診療所と協働で行う新人助産師教育の取り組み
−プライマリー助産ケアプロジェクトの実践報告−
Collaborative Clinic and University for Novice Midwife Education:
A Practical Report of the Primary Midwifery Care Project
渡邉 竹美
1),小林 康江
2),中込さと子
2),丸山 和美
2) WATANABE Takemi, KOBAYASHI Yasue, NAKAGOMI Satoko, MARUYAMA Kazumi要 旨
2011 年 10 月より,「ローリスク妊産婦に対する妊婦健康診査・分娩管理・産後の母子のトータルケアが提 供できる助産師の養成」を目的に,診療所と大学の連携・協働によるプライマリー助産ケアプロジェクトがス タートした。1年目のプロジェクトの活動は,診療所における臨床活動を中心に,新人助産師を迎えるため の準備としてのフィールドの整備と教育体制強化であった。2 年目の活動では,診療所で新人助産師を迎える ための 1 年目の新人助産師教育プログラムの作成と教育体制について検討を行い,2013 年 4 月から新人助産 師教育を開始した。本報告では,新人助産師教育のプログラムの概要と本プログラムで教育を受けている新 人助産師の実践状況を報告する。 キーワード プライマリー助産ケアプロジェクト,新人助産師,診療所との協働Key Words Primary Midwifery Care Project, Novice Midwife, Collaborative Clinic and University
受理日:2013 年 12 月 16 日
1) 山梨大学大学院医学工学総合研究部(プライマリー助産ケア): Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering (Primary Midwifery Care), University of Yamanashi
2) 山梨大学大学院医学工学総合研究部(母性看護・助産学): Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering (Maternity Nursing & Midwifery), University of Yamanashi
Ⅰ.はじめに
山梨県内の分娩取扱施設は,7 病院,8 診療所,2 助産 所の合計 17 か所である。本県の分娩取扱施設は集約化さ れ,居住地周辺に出産できる施設がない地域もある。2011 年の出生場所を見ると,全国では病院 52.0%,診療所 47.0% と半数ずつである1)が,本県では 7 病院で 61.4%,8 診療所で 37.8% の出産を取り扱っている2)。次に助産師の 就業先を全国と山梨県で比較してみる。2012 年 12 月末現 在の全国の助産師の就業先をみると,病院 63.5%,診療所 20.9%,助産所 5.5% である3)。本県では 197 名の助産師が 就業しているが,病院勤務 72.1% に対し,診療所 9.1%, 助産所 7.6% であり,診療所で働く助産師は全国データの 半数以下であり助産師の偏在も明らかである4)。 助産師の病院への偏在が生じる要因の 1 つに,基礎教 育終了時の能力と臨床現場で求められる能力の乖離があ る。その改善のために 2009 年 12 月に厚生労働省より新 人看護職員研修ガイドラインが提示され,2010 年 4 月 から新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化された。 また,看護の質の向上に伴う医療安全の確保,新人看護 職員の早期離職防止等を鑑み,厚生労働省は予算を計上 し「新人看護職員研修事業」を創設した。2011 年 2 月には, 新人看護職員研修ガイドラインに助産技術の到達目標等 が加えられ,同ガイドラインの保健師編も提示された。 ガイドラインでは,助産師は看護師の就業形態の概念に 準じた形式で示されているため,日本看護協会では,新 人助産師に特化した「新卒助産師研修ガイド」5)を 2012 年 6 月に公開した。しかし,病院に就業する助産師の勤 務形態は,交代勤務,外来・病棟ごとの固定配置が主で ある。助産師として,自律した正常経過の妊産褥婦の管 理能力を向上させるためには,教育体制と連動した継続 ケアが実践できる場の確保が不可欠である。 診療所はローリスク妊産婦の管理を行う一次医療(プラ イマリーケア)機関である。我々は,プライマリーケアの 場に新人助産師が就職した場合,妊娠初期から産後の母子の健診まで,縦断的かつ継続的な妊産褥婦への関わり を通して助産実践能力の獲得が可能であると考えた。2011 年 10 月より,「ローリスク妊産婦に対する妊婦健康診査・ 分娩管理・産後の母子のトータルケアが提供できる助産師 (以下,プライマリー助産師)の養成」を目的に,診療所と 大学(成育看護学講座 母性看護・助産学およびプライマ リー助産ケア講座)の連携・協働によるプライマリー助産 ケアプロジェクト(以下,PMC プロジェクト)がスタートし た。1年目は,診療所における臨床活動を中心に,新人を 迎えるための準備として,フィールドの整備と教育体制強 化の活動を行った6)。2013 年 4 月から学士課程で助産基 礎教育を受けている学生の就職が内定していたので,2012 年 10 月からの 2 年目の活動では,診療所で新人助産師を 迎えるための 1 年目の教育プログラムと教育体制を検討 し,診療所における新人助産師教育が開始した。 本報告では,PMC プロジェクトの実践報告として,A診 療所における新人助産師教育のプログラムの概要と本プログ ラムで教育を受けている新人助産師の実践状況を報告する。
Ⅱ.方法
1. フィールドである A 診療所の紹介 A診療所のあるB市や隣接する自治体は,母子保健活 動が活発であり,妊娠中および産後に各 2 回あわせて 4 回の訪問を行っている。フィールドであるA診療所は, 地域に密着したプライマリーケアを担う施設である。 A診療所は平成 9 年 5 月に開院し,一次医療機関として ローリスクの妊産褥婦,胎児・新生児を対象に,健康診査, 分娩管理,産後の母子へのトータルケアを提供している。 外来と入院フロア(病床数 15 床)に分かれている。年間およ そ 300 件の分娩があり,B市および周辺地域在住の妊婦や 里帰りの妊婦が訪れる。また婦人科では,予防医療から疾 患の治療など,生涯にわたる女性の性と生殖に関わる健康 支援を行っている。看護スタッフの配置は,外来と入院フ ロアとに固定していない。2 交代制で,日勤は複数体制で あるが,夜勤は 1 人の体制で拘束者 1 人が待機している。 外来は予約制で,妊婦健康診査のスケジュールは,産 婦人科診療ガイドラインに沿って整理されている。妊婦 健診では,看護スタッフも超音波検査を用いた健診を行 い,妊娠 24 〜 25 週の中期健康相談では,バースプラン や母子同室,母乳育児など,妊婦の希望を確認する機会 を設けている。婦人科では,低用量ピルの服薬指導など, 看護スタッフが関わる機会も多い。外来では,医師・看 護職の医療従事者とコメディカルの両者が役割分担を行 い,機能的な外来になっている。 入院フロアは,分娩のための入院が大部分を占める。分 娩管理の基本方針は自然分娩であり,助産師は入院の判 断から分娩終了まで自らの判断で実践し,分娩経過中にリ スクが予測される場合を除き,基本的に医師は立ち会わな い。分娩後は褥婦の希望を確認し母子同室を開始し,母 子の状態に合わせた母乳育児支援を行っている。授乳は 早期からの自律授乳を基本としているが,新生児室で預 かる場合には授乳室での授乳や人工乳の補足を行ってい る。分娩後の入院期間は,経腟分娩では分娩当日を含め 5 日間,帝王切開では 10 日間である。正常新生児であって も生理的体重減少で体重が 2500g を下回った場合には入 院とし,2500g を超えた期間が 2 日継続した時点で退院と している。また,入院中の体重増加が緩徐な場合には,退 院後も引き続き外来でフォローアップしている。 分娩以外では,切迫流・早産,妊娠悪阻などの入院妊 婦ケア,外来通院妊婦の自己血貯血,退院後の新生児の 黄疸検査や体重チェック,母乳育児相談や乳腺炎のケア にも対応している。 2. プライマリー助産師教育プログラムの検討 2012 年 11 月から 2013 年 3 月までの 5 か月間に,月 2 回のペースで合同検討会を開催した。合同検討会のメン バーは,A診療所 6 名(師長,助産師 3 名,非常勤助産 師 2 名),大学 5 名である。初めに 3 年間の教育目標のゴー ルである「ローリスク妊産婦に対する妊婦健康診査・分 娩管理・産後の母子のトータルケアが提供できるプライ マリー助産師の養成」に向けて,1 〜 3 年目までの各年 の教育目標を検討した。1 年目は,「分娩・産褥・新生 児の助産ケアの自立,妊婦健診の経験」,2 年目は「妊娠 期の継続した助産ケアの自立」,3 年目は「妊娠期から産 後の母子の継続した助産ケアの自立」と決定した。 1 年目の教育プログラムの検討では,「新卒助産師研 修ガイド」5)を参照し,ディスカッションを重ねながら 「新人助産師教育 1 年目の進行表」を作成した。プログラ ムの検討と並行し,新人助産師を迎える準備は,前年度 に作成した看護基準・手順のブラッシュ・アップ,業務 チェックリストの作成,各段階別到達度チェックリスト の作成,オリエンテーション資料の作成を診療所のス タッフ主導で行った。プリセプター制を導入して新人教 育を実施している施設の助産師を招き,教育体制の具体 例を紹介していただきディスカッションした。 1) 1 年目の教育プログラム 教育プログラムは,施設ガイダンス,オリエンテーショ ンと分娩介助件数(10 例,20 例,30 例,31 例以降)を目 安に,第 1 〜 4 段階の 4 期に分け,各段階の教育内容と 体制,臨床判断・技術,評価を設定した。 (1) 教育内容と体制 施設ガイダンスは,施設の概要(施設の特徴,受診す る患者の特徴,看護の方針,勤務体制など)やシステム(コ ンピュータシステム,院内設備や機械類など)を理解す ることを目的に 4 日間のスケジュールを組んだ。オリエンテーションは,施設の一員として業務が行えるように なることを目的に 5 日間の予定で実施することとした。 第 1 段階は「産婦ケア」の強化とし,「入院から分娩後 2 時間・帰室まで」を継続して受け持つことを基本とした。 勤務は基本的に日勤としたが,分娩の進行状況により勤務 時間の延長や,夜間産婦が入院した場合にはオン・コール とした。指導は,マンツーマン体制で行い,10 例終了時 には新人助産師が一人で産婦を受け持ち,分娩進行の判 断・ケアができるよう指導助産師の責任のもとに実践する こととした。第 2 段階は「間接介助 / 出生直後の新生児ケ ア」の強化を目指した。勤務は基本的に日勤であるが,受 け持った産婦の分娩進行により,勤務を延長することとし た。第 3 段階は,「母子のケア」の強化を目標にした。また 勤務は,リーダー業務や夜勤の開始時期を検討することと した。第 4 段階では,自立した実践を目指すこととした。 (2) 臨床判断・技術 臨床判断・技術は,「病棟」「外来」「採血・点滴技術」 に分類した。病棟で実施する内容は対象別に,分娩期の 直接介助と間接介助(出生直後の新生児ケアを含む),母 子および入院となった新生児ケア,帝王切開術の術前・ 術後ケア,入院中の妊婦ケアとした。また,第 1 段階で 強化した実践内容は,第 2 段階終了時には「独り立ちを目 指す」,第 3 段階終了時には「チームの一員として独立し て実施」できることを目標とする自立度の目安を併記し た。このように新人助産師が段階的に,「産婦」「出生直 後の新生児」「母子」へとケア対象を拡大しながら,臨床 判断や技術を習得し,第 4 段階の後半では,「分娩・産褥・ 新生児の助産ケアの自立」を 1 年目の到達目標とした。 (3) 評価 評価は,業務チェックリスト,段階別到達度評価,分 娩介助自己評価の 3 種類を準備した。業務チェックリス トは,「分娩に関する業務」「産褥に関する業務」「新生 児に関する業務」「外来に関する業務」「入院中の妊婦に 関する業務」「その他の看護技術」で構成した。このチェッ クリストは,施設の一員としての業務の自立を確認する ことを目的に作成した。 そして,チェックリストの評価は,指導に当たる全ス タッフが担当することとした。段階別到達度評価表は, 新人助産師研修ガイドのチェックリスト7)を使用し一部 の記載内容を診療所用に修正した。段階別到達度評価は, 新人助産師の到達度を指導助産師が見極めることを目的 とし,各段階終了後に指導助産師が評価を担当すること とした。分娩介助自己評価表は,新人自身が分娩介助し たケースの自己評価を行い,リフレクション能力を身に 着けることを目的とした。第 1 段階の 10 例までは,分娩 介助自己評価表を用いて指導助産師からの他者評価を受 け,第 2 段階の 11 例目以降は,適宜,新人が自ら指導助 産師に指導を仰ぎながら他者評価を受けることとした。 1年目の新人助産師教育のプログラムの概要を表1に示す。 表 1 新人助産師教育プログラムの概要 1 年目の教育目標 分娩・産褥・新生児の助産ケアの自立2 年目に向けて妊婦健診を経験 教育内容と体制 レベル オリエンテーション 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 強化 独り立ちを目指す チームの一員として独立 自立を目指す 勤務 日勤 日勤 /on call 日勤 リーダー業務を考慮夜勤開始時期を検討 通常の勤務 分娩介助数 見学 1 〜 10 例 11 〜 20 例 21 〜 30 例 31 例〜 指導体制 マンツーマン マンツーマン 新人の行動をモニターし, 必要時一緒にケアを実施. 報告のタイミングの指導 決められた時間に 報告を受ける 責任の所在 指導助産師 指導助産師 指導助産師 / リーダー 新人と指導助産師 / リーダーの両者 臨床判断・技術 病棟 産婦 オリエンテーシ ョン / 見学 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 出生直後 の新生児 実施せず 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 母子 分娩がない場合は オリエンテーション 分娩がない場合は スタッフと共に実施 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 妊婦 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 外来 妊婦 実施せず 10 月〜 外来業務を一部実施 採血・ 点滴技術 オリエンテーシ ョン / 見学 外来の採血 翼状針を用いた点滴管理 留置針による血管確保 評価 業務チェック リスト ・オリエンテーション期間から使用し毎日自分でチェックする ・各項目について,説明を受けた時と自分で実施した時の 2 回チェックする ・オリエンテーション担当助産師,日々の担当助産師は業務終了後に新人と共に確認し,振り返りをする 段階別到達度 10 例終了後の評価 20 例終了後の評価 30 例終了後の評価 40 例終了後の評価 1 年後の評価 ・評価は新人と指導助産師の 2 者で行い,指導者が段階ごとの到達度を評価する 分娩介助事例 自己評価 10 例までは小項目で自己 評価し,事例毎に指導助 産師と振り返りを行う 11 例目以降は大項目で自 己評価し,自ら指導を仰 ぐ.20 例終了時には指導 助産師と振り返りを行う 30 例終了時に大項目で自 己評価し,指導助産師と 振り返りを行う 40 例終了時に大 項目で自己評価 し,指導助産師 と振り返りを行う
3. 倫理的配慮 A診療所および新人助産師には,研究協力者として研 究参加を依頼し,書面および口頭にて,研究の趣旨,参 加方法,結果の公表等を説明し承諾を得た。また,得ら れたデータの公表に際しては,施設や個人が特定されな いよう配慮した。本研究は,山梨大学医学部倫理委員会 の承認を得て実施した(承認番号 1066)。
Ⅲ.結果
1. On the job training(OJT)の実際
3 月 26 日より,新人助産師の診療所での勤務が始まっ た。施設ガイダンスは予定通り 4 日間の日程で実施した。 ガイダンス最終日には,A診療所での分娩管理を見学し た。オリエンテーションは 5 日間の日程で実施し,4 月 8 日から第 1 段階開始となった。 オリエンテーション期間から第 2 段階終了までは,プ リセプター制を導入した新人教育を行った。第 1 段階の 教育プログラム進行中は,適宜,大学が参画し,プリセ プター助産師,指導助産師の相談に応じ,調整を行った。 第 3 段階に入り,リーダー業務や夜勤を開始し,10 月末 現在,産婦ケアは第 4 段階,出生直後の新生児ケアは第 3 段階に入り,母子のケア,妊婦ケアも第 3 段階に入る ところまで来ており,ほぼ自立した実践であった(表 2)。 2. 分娩介助 40 例と新生児受け 20 例のケースの概要 10 月 30 日には分娩介助 40 例,10 月 28 日には新生児 受け 20 例を実施した。表 3 にそれぞれの概要を示した。 分娩介助を行った 40 例のうち 11 例(27.5%)は,微弱陣 痛の診断で陣痛促進を開始していたが,11 例中 5 例は 母体の疲労に起因する微弱陣痛であると考えられた。ま た,微弱陣痛の要因として 5 例に回旋異常がみられたが, 分娩時にはすべて前方後頭位であった。 表 4 は 40 例の陣痛開始から分娩経過,分娩方法まで の縦断的経過である。40 例中,自然に陣痛が開始した 31 例をみると,自然の分娩経過で自然の娩出に至った のは 18 例(58.1%)であった。自然に陣痛開始したケース であっても,およそ 4 割は医学的管理を必要としていた。 3. 分娩介助自己評価表の記述内容 産婦ケアの実践能力は,分娩介助自己評価表に記載さ れた自己評価内容を分析した。第 1 段階では,学生時代 の経験を想起しつつ,分娩経過を判断する視点や視野の 広がりを感じるとともに,自分で判断することの難しさ を感じていた。第 2 段階では,分娩進行の判断・予測に ついて,報告・相談するタイミングの難しさを感じなが らも,20 例目ではほぼ 1 人で分娩管理ができるように なった。第 3 段階では,スタッフや医師との情報共有へ と視点をシフトさせた分娩管理を行うとともに,産婦の ニーズや快適性を追求する産婦ケアを目指していた。 4. Off the job training(Off-JT)
院内では事例検討会や勉強会を行い,院外研修では, 山梨県の委託事業として山梨県立大学看護実践開発研究 センターで開講している「新人看護職員多施設合同研修」 を受講している(5 月 21 日より 1 年間で全 7 回)。また, 表 2 新人助産師教育の進行状況(2013 年 10 月末現在) 教育内容と体制 レベル 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 強化 独り立ちを目指す チームの一員として独立 自立を目指す 勤務 日勤 /on call 日勤,一部延長 リーダー業務:7 月 18 日以降 通常の勤務 夜勤:7/30 以降 分娩介助数 1 〜 10 例 11 〜 20 例 21 〜 30 例 31 例〜 指導体制 マンツーマン 指導助産師のモニタリング 報告を受ける 臨床判断・技術 病棟 産婦 第 1 段階 4 月 8 日〜 第 2 段階 5 月 16 日〜 第 3 段階 6 月 28 日〜 第 4 段階 9 月 3 日〜 出生直後の 新生児 第 1 段階 5 月 16 日〜 第 2 段階 7 月 9 日〜 第 3 段階 10 月 29 日〜 母子 第 1 段階 6 月下旬〜 第 2 段階 9 月〜 第 3 段階 妊婦 第 1 段階 6 月下旬〜 第 2 段階 9 月〜 第 3 段階 外来 妊婦 実施せず 10 月〜 外来業務を一部実施 採血・点滴技術 外来の採血 翼状針を用いた点滴管理 留置針による血管確保 自己血貯血 / 返血 新生児の採血(血糖,ビリ ルビン,ガスリー検査) 評価 到達度評価 5 月 20 日 7 月 19 日 9 月 24 日
山梨県看護協会助産師職能委員会主催の新人助産師研 修,山梨大学 PMC プロジェクト研修会,山梨県母性衛 生学会,母乳育児支援に関する研修会等に参加していた (表 5)。
Ⅳ.考察
PMC プロジェクトでは,プライマリーケアの場で,妊 娠初期から産後の母子の健診までを縦断的・継続的にケ アを提供することを通して,正常妊産褥婦・新生児に対 する助産ケアを管理できる助産師を育成することを目的 としている。正常妊産褥婦・新生児に対する助産ケアの 管理には,異常のリスク判別能力を獲得し,不測の事態 に対応できることも含まれている。助産師がリスクアセ スメントとマネジメント,妊産婦や家族の意思決定を支 える,根拠や理論に基づいた安全で確実な助産ケアが提 供できるようになるための卒後研修プログラムである。 A診療所では,これまでに助産学生の実習指導の経験 はあったが,新人助産師を受け入れるという経験はな かった。PMC プロジェクト 1 年目の活動では,助産学 実習の学生指導の場面を活用し,初心者である学生に対 する教育方法について,個々の助産師に対する OJT を 行い,教育体制の強化をはかった。OJT の成果として, 学生の技術到達度について,個々の助産師によりとらえ 方が異なること,他のスタッフが記載した学生の評価内 容を読むことで他のスタッフがどのような視点で学生指 導を行っていたのかを知る機会になったことなど,通常 の業務では気づきにくかったスタッフ同士のケアに対す る価値観や視点を知る機会になっていた6) 。また,教育 プログラムを検討するプロセスにおけるディスカッショ ンでも,スタッフ個々の価値観や新人助産師をどのよう に迎えるのか,どう成長してほしいのかなど,個々の考 えを知る機会になっていた。 A診療所では,夜勤を一人で行うため,分娩管理がで きる能力の習得を目指した。第 1 段階では,「入院から 分娩後 2 時間・帰室まで」産婦を継続して受け持つこと を基本とし,新人助産師が産婦ケアに専念できるような 勤務とした。また,プログラムの検討過程では,産婦の 入院時期を判断することも計画したが,第 1 段階では経 験できず,第 2 段階で入院の判断を含めた分娩管理を実 施した。助産学生の時に受け持つ産婦は,実習目標に準 じた対象者を臨床側が選定していたが,就職後は施設を 訪れるすべての産婦が受け持ちの対象である。新人期に おいて,産婦の入院あるいは受け持ち時から分娩終了ま で継続して受け持ち産婦ケアの経験を重ねることは,的 確なリスクアセスメントを行い,分娩進行を予測し,助 産ケアを実践・評価できる能力,つまり臨床判断能力の 習得に有効である。また,継続して産婦を受け持ち,分 表 3 分娩介助および新生児受けを実施したケースの概要 対象者 経過 娩出方法 出血量 500g 以上 新生児の異常 初産 経産 自然 促進 誘発 誘発の適応 帝切 自然 吸引 吸引の適応 帝切 分娩介助 第1段階 1〜10例 5 5 5 5 0 5 5 胎児機能不全 3件 3 臍帯ヘルニア(搬送) 1件 分娩停止 1件 新生児仮死Ⅰ度 (バッグ&マスク)1件 母体疲労 1件 第2段階 11〜20例 5 5 4 2 4 予定日超過 3件 7 2/1* 胎児機能不全 2件 3 新生児仮死Ⅰ度 1件 計画分娩 1件 分娩停止 1件 第3段階 21〜30例 6 4 3 3 4 予定日超過 2件 7 3 胎児機能不全 1件 2 新生児仮死Ⅰ度 1件 計画分娩 1件 分娩停止 2件 羊水過少傾向 1件 第4段階 31〜40例 4 6 8 1 1 計画分娩 1件 9 1 胎児機能不全 1件 3 早産・低出生体 重児 1件 小計 20 20 20 11 9 予定日超過 5件 28 12 胎児機能不全 7件 11 臍帯ヘルニア(搬送) 1件 計画分娩 3件 分娩停止 4件 新生児仮死Ⅰ度 3件 羊水過少傾向 1件 母体疲労 1件 早産・低出生体重児 1件 新生児受け 第1段階1〜10例 3 7 4 3 2 予定日超過 1件 1 6 3 胎児機能不全 3件 1 予定 帝切 1件 2 なし 計画分娩 1件 第2段階 11〜20例 7 3 8 1 0 1 5 4 胎児機能不全 1件 1 緊急 帝切** 1件 4 早産・低出生体 重児 1件 分娩停止 3件 小計 10 10 12 4 2 予定日超過 1件 2 11 7 胎児機能不全 4件 2 6 早産・低出生体 重児 1件 計画分娩 1件 分娩停止 3件 注 1)1*は,鉗子分娩 2)緊急帝切**は,予定帝王切開であったが破水し陣痛開始 表 4 分娩介助を行った 40 例の分娩経過と娩出方法 陣痛開始 経過 娩出 自然 31 自然 20 自然 18 吸引 2 促進 11 自然 5 吸引 6 人工 9 誘発 9 自然 5 吸引 / 鉗子 4娩介助事例の自己評価を行うことは,産婦ケアに責任を 持つことであり,自立した実践を行うための動機づけに なると考える。 新人助産師が就職し,4 月から 10 月末までの 7 か月 で行った分娩介助は 40 例であった。40 例中,自然に陣 痛が開始した 31 例をみると,自然の分娩経過で自然の 娩出に至ったのは 18 例(58.1%)であった。自然に陣痛開 始したケースであっても,およそ 4 割は医学的管理を必 要としていた。このことからも,時期を逸することなく 医師と連携する,すなわち「早めに医師と調整できる」能 力の獲得が必要であることがわかる。 本プログラムは現在も進行中であり,概ね順調に進行 している。今後の課題は,①本プログラムで教育を受け た新人助産師の実践能力を分析し,教育プログラムの有 効性を評価すること,②妊娠期の継続した助産ケアを自 立して行うための 2 年目の教育プログラムを作成するこ と,③ 2014 年 4 月には,学士課程で助産師教育を受け た学生と大学院で助産師教育を受けた学生の 2 名の新人 助産師の教育を行う予定であり,2 名の新人助産師を教 育するための教育プログラムの修正である。 本 報 告 は, 科 研 費 補 助 金 基 盤 研 究(C)課 題 番 号 245933691「地域連携型『継続助産ケア実践研修プログラ ム』の創成」(研究代表 小林康江)の一部である。 引用文献 1) 母子衛生研究会(2013)母子保健の主なる統計 平成 24 年度刊 行,47-48. 2) 山梨県福祉保健部医務課(2013)平成 23 年人口動態統計. http://www.pref.yamanashi.jp/imuka/23doutai.html(参照日: 2013-8-28) 3) 厚生労働省(2013)平成 24 年衛生行政報告例(就業医療関係)の 概況:3.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/12/ dl/h24_gaikyo.pdf(参照日:2013-10-16) 4) 山梨県福祉保健部医務課(2013)看護職員就業状況平成 25 年度. http://www.pref.yamanashi.jp/imuka/80868175291.html(参照 日:2013-12-8) 5) 日本看護協会(2012)新卒助産師研修ガイド. 6) 小林康江,渡邉竹美,窪田陽子,他(2013)プライマリー助産ケ ア講座(寄附講座)の設置と新しい助産師教育;設置 1 年の活動 報告.山梨大学看護学会誌,12(1):29-34. 7) 前掲 5)35-47. 表 5 Off-JT 年月日 テーマ / 研修内容 備考 院内研修 〈事例検討〉 2013.4.22 5 例目の分娩介助を行った事例について 2013.5.13 双子の母乳育児支援について 2013.5.22 胎盤娩出に時間がかかり産科大出血の対応が必要となった事例 合同事例検討会 2013.7.31 多発奇形を認める児を分娩した褥婦への対応について 合同事例検討会 〈勉強会〉 2013.5.22 出血時の対応〜 ALSO 研修の伝達講習 2013.9.2 超音波検査の原理・基本操作 院外研修 2013.5.18 第 14 回山梨県母性衛生学会学術集会(発表) 山梨県立大学 2013.5.21 〜 新人看護職員多施設合同研修(全 7 回) 山梨県立大学
2013.6.19 早産児・ハイリスク新生児医療,早産児をめぐる家族ケア;family cetered care
第 1 回山梨大学 PMC プロジェクト研修会「自分のキャリアを考える」 山梨大学 2013.9.1 第 5 回母乳育児支援を学ぶ甲信越教室 in 山梨 「母乳育児支援の基本」 「コミュニケーションスキルを使った授乳の支援」 JALC 甲信越エリア 2013.11.12 新人助産師研修 山梨県看護協会 2013.11.20 第 2 回山梨大学 PMC プロジェクト研修会「分娩進行の臨床判断」 山梨大学