このページでは、名古屋大学医学部附属病院において治験を実施する場合の手順を紹介しています。 ご不明な点がありましたら、臨床治験管理センターまでお問い合わせ下さい。
治験責任医師の基本的な責務
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治験責任医師は、治験に関連する医療上のすべての判断に責任を負う。
(GCP 第 45 条 第 3・4 項)
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治験責任医師は、治験依頼者と合意した治験実施計画書を遵守する。
(GCP 第 46 条 第 1 項)
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治験責任医師は、分担医師や CRC 等の治験協力者に治験に関する十分な情報を与え、指導
及び監督を行う。 (GCP 第 43 条 第 2 項)
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治験責任医師は、被験者の治験参加中及びその後を通じ、治験に関連して生じたすべての有
害事象に対して十分な医療が被験者に提供されることを保証する。
(GCP 第 45 条 第 3 項)
医師のための治験実施手順
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治験依頼者から治験の実施に関して打診があったら・・・ ⇒ 確認して下さい。✎
治験の依頼を受けることが決まったら・・・ ⇒ 申請の準備をして下さい。✎
治験の申請準備ができたら・・・ ⇒ 申請して、IRB 審査を受けて下さい。✎
IRB で承認が得られたら・・・ ⇒ 契約を締結して、治験開始の準備をして下さい。✎
治験開始の準備が整ったら・・・ ⇒ 治験実施計画書を遵守して、治験を実施して下さい。✎
治験実施中に有害事象が発生したら・・・ ⇒ まず、被験者の安全を確保して下さい。 それから、報告して下さい。✎
治験実施計画書から逸脱してしまったら・・・ ⇒ 報告して下さい。✎
治験依頼者から治験薬の安全性にかかわる情報が入ったら・・・ ⇒ 対応して下さい。✎
治験実施計画書や概要書が改訂されたら・・・ ⇒ 変更申請をして下さい。✎
治験責任(分担)医師に異動の予定があったら・・・ ⇒ 変更申請をして下さい。✎
治験の実施期間が 1 年を超えるものだったら・・・ ⇒ IRB 審査を受けてください。✎
治験が終了したら・・・ ⇒ 報告して下さい。 治験実施手順について治験依頼者から治験の実施に関して打診があったら…
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確認して下さい
治験責任医師・分担医師の要件を満たしていますか?
治験責任医師 ⇒当院に勤務する助教以上の常勤医師(病院助手を含む)である。 教育・訓練及び経験によって、治験を適正に実施できる。 GCP 及び当院の実施手順書(SOP)、治験実施計画書を遵守し確実に実施できる。 治験を行うのに必要な時間的余裕を有する。 治験分担医師 ⇒原則として当院に勤務する医員以上の常勤医師である。 病院部長会で特に診療従事を認められた医師又は歯科医師(以下、医師とする。)も対象と なります。⇒ただし、分担医師の願書(様式 35)の提出が必要となります。当院で実施可能ですか?
治験責任医師は、治験実施計画書、概要書、症例報告書などの必要な資料及び情報を治験依頼者 から入手して以下の点について確認し、当院で実施可能かどうかを検討して下さい。 ✓ 計画内容は、倫理的・科学的に妥当か ✓ 実施する上で、適格なスタッフ及び適正な設備が確保できるか(緊急時を含む) ✓ 合意された期間内に実施できる症例数はどの程度か ✓ 被験者に対する費用の負担軽減は妥当か ⇒治験では、治験薬投与期間中のすべての検査・画像診断に係る費用および治験薬と同 じ効果を有する薬剤に係る費用を治験依頼者が負担します(保険外併用療養費制度)。 また、治験薬投与期間前後の観察期間(保険制度上は対象外)等において被験者に対 する費用の負担軽減が必要と考えられる場合には、治験依頼者及び当院医事課・治験 担当(内線:2853)と事前に協議して下さい。 なお、被験者には負担軽減費として、治験のための来院 1 回につき 7,350 円(治験 のための入院 1 回につき 7,350 円)が支払われます。 1. 申請前確認治験の依頼を受けることが決まったら…
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申請の準備をして下さい
治験実施計画書の合意
治験責任医師は、治験の実施に関して倫理的妥当性があり、合意した期間内に治験を適正に実施 し終了できると判断した場合には、合意と治験実施計画書の遵守の証として、合意文書に記名・ 捺印または署名し、日付を記入して下さい。申請書類の作成
治験責任医師は、以下の書類を作成し治験依頼者に提出して下さい。 ✓ 履歴書(様式 2) 2 部 ✓ 治験分担医師・治験協力者リスト(様式 5) ✓ CRC 協力依頼書(様式 30) ✓ 分担医師の願書(様式 35)・・・必要時のみ ✓ 被験者の募集手順に関する資料(様式 33)・・・院内にポスター・ビラの設置を希望する場合 ※ 以下は、治験依頼者が作成したものを確認した上で捺印して下さい。 ✓ 治験実施申込書(様式 1) ✓ 治験経費算定書(様式 4) 治験分担医師は、以下の書類を作成し、治験責任医師候補者または治験依頼者に提出して下さい。 ✓ 履歴書(様式 2) 2 部説明同意文書の作成
治験責任医師は、治験依頼者および CRC の協力のもと、説明同意文書を作成して下さい。 作成にあたっては、当院の「説明同意文書・補償文書の雛形」を参考にして下さい。 (GCP 第 51 条)費用にかかわる医事課への連絡票の作成
治験責任医師は、事前に治験依頼者と合意した被験者に対する費用の負担軽減内容に基づき、 以下の書類を作成して下さい。 *作成については CRC にご相談ください。 ✓ 治験開始連絡票・・・どの症例にも必須 ✓ 費用負担連絡票・・・保険外併用療養費制度以外の費用負担軽減がある場合 ✓ 治験患者入院連絡票・・・治験期間中に被験者が入院する場合 2. 申請準備 必須文書の保管:治験実施計画書に関する合意書 必須文書の保管:履歴書(写し) 必須文書の保管:履歴書(写し)治験の申請準備ができたら…
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申請して、IRB 審査を受けて下さい
申請の手続き
申請期間は、毎月 5~12 日です。治験依頼者は、この期間に治験の申請を行います。 詳細は、「申請について」を参照して下さい。 なお、IRB審査は、申請月の翌月になります(「IRB開催日程」はこちら)。審査ヒアリングへの出席
治験責任医師は、申請月の 20 日前後に開催する審査ヒアリングに治験依頼者とともに出席して ください。 治験依頼者に、治験実施計画書の概要について説明していただきます。 治験責任医師に、以下の点についてご意見を伺います。所要時間は、1 時間程度です。 ○当該治験に関する医学的見解 ○当該治験の実施可能性(被験者候補の予想数など) ○治験を実施する上で予測される問題(主に費用に関して) などIRB への出席
治験責任医師は、申請月の翌月に開催される臨床受託研究審査委員会(IRB)に出席し、当該治 験の必要性、治験実施計画書の概要、治験薬の有効性および安全性等について説明して下さい。 説明終了後、各委員との質疑応答があります。所要時間は、15~30 分程度です。 治験責任医師には、IRB 開催日の 1 週間前に会議にお越しいただく時間をお知らせします。 3. 申請~IRB 審査IRB で承認が得られたら…
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契約を締結して、治験開始の準備をして下さい
契約書への捺印
治験責任医師は、契約内容を確認し、確認した証として、契約書に記名捺印または署名しなけれ ばなりません。 (GCP 第 13 条) 治験責任医師は、治験事務室から送付される「契約書」の内容を確認し、捺印後、すみやかに治 験事務室に返送して下さい。 契約書の写し 治験経費算定書(様式 4)の写し 治験審査結果報告書(様式 8)の写し 必須文書の保管:治験分担医師・治験協力者リスト(様式 5) 治験に関する指示・決定通知書(様式 7) *これらの文書は治験事務室より送付されます。スタートアップミーティング
治験を開始する前に、治験依頼者及び治験責任(分担)医師、CRC 等の治験協力者の三者によ るミーティングを実施します。ミーティングでは、治験実施計画内容の確認を行い、当院での実 施の流れに沿った各々の役割分担および連絡方法等の確認、症例報告書の作成時に使用する署名 および印影の登録等を行います。治験薬の納品
治験薬は、契約を締結した後、治験依頼者より臨床治験管理センターに納品されます。 4. 契約締結~治験開始準備治験開始の準備が整ったら…
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治験実施計画書を遵守して、治験を実施して下さい
治験実施時の基本事項
✓ 候補被験者への治験の説明は、契約締結後でなければ実施できません。 ✓ 治験の実施にあたっては、治験実施計画書を遵守して下さい。 ✓ 実施した行為(観察・評価を含む)は、すべてカルテ等に記録して下さい。被験者の選定
人権保護の観点から、及び治験実施計画書に定められた選択・除外基準に基づき、被験者の健康 状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等 を考慮の上、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討して下さい。 同意能力を欠く者については、治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原 則として被験者にすることはできません。 また、社会的に弱い立場にある者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払わなければなり ません。 (GCP 第 44 条) *社会的に弱い立場にある者* 参加に伴う利益あるいは参加拒否による上位者の報復を予想することにより、治験への自発的参 加の意思が不当に影響を受ける可能性のある個人。 例えば、階層構造を有するグループの構成員としての医・歯学生、薬学生、看護学生、病院及び 検査機関の下位の職員、製薬企業従業員並びに被拘禁者等がある。その他の例として、不治の病 に罹患している患者、養護施設収容者、失業者又は貧困者、緊急状態にある患者、少数民族集団、 ホームレス、放浪者、難民、未成年及び治験参加の同意を表明する能力のない者があげられる。 5. 治験実施中インフォームド・コンセント(IC)
治験責任(分担)医師は、被験者が治験に参 加する前に、被験者に対して IRB 承認を得た最 新の説明文書を用いて十分に説明し、治験への 参加について自由意思による同意を文書によ り得なければならなりません。 被験者が十分な同意能力のない場合は「代諾 者」を、被験者又は代諾者が眼の疾患を患って いる等により、同意能力はあるが説明文書を読 むことができない場合には「公正な立会人」を、また、機能障害等により同意書に記名捺印又は署 名、及び日付の記入ができない場合は「代筆者」を置かなければなりません。また、代諾者による 同意、又は公正な立会人や代筆者を設置した経緯(理由)、及び被験者とこれらの方々との関係を診 療録等に記録し、代諾者及び公正な立会人、代筆者には、同意文書に記名捺印又は署名及び日付の 記入を行っていただく必要があります。 (GCP 第 50・52・53 条) インフォームド・コンセントの流れ 説明文書を用いて説明 説明文書の交付 回答 考えを伝える 意思の確認 同意書の受理 同意書(写)の交付 同意書(原本)の保存 質問 希望を伝える 内容の理解 意思の決定 同意書の記載 同意書(写)の保管 説明文書の保管 十分 な時間 *代諾者* 被験者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これらに準じる者。 (GCP 第 2 条 第 19 項) *公正な立会人* 治験責任(分担)医師、CRC、その他の治験協力者は、説明をする側に位置するものであり、公 正な立会人としては適当ではない。 (GCP 第 52 条第 4 項) スクリーニング・登録名簿 被験者識別コードリスト 同意書(写し)…治験薬管理室に提出 必須文書の保管:同意書(原本)・・・カルテに保管他の主治医への連絡
被験者が他の診療科あるいは他院で治療を受けている場合、医薬品等との相互作用等による被験者 の健康被害を防ぐために、被験者の同意のもとに、その医師に被験者の治験参加について知らせて 下さい。また、被験者が既に受けている治療、投与されている薬剤等についてその医師から情報を 得て下さい。(第 45 条 第 2 項) 5. 治験実施中治験薬の処方
治験薬は、治験実施計画書に記載されている方法でのみ使用することができます。 治験責任(分担)医師は、治験薬の正しい使用法を各被験者に説明・指示するとともに、指示を守 っているかを定期的に確認しなければなりません。 (GCP 第 45 条 第 1 項) また、被験者には未使用の治験薬を医師に返却するよう指導して下さい。未使用の治験薬や使用済 みの空瓶等は、治験依頼者により回収されますので、臨床治験管理センターに返却してください。 ⇒「治験薬処方箋の記載について」を参照治験参加カードの発行
被験者が治験中に他の医療機関を受診したり薬局で薬を購入したりする際に、治験参加中であり併 用禁止薬があることなどを知らせるための「治験参加カード」を被験者に発行して下さい。 また、被験者にこのカードの使用方法を指導して下さい。 ⇒「治験参加カードの見本」を参照研究経費請求の手続き
平成 19 年 1 月以降に契約した治験及び製造販売後臨床試験では、臨床試験研究経費の納付が出来 高払いになっています。(平成 18 年以前に契約した治験は、契約時に一括前払いでした。)したが って、症例を組み入れないと臨床試験研究経費は発生しません。また、組み入れたことを臨床治験 管理センター・治験事務室に連絡しないと依頼者に臨床試験研究経費の請求がなされません。症例 を登録したら、「症例発生報告書」を治験事務室に提出してください。予算コードは、最初(1 症例 目)の症例発生報告書を提出いただくと、経営企画課・経営企画掛より通知されます。通知された 予算コードにより予算を執行して下さい。2 症例目以降は、症例発生報告書を提出すると予算執行 が可能になります。 5. 治験実施中被験者の費用の負担軽減に関する連絡
治験連絡票の発行(医療費の負担軽減) 保険外併用療養費制度及び治験の契約内容に基づき、被験者の窓口での支払い額が軽減されるため、 治験責任(分担)医師は、治験開始(終了)時及び入院(退院)時には、所定の連絡票(治験開始 連絡票、費用負担連絡票、治験患者入院連絡票)を医事課に提出して下さい。 ⇒「医事課連絡書類について」参照 治験来院カードの発行(負担軽減費の支給) 被験者に被験者負担軽減費を支払うため、治験のための来院日ごとに『治験来院カード』を臨床治 験管理センターに提出して下さい。被験者には、来院の翌月(または翌々月)に 1 か月分まとめ て、被験者ご本人の銀行口座に名古屋大学より振り込まれます。 ⇒「治験来院カード(被験者負担軽減費用)の記載について」参照 *注意* 費用の負担軽減に関しては、日付をさかのぼって処理することはできませんので、治験のための 来院日ごとに、忘れずに治験来院カードを発行して下さい。「制約情報」の入力
当該被験者が救急外来や副科を受診することがあります。被験者が参加している治験について他 の職員が情報を共有し、治験が円滑に実施できるようにするため、カルテの「制約情報」に以下 の内容を記載してください。 ✓ 治験薬名・一般名もしくは治験薬の概要 ✓ 対象疾患 ✓ 試験デザイン(プラセボ対照、二重盲検など) ✓ 治験実施診療科 ✓ 治験担当医師名及び緊急連絡先 ✓ 担当 CRC 名及び連絡先 ✓ 治験参加期間 ✓ 併用禁止薬(療法) 5. 治験実施中症例報告書の作成
症例報告書は、治験の来院(評価日)後、すみやかに作成して下さい。 作成にあたっては、カルテの記録や各種検査の結果報告書(原資料)に元となる記録(原データ) があることを確認して下さい。 症例報告書の内容と原資料の内容が矛盾する場合は、その理由を説明するための文書(矛盾記録) を作成する必要があります。 なお、医学的判断を伴わない内容については、担当 CRC がカルテから症例報告書にデータを転記す ることができます。 治験責任医師は、治験分担医師と CRC が作成した症例報告書を治験依頼者へ提出する前に、内容を 点検・確認し、署名または記名・捺印及び確認日を記載して下さい。 (GCP 第 47 条) 症例報告書の修正/変更の記録 原資料との矛盾記録 症例報告書(写し) 必須文書の保管:署名・印影一覧表(写し)モニタリング・監査等の対応
治験責任(分担)医師は、治験依頼者よりモニタリング及び監査の申し入れがあった場合、また IRB 及び規制当局から調査の申し入れがあった場合、その調査を受け入れ協力しなくてはなりません。 その際、求めに応じて、カルテ等のすべての治験に関連した記録を準備し、閲覧に供しなければな りません。 (GCP 第 42 条) これらの対応は、カルテ等の閲覧を伴いますので、臨床治験管理センターで行っていただきます。 5. 治験実施中治験実施中に有害事象が発生したら…
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まず、被験者の安全を確保して下さい
それから、報告して下さい
有害事象発生時の対応
有害事象の定義 治験薬(対照薬を含む)を投与された被験者に 生じたすべての好ましくない又は意図しない 疾病又はその徴候(臨床検査値の異常を含む) をいい、当該治験薬との因果関係の有無は問わ ない。 有害事象が発生した場合、有害事象に対する医療が必要になった場合は、最善の処置と十分な医 療を提供するとともに、被験者にその旨を説明しなければなりません。 (GCP 第 45 条 第 3・4 項) また、当該有害事象が重篤か否かを判断して下さい。重篤と判断した場合は、「重篤な有害事象 発生時の対応」が必要です。 (GCP 第 48 条 第 2 項) 4. 障害 5. 障害につながるおそれのある 6. 上記 1.~5.に準じて重大なもの 7. 後世代における先天性の疾病又は異常等 重篤な有害事象の定義 1. 死亡 2. 死亡につながるおそれのある 3. 治療のために入院又は入院期間の延長が 必要となる *** 注 意 *** 治験薬との因果関係の有無に関わらず、また重篤・非重篤に関わらず、治験期間中に生 じたすべての有害事象については、有害事象名、発現日及び消失日、重症度(grade)、 治療内容、転帰など、治験薬との因果関係を判断する上で必要な情報をすべてカルテに 記録しておかなければなりません。 また、有害事象は、原則として回復するまで追跡調査を行う必要があります。 5. 治験実施中未知の事象 有害事象の発生! 既知の事象 重篤な有害事象発生時の報告 非重篤 副作用 副作用でない 因果関係の判断 治験依頼者より当局へ報告 (7日/15日以内) 死亡、死亡の恐れがある事象は、 治験依頼者より当局へ報告 (7日/15日以内) 予測可能性の判断 重篤の定義に従い重篤性の判断 直ちに! 病院長と治験依頼者 へ報告 重篤