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特集 ロシア自動車産業とサプライチェーン 図表 1 ブランド別自動車買い替えサイクル ブランド名 買い替えサイクル ( 月 ) ブランド名 買い替えサイクル ( 月 ) UAZ 71 ボルボ 48 LADA 65 シボレー 48 三菱 53 ホンダ 48 スズキ 52 オペル 46 現代 51 シト

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Data Bank ロシア消費市場のブランド・ランキング

Data Bank

はじめに リーマンショックの影響を受け、ロシアの乗 用車(小型商用車<LCV>を含む)の市場規模 は2009年に約147万台にまで縮小したが、その 後、好調な回復ぶりを示し、2012年の販売台数 は過去最高であった2008年を上回る約294万台 に達した。しかし、2013年に入り、市況が再び 悪化している。2012年秋ごろから前年同月比の 販売台数の伸びの鈍化傾向が顕著になり、2013 年3月には月間販売台数が前年同月の数字を 下回ったのである。その後も前年同月割れの状 態が9月まで続き、通年の販売台数が前年を下 回るのはほぼ確実とみられている。 本稿では、販売不振の原因やロシア政府が導 入した販売促進策などに注目しながら、2013 年1~9月期のロシアの乗用車市場の状況を ご紹介する。 全般的状況 2012年秋ごろから販売が伸び悩む傾向が見 受けられていたものの、2013年1~2月は、販 売台数がごくわずかではあるが、前年同月を上 回った1)。しかし、3月の販売台数が前年同月 比4%減となったのを皮切りに不振の度合い は加速し、5~6月の2ヵ月連続で前年同月比 10%以上の落ち込みを記録。7月に政府が後述 の自動車ローン金利負担軽減措置を導入した 後、状況はやや好転しているものの、前年同月 割れの状態から脱却できておらず、2013年1~ 9月期の販売台数は前年同期比7%減の約205 万台にとどまった。 販売不振の理由はいくつか考えられるが「過 去に何度か苦い経験をしているので、ロシアの 消費者は景気の動向に非常に敏感である。今回 は、欧州の経済危機に過敏に反応したことが自 動車のような高価な耐久消費財の買い控えに つながったと推測される3。 ロシア経済の命運を握るといっても過言で はない油価が高値で安定するなかでの市場の 落ち込みは、そのような心理的ファクターでし か説明できない」という説が業界内では有力で ある。 また、「2013年に入りディーラー店への来客 数、およびディーラーや輸入業者のサイトへの アクセス数が減少している。ロシア人の車の買 い替えサイクルの平均値は4~5年だが(純国 産車は6年弱、外国ブランド車は約4年、高級 車は3年強といわれている:図表1)、2013年 は不振であった2009年に新車を購入した人の 買い替え時期に相当するため、自動車への関心 が全般的に低下しているのではなかろうか」と いう説、「ロシアの人口1,000人当たりの乗用車 保有台数の数字はまだ小さく、理論上はまだ伸 びる余地のある市場だといえるが、①購買力の 底上げが進んでいない、②大都市部では道路イ ンフラが限界に達しつつある、③国内を発生源 とする中古車市場が拡大してきている、といっ た要因を背景に、新車市場が飽和状態に近づき つつあるのではないか」といった説もある。 主要ブランド別販売状況 図表2によると、ランキング6位以内に入っ ているブランドに共通するのは、いずれもロシ ア国内で生産されている比較的安価なモデル を主力としている点である(価格はいずれも 2013年9月時点のもの)。 売上第1位のLADA(AvtoVAZのブランド) は、Granta、Kalina、Priora、4×4(SUV)と

2013年1~9月の

ロシアの乗用車市場

特 集

ロシア自動車産業とサプライチェーン

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図表1 ブランド別自動車買い替えサイクル (出所)Autostat。 いった価格30万~40万ルーブル程度の低価格 モデルを主力としているが、2012年から顕著に なっていた「新モデルのGrantaとLargusの販売 が伸びる一方、Kalina、Priora、サマラといっ た既存モデルの販売が大きく落ち込む」という 傾向が2013年に入ってさらに強まり、1~9月 期の同ブランドの販売台数は前年同期比14% 減の34万3,368台にとどまった。LADAの場合、 モデル間の市場での棲み分けがきちんとでき ておらず、今後も苦戦が続く可能性が高い。 第2位のルノーの主力は、アフトフラモス (モスクワの現地工場)で生産されている低価 格車のロガン(セダンタイプのBセグメントカ ー:34万9,000ルーブル~)、サンデロ(ハッ チバックタイプのBセグメントカー:36万4,000 ルーブル~)およびダスター(コンパクト SUV:47万9,000ルーブル~)で、ロシアで販 売されるルノー車の約8割が当該の廉価3モ デルにより占められている。ロガンとサンデロ はモデル末期にさしかかり売れ行きが落ちて いるが、2012年初頭より本格的な販売が開始さ れたダスターは爆発的な人気を現在も維持し、 2013年1~9月期には前年同期を122%も上回 る6万426台の販売を記録した。 第3位の起亜の主力は、サンクトペテルブル グの現地工場で生産されている低価格車「リオ」 (Cセグメントカー:48万9,900ルーブル~)で、 ロシアで販売される起亜車の5割近くが同モ デルにより占められている。その他、AvtoTOR で現地生産されているスポーテージ(SUV:88 万9,900ルーブル~)、シード(Cセグメントカ ー:60万9,900ルーブル)の人気も高く、2モ デル合計でロシアで販売される起亜車の3割 強を占めている。 現代も、上記の起亜同様に、サンクトペテルブ ルグで現地生産されている低価格車「ソラリス」 (Cセグメントカー:44万5,000ルーブル~)を 主力としているが、最近販売を開始したix-35 というSUV(輸入車:89万9,900ルーブル)の 販売も好調であった。その結果、同ブランドの 販売台数は前年同期比で3%伸び、ランキング も前年の5位から4位に上昇した。 シボレーは、NIVA(SUV:44万9,000ルーブ ル~)、アベオ(Bセグメントカー:50万7,000 ルーブル~)、クルーズ(Cセグメントカー: 59万9,000ルーブル~)といった低価格車を主 力としているが、いずれも販売が不振であった。 期待されていた新モデル「コバルト」(Cセグ メントカー:44万4,000ルーブル~)の販売も 伸び悩み、1~9月期の同ブランドの総販売台 数は前年同期比17%減の12万7,742台にとどま った。このため同社のランキングは前年の2位 ブランド名 買い替え サイクル(月) ブランド名 買い替え サイクル(月) UAZ 71 ボルボ 48 LADA 65 シボレー 48 三菱 53 ホンダ 48 スズキ 52 オペル 46 現代 51 シトロエン 45 フォード 50 ルノー 45 大宇 50 プジョー 45 マツダ 49 シュコダ 45 日産 49 起亜 44 トヨタ 48 ランドローバー 43

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図表2 主要ブランド別の販売台数(LCVを含む) (単位 台) (出所)AEB。 から5位に下降した。 第6位のVWの主力は現地生産の低価格車 「ポロ・セダン」(Bセグメントカー:44万9,000 ルーブル~)とティグアン(SUV:89万9,000 ルーブル~)で、2013年1~9月期のVWの総 販売台数の6割以上をこの2モデルが占めた。 第7~8位には日本のトヨタと日産が入っ ている、両社とも比較的高価なSUVが販売の中 心である。トヨタの場合は、カローラや現地生 産車のカムリといったセダンと並び、RAV4、 ランドクルーザー200、ランドクルーザープラ ドなどのSUVが主力を形成し、2013年1~9月 期のロシアでの販売台数の過半をSUVが占め た。日産の場合は、キャシュカイ(輸入車)、 エクストレイル(現地生産車)、ジューク(輸 入車)等のSUVが、2013年1~9月期の同社の 販売台数の約6割を占めた。 第9位のフォードの場合は、SUVのクーガの 売れ行きは好調であったものの、主力の現地生 産モデル「フォーカス」(Cセグメントカー: 57万500ルーブル~)と「モンデオ」(Dセグメ ントカー:79万9,000ルーブル~)が深刻な販 売不振に陥り、販売台数が前年同期比で19%も 減少した。 第10位のシュコダも、主力のオクタヴィアA 5(57万4,000ルーブル~)とファビア(40万 9,000ルーブル~)の販売が伸び悩んだことが 響き、前年同期比で10%も販売台数が減少した。 11位以下で好調さが目立ったのは、プレミア ムブランドのメルセデスベンツとBMWで、そ れぞれ20%と14%と販売台数を伸ばした。アウ ディ、ランドローバー、レクサス等のその他 2012年1~9月期 2013年1~9月期 増減率(%) 1 LADA 399,142 343,368 ▲14.0 2 ルノー 138,530 155,081 11.9 3 起亜 140,677 146,986 4.5 4 現代 132,089 135,609 2.7 5 シボレー 153,994 127,742 ▲17.0 6 VW 122,980 117,222 ▲4.7 7 トヨタ 117,787 115,146 ▲2.2 8 日産 118,930 101,965 ▲14.3 9 フォード 95,877 77,474 ▲19.2 10 シュコダ 71,808 64,498 ▲10.2 11 GAZ 64,279 60,873 ▲5.3 12 オペル 61,005 60,045 ▲1.6 13 三菱自動車 52,853 56,240 6.4 14 大宇 66,485 43,093 ▲35.2 15 UAZ 42,743 36,895 ▲13.7 16 メルセデスベンツ 26,625 32,043 20.3 17 マツダ 35,809 31,462 ▲12.1 18 BMW 26,097 29,692 13.8 19 アウディ 25,442 26,982 6.1 20 プジョー 34,160 25,921 ▲24.1 21 双竜 22,937 25,738 12.2 22 スズキ 25,533 21,783 ▲14.7 23 シトロエン 25,428 21,731 ▲14.5 24 Geely 11,899 19,561 64.4 25 Lifan 14,961 19,323 29.2 ブランド名

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図表3 主要モデル別の販売台数(LCVを含む) (単位 台) (出所)AEB。 のプレミアムブランドの販売も堅調で、前年同 期の数字を上回った。その結果、プレミアムブ ランドの市場シェアは増加し、2013年上半期時 点で前年同期を0.8ポイント上回る7.3%に達し た。プレミアムブランドは不況に強いという特 性を有しており、リーマンショック後の2009 年の不況時にも安定した販売を記録したが、 2013年にも同様の現象が生じたといえよう。 また、双竜、ホンダ、スバルも好調で、それ ぞれ2ケタの伸びを記録した。さらにDerways で現地生産を行っているブランドを中心に中 国車の販売台数も急激に伸びており、Geelyが 前年同期比64%の伸び、LifanとGreat Wallも2 ケタの伸びを記録した。 主要ブランド別販売状況 図表3からわかるとおり、販売ランキング上 位25モデルの大半は低価格車で占められてい る。ランキング上位になるほどその傾向が顕著 で、1位のGrantaは30万ルーブル未満での購入 が可能となっている。以下、15位までの大半が 50万ルーブル未満での購入が可能なモデルに より占められており、50万ルーブル以上を出さ ないと購入できないモデルは6位のフォーカ ス、9位のクルーズの2モデルのみである。 15位以内に入っているモデルのもうひとつ の共通点は、いずれもBセグメント以上のサイ ズを有しているということである。ロシアでは、 いくら価格が安くともAセグメントカーは大 ヒットモデルにはなり難い。ロシアで最も人気 2012年1~9月期 2013年1~9月期 増減率(%) 1 LADA Granta 80,965 128,477 58.7 2 現代ソラリス 84,430 85,757 1.6 3 起亜リオ 64,353 67,678 5.2 4 ルノー・ダスター 27,250 60,426 121.7 5 5.VWポロ 52,158 53368 2.3 6 フォード・フォーカス 68,332 50,406 ▲26.2 7 LADA Kalina 96,513 49,072 ▲49.2 8 LADA Priora 94,519 44,606 ▲52.8 9 シボレー・クルーズ 46,448 42,660 ▲8.2 10 LADA Largus 7,017 40,402 475.8 11 シボレーNIVA 44,031 38,574 ▲12.4 12 ルノー・ロガン 47,820 38,341 ▲19.8 13 LADA 4×4 40,496 38,100 ▲5.9 14 ルノー・サンデロ 36,647 32,490 ▲11.3 15 LADA サマラ 51,009 31,482 ▲38.3 16 シュコダ・オクタヴィアA5 37,659 30,910 ▲17.9 17 オペル・アストラ 41,094 30,157 ▲26.6 18 トヨタRAV4 20,632 29,981 45.3 19 日産キャシュカイ 29,093 26,744 ▲8.1 20 トヨタ・カムリ 25,752 26,091 1.3 21 起亜シード 5,212 24,485 369.8 22 起亜スポーテージ 23,834 24,464 2.6 23 現代ix35 20,050 24,254 21.0 24 大宇ネクシア 40,724 23,010 ▲43.5 25 VWティグアン 23,492 21,303 ▲9.3 ブランド名

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の高いAセグメントカーは大宇のマチス(24万 7,000ルーブル~)であるが、2013年1~9月 期の販売台数は1万8,357台(第28位)にすぎ なかった。 上位15位以内に入っているモデルをセグメ ント別に分類すると、Bセグメントカーが5モ デル、Cセグメントカー(B+含む)が7モデル、 SUVが3モデルとなるが、Bセグメントカーに 限定するとその大半が価格35万ルーブル未満 のモデルによって占められている。車格のよさ が評価されるロシア市場では、Bセグメントカ ーは入門車もしくはセカンドカーという位置 づけになっており、価格の安さが大ヒットの必 須条件になっていると考えられる。その関係で、 価格の高い日本のBセグメントカーはロシア 市場ではほとんど認知されておらず、販売ラン キング上位100位以内に入っているのは日産の ノート(52万9,000ルーブル~)だけである。 上位15位以内に入っているCセグメントカ ーの価格を見ると、最も高価なクルーズでも約 60万ルーブルからの購入が可能となっており、 価格が60万ルーブル未満というのがヒットモ デルの条件だといえよう。ただ、後述の通り、 現在、ロシアではCセグメントの大衆化プロセ スが急速に進行しており、今後、この上限値が 急激に下がる可能性も考えられる。 上位15位以内に入っているSUVは、いずれも 50万ルーブルを割り込む価格設定となってい る。SUV部門では消費者の嗜好が分散し多品種 少量販売の傾向が強く大ヒットモデルが出難 くなっているのだが、価格を50万ルーブル未満 に設定すれば、SUVであっても年間販売台数5 万台をコンスタントに維持する大ヒットモデ ルを生み出すことが可能といえる。もっとも、 価格の安さが大ヒットに直結するわけではな い。たとえば、UAZのSUVは旧式で性能が悪 いため、価格が40万~50万ルーブルと安いにも かかわらず売れ行きは低迷している。 次に主要モデルの販売台数の増減率に目を 転じると、ある異変に気づく。価格は非常に安 いものの、陳腐化した(市場に登場してから長 い間フルモデルチェンジをしていない)モデル が軒並み販売不振に陥っている事実である。た とえば、LADAのKalinaとPrioraは前年同期比で 順に49%と53%販売が減少し、それよりさらに 古いモデルであるサマラの販売も38%落ち込 んだ。これはLADA固有の現象ではなく、ルノ ーの現地生産モデルのなかで市場に登場した 時期が最も早いロガンの販売台数は20%減少 し、約3年前に市場に登場したサンデロの販売 台数も11%落ち込んだ。また、10年以上前に市 場に登場した大宇(GMウズベキスタン)のネ クシアの販売も43%も落ち込んだ。一方、 Granta、ダスター、Largusといった比較的最近 市場に登場した廉価モデルは軒並み好調な販 売を記録した。 以前は、40万~45万ルーブル未満の価格帯に おいては、長い間モデルチェンジをしていない 車であってもコンスタントに売れる傾向が顕 著であった。つまり、つい最近までは、廉価モ デルに関しては商品寿命が長いという傾向が 見受けられたのだが、2013年に入ってからの動 きを見ていると、廉価モデルを購入する人々の 間でも、モデルの新鮮味を重視する傾向が顕著 となってきたとの印象を受ける。この傾向が定 着することがあれば、LADA、大宇、ルノーと いった廉価モデルを主力とするメーカーは、ロ シア市場での戦略を抜本的に見直す必要に迫 られるだろう。 地域別販売動向(外国ブランド車) ロシアの調査会社「Autostat」によれば、2013 年1~9月期のロシア市場での外国ブランド の新車の販売台数は前年同期比4.2%減の160 万3,160台とされている。連邦構成主体別に見 て最もシェアが大きいのはモスクワ市で、第2 位はサンクトペテルブルグ市となっている。た だ、モスクワ市の場合は、前年同期比で6.3% 減と全国の平均値を上回る販売の落ち込みを 記録し、そのシェアは前年同期の31.71%から

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31.02%にまで減少した。 一方、サンクトペテルブルグ市の市場の縮小 規模は2.6%と小幅にとどまり、同市のシェア は前年同期の8.51%から8.65%に上昇した。売 上ランキング25位内に入っているその他の連 邦構成主体の動向を見ると、スヴェルフドロフ スク州(3位)、ニジェゴロド州(9位)、チェ リャビンスク州(11位)、クラスノヤルスク地 方(15位)、ケメロヴォ州(17位)、ノヴォシビ ルスク州(20位)、イルクーツク州(25位)に おいて前年同期比で5%以上販売が落ち込ん でいるが、最も減少幅が大きかったのはケメロ ヴォ州で、21%も減少した。また、クラスノヤ ルスク地方でも14%販売が落ち込んだ。 売上ランキング25位以内に入っている連邦 構成主体のうち、前年同期よりも販売台数が伸 びたのは、クラスノダル地方(4位)、タタル スタン共和国(6位)、バシコルトスタン共和 国(7位)、モスクワ州(18位)、オレンブルグ 州(21位)の5つだけだが、とくにモスクワ州 の伸びは著しく、前年同期を26.1%も上回る2 万220台の販売を記録した。 連邦管区別の販売動向を見ると、ロシア最大 の市場であるモスクワ市を中心とする中央連 邦管区と、第3位の市場である北西連邦管区の 販売の減少幅は、全国平均値とほぼ同じ4.7% と4.2%であった。このため両連邦管区の市場 シェアは前年同期と変わらず順に約42%と約 12%となっている。 最も販売が好調だったのはタタルスタン共 和国やバシコルトスタン共和国を中心とする 沿ヴォルガ連邦管区で、前年同期比0.5%の伸 びを記録し、市場シェアを前年同期の18.49% から19.4%に上昇させた。また、ソチ・オリン ピック景気に沸く南連邦管区の販売も堅調で、 前年同期と同じ販売水準(13万1,120台)を維 持することに成功した。その結果、同連邦管区 の市場シェアは前年同期よりも約0.4ポイント 上昇し8.18%に達した。 一方、シベリア連邦管区、ウラル連邦管区、 極東連邦管区での販売は不振で、前年同期比の 減少幅は順に12.9%、5.4%、20.1%であった。 セグメント別販売状況 セグメント別の販売状況を見ると、不振ぶり が際立っているのはCセグメントで、2013年1 ~9月期の市場シェアは前年同期から7ポイ ントも減少し23.4%にとどまった。なかでもと くに苦戦したのが、フォード・フォーカス、シ ュコダ・オクタヴィア、オペル・アストラとい った比較的高価な(約60万ルーブル~)のCセ グメントカーで、いずれも2ケタの販売の落ち 込みを記録した。一方、同じCセグメントカー でも、列挙したモデルよりも安価で40万ルーブ ル台での購入が可能な起亜リオや現代ソラリ スといった外国ブランドのモデルの売れ行き は比較的堅調で、わずかではあるが前年同期よ りも販売台数を伸ばした。これは、Cセグメン トの大衆化が急激に進んでいることを示す事 象と判断される。 かつて、Cセグメンカーを保有することはロ シアの人々にとって一種のステイタスであっ たが、大衆化の進行に伴い、Bセグメントカー とほぼ同列の入門車的な位置づけになりつつ あると推測される。このため、価格の高い本格 的なCセグメントカーは売れなくなり、サイズ は小さめではあるが破格に安く、かつ市場での 鮮度をまだ維持しているCセグメントカーし か売れなくなっているのではないか。 ちなみに、フォーカスなどよりもさらに価格 の高い日本ブランドのCセグメントカーはす でに4~5年前から売れなくなっており、現時 点(2013年1~9月期)でモデル別売上ランキ ング50位以内に入っているのは、26位のトヨ タ・カローラだけとなっている2)。さらに、C セグメントの大衆化プロセスの進行に伴い同 セグメントにおける価格競争も激化しており、 たとえば、起亜のロシア担当責任者は「リオが 属するセグメントでは2013年に入り価格競争 が激化しており、ダンピング合戦の様相を呈し

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ている。このため、リオの場合は、販売による 利益をディーラーが確保することが難しくな っている。そのような場合、われわれはディー ラーの損失の大半を補填する」と告白している (『RBCデイリー』紙、2013.4.4)。また、Cセ グメントカーを主力とするプジョーのロシア 担当責任者も、ダンピング合戦に巻き込まれ同 社のディーラーの多くが利益を確保できなく なっていることを事実上認めている(auto.ru、 2013.10.18)。こうした状況を勘案すると、日本 の比較的価格の高いCセグメントカーがロシ ア市場においてかつての勢いを取り戻すこと は難しいと判断される3) Cセグメントカーが人気を落とすなか、逆に プレゼンスを強化しているのはSUVである。ロ シアでは以前からSUVの人気が高かったが、各 社がSUVのラインナップを強化し比較的手頃 な価格のモデルが市場に多数供給されるよう になった結果、Cセグメントからシェアを奪う 形で、その存在感を強めつつある。ロシアの調 査機関「Autostat」のデータによれば、2013年 1~9月期のSUVの市場シェアは前年同期を 5ポイントも上回る35.3%だったとされてい る。ロシアの消費者には車格のよさを評価する 傾向が強く見受けられるが、おそらく、SUV の方がCセグメントカーより車格がよくステ イタスも高いとみなす消費者が多く、そのこと がSUVの売れ行きのよさの一因になっている と推測される。 なお、先に日本メーカーのCセグメントカー の人気が低迷していると述べたが、一方で日本 ブランドのSUVの人気は非常に高く、モデル別 売上ランキング50位以内(2013年1~9月期の 実績)に入っている13の日本ブランドのモデル のうち11がSUVとなっている。その結果、ほと んどの日本メーカーにおいて、ロシア市場での 新車販売台数の過半をSUVが占めるという傾 向がみられる(なかにはSUVの比率が約90%に 達するメーカーも存在する)。 金利負担軽減措置 自動車ローンの金利のうち、ロシア中銀の政 策金利の3分の2に相当する分を国が補助す るという措置。経済危機直後の2009年から2011 年末まで導入され効果を生んだ自動車販売促 進策だが、2013年に入ってからの市場の停滞傾 向を受け、2013年7月より再導入されることと なった。実施期限は2014年末までになっている が、それまでに予算を使い切り、2014年6月ご ろに打ち切りとなるのではないかとの見方も ある。いずれにせよ、この措置は今後、販売の 減少幅の縮小にある程度の貢献をするとみら れている。 今回も補助の規模は政策金利(2013年夏時点 で8.25%であった)の3分の2に設定されてい るが、WTOへの配慮から、前回は国産の低価 格乗用車(総重量3.5t未満の小型商用車を含 む)だけが対象だったものが、今回は輸入車も 対象となり、価格の上限も前回より高い75万ル ーブルに設定された。条件が緩和されたことも あり、同措置は好評を博しており、導入後から 9月末までの間に約10万台の車が当該の措置 を利用して販売された。このペースでいけば、 その総数は年末までに25万台程度に達すると 見込まれている。 前回の自動車ローン金利負担軽減措置の場 合は、価格が60万ルーブル(当初は35万ルーブ ル)未満の国産車に対象が限定されていたので、 措置の枠内で販売される車の大半がLADA車 であった。しかし、今回は価格の上限が引き上 げられた上に輸入車も対象となったので、シボ レー、現代、起亜、オペル、フォードといった 外国ブランドの車も恩恵を被り、全体の約70% を占めるといわれている。 今後の見通し 自動車ローン金利負担軽減措置が導入され たものの、同措置が劇的な効果を生み販売の大 幅増加につながる可能性は低く、年末までは販 売の停滞傾向が続くというのが市場関係者の

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ほぼ一致した見解である。 ただし、中長期的な見通しに関しては楽観的 な意見が多く、多くの市場関係者が、①ロシア の人口1,000人当たりの乗用車保有台数は300 台未満と先進国と比較するとまだ少なく伸び る余地が大きい、②ロシアに登録されている乗 用車の平均車齢は10年以上と非常に高く、大き な買い替え需要が期待できる、といった点を主 要な根拠として、「中長期的にみた場合、ロシ ア市場のポテンシャルは非常に高く、比較的早 い時期に状況は好転し販売がプラスに転じる」 との見解を示している。 図表4 ロシアの石油生産量(ガスコンデンセートを含む)の推移 (単位 100万t) (出所)『石油ガス垂直統合』誌各号より。 図表5 ロシア原油(ウラルブレンド)の国際価格の推移(各年の平均値)* (単位 バレル/ドル) (注)*2013 年上半期の Urals の平均価格は 106 ドルで、通年でも前年の数字を若干下回る可能性が高いとみら れている。 (出所)『石油ガス垂直統合』誌各号より。 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 307 301 306 303 305 324 348 380 421 459 470 480 491 488 494 505 511 518 0 100 200 300 400 500 600 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 11.8 17.2 26.8 23 23.8 27.1 34.4 50.4 61.1 69.3 94.4 61.1 78.2 109.3 110.5 0 20 40 60 80 100 120

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より具体的に言えば、2014年から市場は回復 傾向に転じ、その後販売の漸増傾向が続くと見 る 関 係 者 が 多 い の だ が 、 な か に はBoston Consulting Group(以下、BCG)のように「今 後、ロシア市場は急激に回復し、2020年までに その規模は440万台/年に達する」との大胆な 予測を行う者もいる(『RBCデイリー』紙、 2013.7.19)。 ロシアの乗用車市場に拡大の可能性が残っ ている点は否定しないが、2020年時点で440万 台/年にまで販売台数を増加させることを可 能にする爆発力がロシア市場に残されている とは筆者にはとても思えない。その理由は以下 の通りである。 ロシアは連邦予算の歳入総額の4割以上を 石油分野からの収入が占める典型的な産油国 で、2000年代に入ってからの乗用車市場の爆発 的な拡大を牽引したのもやはりオイルマネー であった。すなわち、2000~2004年までは主と して急激な石油の増産(この4年間にロシアの 石油生産量は約1億3,000万tも増加した:図 表4)が、石油の生産量の伸びが鈍化した2005 年以降は主として油価の急激な上昇(図表5) が、それぞれロシアの乗用車市場の爆発的な伸 びを牽引した。ところが2009年になり、ロシア の乗用車市場はオイルマネーへの依存度の高 さがもたらす弱点を露呈する。石油生産の停滞 傾向が続くなか、油価が大幅に下落したため、 市場規模が急速に縮小したのである。その後、 ロシアの乗用車市場は順調に回復したが、それ を可能にしたのもまた、油価の高騰だと考えら れる。 ここで注目すべきは、ロシアの石油生産分野 にはもはや増産余力がほとんど残っておらず、 2015年以降は減産に転じる可能性が高いとい う事実である。一部には、「最悪の場合は、2030 年にはロシアの石油生産量は3億6,000万t/ 年にまで減少する」との見方もある。大陸棚鉱 床やタイトオイル層の開発が順調に進展すれ ば最悪の事態は回避できるだろうが、いずれに せよ、ロシアの石油生産量が今後急激に伸びる 可能性は低い。もはや、石油の増産がロシアの 乗用車市場を浮揚させる要因として機能する ことはないと考えるのが妥当であろう。となる と、油価がさらに大幅に高騰し、1バレル当た り150ドルあるいは200ドルの水準にでも達し ない限り、かつてのような爆発力をロシアの乗 用車市場に期待するのは難しいのではないだ ろうか。過度に悲観的になる必要はないが、産 油国ロシアの現状を勘案すると、BCGの予測 は楽観的すぎる気がしてならないのである。 (坂口 泉)

【注】

1)年初の2ヵ月に前年同月を上回る販売台数を達 成した主因は、多くのメーカーが2012年製モデ ル(一部2011年製モデルも含まれていたという) の在庫一掃セールを実施したことにあるとい われている。なかには不振の欧州市場で売れ残 った車をロシア市場に大量に投入したことで、 2013年秋時点でも在庫一掃セールの継続を余 儀なくされているメーカーもあるようだ。 2)51~100位にはマツダ3、日産ティーダ、日産 アルメーラ、三菱ランサーがランクされている。 うち日産アルメーラはAvtoVAZで現地生産さ れている低価格車(42万9,000ルーブル~)で、 今後、生産が本格化すれば販売台数も増加し、 上位に食い込む可能性がある。 3)日本ブランドのCセグメントカーの人気が最も 高かったのは2008年で、モデル別販売ランキン グ上位25位以内に、トヨタ・カローラ(5位)、 三菱ランサー(6位)、マツダ3(13位)、ホン ダ・シビック(16位)、日産アルメーラ・クラ シック(25位)の5モデルがランクインしてい た。

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