立方体の2等分割から形成される形態
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(2) . 平成 8年8月. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第47巻 第1号 fEduca Se i lo fHokka i do Un i i i I t t t )VO Journa r c on1C ve s on( yo .47 .1 ,No. Au t s き り 1 , 1996. 立方体の2等分割から形成される形態. 岩. 下. 碩. 通. 北海道教育大学岩見沢校美術研究室. はじめに 彫刻 を見 る ある い はつく る という 体験は絵 画の そ れと は異 なりラ 三 次元の 空 間 にお い てい わ ゆる 現実 的 具 ,. 体的に視・触知可能な事物や事象としての表われを現われとすることであるのは自明のようにも 思える. 絵画は平面という二次元にいかに立体感や奥行きを, つまり擬似的三次元性をいかに再現するかという仮構 の 歴 史 をも っ ている‐ しか し彫刻 はも とも と, 三 次元 の 空 間 にお い て, 土 木 石 金属 とい っ た物 質 を素 , , ,. 材として物体化し, そこにあるいはそこで何かを表象しようとして来た立体であり, そしてそれが彫刻であ っ た‐ 護 符, 偶 像, モ ニ ュ マ ン, オ ブジ ェ そ して 環境 と 時代 によ っ て彫刻 の 意 味やあ り かた は変化 し続 けて. きたように見える けれ ども, ここでは彫刻がそれと して成立する空間のあらわれを考えるための予備的かつ 初等的手続きとして, 三次元の空間構造の単位としての立方体という抽象的, 数学的形態を前提と したい‐ もとより, 造形美術が対象とする形態は科学の分野で対象とする形態と一卵性双生児のようによく似ている 場合があるけれども, そのかたちの意味するものはまっ たく異なっ た独自のあらわれである. それは われ , わ れ が日常 接 している 「いく つ かの 自 由な運動 の 許さ れる 点 的な 場 所 と そ れら の 線 的なつ な がり へ と封 じ ,. 1 )ための可能態 こめられ, 抽象化され, 拡がりを閉め出された空間の規制から三次元そのものを解き放つ」( である‐ いうまでもなくそのような空間はけっ して人間に対して中立な, つねに同じものとして存続する媒 体ではないし, 人間から独立して単純にそこにあるのではないが, ここで考察しようとする形態は抽象的数 学的空間と造形美術 における空間形式との間にあると思われる連関をさぐる遊戯的試行とでもいうべきもの である. われわれが日常生活のなかで現実的, 具体的に接している空間は用途や機能や目的によって測定さ れ, 分割され, 配置された高度に抽象的空間であることをあらためて確認し そしてその後において 〈体験 , 2 )と して の彫刻 は探 求さ れる であろう した が さ れている 空 間〉( っ て彫刻 の 決定 的な属 性 である 物 質性, 物 ‐ 体性 につ い て は, ここ で は 除外さ れる.. ー空間と立方体 われわれは科学者の思考する抽象空間と具体的に体験されている生活空間とを区別する しかし 日常生活 . , のレベルで 「空間」 という場合, 思いのほか数学的空間を考えている‐ つまり抽象的な数学的空間と人間的 生活 空 間は漠 然 と で はある が合致 して いる かのよう 思 っ ている そ こ で ひとま ずわ れわ れは一 般 的 に知 ら . ,. れている数学的空間について再確認してみる. 空間の語源は空き間すなわち 「すき間」 「余地」 を意味し これが拡大されて われわれの住んでいる宇宙 , , , すなわち三次元の空間をさすようになった‐ 要するに空間とは点の集合で その構成の条件としていろいろ , 317.
(3) . 岩 下 碩 通. な方 法 が考 え られ, そ れ に よ っ て種々 の 空間 に分類 さ れる‐. ここで対象とする数学的空間の特質は, その等質性, 等方向性である. つまり ①どの点も他の点に対して優越しない. この空間は自然的な座標原点をもたず, むしろ目的につごうよいと いう理由で, 簡単な座標移動によって任意に選んだ点をどれでも座標原点とすることができる. ②また, どのような線も他の線に対して優越しない. 簡単な回転によって空間のなかの任意に選んだ線をど れでも座標軸とすることができる‐ 空間はそれ自身においては内的文節にわけられていず完全に均質でありまた, このようにしてすべての方向 に向か っ て無 限に ひろ が っ ている とする 三 次元 のユ ークリ ッ ド空 間 にお ける 直 交座 標軸 に基礎 をおく. つ ま. り, 三次元の空間は任意 の点を通る3本の直線が直交し, かつ無数の直交しあう3方向の直線で構成されて いて, それを一定の規則のもとに秩序だててゆく と, 三次元の空間は立方格子からなると考えることができ る‐ 立方格子は6個の合同な正方形面をつくりそれは立方体を形成する‐ したがって立方体は三次元の空間, いわゆる立体の概念をもっとも簡略なかたちで視覚化している 基本形態の一つであるとすることができる‐. (図1). 一. /. 無限に増大可能. 一. 無限に分割可能. 圏I. D立方体の二等分割 立方体は, 5種の正多面体のうちの一つであり, 6個の合同な正方形面,12本の等稜線, 8個の頂点を持つ. それ自体としては閉じられ, 固定的で完結した形態である立方体に同形・同大 (合同) に等分割するという 操作を加えることによって, 立方体は単なる空間図形という立場から脱して, さまざまにその外形を変え, 空間との緊張関係 をもって変貌のきざしを見せはじめる. 等分割にあたってはいろいろな方法が考えられるが, ここでは立方体の8個の頂点, 12本の稜線の中点, 6 318.
(4) 立方体の2等分割から形成される形態. 個の面の中心 (対角線の交点) , 1個の重心点 (空間対角線の交点) を使い, それぞれの組み合わせによっ て連結し, 分割するという条件を設ける‐ さらに分割された形に正方形面を少なくとも1個残すという条件 を付け加える. このような枠組みを取り払うことで, 数多くのさまざまな等分割があらわれてくるが ここでの展開にとっ , てさしあたり必要としないので省略する‐ 以上の条件にそった基本的な立方体の2等分割の例 (図2) を以下に示す. a ( ) 4個の頂点連結による分割, 断面は長方形. b ( ) 4個の中点連結による分割, 断面は正方形 ( ) 2個の頂点と2個の中点連結 による分割 断面は平行四辺形 c , ( d ) 6個の中点連結による分割, 断面は正6角形 ) 重心点と6個の頂点連結による分割, 断面は6個の合同な2等辺3角 形 ( e ( f ) 重心点と6個 の頂点連結による分割, 断面は4個の合同な2等辺3角 形. (a). (d). (b). (e). (c). (f). 図2. 319.
(5) . 岩 下 碩 通. m立方体の2等分割から 立方体の空間図形としての特質にそいながら, 2等分割というきわめて簡単な操作を加えることによって, 立方体はその内部にさま ざまな面をもつ多様な形として表われはじめる. 空間図形に特有の空間対角線を使いさらに3等分割, 4等分割, 6等分割等を試みる と興味深い展開が期待 a )を ) できるが, ここではロで示した2等分割のうち, 4個の頂点連結 (2本の対角線) による分割 (図2( 基本とし, 形の変化によっ てもたらされる三次元空間の抽象的なあらわれについて検討してみたい. 2C ) 1/ 1 )立方体Cを2個の対角線によって2等分割 (図3・C.) し, 稜線(イ)(口)を軸に分割された片側 ( ( を回転移動し, 正方形面 どう しを接合させる と平行6面体 (図3・C2) が得られる. さらにC2の2個の 平行四辺形の対角線によって2等分割し, 同じように回転移動 を接合させると面角と平行四辺形の辺の長さ の異なる平行6面体 (図3・C3) が得られる. したがって同じ操作によりCn が得られる‐ (ロ). (ニ) (ハ). イ. C3. C2. C2. CI. 図3. ) (図4) と し, a と c )( 次 に, 2等 分割 さ れたC1 e a c , ,f ,d , b) ( , Cn の 三角 柱 を そ れ ぞ れ ( , C2 , C3. )と( b ) のような形が得られる‐ (図5-1) ( )( b+d a+c bとdの直角2等辺3角形面を接合する と, ( a+c ) は同 十d 、形・ 同大 であ る‐. a. e. c. b CI. d C3. C2. 図4. ) (図5ー1) が形成される‐ 同 )+( b+d これを回転移動し直角2等辺3角形の稜線を接合する と ( a十c ) (図5 ) (図 5 - 2) あ る い は ( ) + ( f十d ), ( ) + ( じ手 順 で ( b十f a+ C 十 e) + (b + d +f c十e a十e. -3) が形成される. これらはいずれも相対する 内側の面に隙間をもつ‐ 2又は3個の立方体の分割から形 成された形態である‐. 320.
(6) . 立方体の2等分割から形成される形態. (a +. ( b + d). c). ( a 十 c) + (b + d). 図 5ーI. (c +. e). (f + d). (c. +. e). + (f + d). 図5-2. (a +. C. +. e). (b + d + f). 321.
(7) . 岩 下 碩 通. (a +. c. 十. e). + (b + d + f). 図5ー3 (2)(1) で得られた平行6面体C2の長方形を2本の対角線によって2等分割し, 同じように稜線ホ) へ) を軸に回転移動, 接合させると平行6面体C3が得られる. さらに, C3の平行4辺形を2本の対角線によ っ て2等分割し, 同じように稜線 (ト) (チ) を軸に回転移動し接合させると, 面角と平行4辺形及び長方 形の辺の長さの異なる平行6面体C4 (図6) が得られる. したがっ て, 同じ操作によりCd が得られる.. (チ). (へ) (ホ). CI. C2. (ト). C4. C3. 図6 次に, 立方体 (C) 及 び斜方平行6面体 (C4, C5) の正方形をそれぞれ2本の対角線により2等分割 すると, 直角3角柱C (a, b) 及 び斜方直角3角柱C4 (c, d), C5 (e, f) となる. aとc, bと dの直角2等辺3角形面をそれぞれ接合すると (a+C) , (b+d) が得られる‐ これらは, 同形同大である‐ これを回転移動し接合することによっ て, (a十c) + (b十d) 及 び (a +e) + (b十f) (図7ー3) が形成される‐ これらは, いずれも2個の同形同大の立方体の2等分割か らなる隙間をもたない多面体 ( 12面体) の一種である‐ 尚, (c+e) + (d+f) の場合, 隙間を持つ形 が形成される. (図7ー3). 322.
(8) . 立方体の2等分割から形成される形態. C. e. 図7 ーI. (a. + c). (b + d). ( a + e). (b + f). 323.
(9) . 岩 下 碩 通. 図7ー2. (a 十. e). + (b + f). (c 十. e). + (d + f). 図7ー3. W 立方体の2等分割から造形へ を繰り返していき, 2 皿の (1) , (2) から類推されるのは, 立方体Cを基点とし対角線による2等分割 等分割によって生ずる直角3角柱及び斜方直角3角柱の組み合わせから形成される形態のバリエーションは 数限りなくある ということである‐ ここに取り上げた例は, 実際にその模型制作が容易にできるものに限定 さ れて いる.. び斜方 さて, 感覚的, 造形的視点から (1) , (2) に検討を加 えてみる と, (1) の場合, 直角3角柱及 3角 柱 の接 合 によ っ てあ ら わ れる 一つ の面 がフラ ッ トな 同一面 のつ な がり とな り, こ れを 回転, 接 合 させ た. 形態は隙間を持つに至るけれども, 単にその状態では変化に乏しく, われわれの視線の移動を固定化してし まう・ そこで, 一つの正方形面を底辺にし, フラッ トな面を視線に対し正面に据えて固定し立たせる工夫をする 324.
(10) . 立方体の2等分割から形成される形態. ことで, はじめの等分割面, つまり等分割された直角3角柱の長方形面が見える線 (稜) としてのあらわれ はないけれ ども, 2本の空間対角線を含んでいて繰り返された形に内包され続け, それが起因となりこの形 態の持つ面と隙間に緊張のある空間性を付与しているように思われる. (2) の 場 合, 12面 体 が形 成 さ れ, そ のう ち の 3 面 が凹 状 を な し, 他 の 9 面 が凸 状 を な し, (1) と の 比. 較ではそれ自体で変化のある特異な形状を呈し, それを水平面に置くと凸部の平行4辺形面の一つを底面と し, 凹部を上部面として安定するが, 水平面に対し凸部をなす4面が異なる角度を持って接するために, 変 化 の ある トリ ッ キ ー な 空 間性 をあ らわす ので はな い かと思 わ れる. さ ら に, (1) の c, d, e, f と (2) の c, d, e, f の 組 み 合 わ せ によ っ て, 数多く の バ リ エ ー シ. ョ ンを展開することができるが, それらはいずれもよりトリッキーな錯覚図形的相貌を呈することを指摘 し ておく こ と にと どめる.. むすび mの (1) , (2) は3次元の空間構造を呈する単位形としての立方体に対し, 直接的には対角線, 間接的 には空間対角線に着眼し, 分割・回転移動・接合という3つの操作の反復により, 立方体を柔軟で開かれた か たち と して捉 え 直そう と したも の である. も とよ り 「か たち」 につ いて の何 か を 明 ら か に しよう とする こ. とが目標でなく, 造形への手がかりやヒントを探る方法の一つに過ぎないし, その発想や展開は未だ空間図 形の遊戯的試行 にとどまっている. しかし, これを解き放たれた3次元の空間への兆しとしてとらえられな い だろう か, あ る い は そ の可 能性 がな いと は いえ な い 試行 では ない だろう か そ のよう な予 見 の も と に初等 ‐. 的, 予備的段階をへて更に検討をかさね, 空間図形からより造形的な形態としての現実性を獲得するために , 素材, サイ ズ及 びその設置, 配置方法等の諸要素を同時的に考察する作業の後, 彫刻として作品化されるで あろう.. 注 (1) 松本 透. 「三次元性にっいて」. 注 (2) オッ トー. フリ ー ドリ ッ ヒ ・ ポルノ ウ. - 三次元性- ドイツ彫刻の現在展カタログ, 19 8 4年 P14~17 大塚 恵一他訳 「人間と空間」 19 7 8年 せりか書房 P17~21. 参考資料及び参考文献 1, 吉本 直貴. 「立方体一正六角形 」. 19 75年 個展カ タ ロ グ. 2, Rober l l i t wi ams 「NATURAL STRUCTURE」 1972年. Eudaemon Pre ss. 3, H, ステインハウス/遠山 啓訳 「数学スナップショット」19 76年 紀伊国屋書店 4, マグナスJ・ウエニンガー/茂木 勇他訳 「多面体の模型」1 979年 教育出版 5, マーチン・ガー ドナー/赤 摂也他訳 「数学ゲームほ (別冊サイエンス)」198 0年 日本経済新聞社 6, 宮崎 興二 「多面体と建築」19 79年 彰国社 7‐ 岩田至康編 「幾洞 学大辞典2」197 4年 榎書店. 325.
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