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バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究 : プレーヤーの語りから

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Academic year: 2021

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(1)Title. バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究 : プレーヤーの語りから. Author(s). 豊田, 稜祐; 山本, 悟; 越川, 茂樹. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第48号: 97-106. Issue Date. 2016-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8223. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第48号(平成28年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.48(2016):97-106. バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究 ―プレイヤーの語りから― 豊 田 稜 祐1・山 本 悟2・越 川 茂 樹2 1. 福岡県宮若市立宮田南小学校. 2. 北海道教育大学釧路校保健体育研究室. Case Study about the Circumstantial Judgment of Offence Scenes in Basketball - From the Talk of Players TOYODA Ryosuke1, YAMAMOTO Satoru2, KOSHIKAWA Shigeki2 1 2. Miyataminami Elementary School at Miyawaka City in Fukuoka Prefecture. Department of Health and Physical education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 要旨 本研究では,バスケットボールのオフェンス時におけるドライブプレーの状況と判断に要した時間にどのような関係が あるのか,また,プレーがいくつかある中で判断し,実行していく過程でプレイヤーはどのような考えを持って状況判断 を行っているのか,ならびに状況判断にはどのような要因が認められるのかについて明らかにすることを目的とした.そ の結果は,以下の通りである.1)状況判断にかかった時間が短い場合は,ボールをもらったときに,味方やディフェン スの動き, スペース, ズレ等の影響でゴールに向かってドライブすることができる状況がすでにできている場合であった. それに対して,状況判断にかかる時間が長い場合は,ボールをもらった時に味方が動いていて,パスを考えたり動いて空 いたスペースを使うことを考えたりしている時やディフェンスとの1対1でドライブに行けないか駆け引きをしている時 が多いという傾向がみられた.2)プレイヤーの語りから状況判断の理由を整理していくと,四つの要因に分けることが できた.具体的には,ディフェンスや味方選手に関わる人的要因,時間帯やスペースなどに関わる物理的要因,試合展開 や点差などに関わる展開的要因,ならびにプレイヤーの気持ちや考えなどに関わる心理的要因であった.. 1.はじめに. を行い,プレーしているように一般的にはみられている.. バスケットボールは攻守の入れ替わりが激しく,他のス. 実際,プレイヤーの中には,「感覚でやっている」や「そ. ポーツと比べても得点を取るチャンスが特に多いスポーツ. んなに考えてやってない」と言う者は多い.しかしながら,. である.その中で,瞬時にその場の状況を把握し,シュー. そのようなプレイヤーでも必ず何かを予測し,何かを見て. トを高確率で決めるためのプレーを選択し,実行していく. 何かを感じ,何かを考えた上で,絶えず変化する状況を判. という状況判断能力が重要になる.小峰 (2004) によれば,. 断しプレーを選択していると考えられる.. 状況判断とは,外的ゲーム状況を選択的に注意してから,. 状況判断能力に関して,加藤ら(2015)は,状況判断の. ゲーム状況を認知,予測し遂行するプレーに関して決定を. 育成が重要であると感じてはいるものの,その能力を育成. 下すことである. 『バスケットボール指導教本』 (2005)に. する自信があると言えない指導者が多いこと,ならびに,. も,バスケットボール選手がゲームの際に求められる能力. 状況判断能力を育成するための方法論を指導者が十分に理. の一つとして状況判断能力が挙げられると明記されている. 解していないことを指摘している.この状況判断能力の育. 注1). .ゴール型球技の試合中では,状況分析の対象が味方・. 成の難しさには二つの原因があると考えられる.一つは,. 相手選手との位置関係やスペース,戦術,得点差,時間帯. このように動けば正解という指導ができないことである.. 等と多くのものがあげられる.それに関して,バスケット. 試合や練習では様々な状況が生まれ,それは相手プレイ. ボールは短い時間で判断しなければならないため,プレイ. ヤーの能力やポジション等によって大きく変わってくる.. ヤーはじっくり考えて実行することはほとんどなく,直感. 全く同じプレーが起こることがないことから,練習で指導. やそれまでに培ってきた経験や感覚を基にして瞬時に判断. したこともそのまま試合で使えることはあまりないという. - 97 -.

(3) 豊 田 稜 祐・山 本 悟・越 川 茂 樹 ことになる.もう一つは,バスケットボールの試合では,. c.プレー. 指導者が試合中でもベンチエリアから直接プレイヤーに指. ・何を見て,何を考えてドライブをしたのか. 示を出すことができるので,プレイヤー自身が自ら考えて. ・ドライブにいくと判断した要因. プレーする機会が減ってしまうということである.指導者. ・ドライブにいくと判断したタイミング. として指示を出さなければならない場面は多くあると思う. d.選択肢 ・ボールを受けたとき,ドライブ中などにいくつの選択. が,過度に言い過ぎてしまうと指導者から言われたことで. 肢があったか. 頭がいっぱいになり,プレイヤー自身の状況判断能力が高 まることは期待できない.. ・選択肢の移り変わり. 以上のようなことを背景にして,本研究では,バスケッ. ・選択肢の中から最終的な選択をした要因また,そのタ イミング. トボールのオフェンス時におけるドライブプレーの状況と それ判断に要した時間にどのような関係があるのか,ま. ④聞き出した後に再度,スロー再生を行いながら確認を行 う.. た,プレーがいくつかある中で判断し,実行していく過程 でプレイヤーはどのような考えを持って状況判断を行って. 面接の際は,プレイヤーと外から全体を見た人における. いるのか,ならびに状況判断にはどのような要因が認めら. 見え方が違うことを考慮した上でプレイヤー自身の考えを. れるのかについて明らかにすることを目的とする.. 尊重し,客観的な見え方や意見でプレイヤーの意見を解釈 することがないように心がけた.. 2.研究方法 本研究では,あらかじめ分析の対象とするプレーをドラ. 3.結果と考察. イブプレーに限定し,その状況を定め,試合のビデオの中. 3.1.試合におけるドライブプレーの出現率. からそれに当てはまるプレーを抽出していく.そのプレー. 表1は,研究対象にした8試合における研究対象チーム. の当事者とともにビデオ映像を見ながらインタビューし,. のドライブプレーの出現率を整理している.. そのプレーにおけるプレイヤーの状況判断について分析を 表 1.試合におけるドライブプレーの出現率. 行った.インタビューは半構造化面接法を用いた注2). 対戦 相手. 勝敗. A. ◯. 62. 20. 38. 61.2. B. ○. 64. 17. 34. 53.1. C. ●. 59. 16. 33. 55.9. ・ドライブから始まるプレーで,シュート・パス等の判断. D. ●. 51. 21. 24. 47.0. を行い,シュートを打つ人がほぼフリー(ディフェンス. E. ○. 73. 26. 40. 54.7. のプレッシャーがあまりかかっていない状態で打つこと. F. ●. 63. 16. 33. 52.3. G. ●. 65. 21. 35. 53.8. H. ○. 74. 8. 37. 50.0. 2.1.分析対象とするドライブプレー 本研究では,次の三つの条件を満たしているものを対象 とした. ・オフェンスとディフェンスの10人がフロントコートに 入った状態. ・ディフェンスはマンツーマンディフェンスの場合.. ができる)の状況につなぐことができた場合. 2.2.研究対象. 全攻撃 速攻 ドライブから 回数 (回) 始めるプレー (回) (回). 出現率 (%). 2015年9月〜 10月試合の間の全8試合におけるH大学の男 子バスケットボール部のプレイヤー 9名を対象とした.. ドライブプレーの出現率の算定については,ドライブか ら始まるプレーの回数から全攻撃回数を割ると,全攻撃回. 2.3.インタビューの方法. 数の中でドライブから始まるプレーが出現している割合が. ビデオ映像を大画面テレビに映し出し,それを当事者と. 出ることになる.例えば,Aとの試合では,全攻撃回数が. ともに見ながら,以下の順に従い,聞き取りを行った.. 62回,ドライブプレーから始まるプレーは38回であったた. ①試合のどの時間帯なのか,また,どのような試合の流れ. め,ドライブプレーの出現率は61.2%となる.他の7試合. だったか等を伝える.. でも同様に,ハーフコートのオフェンスでのドライブプ. ②ビデオ映像を再生またスロー再生しながら,このプレー 中に何を考えていたのか,一通り思い出してもらう.. レーから始まるプレーの出現率を出した(表1). 表1からわかるように,おおむね勝った4試合の方が負け. ③以下の内容を聞く.. た4試合よりドライブから始まるプレーが多く出現してい. a.試合の展開や流れ. る.しかし,出現率になると,必ずしも勝った試合は割合. b.自分の状態,調子. が高くなっているとは言い切れない.これには,勝った試. - 98 -.

(4) バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究 合の方が負けた試合に比べて全攻撃回数が多くなっている. 選択までに要した時間を測定し整理したのが表2である.. ことが影響していると考えられる.なぜなら,全攻撃回 表 2.状況判断に要した時間. 数が多いということは得点を取ることのできる機会が多く なり,結果として得点をより多く取ることができたことが 試合の勝利につながっていると考えられるからである.実. プレー番号. 時間(秒). プレー番号. 時間(秒). 1. 1.4. 19. 0.4. 2. 3.8. 20. 0.9. 3. 2.0. 21. 1.0. 4. 0.4. 22. 2.2. 5. 0.3. 23. 1.8. 6. 1.2. 24. 1.4. 7. 1.5. 25. 2.1. 8. 0.3. 26. 1.4. 際,勝った試合ではドライブから始まるプレーも全攻撃回 数も多くなっている.しかし,出現率は,負けた試合とも 変わらない結果となった.これには,この対象チームの得 意なプレーの一つであるがゆえに,どの試合でもある程度 行われていて,結果として全攻撃回数に占める割合はそれ ほど変わらないことが推察される. 全体的に出現率をみると,1試合を除いて,出現率が 50%以上となっており,H大学のハーフコートオフェンス において,半分以上の割合でドライブから始まるプレーが 占めている.それゆえ,H大学のオフェンスプレーの特徴 として, ドライブプレーをあげることができ, ここにオフェ ンス時における状況判断を分析する上でその特徴であるド ライブプレーを取り上げて分析する意義が認められる. 3.2.ドライブプレーを行うまでに要した時間 ハーフコートのオフェンスでどのようにドライブプレー が起き,どのような状況判断が行われているのかを分析す るため,今回は次の三つの条件を設けた.. 9. 2.1. 27. 1.2. 10. 1.7. 28. 0.8. 11. 1.6. 29. 2.2. 12. 1.0. 30. 2.4. 13. 2.0. 31. 2.7. 14. 2.1. 32. 1.8. 15. 3.2. 33. 2.8. 16. 1.8. 34. 0.8. 17. 2.1. 35. 2.4. 18. 3.5. 36. 1.4. ①オフェンスとディフェンスの10人がフロントコートに 入った状態. 平均判断時間は,約1.6秒であった.ドライブを行った. ②ディフェンスはマンツーマンディフェンスの場合. プレイヤー,またはそのプレイヤーからパスを受けたプレ. ③ドライブから始まるプレーで,シュート・パス等の判断. イヤーがほぼノーマークでシュートを打っているプレーが. を行い,シュートを打つ人がほぼフリー(ディフェンス. ほとんどであった.. のプレッシャーがあまりかかっていない状態で打つこと. また,36プレーについて,要した時間とプレーの関係を. ができる)の状況につなぐことができた場合.. 説明したものが,表3である.. 全8試合の中で,上記の三つの条件を満たすドライブプ レーのうち,36のドライブプレーが抽出された.その36の ドライブプレーでプレイヤーが状況判断を行い,プレーの 表 3.36 のプレーのドライブプレーを行うまでの様子 プレー番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13. ドライブプレーを行うまでの様子 ボールを受け,すぐにシュートフェイクをすると,ディフェンスが跳んで出てきた. ディフェンスとの1対1でスペースを活用した駆け引きを行っていた. フロントコートに入ってすぐボールをもらい,ディフェンスに近寄りながら駆け引きしている. ディフェンスが左に寄っていたので,右にロールして抜いている. 走り込みながらボールをもらい,ディフェンスを振り切ったのでその動きの流れでいった. ディフェンスがチェックに出てきているのを待って,寄ってきたタイミングで行っている. 近くでボールを要求している味方がいて,その様子も見ている. フリーでもらっていて,広いスペースでの3対2ができている. 攻撃の残り時間が少なく,自分が攻めようとしている. 点を取りに行かないといけない試合展開で,ディフェンスとのずれができているので,すぐに仕掛け ている. ディフェンスがチェックに跳んで出てきているので,跳んでいるタイミングでドライブしている. 右からディフェンスがチェックに出てきていて左にスペースがあるので,すぐに仕掛けている. 周りの動きがなく,どう攻めようか考えている様子である.. - 99 -.

(5) 豊 田 稜 祐・山 本 悟・越 川 茂 樹 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36. 右ドリブルで仕掛けたが,ディフェンスがついてきていて,左に切り返すことで抜くことができた. 攻めたい方向に味方がいるので,その味方が動いてからドライブしている. 横のフェイクを入れ,ディフェンスとの駆け引きをしている. ディフェンスが出てくるタイミングを見計らっている. 横のフェイクを入れながら,抜けるタイミングを図っている. パスを受けるところで取りに来たディフェンスがいて,それをかわし,空いたスペースにすぐドライ ブをしている. ボールを受ける動きでディフェンスとのズレができているので,すぐにドライブを仕掛けている. シュートフェイクでディフェンスが出てきたからドライブに行っている. ディフェンスが寄ってきていて,スペースに逃げながら空いているところに行った. 周りを見つつ,自分の行くタイミングを図っている. フロントコートに入ったところでボールをもらい,動きの流れでそのままドライブに行っている. 中に攻めていけるスペースとタイミングを見計らっている. ディフェンスとのズレがあり,すぐにドライブを仕掛けている. ボールをもらってからの自分のタイミングでドライブをしている. 左にスペースができているからボールを受け,すぐにそこを使っている. 周りを見たが,動きがなく,自分で攻めている フェイントを入れ,ディフェンスとのズレを作って抜いている. 前で味方がボールをもらおうと動いているのでその動きを見て判断している. ボールを受けて,バランスを崩しているが,立て直しすぐにドライブをして動いた. ディフェンスのプレッシャーをかわし,逃げるようにドリブルをしている ゴールまでの空いたスペースをすぐに使おうとしている. 味方の動きを見て,パスが出せないか判断している. 空いているスペースを使おうとすぐに仕掛けている.. この表3を,表2と併せてみていくと,そのプレーの状況. いは31の「前で味方がボールをもらおうと動いているので. と状況判断にかかる時間に関係性が認められた.まず状況. その動きを見て判断している」等があげられる.これらに. 判断に時間があまりかかってないプレーの様子をみると,. 共通している点は,ボールをもらったときに自分がすぐに. プレー番号5の「走り込みながらボールをもらい, ディフェ. 抜いて行ける状況がなく,味方の動きに対してのパスを考. ンスを振り切ったのでその動きの流れでいった」 や12の「右. えたり,自分が抜いていくためのディフェンスとの駆け引. からディフェンスがチェックに出てきていて左にスペース. きが必要になったりしていることである.. があるので,すぐに仕掛けている」や26の「ディフェンス とのズレがあり,すぐにドライブを仕掛けている」等があ. 3.3.ドライブプレーを選択した理由. げられる.これらは,ボールをもらったときに自分やディ. 市村(2000)は,試合に勝つための瞬間的な動きと判断. フェンスの動き・スペース・ズレといろいろではあるが,. との関係について論じる際に,「スポーツで情報処理に二. ゴールへ向かってドライブすることができる状況にあるこ. 秒以上かかれば勝負は負ける」(市村,2000,p.227)と指. とが共通している.. 摘している.本研究ではこの見解に依拠して,36のドライ. それに反して,状況判断に時間がかかってしまったプ. ブプレーを状況判断の時間に2.0秒以上かかったものとか. レーの様子をみると,プレー番号2の「ディフェンスとの1. かってないもので分け,状況判断にかかった時間とコメン. 対1でスペースを活用した駆け引きを行っていた」 , 23の「周. トの関係性をみていく.. りを見つつ,自分の行くタイミングを図っている」,ある 表 4.プレー移行が 2 秒以下の場合のコメント プレー番号 1. 4. コメント ・ディフェンスが自分のシュートフェイクで跳んでくれた. ・リーグの一試合目で緊張していて,点を取って自分自身が落ち着きたかったから,ドライブと考え ていた. ・ディフェンスを抜いたとき,シュートまでいけるコースがあったのでレイアップにいった. ・ボールを受けたときディフェンスが左に大きく寄っていたのを確認したからロールしてレイアップ を狙った. ・勝負できるだろうと考えていたのでパスはなく,ボールを受けた後の状況により,ジャンプショッ トかレイアップかを狙おうと考えていた.. - 100 -.

(6) バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究. 5. 6. 7. 8. 10. 11. 12. 16. 19. 20. 21. 23. 24. 26. ・ボールをもらって,ゴールの方向にスペースがあったからドライブを仕掛けた. ・ディフェンスを抜ければレイアップにいくか状況によってはパスを出すことも考えていた. ・ゴールに向かったときにディフェンスが自分に寄ってきて,プレイヤーAがフリーになったからパ スした. ・右サイドでは2対2の状況ができていて、自分がディフェンスをひきつけてパスを通せば,プレイ ヤーBがシュートまで行けると考えた. ・プレイヤーBにパスをするためのドライブであった. ・競っていたので,中に切り込んでゴールの近くからシュートを打ち,得点できる確率の高い選択を したかった. ・位置的にボールを受けたらそのあとは右ドライブをして,ディフェンスを崩したいと決めていた. ・ドライブでディフェンスを崩したところでパスをしたいと考えていた. ・プレイヤーBがフリーでいたのでパスした. ・自分がフリーの状態でパスを受けたので,ドライブでゴール付近まで攻め込もうと思った. ・ボールをもらってドライブしているときはディフェンスの状況によって,自分がそのままゴールに アタックしてレイアップまで行くかパスをするかの選択肢があった. ・ディフェンスが出てきた時点でパスを選択した. ・ボールをもらった時に右側が空いていて, ゴール下付近にもスペースがあったのでドライブを決断. ・かなり点差が開いていたので,早い段階で点が取りたかった. ・シュートにとにかく行くことだけ. ・ディフェンスが跳んでチェックに来た. ・中に背の高いディフェンスがいたのと相手ディフェンスの対応が早かったこともあり,レイアップ シュートは厳しいと思ったので,ジャンプショットを選択.得意な角度・位置ということで決断. ・ディフェンスがチェックに出てきた ・ハイポスト辺りにスペースがあった ・ディフェンスが自分のシュートチェックに出てくればパスを選択し,出てこなければジャンプ ショットを打とうと考えていた. ・ディフェンスが二人とも自分のほうに来て,プレイヤーBがフリーになったのでパスを選択した. ・自分のディフェンスが体格の大きいプレイヤーだったので,横にズレを作れば抜けるだろうと思っ ていた. ・スペースが広くあった. ・ディフェンスを抜いた後も行けそうだったので変わらずレイアップを狙った. ・パスが来るときに自分のディフェンスがパスカットを狙いに飛び出てきた. ・右ローポストのところが空いているのが分かっていた. ・この試合調子がよくて,パスの考えはなかった.1ドリブル目でディフェンスがカバーで寄ってき ているのが見えたし,得意な角度だったので,ジャンプショットを打とうと決断. ・ボールをもらう時の動きでディフェンスとのずれができた. ・ディフェンスの動きでパスもあったが,外の味方プレイヤーに寄ったのでレイアップシュートにい くと判断. ・ディフェンスが間合いを詰めてきた. ・ディフェンスを抜いてからすぐそこでジャンプショットを打つこととパスの選択肢が浮かんだ.プ レイヤーAのディフェンスがこっちを見てカバーで出てきたので,プレイヤーAにパスをした. ・右ローポスト付近にスペース. ・ドライブにいって,ディフェンスを抜ければレイアップで,ディフェンスが自分のほうに寄ってい れば,パスと考えていた. ・試合の終盤で大きな点差が開いているということもあった. ・ディフェンスがついてきていてレイアップは厳しいと思い,ジャンプショットを打つと決断. ・ディフェンスが戻りきれてなかったので,ドリブルで早く攻めていった. ・自分についているディフェンスを抜いて,レイアップを狙おうと最初は考えていた.しかし,ディ フェンスを抜ききることができず,自分が攻めきるのは厳しいからパスだと考えた. ・プレイヤーCが走りこんできたので,そこにパスをした. ・相手ディフェンスとのずれでコースができていたから. ・ディフェンスを抜いてレイアップまで持っていきたかった.裏にいるプレイヤーDへの意識が全く ないように見え,ディフェンスがいなかったためにプレイヤーDにパスすればそのままシュートま で行けそうだと判断しパスを選択.. - 101 -.

(7) 豊 田 稜 祐・山 本 悟・越 川 茂 樹. 27. 28. 32. 34 36. ・少しスペースが空き,ゴールに行くまでのコースができたから. ・負けている展開が続いていたので,点を取りに行く気持ちが強かった. ・点を取ることしか考えていなかったためにディフェンスを抜くときは無理やりだったが,抜けてフ リーになったのでレイアップを打てた. ・ほとんどのプレイヤーが右に寄っていて,左サイドが空いていた. ・リーグの最終戦で,負けられないというプレッシャーから緊張していた. ・パスの考えはなく,ゴール下までスペースは空いたままだったので,レイアップに行こうと判断. ・試合の序盤だったので,早く点を取って落ち着きたかった. ・ボールをもらう前からもらったらドライブで攻めようと考えていた. ・ディフェンスを振り切って,レイアップシュートまで行けたらいいなと考えていた.2ドリブル目 でプレイヤーEが見えたことでパスをするか自分でシュートに行くかの選択になった. ・プレイヤーEのディフェンスが自分のほうに寄ってきたので,フリーになったプレイヤーEにパス をすることを決断した. ・味方二人がサイドに寄っていて,真ん中とゴール下にスペースが空いていたから. ・カバーディフェンスが来たが,相手は関係なく自分がこのシュートを決めきれると判断した. ・自分のディフェンスはいたが,抜けるコースがあり,ディフェンスを抜くことができると判断. ・ゴール下のスペースが空いていた. 表 5.プレー移行が 2 秒以上の場合のコメント. プレー番号. コメント. 2. ・味方が広がってスペースを作ってくれた. ・外からのシュートを打つ感覚がまだつかめていなかった. ・なるべくゴールの近くで確率の高いレイアップシュートに持っていきたかった.他のディフェンス が寄って来て,ジャンプショットかパスの選択肢が出た.プレイヤーFがフリーなのが見えたので パスを選択. ・ディフェンスがカバーで出てきたのもあり,プレイヤーFがフリーなのが見えたのでパスを選択.. 3. ・シュートへのステップに入る一歩目で,ゴール下にフリーのプレイヤーAが見え,パスを決断し た. ・点を取りたかったので,レイアップでもジャンプショットでも狙おうと考えていた. ・リーグでの初めての試合で緊張していたので,得意なドライブプレーをしたいという気持ちがあっ た.. 9. ・左サイドからパスが来て,左サイドにはプレイヤーが固まっていたので,スペースのある右にドラ イブした. ・攻撃の残り時間が少なかった. ・カバーディフェンスが出てこなければそのままレイアップ.右ショートコーナーにプレイヤー8, 右45度にプレイヤーGと味方がいたので,そのディフェンス次第でパスというのも考えていた. ・ディフェンスがカバーに寄ってきて,プレイヤーGがフリーになったのでパス.. 13. ・プレイヤーが左に偏っていて,右サイドが全体的に広く空いていた. ・オフェンスの流れがなかったのでドライブを仕掛けてディフェンスを動かそうと考えた. ・パスもシュートも考えていた. ・味方とディフェンスの動きによって,プレイヤーBがフリーなのが見えたためにパスをした.. 14. ・シュートを打とうとしたときにディフェンスが出てきたから ・ディフェンスを抜いた後レイアップまで行こうとしたが,プレイヤーGのディフェンスがカバーに 出てこようとしていて視線も完全に自分を向いていたので,パスした後の対応はできないと思った のでパスを選択した.. 15. ・味方プレイヤーの動きによって,スペースができたから. ・ゴールした付近にディフェンスがいなかったらレイアップ,いたらその前でジャンプショットを打 つという考えで点を取りに行きたかった. ・ディフェンスを振り切れなくてシュートに行けないと判断し,パスを考えた. ・プレイヤーHの得意な位置だったのでシュートを打たせようとパスを判断した.. - 102 -.

(8) バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究. 17. ・試合が始まってから,外からのシュートのタッチが悪かったからドライブで中に切り込んでいきた かった. ・ディフェンスを抜くことができ,レイアップを狙いに行ったが,ステップに入る前にプレイヤーH が右ショートコーナーにフリーでいるのが見えたのでパスを選択した.. 18. ・ディフェンスの動きが悪かった. ・ディフェンスを抜いてシュートに行くことを考えてやっていた.他のディフェンスがカバーで寄っ てきたので,パスに変更した. ・プレイヤーFのディフェンスがカバーに来たので,プレイヤーFがフリーになっていた.. 22. ・自分についているディフェンスの足が遅いように感じていたのでディフェンスが間合いを詰めてき たら抜こうと思っていた. ・左サイドにプレイヤーが偏っていて右サイドにスペースがあった. ・ゴール付近にはディフェンスがいたのでその前でジャンプショットを打とうとしたが,カバーで出 てきたディフェンスが背が高くて,打てないと判断し,パスに変更した.. 25. 29. 30. 31. 33. 35. ・ハイポスト辺りにスペースがありドライブで攻めるコースがあったから. ・パスかレイアップを考えていた. ・全体的に味方プレイヤーもディフェンスも中に寄っていて,自分がシュートに行くとを決断. ・ゴール下に少しのスペースがあったので,そこでシュートだと判断. ・味方プレイヤーの動きによりスペースができたのでドライブを仕掛けた. ・選択肢はパスもシュートも. ・緊張していて思ったよりも早くドリブルをやめてステップをして踏み切ってしまった.シュートを 狙うことはできなかったので,パスを選択. ・点数が競っていたので,自分が点数を取っていきたい気持ちがあった. ・中にプレイヤーが結構いて,中に攻め入ることは難しいと思い,ジャンプショットを打とうと決 断. ・打つためにドライブをして仕掛けた. ・スペースが空いていたこと. ・シーソーゲームが続いていたので,得意なドライブで攻め崩して点を取っていきたい. ・ディフェンスが自分のほうに来たことでフリーになったプレイヤーDが見えたので,パスを決断. ・ディフェンスのプレッシャーからドリブルで逃げようとしていた. ・ドライブする形となりパスかそのまま自分が所持していようと考えた. ・他のディフェンスも自分に寄ってきてプレッシャーをかけてきたので,パスだと思った.と同時 に,ゴール下にフリーのプレイヤーGが見え,パスをした. ・パスができず,ドライブで相手ディフェンスを動かして,ディフェンスを崩そうとした. ・ドライブをすることによって,ディフェンスが動き,コーナーにフリーの選手が見えたから.. 表4からわかるように,状況判断にかかる時間が2秒以下. 一方,表5からわかるように状況判断の時間に2秒以上か. のプレーは,空いているスペースやディフェンスとのズレ. かったプレーでは,ボールを受けてからの味方の動きでス. がボールをもらった瞬間にあるもので,すぐにドライブに. ペースができたものやディフェンスとの1対1で自らの動. 入ることができるプレーであるものが多くある.例えば,. きでズレや抜けるスペースを作っているものが多くみられ. 「ボールを受けたときディフェンスが左に大きく寄ってい. る.例えば,「味方が広がってスペースを作ってくれた」. た」, 「ボールをもらう時の動きでディフェンスとのずれが. や「味方プレイヤーの動きによって,スペースができたか. できた」 , 「ほとんどのプレイヤーが右に寄っていて,左サ. ら」というコメントである.. イドが空いていた」 というコメントがみられる. また, 「ディ フェンスが自分のシュートフェイクで跳んでくれた」や. 3.4.判断理由の分類. 「ディフェンスが間合いを詰めてきた」というコメントが. プレイヤーのコメントをみていくと,「ディフェンスが. ある.こうしたコメントから相手ディフェンスの動きがあ. シュートフェイクに跳んで出てきた」や,「間合いを詰め. ると,ドライブプレーが速く起こっている傾向があると考. るために出てきた」等の判断理由がみられる.そこで,こ. えられる.他にも,試合展開で負けているときには判断が. こではコメントにみられる判断理由の分類を試みることと. 速くなり,すぐにプレーを起こす傾向がみられる.この点. する.. についてコメントをみると, 「かなり点差が開いていたの. 「ディフェンスが自分のシュートフェイクで跳んでくれ. で,早い段階で点が取りたかった」 , 「負けている展開が続. た」や「ディフェンスがこっちを見てカバーで出てきてい. いていたので,点を取りに行く気持ちが強かった」という. た」は,《ディフェンスの動き》に関係するものであると. ものが当てはまる.. 判断できる.また,「プレイヤーCの得意な位置だった」. - 103 -.

(9) 豊 田 稜 祐・山 本 悟・越 川 茂 樹 や「プレイヤー 1がそのままシュートまで行けるだろう」. ドの終盤」というものは《時間帯》として整理できる.こ. 等のコメントが出てきた.これらは, 《味方への信頼》と. のようにしてコメントを判断理由として分類したのが,表. してまとめられる.ほかにも, 「競っているや負けていた. 6である.. から」という判断理由は《点差》 , 「試合の序盤や4ピリオ 表 6.コメントの分類. ディフェンスの動き. ・ディフェンスが自分のシュートフェイクで跳んでくれた. ・ディフェンスが間合いを詰めるために出てくるのを利用して抜こうと思っていた. ・プレイヤーGのディフェンスがこっちを見てカバーで出てきていたので,プレイヤー5 にパスをした.. 味方への信頼. ・プレイヤーHの得意な位置だったのでシュートを打ってもらおうとパスだと判断. ・ディフェンスがいなくてプレイヤー1にパスすればシュートまで行けそうだということ を判断し自分が攻めるよりもパスを選択. ・自分がディフェンスをひきつけてパスを通せば,プレイヤーBがシュートまで行ける.. 自分がフリー. ・自分がフリーの状態でパスを受けたのでドライブでゴール付近まで攻め込もう.. ディフェンスプレイヤー の特徴. ・自分のディフェンスが体格の大きいプレイヤーだったので,横にズレを作れば抜けるだ ろうと思っていた. ・自分についているディフェンスの足が遅いように感じていた, ・中に背の高いディフェンスがいて,レイアップシュートに行くまで攻め入ることは厳し いと思ったので,ジャンプショットを選択した.. ディフェンスとの位置関 係. ・ボールをもらう時の動きでディフェンスとのずれができた. ・ディフェンスが左に大きく寄っていたのを確認した.だから,右にロールしてレイアッ プを狙った. ・外の味方プレイヤーのディフェンスに寄っていて,シュートまで行そうだったのでその ままいった.. スペース. ・ゴール下のスペースが空いていて ・ボールをもらった時に右側が空いていてゴール下付近にもスペースがあったのでドライ ブを決断. ・右ローポスト付近にスペースが空いていた. ・ゴール下に少しのスペースがあったのでそのスペースを使ってシュートを打とうと判断.. コートでの位置. ・位置的にボールを受けたらそのあとは右ドライブをして,ディフェンスを崩したいと決 めていた.. 点差. ・競っていたので ・負けている展開が続いていたので ・かなり点差が開いていた. 時間帯. ・試合の終盤 ・試合が始まってすぐだったが ・4ピリで. ルール(攻撃時間). ・攻撃の残り時間が少なく,自分が攻めていかないという思いがあった.. 緊張. ・リーグの一試合目で緊張していて,点を取って自分自身が落ち着きたかったから ・リーグでの初めての試合で緊張していたので ・リーグの最終戦で,負けられないというプレッシャーから緊張していた. イメージ. ・ひとつ前のプレーで同じところからドライブでシュートを狙いに行って,ファウルをも らうことができた.そのいいイメージがあった. ・右サイドでは2対2の状況ができていて自分がディフェンスをひきつけてパスを通せ ば,プレイヤーBがシュートまで行けると考えた.. 自分の得意なプレー. ・得意なドライブで攻め崩して点を取っていきたいと思っていた. ・得意な角度・位置ということも決断した要因となった.. 考え. ・ボールをもらう前からもらったらドライブで攻めようというのを考えていた. ・ドライブで相手ディフェンスを動かしてディフェンスを崩そうとした.. 味方がフリー. ・ゴール下にフリーのプレイヤーAが見え,パスを決断した. ・フリーになったプレイヤーDが見えたのでパスしたがいいと思い,パスしようと決断. ・コーナーにフリーの選手が見えたから.. - 104 -.

(10) バスケットボールにおけるオフェンス時の状況判断に関する事例研究. 味方の動き. ・プレイヤーFがちょうどいいところに走ってきてくれているのが分かったので,そのま まパスした. ・プレイヤーCが走りこんできたので,そこにパス.. シュートに行けるコース がある. ・シュートまでいけるコースがあったのでレイアップにいった. ・抜けるコースがあったのでディフェンスを抜くことができるだろう. プレイヤーの位置. ・全体的に味方もディフェンスも中に寄っていて,パスしても狭いままで攻めにくいか, 狭くてうまくパスが通らないだろうと考えたから自分でシュートに行くことを決断. ・中にプレイヤーが結構いて,中に攻め入ることは難しいと思い,ジャンプショットを打 ちたかった.. ディフェンスとの相性 自分が点を取りに行きた い気持ち. ・このディフェンスを抜けそうだったのでそのままレイアップまで行こうと決めた. ・点を取りに行こうとジャンプショットを打つと判断. ・点を取ることしか考えていなかったために無理やりかいくぐっていくことになった.. プレー中の感覚. ・自分でそのまま攻めきるのが厳しいと感じたから. ・相手は関係なく自分がこのシュートを決めきれると判断.. オフェンスの流れ. ・オフェンスの流れもこのときはなかったのでとりあえずドライブを仕掛けてディフェン スを動かそうと考えた.. 自分の調子. ・外からのシュートを打つ感覚がまだつかめていなかった. ・試合が始まってからずっと,外からのシュートのタッチが悪かったからドライブで中に 切り込んでいきたかった. 表 7.要因の分類. 表6として,状況判断の際の理由が整理された.それら をみていくと,いくつかの要因にわけられる.. 要因名. 分類されるコメントのキーワード. 人的要因. ディフェンスの動き・特徴,味方の動 きまた味方への信頼,プレイヤーの位 置,ディフェンスとの位置関係,味方 がフリー. 物理的要因. 時間帯,スペース,行けるコース,ルー ル(攻撃時間). 二つ目は,オフェンスの流れ,点差などの試合中の展開. 展開的要因. 試合展開,オフェンスの流れ,点差. に関わるものがいくつか見られた.これらは,物理的なも. 心理的要因. 自分の得意なプレー,自分の調子,イ メージ,緊張,プレー中の感覚,自分 が点を取りに行きたい気持ち. まず一つ目として,ディフェンスの動きや特徴,味方の 動き,また味方への信頼など人に関わるものがいくつかみ られた.つまり,味方がフリー,ディフェンスの動きや特 徴,味方の動き,また味方への信頼などプレイヤー,人に 関係しているものをまとめることができる.これらは,人 に関わる要因(人的要因)として分類することができる.. のに関わる要因である.それゆえ,時間帯,スペース,行 けるコース,ルール(攻撃時間)などバスケットに関する 物理的なものに関したものとしてまとめることができる. すなわち,物理的要因として分類することができる.. 4. まとめ. 三つ目は試合中の展開に関わる要因である.これには試. 本研究では,バスケットボールのオフェンス時における. 合展開,オフェンスの流れ,点差があげられる.例えば,. ドライブプレーの状況と判断に要した時間にどのような関. 攻撃の残り時間が少なかった,点数が競っていた,試合の. 係があるのかを分析し,また,ドライブプレーを行ったプ. 序盤だった等がある.. レイヤーの語りからドライブプレーをしている時の状況判. 四つ目はプレイヤーの気持ちや考えなどの内面的なもの. 断について検討した.結論として以下のようにまとめるこ. に関わる要因である.自分の得意なプレー,自分の調子,. とができる.. イメージ,緊張,プレー中の感覚,自分が点を取りに行. 1)ビデオ映像からドライブプレーを始めるまでの状況判. きたい気持ちなどが挙げられる.具体的には, 「外からの. 断にかかる時間を計測した.その時間やドライブプレーの. シュートを打つ感覚がまだつかめていなかった」 , 「緊張し. 出現率によって,得点に結びついた,あるいは勝利につな. ていた」 , 「点を取ることしか考えていなかった」等があげ. がったという成果につながったとは本研究の結果からいう. られる.こうしたコメントにみられる判断理由を分析し,. ことはできないが,状況判断にかかった時間によってその. 表7のような要因に分類した.. プレーの状況がどのような様子なのか傾向を見ることがで きた.状況判断にかかった時間が短い場合は,ボールをも らったときに,味方やディフェンスの動き,スペース,ズ レ等の永久でゴールに向かってドライブすることができる 状況がすでにできている場合である.それに対して,状況 判断にかかる時間が長い場合は,ボールをもらった時に味. - 105 -.

(11) 豊 田 稜 祐・山 本 悟・越 川 茂 樹 方が動いていて,パスを考えたり動いて空いたスペースを 使うことを考えたりしている時やディフェンスとの1対1 でドライブに行けないか駆け引きをしている時が多いとい う傾向がみられた. 2)プレイヤーの語りから状況判断の理由を整理していく と,四つの要因に分けることができた.具体的には,ディ フェンスや味方選手に関わる人的要因,時間帯やスペー ス,行けるコースなどに関わる物理的要因,試合展開や点 差などに関わる展開的要因,ならびにプレイヤーの気持ち や考えなどに関わる心理的要因である. 今後こうした要因をプレーにおける状況判断を検討する 視点として活用できるようさらに検証していくことを課題 としたい. 注 注1) バスケットボール選手がゲームの際に求められる能 力として,①スキルを発揮するための能力②チー ムプレーを実行するための状況判断能力③プレッ シャーに対抗するための意志力 ④ルールを遵守 し,ゲームの流れを感じコントロールする知力 の 四つがあげられている. 注2) 半構造化面接法とは,事前に大まかな質問事項を決 めておき,回答者の答えによって,質問の内容や順 序,表現などを臨機応変に変更できる面接方法であ る.回答者の自由な反応を引き出し,回答者の語り に沿ったより詳しいデータを収集することができる (保坂他,2000,p.53) . 文献 保坂享他編(2000)心理学マニュアル面接法.北大路書房: 京都,p.53. 市村操一(2000)勝利するための瞬間的な動きと判断のコ ツ.海保博之編:瞬間情報処理の心理学.福村出版:東京, pp.227-243. 加藤敏弘 上地勝 新保淳 (2015) バスケットボールスクー ルの新たな指導体験がコーチングに与える影響:状況判 断能力の育成に着目して.教科開発学論集,3:113-123. 小峰信也(2004)ボールゲームにおける状況判断. http://www.chs.nihon-u.ac.jp/pe_dpt/mizuochi/sposin-e/ kojin/hakone/shinya/toppage.html( 参 照 日,2015年10月 15日) 財団法人 日本バスケットボール協会 鈴木一行(2005) バスケットボール指導教本.大修館書店:東京.. - 106 -.

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参照

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