システム工学 I 第 5 回
Lagrange 運動方程式
と状態方程式
一般化座標の必要性 (1)
•
制御対象はふつう微分方程式によってモデリ ングされるが, そのためには座標系が必要
•
どのような座標系を取るかが問題になる
•
素朴に考えると実験室に固定された直交座標
系で良さそうだが・ ・ ・
一般化座標の必要性 (2)
•
例として
2次元の
2重振り子を考える
(x1,y1) (x2,y2)
θ1
θ2
一般化座標の必要性 (3)
•
素朴には, (x
1, y1), ( ˙x1,y˙1), (x2, y2), ( ˙x2,y˙2)を変数として
8次元の微分方程式を立てれば よいが・ ・ ・
• (θ1,θ˙1, θ2,θ˙2)
の
4個の変数で運動は完全に記 述される筈
• 8
次元の微分方程式を立てることは無駄
一般化座標の必要性 (4)
•
運動を記述するために必要なパラメータ
(座標を一般化したもの) を一般化座標という.
•
一般化座標の時間微分を一般化速度という.
•
一般化座標の次元は, その運動を直交座標系
で表現したときの座標系の次元と同じことも
あれば, そうでないこともある.
一般化座標の必要性 (5)
•
今回の講義以降, 時間に関する
1階微分をドッ ト, 2 階微分を
2重ドットであらわすことが ある.
•
たとえば,
dxdt
と
x,˙ d2xdt2
と
x¨は同じ意味.
•
稀に
...x, ....
x
などといった記号が使われること
がある.
Lagrangean(1)
•
「力学系の運動を最小限の変数で記述したい」
という要求に答えるのが
Lagrangean( La- grange関数ともいう) を用いた定式化
• Lagrangean
はもともと
Newton力学の再定式
化のために使われたもので, 運動エネルギー
とポテンシャルエネルギーの差として定義さ
れた.
Lagrangean(2)
•
後述するが, Newton 力学は,
Lagrangeanの 積分が停留値を取るという形で再定式化され るということが発見された.
•
この事実を最小作用の原理という. 最小作用
の原理は
Newton力学の言い換えと解釈する
こともできる.
Lagrangean(3)
•
最小作用の原理は, 物理現象に関する実験事 実を記述した原理であり, 他の物理法則から 導かれるものではない.
•
実は最小作用の原理という名前は不正確. 物
理現象は
Lagrangeanの積分が停留値を取る
形で実現されるが, 最小であることは保証さ
れない.
Lagrangean(4)
• Lagrangean
の積分が停留値を取るための条
件は, 変分法という手法によって導かれ, そ の結果,
Eulerの方程式と呼ばれる微分方程 式が出て来る.
• Lagrangean
から導かれた
Eulerの方程式を
Lagrangeの運動方程式,
Euler-Lagrange方程式などと呼ぶ.
Lagrangean(5)
• Lagrangean
を用いた古典力学の再定式化を解
析力学と呼び, これは量子力学を学ぶために 必須
• 2
足歩行ロボットや多関節マニピュレータの
モデリングの際にも, 変数の数を減らすため
には, Lagrangean を用いた定式化が必須
Lagrangean(6)
• Lagrangean
と, そこから導かれる
Hamilton関数と呼ばれる関数は, 受動性と呼ばれる性 質に基づく制御などに利用されている.
•
古典的な
Lagrangeanや
Hamilton関数の変数
には物理的な意味があるが
(位置,速度など),
その変数に物理的な意味を与えずに一般化し
たものが最適制御で用いられている
Lagrangean(7)
•
物理学および最適制御では
,ともに
Lagrangeanあるいは
Hamiltonianが取り扱われるのである
が
,その意味合いは異なる
:⊲
物理学にとって
,物理法則は
Lagrangeanが 停留値を取る条件として定式化されるとい うのは
,物理法則
⊲
最適制御では
, Lagrangeanが停留値を取る
ような制御入力を求めることが目的
Lagrangean(8)
• Hamilton
関数の一般化については, van der
Schaftによって
port-controlled Hamilto- nian system(あるいはport-Hamiltonian system)という名称で取り纏められた体系が 有名.
•
以下ではまず古典力学における
Lagrangeanについて説明する.
古典力学における Lagrangean(1)
•
古典力学における
Lagrangean(これをLであ らわす) は, 運動エネルギー
(Tとする) とポ テンシャルエネルギー
(Uとする) の差とし て定義される. 以下がその定義.
L=T −U
•
続いて, Lagrangean の例を挙げる.
質量 m の物体の自由落下
x
0 U =−mgx T = 12mx˙2
L= 12mx˙2+mgx
座標軸の原点と
向きに注意
長さ l 単振り子 ( 質量 m)
l m
U =mgl(1−cosθ) T = 1
2m(lθ˙)2 L= 1
2m(lθ˙)2
−mgl(1−cosθ) θ
変分法 (1)
• x, ˙x
および
tに関する
Lagrangeanが与えら れているものとし, これを
L(x,x, t)˙とする.
•
運動開始時刻を
ti,運動終了時刻を
tfとし,
J =Z tf
ti
L(x,x, t)dt˙
が停留値となるための
条件を求めたい. ただし始点と終点を固定す
る:
x(ti) =xi, x(tf) =xf変分法 (2)
•
この問題を解くための方法が変分法
•
変分法では,
x(t)が
J = Z tfti
L(x,x, t)dt˙
の 停留値を与えるための条件を求める.
• x(t)
がこの積分の停留値を与えているのであ
れば,
x(t)に微小な摂動が加えられても上記
積分はほとんど変動しない.
変分法 (3)
•
変分法では, この「微小な摂動が積分値に影 響を与えない」という条件から, 微分方程式 を導く. このために,
x(t)を少しずらして,
x(t) +εh(t)としてみる.
• h(t)
は
h(ti) = 0および
h(tf) = 0という条
件のみ指定された関数,
εはパラメータ
変分法 (4)
•
積分値の変動を
∆Jとすると・ ・ ・
∆J = Z tf
ti
L(x+εh,x˙ +εh, t)˙ −L(x,x, t)˙ dt
• Taylor
展開して,
L(x+εh,x˙ +εh, t) =˙ L(x,x, t)˙ +∂∂Lxεh+∂∂Lx˙εh˙ + (高次項)
•
高次項は無視する.
変分法 (5)
•
低次項が零となる条件を求めたい
•
任意関数
hの微分が含まれるのは都合が悪い ので, 部分積分によりこれを消すと・ ・ ・
Z tfti
∂L
∂x˙hdt˙ = ∂L
∂x˙h tf
ti
− Z tf
ti
d dt
∂L
∂x˙
hdt
ただし
f(t)tf
ti
は
f(tf)−f(ti)を意味する
.変分法 (6)
•
ここで
h(ti) =h(tf) = 0を使うと・ ・ ・
• ε Z tf
t0
∂L
∂x − d dt
∂L
∂x˙
hdt
が零となる, というのが求める条件
• ε, h
は任意だったから
∂L
∂x − d dt
∂L
∂x˙
=0
でなければならない.
変分法 (7)
•
微分方程式
d dt∂L
∂x˙
= ∂L
∂x
を
Euler方程式, あるいは
Euler-Lagrange方程式という.
•
関数
x(t)が
Euler方程式を満たすことが, そ の関数を代入したときの
Z tf ti
L(x,x, t)dt˙
の
値が停留値となるための必要条件である.
自由落下の Lagrangean と運動方程式
•
自由落下の問題では
L= 12mx˙2+mgx.
• ∂L
∂x˙ =mx,˙ ∂L
∂x = mg
を
Euler方程式に代入 すると・ ・ ・
• d
dtmx˙ = mg,
すなわち
x¨=gで, 確かに自由
落下の運動方程式になっている.
単振り子の Lagrangean と運動方程式 (1)
•
単振り子では,
L= 12m(lθ)˙ 2−mgl(1−cosθ).
• ∂L
∂θ˙ = ml2θ,˙ ∂L
∂θ = −mglsinθ
を
Euler方程 式に代入すると・ ・ ・
• ml2θ¨=−mglsinθ,
よって
θ¨=−gl sinθ
単振り子の Lagrangean と運動方程式 (2)
•
微分方程式
θ¨=−gl sinθ
から単振り子の周期 を求めるためには, 楕円積分という手法が必 要になる.
•
初学者向けの議論では,
θが十分小さいと仮 定し, sin
θ≃θと近似する. このとき,
θ¨≃ −g lθ
散逸関数 (1)
•
物理における
Lagrangeanは保存則に対応し たものであり, 摩擦などのエネルギー散逸構 造を持つ系には対応できない
•
この問題を解消するために,
(Rayleighの)
散逸関数という関数を
Lagrangeanに付加す
ることがある.
散逸関数 (2)
• 1
次元の並進運動では, 典型的な動摩擦力モ デルは,
−cx˙.•
系に摩擦などがある場合には, Euler 方程式 を次のように変更すれば良さそう
d dt
∂L
∂x˙ = ∂L
∂x −
散逸力の項
| {z }
追加
散逸関数 (3)
• 1
次元の並進運動では, 動摩擦力
−cx˙は,
− d dx˙
1 2cx˙2
によって与えられる.
•
一般化座標および一般化速度で記述された系 では, 散逸力が
∂D( ˙x)∂x˙
となる関数
D( ˙x)を,
何らかの形で構成することを試みる.
散逸関数 (4)
•
散逸力が
∂D( ˙x)∂x˙
となる関数
D( ˙x)がうまく 見付かったとき, これを
(Rayleighの) 散逸 関数という.
•
先に挙げた
Q( ˙x) = 12cx˙2
は
Rayleighの) 散逸
関数の一例である.
散逸関数 (5)
•
うまく散逸関数
Q( ˙x)が見付かった場合, エ ネルギー散逸構造を含む系の
Euler方程式は 次のように変わる.
d dt
∂L
∂x˙ = ∂L
∂x − ∂Q( ˙x)
∂x˙
Lagrange 制御システムと状態方程式 (1)
Lagrangean
で記述されたシステムを制御システム
と捉える場合には, もっとも単純には, Euler 方程 式の右辺に入力ベクトル
uを追加する. すなわち,
d dt
∂L
∂x˙ = ∂L
∂x +u (散逸力なし)
d dt
∂L
∂x˙ = ∂L
∂x − ∂Q( ˙x)
∂x˙ +u (散逸力あり)
Lagrange 制御システムと状態方程式 (2)
• Lagrange
制御システムにおいて, 状態変数
zを
z = (zT1,zT2)T = (xT,x˙T)Tとし, 関数
ψを次のように定義する.
ψ(z,z,˙ u, t) = d dt
∂L
∂x˙ − ∂L
∂x+ ∂Q( ˙x)
∂x˙ −u
• ψ=0
が
z˙2について解け, ˙
z2 =η(z,u, t)と
いう形になっていると仮定すると・ ・ ・
Lagrange 制御システムと状態方程式 (3)
•
次の
(非線形)状態方程式が得られる.
˙
z1 =z2
˙
z2 =η(z,u, t)
•
このように解けない場合は以下の形
(ディスクリプタシステム) を取り扱うしかない:
˙
z1 =z2, 0=ψ(z,z,˙ u, t)
Lagrange 制御システムと状態方程式 (4)
•
教科書の例を単純化して, 摩擦のない
2連の
振動子
(左端固定)の右端に外力
uを加える
問題を考える.
k1 m1 k2 m2
q1 q2
u
Lagrange 制御システムと状態方程式 (5)
• qi
を質量
miの物体のつり合いの位置からの 変位とし, 各ばねのばね定数を
kiとする
(i= 1,2). q= (q1, q2)Tとする.
•
運動エネルギーは
12 m1q˙12+m2q˙22
,
ポテン
シャルエネルギーは
12 k1q12+k2(q2−q1)2
Lagrange 制御システムと状態方程式 (6)
入力
uは
Lagrangeanとは無関係なので
, Euler方程式 の導出が終わった後で追加することにして・ ・ ・
L= 1
2 m1q˙12+m2q˙22
− 1
2 k1q21+k2(q2−q1)2
∂L
∂q˙ = m1q˙1, m2q˙2
,
∂L
∂q =− (k1+k2)q1−k2q2, −k2q1+k2q2
Lagrange 制御システムと状態方程式 (7)
•
以上を
dtd ∂L∂q˙
= ∂L∂q
に代入すると
,m1q¨1=−(k1+k2)q1+k2q2,m2q¨2=k2q1−k2q2
•
第
2式には入力
uが追加されているので
, m2q¨2 =k2q1−k2q2+uのように変更する
.第
1式はそのまま
.•
状態変数を
(x1, x2, x3, x4)T = (q1, q2,q˙1,q˙2)Tと
取る
Lagrange 制御システムと状態方程式 (8)
以上のように変数を取って整理すると・ ・ ・
˙
x1 =x3 ( ˙x1 = ˙q1=x3
だから
)˙
x2 =x4 ( ˙x2 = ˙q2=x4
だから
)˙
x3 = −(k1+k2) m1
x1+ k2
m1
x2
˙ x4 = k1
m2
x1− k2
mmx2+ 1 m2
u
Lagrange 制御システムと状態方程式 (9)
行列を使って書き直すと
,˙
x=Ax+Bu,
A=
0 0 1 0
0 0 0 1
−k1m+k2
1
k2
m1 0 0
k1
m2 −mk2
2 0 0
, B=
0 0 0
1 m2
Lagrange 制御システムと状態方程式 (10)
•
先の式が教科書と違うのは
,教科書と異なり
,摩 擦がない場合を考えているから
•
摩擦を考慮し
,摩擦に対応する散逸関数を
D = 12 d1q˙21+d2( ˙q2−q˙1)2+d3q˙22
として計算し直す と教科書の式が得られる
.•
教科書とは大文字の使い方が違うので注意
.Hamilton の運動方程式 (1)
• LagrangeanL(x,x˙, t)
とが与えられていると いう問題設定に戻る.
• (非線形)
座標変換によって
Euler方程式を別
の形に書き直したい.
Hamilton の運動方程式 (2)
• q=x
と書き直し,
p= ∂L∂x˙ T
と定義する.
p
を一般化運動量と呼ぶ.
•
任意の時刻において
(x,x)˙から
(q,p)への変
換が非線形座標変換になっているものと仮定
する. この仮定のもとで, ある関数
η(q,p, t)が存在し, ˙
x=η(q,p, t)である.
Hamilton の運動方程式 (3)
• Hamiltonian H(q,p, t)
の定義は次の通り:
H(q,p, t) = pTη(q,p, t)−L(q,η(q,p, t), t)
このようにする理由は, Hamiltonian を使って
Lagrange形式を表現し直すと(これを
Hamilo- tonの運動方程式という) 見通しが良いこと
(後述).
この計算を次に見てゆく.
Hamilton の運動方程式 (4)
∂H
∂q =pT∂η
∂q − ∂L
∂q − ∂L
∂q˙
∂η
∂q
=pT∂η
∂q − ∂L
∂q −pT∂η
∂q
=−∂L
∂q =−∂L
∂x = d dt
∂L
∂x˙
=− dp
dt T
Hamilton の運動方程式 (5)
∂H
∂p =ηT +pT∂η
∂p − ∂L
∂x˙
∂η
∂p
=ηT +pT∂η
∂p −pT∂η
∂p
=ηT = ˙x= ˙q
Hamilton の運動方程式 (6)
•
これらをまとめてたものは次の通り. これを
Hamiltonの運動方程式という.
˙ q=
∂H
∂p T
˙ p=−
∂H
∂q T
Hamilton 制御システム (1)
• Hamilton
制御システムは, Hamilton の運動 方程式に散逸関数に相当する項と制御入力, 出力関数を付加したもの
(以下においてDは 定数行列).
•
次のシートには変数を
(qT,pT)Tのままにし
たものを書くが,
x = (xT1,xT2) = (qT,pT)Tと置き直すことが一般的
(xi ∈Rn, i= 1,2).Hamilton 制御システム ( 変数 (q
T, p
T)
T)
˙ q=
∂H
∂p T
˙ p=−
∂H
∂q T
−D ∂H
∂p T
+u
y= ∂H
∂p T
Hamilton 制御システム : ( 変数 x)
˙ x=
J − R ∂H
∂x T
+Gu
y=GT ∂H
∂x T
J = 0 In
−In 0
!
,R= 0 0
0 D
!
,G= 0
In
!
Inはn次の単位行列
port Hamiltonian システム (1)
Hamilton
制御システムの行列
J,D,Gを
xの関数で置 き換えたシステムは
port(-controlled) Hamiltonianシステムと呼ばれ
,近年
,活発に研究されている
.˙
x= J(x(t))− R(x(t))
∂H
∂x T
+G(x(t))u y= (G(x(t)))T
∂H
∂x T
port Hamiltonian システム (2)
ただし
,以下の条件が成り立つものとする
.• J(x(t))
は
J(x(t)) = −(J(x(t)))Tを満たす関 数行列で
,• R(x(t)) =
0 0 0 D(x(t))
• x(t)
を固定したとき
D(x(t))は半正定対称行列
とする
.port Hamiltonian システム (3)
• port Hamilton
システムの具体例は
,メカトロニ クスや電気回路などで見られる
•
系に自然なエネルギー散逸構造が定まっているた め
,制御系設計が比較的容易で
,ロバスト性が高 いことがメリット
•
一方で
,適用できる対象が限定され
,かつ設計の
自由度が低いことがデメリット
Lagrange の未定乗数法 (1)
•
運動方程式を立てるとき
,運動に束縛条件が付い た状況を取り扱わなければならないことがある
•
たとえば円柱上の物体が斜面を滑らずに転がる
,といった場合
•
一般化座標
qのもとで
,ベクトル値関数
C(q)が
与えられ
(C(q) ∈ Rlとする
), C(q) = 0を満た
すように運動方程式を立てたい
,という状況を考
える
.Lagrange の未定乗数法 (2)
•
このような状況で役に立つのが
Lagrangeの未 定乗数法
.以下ではこの手法について述べる
.• λ∈Rl
とし
, Lagrangean Lのかわりに
, LC =L+λTC(q)という関数を考える
.• C(q)=0
であれば
LC =Lである
.• ∂LC
∂λ =C(q)T
は束縛条件に対応する関数である
.Lagrange の未定乗数法 (3)
•
したがって
,以下の連立
(微分
)方程式を解けば
,束縛条件がある問題を取り扱うことができる
.d dt
∂LC
∂q˙ = ∂LC
∂q
∂LC
∂λ =0
•
このような手法を
Lagrangeの未定乗数法とい
う
.Lagrange の未定乗数法 (4)
例として円柱が斜面を転がり落ちる問題を考える
.x(t) α
θ(t)
横から見た図 円柱
質量 m慣性モーメント I r
Lagrange の未定乗数法 (5)
•
円柱の横滑りは十分小さく無視できると仮定する
.•
円柱の質量は
m,断面の半径は
r,慣性モーメン トは
Iとする
.•
斜面の勾配は
αとする
.•
運動開始時を基点として
,円柱の設置点の斜面に
沿った移動距離を
x(t),円柱の回転角度を
θ(t)と
する
. θ(t)は
360度
(2π)を越えても零に戻さな
いことにする
.Lagrange の未定乗数法 (6)
•
時刻
tにおける円柱の運動エネルギーは
1 2mx˙2+ 12Iθ˙2
で
,ポテンシャルエネルギーは
−mgxsinα•
よって
,L= 12mx˙2+ 12Iθ˙2+mgxsinα•
横滑りしないなら
x(t)−rθ(t) = 0.ゆえに
LC = 12mx˙2+12Iθ˙2+mgxsinα+λ(x−rθ)Lagrange の未定乗数法 (7)
d dt
∂LC
∂x˙
= ∂L∂xC ⇒ mx¨=mgsinα+λ ∂LC
∂θ˙
= ∂L∂θC ⇒ Iθ¨=−rλ
∂LC
∂λ = 0 ⇒ x=rθ
•
第
2式から
λ=−Iθ/r,¨•
第
3式を
2回微分して
x¨=r訕
これらをまとめて
λ=−Ix/r¨ 2Lagrange の未定乗数法 (8)
• λ=−Ix¨
r2
を
mx¨=mgsinα+λに代入すると
,m+ I r2
¨
x = mgsinα
; この微分方程式を解 くと円柱の運動が決まる
• I
の影響で円柱の移動が遅くなっており
,物理的に は
m¨x=mgsinα+λにおける
λ=−Iθ¨r =−Ix¨ r2
の項が摩擦に相当する
.Lagrange の未定乗数法 (9)
•
先に述べた解は「僅かな横滑り」を無視した極限
.•
物体の断面の形状が複雑などの理由で
,物体の回
転軸と質量中心が必ずも一致しない運動には
,「斜
面を滑らずに転がる」という条件が物体の質量中
心の上下動を発生させることがあり得る
.この場
合には
,「斜面を滑らずに転がる」という条件を
実現できない可能性がある
.参考文献
• 畑(益川監修,植松,青山編),解析力学,東京図書, 2014
• 原島,力学, 3訂版,裳華房, 1985
• W. M. Haddad and V. Chellaboina, Nonliner Dynamical Systems and Control, Princeton University Press, 2008
• 野波,水野(編集代表),制御の事典,朝倉書店, 2015