「国際金本位制」と信用制度に関する一考察
著者 居城 弘
雑誌名 靜岡大学法経研究
巻 29
号 2
ページ 95‑119
発行年 1980‑11‑30
出版者 静岡大学法経学会
URL http://doi.org/10.14945/00005813
﹁国 金 際 本 位 制
﹂ と 信 用 制 度 に 関 す る 一 考 察
居
城
・
︵ 一︶ 資
本主 義 世 界経 済 の構 造 的危 機 の深 化 は︑ 一 九 七〇 年 代以 降 の顕 著 な特 徴と な てっ いる が︑ そ の反 映 と し て の国 際 通貨 体 制 の動 揺
・危 機的 状 況 は︑ 基 軸 通貨 国 ア リメ カ国 際収 支 の赤 字 の累 積 過︑ 剰 ド ルの 世界 的拡 散 と累 積 や ド ル不 信 に根 因 をも
つ︑ 国 際 通貨
・信 用不 安 の火 種 を絶 えず 再 生産 す るも のと な てっ おり
︑ ま た︑ 変 動 相場 制 下 の世 界 済経 の構 造的 不均 衡 の調 整
︑ 際﹁国 収 支 の調 整
﹂ のい われ ると ころ の メカ ニズ ムは そ︑ れが 想定 す る 効﹁ 果
﹂ と は別 の︑
﹁通商 摩 擦
﹂ の政 策 的
﹁調 整
﹂ や︑ 内国 的 な産 業構 造 の再 編
・八 年十 代産 業 合 理化 政策 を媒 介 と てし 進展 てし いる かに 思 われ る︒ こう たし 現 実 的基 盤 のう え で︑ 一 方 はで 金︑ 交 換停 止以 後 の国 際 通貨 問題 を めぐ
てっ
︑ いわ ゆ る
﹁不 換 のド ル の国 際通 貨 と し て の流 通根 拠﹂ かい んが 問 われ
︑ 他方 では
︑ か かる 現代 的論 議 に先 立 てっ
︑ まず も てっ 国︑ 際通 貨 制体
の原 型構 築 の段 階 国︑ 際通 貨 制体
の古 典的 段階 にさ か のぼ り︑ 国 際金 本位 制 の論 理ど 歴 史 を明 確 化す る作 業 の必 要性 が主 張 され る よ
﹁国際 金本 位制
﹂と 用信 制度 に関 する 一考 察 九 五
弘
﹁国 際 金 本 位制
﹂ と信 用制 度 関に す る 一考 察 九 六
︵1
︶
う にな てっ いる と︒ り わけ 後者 の問 題 国︑ 際 金本 制位 の本 質 機と 能 容内 を︑ 資 本主 義 世界 制体 の構 造 と運 動 と の関 連 で い か に把 す握 べき か の問 題 は︑ 抽象 理論 の ベレ ルに お いて も
︑ 歴史
・具 体 的 な現 実 分析 の ベレ ルに お い ても
︑ な お多 く の間 題 を残 てし るい と思 われ る︒ こ の点 かに ん てし えい ば︑ 際国 金 本位 制 論 は 貨︑ 幣 制度 論 把的 握 の次 元 を越 え た展 開 を要 請 す もる のと うい こと が きで る︒ いわ ば 世︑ 界市 場︑ 開放 体 系 下 で の貨 幣 o信 用制 度 の本 質 と機 能内 容 を︑ 世 界貨 幣︑ 貴金 属 と為 替 相場 信︑ 用制 度 の国 民的
・国 的際 展開 のそ れぞ れ の ベレ ルで 概 念内 容 明を 確化 てし これ を再 構 す成 ると 同時 に︑ 世界 市場 の構 造と 運 動 が︑ 貨 幣
・信 用制 度 の国 内的 o国 際的 展 開と かい に かか わ る かと いう 問 題 領域 が設 定 され な けれ ば な ずら
︑ これ は
﹁世 界市 場 と恐 慌
﹂ への 展 開
・具 体 化 にむ け て の不 可 欠 の課 題 を なす も の︑ と いう こと が きで る︒ 小 稿 は︑ こ
の課 題 に直 接 的 に回 答 を試 み る こと が目 指 され て いる 訳 では くな そ︑ れ にむ け ての 予 備作 業 と てし 貨︑ 幣 の 諸機 能 と か かわ ら せ て の︑ 国内 的
・・国 際 的 な信 用諸 係関 信と 用制 度 の展 開 の基 本的 骨 格 を示 す こと も︑ てっ 今︑ 後 の具 体 化 への 手懸 りを 得 る こと を当 面 の目 的と し て い花
︒ た
と え ば
︑ 西村 閑 也
﹁英 国 の金 本 位 制 と 景 気 変 動 ド 1 8 お年
﹂﹃ 経 営 史 林
﹄ 第 七巻 第 二号
︑ 同
︑
︲ 国﹁ 際 金 本 位 制 ざ
︱ じ お 年 に つい て の試 論
﹂ 同誌
︑ 第 八巻 第 四号
︑ 同
︑
﹁国
︲ 際金 本 位 制 下 の物 価 変 動 と 国際 収 支 調 整 さ 2 8 昴﹂︑
同 誌
︑ 第 巻九 第 四 号 侍︑ 美光 彦 国﹃ 際 貨通 体 制
﹄ 東 京 大 学 出版 会 ︑ 一九 七 六 年
︑ 真藤 素 一
﹃国 際 貨通 と 金﹄ 日 本評 論社 ︑ 一九 七 七年
︑ 深 町 郁 弥
﹁国 際 金 融市 場﹂ 小 野朝 男
・西 村 閑 也 編
﹃国 際 金 融 論 入門
﹄有 斐 閣 ︑ 一九 七 五 年
︑ 同
︑
﹁金 位本 制 信と 用制 度
﹂ 松 井 安信
・三 木 毅 編
﹃信 用 と外 国為 替
﹄ ミネ ルバ 書 一房︑ 九一 七 八年 村︑ 岡 俊 三
﹃マ ル ク ス世 界 市 場 論
﹄ 新 評 論 ︑ 一九 七 六年
︑ 同
︑
﹁ 金 本位 制
﹄ 関に す る 若干 の論 点
︱ 半﹃後 体 系
﹄ と の関 連
︱で
﹂ 原 田 三郎 編
﹃資 本 主義 と 家国
﹄ ぎ ネ ルバ 書 一房︑ 一九 七 五年
︑ 同
﹁﹃ 経 済 学批 判 体系 プ ラ ン﹄ と 外 国為 替
﹂ 松 井
・三 木 編
︑ 同 上 書 徳︑ 永 正 二郎
﹃為替 と信 用﹄ 新 評 論 ︑ 一九 七 六年
︵2
︶ 筆者 の問 題関 心 は︑ イド ツ金 融資 本を 外内 の信 制用 度と の関 連 にお いて 再把 握 を試 みる と ころ あに るが
︑ そ こで イド ツの 対外 金融 係関 の分 析 作業
︱海 外 銀行 群 の機 能 も含 めた
︱ を進 める さ いに さ︑ あし たり 般一 的な 構 造把 握 を前 提す る必 要が 生 じ︑ そ の
1注
こと が契 機と な てっ 際国 本金 位制 と信 用制 度 に関 ︲ する うこ たし 見取 図を 試み るこ とに な たっ ド︒ イツ の対 外金 融に つい のて 分析 は︑ たし が てっ 別稿 を予 定し てい る︒ 一
︵︻ 一︶ 金本
制位 に関 す る議 論 のな かで 予︑ め指 摘 し てお き た いこ と は︑ 貨 制幣 度 論 と して みた ばあ い の金 本位 制 の 一般 論 と一国 際金 本位 制 論 と の区 別 関と 連 にか すん る問 題 であ る︐︒
そ よの う に いう 理由 は︑ 往 々に し て︑.
金 本位 制 を めぐ 議る 論 にお い て︑ こ の区 別 と関 連 をど う 考 える か に つい て︑ ず必 もし 明確 にな
てっ いな い様 に思 わ れる から であ るb
. 般一 的 に行 わ れ て るい 理・解 は︑ 一国 貨幣 制度 と し ての 金本 位制 の確 立を 論 じヽ そ の機 能と 特 徴 や制 度 的条 件 を説 いた う え で︑ そ のよ う なも のと し て の金 本 位制 が世 界的 に拡 大 し てい
たっ 姿 とし て国 際金 本位 制 をと らえ る︒ 具 体的 には 世い 界 に先 駆 け て金 本位 制 を確 立 たし イギ リ スに おけ そる の成 立過 程 を りと あ げ︑ それ が各 国 に普 及 拡︑ 大 す る に たい
たつ
.事 情 が示 され る︑ と いう も ので あ ろう そ︒ れ は事 実 と し ては そ︑ よの うな 経 過 をた どら た ので はあ る に てし も
︑ そ のば あ
↓い 国一 貨 制幣 度 と し て の金 本位 制 の本 質 と機 能内 容 と︑ 国 際金 本位 制 のそ れ とを 同 一の も との し て︑ 前者 の地 的・域 拡大 と し て理 解 し てよ いの であ ろう だ︵ あ︒ る いは こ の点 と かか わ てっ 国︑ 際金 本位 制 の成 立 はど の時 期 に求 める こと が適 当 あで る か︑ らさ に銀 本位 圏 の包 摂 の過 程 や︑ 資 本主 義的 発展
した 一が つて 貨幣 信 用制 度 の末 展 な開 地 域 の世 界 市場
への 包 摂 のさ い のさ まざ まな 問 題 など 再︑ 考 を加 え る余 地 を含 ん で いる と思 われ る こと
︑ こ こで は︑ さ あし たり 問題 点 と てし 指摘 す る に と ど めざ るを えな い︒ そ こ 最で 初 に︑ 金 本 位 制 と は何 か︑ 金 本 位 制 の概 念 規 定 に つい て の従 来 の見 解 の整 理 から 始 め る こと に し よ う
︒
﹁国際 本金 制位
﹂と 用信 制 ︱度 に関 す る 一考 察 九七
際﹁国 金本 制位
﹂と 信用 制度 関に する 一考 察 九 八 三宅 義夫 氏 よに れば
︑
﹁金 本位 制 は︑ 金 の自 由 鋳造 I I︑ 金 の自 由 熔解
⁝⁝ 金︑ の自 由輸 出入 そ︑ てし 金 貨 だけ でな く 銀 行券 が発 行 され て いる 場 合 には 金 の自 由兌 換
⁝
⁝︑ こ の四 つが 自由 に行 な われ てい ると き そ︑ れ は制 度 と し て完 成 され た金 本位 制 と うい こと が でき る︒ 自 由鋳 造 と自 由鉢 解 と によ てっ 金 地金 金と 貨 と イの コー ル 関の 係 が 確立 され 自︑ 由 輸 出 入 に よ てっ 国内 と国 外 と イの コー ルの 関係 が確 立 れさ 自︑ 由兌 換 によ てっ 銀 行券 と金 と イの コー ルの 関係 が確 立 され る か
︵3
︶
ら あで
﹂る と され る︒ また 小野 朝 男氏 によ れば
︑
﹁今 日世 界貨 幣 金は あで る︒ 金 は世 界 市場 おに てい す︑ べて の商 品 の価 値を 表 現 す る︒ そ れ はそ う いう も のと てし 今 日世 界貨 幣 な ので あ る︒ だ から 金 は世 界 貨幣 であ る かぎ り︑ 世 界市 場 にお け する てべ の商 品 の価 値 の尺 度 であ ると 同時 に︑ 価格 の尺 度 標 準 でも あ る︒
⁝ だI から 金 が世 界 貨幣 と し て機 す能 る場 合︑ 世 界 の貨 制幣 度 は︑ 金 本位 制 あで る︒ そ れ は︑ 国内 にお てい 金︑ が価 格 の尺 度 本位 と し て機 能 す る場 合 そ︑ の貨 幣 制度 を金 本位 制 と呼 ぶ のと ま たっ く同 様 であ る︒
﹂ さら に︑
﹁今 日︑ 本位 な る文 字 を文 字通 り に正 確 に理 解す る かぎ り︑ 貨 制幣 度 と し て の金 本位 制 を 金︑ が 価格 の尺 度 本位 と して 機能 す 制る 度 と理 解 す る こと に は︑ 異 議 を さし はさ む余 地 はな い︒
﹂・ そ てし
︑ 世界 貨 幣 と し て の金 が す︑ べて の商 品 の価 値 の尺 度 な いし は価 格 の尺 度 標準 と して 機 能す る のは
︑
﹁世 界 を形 成 す 各る 国 の貨 制幣 度 が金 本位 制 あで り︑ 各 国が それ ぞれ 国 内 おに てい 金︑ を貨 幣 と し て︑ 価値 の尺 度 な いし は価 格 の尺 度 本位 と し て機 能 さ せ
︵4
︶
て いる から には かな らな
﹂い と いわ れ る︒ み れら よる う に︑ 小 野氏 の規 定 は︑ 価 値 尺度 機 を能 す果 貨 幣商 品 が金 あで る こと
︑ それ にも とづ てい 金 の 一定 重量 に対 し て貨 幣名 が与 え れら る こと によ り
︵価 格 の尺 度 標 準︑ 価 格標 準︶︑
金 が価 値 の 尺度 であ ると 時同 に価 格 標準 と てし 機 能 す るも のと して の︑ いわ ば貨 幣 制度 と し て の金 本 制位 の規
︱定 銀本 位 制 など と の対 比 にお け る︱ を与 え たも のと みる こと が でき る︒ それ に対 てし 三宅 氏 の場 合 は︑ 小 野氏 のよ う な規 定 を前 提 と し たう え で︑ 貨 制幣 度 と てし の金 本位 制 制の 度 的