高齢者介護施設における
感染症予防等について
Ⅰ.感染症予防について
Ⅱ.高齢者の熱中症予防
高齢者介護施設の特徴
●入所者、通所者は抵抗力が弱い高齢者
●感染すると重症化しやすい
●集団で生活しているため感染拡大のリス
クが高い
●症状がはっきりせず診断が遅れやすい
●認知機能が低下している場合は、衛生管
理、感染対策への協力が得られにくい
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」・入所者・利用者および職員が感染し、媒介となり
うる感染症
*集団感染を起こす可能性がある
インフルエンザ、感染性胃腸炎、疥癬、結核など
・日ごろの感染症対策の不備によって、抵抗力の低下
した人に伝播する感染症
薬剤耐性菌
・血液、体液を介して感染する感染症
B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症など
注意すべき主な感染症
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」集団感染の予防
• 地域の流行状況の把握
• 日ごろからの標準予防策の実施
・感染症が判明するまでのタイムラグを考慮
• 入所者や通所者の感染徴候の早期発見と早期
対応
・感染徴候から疑われる感染症を考慮して対策を実施
• 通所者や面会者、職員からの持ち込み防止
• 通所者面会者のスクリーニング
• 感染症(疑いを含む)を発症した職員対応
の遵守
• 手指衛生と咳エチケット
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」基本となるのは、
「
標準予防措置策
(
スタンダード・プリコーション)」
・感染予防一般に適用すべき方策。 ・「血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜な ど」の取り扱いを対象としたもの「感染経路別予防策」
①空気感染,②飛沫感染,③接触感染などに対する予防策感染対策の基本
☆感染させない
☆感染しても発症させない
そのためには
➡
感染源(病原体)を
持ち込まない・拡げない・持ち出さない
血液
体液
分泌物
嘔吐物
排泄物
(便)
など
触れるとき 手袋を着用。 手袋を外したときには液体 石けんと流水により手洗い 触れてしまった 手洗いをし、必ず手指消毒 触れた場所の皮膚に損傷がないか を確認し、皮膚に損傷が認められ る場合は、直ちに配置医師に相談。 傷や創 傷皮膚 飛び散り、目、鼻、口を 汚染するおそれのあるとき *1に追加してマスク、必要に応じ てゴーグルやフェイ スマスクを着用 衣服が汚れ、他の入所者に 感染させるおそれがある *2に追加して 使い捨てエプロン・ ガウンを着用。 使用したエプロン・ガウンは、別の入所者のケアをする時に使用しない。標準予防措置策
*1 *2厚生労働省HP
<感染拡大を防ぐ>
○手洗いの徹底
※液体石けんの継ぎ足し使用はやめましょう。 液体石けんの容器を再利用する場合は、残 りの石けん液を廃棄し、容器をブラッシング、 流水洗浄し、乾燥させてから新しい石けん液 を詰め替えます。<感染拡大を防ぐ>
排泄介助(おむつ交換を含む)
・おむつ交換は、必ず使い捨て手袋を着用して行う。 ・一ケアごとに取り替えること。 ・手袋を外した際には手洗いを実施。 ・おむつの一斉交換は感染拡大の危険が高くなります。 おむつ交換車の使用は感染拡大の危険が高いためできるだけ やめる。 やむ得ず使用する場合は、清潔と不潔の区分わけを徹底する。 入所者一人ごとに手洗いや手指消毒をすることを徹底する、 手袋を使用する場合には一ケアごとに必ず取り替えるなど、特に 注意する。 個々の利用者の排泄パターンに対応した個別ケアを行うように心 がける。・接触感染(経口感染とその他の接触感染) ・潜伏期間 1~2日 ・症状 下痢・嘔吐・腹痛等 特 徴 — ウィルス量が少量でも発症する。10個でも人体に入ると発症 — 有症者の便や吐物には大量のウィルスが含まれている 便1g中に1億個以上、吐物1g中に100万個以上 — ウィルスが手につきやすく、簡単に取り除けない 便や吐物は液状のため処理の際手につきやすく、手のしわに より深く入り込むため取り除きにくい — 長期間ウィルスが便中に排出される 下痢が止まった後も1週間~1ヶ月ほど排出 — 乾燥すると空気中にウィルスが飛散する 吐物がついた絨毯から感染が広がった例もある
ノロウイルスによる感染性胃腸炎
<感染拡大を防ぐ >
○健康状態の観察と記録
発熱(体温)
嘔吐(吐き気)
下痢
腹痛
咳
咽頭痛・鼻水
発疹
摂食不良
頭痛
顔色、唇の色が悪い
体の動きや声の調子・大 きさ、食欲などがいつもの その人らしくない、と感じた ら要注意です。また、熱が あるかどうかは、検温する までもなく、日常的なトイレ 誘導やおむつ交換などの ケアの際に、入所者の体 に触れたときに判断できる 場合もあります。嘔吐物や便 それに汚染された場所 5000ppm(市販品を10倍希釈 吐物で汚れた衣類など 1000ppm (市販品を50倍希釈) 調理器具 ドアノブ 200ppm (市販品を250倍希釈)
<感染拡大を防ぐ>
○消毒の徹底
ノロウィルスの消毒
次亜塩素酸ナトリウム
を使用
二次感染予防の視点での消毒:
利用者がさわりそうな所・物: 床(部屋・廊下)・トイレのコック・水道の蛇口・手すり・ドアノブ 汚染された物:汚物処理した所・トイレ・食器・衣服・下着・スリッパ○吐物・便の処理 3原則
①すぐ拭き取る ②乾燥させない ③消毒する
・飛沫感染と接触感染 ・潜伏期間 1~3日 ・感染期間 発症直前から、発病後3日程度までが感染力 が特に強いとされる ・急な発熱で発症 頭痛・筋肉痛・全身倦怠感・咽頭痛等
インフルエンザ
・12月~3月で1月末~2月上旬がピーク。 基礎疾患のあるものでは脳炎や肺炎、死亡例もある。 安静、水分補給のほか、ワクチン接種と予防内服を行う。集団感染の兆候が見られたときの対応
• 受診し、診断と予防投与について 検討します。 • 基本的には個室対応ですが、個室 が足りない場合には、同じ症状の 人を同室とします。 • ケアや処置をする場合には、職員 はサージカルマスクを着用します。 • 罹患した入所者が部屋を出る場合 は、マスクをします。 掲示による周知啓発 必要時は面会制限 標準予防策 ・手指衛生 ・個人防護具 厚生労働省HP・空気感染、飛沫感染 ・潜伏期間 ①1次結核:感染から2年以内(若者に多い) ②2次結核:感染から数年~数十年が経過してから (高齢者に多い) ・【症状】咳・痰・発熱・胸痛・体重減少・だるい ・高齢者の結核の特徴 ・症状がでにくい 発熱・食欲低下のみの場合もある。 ・結核の症状と気づきにくい ・症状を訴えられない場合がある ・過去に結核の既往がある場合が多く、判断が困難 ・免疫力が低下して、急速に進行しやすい
結 核
2週間以上続く咳では結核を疑う。 高齢者では、疑わしい患者では、喀痰検査の実施を。血液や体液を介して感染する
感染症対策
• 肝炎(B型、C型)、HIV感染症など
• 日常生活においては感染しない。
• 血液や体液への接触予防=
標準予防策
・血液や体液に触れるときー
手袋を着用
・注射針のリキャップ禁止
・ 職員のB型肝炎ワクチン接種
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」薬剤耐性菌者への対応
<主な薬剤耐性菌>
・ メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
・ 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
・ 基質特異性拡張型
βラクタマーゼ(ESBL)産生菌
・ 多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
・ バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
・ カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)
保菌しているだけでは健康被害をもたらすことはない
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」具体的な対応
• 保菌者に過剰な対応は不要
・職員が標準予防策の遵守
・入所、通所者の手指衛生
• 周囲に拡散する可能性のある場合は、接触予防
策を実施
・痰、褥瘡、下痢便などからの検出
・可能であれば個室またはコホート(集団隔離)
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」Q&A
Q1 職員は感染症の媒介となることがあるか?
A1 「はい」
職員は外部との接触機会があるため、感染症に感
染し施設に病原体を持ち込む可能性がある。日常の
健康管理と発症時の修行制限が重要である。
Q2 薬剤耐性菌を保菌している場合は、通常の施設
では受け入れられない。
A2 「いいえ」
高齢者介護施設においては、標準予防策を実施し
ていれば、保菌者には特別な対応は不要である。拡
散度が高い入所者に接触予防策を実施すればよい。
「日本環境感染学会教育ツールVer.3.2より」Ⅱ.高齢者の熱中症予防
熱中症予防のために
高齢者と熱中症
熱中症患者のおよそ半数は65歳以上の高齢者です。
○体内の水分が不足しがちです。 ○体温調節機能が低下しているため、体に熱がこもりやすくな ります。 ○暑さやのどの渇きを感じにくくなるなど、体が出しているSO S信号に気づきにくくなっています。 ⇒暑さ対策が遅れることがあり、熱中症が発生する危険が高く なります。 熱中症予防のために ○お風呂にはいる時も水分が失われやすいので、入浴前 後に水分を摂り、40℃以下のぬるめの湯で、あまり 長湯にならないようにしましょう。 ○寝ている間にもかなりの水分が失われますので、枕元 に飲料を置くなど、水分の補給に努めましょう。熱中症対処・判断チャート 熱中症を疑う症状とは・・・ ○めまい・失神 ○筋肉痛・筋肉の硬直 ○大量の発汗 ○頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感 ○意識障害・痙攣・手足の運動障害 ○高体温 熱中症を疑う 症状の有無 有 水分を自力で 摂取できるか 意識がない 呼びかけに対し 返事がおかしい 救急隊を要請 意識はある ①涼しい場所への避難 ②脱衣と冷却 意識の有無 水分摂取できる ③水分・塩分の補給 ④症状が改善しない場合 ①涼しい場所への避難 ②脱衣と冷却 ⑤医療機関へ搬送 水分を自分で 摂取できない 回復しない場合は 医療機関へ