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はじめに  本稿では「英語習熟度別クラス編成開始に向けての学内英語レベルの調査 (1)」に引き続き平成 26 年度 4 月からの新カリキュラムにおいて導入される 習熟度別クラス編成の予備調査として、平成 24 年度駒澤大学特別研究助成 (共同研究)を受け行った、本学学生の英語能力調査の研究のうちの、実際行 った調査とその結果について報告する。 1 各大学における習熟度別クラス編成の現状  現在、様々な大学において、クラスの英語学力格差のために、習熟度別クラ スを余儀なくされている大学が増加してきている。たとえば、杉森(2003) による大学の実態を調査したアンケート聞き取り調査によれば、習熟度クラス 編成の実施をしている大学はアンケート調査に協力してくれた大学の 194 校の うち、63%の大学が実施していると回答したと報告している。  また、英語クラスの習熟度別クラス編成を行うに際して、プレースメントテ ストを行う大学も増えてきている。清水(2001)のアンケート調査によれ ば、4 年制大学の学部単位 200 件のうち、48%(96 件)が英語統一テストを 採用しており、さらにその中の 63.54%(61 件)がプレースメントテストとし て利用していることが報告されている。また、杉森(2003)の調査によれ

英語習熟度別クラス編成開始に向けての

学内英語レベルの調査(2)

上 田 倫 史

勅使河原三保子

林   明 人

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ば、アンケートの回答 194 件のうち、63%(131 件)が統一テストを採用して おり、その中の 55.7%が統一テストをプレースメントテストとして利用してい ることが報告されている。

 英語クラス習熟度別クラス編成を行っている多くの大学では、習熟度別クラ ス編成を行うに当たり、なにがしかの英語言語能力テストを使用している。使 用されているテストの種類として、TOEFL、 TOEIC®、 G-TELP、実用英語技

能検定試験、自主開発の独自テストなどが挙げられている。(杉森、2003)ま た、そのほかに ACE テスト、CASEC、VELC テストなどのテストも多くの 大学で使用されている。 2 各種テストの特徴  前節で挙げられているテストの多くは、テスト理論の項目反応理論(IRT) を基に問題項目を作成している。項目反応理論をテスト作成に使う利点とし て、大友(1994)は以下の 3 点を挙げている。 (1)どんなことなったテストを用いても共通の尺度上で能力測定が 可能。 (2)どんな受検者集団に実施しても、共通の項目特性に関する値を 求めることが可能。 (3)能力ごとにわかる測定の精度。 このように、テストにおける能力検定での問題点である、テストの結果が受験 者集団に影響を受けるという点と、テスト項目で測ることのできる能力値がテ スト項目ごとにばらつきがあるという問題点を IRT は解消している点で、テ ストの信頼性が上がっているのが特徴である。  一方で、実用英語技能検定試験(英検)は Can-Do リストをもとに、「でき る能力」を規定しており、どのような能力があるかを示す指標を提供してい る。これは昨今日本の英語教育において応用が研究されている、EU 諸国で使 用されている CEFR の Can-Do リストとの整合性がとれているとされる。他 方、ほかのテスト、たとえば TOEIC®や CASEC などでも、CEFR とのアラ

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インメントをとっているものが多い。 3 学内における英語能力調査  この節においては、平成 24 年に行った、本校における学生の英語能力サン プリング調査を報告する。はじめに、調査に用いた CASEC の概要について説 明する。次に、テストの実施方法、テスト参加者、テストの結果についてそれ ぞれ報告を行う。 3.1 CASEC  CASEC は教育測定研究所により開発された、コンピュータ・アダプティッ ド・テストである。コンピュータ・アダプッティドとは、テスト受験者のテス ト項目への反応にあわせて、出題する問題を項目バンクより瞬時に選び出し、 テスト問題を変化させていき、受験者能力を正確に測定することができるもの である。そのため、各受験者で、出題される問題が変わるためすべての問題が 全く同一であることはない。 表1:CASEC の構成 セクション テスト内容 問題形式 解答形式 問題数 配点 解答時間 Section 1 語彙の知識 空所補充 4 肢択一 16 問 250 点 60 秒 Section 2 表現の知識 空所補充 4 肢択一 16 問 250 点 90 秒 Section 3 リスニングでの大意把握力 リスニング 4 肢択一 17 問 250 点 60 秒 Section 4 具体情報の聞き取り能力 リスニング 4 肢択一 11 問 250 点 120 秒  CASEC は 4 つのセクションから構成されており、セクション 1 では「語彙 の知識」、セクション 2 では「表現の知識」、セクション 3 では「リスニングで の大意把握力」、セクション 4 では「具体情報の聞き取り能力」を調べる構成 になっている。(セクションの具体的な構成に関しては表1を参照)解答形式 は4肢択一となっている。それぞれの問題には解答時間が設定されており、そ の時間内に解答を終了させなければならない。それぞれのセクションは各 250 点である。結果は受験終了後、コンピュータの画面上に表示され、すぐに受験

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者には結果が分かるシステムとなっている。後日、受験者にはスコアレポート が返却され、点数に基づいた学習アドバイスが受験のフィードバックとして示 されることになっている。 3.2 実施方法  調査は 2012 年 9 月 18 日から 10 月 1 日までのおよそ 3 週間の期間で行われ た。本研究で使用した CASEC は PC 上で受験を行うテストのため、テスト会 場として PC 教場を使い、調査を実施した。テストの実施時間は CASEC がコ ンピュータ・アダプティッド・テストであるという性質上、個人差が出てくる が、おおむね 1 時間で終了した。テスト実施に当たっては、教育測定研究所の スタッフと本部門の教員の協力を得て調査を行った。 3.3 テスト参加者  本調査では、すべての学生からデータを取ることが理想的ではあるが、予算 上の問題で不可能なため、当部門が 1・2 年次英語科目を提供するグローバ ル・メディア・スタディーズ学部以外の 6 学部の 20 学科・専攻に法律学科フ レックス B(夜間主)を加えた 21 の学科・専攻を調査対象とした。そのうち 英語 IA の在籍者数が 100 名未満の学科・専攻では全クラスを、また、100 名 以上の在籍者がいる学科・専攻では、100 名を上回って十分な受験者数が確保 できるクラス数を調査の対象とした。このような基準で任意のクラスを各学科 から選び、データを取ることとし、基礎クラスの学生がどの程度の英語語学力 のレベルであるかは今後の指導案やクラス編成等にかかわる重大な問題である ので、基礎クラスの4つのクラスの学生全てに協力を依頼した。なお、グロー バル・メディア・スタディーズからデータを取らなかった理由は、当該学部が 26 年度よりのクラス分けテストの適用外であるためであり、クラス分けテス トのための予備調査という観点から、本件研究の調査対象から外した。しか し、グローバル・メディア・スタディーズ学部は英語に力を入れているため、 大学全体の英語能力の構造を調査するという意味においては、本学学内全体の レベルを分かりにくくしてしまう可能性は十分にある。

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当初の参加者は全体 1782 名であったが、ある学科で受験者が1人であったた め、以下の分析においてはその 1 名を抜いた 1781 名で分析を行った。表2に 各学科の受験者数とクラス数をまとめた。(なお、学科名はアルファベットに 置き換えてある。) 表2:各学科の参加クラス数と受験者数 学科・専攻 クラス数 受験者数 学科・専攻 クラス数 受験者数 A 学科 3 60 K 学科 3 82 B 学科 3 100 L 学科 3 123 C 学科 3 90 M 学科 4 110 D 学科 3 104 N 学科 4 99 E 学科 3 110 O 学科 3 106 F 学科 2 52 P 学科 3 84 G 学科 2 57 Q 学科 3 106 H 学科 2 62 R 学科 4 149 I 学科 2 57 S 学科 3 97 J 学科 3 74 T 学科 2 59 クラス合計 58 受験者合計 1781 3.4 テスト結果  3.4.1 CASEC の全体的なテスト結果  以下に CASEC の受験終了後送られてきた結果をもとに、全受験者の成績の 傾向を報告する。セクションごとの平均得点は、それぞれ 118 点(Section 1)、111 点(Section 2)、117 点(Section 3)、106 点(Section 4)であった。 (表3)また、合計得点の平均点は 453 点であった。合計点を見た場合、109 点から 760 点とかなり広い得点分布を示しており、歪度がしめすように、全体 的に分布が平均点よりも右側に偏っていることが分かった。また、500 点以下 に受験者の数が幅広く分布しており、受験生の能力差がかなり広いことを表し ている。(図1)

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3.4.2 各学科の結果  それぞれの学部についての結果を見ていきたい。まず、各セクションおよび 全体の平均を見てみると(表3、及び図 1―6)、全体的には Section 1 が最も 得点率がよく、逆に Section 4 が最も得点率が低いという結果となった。ま た、Section 1(語彙の知識)に関しては、各学科平均値の幅が最も大きかっ た。これは語彙知識にかなりのばらつきがあることを示している。一方、 Section 4 では最大値と最小値がほかよりも低く、さらに最大値と最小値の差 表3:CASEC の各セクションの得点の基礎統計量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 分散 歪度 尖度 統計量 統計量 統計量 統計量 統計量 統計量 統計量 標準 誤差 統計量 標準 誤差 section 1 1781 3 197 118.08 31.330 981.558 -.477 .058 .291 .116 section 2 1781 0 198 111.78 29.122 848.085 -.396 .058 .426 .116 section 3 1781 0 220 117.01 33.468 1120.077 -.454 .058 .356 .116 section 4 1781 0 204 106.88 30.191 911.467 -.861 .058 1.477 .116 total 1781 109 760 453.76 103.485 10709.184 -.601 .058 .386 .116 200 150 100 50 0 100 200 300 400 500 600 700 800 total 図1:受験者の総合得点の度数分布表

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の幅がほかの Section における得点と比べて開きが少なかった。(表4)これ は受験者が Section 4 のリスニング問題がほかのセクションと比べて、相対的 に苦手であることを示している。

表4:セクションごとの各学科平均の最大値、最小値とその差

  Section 1 Section 2 Section 3 Section 4 Total 最大値 140.5385 131.4135 136.125 127.8942 535.9712 最小値 100.85 93.65 98.63095 91.18333 389.7 差 39.68846 37.76346 37.49405 36.7109 146.2712  次に学科間で、総合得点に差があるのかを分析した。分析には分散分析を用 いた。分析の結果、学科間には有意な差がみられた(F = 10.805, p < .0001) ため、ボンフェローニの検定を用いて、事後検定を行った。その結果、A学科 とC、D、E、F、I、K、L、M、O、R、S、Tの各学科間で、B学科と C、D,E、F、I、K、L、R、Sの各学科間で、C学科とA、B、D、P の各学科間で、D学科とD、F、I以外の各学科間で、E学科とA、B、D、 Pの各学科間で、F学科とA、B学科間で平均点に統計的に有意な差がみられ ることが分かった。このことから、学科間の英語レベルが均一なものではない ことが分かった。 0 50 100 150 A 学 科 B 学 科 C 学 科 D 学 科 E 学 科 F 学 科 G 学 科 H 学 科 I 学 科 J 学 科 K 学 科 L 学 科 M 学 科 N 学 科 O 学 科 P 学 科 Q 学 科 R 学 科 S 学 科 T 学 科 図2:各学科の Section 1 の平均点の分布

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0 40 100 140 A 学 科 B 学 科 C 学 科 D 学 科 E 学 科 F 学 科 G 学 科 H 学 科 I 学 科 J 学 科 K 学 科 L 学 科 M 学 科 N 学 科 O 学 科 P 学 科 Q 学 科 R 学 科 S 学 科 T 学 科 120 80 60 20 図3:各学科の Section 2 の平均点の分布 0 40 100 160 A 学 科 B 学 科 C 学 科 D 学 科 E 学 科 F 学 科 G 学 科 H 学 科 I 学 科 J 学 科 K 学 科 L 学 科 M 学 科 N 学 科 O 学 科 P 学 科 Q 学 科 R 学 科 S 学 科 T 学 科 120 80 60 20 140 図 4:各学科の Section 3 の平均点の分布 0 40 100 140 A 学 科 B 学 科 C 学 科 D 学 科 E 学 科 F 学 科 G 学 科 H 学 科 I 学 科 J 学 科 K 学 科 L 学 科 M 学 科 N 学 科 O 学 科 P 学 科 Q 学 科 R 学 科 S 学 科 T 学 科 120 80 60 20 図 5:各学科の Section 4 の平均点の分布

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 次に、多重比較の結果、優位差のあったペアのうち数の少ない、F学科とA 学科、F学科とB学科の結果を比較して、実際にどのような違いがあるのかを 考察をする。なお、CASEC では得点に応じて、EからAAまでの評価を与える システムとなっている。(表5)以下の考察においては、結果をイメージしやす くするため、この評価基準に使用されている点数区分に基づいて考察を行う。 0 100 200 400 A 学 科 B 学 科 C 学 科 D 学 科 E 学 科 F 学 科 G 学 科 H 学 科 I 学 科 J 学 科 K 学 科 L 学 科 M 学 科 N 学 科 O 学 科 P 学 科 Q 学 科 R 学 科 S 学 科 T 学 科 300 500 600 図 6:各学科の合計得点の平均点の分布 表5:CASEC における評価ランク AA 880-1000 A 760-879 B 600-759 C 450-599 D 390-449 E 0-389 注:ここにおける点数区分は CASEC の総合得点に基づいた区分となっている。  まず、A学科とF学科間で総合得点の比較を行う。表6が示す通り、A学科 の場合、Bランクに 3%、Cランクに 30%、Dランクに 18%、Eランクに 48% が分布している。A学科では下のほうの得点に人数が一番多い分布であるが、

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一方で、C,Dのランクにも一様に受験者が分布している。 一方、F学科の 場合はBランクに 6%、Cランクに 65%、Dランクに 21%、Eランクに 8% が 属している。これは 500 点の周辺に多くの受験者が集中していることを示す。 このことより、A学科とF学科の違いはF学科に比べ、A学科は点数の分布が 広く、分布のピークがはっきりしない構造になっている。(図7の棒グラフ) 逆にF学科はA学科に比べ、点数の分布が狭く、多くはCランクに分布のピー クが集中する構造になっている。(図8)(図 7―9 の折れ線は CASEC 全体の 受験者の平均点を表わしている。) 人数 受検者全体の割合 Total スコア分布 Total スコア 16 14 12 10 8 6 4 2 0 100 175 250 325 400 475 550 625 700 775 850 1000 4 3 2 1 0 8 7 6 5 図7:A学科の総合得点の分布 人数 受検者全体の割合 Total スコア分布 Total スコア 14 12 10 8 6 4 2 0 100 175 250 325 400 475 550 625 700 775 850 1000 4 3 2 1 0 8 7 6 5 図8:F学科の総合得点の分布

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 次に、B学科の総合得点を見ると、Aランクに1%、Bランクに2%、Cラ ンクに 38%、Dランクに 14%、Eランクに 45% が分布している。この学科は 分布のピークが二つある構造となっていて、この点がF学科の分布と大きく異 なる点である。(図9の棒グラフ)  このように、A学科とF学科、B学科とF学科という限られた比較ではある が、学科間の比較分析において統計的優位差のあるペアが多いということは、 学科間の得点分布にかなりのばらつきがあるということを示している。また、 統計的優位差はない学科の間でも(たとえば、A学科とB学科)分布のばらつ き方が異なる傾向であることも見て取れる。(表6) 人数 受検者全体の割合 Total スコア分布 Total スコア 25 20 15 5 0 100 175 250 325 400 475 550 625 700 775 850 1000 4 3 2 1 0 8 7 6 5 10 図9:B学科の総合得点の分布 表6:各学科の受験者の各レベルにおける分布

Level Total Score A 学科 B学科 F 学科

AA 880-1000 0% 0% 0% A 760-879 0% 1% 0% B 600-759 3% 2% 6% C 450-599 30% 38% 65% D 390-449 18% 14% 21% E 0-389 48% 45% 8%

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 3.4.3 外部試験換算による分析  CASEC を作成・運営をしている教育測定研究所では、CASEC の点数をほ かの業者テスト(TOEIC®, TOEFLE, 実用英語技能検定試験)の点数(実用 英語技能検定試験の場合は級)に置き換えた換算表を提供するとともに、実際 の受験結果の得点を TOEIC®スコア―への換算得点、および実用英語技能検 定試験の相当級を受験結果とともに提供している。ここでは、CASEC の点数 を、クラス分けテストにも使われている TOEIC®と実用英語技能検定試験の 換算表を用いて本大学の学生の語学能力の分布をより馴染みのある形でみると ともに、実態を検証する。(表7の「CASEC における TOEIC®の得点への換 算表」は、CASEC のウェブサイトに掲載されているものを用いた。)  表7でわかるとおり、CASEC における点数は、TOEIC®と大体似たような 得点となっている。以下の図 10 は受験者全員の CASEC における得点をもと に、予想される TOEIC®の対応得点に変換したものである。  TOEIC®の換算による得点の分布では、見かけは正規分布に近い形に分布 をしている。分布を詳しく見ると、TOEIC®換算による分析では平均点がおよ そ 372 点(小数点は丸めてある。)、最小値が 65 点、最大値が 825 点であっ た。この図 10 からは、全体的な分布傾向として、幅がかなり広いということ 読み取れる。実際のどの程度の能力にばらつきがあるのかをみるために、 TOEIC®の示す、点数区分ごとの英語能力を見ていく。  TOEIC®ではAからCまでの 5 段階のレベルを設定している。860 点以上を 「non-native として十分なコミュニケーションができる」レベル(Aレベル) 730 ~ 860 点を「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備 えている」レベル(Bレベル)、470 ~ 730 点を「日常のニーズを充足し、限 定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる」レベル(Cレベ ル)、220~470 点を「通常会話で最低限のコミュニケーションができる」レベ ル(Dレベル)、200 点以下を「コミュニケーションができるまでに至ってい ない」レベル(Cレベル)と定義している。この定義から見ると、本学学生の 英語能力は「コミュニケーションができるまでに至っていない」学生から「ど んな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」学生まで

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表7:CASEC における TOEIC®得点への換算表 CASEC/TOEIC®目安対応表 CASEC スコア TOEIC®スコア 1000 990 950 985 900 965 850 930 800 880 750 810 700 725 650 635 600 545 550 465 500 405 450 355 400 315 350 275 300 240 250 205 200 160 150 105 100 55 50 20 0 10 (http://casec.evidus.com/materials/index.html) とかなりの能力のばらつきが見られるということになる。また、「通常会話で 最低限のコミュニケーションができる」レベルの学生が多くを占めるが、「日 常のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションがで きる」レベルの学生もかなりいることが分布から確認された。  次に、実用英語技能検定試験へ CASEC の結果を変換した場合を見ていきた い。実用英語技能検定試験への CASEC の換算は、CASEC の受験者の英検級 の自己申告をもとに、対応を分析し、受験合格率として示されている。(図 11)また、CASEC の受験結果をもとに、実用英語能力検定試験の級に変換さ れた分布を表8に示す。

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 表8からわかるように、3 級、あるいは準 2 級に相当する英語能力を持つ学 生が、同程度存在し、それよりも上、ないしは下の級に相当する英語能力を持 つ学生も存在していることが分かる。つまり、英検換算では 4 レベルが存在 し、3 級、準 2 級に相当する学生が二つの大きなグループを形成していること が分かった。また、本学学生のレベルは概ね、コミュニケーション能力が基礎 的な段階にとどまっている学生が多いということが結果より示される。   な お、CASEC に お け る 英 検 の 換 算 は 実 際 に 2 級 を 持 つ が 受 験 者 が、 CASEC で準二級相当と評価されたという報告が著者らに受験に協力した学生 から報告があった。このことからもわかるが、CASEC の英検換算において、 実際の能力よりも厳しめの査定結果が出るということが報告されていることを 250 .00 TOEIC 200 150 100 50 0 200.00 400.00 600.00 800.00 1000.00 図 10:受験者の CASEC での得点の TOEIC®のスコア―への換算得点の分布 表8:CASEC のスコア―に基づく受験者の英検相当級の分布 4-5 級 3 級 準 2 級 2 級 51 836 831 63

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ここで付け加えておきたい。(受験者の実際の英検の保持している級に関して は、4 節のアンケート調査の項目を参照)

4 事後アンケート調査とその結果

 受験者に対して CASEC 受験後に本学 E-learning システム YeStudy 上に用 意したアンケート調査に協力をしてもらった。アンケート調査の目的は、「受 験者の実際の英語力」、「CASEC に対する態度」、及び「英語に対する態度」 を調査することであった。強制ではなかったので CASEC 受験者全体の 8 割に 当たる 1428 名からしか回答を得られなかった。以下にアンケート結果を報告 する。  まず、今回の受験者の属性について、英語力の観点から述べると、アンケー 対象:2006/01/01∼2007/12/31の受験者:17112人 1000 □5級 ■4級 ■3級 ■準2級 ■2級 ■準1級 ■1級 人数 5140

CASEC Total Score

累積相対度数 0.0 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 38 285 1106 2973 4263 2137 865 279 26 2008/08/20 図 11:CASEC 総合得点のグループ別英検自己申告級の分布     (http://casec.evidus.com/materials/index.html#03)

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ト回答者 1428 名のうち、42.6% に当たる 609 名が英検 3 級以下を、19.4% に当 たる 277 名が英検準 2 級を、5.3% に当たる 75 名が英検 2 級を、そしてわずか ながら 1 名ずつ(各々 0.1%)が英検準 1 級または 1 級を保有していた。(保有 級のうち最も上の級を申告し、英検 3 級以下は区別して尋ねていない。)ま た、1 週間に授業以外で英語学習に割く時間は平均 1.4 時間であった。前回同 様の調査をした勅使河原(2013)の結果と比較すると、やや上位級の保有者 の割合が減り(ただし、前回の調査では準 1 級以上の保有者はいなかった)、 授業外での英語学習時間も減った(前回は 1.7 時間)と言える。  このような受験者に対し、CASEC の受験についての以下の二つの質問に対 して、「1. 全くそう思わない」、「2. そう思わない」、「3. どちらとも言えな い」、「4. そう思う」、「5. 強くそう思う」の 5 段階で回答させたところ表9の ような結果となった。 表9:CASEC 受験について 1. 2. 3. 4. 5. 1. このようなテストは正規の授業の一環 として行うべきである。 8.7 9.6 32.2 36.4 13.1 2. このようなテストは自己負担でも定期 的に受験したいと思う。 16.8 25.4 40.7 12.4 4.7 注:回答者 1428 名。表中 1. ~ 5. は「1. 全くそう思わない」、「2. そう思わない」、「3. どちら とも言えない」、「4. そう思う」、「5. 強くそう思う」に対応。 「1. このようなテストは正規の授業の一環として行うべきである」の指す内容 にあいまいさがあるものの、正規授業の一環として CASEC のようなテスト (学生の実力が判定できるテスト)を行うことを約半数に当たる 49.5% が肯定 的にとらえている。しかしながら、このようなテストを自己負担でも定期的に 受験したいと答える学生は 17.1% とあまり多くはなく、約 4 割の学生が「3. どちらとも言えない」と答えた。また、自己負担でも定期的に受験したいと答 えた 17.1% の学生に対し、いくらまでだったら自己負担で受験したいと思うか 金額を回答させたところ、平均金額は 2,645 円であった。このような英語学習 に積極的な学生に対し、本学はより積極的に支援すべきではないかと考えさせ

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られる。  次に英語学習についての項目の結果をまとめる。今回の受験者に対し、選択 肢を用意して英語学習の目的を尋ねたところ、表 10 のような結果となった。 同じ選択肢を用意して本学 1 年次生 346 名に英語学習の目的を尋ねた勅使河原 (2013)の結果と比較すると、全体的に各選択肢が選ばれた割合が下がり(勅 使河原[2013]では最も多くの学生に選ばれた選択肢「海外旅行で困らない ようにする」は 63.6% の学生に選ばれた)、上位群、下位群内での選択肢の順 位の変動は多少あったものの、全体としての傾向はあまり変わらなかった。今 回の調査では、本学での英語の必修・選択必修科目としての扱いを反映した消 極的な目的(「卒業に必要な単位取得のため」)が最も多くの学生に選択され (46.0%)、いささか残念であった。引き続いて非日常的な娯楽である「海外旅 行で困らないようにする」が多く(44.5%)、続いてグローバル時代における 社会的な需要を反映した「就職活動を有利にする」(41.6%)や、やはり就職 活 動 の 有 利 な 展 開 に 関 連 す る で あ ろ う「英 語 の 資 格 試 験 を 受 験 す る 」 (38.4%)や、同じように社会的な需要を反映した「世界の共通語だから常識 として」(33.0%)が上位に入ったのは前回の調査と同様の傾向だった。  次に、勅使河原(2013)と同様に、英語の 4 技能(読む・聞く・書く・話 す)および文法について、自分の英語力を高めるため、授業で練習・勉強する 必要性を感じている度合いを「1. 全くない」、「2. あまりない」、「3. 必要があ 表 10:英語を学習する目的 目的 % 目的 % 卒業に必要な単位取得のため 46.0 外国人と友達になる 28.5 海外旅行で困らないようにする 44.5 英語でニュースを理解する 14.4 就職活動を有利にする 41.6 将来英語を使った仕事に就く 14.1 洋画、テレビドラマや洋楽を楽しむ 39.1 英語で文学作品を読む 13.2 英語の資格試験を受験する 38.4 英語のインターネットサイトを読む 12.1 世界の共通語だから常識として 33.0 大学外(アルバイト等)で英語を使 う必要がある 5.7 注:回答者数 1428 名。複数回答可。

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る」、「4. 特に必要がある」の 4 段階で回答させたところ、全体的な特徴は勅 使河原(2013)と同様であった。すなわち、読み書きと文法は「3. 必要があ る」という回答が一番多かったが、聞く・話すは「特に必要がある」という回 答が最も多かった(表 11)。しかし、「1. 全くない」と答えた学生が全ての項 目において前回に比べて 3 ~ 4 ポイント上昇し、一方で「4. 特に必要がある」 と回答した学生も「書く」を除き前回に比べて 2 ~ 10 ポイント弱上昇したこ とは、学生自身が感じる練習・学習の必要性が必ずしも客観的に正しいとは限 らないが、学生間の英語力のばらつきが拡大傾向にあることを主観的に示して いると証拠ととらえてもよいのかもしれない。このアンケート調査の結果は、 実際のテスト結果と一致することは興味深い。 表 11:訓練する必要性を感じる技能(%) 1. 全くない 2. あまりない 3. 必要がある 4. 特に必要がある 読む 3.4 8.1 55.0 33.5 聞く 3.5 4.6 37.5 54.4 書く 4.3 11.2 51.6 32.8 話す 3.7 6.1 35.4 54.8 文法 5.5 16.7 46.7 31.0 注:回答者数 1428 名 4. まとめと考察  英語習熟度別クラス編成開始に向けての学内英語レベルの調査のために実施 した、CASEC を用いた英語能力テストの結果について、CASEC の得点、 CACEC の結果を TOEFL に換算した得点、CASEC の結果を英検の級に変換 した際の相当級についてそれぞれ分析を行った。その結果、以下 3 点のことが 分かった。(1)得点分布がきわめて広く、点数の低いほうに分布が広がって いる傾向がみられる、(2)学科間で得点の分布の仕方がかなり異なる、(3) コミュニケーション能力が基礎的な段階にとどまっている学生が多い。  また、受験者の得点をまとめた結果を見ると、一見すると正規分布に近い形

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の分布をしているように見えるが、実際は学科間での分布の傾向は一様ではな く、また、英検相当レベルでの分類を見る限りでは、能力別にクラス分けをし ようとした場合は、4 レベルに設定するのが妥当であるという結果を得た。 現在、習熟度別クラス編成に関して、3 レベルを設定し、かつ上級、初級に対 するクラス数が少ない状態にある。結果より初級に属す学生がかなり多いとい う予想ができ、また、初級レベルの学生の英語能力がかなりの幅がある可能性 も見えてきた。現在ではどの学科においても、正規分布を仮定しているため、 中級のクラスが多く設定されている。しかし、学科間の語学力の分布が異なっ ていることを考えれば、学科ごとに初級、中級、上級のクラス数の設定を柔軟 に変えるほうがよいという示唆を結果は示している。  本大学で英語習熟度クラス編成をするためのプレイスメントテストとして、 業者テストではなく、自作のテストを用いることが決定されている。ここで、 プレイスメントテストの作成において注意をしなければならない重要な点につ いて議論したい。  プレイスメントテストを作成する際には様々な制約があり、たとえば、 McNamara(2000) が指摘しているように、受験者集団全体が散らばるようにす るために、テスト項目は難しすぎてもやさしすぎてもいけないという条件があ る。このような条件を満たすようなテスト項目を作成することは、かなりの試 行錯誤を要し、条件を満たす項目の作成はなんどもデータを取りなおし、項目 精選の過程を経なければならない。また、プレイスメントテストのテスト項目 妥当性や信頼性も重要な要素である。テスト問題を自作し、妥当性、信頼性の あるテスト項目を作成するにはIRTに基づいたテスト項目を作成しなければ ならず、非常に手間と時間がかかる。また、他の信頼性の高いテスト(たとえ ば TOEIC® CASEC など)との相関を取るなどの措置をとり、信頼性を担保 しなければならない。吉田(2009)が指摘するように、プレイスメントテス トを習熟度テストとしても使用する場合は「難易度の等化されたテストの使用 を最優先するべきだ」という意見もある。このようにプレイスメントテストを 自作するにはテスト項目の妥当性の検証、信頼性の検証などさまざまなことに 細心の注意を払う必要がある。

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 さらに、プレイスメントテスト作成を本学における習熟度別クラス編成にお ける今後の課題としてみた場合、オーダソンら(2010)が提案しているテス トの構成概念妥当性のうちのクラス編成後の出来具合と自作したプレイスメン トテストとの相関を取り、妥当かどうかを検証することも必要となって来る。 プレイスメントテストの作成は決して単年度、一度限りで終わることがなく、 何年もかけて行う作業となるであろう。  以上みてきたように、習熟度別クラス編成におけるプレイスメントテストの あり方として理想的なものは信頼性、妥当性の担保されているテストを用いる ことであり、このようなテストを作成することはかなりの時間と労力がかか り、なおかつ継続的な改訂作業を行うことになることが予想される。  いずれにせよ、アンケート調査と CASEC のサンプル調査が示すように、英 語力ばらつき方が大きくなっている状態で、習熟度別クラス編成は必然であ り、それを支える精度の高いプレイスメントテストこそが必要とされていると いえよう。 謝辞  この調査のきっかけとなったのは、平成26年度に向けてのカリキュラム改 革案の作成であった。そこで幸いにも平成24年度駒澤大学特別研究助成を受 けられることになりこの調査が実現したのである。この調査は、調査対象学 生、英語1A 担当者のご協力がなければ実現しなかったのはもちろんである が、実務としては事務部署のご協力も不可欠であった。この調査にご協力頂い た全ての方々に感謝致します。また特別研究助成を与えて頂いた大学にもお礼 申し上げます。 参考文献 大友賢二(1996)『言語テスト・データの新しい分析法 項目応答理論入門』 大修館書店

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清水裕子(2001)『4 年制大学における英語プレイスメント・テスト実施の現 状』立命館大学経済学部 杉森幹彦(2001)「習熟度クラス編成・到達目標の設定および測定に関する実 態調査の報告」『政策科学』10-3, pp.3-26. チャールズ・オーダソン、キャロライン・クラッファム、ダイアン・ウォール (渡部良典編訳)(2010)『言語テストの作成と評価―新しい外国語教育の ために』春風社 勅使河原三保子(2013)「本学英語科目の標準化の手段に関する事例研究 (2)」『駒澤大学外国語論集』第 14 号 , pp.41 – 64. 吉田弘子 (2009)「英語プレイスメントテスト分析:言語テストの観点から」 『大阪経大論集』 第 60 巻第 2 号 P.93-103. CASEC 「英 検 と の 関 係 お よ び 目 安 に つ い て 」http://casec.evidus.com/ materials/index.html#03 CASEC 「テスト概要」http://casec.evidus.com/test-summary/index.html McNamara、T. (2000). Language Testing. Oxford University Press.

TOEIC® 「TOEIC®® スコア―とコミュニケーション能力レベルとの相関表」

http://www.TOEIC®.or.jp/library/TOEIC®_data/TOEIC®/pdf/data/ proficiency.pdf

参照

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