論 説
高頻度取引と相場操縦規制
芳賀 良
1.はじめに 2.高頻度取引の実態とその分析 3.高頻度取引による相場操縦の類型 4.若干の考察 5.むすびにかえて1.はじめに
現在の証券取引においてはコンピューターの利用が顕著である。高頻度取引 (HighFrequencyTrading)と称される取引手法もその 1 類型である。高頻度 取引とは、高速で短期間の売買を繰り返す取引手法の総称である1)。高頻度取 引における「取引頻度」は、1 秒間に 1000 回になることもある2)。2010 年に おいて、高頻度取引の占める割合は、アメリカでの持分証券取引の約 56%に 相当し、欧州でも持分証券取引の 38%を占める状況にある、とされる3)。 アメリカの証券取引委員会(SecuritiesandExchangeCommission:SEC)は、 高頻度取引の採用する投資戦略を、(a)受動的マーケット・メーキング(passive marketmaking)戦略、(b)裁定取引(arbitrage)戦略、(c)構造(structural) 戦略、(d)価格指向性(directional)戦略に分類する4)。まず、(a)受動的マーケット・メーキング戦略とは、マーケット・メーカーに類似して、指値注文を 発することにより市場に流動性を提供する類型である5)。市場に流動性を提供 することにより、市場運営者からリベートを得ることなどを収益とする6)。複 数の価格帯に多様な取引サイズの注文を発する場合には、注文は大量となり、 その 9 割が取り消される傾向にあり、発注から取消しまでの期間は極端に短く、 1 秒未満とされている7)。 次に、(b)裁定取引戦略は、関連する金融商品間や市場間における価格の 非効率性を捕捉するものである8)。例えば、ある ETF(Exchange-Traded Fund)と原資産となる株式との間に価格のかい離があることを発見し、当該 ETF を購入(あるいは売却)し、同時に原資産となる株式を売却(あるいは 購入)する9)。裁定取引戦略は、受動的マーケット・メーキング戦略と異なり、 流動性を消費する10)。そして、(c)構造戦略は、市場や一部の市場参加者の構 造的危弱性を利用するものである11)。例えば、コロケーション・システムを 利用して、他の投資者よりも早く取引をおこなうことにより利益を得ることが 理論上可能となる12)。 本稿の関心の対象となるのが、(d)価格指向性戦略である。価格指向性戦 略とは、1 日における価格変動に関心を向けた取引戦略である13)。この戦略 の中には、①ある株価が一時的にファンダメンタル・バリュー(fundamental value)から乖離していると判断し、当該価格がファンダメンタル・バリュー に回帰することを予測したポジションを立てるものがある14)。この戦略は、 価格発見機能に資することになる15)。他方、価格指向性戦略に分類される戦 略で問題となるのは、②注文予測戦略(orderanticipationstrategy)と③モメ ンタム・イグニッション戦略(momentumignitionstrategy)である。注文予 測戦略とは、市場において大口の購入者(又は売却者)の存在を事前に察知して、 当該購入(又は売却)より先に購入(又は売却)を行い、これによって発生し た価格変動から利益を得る投資戦略である16)。この戦略の成否は、他のトレー ダーが価格にどのような影響を与えるのかを正確に予測できるか否かに依存す
る17)。また、モメンタム・イグニッション戦略とは、取引者が、急速な価格 変動を引き起こすために、一連の注文や取引を開始するものである18)。モメン タム・イグニッション戦略の場合は、当該行為による価格変動が生じる前にポ ジションを立て、価格変動後にポジションを手仕舞うことにより、利益を得る ものである19)。この場合に、虚偽の風説の流布を伴うこともあるとされる20)。 上記のような投資戦略により、高頻度取引の特徴は、①超高速のコンピュー ター・プログラムを利用して注文を生成・回送・執行すること、②取引所の コロケーション(co-location)・サービスを利用していること、③ポジション の保有時間が著しく短いこと、④大量の注文を発する一方で、注文の取消も 多いこと、⑤ポジションを翌日まで持ち越すことがほとんどないことが挙げ られる21)。上記①に関連する取引形態が、アルゴリズム取引(algorithmic trading)である。 アルゴリズム取引とは、「あらかじめ設定された数理モデルによる取引デー タ処理手順(アルゴリズム)に基づいて、市場での売買のタイミング、数量を コンピュータにより処理する自動執行サービス」である22)。このようなアル ゴリズムは、市場から発せられるシグナルを解釈し、自動的に取引を執行する ために使用される23)。高頻度取引は高速の処理が必要であるため、高頻度取引 のほとんどはアルゴリズム取引によって機械的に執行されているとされる24)。 1 秒間に 1000 回を超える取引の処理を行う高頻度取引は、自然人の処理能力 を越えているので、アルゴリズム取引を利用するほかないのである。他方、ア ルゴリズム取引はコンピューター・プログラムによる取引であると定義するな らば、アルゴリズム取引を高速且つ高頻度の取引執行類型に限定する必要はな い。しかし、アルゴリズム取引により市場価格への影響を極力抑えながら大量 の取引を小口化して行うためには、小口の取引を高速且つ高頻度で処理する必 要がある。このようなアルゴリズム取引の実行形態は高頻度取引によらざる を得ない。その意味で、アルゴリズム取引と高頻度取引は相互依存の関係に ある25)。アルゴリズム取引の意義は、大口取引を小口取引に分割して、適切
なタイミングや数量で自動的に発注し、市場価格への影響を低減させることに 求められている26)。もっとも、アルゴリズム取引が自然人の技能や経験則に 基づく取引執行を体系化・機械化したものである以上、取引の執行形態はプロ グラムの内容に依存する。そのため、プログラムの内容いかんによっては、市 場価格へ影響を与えることもあり得る点に留意しなければならない。 本稿では、高頻度取引を巡る現象を概観した後、相場操縦規制の視点から、 高頻度取引のもたらす問題点を検討することとする27)。
2.高頻度取引の実態とその分析
高頻度取引の実態を示す事例として、アメリカにおける①フラッシュ・オー ダー(flashorder)と ② 2010 年 5 月 の フ ラッシュ・ク ラッシュ(theFlash CrashofMay2010)が挙げられる。順次、概観することとする。(1)フラッシュ・オーダー
1934 年証券取引所法規則 NMS(NationalMarketSystem)602 条 の 改正前 の 規定 は、1934 年証券取引所法規則(以下、「規則」と す る。)旧 11Ac1-1 条 である28)。規則旧 11Ac1-1 条は、すべての取引所と店頭市場のマーケット・ メーカー(thirdmarketmaker)に 対 し て、限定相場(firmquotation)を 公 表することを義務付けていた29)。限定相場とは、当該マーケット・メーカー が公表された取引量で必ず執行する義務を負う売り気配値又は買い気配値である30)。そして、規則旧 11Ac1-1 条(b)(i)(A)は、「直ちに執行されるか、ある
いは直ちに執行されない場合には取消される気配」を上記公表義務の例外とし
て位置付けていた31)。
規則旧 11Ac1-1 条を継受する規則 NMS602 条は、SEC の登録を受けた取引
所に気配情報の公表義務を課している32)。その例外として、「直ちに執行され
の公表義務の対象から除外している(規則 NMS602 条(a)(1)(i)(A))33)。そ の た め、1 秒未満 の 最良気配 は、全米最良気配(NationalBestBidandOffer: NBBO)に反映されないことになる34)。 上記の状況を前提に編み出された注文形式が、ここで問題となるフラッ シュ・オーダーで あ る。す な わ ち、フ ラッシュ・オーダーと は、全米最良 気配 に 対当 す る 注文 が 当該取引所 や 当該 ECN(ElectronicCommunications Network)の注文板(orderbook)に存在しない場合には、①全米最良気配に 該当する注文として 1 秒未満だけ当該取引所又は当該 ECN の取引参加者に対 してのみ表示され、②表示された当該注文が約定されないときは、当該注文に 対当する全米最良気配を表示する他の取引所や ECN に回送される注文形式で ある35)。 そもそも、最良気配を提示する注文が発せられることは、市場に流動性を提 供するため、当該市場にとっては望ましいことである。そのため、各市場では、 最良気配を提示する注文者に対して、手数料の優遇措置を適用することやリ ベートを支払うことにより、最良気配を自市場に誘導することとなる36)。こ のような背景から、フラッシュ・オーダーを発するインセンティブは高められ ていると指摘されている37)。上記のように、フラッシュ・オーダーは、市場 に流動性を提供する側面も有している。 しかしながら、上記①から明らかなように、フラッシュ・オーダーは、当該 取引所や当該 ECN の市場参加者に対してのみ表示されるため、すべての投資 者に対して公開されているわけでもない。このため、フラッシュ・オーダーに 対しては、市場参加者の公平性を害するという批判がなされることとなる38)。 また、取引所や ECN の取引参加者に当該フラッシュ・オーダーが表示される 期間は、1 秒未満である。この 1 秒未満の表示に対応することができるのは、 事実上、高頻度取引を実行するための機械化された設備を有する者に限定され ることになる。高度に機械化された設備を有する投資者間の競争により市場 に流動性が提供される側面はあるが、長期的な投資を行う投資者(long-term
trader)の利益を害する懸念が指摘されていた39)。フラッシュ・オーダーに関 する問題点を解決するため、SEC は、2009 年 9 月に高頻度取引自体を規制する のではなく、気配情報公表義務を免除する例外規定の削除などを提案した40)。
(2)フラッシュ・クラッシュ
2010 年 5 月のフラッシュ・クラッシュとは、アメリカにおいて、2010 年 5 月 6 日 14 時 40 分から 17 分間で、市場全体の株式の価値が約 9%下落し、当 日の取引終了時までにその下落のほとんどを回復した現象を指す41)。2010 年 5 月のフラッシュ・クラッシュについては、アメリカの商品先物取引委員会 (CommodityFuturesTradingCommission:CFTC)及び証券取引委員会の共 同諮問委員会による共同報告書(以下、「共同報告書」とする。)が取りまと められている42)。共同報告書によれば、2010 年 5 月 6 日 14 時 32 分の時点で、 市場が悲観的で、流動性が低下した状態になっていたが、あるミューテュア ル・ファンドが、75,000 単位分の E-Mini 先物契約(約 41 億ドル相当)を全て 売却するプログラムを実行した43)。E-Mini 先物契約とは、シカゴ・マーカン タイル取引所で導入された株式指数に係る金融商品(stockindexinstrument) であり、S&P500 インデックス(S&P500Index)を指標とするものである44)。 この売却プログラムは、価格や時間を考慮するのでなく、取引前に算出された 取引量の 9%を執行割合として、2010 年 6 月物の E-Mini 市場に注文を発する 自動執行アルゴリズム(sellalgorithm)であった45)。2010 年 5 月 6 日におい て、自動執行アルゴリズムは、わずか 20 分で売り注文を執行した46)。そのう ち、E-Mini 先物契約の価格が下落している 14 時 32 分から同 45 分の間に、上 記 E-Mini 先物契約 75,000 単位のうち、35,000 単位(約 19 億ドル相当)が売却 された47)。そして、14 時 45 分 28 秒から 5 秒間 CME は取引を中断し、14 時 45 分 33 秒において取引を再開した時点で価格が安定した48)。14 時 45 分から 14 時 51 分の間に、上記 E-Mini 先物契約 75,000 単位のうち、40,000 単位(約 22 億ドル相当)が執行された49)。なお、15 時 8 分に、E-Mini 先物契約の価格は、下落前の水準に近似する数値に回復している50)。このように、先物取引市場 における大量の売却行為が、E-Mini 先物契約価格の下落の直接のきっかけに なったようである。 他 方、E-Mini を 購 入 し た 市 場 間 裁 定 取 引 の 実 行 者( cross-market arbitrageur)は、同時に同量の(現物)有価証券を株式市場で売却した51)。また、 株式指数に関する ETF の一種である SPY の価格も約 3%下落した52)。高頻 度取引の実行者による有価証券の取引量は、14 時 46 分から 15 時までの間で、 急速に減少している53)。その原因は、高頻度取引の実行者が、取引量の減少 させたことや、取引を休止したことに求められている54)。特筆されるべきは、 高頻度取引を行う 17 社は、14 時 45 分までの急速に価格が下落している期 間中、積極的な売り注文を行い、その総量は 93 億ドルに達していることで ある55)。もっとも、このような現物有価証券の売却行為は、先物商品の購入 に連動した上記市場間裁定取引の一環として、行われたものと推測されてい る56)。なお、個々の有価証券の価格は、E-Mini 先物契約や SPY の価格が回復 した 14 時 45 分以降でも、売り注文が発せられたことにより、更に価格が下落 したことが報告されている57)。 2010 年 5 月 6 日の 14 時 40 分から 15 時までの間に約 20 億株式が取引さ れていたが、当該株式の 98%は、14 時 40 分時点の価格を基準とするとその 10%以内の価格で執行されていた58)。このような現象が生じたのは、マーケッ ト・メーカーによるスタブ・クオート(stubquote)が原因であるとされてい る59)。スタブ・クオートとは、一般的に、取引所規則によりマーケット・メー カーには継続的な買い気配と売り気配を維持する義務が課せられるところ、流 動性が枯渇している等の状況において、執行を意図しない市場価格とかけ離れ た気配(例:1 セント以下の買い気配又は 10 万ドルの売り気配)を提示する ことである60)。上記のように、スタブ・クオートは執行されることが予定さ れていないが、当日は極端な価格下落が生じたため、このような極端な価格で 約定されたものである。このような極端な価格手約定された取引は、取消しの
対象となった61)。 上記の状況を総括して、共同報告書は、以下のような教訓をまとめている。 すなわち、①大量の売り注文をひと固まりとして自動執行することは、極端な 価格変動の引き金になること、②同時に、多くの市場参加者が取引を中止す ることにより、流動性が極端に減少すること、③完全に自動化された取引戦 略・システムにおいても、データが重要であることを挙げている62)。上記①は、 とりわけ、市場の価格変動を考慮しないアルゴリズムを使用した場合に顕著に 表れる現象である63)。共同報告書は、デリバティブ市場とその現物市場であ る証券市場との相互作用も留意すべき点として挙げられており、サーキット・ ブレーカーなどのデリバティブ市場と証券市場の協調的な規制の必要性が説か れている64)。 上記②は、取引が一斉に差し控えられることにより、流動性が激減し、市場 の価格形成機能が害される点を指摘したものである。また、アメリカ特有の事 情として、マーケット・メーカーには流動性提供義務がある。そのため、スタ ブ・クオートが利用され、本来成立するはずのない価格で、価格形成されるこ とも併せて指摘されている65)。このように、スタブ・クオートによる執行も、 市場の価格形成機能を害するのである。 上記③についてである。自動執行に対応するためには、秒単位での注文情報 や取引情報の開示が必要となる。このような高速取引の環境においても秩序あ る市場を維持するためには、各市場における価格、注文状況や取引情報の正確 且つ適時な統合情報開示が重要となるのである66)。そして、相場操縦的行為、 即ち、市場参加者が価格形成プロセスへ参加することを妨害するためになされ るシステム遅延行為を発見することが、規制当局の責務となることが指摘され ている67)。 その後、CFTC 及び SEC の共同諮問委員会は、勧告書を取りまとめてい る68)。勧告書によれば、まず、取引の現代的特徴として、高頻度取引の存 在が指摘されている69)。そして、問題となる事象を(1)ボラティリティー
(volatility)、(2)コロケーション及びダイレクト・アクセスの制限、(3)流動 性強化に関する諸問題の 3 つに分類し、サーキット・ブレーカーの改善、値幅 制限(“limitup/limitdown”procedure)の導入、ダイレクト・アクセスの制限、 総合取引監視システム(ConsolidatedAuditTrailSystem)の導入など 14 項目 の提言を行っている70)。
(3)対応
以上の提言に対して、証券取機については、以下のような対応がとられてい る。まず、顧客が取引所に直接アクセス(nakedaccess)することについては、 ブローカー・ディーラーに対して、市場の安定性への脅威となる不慮のリスク を防止する目的でなされる「リスク・コントロール」を求めることにより、フィ ルターのかかっていないアクセス(unfilteredaccess)を禁止する規則 15c3-5 が制定された71)。 次に、総合取引監視システムに関する規則 613 が制定された。本規則は、自 主規制機関(Self-RegulatoryOrganizations:SROs)に、発注から執行又は取消 しに至るまでの注文に係るすべての取引情報の完全な記録を収集できるシステ ムを構築することを求めるものである72)。これは、総合取引監視システムは、 SEC に、高頻度取引を分析するために必要なデータに対するアクセス手段を 与えるものである73)。本規則は、2012 年 10 月 1 日に施行されている74)。本 規則は、提案段階では、報告すべきデータは即時(realtime)のものが求めら れていたが、コストの問題から、当該取引実施日の翌日の(東部時間)午前 8 時を基準とすることとされた(規則 613(c)(3))。事後データの利用により、 証券取引委員会は、高頻度取引の規制を行う重要な機会を逃したと指摘される。 なぜなら、即時データにより不正行為を監視するという政策が最も効率的に高 頻度取引を規制できるからである75)。 そして、特定の株式に関する取引を停止する対応もなされている。2012 年 5 月 31 日に、シングル・ストック・サーキットブレーカー(single-stockcircuitbreaker)を価格制限(limitup-limitdownmechanism)に置き換えるパイロッ ト・プログラムに関する自主規制機関の規則改正を、証券取引委員会は承認し た76)。価格制限は、一定の価格帯を超える取引を禁止し、価格変動の基調と適 合させるための取引停止と組み合わせた制度である77)。価格制限の基準とな る各株式の価格帯は、参考価格から上限と下限が算出される78)。ある個別株 式に係る注文(例:買い注文)が価格制限の基準となる価格帯を超えていれば、 当該最良注文(例:最良買い注文(NationalBestBid:NBB))は執行されない 旨が公表される79)。そして、当該株式の相対する注文(例:売り注文)が当 該価格帯の制限値に達した場合には、当該株式は、制限状態相場(limitstate quotation)で あ る こ と を 公表 す る80)。最良売 り 注文(NationalBestOrder: NBO)が価格帯の下限と一致し、且つ、最良買い注文と合致しない場合、又は、 最良買い注文が価格帯の上限と一致し、且つ、最良売り注文と合致しない場合 には、すべての当該株式の取引は、制限状態に入る81)。制限状態開始から 15 秒間において、すべての制限状態相場が執行され又は取消された場合には、制 限状態は解除される82)。他方、制限状態開始から 15 秒を経過すると、5 分間 の取引停止状態に入る83)。つまり、この制度は、制限状態に入った価格が 15 秒間継続した場合、5 分間取引を停止するものである。換言すれば、制限状態 にある価格が 15 秒以内に変更されれば、取引の停止が免れることになる。こ の価格制限は、試行的に実施されることとなっている84)。 また、高速化する取引を原因とした異常な市場ボラティリティーに対応す る方法として、取引停止という手段もある。SEC は、市場規模のサーキット・ ブ レーカー(market-widecircuitbreakers)に 関 す る 自主規制機関(SROs) の改正提案を SEC は承認した85)。当該改正点は、①サーキット・ブレーカー の発動基準となる発動基準値を算出するための参照インデックスを、ダウ ジョーンズ工業株平均(DowJonesIndustrialAverage)から、S&P500 インデッ クス(S&P500Index)に変更すること、②当該発動基準値の算出を四半期ご とから、日ごとに変更すること、③当該発動基準値算出のための割合を、各発
動段階で、7%、13%及び 20%と縮減すること(従前は、各発動段階で 10%、 20%及び 30%であった)、④各発動段階における取引停止時間を縮小するこ と、⑤取引停止が発動される時間帯を変更することである86)。各発動段階に おける取引停止措置の運用は下記のようになる。すなわち、まず第一段階(発 動基準値算出割合は 7%)では、3 時 25 分より前において発動基準値を超えた 場合には 15 分間の取引停止となり、3 時 25 分以後は第三段階の適用がない限 り、取引を継続する87)。次に、第二段階(発動基準値算出割合は 13%)では、 3 時 25 分より前において発動基準値を超えた場合には 15 分間の取引停止とな り、3 時 25 分以後は第三段階の適用がない限り、取引を継続する88)。そして、 第三段階(発動基準値算出割合は 20%)においては、如何なる時間帯でも当 該日の取引を停止することとなる89)。
3.高頻度取引による相場操縦の類型
上記のようなアメリカにおける事例分析をもとに、高頻度取引による相場操 縦の類型を分析した調査報告書がある。それが、証券監督者国際機構による調 査報告と欧州証券市場監督局の調査報告書である。順次、これらを概観するこ ととする。(1)証券監督者国際機構(IOSCO)の調査報告書
証券監督者国際機構(InternationalOrganizationofSecuritiesCommissions: IOSCO)は、2011 年 7 月に、市中協議報告書「技術革新が市場の健全性・効 率性に及ぼす影響により生じる規制上の課題」を公表した90)。そして、当該 市中協議後、2011 年 10 月に、最終報告書「技術革新が市場の健全性・効率性 に及ぼす影響により生じる規制上の課題」を公表した91)。最終報告書は、まず、 高頻度取引を次のように位置付ける。すなわち、高頻度取引を定義することは、 その定義が容易に陳腐化するため、規制の観点から現実的ではないし、高頻度取引は広範に分岐した取引戦略を採用することから、これを正確に定義するこ と自体も困難であるとされる92)。また、高頻度取引はアルゴリズム取引の一 類型であり、全てのアルゴリズム取引が高頻度取引となるわけではないとす る93)。そして、高頻度取引は、最新の統計学や経済学的な知見から導き出され、 コンピューターや情報伝達システムの技法を採用している94)。アルゴリズム は、市場から発せられるシグナルを解釈し、自動的に取引を執行するために使 用される95)。この取引には、1 秒あるいは 1000 分の 1 秒の間に売買が反復さ れる「往復取引」(round-triptrades)も含まれる96)。高頻度取引を行う主体 は、小規模であるが頻繁に取引を執行することにより、少額の価格変動から 利益を得ている97)。高頻度取引と高頻度取引以外のアルゴリズム取引とを区 別する特徴は、執行の速度と保有金融商品の回転率に求められるとされる98)。 2010 年において、高頻度取引の占める割合は、アメリカでの持分証券(equity trading)取引の約 56%に相当し、欧州でも持分証券取引の 38%を占める状況 にある99)。 次に、高頻度取引の特徴として、①裁定取引に関する多様な投資戦略を遂行 する洗練された科学的ツールが利用されていること、②市場データの分析、適 切な取引戦略の活用、取引コストの最小化及び取引の執行という一連の投資活 動についてアルゴリズムを採用した高度に数量化されたツールがあること、③ 1 日の取引において、取引執行に比して注文の取消が多いこと、④価格変動リ スクや手数料コストを低減するために、未決済のポジションを翌取引日に持ち 越すことが少なく、ポジションの保有期間が秒単位である場合もあること、⑤ 主に、プロップファーム(proprietarytradingfirm)に採用されること、⑥高 頻度取引を利用した投資戦略の成否は、競争者より早く注文・執行する能力と 電磁的なダイレクト・アクセス(directelectronicaccess)やコロケーション の優位性に依存するため、執行時間に影響を受けやすいことを挙げている100)。 そして、高頻度取引が市場に与えるリスクには、市場の公正さ及びインテグ リティーに対するリスクがある。本報告書によれば、市場の公正さ及びインテ
グリティーに対するリスクは、①コロケーションなどの先端技術を利用した設 備へのアクセスに係る公正性の問題、②「軍備競争」(armsrace)になぞらえ た設備競争の問題、③隠れた流動性を探知し利益を先取りする問題、④相場操 縦の問題、⑤利益相反の問題で構成されている101)。 上記④において、相場操縦の目的で行われる濫用的取引慣行として、モメ ンタム・イグニッション(momentumignition)、クオート・ストゥフィング (quote-stuffing)、スプーフィング(spoofing)、多層注文(layering)が例示さ れている102)。モメンタム・イグニッションは、プロップファームが、急速な 価格変動を引き起こすことを意図して、一連の注文や取引を始めるものである 103)。一連の注文や売買には虚偽の風説を流布するも伴うこともある104)。この 類型は、アメリカにおけるプールの技法と類似する。次に、スプーフィングは、 表示される指値注文を利用して、相場操縦を行うものである105)。多層注文は、 価格や取引量が異なる複数の買い注文・売り注文を行うことにより莫大な注文 を形成し、その後、90%以上の割合で注文を取り消すものである106)。注文か らキャンセルまでの時間は非常に短く、執行がなされない場合には 1 秒以下で あるとされる107)。これに関連して、高頻度取引の技術的優位性により、従来 よりも大規模な市場濫用行為が可能となる余地がある108)。
(2)欧州証券市場監督局(ESMA)の調査報告書
1)市中協議書 欧州証券市場監督局(EuropeanSecuritiesandMarketsAuthority:ESMA) は、市中協議書(ConsultationPaper)「取引プラットフォーム、投資会社及び 規制当局のための高度に自動化された取引環境におけるシステム及び統制に関 するガイドライン」を、2011 年 7 月 20 日に公表した109)。このガイドライン の目的は、現行法規の枠内において、高度に自動化された取引環境に関連して 取引 プ ラット フォーム(tradingplatform)と 投資会社(investmentfirm)の 義務を明らかにすることにある110)。市中協議書は、ガイドライン 5 として、「高度に自動化された取引環境にお ける市場濫用(特に相場操縦)防止のための規制市場及び多方向取引設備に対 する組織上の要件」を定める111)。一般的なガイドラインとして、規制された 市場及び多方向取引設備は、高度に自動化された取引環境における市場濫用(特 に相場操縦)に関与する会員・取引参加者及び利用者の行為を識別できる効果 的な規程(arrangement)と手続を有していなければならない、とする112)。 ガイドラインの細目として、高度に自動化された取引環境における市場濫 用・相場操縦を含む、市場参加者の行為を防止・認識するための規制市場及び 多方向取引設備における当該規程及び手続は、最低限、以下の要素を加味した ものでなければならないとする113)。それは、①高頻度取引や注文及び待機時 間の短い伝達を調整する十分な容量を有した(取引や注文の自動警報システム を含む)適切なシステムの保有、②市場濫用に関係する行為を関係当局に遅滞 なく報告することを確保する明確な手続の保有、③高度に自動化された取引環 境における取引活動をモニターし、且つ、市場濫用と疑われる行為態様を識別 することができる十分なスタッフを擁していること、④市場濫用を防止・認識 する手続や規程を定期的に審査することである114)。なお、上記①のシステムは、 なされた注文・取引及び市場濫用に係る行為態様を十分に細かい時間で区切る ことができ、且つ、発注・注文のキャンセルはもちろん、取引を遡って追跡で きるモニターするためのものである115)。そして、上記①乃至④に係る記録を 適切に保管しなければならない、とする116)。 上記ガイドラインを提言する背景はこうである。そもそも、金融商品市場指 令 43 条 1 項に基づいて、規制市場は市場濫用行為を識別するシステムによっ て取引を監視する義務を負っており、規制市場及び多方向取引設備は市場濫 用行為を発見した場合は即時に規制当局に通報する義務を負う(同指令 43 条 2 項)117)。加えて、市場濫用指令 6 条 6 項によれば、加盟国は、市場運営者が 市場濫用行為を発見することを目的とする組織上の規程を採用するようにしな ければならない118)。また、多方向取引設備は、金融商品市場指令 14 条 1 項に
基づいて、リスク・マネジメントとコンプライアンスに関する義務が課せられ ている119)。 他方、高度に自動化された取引環境における取引は上記の規制に新たな問題 を投げかけることになる。これに対応するため、欧州証券市場監督局は、金 融商品の需給や価格について虚偽や誤導するシグナルを与える注文に係る市 場濫用行為の可能性に照準を定めている120)。この行為態様は、市場濫用指令 実施規則 4 条の類型や市場濫用指令にかかる欧州証券規制委員会(Committee ofEuropeanSecuritiesRegulators:CESR)のガイダンスが指摘する相場操縦 の類型に含まれるものもある121)。また、高速取引戦略(highspeedtrading strategy)に起因して、市場濫用行為となりうる類型がある122)。その例として、 ①ピング・オーダー(pingorder)、②クオート・ストゥフィング、③モメン タム・イグニッション、④多層注文及びスプーフィングが挙げられる。 ①ピング・オーダーとは、他の参加者の反応を引き出す目的で、彼らの保有 ポジションや期待に関する追加的情報を提供するような少量の注文を発するこ とである123)。②クオート・ストゥフィングとは、他の参加者にとって不確実 性を作り出し、その執行速度を減速させ、その取引戦略自体の影響力を減じさ せることを目的として、少量の異なるポジションを注文板に発生させることで ある124)。③モメンタム・イグニッションとは、追随者がトレンドをより加速 させることや、トレンドを悪化させて保有ポジションの手仕舞いを強いるため に、攻撃的な注文を発することである125)。④多層注文及びスプーフィングは、 一方でわずかに異なる価格の複数の注文を発し、他方で(取引する真の意思を 反映するため)1 つの注文を発して取引を 1 本だけ成立させ、他の注文を迅速 に取り消す手法である126)。 ところで、市中協議書には、附属書類Ⅳとして、アルゴリズム及び高頻度取 引が市場の質に及ぼす影響を学術的に分析した結果を公表している127)。その 中で、アルゴリズム取引や高頻度取引の外部性(特に、市場のインテグリティー と社会的厚生について)に言及している。不公正取引については、アルゴリズ
ム取引や高頻度取引の進展は、市場濫用の新しい類型を生じさせ、現在の市場 濫用類型をより蔓延させる機会を創造することになる、という懸念を表明して いる128)。まず、①新しいタイプの市場濫用類型としては、ピンギング(pinging) やクオート・ストゥフィングが指摘され、②従来の市場濫用類型を機械化して 行うものとしては、注文板における多層注文戦略が挙げられている129)。多層 注文戦略は、一方(例:買い)の注文板における累積的な数の注文を発するこ とにより注文板における売買のバランスが崩れている印象を与えた上で、突然、 これらの注文をキャンセルして、反対の立場から(例:売り)を発注して、取 引を成立させる方法である130)。 他方、アルゴリズム取引や高頻度取引により、許された行為と濫用的行為の 境界が不明確になってくるという指摘がある131)。仮に、単なる発注の取消と 見せ玉の差を発注から取消までの時間差に求めるならば、高頻度取引の場合、 1 秒未満で取消が生じるから、具体的な差異を認定することは困難であろう。 市場のインテグリティーに関する問題として、いわゆる人工的な相場(artificial quote)の形成がある。人工的な相場は、コンピューターによって創造され、 執行の可能性がないほどに短期間に生じている132)。取引を全く意図せずにこ のような人工的な相場が形成されたのであれば、これは真の相場といえるのか という疑問が呈せられているのである133)。また、アルゴリズム取引や高頻度 取引は、市場情報の量や複雑性が増大するが故に、濫用的行為の発見に対す る市場監視の困難さとコストも増大する134)。市中協議書は、市場の質(厚生) に対するアルゴリズム取引や高頻度取引の影響は、このようなコストをも考慮 して行う必要があることを指摘している135)。 2)最終報告書 欧州証券市場監督局は、最終報告書(FinalReport)「取引プラットフォーム、 投資会社及び規制当局のための高度に自動化された取引環境におけるシステム 及び統制に関するガイドライン」を、2011 年 12月 21 日に公表した136)。
市中協議書は、上記ガイドライン 5 に関連して、①公正かつ秩序を遵守した 取引を振興することを目的とした取引プラットフォームの組織上の要件に係る ガイドライン案について、より詳細に規定すべき点に関する事項(Q14)、② 相場操縦を防止することを目的とした規制市場及び多方向取引施設の組織上の 要件に係るガイドライン案に対する追加的なコメントに関する事項(Q15)を 照会していた。 上記①については、29 の回答があり、ほとんどの回答が提案されたガイド ラインに賛成していた137)。しかし、5 つの回答は、ガイドライン案の注釈の 中で例示された類型を含む濫用的行為態様の更なる明確化がより良い市場監視 につながる旨の指摘があった138)。また、2 つの回答は、高頻度取引自体は市 場濫用行為ではないため、高頻度取引と市場濫用行為は峻別すべきであるとす るものであった139)。これらの回答を踏まえて、市場濫用に該当する可能性の ある行為の描写をより明確化するために、ガイドラインの例示を再検討するこ ととなった140)。 上記②については、ヨーロッパにおいて市場監視や法解釈の協調を求めるも のなどの若干のコメントがあった141)。これらのコメントに対しては、欧州委 員会(European’sCommission)による金融商品市場指令の改正提案では、市 場濫用行為などの対応という観点から、取引プラットフォーム間のより一層の 協調を求める内容になっていることを指摘している142)。 最終報告書は、ガイドライン 5 として、「自動化された取引環境における市 場濫用(特に相場操縦)防止のための規制市場及び多方向取引設備に対する組 織上の要件」を定める143)。一般的なガイドラインとして、取引プラットフォー ムは、加盟国における監視に係る個別の規程・規制を考慮して、自動化された 取引環境における市場濫用(特に相場操縦)に関与する会員・取引参加者及び 利用者の行為を識別できる効果的な規程と手続を有していなければならない、 とする144)。そして、自動化された取引環境において特に関係しうる相場操縦 の潜在的類型として、①ピング・オーダー、②クオート・ストゥフィング、③
モメンタム・イグニッション、④多層注文及びスプーフィングを例示してい る145)。①ピング・オーダーとは、隠れた注文の水準(level)を探知するために、 とりわけダーク・プラットフォームに残存している注文を評価するために、少 量の注文を発するものである146)。②クオート・ストゥフィングとは、他の参 加者に不確実性を創造し、他の参加者の執行プロセスを減速させ、そしてその 取引戦略自体をかき消すことを目的として、大量の注文の発注、取消し、又は 注文の更新を行うことである147)。③モメンタム・イグニッションとは、行為 者に有利な価格で建玉を立てあるいは建玉を手仕舞うために、価格の傾向を形 成又は悪化させる意図で、又は、上記の傾向を加速・拡大させるべく他人の取 引を誘引する意図で注文若しくは一連の注文を発することである148)。④多層 注文及びスプーフィングとは、注文板上の注文(例:買い注文)を執行する意 図で、注文板上の呼び値(売り呼び値)をわずかに更新する複数の注文を送り、 取引が開始されると、相場操縦に利用した注文を取り消すものである149)。 ガイドラインの細目として、自動化された取引環境における市場濫用・相場 操縦を含む市場参加者の行為を防止・認識するための取引プラットフォームに おける当該規程及び手続は、最低限、a)人員配置、b)モニタリング、c)疑し い取引・注文の識別と報告、d)審査、e)記録保存に関する諸基準を満たした ものでなければならないとする150)。 a)人員配置に関する基準は、自動化された取引環境における取引活動をモ ニターし、且つ、市場濫用と疑われる行為態様を識別することができる十分な スタッフを取引プラットフォームが擁することを求めている151)。b)モニタリ ングに関する基準は、取引プラットフォームが取引や注文をモニターするため に、高頻度且つ高速の取引に対応して、注文、取引およびその他の行為態様を 時系列的に把握し、且つ、注文の発注・取消しや執行された取引について事後 的にトレースすることができる(自動警告システムを含む)システムの保有を 取引プラットフォームに求めている152)。c)疑しい取引・注文の識別と報告に 関する基準は、市場濫用行為に該当する疑いのある取引を認識し、且つ、でき
るだけ迅速に規制当局に報告する体制を整備することを、取引プラットフォー ムに求めている153)。また、認識・報告の対象を取引のみならず、注文を含め ることを推奨している154)。これは、照会事項に対する回答にもあるように、 未執行の注文についても、市場濫用行為に該当する疑いがあれば、国内法が定 める要件の充足の有無にかかわらず、規制当局に報告することを推奨する欧州 証券規制委員会のガイドラインを踏襲するものである155)。 d)審査に関する基準は、市場濫用に関与する行為を防止・認識する手続や 規程を定期的に審査することを、取引プラットフォームに求めている156)。e) 記録保存に関する基準は、規制当局に対する報告の有無にかかわらず、上記 a) から d)までに関する記録について保存することを、取引プラットフォームに 求めている157)。また、多角的取引施設における市場運営者および投資業者には、 当該記録を最低 5 年間保存することが求められている158)。 3)相場操縦類型における市中協議書との差異 市中協議書において相場操縦として例示されている類型の細部が、最終報告 書において変更されている。照会事項に対する回答の中で、相場操縦類型の精 緻化を求める意見に対応しているものと思われる。 まず、①ピング・オーダーについてである。市中協議書では、少量の注文を 発する行為の目的を「他の参加者の反応を引き出す目的」としていた。他方、 最終報告書では、少量の注文を発する目的を、ダーク・プラットフォームに残 存している需給を評価するなど、潜在的な注文状況を探索する目的として位置 付けている。このように、市中協議書は他人の取引を誘引する側面を強調した 定義となっていたが、最終報告書では潜在的需給の探査目的に限定された定義 となっている。このような修正が行われて理由は明らかではないが、最終報告 書では、少量の注文を発する行為の目的をより明確化する趣旨と思われる。最 終報告書の定義によれば、ピング・オーダー自体は、他人の取引動機を刺激す るのではなく他人の取引需要を探査するものであるから、ピング・オーダーの
みを捉えて相場操縦の手段と位置付けるのは困難である。他方、ダーク・プー ルでは注文板が公開されないことから、相場操縦者が、大口の需給の存在を確 認した上で、当該大口投資者の取引を誘引して、相場操縦に利用する可能性は ある。このように、他の相場操縦行為との関係で行われるピング・オーダーを 問題視しているものと思われる。 次に、②クオート・ストゥフィングについてである。市中協議書では、少量 の異なるポジションを注文板に発生させることを濫用行為としていた。他方、 最終報告書は、大量の注文の発注・取消し、又は注文の更新を行うことを濫用 行為として位置付けている。市中協議書の段階では、高頻度取引特有の現象で ある少量の注文を反復して発する点に、新規性があると認識されたものとも思 われる。もっとも、少量の注文を発するだけで、違法性を認定することが困難 であるため、注文の大量性や注文の取消しという要素を加えた最終報告書の定 義に移行したものと思われる。 第三に、③モメンタム・イグニッションについてである。この類型について は、最終報告書においては、市中協議書における定義と異なり、他の参加者の 取引を誘引する点及び一連の注文も濫用行為に該当することを明確化してい る。 第四に、④多層注文・スプーフィングについてである。市中協議書では、価 格操作に利用した注文について、取引を 1 つだけ成立させ、他の注文を迅速に 取り消す手法であるとされていた。他方、最終報告書では、取引の成立の有無 にかかわらず、取引が開始されると、相場操縦に利用する注文を取り消すこと に着目して規定している。取引の成立に拘泥することなく、注文板上の呼び値 を更新する行為を禁止する趣旨を明確にしたものと思われる。多層注文とス プーフィングは本来異なる概念であるが、最終報告書は、両概念における注文 の取消という点に着目して、両者を統合して取り扱っているものとも思われる。
4.若干の考察
本節では、前節までの分析を踏まえて若干の検討を行うこととする。(1)高頻度取引を利用した価格操作の技法
まず、高頻度取引を利用した価格操作の技法を整理することとする159)。技 法の類型としては、(1)ピング・オーダー、(2)クオート・ストゥフィング、 (3)モメンタム・イグニッション、(4)多層注文、(5)スプーフィングに分類 することができる。(1)ピング・オーダーとは、ダーク・プールにおける潜在 的な需要を探知するために、少量の注文を発するものである。他人の取引を誘 引することを目的とする場合には、価格操作の技法として位置付けられる。 (2)クオート・ストゥフィングは、他の市場参加者が市場取引にアクセスす る速度を減じる目的で、大量の取引注文を発した後、即座に当該注文を取消す ものである。他の市場参加者、とりわけ、高頻度取引を行うことができない市 場参加者は市場での取引速度が減じられるため、適時に発注ができないことか ら取引機会を逸すること、あるいは、適時に注文の取消・変更ができないこと から現状を反映しない不利な条件での約定を強いられることになる。 (3)モメンタム・イグニッションとは、急速な価格変動を作出するために、 一連の注文を発することである。急速な価格変動を生じさせるためには、他人 の取引を利用するのが効果的である。そのため、モメンタム・イグニッション の行為者は、他人の取引を誘引することを目的として注文を発することもある。 (4)多層注文とは、次のような技法である。まず、売り注文の約定を望むト レーダーが、その意図とは逆に、当該トレーダーは、最良執行価格を超える買 い指値注文を発して、最良執行価格を更新する。次に、他の市場参加者をして、 強力な買い圧力が存在するため価格が上昇すると信じ込ませることによって、 買い注文を誘引する。そして、当該トレーダーは、見える注文(visibleorder) である買い注文を取消し、隠れた注文(hiddenorder)である売り注文を発し、自己に有利な価格で約定させるのである160)。ここで、FINRA(Financial IndustryRegulatoryAuthority)の自主規制に違反した多層注文の事例を概観 しよう161)。この事例は、ある証券を有利な価格で買付けることを目的とする 多層注文の場合である。①まず、ある証券の買い指値注文(「本件買い指値注文」 とする。)を発する。②次に、売り気配の最良執行価格を超えた指値で、大量 の売り注文(「本件売り指値注文」とする。)を発する。最良執行価格を超えた 指値売り注文を発する趣旨は、売り注文が未執行であるという外観を形成して 他の投資家の売り注文を誘引し、且つ、最良執行価格を超えた価格を売り指 値とすることで「本件売り指値注文」が執行されるリスクを減少することに ある162)。③そして、当該売り指値注文がなかった場合と比較してより安い価 格で「本件買い指値注文」が執行される。④上記③の執行後、速やかに「本件 売り指値注文」を取消すものである。 (5)スプーフィングとは、取引をする意図がないにもかかわらず、注文を発 することである163)。換言すれば、他人の注文を誘引する目的で指値注文を発し、 執行される前に取消しを行うものである164)。 ところで、高頻度取引を利用した価格操作を、日本法により禁止される相場 操縦として分類するならば、(A)第三者の取引を誘引して価格変動を生じさ せる類型と(B)需給関係の一時的な不均衡を創出して価格変動を生じさせる 類型とに該当する可能性がある。上記(A)は、相場操縦の計画を知らない第 三者の取引を誘引することにより、需給状況を変化させ、価格を変動させるも のである。この類型を禁止するのが、金融商品取引法 159 条 2 項 1 号である。 他方、上記(B)は、第三者の取引の有無にかかわらず、大量の発注や取引を 行うことで、需給状況を変化させ、価格を変動させるものである。この類型は、 価格を変動させることに本質があるため、金融商品取引法 157 条 1 号が定める 「不正の行為」に該当すると解する余地がある165)。上記(A)と(B)の理論 上の違いは、第三者の取引を誘引する目的の有無にある166)。 上記の価格操作の技法を、上記の法的視点から検討することとする。まず、
(1)ピング・オーダーが他人の取引を誘引することを目的として、少量の注文 を発するものである場合には、159 条 2 項 1 号に該当する。 (2)クオート・ストゥフィングは、他の市場参加者が市場取引にアクセスす る速度を減じる目的のみで実行される場合には、取引の誘引目的はない。し かし、一時的な需給の不均衡を作出することがこの技法の到達目標であれば、 157 条 1 号に該当する可能性がある。この技法を成否は、行為者の発注・取消 しの高速性に依存する側面があるので、この技法は高速のコンピューターを利 用した高頻度取引と親和的である。 (3)モメンタム・イグニッションは、急速な価格変動を作出することがその 目標である。急速な価格変動を生じさせるために他人の取引を誘引する目的を 有しているのであれば、159 条 2 項 1 号に該当する。他方、一時的な価格変動 を引き起こすのであれば、誘引目的は必須のものではない。一時的な需給の不 均衡を作出することがこの技法の到達目標であれば、157 条 1 号に該当する可 能性がある。 (4)多層注文は、その本質において、他人の取引を誘引することによって利 得を得る技法である。そのため、この技法を利用すること自体、他人の取引を 誘引する目的の存在が推認される。このことから、多層注文は 159 条 2 項 1 号 に該当する。 (5)スプーフィングは、他人の注文を誘引する目的で指値注文を発し、執行 される前に取消しを行うものである。日本における見せ玉と類似の行為である。 そのため、159 条 2 項 1 号に該当する。 これらの技法は、いずれも従来の解釈論により既存の規定で捕捉できるもの である。もっとも、高頻度取引の一環として行われるため、人間の知覚で認識 するのが困難なほど高速で行われる点に特徴がある。この点において、人間の 取引は誘引される可能性はないのではないか、という疑問が生じる余地もある。 しかし、他の高頻度取引を認識できるコンピューターの取引が上記の技法によ り誘引される可能性はある。このため、誘引される取引の主体は自然人に限定
されないことから、高頻度取引による高頻度取引の誘引ということも観念でき る。このことから、高頻度取引による取引の誘引も可能であるから、高頻度取 引による価格操作も、取引の「誘引目的」を充足し得る。
(2)市場管理
前述した高頻度取引による価格操作の技法の予防という観点から、市場にお ける行為規制について検討することとする。 まず、高頻度取引が採用する取引戦略には、発注の取消しが多いという特徴 があるため、執行量と比較して一定割合を超過した取消しを認めない執行・取 消レシオを採用する方法が提案されている167)。一定の基準を超えると市場に おいて取消自体ができなくなるため、前述した(2)クオート・ストゥフィング、 (4)多層注文、(5)スプーフィングの技法は利用することが困難となる。 次に、大量且つ高速の取引が継続すると冷静な投資判断が困難となるため、 何らかの形で、冷却期間を設ける方法も提案されている。その方法の 1 つとし て、前述のように、サーキット・ブレーカーや値幅制限を設けることが挙げら れる。また、前場と後場との間に休息時間を設けることも提案されている168)。 とりわけ、日本においては、値幅制限や前場と後場との間における休息時間は 既に設けられている。これらの制度は、高頻度取引の障害となる制度ではなく、 その適正化に資する制度であることを再認識すべきであろう。5.むすびにかえて
高頻度取引は、科学技術の発達がもたらした取引技術である。高速の取引自 体を制限する規制を日本法に導入した場合には、①取引が価格に情報を織り込 む効果を前提とすれば、情報の価格への迅速な反映を妨げること、②取引の国 際化を前提とすれば、取引速度の競争において、日本法の適用を受けるトレー ダーが高速の取引装置を利用できる諸外国のトレーダーに劣後することとなる。このような弊害があるため、高速の取引自体を何らかの形で制限する立法 には慎重にならざるを得ない169)。他方、高速の取引による高頻度取引には負 の側面がある。その 1 つが価格操作という形で顕在化する。相場操縦の予防と いう観点からは、市場管理が重要である。どのような市場管理が高頻度取引の 有用性を妨げずに相場操縦を防止できるのか、という点について、今後も検証 が必要となる。 【2013 年 12 月 19 日・脱稿】 1)杉原慶彦「取引コストの削減を巡る市場参加者の取組み:アルゴリズム取引と代替市場 の活用」金融研究 30 巻 2 号 47 頁(2011 年)。 2)以 下 を 参 照。TechnicalCommitteeoftheInternationalOrganizationofSecurities Commissions(IOSCO),Regulatory Issues Raised by the Impact of Technological Changes on Market Integrity and Efficiency,FinalReport,FR09/11(October2011),at23.以下、こ の 文 献を「IOSCO 報告書」として引用することとする。なお、取引のスピードは、コンピュー ターの性能に依存するものであり、性能が向上すれば、より高速の取引が可能となる。 3)IOSCO 報告書・前掲注(2)23 頁。 4)ConceptReleaseonEquityMarketStructure,Sec.Exch.ActRel.No.34-61358,75Fed. Reg.3594,at3607-3610(SECJanuary21,2010).以下、この文献を「証券取引所法通牒第 61358 号」として引用することとする。 5)証券取引所法通牒第 61358 号・前掲注(4)3607 頁。 6)同上。 7)同上。どの価格帯で、どの程度の注文が約定できるのか事前に予測することが困難であ るため、潜在的な需給を探るために多様かつ大量の注文を発することになるものと推測 される。そのため、潜在的な需給が存在しない価格帯での注文を取り消すことになる。 8)証券取引所法通牒第 61358 号・前掲注(4)3608 頁。 9)同上。 10)同上。裁定取引戦略においては複数の商品にわたるヘッジも行われるため、受動的マー ケット・メーキング戦略と異なり、そのポジションは数日以上変化しない場合もあると される。同上。 11)同上。
12)同上。 13)同上。 14)同上。 15)同上。
16)証券取引所法通牒第 61358 号・前掲注(4)3609 頁。
17)以 下 を 参 照。Larry Harris, Trading & ExcHangEs: MarkET MicrosTrucTurE for PracTiTionErs245(2003). 18)証券取引所法通牒第 61358 号・前掲注(4)3609 頁。 19)同上参照。 20)同上。実例として、取引の執行状況に沿って多数の注文を迅速に発した後に取り消し、 他者が利用するアルゴリズムを錯誤に陥らせ、もって他人をより積極的な売買に参加さ せる類型や価格の下落を促進するために、損切りのための注文(stoplossorder)を誘 引する類型がある。同上。 21)U.S.CommodityFuturesTradingCommission&U.S.Securities&ExchangeCommission, PreliminaryFindingsRegardingtheMarketEventsofMay6,2010,AppendixA-11.な お、本文②のコロケーション・サービスとは、取引参加者のサーバーを、取引所等の市 場運営者側のシステムと物理的に同じ場所に設置することで、発注から執行までの時間 を短縮するサービスを指す(清水葉子「高頻度取引をめぐる規制動向」証研レポート 1671 号 60 頁(2012 年)を参照)。東京証券取引所ウエブ・サイトによれば、同取引所の コロケーション・サービスは、取引所との通信速度を片道数十マイクロ秒以下まで短縮 することができるとされている(http://www.tse.or.jp/system/connectivity/index.html (最終閲覧日:2013 年 12 月 18 日))。 22)松原弘「金融電子取引技術革新とトレーディングシステム」オペレーションズ・リサー チ 55 巻 9 号 560 頁(2010 年)。 23)IOSCO 報告書・前掲注(2)23 頁。一般にアルゴリズム取引は、取引執行に係る時期、価格、 取引量及び取引地などを決定するツールとして位置付けられ、主に価格への影響を最小 化する目的や証券市場の環境変化に伴う大型ポートフォリオを調整する目的で使用され る(IOSCO 報告書・前掲注(2)22 頁)。 24)杉原・前掲注(1)47 頁。 25)取引戦略の違いやポジションの執行時間の長短によって、①大口取引向けアルゴリズム 取引、②高頻度取引、③統計的裁定取引、④クオンツ取引に分類される。杉原・前掲注(1) 47 頁以下参照。
26)中島尚紀=二宮聡広=古井芳美「最新トレーディング技術の概要」オペレーションズ・ リサーチ 55 巻 9 号 543 頁(2010 年)。より詳細な取引戦略の分析として、杉原・前掲注 (1)43 頁以下を参照。
27)アルゴリズムによる取引と相場操縦の関係に関する先駆的研究として、大証金融商品取 引法研究会「アルゴリズム取引と相場操縦」(平成 23 年 9 月 16 日)を参照。
28)以下を参照。5Louis Loss, JoEL sELigMan & Troy ParEdEs, sEcuriTiEs rEguLaTion(4thed. 2010)678.
29)1 Louis Loss, JoEL sELigMan & Troy ParEdEs, fundaMEnTaLsof sEcuriTiEs rEguLaTion (6th ed.2011)998.
30)同上。
31)17C.F.R.§240.11Ac1-1(b)(i)(A)(2005). なお、このような注文形式は「即時執行注文」 (Immediateorcancelorder:IOC)と称される。HARRIS・前掲注(17)83 頁。
32)17C.F.R.§242.602(2012).
33)17C.F.R.§242.602(a)(1)(i)(A)(2012).
34)吉川真裕「フラッシュ・オーダー ~問題の真相~」証研レポート 1656 号 28 頁(2009 年)。 35)大崎貞和「米国におけるフラッシュ・オーダー、ダークプール規制の動きと日本市場の 課題」商事 1881 号 35 頁(2009 年)。従前は、即座に取り消される指値注文を意味し、 点滅気配(flickeringquotes)と同義とされた。吉川・前掲注(34)28 頁。 36)大崎・前掲注(35)35 頁参照。 37)EliminationofFlashOrderExceptionfromRule602ofRegulationNMS,Sec.Exch.Act Rel.No.34-60684,74Fed.Reg.48632at48637-48638(SECSeptember23,2009).以下、こ の文献を「証券取引所法通牒第 60684号」として引用することとする。 38)同上 48636 頁。 39)同上 48635~48636 頁。 40)同上 48638 頁。ま た、付加的 な コ メ ン ト も 発 せ ら れ た。EliminationofFlashOrder ExceptionfromRule602ofRegulationNMS,Sec.Exch.ActRel.No.34-62445,75Fed. Reg.39626(SECJuly9,2010). しかし、この提案は、2013 年 12 月現在、採用されてい ない。なお、提案されたフラッシュ・オーダーに対する規制は、SEC の権限を越えてい るという指摘もある。THoMas LEE HazEn, TrEaTisEon THE Lawof sEcuriTiEsrEguLaTion §12.17[1]PocketPartFN.57.30(2013).
41)HazEn・前掲注(40)§14.1[7] 参照。
RegulatoryIssues,findings rEgarding THE MarkET EvEnTsof May 6,2010(September30, 2010)14.以下、この文献を脚注においても、「共同報告書」として引用することとする。 43)共同報告書・前掲注(42)14 頁。 44)同上 10 頁。 45)同上 14 頁。 46)同上。 47)同上 15 頁。 48)同上 16 頁。その後、短期間で価格は回復を始めた(同上)。 49)同上。 50)同上。 51)同上 3 頁。 52)同上。 53)同上 48 頁参照。高頻度取引の市場全体の取引量に対する割合は、ドル換算した場合、14 時から 14 時 45 分までは全体の 50.3%を占めていたが、14 時 46 分から 15 時までは、全 体の 36.6%に低下しいていた(同上)。 54)同上。 55)同上。 56)同上。 57)同上 5 頁参照。 58)同上。 59)同上。 60)同上 63 頁。 61)同上 6 頁参照。 62)同上 6-7 頁。 63)同上 6 頁。 64)同上。 65)同上 7 頁。 66)同上 8 頁参照。 67)同上。
68) rEcoMMEndaTions rEgarding rEguLaTory rEsPonsEsTo THE MarkET EvEnTsof May 6,2010- SummaryReportoftheJointCFTC-SECAdvisoryCommitteeonEmerging RegulatoryIssues.以下では、この文献を「勧告書」として引用することとする。 69)勧告書・前掲注(68)2 頁。 70)同上 2-14 頁。 71)17C.F.R.§240.15c3-5(2013).なお、SEC の年次報告書によれば、その他の対応とし て、①取消しの対象となる約定された取引については、取消しの判断基準となる「明確 な誤謬」(clearlyerroneous)をより明確化することを目的とする FINRA 及び取引所規 則の承認、②スタブ・クオートについては、実際の気配の一定割合以内で相場を維持 する義務をマーケット・メーカーに課すことを目的とする FINRA 及び取引所規則を承 認、③大量取引の動向把握については、大量取引者の報告要件(largetraderreporting requirement)に関する規則(17CFR§240.13h-1)の制定が挙げられている(2011S.E.C. Ann.Rep.20-21)。 72)17C.F.R.§242.613(2013). 73)以 下 を 参 照。ConsolidatedAuditTrail,Sec.Exch.ActRel.No.34-67457,77Fed. Reg.45722,45733(SECAugust1,2012). 74)もっとも、システムが実際に運用されるのは 4 年から 5 年先とされている。以下を参照。 YinWilczek,SEC Adopts Rule for Consolidated Audit Trail; Dissenters Object to Changes from Proposal,44Sec.Reg.&L.Rep.(BNA)1359(July16,2012). 75)同上。 76)Sec.Exch.ActRel.No.34–67091,77Fed.Reg.33498 (SECMay31,2012).以下、こ の 文献 を「証券取引所法通牒第 67091 号」と し て 引用 す る こ と と す る。ま た、価格 制限の詳細については以下を参照。PlanToAddressExtraordinaryMarketVolatility SubmittedtotheSecuritiesandExchangeCommissionPursuanttoRule608of RegulationNMSUndertheSecuritiesExchangeActof1934(Sec.Exch.ActRel.No. 34–67091,77Fed.Reg.at33511,ExhibitA).以下、この文献を “Plan” として引用するこ ととする。 77)Sec.Exch.ActRel.No.34–67090,77Fed.Reg.33531,33532 (SECMay31,2012).以下、 この文献を「証券取引所法通牒第 67090 号」として引用する。 78)証券取引所法通牒第 67091 号・前掲注(76)33500 頁。参考価格 は、Plan5 条(A)項 (1)号によれば、原則として、当該 NMS 株式に係る適格報告取引(eligiblereported transaction)価格の直近 5 分間の平均値である。そして、価格制限の基準となる価格帯は、 当該参考価格に一定計数(例:S&P500Indexに組み込まれている株式で、且つ、参考
価格が 3 ドルを超える場合には、5%)を乗じたものを基準に上限と下限を算出する。 79)証券取引所法通牒第 67091 号・前掲注(76)33500 頁。 80)同上。 81)同上。 82)同上。 83)同上。 84)これは、2013 年 2 月 4 日から実施される 1 年間のパイロット・プログラムである。SEC, SEC Approves Proposals to Address Extraordinary Volatility in Individual Stocks and Broader Stock Market, http://www.sec.gov/news/press/2012/2012-107.htm(最終閲覧日:2013 年 12 月 19 日)。 85)証券取引所法通牒第 67090 号・前掲注(77)33531 頁。 86)同上 33532 頁。 87)同上。 88)同上。 89)同上。 90)TechnicalCommitteeoftheInternationalOrganizationofSecuritiesCommissions (IOSCO),Regulatory Issues Raised by the Impact of Technological Changes on Market Integrity and Efficiency,ConsultationReport,CR02/11(July2011).なお、この市中協議書の内容に ついて、既に邦語による紹介がある。以下を参照。清水葉子「証券市場のテクノロジー と規制に関する IOSCO の報告について」証研レポート 1667 号(2011 年)34 頁。 91)IOSCO 報告書・前掲注(2)参照。 92)同上 22 頁。 93)同上。 94)同上23 頁。 95)同上。一般にアルゴリズム取引は、取引執行に係る時期、価格、取引量及び取引地など を決定するツールとして位置付けられ、主に価格への影響を最小化する目的や証券市場 の環境変化に伴う大型ポートフォリオを調整する目的で使用される(IOSCO 報告書・前 掲注(2)22 頁)。 96)IOSCO 報告書・前掲注(2)23 頁。 97)同上。 98)同上。