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タイ国 際私 法 に関 す る一考 察

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説 〉

タイ国 際私 法 に関 す る一考 察

一 その特徴 的 内容 、適用事例 お よび関連立法

飯 田 順 三

はじめに

1 2 に 一 一 り 3 3 わ

現行 タイ 国際私 法 の概 要1 タイ国際 私法 に関 す る裁判例2 2‑1財 産 法分野 に関 す る裁判 例

2‑1‑1国 際輸送 損害賠 償請 求事件 2‑1‑2国 際労働 契約事件

2‑2家 族 法分野 に関 す る裁 判例 …外 国人婚姻 登録 請求 事件 タイ国際私 法上 の契約 お よび不法行 為 に関 す る立法例3

タイ抵触法 第13条(契 約)に 関す る立法 …複 合一貫 輸送 法

タイ抵触法 第15条(不 法行為)に 関す る立法 …船舶 衝突 損害賠 償 法

は じめ に

タイ で は、1997年12月 に知 的財 産 ・国 際 貿 易 裁 判 所 が 開設 した が 、 そ れ 以 降 2004年9月 ま で に2万4531件 の 訴 訟 が 同 裁 判 所 で 審 理 され 、 そ の うち2万1276 件 が 知 的 財 産 権 訴 訟 、3255件 が 国 際 商 取 引訴 訟 で あ っ た 。 また 、2004年 の 訴 訟 件 数 の う ち、 原 告 が タイ 国 籍 の事 件 が142件 、 タ イ 国籍 以 外 の 事 件 が39件 、0 方 、 被 告 が タイ 国 籍 の事 件 が370件 、 タ イ 国 籍 以 外 の 事 件 が94件 で あ っ た 。 さ

らに 、 これ らの 当 事 者 が 国 籍 を異 に す る訴 訟 の 中 で 外 国法 が タ イ の 法 廷 で 適 用

され た 事 件 は3件 で あ った 。

この よ うに知 的 財 産 ・国 際 貿 易 裁 判 所 に お い て 外 国 法 適 用 へ の 当 事 者 の 主 張 が 少 な い理 由 と して 、 ① 外 国法 の準 拠 は 当 事 者 に 利 益 を もた ら さな い。 言 い換 えれ ぼ、 当 事 者 に とっ て タイ 法 に よって 審 哩 され る こ とを拒 な い とい う こ とは、

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タイ法 が整備 され て い る こ とを物 語 って い る。② 外 国法 の準 拠 には時間 と労力 を必要 とす る。特 にタイ の裁 判所 に対 す る準拠 す る外 国法 に関す る証 明義務 は 外 国法 を根 拠 に訴訟 を試 み る当事者 に とって負担 とな って い る。③訴 訟 当事者 な い し弁護 人 の国 際私法 の知 識 が薄 いので 外国 法適用 の主 張 の意欲 に欠 け る、

2)

とい っ た 分 析 が な さ れ て い る。

で は 、 知 的 財 産 ・国 際 貿 易 関 連 の 法 的 紛 争 に お い て タ イ の 国 際 私 法 、 特 に そ の 財 産 法 分 野 が 果 た して い る機 能 とは ど うい っ た もの な の だ ろ うか 。 ま た、 渉 外 裁 判 に お い て 外 国 法 適 用 の 主 張 が 当 事 者 に利 益 を 与 え な い ほ ど、 タ イ の 国 内 立 法 は整 備 され て い るの だ ろ うか 。 以 上 の 問 題 意 識 を も とに 、 本 稿 は タ イ 国 際 私 法 の 全 体 像 を把 握 し よ う と試 み る もの で あ る。 な お 、 国 際 私 法 は最 狭 義 に お い て は い わ ゆ る抵 触 法 を意 味 し広 義 で は 国 際 民 事 訴 訟 法 を含 め るが 、 本 稿 で は 前 者 の み を論 ず る こ とに した い 。

と こ ろで 、 歴 史 的 に み る と、 タ イ の 国 際 私 法 の登 場 は タ イ で 初 めて 近 代 民 法 お よ び 商 法 の編 纂 が 試 み られ た1900年 代 に まで 遡 る こ とが で き る。 す な わ ち 、

3}

タイの近 代法 典編 纂 に尽 力 した政尾 藤吉 の記述 に よれ ば、民 商法典 の構成 を決

4)

め る際 に、 国 際 私 法 を第5編 と して 規 定 す る内 容 とな っ て い た 模 様 で あ る。 し か しな が ら、 この 国 際 私 法規 定 が 具 体 的 に どの よ うな もの で あ っ た の か に つ い て は 、 史 料 が 未 確 認 の た め不 明 で あ る。

現 行 の タ イ にお け る国 際 私 法 と して は、1928年 公 布 、 同年3月20日 施 行 され 仏 暦2481年 ・法 の抵 触 に関 す る法律 」(以 下 、 本 文 中 で は特 に必 要 な場 合 を 除 い て タ イ抵 触 法 とす る)が 存 在 す る。'わが 国 で は 現 行 の タイ 抵触 法 に 関 す る 文 献 は見 当 た ら な い の で 、 本 稿 で は、 まず タイ 抵 触 法 の 全 体 に つ い て概 観 し、

次 に タイ の最 高 裁 判 所 事 務 局 がWEB上 で 公 開 して い る検 索 シ ス テ ム を利 用 し て 、 財 産 法 分 野 か ら2件 、 家 族 法 分 野 か ら1件 に 焦 点 を当 て て タ イ抵 触 法 の実 際 の 適 用 の あ りか た に つ い て検 討 した い 。 最 後 に 、 タイ 抵 触 法 上 の 契 約 と不 法 行 為 に 関 して 最 近 タイ 政 府 が 公 布 した 「複 合 一 貫 輸 送 法 」 お よび 船 舶 衝突 損 賠 償 法 」 を取 り上 げ 、 国 際 貿 易 お よび貨 物 輸 送 に 関 す る タイ の 国 内 法 が 整 備 さ れ つ つ あ る状 況 を把 握 しなが ら、 タ イ抵 触 法 の 特 徴 につ い て 検 討 を加 え て み た

い 。

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タイ 国際私法 に関 す る一 考察

3

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1現 行 タ イ国際私 法 の概 要

タイ 抵 触 法 の 構 成 は、 第1章 総 則 、 第2章 人 の 身分 お よび 能 力 、 第3章 債 務 、 第4章 財 物 、 第5章 家 族 、 第6章 相 続 の 全42条 か らな っ て い る。

以 下 で は 、 逐 条 訳 と若 干 の 解 説 を付 しな が ら全 体 を概 観 す る。 な お、 訳 文 は仮 訳 で あ る こ と、 また 、[]内 は条 文 内 容 が 明 瞭 に な る よ うに 筆 者 が 語 句 を 補 足 した 箇 所 で あ る こ とを 予 め お断 わ り した い 。

第1章 総 則 】

(第1条)本 法 の 名 称 (第2条)本 法 の 施 行 日

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(第3条)「 法 の 抵 触 に対 して 適 用 す べ き規 定 が本 法 お よび タ イ 法 に存 在 しな い場 合 は、 抵 触 法 の 一般 理 論 を用 い る もの とす る。」

本 条 は、 法 の 欠 鉄 に 対 す る措 置 で あ る。 問題 は、 何 が 抵 触 法 の 一一般 原 則 か と い う こ とで あ るが 、 これ は、 諸 国 お よび タイ に お い て 受 容 され て い る国 際 私 法

上 の慣 習 法 原 則 とされ る。

(第4条)「 外 国 の 法 律 を適 用 す る場 合 、 当 該 外 国 の 法 律 に依 る場 合 、 適 用 さ れ る法 律 が タイ 法 に な る時 は タ イ 法 を適 用 し、 本 法 が 適 用 され るの で は な い 。」

本 条 は反 致 の 規 定 で あ るが 、 本 条 に お け る 「法 律 」 は この タ イ 国 際 私 法 の こ とで は な い 、 と明 示 され て い る。

(第5条)「 外 国 法 を適 用 す る場 合 は、 タ イ の 安 寧 と公 の 秩 序 に反 しな い 法 律 を適 用 す る もの とす る。」

これ は い わ ゆ る公 序 規 定 で あ るが 、 タ イ の安 寧 と公 の秩 序 に反 す る規 定 とは

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具 体 的 に 以下 の例 が あ げ られ る。①13歳 以 下 の女 性 の婚 姻 を認 め て い る外 国 法 。 この よ うな 規 定 は タイ 刑 法277条 違 反 とな る。 ② タイ 民 商 法 典2450条 で 禁 止 さ れ る親 族 間 で の 婚 姻 あ るい は 同2451条 で禁 止 され る養 子 と養 親 との婚 姻 を認 め る外 国 法 。 ③ 重 婚 を認 め る外 国 法 。 た だ し、 タ イ 南 部4県 の イ ス ラ ー ム教 徒 タ

  

イ 人 に 関 して は この原 則 は適 用 され な い。 ④ 寡 婦 の婚 姻 に つ い て、 離 婚 か ら310 日 を経 過 す る こ とな く再 婚 を認 め る外 国 法 。 この よ う な外 国 法 は 、 タイ 民 商 法

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典1453条 に違 反 す る規 定 とな る。 ⑤ 子 が 直 系 尊 属 を相 手 方 と して 民 事 な い し刑

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事 の訴 訟 を起 こす こ とを認 め る外 国 法 。 タ イ民 商 法 典1562条 で は、 この よ うな 訴 訟 を禁 じて い る。 ⑥ キ リス ト教 信 者 は他 宗 教 者 と婚 姻 す る こ とはで き な い と す る外 国 法 。

(第6条)「 本 国 法 を適 用 す る場 合 で2つ 以 上 の 国籍 を順 次 取 得 した者 は、 最 後 に取 得 した 国 の 法 律 を適 用 す る も の とす る(第1段)。 本 国 法 を適 用 す る場 合 で2つ 以 上 の 国籍 を 同 一 の 母 か ら取 得 した 者 は、 そ の者 の住 所 地 の 法 律 を適 用 す る。 そ の 住 所 が 国籍二の存 す る国 以 外 に あ る場 合 は、 訴 訟 が提 起 され た 住 所 地 法 を 適 用 す る(第2段)。 国 籍 のi抵触 問題 が 起 きた 場 合 、 その 複 数 の 国 籍 の 内一・

つ が タ イ 国籍 の と きは、 適 用 され る本 国 法 は タ イ法 で あ る(第3段)。 無 国籍 者 に つ い て は、 住 所 地 の 法 律 を適 用 す る。 住 所 が 不 明 の場 合 は 居 所 地 の 法 律 を適 用 す る(第4段)。 本 国 法 を適 用 す る場 合 で 、地 域 法 、 共 同体 法 、 宗 教 法 を適 用 しな けれ ぼ な らな い とき は、 それ らの法 律 を 適 用 す る もの とす る(第5段)。 本 条 で 第1段 と第2段 の 違 い は 、 重 国 籍 者 が 複 数 の 国籍 を取 得 した 時 期 の違 い で あ る。 つ ま り、 第1段 で は、 異 な る時 期 に 国籍 を取 得 した場 合 の 規 定 で あ

り、 第2段 で は、 同 一 時 期 に複 数 の 国籍 を取 得 した 場 合 の規 定 で あ る。 第3段 の趣 旨 は 、 重 国籍 者 の 有 す る国 籍 の 一 つ が タ イ 国籍 の場 合 は 、 タ イ 法 を適 用 す

る とい う こ とで あ る。 第5段 は、 直 接 的 に は、 タ イ 南 部4県 に 関 す る条 文 で あ る。 つ ま り、 第5条 の説 明 で触 れ た とお り、 イ ス ラー ム教 徒 の タ イ人 の場 合 は、

親 族 ・相 続 法 に関 して は、 イ ス ラ ー ム 法 が適 用 され る こ とに な っ て い る。

(第7条)「 法 人 の 国籍 が 抵 触 す る場 合 、 法 人 の 国 籍 は その 法 人 の本 店 事務 所 な い し本 業 務 地 が あ る国 の 国 籍 で あ る。」

本 条 は、 わ が 国 の 法 例 に は無 い 法 人 の 国 籍 の 抵 触 に関 す る規 定 で あ る。

(第8条)「 外 国 法 を適 用 す る場 合 、[外 国 法 を援 用 す る者 が]そ の 法 令 に つ い て 裁 判 所 が 納 得 す る よ う に証 明 で きな い場 合 は、 タ イ法 を適 用 す る。」

本 条 は、 訴 訟 に お い て外 国 法 を準 拠 法 とす る 当事 者 は 、 当 該 適 用 法 令 の 内 容 につ い て 専 門 家 を証 人 と して 召 喚 し裁 判 所 に証 明 す る義 務 が あ る。 す な わ ち 、 い わ ゆ る外 国 法 事 実 説 を採 用 した 条 文 で あ る。

(第9条)「 本 法 に お い て そ の他 の規 定 が あ るか 、 あ る い は タイ の そ の 他 の 法 律 に規 定 され て い る場 合 の 除 き、 法 律 行 為 の形 式 の 完 全 性 に つ い て は、 当 然 に そ の 法 律 行 為 が 行 われ た 国 の法 律 に依 る(第1段)。 物 権 が 設 定 され た 国 の 法 律

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タイ国際 私法 に関 す る一 考察

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は、 不 動 産 に関 す る契 約 、 文 書 、 そ の 他 の 法 律 行 為 の 完 全 性 の た め に当 然 に適 用 され る。」

第2章 人 の 身 分 お よ び能 力 】

(第10条)「 人 の行 為 能 力 お よび無 能 力 に関 して は、 そ の者 の本 国 法 に依 る(第 1項)。 しか し、 外 国 人 が本 国 の 国籍 法 で は無 能 力 者 で あ る とき、 あ るい は制 限 付 きで 法 律 行 為 を な す こ とが で き る とき は、 タ イ 法 が 認 め る範 囲 で 法 律 行 為 を な す こ とが で き る もの とす る。 前 項 の 規 定 は親 族 法 な い し相 続 法 に従 っ た 法 律 行 為 に は適 用 しな い(第2項)。 不 動 産 に関 す る法 律 行 為 の場 合 、 法 律 行 為 をな

す 人 の 能 力 は不 動 産 の 存 す る場 所 の 法 律 に依 る も の とす る(第3項)。

本 条 に は法 人 の 能 力 に つ い て は 明 記 され て い な い が 、 タ イ の 通 説 で は 、 法 人 の 能 力 に つ い て も本 条 が適 用 され る。 した が っ て 、 タ イ に お い て 法 人 の 能 力 に つ い て 抵 触 問 題 が 生 じた と き、 あ る い は、 法 人 の 能 力 に つ い て の規 定 が な い と き は 、 法 人 の 本 店 事 務 所 の 存 す る国 の 法 律 が 準 拠 法 とな る。

(第11条)「 タ イ 国 内 の 外 国 人 が 民 商 法 第53条 及 び54条 に従 い住 所 ・居 所 か ら 行 方 不 明 とな っ た 場 合 、 裁 判 所 が 必 要 に応 じて 措 置 を と る際 に準 拠 す る法 律 は タイ 法 で あ る(第1項)。 前 項 の者 に対 す る命 令 が 失 踪 宣 告 の場 合 で 、 そ の 命 令 が タ イ 国 内 の 不 動 産 に 関 しな い もの で あ る 限 り、 準 拠 法 は外 国 人 の本 国 法 とす る(第2項)。

本 条 に よ っ て 、 失 踪 した 外 国入 の財 産 につ いて 不 動 産 は タ イ 法 に 、 動 産 は そ の 外 国 人 の 本 国 法 に それ ぞ れ 準 拠 す る こ と とな る。

(第12条)「 タ イ に住 所 な い し居 所 が あ る外 国 人 に対 して裁 判 所 が保 佐 あ るい は後 見 の 命 令 を な す場 合 、 そ の 外 国 人 の本 国 法 に依 る。 タ イ 法 が 保 佐 あ る い は 後 見 を認 め な い 事例 の場 合 は、 裁 判 所 は そ の 者 に対 す る保 佐 あ る い は後 見 の 命 令 を な す こ とは な い(第1項)。 前 項 の保 佐 あ るい は後 見 に よ る効 果 は、 そ の 者 に 対 して 禁 治産 者 あ る い は準 禁 治 産 者 の 命 令 を な す 裁 判 所 が 存 す る国 の 法 律 に 依 る(第2項)。

本 条 で は 、 タ イ 法 に よ っ て 保 佐 あ る い は後 見 が 認 め られ る場 合 で な い 限 り、

外 国 人 に対 す る保 佐 お よ び後 見 の命 令 を 出 す こ とが で き な い とい う規 定 とな っ て い る。

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第3章 債 務 】

タ イ 民 商 法 典 第2編 は 「債 務 」 編 とされ て い るた め 、 タイ 抵 触 法 もそ の 第3 章 の名 称 は 「債 務 」 とな っ て い る。

(第13条)「 契 約 の 成 立 お よび効 果 に関 して どの 法律 が 適 用 され るか につ い て は、 当事 者 の 意 思 に従 っ て 判 断 す る もの とす る。 当 事 者 の 意 思 が 不 明 確 あ るい は間 接 的 に も判 断 で き な い とき は1当 事 者が 同 一 の 国 籍 を有 す る場 合 は、 適 用 され る法 律 は 当事 者 の本 国 法 とす る。 当 事 者 の 国 籍 が 同 一 で な い場 合 は、 当 該 契 約 が締 結 され た 行 為 地 の 法 律 に依 る もの とす る(第1項)。 契 約 が遠 距 離 間 の 当事 者 に お い て締 結 され た 場 合 は 、 契 約 申込 み 者 に対 して 承 諾 の 通 知 が 到 達 し た場 所 を も っ て 当該 契 約 が 締 結 され た場 所 と看 徹 す 。 そ の場 所 が 明 らか で な い 場 合 は、 当 該 契 約 が 履 行 され るべ き場 所 の 法 律 を適 用 す る(第2項)。 当該 契 約 の効 果 に 対 して 適 用 され るべ き法 律 に規 定 され た 方 式 に従 っ て締 結 され た 契 約 は、 当 然 、 無 効 とは な らな い(第3項)。

本 条 で は、 い わ ゆ る主 観 説 が 採 用 され 、 第9条 で 行 為 地 法 に よ る法 律 行 為 を 有 効 と して い る一 方 で 、 当 事 者 の 意 思 に よ り、 契 約 が締 結 さ れ た 行 為 地 の 法 律 に よ らな い 方 式 で締 結 され た 契 約 も有 効 と して い る。 た だ し、 契 約 が 有 効 に成 立 して も契 約 履 行 地 の 法 律 に違反 す る契 約 の場 合 は、 そ の履 行 が 認 め られ な い。

次 に本 条 は 、 い わ ゆ る隔 地 的 法 律 行 為 に つ い て 、 そ の行 為 地 決 定 の 問題 に関 す る規 定 で あ る。 わ が 国 法 令 第9条2項 で は、 契 約 の 成 立 お よ び効 力 につ い て は発 信 主 義 に依 って い るが 、 タイ 抵 触 法 で は隔 地 的 契 約 につ いて は到 達 主 義 を 採 用 して い る。 この 点 は大 陸 法 系 の影 響 を受 けて い る と考 え られ る。

(第14条)「 事 務 管 理 あ るい は不 当利 得 に よ っ て よっ て 生 じた 債務 は 、 当該 債 務 を生 ぜ しめ た 事 実 が 発 生 した 場 所 の法 律 に拘 束 され る。」

(第15条)「 不 法 行 為 に よっ て 生 じた 債 務 は、 当 該 不 法 行 為 を生 ぜ しめ た事 実 が 発 生 した場 所 の 法 律 に拘 束 され る(第1項)。 外 国 にお い て発 生 しタ イ法 に よ れ ぼ不 法 行 為 とな らな い事 実 に対 して は前 項 の規 定 は適 用 しな い(第2項 〉。 い か な る場 合 に お い て も、 タ イ 法 の よ っ て 損 害 賠 償 の 請 求 が 認 め られ な い 限 り、

被 害 者 は損 害 賠 償 を請 求 す る こ とはで き な い(第3項 〉。」

本 条 は わ が 国 と同様 、 い わ ゆ る折 衷 主 義 を採 用 した もの で あ る。 す な わ ち、

原 則 的 に は、 不 法 行 為 を構成 す る事 実 が 発 生 した 国 の 法 律 が 準 拠 法 とな るが 、

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タイ 国際私法 に関 す る0考 察

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そ の不 法 行 為 規 定 が タ イ で は認 め られ な い場 合 は、 法 廷 地 で あ る タ イ 法 に依 る こ とに な り、 さ ら に、 損 害 賠 償 の請 求 に 関 して も、 タ イ法 に よ っ て 決 め られ た 範 囲 内 で しか 請 求 す る こ とは で きな い。

第4章 財物 】

タ イ 民 商 法 典 で は、 第4章 財 物 」 とい う名 称 で あ る た め 、 タ イ 抵 触 法 に お い て も、 第4章 は 「財 物 」 とな っ て い る。

(第16条)「 動 産 お よび 不 動 産 に 関 して は、 当 該 財 物 が 所 在 す る場 所 の 法 律 を 適 用 す る(第1項)。 動 産 を海 外 に持 ち 出 す 場 合 は、 当 該 動 産 が ・海外 に持 ち 出 さ

れ て 以 降 は 、 当 該 動 産 の所 有 者 の本 国 法 を適 用 す る(第2項)。

財 物 の存 在 す る場 所 とは、 永 久 的 な い し長 期 的 に配 置 され た場 所 の こ とで あ り、 財 物 を 移 送 中 の場 所 は含 まれ な い とさ れ る。

また 本 条 で はい わ ゆ る同則 主 義 が 採 られ て い る。 さ らに 、 第2項 で は物 権 変 動 に 関 す る規 定 で あ るが 、 目 的 物 所 在 地 法 主 義 を採 用 せ ず 、 所 有 者 の 本 国 法 に

準 拠 す る こ と とな っ て い る点 が 特 徴 的 で あ る。

(第17条)「 係 争 に関 わ る動 産 が 係 争 中 に移 転 され た場 合 は、 適 用 され る法 律 は、 訴 訟 が 提 起 され た 時 点 で の 当 該 動 産 の 所 在 した 場 所 の 法 律 で あ る。」

本 条 は、 第16条 の例 外 規 定 で あ る。 す な わ ち、 第16条 で は、 海 外 に移 転 した 動 産 に 関 す る準 拠 法 は、 その所 有 者 の本 国 法 に な るが 、 第17条 で は、 係 争 中 の 動 産 の海 外 移 転 に関 して は 、 当 該 動 産 の 存 在 した場 所 の 法 律 が 適 用 され るの で

あ る。

以 上 が タ イ 抵 触 法 の総 則 お よび 財 産 法 規 定 で あ る。 つ ぎ に家 族 法 分 野 に つ い て み て み よ う。

第5章 家 族 】

(第18条)「 婚 約 締 結 あ るい は婚 約 破 棄 に関 す る能 力 に 関 して は、 当 事 者 そ れ ぞれ の本 国法 に よ る(第1段)。 婚 約 の 効 果 は、 審 理 お よび判 決 を な す 裁 判 所 の あ る国 の 法律 に依 る(第2段)。

本 条 は、 わ が 国 に は な い 婚 約 規 定 の条 文 で あ る。 タイ 民 商 法 典 第1435条 に よ

11)

る と男 女 そ れ ぞ れ17歳 を も って 婚 約 を な す こ とが で き る と規 定 さ れ て い る。

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(第19条)「 婚 姻 の要 件 につ い て は、 当 事 者 そ れ ぞ れ の本 国 法 に依 る。」

(第20条)「 婚 姻 を 締 結 した 国 の法 律 に規 定 され た とお りな され た 婚 姻 は、 当 然 に 有効 で あ る(第1項)。 タ イ の 管 轄 下 に あ る者 同 士 の婚 姻 あ るい は、 タイ の 管 轄 下 に あ る者 と外 国 人 との 婚 姻 につ い て 、 タイ 法 の 方 式 に従 っ て な され た婚 姻 は有 効 な も の とす る(第2項)。

(第21条)「 婚 姻 当 事 者 の国 籍 が 同一 で あ る場 合 、 あ る い は、 妻 が 婚 姻 に よ っ て 夫 の 国籍 を得 た 場 合 、 夫 婦 間 の 関 係 は 、 婚 姻 両 当 事 者 の 共 通 本 国 法 に よ る も の とす る(第1項)。 妻 が 婚 姻 に よっ て 夫 の 国籍 を得 て い な い場 合 は、 夫 婦 間 の 関係 に つ い て は 、 夫 の 本 国 法 に依 る(第2項)。

本 条 に よれ ぼ 、 外 国 人 女 性 が タ イ 人 と婚 姻 す る場 合 は 、 夫 婦 間 の 法 律 問 題 の 準 拠 法 は タイ 人 で あ る夫 の 本 国 法 に決 定 され る こ とに な る。

(第22条)「 婚 姻 前 に[婚 姻 前]契 約 を締 結 して い な い 場 合 は、 夫 婦 間 の財 産 につ い て は 、 夫 婦 の 共 通 本 国 法 に依 る(第1項)。 夫 婦 間 で 国籍 が 異 な る場 合 、 夫婦 間 の財 産 に つ い て は、 夫 の本 国 法 に依 る(第2項)。 夫 婦 間 の財 産 で不 動 産

に関 して は 、 当 該 不 動 産 の 所 在 す る場 所 の法 律 に依 る(第3項)。

本 条 は、 婚 姻 前 契 約 の規 定 で あ る。 結 婚 前 に お け る当 事 者 の財 産 関係 の確 定 の た め に契 約 を 行 な う こ とは 、 わ が 国 で は な じみ が 薄 い 。 タイ で は こ の よ うな 契 約 が 広 く行 な わ れ て い るの か ど うか 不 明 で あ るが 、 タ イ 人 女 性 と外 国 人 との 結 婚 が 比 較 的 多 い タイ で は、 配 偶 者 間 の 財 産 関 係 の 明確 化 の た め に英 米 流 の こ の よ うな規 定 が 盛 り込 まれ た の で あ るの か 、 あ る い は 単 に 英 米 系 の 国 際 私 法 の 影 響 を受 け た だ け な の か は、 に わ か に判 定 で き な い 。

(第23条)「 婚 姻 後 に配 偶 者 の一 方 あ る い は双 方 が 婚 姻 当事 に有 して い た あ る い は得 た 国 籍 と異 な る こ とに な っ て も、 前2条 に 規 定 さ れ た 婚 姻 の効 果 に対 し て 影 響 す る もの で は な い 。」

(第24条)「 夫 婦 間 の 財 産 につ い て 、 婚 姻 前 に[婚 姻 前]契 約 を締 結 して い た 場 合 は、 当 該 契 約 を締 結 す る能 力 につ い て は、 婚 姻 当 事 者 双 方 の そ れ ぞ れ の本 国 法 に依 る。」

(第25条)「[婚 姻 前]契 約 者 双 方 が 同 一 の 国籍 を有 す る場 合 、婚 姻 前 に お け る 契 約 の成 立 とそ の効 果 につ いて は、[婚 姻 前]契 約 者 双 方 の 共通 本 国 法 に依 る(第

1項1段)。[婚 姻 前]契 約 者 双 方 の 国籍 が 異 な る場 合 、 婚 姻 前 に お け る契 約 の

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タイ国際 私法 に関 す る一 考察

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成 立 とそ の効 果 につ いて は、[婚 姻 前]契 約 者 双 方 の 意 思 に従 っ た法律 に依 る。

あ るい は、 そ の 法 律 の 拘 束 を受 け る とい う意 思 が 存 す る もの と推 定 され る(第 1項2段 〉。 以 上 の よ うな 意 思 が存 しな い場 合 は、 婚 姻 当事 者 双 方 が 婚 姻 後 始 め て 住 所 を設 定 した 国 の法 律 に依 る(第1項3段)。 不 動 産 につ い て は、 当 該 不 動 産 が 所 在 す る場 所 の 法 律 に依 る もの とす る(第2項)。

第1項3段 と第2項 か ら、 不 動 産 に つ い て は別 に規 定 を設 けて い る こ とか ら、

英 米 法 の影 響 が看 取 され る。

(第26条)「 夫 と妻 の本 国法 が 協 議 に よ る離 婚 を認 め て い る場 合 、 協 議 離 婚 は 完 全 で あ る[認 め られ る]」。

(第27条)「 夫 婦 の そ れ ぞ れ の 本 国 法 が 離 婚 を 認 め て い な い 限 り、 タ イ の裁 判 所 は離 婚 判 決 を下 す こ とは な い(第1項)。 離 婚 原 因 は、 離 婚 訴 訟 を提 起 す る場 所 の 法 に依 る(第2項)。

(第28条)「 婚 姻 の取 消 は 、 婚 姻 条 件 に対 して 適 用 さ れ る法 に依 る(第1項)。

婚 姻 の 取 消 の 原 因 に な る錯 誤 、 詐 欺 、 脅 迫 につ いて は、 婚 姻 の行 わ れ た 場 所 の 法 に依 る(第2項)。

(第29条)「 嫡 出 子 か 否 か につ い て は、 出 生 時 の母 の 夫 の本 国 法 に依 る(第1 項1段)。 この 場 合 、 夫 が 死 亡 した場 合 は、 死 亡 時 の 夫 の本 国 法 に依 る(第1項

2段)。 嫡 出 の認 知 拒 否 の訴 訟 提 起 につ い て も、 右 の法 を適 用 す る(第2項)。 (第30条)「 子 と父 母 間 の権 利 義 務 につ い て は 、 父 の本 国 法 に依 る(第1項)。

男 と婚 姻 関 係 に な い 女 か ら生 まれ た 子 につ い て は、 母 子 間 の権 利 義 務 関 係 は、

母 の本 国法 に依 る(第2項)。

(第31条)「 養 子 縁 組 に つ い て は 、 養 子 とす る ときの 父 の本 国 法 に依 る(第1 項)。 養 子 とす る段 階 で 父 が 死 亡 した場 合 は、 父 の死 亡 時 の本 国 法 に依 る(第2 項)。」

(第32条)「 未 成 年 者 に関 して親 権 を行 使 す る親 権 者 の い な い場 合 、 あ るい は、

親 権 が終 了 した場 合 、 当 該 未 成 年 者 の本 国 法 に依 る(第1項1段)。 しか し、 不 動 産 に関 して は、 そ の不 動 産 に関 わ る親 権 者 の 権 限 は、 当 該 不 動 産 の 存 す る所 在 地 法 に依 る(第1項2段)。 外 国 籍 を 有 し タイ 国 内 に住 所 な い し居 所 を有 す る 未 成 年 者 につ い て は、 外 国 法 に よ っ て規 定 され た 親 権 に 関 す る制 度 な い し法 令

に依 る と未 成 年 者 の 利 益 を保 護 す る こ とが 適 当 で な い 状 況 が 判 明 した 場 合 は、

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当該 未 成 年 者 を タ イ法 に よ る親 権 下 に置 くこ とが で き る(第2項)。

(第33条)「 親 権 の喪 失 は 、親 権 喪 失 の命 令 を出 す 裁 判 所 の所 在 す る 国 の 法 律 に依 る。」

(第34条)「 直 系 尊 属 を民 事 あ る い は刑 事 事 件 と して 訴 え る権 利 は、 そ の血 族 者 の本 国 法 に依 る。」

本 条 は 、 外 国 法 で は直 系3'属 を提 訴 す る権 利 が 規 定 され て い る場 合 に 、 タイ の 裁 判 所 が そ の よ うな訴 訟 を拒 否 で き な い よ うに す る規 定 で あ る。 しか し、 タ イ 民 法 典 第1562条 に は、 直 系 尊 属 に対 す る民 事 な い し刑 事 の 訴 訟 を提 起 す る こ とは で き な い 。 た だ し、 そ の 者 な い し密 接 な関 係 に あ る親 戚 が そ の よ うな訴 訟 を提 起 す る こ とを 求 め る とき は 、 検 察 官 が そ の訴 訟 を提 起 す る こ とが で き る、

と規 定 され て い る。 この 規 定 は タ イ の 善 良 な風 俗 と公 の秩 序 に関 す る も の な の で 、 従 っ て 、 本34条 は この 民 法 典 の条 文 に反 す る こ とは で きな い と され て い る の で 、 実 質 的 に は、 直 系 尊 属 に つ い て 外 国 法 を もっ て も タ イ の 裁 判 所 で 提 訴 す

る こ とは で き な い こ とに な る。

(第35条)「 養 子 と養 親 の 国籍 が 同一 の 場 合 、 養 子 縁 組 につ い て は 、 そ の者 た ち の本 国 法 に依 る(第1項1段)。 養 子 と養 親 の 国籍 が 異 な る場 合 は、 養 子 縁 組 の 能 力 と要 件 は各 当事 者 の本 国 法 に依 る(第1項2段)。 しか し、 養 子 と養 親 間 の養 子 縁 組 の効 果 につ い て は、 養 親 の 本 国 法 に依 る(第2項)。 養 子 とそ の 出 生 家 族 との 間 の 権 利 義務 は、 養 子 の本 国 法 に依 る(第3項)。

(第36条)「 扶 養 義 務 にっ いて は、 被 扶 養 者 の本 国法 に依 る(第1項)。 扶 養 費 用 の 請 求 権 を有 す る者 は 、 タ イ 法 が 認 め る以 上 の も の を請 求 す る こ とは で き な い(第2項)。

第6章 相 続 】

(第37条)「 不 動 産 の相 続 に関 して は、 当 該 不 動 産 の 所 在 地 法 に依 る。」

(第38条)「 動 産 にっ い て は、 自然 相 続 また は遺 言 相 続 は被 相 続 人 が 死 亡 した 住 所 の 法 律 に依 る。」

第37条 お よび 第38条 か ら、 タ イ抵 触 法 は相 続分 割 主 義 を採 用 して い る こ とが 分 か る。

(第39条)「 遺 言 状 を作 成 しよ う とす る者 の能 力 につ いて は、 遺 言 状 を 作 成 す

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タイ国 際私法 に関 す る一考察

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る時 点 で の 本 国 法 に依 る。」

(第40条)「 人 は、 そ の 本 国法 が規 定 す る方 式 に従 っ て 、 また は、 遺 言 状 を 作 成 す る[と き に そ の者 が住 む]国 の法 律 が 規 定 す る方 式 に従 っ て 、 遺 言 状 を 作 成 す る こ とが で き る。」

(第41条)「 遺 言 状 を 作 成 した 者 が 死 亡 した場 合 、 遺 言 状 の効 果 と解 釈 、 遺 言 状 の[全 部]無 効 あ るい は一 部 無 効 に っ い は、 遺 言 状 を作 成 した者 の 住 所 地 法

に依 る。」

(第42条)「 遺 言 状 の全 部 撤 回 あ る い は一 部 撤 回 につ い て は、 遺 言 状 を 撤 回 し よ う とす る者 の住 所 地 法 に依 る(第1項)。 遺 言 状 の 全 部 無 効 な い し一 部 無 効 に つ い て は 、 遺 言 状 を作 成 した者 が 死 亡 した住 所 地 法 に依 る(第2項)。

2タ イ 国際私 法 に関す る裁 判例

前 節 で は、 タ イ抵 触 法 の 内 容 を概 観 した が 、 これ らの条 文 が どの よ うに適 用 さ れ て い るの だ ろ うか 。 本 節 で は、 タイ 抵 触 法 に 関 す る タ イ最 高 裁 の 裁 判 例 を 取 り上 げ て み た い。 タ イ 最 高 裁 はWEB上 に判 例 検 索 サ.̲̲̲.ビス を公 開 して お り、

タ イ 抵 触 法 に 関 して も数 件 の 判 例 が 収 録 され て い る。 以下 で は そ れ ぞ れ 検 討 し て い く。

2‑1財 産法 分野 に関す る裁判例

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2・‑1‑1国 際 輸 送 損 害 賠 償 請 求 事 件

事 件 の概 要 】 西 暦1980年 、 米 国 の 自動 車 組 み 立 て 部 品 会 社(以 下 、A)が 動 車 部 品 に つ い て の 売 買 契 約 を タイ の 自動 車 組 み 立 て 会 社(以 下 、B)と 交 わ した 。 また 、Aは コ ンテ ナ2個 分 に あ た る同 部 品 の運 送 をバ ン コ ク に 事 務 所 を 置 くデ ンマ ー ク系 国 際 輸 送 会 社(本 社 コ ペ ンハ ー ゲ ン、 以 下 、Y)に 依 頼 し国 際 運 送 契 約 を締 結 した 。YはAに 対 し=船荷 証 券 を発 行 し、1936年 米 国 海 上 物 品 運 送 法(USCOGSA)に 従 い一 包500米 ドル 以 上 の貨 物 につ い て 消 失 な い し損 傷 に対 す る責 任 を負 わ な い 旨 を裏 書 した 。 一 方 、Bは 船 荷 に対 す る保 険 を タイ の保 険会 社(以 下 、X)と 結 ん だ 。 西 暦1980年6月ll日 、 米 国 西 海 岸 オ ー ク ラ ン ド港 よ りAは2個 の コ ン テ ナ をBに 向 け て 発 送 した 。 シ ン ガ ポ ー ル で 当 該 コ

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ン テ ナ は別 の船 に積 替 え られ 同年7月8日 バ ン コ ク に到 着 した 。Bが 船 荷 を 受 け取 った とこ ろ、 コ ン テ ナ2個 の うち1個 が破 損 し荷 物 の 一 部 が 消 失 して い た 。 Xは 保 険 契 約 に基 づ きBに 保 険 金 を 支 払 っ た。 そ こで 、XはYに 対 して 損 害 賠 償 を請 求 した の が 本 件 で あ る。

Xの 請 求 に対 しYは 次 の よ うに抗 弁 した 。Yの 住 所 は タ イ に は置 か れ て い な い の で 、Xは タイ で提 訴 で きな い 。XとYは 、 米 国 海 上 物 品 運 送 法 を適 用 す る 意 思 を有 して い た の で 、 同法 に規 定 され て い る よ うに、500米 ドル を超 え る貨 物

につ い て は 損 害 賠 償 責 任 が な い。

判 決 内容 】 第1審 は原 告 の 主 張 を認 め た の で 被 告 は控 訴 した が 、 控 訴 審 判 決 は1審 支 持 で あ っ た 。 そ こで被 告 は上 告 した 。

最 高 裁 は 次 の よ うに判 示 した 。 本 件 は、 国 際 海 上 輸 送 に関 し国籍 の 異 な る者 が締 結 した 契約 につ い て の 事 件 で あ るので 、 「仏 暦2481年 ・法 の抵 触 に関 す る法 律 」 第13条 債 務 に 関 わ る もの で あ る。 米 国 の1936年 米 国海 上物 品 運 送 法 第4条 の5に よれ ば、500米 ドル 以 上 の貨 物 につ い て は そ の 消失 等 に関 わ る損 害 を賠 償

しな い と規 定 され て お り、 本 件 荷 主 で あ る米 国 自動 車 部 品 会 社Aと 被 告Yは 規 定 を適 用 す る こ とに 同 意 し、 本 件 船 荷 証 券 に は そ の 旨が 裏 書 され て い た。 船 荷 の 一 部 が 消 失 した こ とが 判 明 した の は タ イ 国 内 に お い て で あ るか ら、 「仏 暦 2481年 ・法 の 抵 触 に関 す る法 律 」 第13条 に従 い 、 タ イ法 が適 用 され な けれ ば な

らな い こ とに異 論 は な い。 タイ 民 商 法 典609条2項 に よ る と、海 上 運 送 につ い て は これ に関 す る法 令 に依 る と規 定 され て い るが 、 タイ で は そ の よ うな法 令 は ま だ制 定 され て お らず 、 また 、 海 上 運 送 に関 す る慣 習 も存 在 しな い 。 従 っ て 、 密 接 に関 係 す る法 令 で あ る民 商 法 典 の 運 送 契 約 に関 す る条 項 が 適 用 され るべ きで あ る。 同 民 商 法 典 第625条 は、 運 送 契 約 にお い て 、 荷 送 人 が 明 白 に承 知 しな い 限 り、 運 送 者 の責 任 を 免 除 す る あ る い は制 限 す る約 款 規 定 は禁 止 され て い る。 本 件 に お い て は、 被 告 で あ る デ ン マ ー ク系 海 運 輸 送 会 社 の 運 送 責 任 の免 除 な い し 制 限 を規 定 した 約 款 につ い て は 、 ま さ に タ イ 民 商 法 典 第625条 規 定 の責 任 免 除 ・ 制 限 禁 止 規 定 に抵 触 す る もの で あ る。 本 件 の 船 荷 証 券 に は被 告 の 運 送 責 任 の免

除 ・制 限 規 定 が裏 書 され て い るが 、 荷 送 人 の 署 名 が な い の で 、 荷 送 人 が 運 送 人 の運 送 責 任 の 免 除 ・制 限 に 同 意 して い た とい う こ とはで き な い 。 従 っ て 、 当該

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タイ国際私 法 に関す る一考察

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運送 責任 の免除 ・制 限の裏書 は無効 で あ るの で、控 訴審 判決 を支持 し控 訴 人 の 請 求 を棄 却 す る。

若干 の考 察 】 本件 は、 タイ抵触 法 第13条 規 定 の債務 に関 す る裁 判例 で あ る。

すで に見 た よ うに、 同13条 に よって、 契約 の成 立 お よび効果 に関 して は当事者 の意思 が優先 され るが 、 当事者 の意 思が不 明確 で あ る ときは、 当事者 が 同一国 籍者 の場 合 は 当事者 の本 国法が、 同一 で な い場合 には、 当該 契約 の締 結 地 の法 律 が適用 され る。 また、契約 が遠 距離 間 の当事者 において締 結 され た場 合 は、

当該 契約 は契約 申込 に対 す る承諾 の通知 が届 いた場所 を契約 が締 結 され た場所 と看 徹 なす到 達主 義が採 られ、 それ が明 らか でな い場 合 は、 当該 契約 の履行 地 の法 律 が適用 され る。

本件 は、荷送 人 が米 国籍 、荷 受人 お よび運 送保 険会社 が タイ国籍 、運送 人が デ ンマー ク国籍 とい う典型 的 な国際運送 取 引 な い し国 際海 事運 送 事例 で あ る。

そ して、船 荷 の揚 げ地 が タイのバ ンコクで あ りコンテナ2個 の うち1個 に積 ま れ た貨物 の一 部 が消失 した こ とが判明 したの もバ ンコ クで あ った こ とに争 い は

ない。

本件 の国際貨物 運送 契約 は、 タイ抵触法 第13条2項 に規定 され る遠 距 離 間の 当事 者 に よる契約 で あ るか ら、 当該 契約 の締 結地 は契 約 へ の承 諾 の通 知 が到達 した場 所 とな る。 タイ最 高裁 の判例 情報 で は、承 諾 の通知 が到 達 した場 所 が明 らか で はな いの であ ろ う、結局 、契 約 の履 行地 が行 為 地 とされ た。

そ こで、 タイ最高裁 は、行為地 が タイで あ るので タイ法 を適用 すべ き ところ、

タイ民商法典 第609条 第2項 には、海上運送 に関 して は海上運送 に関す る法律 を 適 用 す る と規定 されて い るが 、 その よ うな準拠 すべ き法律 が まだ整備 され て い ない ことが判 明 したので、 同民商法典610条 以下 の運送 契約 に関す る条文 を適用 す る こ ととなっ た。争 点 は、荷 送人 が発効 した船荷 証券 の裏書 に米 国海 上 物 品 運送 法 の基 づ く運 送人 の損 害賠 償責 任 につ き制 限が付 され て い る こ とにつ いて で あったが、 タイ民商法典第625条 で は、運送 人の制 限責任 の禁止 が規 定 され て お り、 同条 を根拠 に タイ最 高裁 は原 告保 険会社 の主 張 を認 めた ので あ る。

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2‑1‑2国 際 労 働 契 約 事 件

事 件 の概 要 】 米 国籍 の原 告 は、 シ ンガ ポ..̲̲.ルに所 在 す る米 国籍 の会 社(被 告) に応 募 し採 用 され た後 、 タイ に 出 向 を命 ぜ られ た 。 勤 務 が 一 年 に満 た な い うち に 、 被 告 は 原 告 を解 雇 した 。 原 告 は給 与 、 利 息 、 賞 与 、 治 療 費 、 交 通 費 、 車 両 修 理 費 、 税 金 、 税 延 滞 金 な ど合 計 して5百50万6684バ ー ツ の請 求 訴 訟 を提 起 し た 。 これ に 対 して 被 告 は 次 の よ うに抗 弁 した 。 被 告 の 会 社 は タ イ 国 内 に支 店 は な く、 原 告 との 労 働 契 約 は シ ンガ ポ ー ル で 締 結 され た の で、 タ イ の裁 判 所 に提 訴 す る こ とは で きな い。 原 告 は 勤務 状 態 が 悪 く上 司 の 命 令 を 聞 か ず 会 社 に損 害 を与 え た の で 、 被 告 は原 告 を解 雇 す る権 利 を有 す る。 さ らに原 告 は 、被 告 会 社 の機i械 に10万 バ ー ツ相 当 の 損 害 を与 え、 また 、 交 代 の従 業 員 を探 す た め に10万 バ ー ツ の 出 費 が 要 した の で 、 合 わ せ て20万 バ ー ッの 損 害 賠 償 を請 求 す る。

本 件 は労 働 訴 訟 な の で 第1審 は 中 央 労 働 裁 判 所 が管 轄 裁 判 所 で あ っ た 。 同裁 判 所 は原 告 に一 部 勝 訴 の 判 決 を下 し、 被 告 に対 して6万3296バ ー ツ の未 払 賃 金 お よび 約1万5000バ ー ツ の解 雇 予 告 手 当 の 支 払 を命 じた が 、 原 告 お よび被 告 双 方 と も これ を不 服 と し最 高 裁 に上 告 した 。

判 決 内容 】 最 高 裁 労 働 事 件 部 の下 した判 決 の 主 な 内容 は 以 下 の通 りで あ る。

タイ 法 に よれ ば 、 タ イ の領 内 に お い て は い か な る者 も公 法 私 法 に 拘 わ らず タ イ 法 の 拘 束 下 に置 か れ る。 特 に刑 事 法 分 野 で は 、 刑 法 第4条 は 「領 土 内 で 罪 を犯 した いか な る者 で も法 律 に よっ て 罰 され る」 と規 定 して い る。 民 事 法 分 野 で は、

私 人 間 の争 い は民 商 法 に よっ て 規 制 され な けれ ば な ら な い 。 どの 国 の 法 律 を適 用 す るか の 問題 が あ る場 合 は、 「仏 暦2481年 ・法 の抵 触 に関 す る法 律 」 に従 わ な けれ ば な らな い 。 労 働 問題 につ い て は 、 そ の 多 くが 労 働 監 督 に 関 す る 内務 省 告 示 お よ び仏 暦2518年 労 働 関 係 法 に よ っ て 規 制 され な けれ ば な らな い 。 特 に、 仏 暦…2518年 労 働 関係 法 第10章 は 第128条 乃 至159条 に違 反 した 者 に対 す る刑 事 罰 を規 定 す る条 項 で あ る。 タ イ 領 内 に お け るい か な る国籍 の 者 で も同 労 働 関 係 法 上 の 罪 を 犯 した 者 は、 タ イ の 裁 判 所 に訴 え られ 、 タイ 法 に拘 束 され な けれ ぼ な らな い 。 従 って 、 タ イ領 内 に お い て 労働 紛 争 が 起 きた 場 合 は、 当事 者 が 他 の 国 の法 律 に従 う意 思 を有 して い て も タイ 法 に従 って 提 訴 し裁 か れ な けれ ば な らな い。 け だ し、 労 働 紛 争 が 起 き た場 合 、 刑 事 分 野 に 限 りタイ 法 に よ って 裁 き、 純

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タイ国 際私法 に関 す る一 考察

IS

粋 な労 働 紛 争 は他 国 の 法 律 に従 っ て 裁 くとい う理 由 は な い の で あ る。 よ っ て、

タ イ 国 内 に お い て 原 告被 告 間 で 労 働 紛 争 が 起 きた場 合 、 シ ンガ ポ ー ル で 労 働 契 約 が 締 結 され た と して も タ イ法 に よ っ て提 訴 され 裁 か れ るの で あ る。

原 告 被 告 の 問 で 紛 争 が 起 きた 場 合 どの 法 律 を適 用 す るか に つ い て は 、 「仏 暦 2481年 ・法 の 抵 触 に 関 す る法 律 」 第13条 に基 づ き判 断 さ れ る。 す な わ ち、 当事 者 の意 思 に従 うが 当事 者 の 意 思 が 不 明確 な場 合 は 、 同 一 国 籍 の 場 合 は共 通 本 国 法 が 、 同一 の 国籍 で な い場 合 は、 契 約 締 結 地 の 法 律 が 適 用 され る と規 定 して い る。本 件 の 労働 契 約 が シ ンガ ポー ル で締 結 され た段 階 で は、 双方 とも シ ンガ ポ ー ル 法 を適 用 す る意 思 が あ った か ど うか 定 か で は な い が 、 当 事 者 の 国籍 が 米 国 で あ るの で 、 米 国 法 の適 用 が 可 能 だ が 、 当 事 者 双 方 か ら米 国 法 の 証 明 責 任 が な さ れ て い な い の で、 「仏 暦2481年 ・法 の 抵 触 に 関 す る法 律 」 第8条 に基 づ き タ イ法 が 適 用 され る。

以 上 が 判 決 の主 要 内 容 で あ るが 、 最 高 裁 は、 中 央 労 働 裁 判 所 が 未 払 い 賃 金 額 の 算 定 の 際 に基 本 給 の み を基 準 と して い た こ とを 改 め 、 基 本 給 と諸 手 当 の 合 計 を基 準 と して 未 払 い賃 金 額 を算 定 しな お し、 さ ら に、 解 雇 予 告 手 当 お よ び そ の 他 の 請 求 額 の支 払 に つ い て は容 認 せ ず 、 結 局 、被 告 に対 し9万4346バ ー ツの 未 払 い賃 金 の み を支 払 う よ う命 じた 。

若 干 の考察 】 本判 決 は、 労働契 約 にお け る国際私 法 上 の当事者 自治 の原則 と 強行 法規 の適用 との関係 につ いて タイ司法 当局 の判 断 を伺 うこ とので き る内容 で あ る。 周知 の とお り、 当事 者 自治 の制 限論 に関 して は、公 法理 論 、公序 理 論 お よび特別 連結 理論 が主 張 され て い るが、本 判決 で は、 刑法 お よび労働 関係 法 の刑事 罰 に関 して は刑 法 第4条 の 「領 土 内で罪 を犯 した いか な る者 で も法律 に よって罰 され る」 が引用 され国籍 や 当事 者 の意思 に関 わ らず タイ法 が適用 され る として い るので あ るか ら、公法理 論 の考 え方 に立 った判決 で あ る とい え よ う。

なお、本件 もタイ抵触法 第8条 お よび13条 規 定 に関す る もので あ る。 す なわ ち、 当事 者双 方 は米 国籍 で あ るので、 タイ抵 触法第13条 に よれ ぼ、 準拠法 にっ いて契約 当事者 の意思 が不 明確 な場 合 は、共通 本 国法 で あ る米 国 法 の適用 が可 能 で あ る ところ、 その際 に は第8条 に従 い外国法 の証 明責任 が当事者 にあ るが 、 本件 で は当事 者 双方 が米 国法 にっ いて証 明 をな さなか った ので、結 局 、 タ イ法

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が 準 拠 法 と して選 択 され る こ と とな っ た 。

い か な る理 由 に よ り当事 者 が 米 国 法 の 適 用 を 回避 した の か に つ い て は定 か で な い が 、 本 件 で は、 タ イ 労 働 関 係 法 に よ っ て も 自 己 に 有 利 で あ る と判 断 した の だ とす る と、 この よ う に タ イ 抵 触 法 第8条 で 外 国 法 の証 明 責 任 とい う規 定 が 存 す るた め、 当事 者 に とっ て タイ 法 に よ る裁 判 で も不 利 とな らな い と判 断 され た 場 合 、 タ イ 抵 触 法 が 関 わ り且 つ 外 国 籍 の 者 が 当事 者 とな っ て い る事 件 に お い て は 、 準 拠 法 は タ イ 法 が 選 択 され る とい う傾 向 が 今 後 も見 られ るの で は な い か と 推 測 され る の で あ る。

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2‑2家 族 法 分 野 に 関 す る 裁 判 例 … 外 国 人 婚 姻 登 録 請 求 事 件

事件 の概 要 】 タイ で40年 近 く共 に生 活 し子 が7人 い る原 告 ペ トナ ム 人 夫 婦 が 、 婚 姻 届 を タ イ の 役 所 に提 出 した と こ ろ、 登 録 官 が 受 理 しな い た め提 訴 した 事 件 で あ る。

登 録 官 の 抗 弁 と して は、 原 告 夫 婦 は双 方 ともベ トナ ム 人 で あ るの で 、 婚 姻 の 能 力 お よび 要 件 に つ い て は 、 タ イ抵 触 法 第10条 に 「婚 姻 の 要 件 につ い て は、 当 事 者 それ ぞ れ の 本 国 法 に依 る」 と規 定 され て い るた め、 本 件 で は ベ トナ ム法 が 適 用 され るが 、 原 告 はベ トナ ム婚 姻 法 を 明 示 で きな か っ た の で 婚 姻 登 録 は受 理 され な い 、 とい う もの で あ った 。 第 一審 は原 告 が 勝訴 し被 告 が控 訴 した とこ ろ、

控 訴 審 は 一 審 支 持 で あ っ た の で 、 控 訴 人 は上 告 した 。

判 決 内 容 】 タイ 抵 触 法 第10条 第1項 に は 、 人 の行 為 能 力 お よ び無 能 力 に 関 し て は そ の者 の本 国 法 に依 る と規 定 さ れ て お り、 また 、 第10条 に よ り婚 姻 の要 件

につ い て は 当 事 者 の本 国 法 が 適 用 され るが 、 一 方 で 、 外 国 法 適 用 を主 張 す る者 は、 同第8条 規 定 の よ う に、 その 法 令 に つ い て 裁 判 所 を納 得 させ る証 明 が な さ れ な け れ ば な らな い の で あ るが 、 原 告 は、 ベ トナ ム法 の 証 明 を行 な わ な か っ た

た め 、 本 件 で は タイ 法 が 適 用 法 令 とな る と し上 告 棄 却 の 判 決 を言 い渡 した 。

若干 の考 察 】 本 件 は家族 法分 野 の事例 で あ るが 、一 方で、 第8条 の外 国法 の 証 明義務 に関 す る判例 で もあ る。筆 者 が利用 した タイ最 高裁 判所 の資 料 だ けで は、本件 にお け る婚姻 受理 担 当官 の不受 理 の理 由が定 か でな いが、原 告 がベ ト

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タイ国際私 法 に関 す る0考 察

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ナ ム婚 姻 法 に基 づ い て 婚 姻 届 を ペ トナ ム政 府 に提 出 して い な い の で 、 外 国 の適 法 な婚 姻 届 の提 示 が 当 該 担 当 官 に対 して な され な か っ た こ とが 容 易 に推 測 され

る。

原 告 の 身辺 状 況 に 関 す る詳 細 につ いて は不 詳 で あ るが 、 タ イ の 地 方 部 に はか つ て 難 民 と して流 入 して きた ベ トナ ム人 や カ ン ボ ジ ア人 な どが 多 数 生 活 して い るの で あ り、 そ の者 た ちが 本 国 政 府(本 件 で は ベ トナ ム政 府)に 対 して 婚 姻 届 を提 出 す る状 況 下 に は な い 。従 って 、 この よ うな 外 国 人 が 婚 姻 届 を タ イ政 府 に 提 出 す るに つ い て は、 そ も そ も添 付 書 類 の 不 備 に よ り不 受 理 とな る。 つ ま り、

い わ ゆ る難 民 の婚 姻 届 申請 は、 難 民 受 け入 れ 国 で は 認 め られ な くな る とい う事 態 が 生 じ るの で あ る。

本 件 は 、 以 上 の よ うな特 殊 環 境 に あ る と思 わ れ る外 国 人 の婚 姻 届 の 事 例 で あ る。 この 場 合 、 タ イ家 族 登 録 法 第11条 に よれ ば、 タイ の 裁 判 所 の婚 姻 届 許 可 の 判 決 な い し決 定 が あ れ ば タイ で の 婚 姻 届 が 可 能 とな るの で 、 本 件 原 告 も タ イ の 裁 判 所 に判 断 も仰 い だ もの で あ ろ う。 た だ し、 この場 合 、 タイ 抵 触 法 第10条 よれ ば婚 姻 の 要 件 に つ い て は 当事 者 の本 国法 が 適 用 され る の で 、 この 場 合 はベ トナ ム 法 が準 拠 法 とな るが 、 一 方 で 、 外 国 法 を適 用 し よ う とす る者 は タ イ の 裁 判 所 に対 して そ の 外 国 法 に っ い て 証 明 しな けれ ば な らな い た め 、 本 件 で は、 原 告 が 当該 証 明 を な す こ とが で きな か った の で 、 タ イ法 を適 用 して 婚 姻 届 を認 め た で あ る。

タ イ の 地 方 部 に住 む ベ トナ ム 人 夫 婦 に とっ て ベ トナ ム法 の 詳 細 を把 握 す るた め に は 、 相 当程 度 の時 間 的 な い し金 銭 的 負 担 が 必 要 で あ る と推 測 され 、 ま た 、 一 方 で40年 近 くタイ 国 内 に お い て 公 然 且 つ 平 穏 に生 活 して き た の で あ る か ら、

この よ うな原 告 に つ い て は、 判 決 が 示 す よ うに タ イ 法 を適 用 す る こ とが 妥 当 で あ ろ う。

3タ イ 国際私 法上 の契約 お よび不法行 為 に関す る立 法例

本 節で は、 タイ抵 触法 の契約 お よび不 法行為 に関係 す る最 近 立法 された 複合 一貫輸 送法 と船 舶衝 突損害 賠償 法 を検 討 してみた い。 これ ら2法 を取 り上 げる 理 由 と して は、 次 の通 りで あ る。

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 ラ

タイ 交 通 省 の 貨 物 輸 送 統 計 に よ る と、 表1に あ る よ うに 昨 年2004年 で は タイ

17)

国 へ の 輸 入 貨 物 量 が 約9615万 トンで あ り、 そ の一 方 で 、 表2に あ る よ うに 同 時 期 の輸 出貨 物 量 は約8654万 トンで あ っ た。 これ は、6年 前 の1998年 と比 較 す る

と、輸 入 量 が 約69パ ー セ ン ト、 輸 出 量 が42パ ー セ ン トそれ ぞれ 増 加 して い る こ とに な る。 この 内 、 海 上 輸 送 だ け に つ い て見 る と、 同 時 期 の 輸 入 で は65パ ー セ ン ト増 、 輸 出 で は35パ ー セ ン ト増 とな っ て い る。

さ らに、 表3に あ る よ うに外 国貨 物 船 の入 国 状 況 に関 す る統 計 で は、1992年 時 点 で タ イ に入 港 した 外 国貨 物 船 は1万3040隻 だ が 、2002年 で は263パ ー セ ン

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ト増 加 した3万4345隻 とな った 。 つ ま り、 タ イ の 国 際貨 物 輸 送 、 特 に、 船 舶 輸 送 が 急 増 して い る とい う こ とが 分 か るの で あ る。

表1国 際貨物 の輸入状 況 (単位 千 トン)

1998 X999 zOOO 2001 2002 zoo3 2004

海路 56,060 fi'1,516 69,918 H7,975 75,547 SO,674 92,221 陸路 551 1,240 1,566 1,899 1,846 3,143 3,440

空路 245 436 1,791 489 727 969 490

郵便 2 4 ll3 176 307 361 1

合計 56,858 69,196 73,388 90,538 78,427 85,147 96,152

表2国 際貨物の輸出状況 (単位 千 トン)

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004

海路 5$,268 58,654 72,626 70,252 75,302 70,517 7s,7so 陸路 2,269 5,327 3,997 5,001 5,645 6,076 7,359 空路 368 755 411 408 641 357 401

郵便 lI 97 0 0 Q 0 0

合計 60,916 64,829 7'T,434 75,661 81,588 76,950 86,539

これ ら タ イ の 国 際 貿 易 に お け る貨 物 輸 送 は、 複 合 一 貫 輸 送 とい う形 態 を と り か つ コ ン テ ナ船 舶輸 送 が 中 心 とな っ て い る こ とが 推 測 され るが 、 この こ とは、

19)

東 南 アジ ァ向け コンテナ船運 賃 の最近 の上昇 か ら見 て も理解 す るこ とが で きる。

これ らの分 野 の立法 が制定 され良好 な法整 備 が な され る こ とは、 関連 渉外 裁判 にお け る債 務不 履行 損害賠償 事件 や コンテナ船 の衝 突事件 な どの不法 行為 損害

(19)

タイ国際 私法 に関 す る一 考察

賠 償 事 件 に お い て 、 外 国 法 が 適 用 可 能 な場 面 に お い て も、 当 事 者 が タ イ法 に 準 拠 す る傾 向が 増 す の で は いか と推 測 され る の で あ る。 した が って 、 これ ら2 法 が い か な る内容 で あ るか を考 察 す る こ とは 、 タイ 抵 触 法 上 、 特 に 、 契 約 お よ び不 法 行 為 規 定 の 機 能 を 論 ず る上 で 重 要 な示 唆 を与 え る と考 え られ る。

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表3タ イへ の外 国貨 物船 の入 国状況

3‑1タ イ 抵 触 法 第13条(契 約)に 関 す る 立 法

…複 合 一 貫 輸 送 法

本 年(2005年)7月11日 に、 「仏 暦2548年 複 合 一

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貫 輸 送 に関 す る法 律 」 が 公 布 され た 。複 合 一 貫 輸 送 とは、 「特 定 の貨 物 を船 舶 、鉄 道 、 自動 車 、航 空 機 な ど種 類 の 異 な る2つ 以 上 の輸 送 手 段 に よ り相 次 い で

21}

輸 送 す る方 式 」 の こ とを い うが 主 に コ ンテ ナ 輸 送 が そ の典 型 で あ ろ う。

本 法 の 立 法 趣 旨 は 以 下 の とお りで あ る。 国.r,取 引 に お け る貨 物 の 運 送 形 態 が 単 に港 か ら港 、 あ るい は、 空 港 か ら空 港 へ とい った 単 一輸 送 に関 す る形 態 か ら、

い くつ か の運 送 方 法 が 混 在 した形 態 が と られ る よ うに な っ て来 た の で 、 複 合 的 か つ 一 貫 した 運 送 に関 す る規 定 を 設 定 す る こ とに よ り、 この よ うな 形 態 の 運 送 サ ー ビス業 務 を利 用 しや す い よ うに し、 もっ て 、 国 際 運 送 面 に お け る タ イ の 国 際 競 争 力 を高 め る こ とに あ る。

全 条80条 の構 成 は次 の とお りで あ る。 第1条 本 法 の名 称 、 第2条 施 行 日 (官 報 に公 布90日 後 に施 行)、 第3条 本 法 に抵 触 な い し重 複 す る関 連 法 令 に つ い て は、 本 法 が 優 先 され る 旨 の規 定 、 第4条 定 義 、 第5条 タ イ 国 内 で の 複 合 一 貫輸 送 契 約 、第6条 所 轄 大 臣 、 第1章 複 合 一 貫 輸 送 契 約(第7条 一第38 条)、 第1節 総 則(第7条 一15条)、 第2節 荷 送 人 の 責 務 、 第3節 複 合 運 送 人 の 責 務 、 第4節 複 合 運 送 人 の 責 任 の 限 定 と損 害 賠 償 の 算 定 、 第5節 求 権 の 行 使 、 第2章 複 合 一 貫 輸 送 に対 す る監 督(第39条 一第64条 〉、 第3章 紛 争 処 理(第65条 一69条)、 第4章 罰 則(第70条 一78条)、 経 過 規 定(第79‑

80条)、 手 数 料 表 。

入国船隻数

X992 13,040 X993 18,119 X994 24,855 X995 29,316

X996 不明

X997 26,849 1998 27,646 X999 28,682 2000 33,256 2001 29,953 2402 34,345

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