常 プ リ オ ン・ タ ン パ ク が 検 出 さ れ る こ と が あ り 、プ リ オ ン・ タ ン パ ク 遺 伝 子 の コ ド ン 178 変異を有する症例 断 ほ ぼ 確 実 例 (probable) : 診 断 確 ン178 変異を有するが、病理学検索未実施の症例 疑 い 例 (possible): 臨床 像 と病 理 所見 が 確実 例 オ ン ・ タ ン パ ク が 検 出 さ れ て い る が 、 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク 遺 伝 子 未 検 索 の 症 例 2 17-18

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プ リ オ ン 病 の 病 理 学 所 見 に つ い て は 田 丸 と 天 野 お よ び 平 野 の 総 説 が あ る 。 そ れ に よ れば な い し 楕 円 形 の 空 胞 形 成 で あ り 濃 染 し 細 胞 体 が 膨 リ ア が 優 位 と な る 病 変 が 多 い が 、 の 起 き や す い 部 位 で あ り 、 一 概 に 二 次 性 変 化 と は い え な い 。 特 に初 細 胞 層 の 脱 落 が 顕 著 で あ る 。 白 質 で は 皮 質 直 下の 明 化 で あ る 。 加 え て 、近 年 、抗 プ リ オ ン 染 色 に よ る 染 色 性 、す な CJD 病の病理学所見の概要は以下のごとくである(図17-7)。 1 )CJD の最も特徴的所見である神経網の海綿状変化は小さな円形 、 癒 合 し て 巨 大 化 す る 場 合 が あ る 。 こ の 海 綿 状 態 の 基 本 は 神 経 網 、 特 に シ ナプ ス 終 末 の 空 胞 化 で あ る 。 大 脳 皮 質 、 基 底 核 、 小 脳 、 脊 髄 に 認 め ら れ る 。 2 ) 高 度 な 病 変 部 位 で は 神 経 細 胞 は 殆 ど 脱 落 す る 。 残 存 す る 細 胞 は 核 が れ 、 一 見 虚 血 性 変 化 に 類 似 す る 場 合 が あ る 。 ま た 、 細 胞 体 が 膨 れ あ が り 核 が 辺 縁 に 寄っ て 魚 眼 状 の 変 化 を 呈 す る 神 経 細 胞 が 皮 質 深 部 を 中 心 に 散 見 さ れ る 。 さ ら に レ ビ ー 小 体11 類 似 し た 構 造 を 細 胞 体 に 有 す る 神 経 細 胞 も み ら れ る 。 3 )ア ス ト ロ グ リ ア の 変 性 像 も 様 々 で あ る 。腫 脹 し た グ 海 綿 状 変 化 の な い 小 脳 の 皮 質 下 白 質 で は 、 繊 維 性 グ リ オ シ ス が 先 行 す る 。 よ っ て 観 察 され る 像 は 多 彩 で あ る 。 4 ) 大 脳 白 質 は 病 変 期 か ら 髄 鞘 は 脱 落 す る 傾 向 に あ り 、 軸 索 以 上 に 変 性 に 陥 り や す い 。 急 激 な 変 性 脱 落 を 示す マ ク ロ フ ァ ー ジ 反 応 は よ く み ら れ る 。 5 ) 小 脳 で は プ ル キ ン エ 細 胞 よ り 顆 粒 グ リ オ ー シ ス が 顕 著 で あ り 、 深 部 の 髄 質 で は む し ろ 淡 明 化 が 主 体 で あ る 。 6 ) 大 脳 基 底 核 や 視 床 は 殆 ど の 症 例 で 傷 害 さ れ る 。 そ の 病 変 は 海 綿 状 か 淡 7)海馬 は多くの症例で保存され、急激に萎縮を迎える時期になってもその大きさや細 胞 の 配 列 は 保 持 さ れ る 傾 向 に あ る 。 8)上記 1)から 7)の基本的所見に わ ち PrPScの 沈 着 様 式 の 検 索 が な さ れ る よ う に な っ た ( 図 1 7 - 8 ) 。 こ れ は 細 胞 外 に ア ミ ロ イ ド 様 ク ー ル ー 斑 を 形 成 す る 「 プ ラ ー ク 型 」 と シ ナ プ ス 前 終 末 に 付 着 す る 「 シ ナ プス 型 」 に 大 別 さ れ 、 さ ら に 神 経 細 胞 周 辺 型 や 空 胞 周 辺 型 な ど の パ タ ー ン も み ら れ る 。 11 第 1 5 章 参 照 。 17-19

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図 1 7 - 7 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 の 病 理 学 所 見 A、B:肉眼所見、大脳皮質の高度萎縮、

C、D、E:光顕所見、海綿状態、神経細胞脱落、グリオーシス F:軸索の脱髄、グリアおよびマクロファージの増殖

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図 1 7 - 8 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 患 者 脳 の 光 顕 所 見 ( 上 ) と 同 じ 部 位 の プ リ オ ン ・ タ ン パ クに 対 す る 免 疫 反 応 。 大 脳 皮 質 に は ア ミ ロ イ ド 斑 様 のプ リ オ ン ・ タ ン

パ ク陽 性 の プ ラ ー ク が 充 満 し て い る 。

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2 . 3 臨 床 像 2 . 3 . 1 孤 発 性 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 孤 発 性 CJD は明らかな感染の事実がなく、PrP 遺伝子にも変異が認められない類型で あ る 。プ リ オ ン 病 の 85~90%を占める。その臨床像から古典型と変異型に分類されている。 2 . 3 . 1 . 1 古 典 型 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 発 症 年 齢 は 45 歳~75 歳であるが、60 歳~70 歳で発症する例が最も多い。急激に発症 す る 認 知 症 と ミ オ ク ロ ー ヌ ス を 主 症 状 と す る 。 次 第 に 無 言 と な り 6 ヶ月前後で死亡する。 患 者 は 疲 労 、 不 眠 、 抑 鬱 、 体 重 減 少 、 頭 痛 、 倦 怠 感 、 原 因 不 明 の 痛 み な ど を 訴 え る 。 錐体 外 路 症 状 、 小 脳 失 調 、 皮 質 盲 な ど が 認 め ら れ る 。 検 査 所 見 で は 、 髄 液 の 14-3-3 タンパクの増加が特徴的所見とされている。14-3-3 タン パ ク 質 は チ ク ロ ー ム C などのミトコンドリア・タンパク前駆体の輸送タンパクあるいはア ポ ト ー シ ス の 調 節 機 能 タ ン パ ク で あ る 。CJD だけでなく他のプリオン病でも増加すること が 明 ら か に さ れ て お り 、CJD 特異的所見ではない。軽度の髄液増加も認められる。 脳 波 で は 、 脳 全 体 に 同 期 し て 出 現 す る 周 期 1 秒 前 後 の 周 期 性 同 期 性 放 電(PSD)がよく 知 ら れ て い る 。 多 く は 高 振 幅 鋭 波 で 主 成 分 は 陰 性 波 、 持 続 は 300msec.~400msec.でミオ ク ロ ー ヌ ス に 同 期 す る ( 図 1 7 ― 9 ) 。 図 1 7 - 9 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 に 見 ら れ る 周 期 性 同 期 性 放 電 (PSD) 17-22

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2 . 3 . 1 . 2 変 異 型 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 1 )ハ イ デ ン ハ イ ム 変 異 型 ~ 視 覚 障 害( 変 形 視 、色 覚 異 常 、皮 質 盲 、ア ン ト ン 症 状 な ど ) で の 発 症 を 特 徴 と す る 臨 床 亜 型 。 そ の 後 は 認 知 症 や ミ オ ク ロ ー ヌ ス な ど の 神 経 症 状 が 加わ っ て く る 。検 査 所 見 で は 、髄 液 14-3-3 タンパク増加、脳波では PSD が認められ、特に 後 頭 部 に 周 期 性 放 電 が 顕 著 な 症 例 も あ る 。 病 理 学 所 見 で は 海 綿 状 変 化 が 認 め ら れ 、 後 頭葉 皮 質 で 顕 著 で あ る 。 2 ) ブ ラ ウ エ ル ・ オ ッ ペ ン ハ イ マ ー 変 異 型 ~ 失 調 症 状 で の 発 症 を 特 徴 と す る 臨 床 亜 型 。 後 に 認 知 症 、 ミ オ ク ロ ー ヌ ス そ の 他 の 神 経 症 候 が 加 わ り 、 急 速 に 進 行 す る 。 脳 波 所 見 では PSD を認める。病理学所見は海綿状変化と小脳顆粒細胞層の選択的な神経細胞脱落がある。 3 ) 視 床 型 ( 孤 発 性 敦 死 性 不 眠 症 ) ~ 認 知 症 、 失 調 症 状 、 自 律 神 経 障 害 、 睡 眠 障 害 な ど が 認 め ら れ る 。 脳 波 は 徐 波 化 す る が PSD は認められない。病理学所見は視床および下オ リ ー ブ 核 の 高 度 の 変 性 。 大 脳 皮 質 に は 比 較 的 軽 度 の 海 綿 状 変 化 。 視 床 変 性 症 と し て 報 告さ れ て き た 疾 患 で あ る 。FFI(後述)との類似性が指摘されている。 4 ) 筋 萎 縮 型 ~ 筋 萎 縮 を 顕 著 な 特 徴 と す る 類 型 。 稀 で あ る 。 2 . 3 . 1 . 3 プ リ オ ン ・ タ ン パ ク遺 伝 子 多 型 と 臨 床 像 PrP 遺伝子は 20 番染色体短腕に存在し、種々の多型が存在する。孤発性 CJD の臨床・ 病 理 像 は こ の PrP 遺伝子多型によって異なることが明らかにされている。PrP 遺伝子の 129 番目のアミノ酸(コドン 129)がメチオニン(M)であるかバリン(Ⅴ)であるかに よ っ て 、MM、MV、ⅤⅤの3種類の多型がある(日本人は 90%以上の個人が MM 型であ る ) 。 一 方 、 脳 に 沈 着 す る プ ロ テ ア ー ゼ 抵 抗 性 PrPScの ウ ェ ス タ ン プ ロ ッ ト 解 析 結 果 か ら 二 つ の タ イ プ の バ ン ド ・ パ タ ー ン が あ る こ と が 明 か に さ れ た 。 タ イ プ 1 は 分 子 量 21KD、 タ イ プ 2 は分子量 19KD である。孤発性 CJD の臨床・病理像はこのバンドのパターンに も 関 連 し て い る 。そ こ で こ の 遺 伝 子 多 型 と バ ン ド・パ タ ー ン の 組 み 合 わ せ に よ る 分 類(MMl 型 /MM2 型/MVl 型/MV2 型/VVl 型/VV2 型)が提唱されている(表17-3)。そ れ に よ る と 、 孤 発 性 CJD 古典型は MMl 型に属し、様々な変異型は MMl 型以外のタイプ に 含 ま れ て い る 。 臨 床 亜 型 の 中 の 視 床 型 は MM2 型に属する。 17-23

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表 1 7 - 3 遺 伝 子 多 型 に よ る 孤 発 型 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 (CJD) の 類 型 MM1 型:CJD 古典型の臨床(急速な進行。認知症、ミオクローヌス、視覚異常、失調な ど の 症 状 。PSD および髄液 14-3-3 タンパク陽性など)および病理学所見(大脳 皮 質 、小 脳 皮 質 、基 底 核 、視 床 な ど に 海 綿 状 変 化 。シ ナ プ ス 型 のPrP 沈着)。ハ イ デ ン ハ イ ム 変 異 型 は MMl 型に含まれる。 MM2 型: 1)皮質型:認知症で発症し比較的長い経過。PSD(-)、髄液 14-3-3 タンパク陽性。 大 脳 皮 質 、 基 底 核 、 視 床 の 海 綿 状 変 化 お よ び 粗 大 な パ タ ー ン の シ ナ プ ス 型 沈 着 。 2)視床型(孤発性致死性不眠症、FFI):不眠、自律神経障害ほか。視床、オリーブ核 病 変 。 MV1型:急速な進行、認知症、ミオクローヌス。PSD および髄液 14-3-3 タンパク陽性。 大 脳 皮 質 お よ び 小 脳 病 変 。 MV2 型:失調、認知症など。比較的長い経過の例が含まれる。PSD(-)、髄液 14-3-3 タ ン パ ク は 一 部 の 例 で の み 陽 性 。 辺 緑 系 、 基 底 核 、 視 床 、 脳 幹 、 小 脳 に 海 綿 状 変 化 お よ び 小 脳 に ク ー ル 一 斑 。 プ ラ ー ク 型 お よ び シ ナ プ ス 型 のPrP 沈着。 VV1 型:認知症で発症し比較的長い経過。PSD(-)、髄液 14-3-3 タンパク陽性。 大 脳 皮 質 、 基 底 核 病 変 ( 海 綿 状 変 化 、 シ ナ プ ス 型 の PrP 沈着)。 VV2型:失調および認知症。PSD(-)、髄液 14-3-3 タンパク陽性。小脳、基底核、視 床 、 大 脳 皮 質 深 層 病 変 ( 海 綿 状 変 化 。 ク ー ル ー 斑 は な い が シ ナ プ ス 型 に 加 え て プ ラ ー ク 型 の PrP 沈 着 ) 。 ブ ラ ウエル ・ オ ッペン ハ イ マー変 異 型 はこ こ に 属 す る 。 2 . 3 . 2 伝 達 性 プ リ オ ン 病 2 . 3 . 2 . 1 医 原 性 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 種 々 の 医 療 行 為 に 起 因 す る CJD が存在する。①CJD に感染した硬膜や角膜の移植に伴 う CJD、②ヒト由来成長ホルモンの投与に伴う CJD、③汚染した医療器具の使用による CJD、がある。臨床像は孤発性 CJD 古典型に類似し、急激に進行する認知症を主症状と す る 。 佐 藤 ら に よ れ ば 日 本 に お け る 硬 膜 移 植 に よ る CJD の特徴は以下のごとくである。 1 ) ヒ ト 乾 燥 硬 膜 移 植 は 1979~1991 年、特に 1983~87 年が多い。 2 )移 植 か ら CJD 発症までの期間(潜伏期)は 16 カ月~17 年で、なお患者は増加して 17-24

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い る 。 3 ) 硬 膜 移 植 後 の CJD 患者数は 2002 年 8 月現在で 91 名である。 4 ) 発 症 年 齢 は 平 均 53 歳(15 歳~79 歳)で、孤発性 CJD に比し硬膜例は若年発症の 傾 向 が あ る 。 5 ) 初 発 症 状 は 歩 行 不 安 定 な ど 小 脳 失 調 で 始 ま る 症 例 が や や 多 い 。 北 本 に よ れ ば 、 硬 膜 移 植 CJD は次の 2 群に分けられる。 1 ) 硬 膜 ・ 古 典 型 CJD~孤発型 CJD と同様の症状、経過をとる。急速に認知症が進展 し 、 数 カ 月 の 間 に 無 動 性 無 言 に 陥 り 死 亡 す る 。 脳 波 で は 典 型 的 な PSD が認められる。病 理 学 所 見 も 孤 発 性 CJD と同一で、全脳に神経細胞の脱落、グリオーシス、高度の海綿状 変 化 が 認 め ら れ る 。プ リ オ ン ・ タ ン パ クの 免 疫 染 色 で は 、 シ ナ プ ス 型 と 呼 ば れ る び ま ん 性 の 微 細 陽 性 顆 粒 の 沈 着 が 証 明 さ れ て い る 。 2 )硬 膜・変 異 型 CJD(緩徐進行型)~約 10%の硬膜移植 CJD 患者が該当する。経過 は 緩 徐 で あ る 。発 症 1 年後でも簡単な応答可能で、無動性無言に至るまでの時間経過が孤 発 性 CJD に比して遅い。脳波では PSD が認められないことも特徴的である。病理学所見 は 硬 膜 ・ 古 典 型 CJD に比し軽度で、病変分布も限局性である。神経細胞は比較的残存し て い る 。 2 . 3 . 2 . 2 新 変 異 型 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 1996 年英国で 10 歳代の非常に若い CJD 患者が報告された。英国において毎年数千頭 規 模 で 発 生 す る 牛 海 綿 脳 症 (BSE:狂牛病)に罹患した牛の肉を摂取したことによると考 え ら れ 、 種 を 超 え た CJD の伝播として注目された。この新変異型 CJD は英国以外にもフ ラ ン ス 、 ア イ ル ラ ン ド 、 カ ナ ダ 、 米 国 な ど で 発 症 し て い る 。 英 国 で の 発 症 数 は 2005 年末 ま で に 157 例である。日本では1例の発症が報告されている。佐藤らによれば、その臨床 像 は 以 下 の ご と く で あ る 。 1 )若 年 者 が 多 い 。100 例の新変異型 CJD の臨床経過をまとめた報告では、精神症状の み で 初 発 し た も の が 63%、神経症状のみ 15%、精神症状と神経症状を同時に初発したも の が 22%である。初発症状は不安、引きこもり、不眠、異常行動、強迫観念、性格変化、 記 憶 障 害 な ど あ る 。 初 期 に み ら れ る 神 経 症 状 と し て は 痛 み を 伴 う 体 性 感 覚 障 害 、 頭 痛 、発 汗 、 失 神 発 作 な ど で あ る 。 や が て 失 調 性 歩 行 障 害 、 構 音 障 害 、 振 戦 、 ミ オ ク ロ ー ヌ ス や舞 17-25

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踏 病 様 の 不 随 意 運 動 、 眼 球 上 方 視 障 害 な ど の 症 状 も み ら れ る よ う に な る 。 2 ) 孤 発 性 CJD と異なり 6 カ月以上精神症状のみで経過する比較的緩徐な経過を示す 症 例 が 多 い 。精 神 疾 患 と み な さ れ 易 く 、初 期 に は 新 変 異 型 CJD の診断は困難な事が多い。 3 ) 脳 波 で はPSD がみられない。 4 )髄 液 の 13-4-4 は 50%に陽性、タウタンパクと両者を測定することにより 90%の陽 性 率 で あ る 。 5 ) 病 理 学 所 見 で はプ リ オ ン ・ タ ン パ クの 免 疫 染 色 で 全 脳 に 「 花 弁 状 プ ラ ー ク 」 が 無 数 に 認 め ら れ る 。 花 弁 状 プ ラ ー ク は PrPScの 斑 状 沈 着 の 周 囲 を 海 綿 状 態 を 形 成 す る 空 胞 が 取 り 囲 ん で 花 弁 状 を な す 像 で あ る ( 図 1 7 - 1 0 ) 。 さ ら に 神 経 細 胞 の 胞 体 や 樹 状 突 起 の 起始 部 に は 、 密 にプ リ オ ン ・ タ ン パ ク陽 性 顆 粒 が 染 色 さ れ て い る 。 ま た 血 管 の 周 囲 に も 点 々 とプ リ オ ン ・ タ ン パ ク陽 性 顆 粒 が 存 在 す る 。 後 述 す る よ う に 、 新 変 異 型 CJD は MRI で視床枕に 強 い 信 号 異 常 を 呈 す る 。 こ の 所 見 に 対 応 し て 、 視 床 枕 で は 神 経 細 胞 脱 落 と ア ス ト ロ サ イト の 増 加 が 著 明 で あ る 。 6 ) 羅 患 脳 の ウ エ ス タ ン ・ プ ロ ッ ト に よ るプ リ オ ン ・ タ ン パ クパ タ ー ン は 2 型 ( 上 述 ) を 示 す 。 図 1 7 - 1 0 新 変 異 型 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 に 見 ら れ る 花 弁 状 プ ラ ー ク 右 は ヘ マ ト キ シ ン ・ エ オ ジ ン 染 色 、 左 はプ リ オ ン ・ タ ン パ ク抗 原 に 対 す る 免 疫 反 応 2 . 3 . 2 . 3 ク ー ル ー パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア の フ ォ ア 族 で み ら れ た 疾 患 。 宗 教 上 の 儀 式 で 死 者 の 脳 を 食 べ る 風 習 が あ り ヒ ト か ら ヒ ト へ と 伝 播 し た 。 小 脳 失 調 、 振 戦 、 な ど の 不 随 意 運 動 や 情 動 変 化 が 認め 17-26

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ら れ る 。 認 知 症 は 末 期 ま で 目 立 た な い 。 小 脳 変 性 を 主 病 変 と し 、 殆 ど の 症 例 で 小 脳 皮 質顆 粒 層 を 中 心 に 「 ク ー ル ー 斑 」 が 認 め ら れ る 。 こ れ は 放 射 状 に 配 列 す る ア ミ ロ イ ド 線 維 塊か ら な り 、 周 辺 部 は 突 起 の 変 性 を 伴 わ な い 。 2 . 3 . 3 家 族 性 プ リ オ ン 病 ヒ ト PrP 遺伝子には多数の変異が知られており(図17-12、下段)、遺伝性プリオ ン 病 と 関 係 し て い る 。変 異 の 種 類 お よ び コ ド ン 129 と 219 の多型によって多彩な臨床像と 病 理 学 所 見 を 呈 す る 。通 常 は 体 染 色 体 優 性 遺 伝 を 示 す が 、浸 透 率 が 低 い(CJD 患者の子が 発 症 す る 割 合 が 低 い ) た め 、 孤 発 性 CJD と診断されることもある。 1 )家 族 性 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト・ヤ コ ブ 病(CJD)~PrP 遺伝子変異による CJD。臨床像、 病 理 学 所 見 は 孤 発 性 CJD と同じである。 2 ) ゲ ル ス ト マ ン ・ シ ュ ト ロ イ ス ラ ー ・ シ ェ イ ン カ ー 病 (GSS)~小脳失調と認知症で 発 症 し 、 大 脳 皮 質 と 小 脳 皮 質 を 中 心 に PrP アミロイド斑を有する。多数の PrP 遺伝子変 異 が 報 告 さ れ て い る 。変 異 に よ っ て は 大 脳 皮 質 、大 脳 基 底 核 、脳 幹 に NFT が認められる。 孤 発 性 CJD と同様の臨床像を呈する。 3 ) 致 死 性 家 族 性 不 眠 症 (FFI) ~著しい不 眠、進行性 認知症、自 律神経興奮 症状、ミ オ ク ロ ー ヌ ス を 呈 す る 。 関 連 す る PrP 遺伝子変異は D178N である。病理学所見は軽度で あ る 。 肉 眼 的 に は 脳 に 殆 ど 異 常 は 認 め ら れ な い 。 び ま ん 性 に 軽 度 の 萎 縮 が 認 め ら れ る 程度 で あ る 。 視 床 前 腹 側 核 、 背 内 側 核 に 限 定 さ れ た 神 経 細 胞 脱 落 、 グ リ ア 増 殖 が 認 め ら れ る。 プ リ オ ン 抗 原 に 対 す る 反 応 は 皮 質 下 諸 核 、 脳 幹 、 小 脳 、 下 オ リ ー ブ 核 で 陽 性 で あ る 。 2 . 4 . 画 像 解 析 所 見 2 . 4 . 1 孤 発 性 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 横 山 と 長 田 に よ れ ば 、 孤 発 性 CJD の画像解析所見は以下のごとくである。 CTやMRIでは、初期は異常所見に乏しいが、中期以降は脳萎縮が急速に進行する(図1 7 - 1 1 )。MRIのTl強 調 画 象(TIWI)、T2強 調 画 像(T2WI)のほかに、フレア(FLAIR)

画 像12、 プ ロ ト ン 強 調 画 像 (Pwd)、拡散強調画像(DWI)の撮像で初期変化が検出され 12 自由水(細胞内を自由に移動する水分)の信号を抑制する MRI の撮像方法。T2強 調 画 像 で 脳 脊 髄 液 が ( 通 常 と 逆 に ) 低 信 号 と な り 、 脳 溝 や 脳 室 に 接 す る 病 変 の 診 断 に 有 用 で あ る 。 17-27

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や す い 。比 較 的 病 初 期 か らMRI、T2WI、PwdやFLAIRで基底核に軽度から中等度の高信号 域 を 認 め 、 末 期 に はT2WIで両側視床、基底核の低信号域を認める。T2WIやFLAIRで灰白 質 の 限 局 性 高 言 号 域 や 、深 部 白 質 に 多 発 性 、び ま ん 性 の 高 信 号 域 を 認 め る こ と も あ る 。DWI で は 、 比 較 的 病 初 期 に 両 側 の 基 底 核 、 視 床 や 大 脳 皮 質 で 高 信 号 域 を 認 め 、 経 時 的 に 病 変部 位 や 範 囲 が 変 化 す る こ と も あ る 。コ ド ン 180 変異のCJDでは、経時的に側頭・前頭・頭頂 葉 皮 質 のT2高 信 号 域 の 拡 大 を 認 め 、後 頭 葉 皮 質 、小 脳 、視 床 、海 馬 傍 回 は 比 較 的 保 た れ る 。 SPECT では発症初期から前頭葉、頭頂葉、後頭葉の局所性の不均一な脳血流分布の低 糖 代 謝 の 低 下 を 認 め る 。後 頭 葉 、運 下 を 認 め 、 末 期 に は 皮 質 全 般 に 高 度 の 脳 血 流 低 下 を 認 め る が 、 視 床 、 基 底 核 、 小 脳 半 球や 脳 幹 部 は 比 較 的 保 た れ る ( 図 1 7 - 1 1 ) 。 PET では、発症初期から皮質領野の不均一な著しい 動 領 野 皮 質 は 比 較 的 保 た れ る 。末 期 に は 糖 代 謝 は 大 脳 皮 質 全 域 で 著 明 に 低 下 す る が 、視 床 、 基 底 核 、 小 脳 半 球 、 基 底 核 や 脳 幹 は 比 較 的 保 た れ る ( 図 1 7 - 1 1 ) 。 図 1 7 - 1 1 ク ロ イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 の 画 像 解 析 所 見 全 経 過1 年 2 . イ ツ フ ェ ル ト ・ ヤ コ ブ 病 9 ヶ 月 の 55 歳女性例、a.発症 1.5 ヶ月、b.発症7ヶ月 c . 発 症 1 年4ヶ月 4 . 2 新 変 異 型 ク ロ 17-28

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