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自立して説明的文章を読むことに資する読解方略指導に関する研究

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(1)

2015年

兵庫教育大学大学院学位論文

自立して説明的文章を読むことに資する読解方略指導に関する研究

教育内容・方法開発専攻

文化表現系教育コース

言語系教育分野

(国

)

M14167G

(2)

序章

1節

「自立した読者」の育成を目指す二つの研究の流れ

1項

「筆者に対峙し新しく自分の考えを構築していく主体的な読者」として捉えた研究の流れ

(1)1970年

代以降の説明的文章指導研究の成果 (21 PISA調 査で示 された課題 第

2項

「学習の中から読解方略を習得し、他の場面で活用できる読者」として捉えた研究の流れ

(1)読

解方略の定義 121 方略指導に着 日した研究 第

2節

先 行 研 究 の課 題 及 び本 研 究 の 目的 と方 法 第

1項

先行研究の課題 第

2項

本研究の 目的

1章

読解方略を特定する基軸となる枠組みの設定

1節

言語学や心理学に見られる言語理解過程モデル

1項

表層のテクス ト形式・ 命題的テ クス トベース・ 状況モデル 第

2項 Levelt a990の

言語 の理解 と生成 における語彙仮説モデル 第

3項

ワーキ ングメモ リ理論 第

4項

難波

0000の

言語活動 の心 内プロセスモデル

OMD

(1)言

語認知空間

(2)メ

タ認知空間 第

2節

言 語 理解 過 程 の設定 第

1項

言語理解過程モデルの比較検討 第

2項

読解方略 を特定す る枠組みの設定

■ 1 ● 1 01 。・ ・3 ・ ・

05

8

0・ 8

08

008

0 09

011 ・17 ・17 ・18

(3)

第2章

小学校説明的文章教材の学習の手引きに見られる読解方略の現状と課題分析

第 1節

読解方略の抽出方法

1項

読解方略の抽 出方法

(1)設

間の方略化に関する問題 (21 表現に関する問題 (31 話す こと 。聞くこと 。書 くこと 。読む ことに関する問題 第

2項

抽 出 した読解方略の分類方法 第

2節

学 習 の手 引 きか ら抽 出 した読解 方 略 の位 置 づ け 第

1項

読解前 に位置づけ られ る方略の数 とその割合 の分析 第

2項

読解 中に位置づけ られ る方略の数 とその割合 の分析 第

3項

読解後 に位置づけ られ る方略の数 とそ の割合 の分析 第

3節

学 習 の手 引 き にお け る読 解 方 略 の現 状 と課 題 第

3章

読 解 過 程 に依 拠 した 方 略 一 覧 表 の 作 成 第

1節

補足方 略 の検 討 第

2節

読解 方 略一覧 第

1項

読解方略一覧の構成 に

)読

解前・読解中・読解後に分類される読解方略の構成

12)読

解中の言語理解過程に分類される読解方略の構成 第

2項

読解方略す覧活用の展望

終章

引用参考文献―覧

謝辞

020

20

020

・21 ・ 22

022

023

・ 36

043

45

045

046

046

0 049

50

(4)

序 章

これ までの 「自立 した読者」 の育成 を 目指 した説明的文章指導 に関わる先行研 究 を概観 す る と、大 き く分 けて二つ の捉 え方で研究が進め られている ことが分か る。一つは 「自立 した読者」 を 「筆者 に対峙 し新 しく自分の考 えを構築 して い く主体 的な読者」 として捉 え た研究である。 もう一つは 「自立 した読者」 を 「学習 の中か ら読解方略 を習得 し、他の場 面 で も活用 できる読者」 として捉 えた研究で ある。 前者 は 1970年 代か ら、後者は 1980年 代 か ら研 究が積み重ね られ 、それぞれ の課題 も明 らか にな って きて いる。 論者 は、「自立 した読者」を 「読解方略 を習得 。活用 しなが ら、筆者 に対峙 し新 しく自 分 の考 え を構築 して い く主体 的な読者」 と複合的に捉 え直す ことで、それぞれ の研究成果 を生か し、それぞれの課題 を補完す る ことが期待できるため、 さらに効果的な説明的文章 指 導が可能 になる と考 える。序章では、 この二つ の研 究の流れや課題 につ いて言及 し、本 論 の 目的 を示す。 第

1節

「 自立 した 読 者 」 の 育 成 を 目指 す 二 つ の 研 究 の 流 れ 第

1項

「筆者に対峙し新しく自分の考えを構築していく主体的な読者Jと して捉えた研究の流れ

(1)1970年

代以降の説 明的文章指導研究の成果 説明的文章指導 に関す る研 究は、1960年 代 ごろか ら本格的 に取 り組 まれ るよ うにな った。 しか し、内容 を捉 えることに重点 を置 くべ きか、形式的な事柄 を捉 える ことに重点 を置 くべ きか とい う議論が続 いてきた。内容 に注視 して しま うことで、言語運用能力を身に付 けると い う目標 が薄れて しま うのではな いか という懸念や 、文章構成のあ り方 を形式的 に学ぶだ けでは学習者 の興 味を誘 うことにな らな い とい う指摘な どが見 られた1。

1970年

代 に入 ると、説明的文 章 を読む際の焦点 を 「筆者 の意 図」 に当て る ことで、文の 内容や形式 を統合 的 に捉 えよ うとす る提案がな され るよ うになった。 倉澤栄 吉(1971)は「文章 を読む ということは、そ こにおかれて いる意味を理解す るにとど ま らず、それ を身につけ、行動 し

:主

体 的 に判断 し批判す るのである2。 」 と し、「筆者想定 法」を提案 した。意 味の読み取 りに重点 を置 くのではな く、文章 を表 した筆者 の意 図を読み 取 る ことに主眼が置かれ るべ きで ある とした と ころが、新たな着眼点 と言 える。筆者 の意 図 に 目を向ける ことによって、文章で扱われて いる内容や論理構造 な どに 目を向ける必 然性 が生 まれ るよ うにな るので ある。 また、西郷竹彦(1985)は説 明的文章学習で筆者 の「認識 の方法」と「表現 の方法」を学ぶ 必要が ある ことを主張 した

3.説

明的文 章の中で筆者が どのよ うに事柄 を認識 し、表現 して い るかを読み取 る ことが重要であるとしている。また、西郷(1985)は以下 のよ うに も述べて いる3. た とえ短 くて も、た とえた どた どしくて ももの ごとの本質・価値 をズバ リと らえて表 現 して いるな らば、私 はそれ は高 く評価 され るべ きだ と思 う。どんな に器用 に うま くく わ しく書 いてあって もサ ッパ リその もの ごとの本質・価値 を とらえて表現 して いない文 章で あった としたな らば、それ はむ しろ低 く評価 されな けれ ばな らな い。

(5)

この ことは、倉澤(1971)が言 ったよ うに、筆者 の ものの認識の仕方 0思 考 の仕方・表現 の 仕方 を学ぶ とともに、読者 としてそれ らを吟味・評価す る立場 を築 くとい う点では近 い考 え と言えよ う。 筆者 の認識 の仕方や思考 の仕方 、表現 の仕方 な どに 目を向ける ことの重要性が指摘 され 始 める と、実 際の学習場面で は、どのよ うな段階 を踏 んで学習が進 め られ るべ きかが検討 さ れ るよ うにな った。 大西忠治(1981)は、三読法(通読・精読 。味読)に対応 させて 「構造読み」「要約読み」「要 旨読み」の三段階で説明的文章学習 の過程 を展 開す る ことを提案 した4。 味読 に当た る 「要 旨読み」にお いて、「筆者 の意 図を把握理解 し、それ について、読み手が 自分の判断を持ち、 ある場合、それ を文章 に対置 してみ る」として、筆者 の意 図を想定す る段階を設 けて いる。 また、阿部昇(1996)は、大西 の三段階の読みを継承 しつつ 「構造読み」「論理読み」「吟味読 み」 を提唱 した5。 「吟味読み」の中で、「そ こまでの『読み』にもとづ いて、文章そのもの につ いての評価・ 書 き直 しも『書 き』の指導 としてお こな ってい く」とし、筆者の意図を超 えて新たな読者 自身の思考 を作 り上げるところまで 目指 して こそ 、主体的な読みが可能 に な る と主張 した。 森 田信義 (1980は 、説明的文章では 「内容 ◆ことが ら」「表現」「論理」を読む必要が ある とし、読む という行為 を三層構造 として捉え、第一層 を「内容、ことが らを理解す る ことを 主 とす る」とし、第二層 を「表現や論理構造 の把握 を主 とす る」とし、第二層 を「筆者の立 場 を追究す る ことを主 とす る」 と主張 した6。 森 田(1989)は、第一層 と第二層 にあたる読み を「確認読み」と呼び、第三層 にあたる読みを 「評価読み」と呼び、よ り「評価読み」を重 視す るよ う主張 した7。 森 田(2011)は、その ことにつ いて以下のよ うに述べて いる8。 実際 には、「確認読み」 と 「評価読み」 は、絡 み合 うよ うな関係 にあ り、完全 に 「確 認読み」 を切 り離 した形で の 「評価読み」 を 目指す ことは ほ とん どな い。 したが って、 「確認読み」との違 いを明 らかにす るためには、狭義 の 「評価読み」を用 い、実 の場原 理での読みを表す用語 としては、「確認読み」 を含みつつ、吟味・ 評価 をす るもの とし て、広義 の 「評価読み」を用 いる ことが分か りやす い。 一見す ると、大西や阿部のよ うに、事柄や論理 を読む活動 と筆者の意 図を読む活動 を分 け て取 り組むよ うに捉 え られがちであるが、「筆者 の工夫」 という観点で文章を追究す る こと によ り、「ことが ら 。内容」「表現」「論理」とい う三つの観点で「確認読み」と「評価読み」 を並行 して行 うことを森 田 0011)は 想定 している。 上記のよ うに、筆者の意図を捉えて吟味 0評価 するという観点が確立 されて いくと、さ ら に具体的な視点が提案 され るよ うになって いった。 森 田 (1990は 、説 明的文章 の学習指導では、能 力の種類 (能力の「範 囲scope」

)は

、原則 的 に各学年 同一で あ り、その機能 の仕方 は教材 の難易度 によって異な る(「系統性 sequence」 ) と考 えるのが妥 当であるとし、「文章全体 の論理構造 をとらえ、吟味 ◆評価す ること」「文章 を構成す る部分及び部分相互の関係 をとらえ、吟味・ 評価す ること」の二点 を示 した9。 た、井上 0007)は 、「批評的な読みのチェック リス ト」として、「語 の用法は明確であるか」 「証拠 となる資料 。事例は十分 に整っているか」「論の進め方は正 しいか」な どの視点を示

(6)

して いる10。 古 くは、児童言語研究会 にお いて林進治 (1975)から「問題 の とりあげ方 の適否 を考 える」「仮説 の立て方、追究 の経路順序 な どが適 当であるか」な どの視点が提案 されH、 小松善之助(1976)からは 「コ トバ の概念 内容 を吟味す る」「判断の条件 を吟味す る」な ども 提案 されて いる12.認知心理学 の分野か らは、楠見孝(1996)が批判的思考者が もつ六つ の傾 向性 (態度

)を

示 した13ほか、道 田泰 司

2000が

、批判的読みの過程 を問題解決の流れ と捉 え、各過程での具体的思考 の例 を示 した14。

(2)P:SA調

査で示 された課題 現在 の説 明的文章指導 にお ける筆者 の意 図を吟味 。評価す る読 み を重視す る潮流 に、大 き な影 響 を与 えたのがPISA調査(生徒 の学習到達度調査)で ある。2003年 7月 OECD(経 済協 力 開発機構)が 実施 したPISA調査 にお いて、 日本 の子供たちの 「読解 力」がOECD平均程度 ま で低下 して いることが大きな課題 とされた。特 に、「読解 の行為 プ ロセス」 として示 された 「情報の取 り出 し」「テキス トの解釈」「熟考 。評価」の うち、「テキス トの解釈」と「熟考 。 評価 」 に課題が ある と指摘 され た。 これ によ り、文部科学省では「各学校で求め られ る改善の具体 的な方向

-3つ

の重点 目標 ― 」 と し、「テキス トの解釈」 と 「熟考 0評価 」 につ いての具体 的な 目標 を以下 のよ うに示 した15。 【目標 1】 テキス トを理解・ 評価 しなが ら読む力を高める取組 の充実 読 む 力 を高め るため には、テキス トを肯定 的 に と らえて理解 す る(「情報 の取 り出 し」)だ けでな く、テキス トの内容や筆者の意 図な どを「解釈」す る ことが必要で ある。 さ らに、そ のテキス トにつ いて、内容、形式や表現、信頼性や客観性、引用や数値 の正 確性、論理的な思考 の確か さな どを「理解 。評価 」した り、自分 の知識や経験 と関連づ けて建設的 に批判 した りす るよ うな読み(ク リテ ィカル 0リ ァデ ィ ング)を充実す る こ とが必要である。(後略) この文部科学省が示 した 目標 は、先述 した 1970年 代か らの国語科教育研究 において提案 された ことと共通す る部分が多 く、筆者 の意図を吟味 。評価す る力 こそ、これか らのグロー バル社会 の中で求め られて いる力であるということが再認識 された と言 える。 第

2項

「学習の中から読解方略を習得し、他の場面で活用できる読者Jと して捉えた研究の流れ

")読

解方略の定義

.

方略研 究 は、心理学や認知科学分野で盛 んに行われ るよ うにな り、そ の影響 を受 け国語 科教育分野で も取 り入れ られ るよ うにな って きた。 もともと方 略 もtrategylと い う概念 は、特定 の軍事 目的のための行動構成 を示す もので、 「戦略」 という訳 もされてきた。 これ まで各分野の学習指導研究 を見 る と、方略 と近 い言葉でスキリレが扱われてきた。 Doleら (1991)は、方略概念 につ いて 「意 図性」 「認知的洗練性」 「柔軟性」 「意識性」の 四つ の観点か らスキル概念 との違 いを示 している。 「意 図性」 にお いては 「方略は読み手 の制御 の下で意 図的な計画 を強調す るもの」 とし、 「認知的洗練性」 においては 「方略は 推論や批判的能 力を使 うもの」 と し、 「柔 軟性」 にお いては 「テ クス トや 目的 に合わせて

(7)

修正す るもの」 とし、 「意識性」 にお いては 「メタ認知的な意識性 を必ず伴 うもの」 とし て方略概念 とスキル との差別化 を図っている16 (21 方略指導 に着 目した研究 心理学の分野 における読解方略指導 に関す る研究は、1980年代 には、特定 の方略の効果 に焦点を当てた ものが多 く見 られ、1990年代 に入 り複数 の読解方略 につ いて の構造分析が 行 われ るよ うにな った。 犬飼美輪

000"は

、先行研究で扱われていた読解方略 を因子分析 にかけ、三つの因子 と 七つ の下位カテゴ リか らなる読解方略構造 をまとめた。上位カテ ゴ リである三 因子 には、 「部分理解方略」 「内容理解方略」 「理解深化方略」があ り、理解の深 さによって分け ら れて いる。最 も表面的な因子である 「部分理解方略」 因子 の下位 カテゴ リには、 「意味明 確化方略」 と「コン トロール方略」が ある。表象構築 に関わ る 「内容理解方略」 因子 に は、下位カテゴ リとして 「要点把握方略」 と 「記憶方略」、 「モニ タ リング方略」があ る。文章 に明示化 されていないところに注意 を向ける 「理解深化方略」 には、下位カテゴ リとして 「構造注 目方略」 と「既有知識活用方略」が ある17。

` 畠岡優 ら 0013)は 、手順 を説 明す る手続 き的説 明文 の読解方略 の使用 と大学生の特性 と の関係 を検討 した。多 くの方略を収集す るために、難易度 の低 い文章 と難易度の高い文章 を読 ませ、 どのよ うな点 に注意 して説明文 を読んだか箇条書きで回答 させた ものを因子分 析 にかけ、手続 き的説明文読解 における 「図表 の活用」 「意 味明確化」 「標識の活用」 「メタ認知的な活動」 「既有知識活用」の五つのカテゴ リを明 らか にした18。 これ ら心理学 における研究成果 につ いて、間瀬茂夫(2013)は、 「具体的な文章の意味内 容 と理解方略の関係 に研究 の関心が向か う国語科教育研究 に欠 けた視点 を補 って くれ る」 として いる19。 これ らの研究成果は、読解 における理解 の階層 を明 らかに した ことと、説 明的文章 に活用 され る図表 の読み取 りにつ いての方略 をカテ ゴ リ化 した ことにある。 国語教育分野 にお ける読解方 略研究は、山元隆春(1994、 2004、 201鋤 が、 アメ リカの読 解方略研究 の成果 として、方略 の分類や学習条件 の検討 を報告 した ことを皮切 りに注 目さ れ るよ うにな った20、 21、 22。 山元 (1990は 、Langer(1982)やParis,Wasik&Turnur(1991)が 読解 前 。読解 中・ 読解後 に見 られ る読解方略 の整理結果 を紹介 して いる。 さ らに、Beach

&Appleman(1980が

行 った説明的なテ クス トと文学的なテ クス トそれぞれ の構造 に則 した 方 略の検 討 を紹介 し、 「国語教育研究の中で読む ことの教育 のための基礎 となる読み『方 略』のモデル を構築す る上では、 このよ うなテクス トに基礎 を置 いたモデル のあ り方 を探 って い く必要があるだろう」 と述べている23。 佐藤佐敏 0009)は 、 「読みの方 略 には、多種多様な ものが ある。そ の分類だけで も一つ の研究 となるが、筆者は研究 の 目的か ら四つ に整理 した」 とし、 「誰 もが無意識の うちに 行 って いる原理 的な方略」 「動作 を伴 う方略」 「スキル として の方 略」 「思考技能 にかか わ る方略」のカテゴリに分 けている。その中で も 「思考技能 にかかわる方略」 に分類 され る 「『 もし○○な らば・ 。・ 』 と仮定 して読む」 という方略 に着 目し、学習場面において どのよ うな条件で方略が転移 され るかを検討 している24。 古賀洋一(2013)は、読解方略の構成要素である宣言的知識、手続 き的知識、条件的知識 の うちの条件的知識 に着 目し、先行研究か ら「比較構造 を見つ ける方略」 と 「二部構成 を

(8)

読 み取 る方略」 の条件的知識が学習 され る経過 を分析 した25。 間瀬

0010は

、読解方略 を含 む これ までの理解方略指導研究 を概観 し、以下 のよ うに述 べて いる26。 国語科教 育研 究 にお ける理解 方略指導 の研 究 は、学習 の文脈 の 中で の読み深めの行 動全般 を方 略的な行 動 として と らえ、そ の学習過程 を明 らか にす る方 向で進 め られて いた。この ことは研究 の発展 ととらえ られ る一方、理解方略の明示化 とい う点では課題 ともな る。理解方略の使用 を具体化す る言語活動の開発 を行 う一方で、理解方略を特定 す る研究 も重要で ある。そ の際、学習者 の認知過程や文章 の意 味構造が反映 したもの と して と らえる必要が ある。 この ことは、 これ まで の多 くの読解方略指導 に関す る研究が特定 の方略の学習条件 に つ いて検討 した もので しかなかった ことや、読解方略が読者の言語理解過程 とどのよ うに 関わ って いるか につ いて触れ られて いない ことな どを示 して いる。 また、犬塚(2013)は、_「批判 的読解 の方略 としては、心理学領域 の研究で体 系的な提案 は いまだな いよ うで ある。」 と指摘 している27。 第

2節

先行 研 究 の課 題 と本 研 究 の 目的 第

1項

先行研究の課題 「筆者に対峙し新 しく自分の考えを構築 していく主体的な読者」として捉えた研究で は、説明的文章学習において筆者の意図を吟味・ 評価する理論的実践的検証が進んできて いる。 しかし、それ らの研究では、学習者に筆者の意図を吟味・ 評価す る課題を与えて、 説明的文章を読ませる経験はさせているものの、学習者が 自発的に他の場面で活用できる か どうかという想定がされていないということが課題 として指摘できる。その原因として は、筆者の意図を吟味・ 評価する具体的な視点について、学習者 自身が 「意図的」「意識 的」に学習するような展開が設定 されていないことが挙げ られる。つまり、方略的な学習 のされ方が必要なのである。

′ 一方、「学習の中か ら読解方略を習得 し、他の場面で活用できる読者」 として捉えた研 究では、犬塚 0013)が 指摘 しているように、筆者の意図を吟味・評価する方略についての 研究が少ないという課題がある。佐藤 0009)や 古賀(2013)のような説明的文章の論理構造 を読み取る方略や仮定を使用する方略などの学習場面での転用分析は見 られるものの、筆 者の意図を吟味0評価する方略の転用を分析する研究は未だ見 られない。また、読解方略 の全容が明 らかにされていないという課題 も指摘 されている。「柔軟性」という要素が、 読解方略の多様なあ り方を可能にするため、特定する作業を難 しくさせている。ある場面 では方略が統合 して使われた り、ある場面では方略が分離 して使われた り、ある方略につ いては読者の能力によっては必要であった り、反対 に自動化 されているため必要 としなか った りするのである。従 って、「柔軟性」のある読解方略の全容をある程度特定するため には、間瀬(201助 が言 うように、例えば読者の言語理解過程 という枠組みを設け、その枠 組みの中で存在 しうる読解方略 という基準で、特定 していくことが必要になる。

(9)

2項

本 研 究 の 目的 第

1項

で示 した課題は、「筆者の意 図を吟味・ 評価す る読解方略指導の必要性」 とい う点 で共通す る。つ ま り、複合的に捉えた 「自立 した読者」の育成 を目指す には、「筆者 の意 図 を吟味 。評価す る読解方略」と他の方略 との関係 を読者の言語理解過程 という枠組みに位置 づ け、読解方略の全容 をある程度特定する必要がある。この ことか ら、本研究 の 目的を「筆 者 の意 図を吟味 。評価す る読解方 略 と他 の方 略 を読者 の言語理解過程 とい う枠 組 みで位置 づ けた読解方略一覧の作成」 と設定 した。そのため、以下 の三点 について論究 した。 第

1章

読解方略 を特定す る基軸 とな る言語理解過程 を設定 第

2章

小学校説明的文章教材の学習の手 引きに見 られ る読解方略の現状 と課題分析 第

3章

.吟 味 。評価す ることを含む、読解方略一覧 を作成 認知科学 の発展 と共 に、心理学や言語学 の分野では、言語理解過程 に関す る研究が進め ら れて きた。推論研 究や ワーキ ングメモ リ、心理言語学、テクス ト言語学な ど、文字 を 目に し た瞬間か ら、理解 に至 るまでの過程 についてのモデルが示 された研究 を分析 し、読解方略 を 位置づ ける ことが可能な枠組 みを第

1章

で設定 した。 そ して、そ の枠組みを使い、第

2章

では、小学校説明的文章教材 の学習の手 引きに見 られ る読解方略の現状 と課題 を明 らかにした。小学校期 の児童は、文字 を学ぶ段 階か ら、文章 を 理解 し、自分の考 えを表 出す る段階に至るまで発達段階が多岐に渡る。小学校期 の多様な発 達過程 に焦点 を当て る ことで、読解 を支える多様な方略 を抽 出す る ことが期待 できる。第1 節で、森 田(1998)が指摘 した「説 明的文章 の学習指導で は、能 力の種類(能力の「範 囲scope」) は、原則的に各学年 同一であ り、その機能 の仕方は教材の難易度 によって異なる」と主張 し た ことか らも、小学校期 の多様な方略を明 らか にす る ことで、中学校以降の学習に も転用 さ れて い くと想定 され る。 第

3章

では、学習 の手 引きか らは抽 出されなか った読解方略を先行研究で示 された もの か ら補充 して、読解方略一覧 を作成 した。学習 の手 引きや一部の先行研究か ら抽 出 した方略、 論者が補足的 に作成 した方略 の一覧表であるので、まだ まだサ ンプル としては少な いが、語 の理解か ら吟味 。評価す るまでの全容 を示す枠組み としては、意義あるもの と考 える。 注

1井

上 尚美 0007)『 思考 力育成への方略― メタ認知・ 自己学習 。言語論理―』明治 図書、 pp.34-45 井 上尚美 は、 これ まで国語科 にお いて問題 とな って いる内容主義 と形式主 義 の論 争 につ いて ま とめて いる。筆者 は井上が挙 げた主な論争 を右 の表 にま とめた。 このような長年の論争 に対 し、井上は 「内容 の深 い読み とりも、言語要素につ いての 正確な知識や、読み方 についての技術(スキル)を身 に付 ける ことによってのみ期待 で きるのである し、逆 に形式面を追究 して いけば、 どうして も内容が問題 とな らぎるを えな い。(中略)筆 者 は、形式 と内容 とを統合す るもの(あるいは両者 の接点)と して、 言語作品の上 に表れて いる『表現』そ の ものの分析 を中心 問題 として据 えるべ きだ と 考 えて いる。」 と述べて いる。

2

倉澤栄吉(1971)「第 Ⅲ部 国語教育 と創造性」『 これ か らの読解読書指導』国土社 、p.152

(10)

3

西郷竹彦 (1985)「説 明文指導 の 目的 と方法」『説 明文 の授業 理論 と方法』明治 図書、 p.29

4

大西忠治(1981)『説 明的文章の読み方 の指導』明治 図書、pp.148-150

5

阿部昇(1996)『授業づ く りのための 「説明的文章教材」 の徹底批判』明治 図書 pp.24-25

6

森 田信義(1980『 認識主体 を育てる説明的文章の指導』漢水社、pp.12-13

7

森 田信義(1989)『「筆者 の工夫 を評価す る説 明的文章の指導』明治 図書、p.49

8

森 田信義(2011)『「評価読み」 による説明的文章の教育』漢水社、p.32

9

森 田信義(1998)『説明的文章教育 の 目標 と内容―何 を、なぜ教 えるのか』漢水社、p.60 ′

101に

同 じ pp.93-94

11林

進治(1975)『説明文・ 読みの理論 と実践―初級―』一光社、pp.32-33

12小

松善之助(1970『国語 の授業組織論』一光社 、p.37

13楠

見 孝(1996)「帰納 的推論 と批判的思考」市川伸一編 『認知心理学

4

思考』東京大 学 出版会、

pp.37-60

14道

田泰 司(2008)「メタ認知 の働 きで批判的思考が深 まる」『現代 のエスプ リ』至文堂、第 497号、

pp.59-67

15文

部科学省(2005)『読解 力向上 プログラム』

16 Dole,」.A, Duffy,00, Roehler,L.R &Pearson,P.D。 (1991)Moting from the old to the new : Research on reading comprehension instruction. Re/ノ θ″θノθduθ′′ノθ″′ノ

rθ sθ″魏

61,p.22

間瀬茂夫 {201鋤 「理解方略指導研究」『国語科教育学研究 の成果 と 展望 Ⅱ』学芸 図書 、pp.23卜 240か ら要約 して述べた。

17犬

塚美輪(2002)「説明文 にお ける読解方略の構造」『教育心理学研究』50、 pp。 152-162

18畠

岡優・ 中條和光 0013)「 手続 き的説 明文 の読解方略の使用 と作動記憶 の関係」『 日本教 育工学会論文誌』36に)、 pp.339-350

19間

瀬茂夫 (2013)「理解方略指導研究」『国語科教育学研究 の成果 と展望 Ⅱ』学芸 図書、 p.238

20山

元 隆春(1994)「読 みの『方略』に関す る基礎論 の検 討」『広島大学学校教育学部紀要』 第

I部

第 16巻、pp.29-40

21山

元 隆春 0004)「『 自立 した読者』を育て る足場づ く リ ー米 国にお ける理解方略指導論 を 手がか りとして」『学校教育実践学研究 』第 10巻、pp.219-228

22山

元 隆春(2013)「米 国にお ける理科方 略指導 の具体 的展 開 ―

Hervey&Goud宙 s編

『解 釈 の道具箱』にお ける「意 味 を推論す る」授業 の場合 ―」『国語教育学』

4号

、pp.47-63

2318に

同 じ

24佐

藤佐敏0009)「読みの方略が転移する可能性 ―作品を解釈する仮定スキルが他の読み の場面で活用 される条件 ―」『国語科教育』第65集、pp.59-66

25古

賀洋

-0010「

説明的文章の読解方略指導論の検討」『広島大学大学院教育学研究科紀 要』第二部、第62号、pp.161-170

2619に

同じ

27犬

塚美輪(2013)「読解方略の指導」『教育心理学年報』第52集、pp。 162-172

(11)

1章

読解方略を特定する基軸 となる枠組みの設定

本 章では、読解方 略の全容 を特定す る上で枠組み とな る言語理解過程モデル の検討 を行 う。 間瀬(2013)が指摘 したよ うに、読解方略の全容 を特定す る上で、学習者 の認知過程や 文章 の意 味構造 を反映 させ る必要がある1。 そ こで、言語学や心理学 の分野で示 されている い くつかの言語理解過程モデルを比較 し、方略を特定 しやす い枠組み として設定す る。 1990年代 の認知心理学研究 の隆盛 を受 け、言語学 の分野で は言語理解 。産 出過程 に関す るモデルが提案 され るよ うになった。 これ らの研究 の成果 を援用す るため、 まず、第1節 で は、先行研究 に見 られる言語理解過程モデル を示す。そ して、第

2節

では、 これ らのモ デル を比較検 討 し、読解方略の特定 の基準 とな る枠組み を示す。 第

1節

言語 学や心理 学 に見 られ る言語理解 過程 モデル 第

1項

表層のテクス ト形式・命題的テクス トベース・状況モデル 心理学者 のvan Dilk&Kintsch(1983)は 、言語理解 につ いて の研究 において、言語的な段階、概念的な段 階、全体表象的な段階 とい う三つ の段階 を区別す る必 要が ある ことを主張 した2。 これ を受 けFletcher(1990は、三つの段階 を表層の テ クス ト形式・ 命題的テクス トベース・ 状況モデル と して、図1のよ うに例示 した。 また、甲田(2009)は、 Fletcher(1994)の 図を使 い、 「a.そのカエルはその虫 を食べた。」 「b.その虫はそ のカエル に食べ られ た。 」 とい う例文 を使 って説明 した。表層のテクス ト 形式 の段 階では、a.もb。 も理解 の仕方 は異なるが、命 題 的テクス トベースや状況 モデル の段 階 にお いては、 同 じにな る と主張 した。 また、表層 のテ クス ト形式 は、す ぐに記憶か ら消えるとした3。 第

2項 Levelt{1990の

「言語の理解 と生成 における語彙仮説モデル」 管見 の限 りでは、近年 の心理言語学分野 の研 究 において、Levelt(199助 が示 した 「言語 の理 解 と生成 にお ける語彙仮説モデル」が多 く援用 されて いる (図2)4。 このモデルは、音声言語の 理解 と産 出を想定 し、言語理解 の過程(図の右半 分)と言語産 出の過程(図の左半分)を示 して い る。 中で も、本研究で焦点 を当てて いる言語理解 過程(図の右半分)は、大き く三つのセ クション に分かれて いる。次頁の図3に言語理解 の過程 の み抽 出 し、読解過程での処理の具体例 として、 図1 理解過程における表層階層(F!etcher,19941 ACOUSTIC― PHONETIC PROCESSOR 図2 言語の理解と生成 における語彙仮説モデル

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(12)

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n grammatical decoding I CONCEPTUALiZER discourse ― :nferred processing intention 晦 ︲ 略 “ ︱ い “ l ate ■ ︱ 健 ■   ャ “ ︱ ト 18 Te● “ s3 ogent′´垣 ユ {C st_.:J・ r襲│

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図3 言語の理解 と生成 における語彙仮説モデル (論者修正)

先述 したFletcher(1994)の 「表層 のテクス ト形式(surface forml・ 命題 的テクス トベース

(text base)。 状況モデル(situation model)」 と論者 の補足 をまとめた ものを示す 。

まず、図3の左 にあるspeech(音声言語)が 、一つ 目のセ クシ ョンの 「ACOUSTIC PHONETEC PROCESSOR(音 響・ 音声処理装置)」 に音声信号 として入 力され ると、音声表象 に変換 され る。音声表象は、視覚的に捉え られない短期記憶 として保存 され るものではあ るが 、 ここでは音声表象 を説明す るために、 「δЭ 『 Эg 61t Oo b'Ag」 とい う発音記号で視覚 化 して示 した。そ して、音 声表象が二つ 目のセ クシ ョンの 「PARSER(文解析装置)」 に送

られ ると、 「phonological decoding and lexical selection(音 韻化 。語彙選択)」 と

「gralllllat ical decoding(文 法符号化

)Jの

処理 が行われ る。 「phonological decoding&

lexical selection(音 韻化・ 語彙選択)」 では、 「δЭ fr'Эg 6ん Oo blAg」 の音韻情報 を受 け

て 「LEXICON(心 的辞書)」 で 「。It→eight?ate?」 のよ うに検索が掛 け られ、

「grallllllat iCal decoding(文法符号化)」 で文法上最適な言語情報が選ばれ、 「The frog

ate the bug」 に特定 され る。そ して、最後 のセ クシ ョンである 「CONCEPTUALIZER(概 念化

装置)」 に文法符号化 された情報が送 られ、 「discourse processing(談話産 出)」 によっ て概念化 され、それ を基 に推論が加え られて 「inferred intention(推 意)」 が生成 されて 音 声言語 の認知が成立す る とい う過程 となって いる。 第

3項

ワー キ ング メモ リ理 論 ワー キ ング メ モ リ概 念 の提 案 者 で あ る Baddeley(2000)の 図

4の

モデルでは、容量 配分 のコ ン トロールや 情報処理 のモニタ リ ングに関わ る主要素である「中央実行系」と 「長期記憶」 か らの情報 を基 に多様な処理 を行 う「視覚・空間的スケ ッチパ ッ ド」、「ェ ピソー ドバ ッファー」、「音韻ルー プ」な どの 下位要 素が示 されて いる。「音韻ルー プ」で は、言語情報 の一時的な保持や操作が行 わ れ る。「視覚・空間的スケ ッチパ ッ ド」では、 イ ンプ ッ トされ た情報が言葉ではな く視空 長期記憶 言語

疋 ソード

視覚的意味 図

4

ワーキングメモ リのモデル図lBaddeley,2000}

(13)

間的なイメー ジ として保持 され る。また、「エ ピソー ドバ ッファー」では、「長期記憶 」か ら 引 き出 した様 々な形式 のエ ピソー ド情報 が保持 され るため、言語情報や視空間情報 だけで な く、臭覚や 味覚か ら入力 された情報 も保持 され る と言われて いる5。 Maver(2003,2005)は 、Baddeley 0000のワーキ ングメモ リ理論 を基 に文章読解 の過程 と して 「音声 と絵・文字の情報処理モデル」 を示 した(図 5)6。 Maver 2003,2005)の 「音声 と絵 。文字の情報処理モデル」は、言語的情報処理 と視空間的 情報処理 の二つ の過程 を想定 してお り、Baddeley 0000)の ワーキ ングメモ リ理論 と対応 さ せ て いる。具体的事例で考 えるために、 ここで もFletcher(1990の図 1のモデル を当ては めて、図6に示 した。 湯澤正通 (2010は 、Maver 0003,2005)の 図を基 に 「文章 を読む とき、文字 の配列 は、視 空 間感覚 を通 して順次イ メー ジベース に移行す る。イ メー ジベース に移行 した文字 は、複合化

され 、いったん音韻表象 に変換 され る」 と説明 して いる7。 っ ま り、まず、「The frog ate

the bug.」 とい う感覚記憶 に保持 された文字表象 を「イメー ジベース」に取 り入れ、その後

「音韻ベース」で「Oo rog 61tOo b'Ag」 に変換 され る。ここか らは、先述 した Levelt(1990

の言語理解過程 と同様で、音声表象を資源 として「言語的モデル」の過程で、文法 の符号化 が行 われ、長期記憶 を基 に推論が行われて 「状況モデル」が構築 され る。 構成 構成 図

5

音声と絵 。文字の情報処理モデルmayer,2003,2005) 音韻 ベース

│● fr'og o:t O● b:Ag

イメージベース 乱 雌 品 甚 雌.

ワーキングメモリ

(14)

4項

難 波 曖

000の

言語 活動 の心 内 プ ロセ スモデ ル PM日

難波0008)は、言語認知空間 。言語産 出空間・ メタ認知空間の三つの空間で構成 されてい る「言語活動の心内プロセスモデル eSYCHOLOGICAL PROCESS MODEL OF LANGUAGE ACTIVIT拗 」

(以下 、

PMDを

示 した(図 η8。 本研 究で は、言語理解過程 につ いて述べて いるので、PMLの 言語産 出空間 には触れず、言 語 認知空間 とメタ認知 空間 につ いて言及す る。 難波

0000の

PMLは、先行研究の難波0牧戸(199■ 9で示 され たPMLに、文章全体 のマク ロ構造 を付与す る過程 を加 えた り、メタ認知空 間を簡略化 した りして修正 した ものある。 難波・牧戸 (1997)は、小学

3年

生か ら

6年

生 を対象 に して、「自然のか くし絵」(東京書籍

4年

)を題材 に読解前・ 読解 中 ◆読解後 の

3つ

のテス トを行 い、そ の結果 を主成分分析 に掛 けて導 き出された六つ の要素(「思考構造 形成 力」「結東性形成力」「推論解釈力」「意欲」「コ ー ド解釈力」「既有知識力」)を基 に、言語 認知空 間が構成 されて いる。テクス トをイ ンプッ トす るところか ら、表意や推意 を生成 し、論理的な結合 を経て、文章全体 の 「想」を生み出 す過程が示 されているほか、記憶や メタ認知 との関連 も示 されて いる点で、言語理解過程 の 基本的な流れが把握 しやす いと言 える。 また、各過程は三種類のモー ド(メタ認知 を受 ける言語活動のモー ドI、 自動化す る言語 活 動 のモー ドⅡ、メタ認知 を変容す る言語活動 のモー ドⅢ)によって接続 されて いる。

(1)言

語認知空 間 言語認知 空間は 「テクス ト・ 課題 ,発 話」か らの情報 を受 け、長期記憶か らの情報 と照 ら し合わせなが ら「表意 の生成→推意 の生成→結束性 の生成」とい う読解過程 によ り処理が行 われてい く。長期記憶 は、言語知識 と意味記憶、エ ピソー ド記憶 に分け られて いる。言語知 言語認知空間 〈 I EE71スト l 12● 0 メタ唸知 ( )内的言語活動

建 凶 ―

言籠認知 空 間ヘ メタ認知空 間 「見立てる・言挙げするJ 欲動・憲欲 言語産 出空 間へ ‐ ド!‖Ⅲ共通 ― 掛 lⅢ共通 ロロ・ ■■―ドt ・・・・・ ●●●●● 図7難波(2008)の言語活動の心内プロセスモデル(「PML」) 言語産 出空 間

(15)

エピソード記憶 作業記憶 印 ∽t ¨:10n両∝: 推 意 の 生 成 (C)SutいmOdel 図

8

「表意の生成」と「推意の生成J 識 は「文法や音韻 に関す る知識」を指 し、意 味記憶 は「単語 の意味や概念な どに関す る記憶」 を指 し、エ ピソー ド記憶 は「特定 の場所や時間な どの文脈情報 を含む、個人が過去 に体験 し た 出来事 に関す る記憶」 を指 している。 難波

0000は

、「言語知識」や 「意味記憶」な どを用 いた処理は 「その知識 をもっている 人な ら誰で もほぼ一定 になるだろ う」 とし、「コー ド解釈」 と呼び、エ ピソー ド記憶 を用 い た処理は「人が記憶 の中か ら推論 して選択す る行為」とし「推論解釈」と呼んでいる。そ し て、「表意の生成」はコー ド解釈 と推論解釈の両方で行 い、「推意 の生成」は推論解釈 のみで 行われて いる と説明 して いる。 【表意 の生成】 表意 の生成過程では、図8のω や

C)の

よ うに、意味や文法的役割が分析 され る。例 えば、

図8の表意 の生成 の過程 にお いて点線 のよ うに 「The frog ate the bu3(カ エルは、ハエ

を食べた。)」 とい う情報が入力されると、言語知識か らの文法や音韻 に関連す る情報 によ

って、

(A)表

層 のテクス ト形式(surface formlの よ うに、それぞれ の語 に分 け られた り役

割 が与 え られた りす る。そ して、意 味記憶か らの単語 の意味や概念な どに関す る情報 によっ

て 、

(B)命

題 的テクス トベース(text base)のよ うな表意の生成が行われてい く。難波・牧

戸(1997)では、表意 の生成はコー ド解釈のみで示 されていたが、難波

2000は

推論解釈 も行

われ ると修正 している。仮 に 「The frog」 が先述 されていて 「He ate the bug.」 とい う文

の表意が生成 され る場合、先 に作業記憶 内に保持 されていた 「The frog」 が 「He」 に結び付

け られ る とい う推論解 釈が行われ る ことを意 味 して いる。

【推意 の生成】

推意 の生成 の過程では、図8の C)の よ うな具体的な表象が作 られ る。それ まで に処理 し

て作業記憶 内に保持 されて いた表意 を基 に、推論解 釈 によって様 々な情報が付 け加 え られ

て い く。例文の 「The frog ate the bug.」 で は、生成 された表意 を基 に、エ ピソー ド記憶

か ら関連す る「カエルの様子」や 「カエルが どのよ うに虫を食べ るか」な どの情報が与 え ら れ 、

(C)状

況モデル(situation model)の よ うな推意 の生成が行われ る。難波(2008)は、音 声言語 にお いての推意決定 の要素 を 「既有知識・ 文脈 。場面 。人物像 。ノンバーバル コミュ ニ ケ‐ シ ョン・音調・表現」であるとしたが、文字言語 において 「書 き手の表情な ども見 え

(16)

な い し、文章 には音調 もな い。文章の解釈で推論解釈 とな るのは、文脈 と表現か らの連想 と い うことにな る」 と述べて いる。 さ らに、「文字言語 にお いては、推意 の解釈 においては推 意 を一つ に決定す る ことはで きず、複数 の推意が解釈 の過程で生成 され、(狭義 の)文 脈が進 む につれ ある程度 の絞 り込みはあろうが、新 たな記述 によって再び複数の推意が生 まれ、多 声 的な まま解釈が続 く」と想定 している。つ ま り、後か ら入力 され る情報 によって、次第 に 推意が変化 して い くので ある。 「表意 の生成→推意 の生成 」 の過程 を Baddeley(2000)の モデル に照 らし合 わせ ると、言語認知空間が、ワーキ ング メモ リの「音韻ルー プ」や「視覚・空間 的 ス ケ ッチパ ッ ド」、「エ ピソー ドバ ッ フ ァー」 に対 応 して い る ことが分 か る (図 9)。 「表意の生成」 は、主 に言語知 識 及 び意 味記憶 が駆 動 して行 われ る こ とか ら、「音韻ルー プ」や 「視覚 。空間 的 ス ケ ッチパ ッ ド」 に対 応す る過程 だ と言える。また、推意 の生成は、エ ピソ ― ド記憶が駆動 して推論解釈が行われることか ら、「エピソー ドバ ッファー

]に

対応 してい ると言える。また、「中央実行系」については、メタ認知空間の「メタ認知的モニタリング0 コン トロニル」が対応する。 【結束性の生成(部分的

)(統

合的0全体的)】 この過程では、文間や段落間の論理的なつなが りが作 られる。先述 したような処理が行わ れている間に、次々とテクス トが入力されていく。例えば、次に「So he was full.(だか ら、かれはお腹がいっぱいになった。)」 というテクス トが入力されると、先ほどと同じよ うに(A)→ (B)→ (C)の過程を経る。そ して、推意の生成の過程において、前に保持 されて いた情報 (「The frOg ate the bug.」 の推意

)と

の因果関係が推論され、文 と文 との結束性

の生成が行われる。結束性の生成(部分的)は 、文 と文 との部分的な結束性の生成か ら、段落 と段落の結束性の生成に移行 していく。 表1 結束性の顕在的視点 と潜在的視点 雌 波,2000 名 称 籐 顕在的な視点 結束構造 指示(指示語) 接続 醸 続語) 語彙的な結束構造(語の反復、類義語、先行語の省略) 提題(主題 「∼は」「∼については」「∼ときた ら」など) 叙述(夕系か非夕系かなど) 略題(提題 と省略を合わせたもの) 状況表現(主語の前に来る語) 語用論的結東構造(文脈に影響を受けるもの) 潜在的な視点 結東 性 時間関係 因果 関係 手段―目的関係 類比関係 一般―特殊 関係 例示―ま とめ関係 対 比関係 暗 崚 ル ーカ 略 "レ 空 間的ス "チバットJ 録 1叫 :ス サ 図

9

ワーキングメモ リ概念 と対応 させた読解過程 推意の生成 「エピソード′ヽッファー」

13

(17)

難波(2008)では、読者がテクス トを読む時、この過程 においては顕在的な視点 と潜在的な

視点が ある として いる10。難波

(2008)が示 した顕在 的な視点 と潜在的な視点 を論者が まとめ た ものを表 1に 示 していた。

例 えば、読者 は、テクス トを顕在的な視点 で眺 め、「The frog ate the bug.」 と 「So he

was fuH.」 の間が、「So」 という接続の構造でつなが って いる ことや、「he」 とい う指示 の

構造 も存在す る ことに気付 く。そ の瞬間、この顕在的な結束構造か ら、潜在的な結束性で あ る 「因果関係」 を推論 し、二つの文の結東性 を生み出すのである。 これは、文 と文だけでな く、文 とすでに結束性でつながって いる段落 とも新 たな結束性 を 生成す る。難波

0000で

結束性 を(部分的)と (統合的 。全体的)に分 けたのは、このよ うな文 間や段落間の違 いを分 ける必要があるとい う意 図が働 いた と考 え られ る。 【マクロ構造付与】 この過程では、読者が もっている論理的な知識 をもとに、文章全体 の論理構造 を判断す る。 難波 け

000は

、結束性の生成過程 と同様 に、テクス トのマクロ構造 を顕在的な構造(文章構 成)と潜在的な構造 (思考構造)に分 けている H。 顕在 的なテクス トは、説 明的文章学習場面 で よ く見 られ る「は じめ― 中―終わ り」や「序論一本論―結論」な どの三部構成で捉 える こ とを指 している。一方、潜在的な構造は、読者がテクス トに触れた ときに演繹 的予測 的に捉 え る構造の ことを指 している。構造の具体例は表2に示す。 また、難波 (2000は 「『マ クロ構造付与』は、解釈部門の中で常 に働 いて いる と考 え られ、 さ らにいえば、表意の生成 。推意の生成 。結東性 の生成 。マクロ構造付与のそれぞれは一方 の ものではな く、双方向的 に推移する過程で ある」と想定 して いる12。 この ことを教育出版 の説明的文章教材 1年 「くちば し」(平成23年度版)を例 に示す。 図 10は 、一文 ごとに言語理解過程 の中での思考 の行 き来 を線で示 した もので ある。思考 パ ター ンとしては様 々考 え られ るが、例 としてA、

Bの

二つのパター ンを示 し、説明を加え 表2 説明文のマクロ構造 雌 波,2000 構造 の特性 名 称 構造 の具体例 顕在 的な構造 文章構成 三部構成で捉 える 潜在 的な構造 思考構造 一般―特殊型 前提 ―(譲歩)―自論 型 問題解決型 科学 的な 問題解決型 現実 的な 問題解決型 これは、きつつきの くちばしです。 きつつきは、とがった くちばして、きに あなをあけま丸 図10 双方向的に推移する過程のイメージ図 そして、きの なかに もヽる む睦 たぺます。

(18)

る。通常の想定では、パター ン

Aの

よ うに、題 を読む ところか ら、自分のエ ピソー ド記憶 を 使 って 「くちば し」の情報 を想起す る。そ して、次 の文 を読み、推意 を生成 した ところで、 題 を読 んだ時 に生成 した推意 との結束性 を生成す る過程 を辿 る

c二

文 日以降 も、推意 と結束 性 の生成が繰 り返 されて い く。 一方、パ ター ン

Bの

よ うに、三文 目の 「これは、なんの くちば しで しょう。」 を読んだ と き、「この後、答 えが書 いて あるのではな いか」 というマクロ構造 の付与 を行 う思考パ ター ン も考 え られ る。この場合の思考構造 として小学校

1年

の教材ではあるが、表

2の

「問題解 決型」 の思考構造が選 ばれ る ことも想定で きる。

(2)メ

タ認知空 間 メタ認知空間には、 ワーキ ングメモ リの中央実行 系の役割 を担 うメタ認知 的モニ タ リン グ・ コン トロールが ある(図 H)。 三宮(1995)13による と、メタ認知的モニタ リング とは「認 知 につ いての気付 き 。フィー リング ち予想 0点検・ 評価 な どを行 う活動」であ り、メタ認知 的 コ ン トロール とは 「認知 につ いての 目標 設定 。計画・修正な どを行 う活動」である ことが 示 されて いる。 つ ま り、メタ認知モニタ リング・コン トロールは、言語認知「表意の生成」「推意 の生成」 「結束性 の生成」「マ クロ構造付与」のすべての過程 を監視 0制御 して いると言 え る。 また 難 波 (2000は 、メタ認知モニ タ リング・ コ ン トロール をす る際、以下の六つの種類の意識が 存在 して いる として いる。 一つ 目が、「修辞意識」である。 これは、説明的文章においては、筆者がテクス ト上 に示 した表現 に着 目す る意識の ことである。 二つ 目が、「目的意識」で ある。 これ は、「事例 に注意 して読む」「方法 に注意 して読む」 な どの読解前における方向付 けについての意識である。 三つ 目が、「相手意識」である。説明的文章では筆者意識 に当たる。テクス トに何が書 い て あるかだけではな く、筆者 は何 を考 えどう表現 して いるのか というところを意識す る。ま さに倉澤 (1971)14が主張 した 「筆者想定」の概念が この意識である と言える。 四つ 目が、「自己意識」である。 これは、言語理解処理 を行 って いる自分 自身の意識 に意 識 を向ける とい うもので、捉 え方 は少 し厄介な もので ある。三宮(1995)では、「メタ認知そ の ものを認知の対象 とす る こと、すなわちメタメタ認知 を働かせ る ことが必要である。」 と してお り、さ らに、高次か らの認知 を要求 しているが、言語理解過程 の編成上あま り複雑 に な る と分か りに くくな って しま うので、PMLでは、六つの意識 の一つ としてま とめてあると 推測 できる15。 五つ 目が、「世界意識」である。 これは、読者 自身だけでな く、筆者やそれ以外 の一般 に 言語露知空間ヘ 「■立てる・8攀 ″するJ 歓 働・ 菫 敏 言 語産 出空間 ヘ 図 ‖

PMLの

メタ認知空間 15

(19)

も当てはまる人間の心の動きにつ いての常識 として捉 え られ るものの ことである。「物 を上 か ら落 とせば下 に落ちるし、何 も身につけな い人間は空を飛ぶ ことはできない」というよ う な 当た り前 として認識す る捉 え方 の ことを指 している。説明的文章においては、筆者が扱 う ことが らを意識す ることに当たる。 六つ 目が、「思考意識」である。 これは、 これ まで示 してきたテクス ト解釈の処理その も のをモニ タ リング し、論理の展開を意識す るもので ある。 言語理解過程 にお いて処理 を行 う中で、 これ ら六つ の意識が入 り混 じ りなが らメタ認知 モニタ リング・ コン トロールが行われていくのであるが、必ず処理 の点検・評価 中に前にメ タ認知的モニタ リング した知識 とのずれが生 まれて くる。 この具体的事例 として、『花 を見つ ける手がか り』(平成 23年度版教育 出版

4年

上)にお け る読解過程で説明す る。以下 に教科書の本文 を示す16。 まず、言語理解過程上にテクス ト情報が入力されると、表意の生成、推意の生成、結束性 の生成が順次行われる。その際、メタ認知空間では、メタ認知的モニタリングが行われ、「既 有のメタ認知 との照合」が行われる。 例えば、上の本文の下線部のテクス トを読んだときのことを考える。読者は、それまでの テクス トか ら「もんしろちょうは、む らさきや黄色は好きで、赤は嫌いなのだろう。」 とい う推意を保持 してお りでそれをモニタリングしていると推定できる。このような推意を生む のは、読者が、自分や筆者は色を判断できるため、ちょうもできるという「世界意識」が働 くことや、「ちょうは赤色を判別できない」 というテクス トがないことに対 しての「思考意 識」が働 くか らである。そ こに傍線部のテクス ト情報が入力されて くると新たな推意が生成 され、それをモニタリングしたときに、既有のメタ認知 と照合が行われる。すると「赤は嫌 いなのだろう」という既有のメタ認知 と「赤は見えないらしい」という新たな推意のメタ認 知 との間に 「ずれ」を感 じる。その 「ずれ」の大きさは人によって捉え方が違 うため、「ず れ」が小さいと感 じた読者は「テクス トに書かれてなかったけれ ど、もんしろちょうは赤色 が判別できないのだろう。」と既有のメタ認知を採用 し、納得することになる。一方で、「ず れ」が大きいと感 じた読者は、既有のメタ認知を変容させ、「色によってもん しろちょうの 集ま り方が違 うという事実だけで、もんしろちょうには『赤はみえない』ということが言え るだろうか」や、「ただ、もんしろちょうが、む らさきや黄色は好きな色で、赤は嫌いな色 だという可能性 もあり、もん しろちょうには赤 も見えているかもしれない」という「見立て 。 言挙げ」を行 うのである。 PMLの メタ認知空間は、これまでの国語科教育分野における研究成果を反映させようとし てお り、森田 け011)17の「評価読み」や阿部(1996)18の 「吟味読み」などの筆者の意図を吟 味・評価することにも関係 している。従って、次節では本節で取 り上げた様々な先行研究に 集 ま り方 を色別 に調べてみ ま した。最 も多 く集 まったのがむ らさき、次 に多か ったの が黄色、青に来た ものは少な く、赤 には、ほとん ど来 ませんで した。念 のため、赤 い色 紙 にみつ をつ けた ものを用意 してみ ま したが、 これ にもち ょうは来 ませ んで した。 このような実験か ら、 もん しろち ょうは、色 を手がか りにして花 を見つける ことがわ か りま した。そ して、色 も見分 けることができるよ うで、む らさきや黄色は見つけやす く、赤は見えない らしいのです。

_

体 線 は論者 による)

(20)

お ける言語理解過程モデルや森 田(2011)の 「確認読み」と「評価読み」の概念 も活用 し、読 解 方略 を特定す る基軸 とな る枠組み を設定 した。 第

2節

言 語 理 解 過 程 の 設 定 第

1項

言語理解過程モデルの比較検討 読解方略を特定する枠組みを設定す る上で、その基 となるモデルを図 12に 示 した。 このモデルは、難波(2008)の

PMLを

基本 として、Levelt(1993)や Maver(2003,2005)な ど の先述 したモデルを合わせたものである。また、方略を特定す る枠組みなので、読解前・読 解 中・読解後 に使用するものも想定できるため、大きな枠組み として三つの場面で分けた。

PMLを 基本 とした理由は、Levelt(1993)や Mayer e003,2005)の モデルを比較す ると、PML

には、文 と文や段落 と段落の結束性の過程が含 まれているほか、マクロ構造の付与も想定さ

れているためである。一方で、PMLには、Levelt(1993)や Mayer ooo3,2005)の モデルで指摘

されている文字を音韻化する過程が含 まれていない。ワーキングメモ リ研究の成果 として、 音韻化によって言語理解が進められることが明 らかなので、PMLに音韻化の過程を加えるこ とにした。 また、言語理解過程の下に確認読み と評価読みを配置 し、それぞれが言語理解過程に従っ て処理されることを表 した。さらに、確認読みと評価読みの処理を高次か ら俯厳するように、 メタ認知空間を重ねた。このことによ り、確認読み と評価読み双方の処理をメタ認知モニタ リング0コ ン トロール した り、モニタ リングした新たなメタ認知意識 と既有のメタ認知意識 とを照合 させた りす る過程を示す ことが可能になった。確認読みでも評価読みでもメタ認 知の照合でずれは起 こり、メタ認知の変容や欲動の生成が起 こると想定 している。 これによ り、難波(2008)が示 していたメタ認知空間における六つの意識 も図解可能にな った。「目的意識」は、読解の目的は何であるかを意識するものなので、主に読解前に行 う 図12 先行研究を統合 した言語理解モデル 17

(21)

もの として位置づけた。「自己意識」 につ いては、 自分の読解 中の思考状態 をモニタ リング す るもので あるので、読解後 に位置づけた。「世界意識」は、現実世界 とテクス ト世界の両 方 を指す意識で あ り、説明的文章で は読者 自身の現実世界 の認識 と筆者 のテ クス ト世界 の 認識 に当たる。「修辞意識」は、筆者の表現 の在 り方 を意識す る ことを指す。「思考意識」は、 筆者が どのよ うな思考過程で書 き進めて いるか、筆者 の論理 を意識す る ことで ある。これら 三つ の意識は、「確認読み」と「評価読み」の両方で意識 され るものなので、「確認読み」と 「評価読み」の両方 に位置づ けた。「相手意識」 は、筆者 自身が、なぜそのよ うな表現で、 そ のよ うな論理 を使 い、その事柄で主張 しよ うとしたのか という意 図を意識す るものであ る。「評価読み」の前提 と位置づけ られ るため、「評価読み」に位置づ けた。「自己意識」は、 読解後 に位置づ けた。読解後 と言 って も、文章全体 を読み終わ った ときだけを想定 して いる ものではな く、継続的な読解処理 を一時停止 した というよ うな狭義の意 味で も捉えている。 言 い換 えるな らば、読解 中、メモ を書 いた り感想 をつぶや いた りした瞬間 も、一時的 には読 解処理が止 まって いるため、読解後 の区分 に入 る ことにな る。熟達者 になれ ば、完全 に読解 処理 を止 め る ことな く、読解 中の 自分 を意識す る ことは読解処理 とともに並行 して行 え る と想定できる。メタ認知空間での照合後 の過程 に 目を向けると、欲動や意欲が喚起 された後 、 自己意識 の下 を通 って想 に続 いて いる。これ は、ずれ によって喚起 された欲動 に 自己意識 を 向ける ことで、ずれ の理 由を言語化 し、自分 の感想や意見 としての想 を生み 出す過程 を示 し て いる。 第

2項

読解 方 略 を特 定 す る枠 組 み の設 定 第

1項

で設定 したモデル を基 に、読解方略 を特定、分類す る枠組み を表3に示 した。 まず、読解前 。読解 中・読解後 を大枠 として分 ける。そ して、読解 中に分 け られた読解方 表3 読解方略を特定する枠組み 読解前 読解 中 読解後 語レベル 文 レベ ル 文間及 び段落 間 レヽル 全 体 音韻化 表 意 推 意 結東性 マクロ構造付与 確認読み 顕 在 表 現 潜 在 内 容 。こ とが ら 論 理 評価読み 筆者の意 図 顕 在 表 現 潜 在 内 容・こが ら 論 理

(22)

略 は、さ らに言語理解過程(「音韻化」「表意」「推意」「結束性」「マ クロ構造付与」)と 「確 認読み」「評価読 み」 の表 に分類 した。「確認読 み」「評価 読み」は、それぞれ顕在的視点 と 潜 在的視点 を設定 し、さ らに「評価 読み」には、「筆者 の意 図を読む視点」も加えた。「確認 読 み」を行 った後 、「評価読み」に移行す るため には、「筆者 は、なぜ○○ したのか考 える」 とい う前提段階を踏む必要があるか らで ある。音韻化の潜在的視点は、あ らか じめ斜線 を引 いた。顕在的な文字 を音韻化す る過程であるので、推論 を必要 とす る音韻化 の潜在 的視点 は 想定 されな いためで ある。 注

1

間瀬茂夫 ●

010「

理解方略指導研究」『国語科教育学研究 の成果 と展望 Ⅱ』学芸 図書、 p.238

2 van Dilk,T.A, & Kintsch,■ (1983).Strategies of Discourse Comprehension. ハリ″

Jbr■′′θ′demノθ′rθss

3

甲田直美 0009)『 文章 を理解す るとは』ス リーエーネ ッ トワー ク、pp.44-45

4 Levelt,■ J.M。 (1993).The architecture of normal spoken language use. In Q

Blanken,」.Dittman, H. GrinmL J.C.Marshall & C.Wallesch(Eds.),Zinguゴ ∫′ノθ グ7sθrグbrs a′σ′′″θノθgノθ

sr力

′′′θr″′′ノθ′′ノカ′″グbθaを繊Lノーノ″.Berlin:Walter

de Gruyter.

5 Baddeley A (2000)The episodic buffer: A new component of working memory?

rrθ′ds ノ″ 30ngnノ′ノИθ Scrθ″σθ

,4 pp.417-423

6 Maver,RE。 (2003)The promise of multimedia lё arning: using the same instructional design methods across different media. Zθ ′r′′ng′〃ゴ

ノ′∫′r″θ′ノοコ,13.pp。 125-139

7

湯澤正通 (2010『 ワーキ ングメモ リと教育』北大路書房 、p.109

8

難波博孝

0000『

母 国語教育 という思想』世界思想社、p.102

9

難波博孝 0牧戸章(1997)「「言語活動 の心 内プロセスモデル」の検討 ―国語学 力形成の科 学的根拠 の追究 ―」『国語科教育』第

44集

、pp.145-154

108に

同 じ、pp.30=63

H8に

同 じ、pp.63-82

128に

同 じ、p.104

13三

宮真知子 (2000「 メタ認知研 究 の背景 と意義」 三宮真知子 編 『メタ認知 ―学力を 支 え る高次認知機能 ―』北大路書房 、p.8

14倉

澤栄吉(1971)「第 Ⅲ部 国語教育 と創造性」『 これか らの読解読書指導』国土社 、p.152

1513に

同 じ

pp.H-12

16「

花 を見 つけ る手がか り」『ひ らが る言葉 小学校 国語』

4年

下 、p.16

17

森 田信義 0011)『「評価 読み」 によ る説 明的文章 の教育』漢水社 、p.32

18

阿部 昇(1996)『授業づ く りのための 「説明的文章教材」 の徹底批判』明治 図書 pp.24-25

(23)

2章

小学校説明的文章教材の学習の手引きに見られる読解方略の現状と課題分析

本 章は、小学校説明的文章教材 の学習の手 引きに見 られ る読解方略の現状 と課題 を明 ら か にす る ことを目的 とす る。教科書の学習の手 引きは、国語 の授業で活用 され、主な学習 活動 として扱われ る ことが多 い。特 に、文字 を初 めて習 う小学校段 階の学習 の手引きか ら 抽 出できる読解方略は、方略全体 の中で も基本 的 中心的な位置づ け とな る ことが推定で き る。言語理解過程 に則 した読解方略を特定す る ことで、 「自立 した読者」を育成す るため に必要な方略が明確 にできると考 える。 この ことか ら、本章では教科書会社

5社

の教科書 に掲載 されて いる説明的文章教材 の中 か ら、学習の手引きに見 られ る読解方略を抽 出 し、第

1章

で示 した読解方略 を特定す る枠組 み を基軸 として分類 した。分類の結果、説明的文章 113教材 の中か ら381個の読解方略が 抽 出された。 第

1節

読 解 方 略 の 抽 出 方 法 第

1項

読解 方略 の抽 出方法 本論で取 り扱 う教科書 は、光村 図書、東京書籍 、教育 出版、学校 図書、三省堂 の

5社

の平 成 23年度版で ある。Doleら (1991)1が、方略概念 につ いて 「意 図性」「認知的洗練性」「柔 軟性」「意識性」 と規定 して いる ことを踏 まえ、各社 の説明的文章教材 の学習の手引きの中 か ら、読む活動 に関わる課題 に着 日し、他の場面で も転用 しやす い表現 に修正 しなが ら読解 方略 の抽 出を行 った。 収集す るに当たって問題 とな って くるのが、「設間の方略化 に関す る問題」「表現 に関す る 問題」「話す こと・ 聞 くこと 。書 くこと 。読む ことに関す る問題」で ある。以下 に示 した東 京書籍

23年

度版 「テ レビとの付 き合 い方」(5年下

)2の

学習 の手 引きを基 に二つの問題点 につ いて指摘す る。 ● 例 と意見 との関係 に注意 して、筆者 の考 えを読み取 りま しょう。 ● 読 み取 った ことを もとに、 自分の考 え を書 きま しょう。 ◆ 自分たちの生活 をふ り返 りなが ら「テ レビとの付 き合 い方」を読み、感想 を発表 しよ う ○ 「テレビとの付き合い方」で、筆者が取 り上げている次のことについて、あ なたはどう感 じていますか。 ・ テレビの 「分か りやすさ」 。 テレビに関する調査の結果

(1)設

間の方略化 に関する問題 東京書籍 のてびきでは、● 目標、◆大設 間、○小設 間、・ 具体的観点のよ うに抽象的な表 現 と具体 的な表現で課題 を示 して いる。しか し、方略 としてそ の まま活用 して い こうとす る と、 どのよ うな表現で方略 を表す ことが適 当で あるか とい う問題が出て くる。 ● 目標や◆大設間では、抽象的な表現で課題 を示 して いるため、それ だけでは何 を行 えば

表 7  確認読み と評価読みの言語理解過程における方略数 語 レベル  1  文 レベル 全体 合 計 音韻化 表 意 推 意 結束性 マクロ構造 付 与 確認読み 27 64 ●ι 評価読み nυ 14 27 rυ 合計数 り nJOこ 38 nフ ι ● 185 割 合 1% 16% 21% 49% 14ワ nvnv 訳 を見 る と、学年が上が るにつれて方略数 も増 えて いる。 この ことか ら、高学年 にな って 確認読みの数が減 るのは、重点が評価読み に移 るためだ と推定できる。 表 7
表 9  評価読みの方略数の内訳 語 レベル 文 レベル 全 体 音韻化 表 意 推 意 結束性 マク El● 遣付与 合 計 評価読 み 筆者想定 nu 5 9 23 5 42顕 在nu70nu7 潜 在 2 2 4 nu 8 合 計 nu 14 27 5 57 次に、確認読みの分類 と同様に、それぞれの過程に分類された方略をカテゴリ化 し、方 略名を付けた。以下、手続きは省略し、分類された方略数 と決定された方略名を示す。      ) 【 筆者想定的視点 。表意の生成】 筆者が どうしてそのような表現

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