Title
河畔林の構造と防災的機能に関する研究( はしがき )
Author(s)
木村, 正信
Report No.
平成7年度-平成8年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2)
課題番号07660188) 研究成果報告書
Issue Date
1996
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/261
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。はしがき 自然の営力によって創り出された河川空間は、人為による河川改修域には見られ ない生態的、景観的、防災上の様々な価値を有する。河川空間の生態系の基盤とな
っているのは、河畔域に生育する木本群落(河畔林・渓畔林)である。河畔林・渓
畔林は、様々な生物種の棲みかとなる他、地下水の浄化、土砂流出の抑制など様々 な機能を持っている12)。また、樹冠による日射遮断は水面での熱収支に関与し、河川の水温をコントロールする役割も注目されている。さらに、落葉・落枝や倒流
木は森林のエネルギー源、ならびに物理的環境の形成に大きく影響する7)。水際 までの高度な土地利用が進み、河岸での森林伐採、針葉樹の一斉拡大造林、林道開設などの行為によって多くの自然が失われてしまった現在、河畔林・渓畔林を保護、
再生していくためには、河畔・渓畔林の構造と機能、さらにその動態を個別に解明
していく必要がある12)。 森林は、いったん破壊されると先駆樹種に始まって、その環境に最も適した林分構造を再び形成する。河川空間に存在する森林は河川水の影響により、破壊の頻度
が相対的に高く、また何度も繰り返される。その結果、新たに出現した裸地は、木 本類の侵入しやすい空間となるため、より短い時間スケ…ルで森林が再生する。ひ とくちに河畔林といっても、河床の立地条件によって林分構造は異なる。例えば、 狭窄部では流水の方向が両岸から規制されて、流量の豊富な単一流路のみが形成さ れやすいため、河岸沿いにヤナギ類やハンノキ類がかろうじて生育するのみである。一方、河床拡幅部では、側方への流路変動が容易に生じ、複数の流路が網状を呈し
て発達するとともに、洪水時には土砂の堆積が卓越する。そのため、河床・河岸に は林齢や樹種の異なる様々なタイプの木本群落が形成されやすい。 砂防ダムをはじめとする横断工背後の堆砂域では、土砂の移動が強制的に抑制さ れており、ダムが破壊されない限り急激な土砂の移動・流出はない。表層堆積土砂 の移動頻度は低く、狭窄部や拡幅部に比べて相対的に安定した河床が形成されると 思われる。そのため、砂防ダム等の横断工の背後に形成された堆砂域には、他の立 地条件のもとで成立する木本群落に比べて、より高齢で安定した木本群落が残存し やすい。この点で生態的、景観的に重要であり、自然状態での河床拡幅部には見ら れない価値を備えている可能性があると考えられる。そこで、横断工背後の堆砂域 に分布する木本群落の特徴を明らかにし、堆砂域の立地環境が木本群落の成立・吏-・・・11-新にもたらす影響を考察した。 また、河畔林研究においては、植生が成立する立地要因としての、流水による土 砂礫の侵食・運搬・堆積作用などの撹乱現象が、河畔林の成立及び更新に果たす役 割はあまり明らかにされていない13)。大規模な洪水が発生しない限り、河床に堆 積した土砂はそのままの状態でとどまり、やがて植物が侵入する。もし、30年確