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<症例報告>悪性腫瘍に合併した上大静脈症候群に対するステント使用6例の経験 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

症例報告

悪性腫瘍に合併した上大静脈症候群

に対するステント使用6例の経験

   国立療養所富士病院

呼吸器外科 古屋一茂 喜納五月 霜多広

堤正夫 石原重樹 並河尚二

呼吸器内科 椿原基史

 要旨:肺悪性腫瘍による上大静脈症候群をきたした症例のなかで,上大静 脈(SVC)内へのEMS(Expandable Metallic Stent)留置術を6例に行った。全

例においてEMS留置直後よりSVC症候群の症状は緩解し,且つSVC症候群の

再発は認めなかった。低侵襲で速効性があり,比較的長期間の改善効果が得 られることから,上大静脈症候群の治療として,有効性の高い方法である。    key words;superior vena cava syndrome,         expandable metallic stent,         1ung cancer,rnalignant neoplasm。       はじめに 上大静脈症候群は,肺癌患者4∼12%に認められる合併症で,症状が重篤な 場合は緊急の処置を要するoncologic emergencyの1つとされている。今回 我々は肺癌を含め胸部悪性腫瘍の治療経過中に合併したSVC症候群に対し、 EMSを狭窄部位に留置し症状の改善を認めた6例を経験したので、文献的考 察を加えて報告する。        対象  1994年から1998年までに当院で経験したEMS留置症例は6例であった。 (表1)  年齢は63歳から77歳で、男性5例女性は1例であった。原疾患は肺癌5 例,胸壁原発の悪性リンパ腫が1例で,肺癌の組織型は扁平上皮癌1例,腺癌 2例,小細胞癌2例であった。SVC症候群発症後の治療は、 EMS留置のみが3 例,EMS留置後,放射線照射と化学療法の併用した症例が3例であった。ス テント留置後の生存期間は23∼142日間で,2例は現在生存中であり,全例 SVC症候群の再発を認めなかった。

(2)

 以下4症例について経過を呈示する。        症例  症例1:75歳男性。  原疾患:右上葉原発のsmaU cell carcinoma。  平成9年10月20日労作時の呼吸困難出現。10月30日,右胸水貯留で近医よ り紹介入院となる。入院後,右胸腔ドレナージを行った。胸水細胞診はClass Vであった。症状軽減を認めた後,気管支鏡検査を施行しTBBでSmall cell carcinomaと組織診断を得た。11月12日より顔面と頚部の浮腫と呼吸困難が 出現した。SVC症候群を疑い,11月14日にSVC造影を施行。狭窄の認められ た部位にEMSを留置した。 EMS留置2日後にはSVC症候群の症状の改善を認 め,外泊も可能となるほどADLも向上した。カルボプラチン450mgとエトポ シド200mgの化学療法を2コースと、縦隔右胸部へのリニアック照射を行っ た。癌性リンパ管症を併発し,EMS留置後103日目に死亡した。  (図説明)入院前の近医で撮影された胸部単純X線(図1左)と入院時胸腔 ドレナージ施行中の単純X線写真(図1右);縦隔リンパ節の腫大と大量の胸 水を認めた。  胸部CT所見;一塊となった縦隔リンパ節によりSVCは壁外性の圧排を受 け,著明な狭窄を認めた。 (図2)  EMS留置前(図3左)と挿入後約50日後の胸部単純X線写真(図3右).化 学療法と放射線治療併用中であったが縦隔陰影の消退とEMSの十分な開大を 確認した。  症例2:77歳,男性。  原疾患:右上葉原発の低分化型腺癌。臨床病期はT4N3MI Stage lV (M:肝転移) 平成10年4月13日に近医で顔面の腫脹に気づかれ,SVC症候群を疑われ,

入院.4月24日SVC造影後狭窄部にEMSを留置,翌日には顔面,頚部,

右上肢の浮腫も消失した。症状の緩解を認めた後肺癌を強く疑い5月7日TB Bで上記診断を得た.縦隔と右上胸部にリニアック照射を開始した。良好に 経過し、現在経過観察中である.  (図説明)入院時胸部単純X線写真;右肺門から上縦隔へ連なる腫瘤陰影 を認めた。 (図4)  胸部CT;原発巣と縦隔リンパ節が一塊となりSVCを狭窄していた。 (図 5)

 SVC造影では右腕頭静脈からSVCに至る圧排狭窄を認め(図6左),EMS

留置後の胸部単純X線写真では狭窄の認められる部位までEMSが留置されて いた。 (図6右)

(3)

 症例3:63歳女性。 原疾患;左S6原発の高分化型腺癌。臨床病期はTINOMOのStage I A。平成8 年1月23日に左上葉切除とR2Aの郭清術を施行。術後約7カ月目に左鎖骨上 窩リンパ節転移巣に対しリニアック48.6Gy照射した。術後2年目のフォロー アップ検査で右側3番のリンパ節転移とそれによるSVC圧排狭窄を確認。顔 面浮腫や呼吸困難は認めなかったが,軽度の咳轍と顔面の重苦しさを自覚し ていた.今後SVC症候群となる可能性大と判断し,平成10年3月2日にEM Sを留置した。症状の改善を認めた。SVC狭窄部位を中心にリニアック32 Gyを照射,現在外来観察中である.   (図説明)初回入院時の胸部X線写真;左肺野に2.Ocm大の腫瘤陰影を認 めた。 (図7左)  術後2年目では縦隔陰影の開大を認めた。 (図7右)  胸部CT;右狽i 3番のリンパ節の腫大による右腕頭静脈とSVCの圧排狭窄を 認めた。 (図8)  SVC造影では,右腕頭静脈からSVCに至る圧排狭窄を認めた。 (図9左)

 EMS留置後のSVC造影では,右腕頭静脈とSVCにかけてEMSの十分な開

大を確認した。 (図9右)  症例4:65歳,男性. 原疾患:右S8原発の低分化型扁平上皮癌。 平成7年6月嗅声を主訴に近医より紹介入院。 臨床病期はT3N3MI StagelV M1は対側肺転移。 肺癌の診断でシスプラチンとエトポシドによる化学療法を2コース施行した が、PDのため退院となった。 平成8年2月咳嚇と息切れが出現した。気管及びSVCの狭窄を認めたため,気 管とSVCにEMSを留置した。症状の改善を確認し,退院となった。 3月下旬,癌性リンパ管症が出現し4月11日癌死した。   (図説明)初回入院時(図10左)と再燃時の胸部単純X線写真。 (図10 右)  胸部CTでは、病側と対側の一塊となったリンパ節のなかに、スリット状 の気管とわずかに造影されたSVCを認めた。 (図11)  SVC造影では、左右腕頭静脈からSVCにかけて著しい圧排狭窄を認めた。  (図12) 全身麻酔下で,気管へのEMS留置、更に右腕頭静脈とSVCへEMSを挿入し た。留置後の造影写真ではそれぞれのEMSの十分な開大を確認した。 (図 13)        考察 上大静脈症候群は喉頭浮腫,意識障害など生命の危険な状態を引き起こし、

(4)

更に頭重感や呼吸困難等によるquality of lifeを著しく損なうため,迅速な 対応が必要とされる1)。化学療法と放射線治療に抵抗性の症例や再発症例に おける対症療法としてはステロイドと利尿剤による保存療法やバイパス術, 血栓溶解療法などが行われてきた。近年上大静脈へのステント留置術が確立 され、普及し始めている。EMSは1985年にWrightらによって大静脈を含め た血管内への挿入報告がされた。以来,数多い研究がなされ、SVC症候群の みならず気管,気管支,胆道等の狭搾に幅広く利用されている。原疾患の根 治的治療にはなり得ないが,SVC症候群を呈した患者のQOLを向上させる目 的には、十分に貢献するbest supportive therapyの一つと言える2)。  今回全例に使用したzステントは伸展した際に全長が短縮しないため,留 置位置の決定が正確に行われる。隙間が大きいために,静脈の側枝を閉塞し ないという利点もある。一方編み目が荒いため,間隙から腫瘍組織が内腔へ 進展することも報告されている。内腔への進展を防ぐために、網目状のEMS としてwall stentなども開発された。しかしwall stentは血栓形成による閉 塞率が、zステントに比して有意に高く, zステントを上回る効果は上げら れていない3)。  ステント留置の適応は急激な発症例,放射線療法,化学療法で効果が得ら れない症例とされてきた。他の治療に先立ちまず最初に行っても良いのでは という主張もある。我々はQOL拡大の為に先に行う方法がよいと考えてい る。  SVC症候群を呈した小細胞癌では化学療法と放射線療法にたいする感受性 が高いため,対症療法の一環として,EMSの留置を付加しつつ,生存期間の 延長,ひいては,治癒をめざした治療法を行うべきである。  一方SVC症候群を呈した非小細胞癌症例では,根治的手術は、できない場 合が多く、且つSVC症候群に対する化学療法の有効性は不十分であるので、 放射線治療が中心となる。放射線単独治療で76%の症例において,SVC症候 群による症状が緩和したと報告されている4)・しかし放射線治療の効果出現 まで数日から数週間を要する事。SVC症候群の再発が10∼19%にみられ,再 発時には追加照射が不可能な場合が多い事。効果発現前に照射による浮腫の ため状態が治療前より悪化することがあるという多くの問題がある。このた め,ステント留置を優先し,全身状態が改善したところで化学療法や放射線 療法の治療を検討すべきと考える。  ステント留置により症状の軽快・消失が81∼100%得らる。原疾患のため 生存期間が規定されることもあるが,生存中に症状の再燃が見られることは 少ないとされている。今回当院での症例でも、症状の再燃もなく,速やかに 症状が軽快し,良好な結果を得た。

(5)

 また抗凝固療法や血栓溶解療法を併用すべきか否かについては見解の一致 を見ておらず,動物実験では4週間以内に被膜化がなされ,それまでの間,血 栓形成性を有するため抗凝固療法は必要であると言われている5)・SVC症候 群を呈する進行癌患者は、DICや潰瘍を併発する可能性が十分高いため,投 与困難な症例も多い。症例に応じて慎重に検討すべきである。当院では全例 に抗凝固療法は行わなかった。血栓などのトラブルは認められなかった。        結語  上大静脈へのステント留置術は保険診療では認められていない。ステント も胆道用ステントなどを代用しているのが現状ではある。ステント留置は低 侵襲で高い症状緩和効果,加えて,速効性と比較的長期間の効果持続が得ら

れる。末期癌患者のADLとQOLを確実に向上させる意義のある治療法の

1つである2)3)。        文献 1)小池加保児:上大静脈症候群.図説病態内科講座 呼吸器一1   (北村 諭),メデイカルビュー社,東京.46−49,1994 2)高尾仁二,島本 亮,安達勝利,徳井俊也,下野高嗣,並河尚二,湯浅 浩,矢田 公,村嶋秀市:上大静脈浸潤症例に対する治療法の選択。胸部 夕1・禾斗50:101−105, 1997 3)塚田祐子,栗田雄三:上大静脈症候群。呼吸16:1051−1055,1997 4)田中良明,河守次郎,島田裕司:上大静脈症候群に対する治療。癌の臨

床41:1519−1525,1995

5)冬野玄太郎,小林龍一朗,伊賀六一,野守裕明,堀尾裕俊,森永正二 朗,古寺研一1上大静脈症候群へのMetallic Stentの適応一画像所見と剖 検時の病理学的所見との対比一日胸疾会誌34:304−311,1996

(6)

patient characteristics Case Age/Sex Cause Treatment  for sVcs SurVival dε1ys  aftcr EMS   rcplacement 1 2 3 4 75ZM 77/M 63M 65/M 5  63fM 6  72刀M small cell ca. EMS+Chemo+Rad adcno ca.  EMS+Chemo+Rad adeno ca. EMS+Chemo+Rad squamous    EMS    cell ca. malignant    EMS  lymphoma sm a11 cell ca.   EMS 103 65(a]ivc) 118(alive) 48 23 142 【表1】 ユ998.6.27. 【図1】 【図2】

(7)

【図3】 【図4】

【図5】 「欝 【図6】

(8)

【図7】

【図8】

(9)

【図10】

【図11】

(10)

参照

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