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銀皮症を伴った膜性腎症の1例

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Academic year: 2021

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(1)

は じ め に 膜性腎症は 糸球体基底膜上皮下への免疫複合体の沈着 により生じる糸球体腎炎である。免疫複合体を生じる病態 としては 膠原病や腫瘍 薬剤などがあげられ 金製剤に よる膜性腎症は有名である。膜性腎症を引き起こす重金属 としては 金製剤のほかに水銀製剤 があげられている。 一方 皮膚組織に銀が沈着し青白色調を呈する銀皮症 は 長期間の銀製剤の内服 外用により生じる。太平洋戦 争前後は 硝酸銀液やアルシリン (胃潰瘍 下痢の治療 薬) によるものが多かったが 発売中止後は報告されな くなった。その後仁丹 の長期 用 乱用によるものが 報告されているが 近年ではきわめて稀な疾患であ る 。 今回われわれは 銀皮症に特徴的な皮膚所見を伴い 皮 膚に銀の沈着を証明した膜性腎症の症例を経験したので報 告する。 症 例 患 者: 歳 女性 主 訴:下 浮腫 既往歴: 年高血圧 後縦靱帯骨化症 現病歴: 年頃より顔色不良 青色爪半月を自覚し ていた。 年 月の尿蛋白は陰性であった。同年 月 中旬より下 浮腫が出現したため 月 日に近医受診 し 血液・尿検査にてネフローゼ症候群と診断された。 年 月 日に当科紹介受診し 精査加療目的のため 入院となった。 入 院 時 現 症:身 長 体 重 体 温 ° 脈拍 回/ 整 血圧 / 。顔面は青白 色を呈する( )。眼瞼結膜 血なし 眼球結膜黄疸な し。リンパ節触知せず。胸腹部異常なし。大 下 に浮 腫を認める。両手足に青色爪半月( )を認める。神 -( - -) ; : -: 亀田 合病院腎臓内科 (平成 年 月 日受理)

(2)

経学的には両下肢の筋力低下を認める。腱反射正常 感覚 障害なし。 入院時検査所見( ):血算 凝固系の異常なし。生 化学では低蛋白血症 高コレステロール血症を呈し 尿一 般検査は尿蛋白 + 尿潜血 + 尿沈渣で赤血球 ∼ / 円柱なし 蓄尿で尿蛋白 /日 / 。 尿中 や α など尿細管機能は正常 免疫グロブ リンや抗核抗体 補体は正常であった。また 皮膚に色素 沈着をきたす疾患として内 泌疾患や代謝異常を疑い 副 腎皮質機能や銅代謝 その他重金属の血中濃度を測定した が いずれも正常値であった。 腎生検所見( ):光顕上 糸球体は 個採取さ れ 完全硝子化や半月体形成はなかった。メサンギウム細 胞 基質の増加は一部に軽度で 係蹄壁の肥厚ははっきり しなかった。一部の糸球体ではメサンギウム領域に黒色の 沈着物が存在した。間質では尿細管上皮細胞の顆粒状変性 が目立ち 黒色顆粒が間質や傍尿細管毛細血管内皮細胞内 に沈着していた。間質の線維化は軽度で 炎症細胞浸潤な どは黒色顆粒周囲も含め存在しなかった。免疫染色では係 蹄壁に の沈着を認めた( の沈着は認めな かった)。電顕上は 上皮下に が存在し膜性 腎症 Ⅰ∼Ⅱと えられた。 皮膚生検所見( ):青白色を呈する顔面の左鼻翼か ら皮膚生検を行った。真皮上∼中層に黒色顆粒が沈着して いた。 ( - - ) 析 に よ る沈着粒子の検索:皮膚組織にて 電子顕微鏡で観察され た沈着粒子を 析(日本電子データム)で解析したと ころ これらの粒子は銀と同定された( )。腎組織の 黒色顆粒は 析を行えなかった。 Urinalysis protein (4+) 6.8g/day glucose (−) occult blood (1+) RBC 1∼4/HPF WBC 1∼4/HPF urine culture (−) 24hr Ccr 78ml/min NAG <0.5U/l α1MG 0.8mg/l Peripheral blood WBC 6,400/μl RBC 405×10/l Hb 13.5g/dl Ht 41.3% Plt 32.3×10/μl Blood chemistry TP 5.8g/dl Alb 3.0g/dl T-Bil 0.5mg/dl AST 21IU/l ALT 22IU/l LDH 388IU/l Ch-E 7,238IU/l BUN 17.0mg/dl Cr 0.8mg/dl Na 144mEq/l K 4.7mEq/l T-Cho 326mg/dl TG 144mg/dl BS 108mg/dl CRP 0.18mg/dl Immunological findings ANA 80× MPO-ANCA <10EU PR3-ANCA <10EU CH50 52.8U/ml C3 123.7mg/dl C4 30.4mg/dl Others Cu 106μg/dl ceruloplasmin 26mg/dl Al <10.0μg/dl Pb 2μg/dl Mg 1.9mg/dl ACTH 17.4pg/ml cortisol 10.5μg/dl urine OHCS 8.3mg/day

a b

(3)

入院後経過( ):入院後の腎生検 にて膜性腎症と診断した。ネフローゼ症 候群を呈したため プレドニゾロン /日で加療を開始した。これにより尿 蛋白は減少し 治療開始後 日で尿蛋 白は陰性化した。また 血清アルブミン 値も上昇した。 察 本症例は 銀皮症に膜性腎症を合併し た症例である。一般に 以上の銀を 摂取すると 銀皮症を発症するといわれ ている 。前述の 銀を含む薬剤の 用 歴は本症例にはなかったが 後縦靱帯骨 化症の疼痛 しびれに対し 約 年前 に鍼治療を数年間施行していた経緯があ る。鍼治療による銀皮症発症の報告も散 見され この場合は局所の銀皮症である ことが多いが 全身性の報告もあ る 。ま た 鍼 治 療 後 ∼ 年 経 過 し た 後 銀 皮 症 を 発 症 し た 報 告 も あ り 銀摂取後発症までには数年を要 するのが一般的である 。このことか ら 本症例の場合も鍼治療が影響してい る可能性は否定できない。 一方 膜性腎症は 基底膜上皮下への 免疫複合体の沈着により生じる糸球体腎 炎であり その成り立ちについては種々 (HE stain) Black granules deposited in the upper layer of the corium.

-(×6,000)

(PAS stain)

(4)

の報告があるが 明らかにはなっていない。金製剤による 膜性腎症の発症では 免疫複合体内に金の存在は証明され ず 腎に取り込まれた金は主に近位尿細管上皮細胞内に存 在している 。モルモットを 用した実験では 金剤の直 接毒性で障害された尿細管より放出された腎固有抗原に対 して自己抗体が産生され 間質性腎炎や膜性腎症が発症し たとの報告がある 。また 水銀も腎毒性があり膜性腎症 を発症するが これも免疫学的機序によると報告されてい る 。したがって 動物実験での金や水銀による膜性腎 症の成り立ちは類似の機序によるものと推察されてい る 。すなわち 金または水銀が何らかの組織障害を惹起 し 自己抗原を放出 これらに対する免疫反応が起こり免 疫複合体が生成されると えられる。 今回 腎組織に存在する銀と えられた黒色顆粒は 析 することができず その組成を同定できなかった。また 尿検査や病理組織からは著しい尿細管障害も存在しなかっ ( - - )

a:Electron microscopic finding shows some granules from the facial skin.(×12,000)

b:Granules were identified with silver. a b

(5)

; ( ): -; : -- -; : -; : -; : -加 藤 宏 西 川 武 二 銀 皮 症 皮 膚 病 診 療 ; : -池谷敏彦 橋本 紘 石垣 優 久野尚子 野崎憲久 銀 皮症の 例 皮膚臨床 ; : -大 久 保 義 彦 上 山 一 村 岡 新 一 郎 亀 井 二 本 啓 仁丹嗜癖で銀皮症を発症した精神 裂病の 例 精神 医学 ; : -秋本真理 落合豊子 鈴木啓之 青色爪半月を主訴とした 全身性銀皮症 皮膚臨床 ; ( ): -矢田義幸 石田 卓 本田まりこ 上出良一 新村眞人 留 置 針 に よ る 局 所 性 銀 皮 症 の 例 皮 膚 臨 床 ; ( ): -山下 仁 宮本俊和 楳田高士 江川雅人 谷 万喜子 鍋田理恵 濱田 淳 山田伸之 形井秀一 鍼灸の安全性 に 関 す る 和 文 献( ) 全 日 本 鍼 灸 学 会 誌 ; ( ): -鈴 木 啓 之 治 療 用 埋 没 針 に よ る 局 所 性 銀 皮 症 皮 膚 ; ( ): -; : -海津嘉蔵 丸岡啓一 織田悦子 織田 進 小野 明 岡 崎 勲 千 葉 省 三 江 藤 澄 哉 鈴 木 秀 郎 の 症例 - によ る腎組織内 沈着の証明 日内会誌 ; ( ): -: ; : -; :

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