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グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題

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グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題

中野 毅

ReexaminingthethoriesofGlobalizationandrelatedissuestoReligion

NAKANOTsuyoshi

1.は じめ に

2.グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン論 の 諸 相

(1)ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン の 世 界 シ ス テ ム 論

(2)メ イ ヤ ー の 国 民 国 家 の グ ロ ー バ ル ・シ ス テ ム 論 (3)ギ デ ンズ の 再 帰 的 近 代 化 論

3.複 合 過 程 と し て の グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン論 一 ロ バrソ

(1) (2}

(3}

(4}

初 期 の研 究 と基 本 思 想 グ ロー バ ル ・ブ イ ー ル ド 相 対 化

普 遍 主 義/個 別 主 義 の 問 題 一 グ ロ ー カ リゼ ー シ ョ ン論 へ 4.結 び に か え て

1.は じめ に

グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンに 関 す る議 論 が 盛 ん で あ る。 本 誌 の今 年 度 巻 第1号 で も特 集 さ れ て い る 。 筆 者 も1997年 に 出 版 した 共 編 著 『宗 教 と ナ シ ョナ リ ズ ム』(世 界 思 想 社)以 来,各 国 に お け る 宗 教 とグ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン との 関 連 に強 い 関 心 を い だ い て きた 。 そ の 成 果 の 一 端 を,『 宗 教 の復 権 一 グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン ・カ ル ト論 争 ・ナ シ ョナ リ ズ ム』(東 京 堂 出 版2002年9

月)と して 発 刊 した が,本 書 刊 行 に至 っ た 直 接 の 動 機 は,2001年9月11日

(2)

に ア メ リ カ で発 生 した 同 時多 発 テ ロ で あ る。

そ の 直 前 の8月 末,筆 者 は 定 例 的 に 参 加 して い る 国 際 宗 教 社 会 学 会(In‑

ternationalSocietyfortheSociologyofReligion)の メ キ シ コ大 会 に お い て, 研 究 発 表 の 中 で 以 下 の よ うな 警 告 を 表 明 した 。 「宗 教 的性 格 を帯 び た ナ シ ョ ナ リズ ム,す な わ ち宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム は,従 来 は,発 展 途 上 国 を 中心 に 勃 興 して い た。 しか し,カ ル ト問 題,カ ル ト批 判,カ ル ト論 争 とい っ た もの を ア メ リ カ合 衆 国 や フ ラ ンス を通 して なが め て い く と,宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム は単 に発 展 途 上 国 だ け の 問 題 で は な く,い わ ゆ る 先 進 国 に お い て も強 まっ て い る の で は な い か とい う危 惧 を抱 い て い る。 この ま ま で は世 界 中 で宗 教 的 言 説 に基 づ く妥 協 の余 地 の な い対 立 が ます ます 激 し くな り,危 険 で あ る」。

そ して帰 国 した 直 後 に,同 時 多 発 テ ロが 起 きた の で あ る 。 この テ ロ は規 模 や 衝 撃 に お い て か つ て な い もの で あ っ た の み で な く,多 数 の 日本 人 も犠 牲 に な り,筆 者 個 人 へ の衝 撃 も多 大 な もの が あ っ た 。 こ の テ ロ の発 生 過 程 や 背 景 を,深 く検 討 す る 出発 点 と し よ う との思 い で ま とめ た もの で あ っ た 。 こ の本 自体 で は,グ ロー バ リゼ ー シ ョンの 過 程 や 関係 す る理 論,論 争 な どを充 分 に あ つ か う こ とは で きな か っ た が,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン とは何 で あ り,グ ロ ーバ ル 化 す る現 代 世 界 で

,な ぜ 宗 教 的 な原 理 主 義 や ナ シ ョナ リズ ムが 農 開す る の か とい う課 題 は,以 前 と して重 要 な 関 心 事 で あ っ た(1)。

しか し,そ の 一 方 で,近 年 の グ ロー バ リゼ ー シ ョン を め ぐる論 議 に は い く つ か の 疑 問 点 と課 題 が 散 見 されs論 議 の 整 理 と再 検 討 の 必 要 を感 じる こ とが 少 な くな い 。 基 本 的 な こ と と して,そ もそ も 「グ ロ ー バ リゼ ー シ ョン」 とは 現 実 の 歴 史 的 プ ロ セ ス な の か,そ れ と も研 究 者 の 分 析 枠 組 み な の か 。 研 究 上 の分 析 枠 組 み と した場 合,従 来 の 「近 代 化 」 論 や そ れ を基 盤iとす る 「従 属 理 論 」 と の 相 違 は 何 か,ま た1970年 代 に 盛 ん に 論 じ ら れ て い た 「国 際 化 」 (internationalization)と は,同 じな の か 異 な るの か 。 グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ン 論 を用 い るべ き必 然 性 や 必 要 性 は,ど こに あ る の か 。 さ らに,グ ロ ーバ リゼ .̲̲̲ショ ンが 現 実 の 過 程 だ とす る と,現 実 的 に何 が,ど の よ う に グ ロー バ ル 化 して い る の か 。 そ の 過 程 は近 代 化 の延 長 に 実 現 した もの な の か,近 代 化 とは 異 な った レベ ル で の社 会 的 実 現 な の か 等 々,研 究 書 が 増 え,論 議 が 活 発 に な れ ば な る ほ ど,整 理 し,明 解 にす べ き課 題 が 増 え て きて い る。 本 稿 にお い て

(3)

グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題21

は,こ れ らの課 題 の い くつ か を 明確 に し,か つ 筆 者 の 研 究 領 域 で あ る 宗 教 や 文 化 の 問 題 が,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 文 脈 で は,ど の よ う に捉 え られ る の か 考 察 して い きた い 。

2.グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン 論 の 諸 相

ま ず,グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と い う術 語 は い つ 頃 か ら,ど の よ う な 意 味 で も ち い ら れ て き た の で あ ろ う か 。 社 会 科 学 の 領 域 に お け る グ ロ ー バ リ ゼ ー シ

ョ ン に つ い て の 議 論 は,1970年 代 か ら始 ま り,90年 代 に 盛 ん に な っ た 。 盛 ん に な っ た 原 因 は,90年 代 初 期 の 冷 戦 構 造 の 崩 壊 に よ っ て,ア メ リ カ 合 衆 国 を 頂 点 と す る 一 極 構 造 の 世 界 が 出 現 す る 現 実 的 可 能 性 が 高 ま っ た こ と に よ

る 。 しか し,グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と い う術 語 の 使 用 や,そ の 概 念 及 び 社 会 的 過 程 に つ い て の 議 論 は,60年 代 後 半 に 開 始 さ れ て お り,社 会 科 学 の 分 野

に お い て は,ウ ィ ル バ ー ト ・ム ー ア ② と ロ ー ラ ン ド ・ロ バ ー ト ソ ン(3),さ ら に 「世 界 シ ス テ ム 」 論 を 提 唱 し た イ マ ニ ュ エ ル ・ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン が 最 初 期 の 主 唱 者 で あ っ た と考 え られ る 。 全 世 界 が 単 一 の 場 と な っ て き た と と ら

え る,グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン論 の 基 底 に 流 れ る 主 張 が,そ こ に は 共 通 に 見 ら れ る 。

筆 者 は,ロ バ ー トソ ン の グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン 論,特 に グ ロ ー カ リ ゼ ー シ ョ ン論 に 注 目 し て い る 。 そ の 理 由 は,彼 の 立 論 は 宗 教 と グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と の 関 連 を 考 察 す る 上 で 重 要 で あ る か ら で あ る 。 従 っ て 本 稿 は,ロ バ ー ト ソ ン の グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン論 の 特 徴 と意 義 を 明 らか に し て い く こ と を 主 た る 目 的 とす る が,彼 の 理 論 形 成 に 深 く関 係 し て い る と考 え ら れ る ウ オ ー ラ ー ス テ イ ン,ジ ョ ン ・マ イ ヤ ー,ア ン ソ ニ ー ・ギ デ ン ズ に よ る グ ロ ー バ リ ゼ ー

シ ョ ン論 の 検 討 と論 点 の 整 理 か ら始 め た い 。

(1)ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン の 世 界 シ ス テ ム 論

そ れ ま で の 近 代 化 論 や 「国 際 」 関 係 論 を 越 え て,世 界 を 単 一 の 場 と捉 え る 点 で 大 き な 貢 献 を し た 人 物 と し て,ま 「世 界 シ ス テ ム 論 」(World‑System theory)で 有 名 な イ マ ニ ュ エ ル ・ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン(ImmanuelWallerste‑

in,1930‑)を あ げ な け れ ば な ら な い 。 ユ ダ ヤ 人 家 庭 に 生 ま れ た ウ ォ ー一ラ ー

(4)

ス テ イ ン は,第 二 次 世 界 大 戦 の さ なか に ニ ュ ー ヨー クで 高 校 時 代 をお く り, 戦 後 の1947年 か ら コ ロ ン ビ ア 大 学 で学 び 始 め た 。 大 戦 中 に ナ チ ズ ム や フ ァ

シズ ムへ の批 判 的 関心 を家 族 と と もに培 っ た ウ オ ー ラー ス テ イ ンは,大 学 時 代 に は社 会 主 義 陣 営 の 分 裂 と対 立,ス ター リニ ズ ム と恐 怖 政 治,そ して ア メ リ カ国 内 を吹 き荒 れ た マ ッ カー シ ズ ム な ど に直 面 す る。 この よ うな状 況 下 で,

「イ デ オ ロ ギ ー 的 な 二 項 対 立 状 況 の 総 体 に対 す る拒 否 」(4)と い う彼 の 根 本 的 思 想 態 度 が 形 成 され た と言 わ れ る 。

そ の 後,さ ら に非 ヨー ロ ッパ 世 界 に対 す る 関心 を深 め,近 代 イ ン ド史 に惹 か れ て ガ ン ジ ー や ネ ル ー の著 作 を学 び,や が て ガー ナ や コー トデ ィ ボ ア ー ル の民 族 解 放 運 動 を テ ー マ に博 士 論 文 を書 き,ア フ リ カ研 究 者 と して頭 角 を現 す よ う に な っ た 。1973年 に は,43歳 で 米 国 ア フ リ カ学 会 の 会 長 職 に も就 い て い る。 この ア フ リカ研 究 は ウ ォー ラ ー ス テ イ ンの 「世 界 シス テ ム論 」 形 成 に とっ て 重 要 で あ る 。1967年 に刊 行 さ れ た 『ア フ リ カー 統 一 の 政 治 学 』(5) で,独 立 後 の ア フ リカ 諸 国 に対 す る 「新 植 民 地 主 義 」 を批 判 し,ア フ リ カ の 統0と 非 同 盟 を主 張 した が,ア フ リ カ の統 一 運 動 の 発 生 と障 害,植 民 地 主 義 の背 景 な ど を 「世 界 シ ス テ ム」 の 観 点 か ら分析 しな け れ ば な らな い とい う重 要 な 指摘 が な され て い るか らで あ る。 詳 細 は省 くが,こ の よ うな経 験 と研 究 関心 の展 開 を通 して,従 属 理 論 を含 む 二 項 対 立 的 な近 代 化 論 や,そ れ に基 づ

く西 洋 近 代 的 な 国 民 国家 をめ ざす べ き唯0の モ デ ル とす る 開発 主 義(devel‑

opementalism)な どへ の 批 判s個 々 の 運 動 や 動 向 を トー タ ル な シ ス テ ム と して と らえ て い く こ と,そ の トー タ ル な シス テ ム に お け る 「中 心 と周 辺 」, な どの 彼 の理 論 的枠 組 み の骨 格 が 形 成 され て い っ た。

ウ オー ラー ス テ イ ンの 理 論 形 成 に大 きな 影 響 を及 ぼ した と され る も う一 つ の要 素 は,ブ ロ ー デ ル を は じめ とす る フ ラ ンス ・ア ナ ー ル学 派 の 歴 史 学 で あ る。 フ ェ ル ナ ン ・ブ ロ ー デ ル の 名 著 『地 中 海 』 の 初 版 は1949年 で あ るが, 改 訂 版 の 英 訳 版 が1970年 代 の初 頭 に ア メ リカ で 大 き な反 響 を呼 び,ウ ォー

ラ ー ス テ イ ン もそ の 時 期 に ブ ロ ー デ ル に魅 せ られ た とい う。 この 当 時 の ア メ リ カ は対 抗 文 化 運 動(counter‑culturemovements)の 最 中 で あ り,パ リや 東 京 な どで も同 時 多 発 的 に 学 生 運 動 や 新 左 翼 運 動 が 農 開 して い た 。 ニ ュー ヨー ク は この 運 動 の ま さ に 中心 地 で あ り,ウ オー ラ ー ス テ イ ンが 教 え て い た コ ロ

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グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題23

ン ビ ア大 学 は学 園 紛 争 の 東 海 岸 に お け る拠 点 校 で あ った 。 こ の運 動 の ラ デ ィ カ ル な特 徴 は,既 存 の保 守 ・革 新 と もに相 互 依 存 ・共 謀 の 関 係 に あ る既 成 権 威 と して トー タル に否 定 す る点 に あ り,そ の主 張 は,既 存 の 学 問 の デ ィ シ プ リ ンや 学 会 な どの 権 威,大 学 運 営 の あ り方 な どに対 す る トー タル な批 判 へ と 発 展 して,ウ ォー ラ ー ス テ イ ンは じめ 多 くの知a人 ・研 究 者 に大 きな転 機 を 促 す こ と に な る(6)。

ア ナ ー ル学 派 の 主 張 は,ま さ に この よ う な反 権 威 主 義 の理 念 に 貫 か れ て い た。 国 家 が 管 理 す る古 文 書 館 の 資 料 に基 づ く国家 史 や 政 治 外 交 史 を 中心 とす る従 来 の歴 史 学 を否 定 し,そ れ らの背 後 に息 づ い て い た 人 々 の 生 活 史 や 民 衆 史 の探 求,地 理 学 や 社 会 学,人 口学 な ど伝 統 的 な歴 史 学 以 外 の 個 別 科 学 の 知 見 と方 法 を積 極 的 に導 入 して,そ れ ぞ れ の社 会 の 国家 制 度 か ら民 衆 の 日常 生 活 の全 体 を再 構 成 し よ う と した ア ナ ー ル学 派 。 さ ら に大 陸 で は な く 「海 」 を 主 役 に,周 辺 の各 社 会 が0つ の 「地 中海 世 界 」 とい う空 間 的全 体 と して形 成 さ れ作 動 して い く全 体 を描 こ う と した ブ 「ロー デ ル の 『地 中海 』 は,こ の よ う な雰 囲気 の 中 で,思 想 形 成 過 程 の転 機 を迎 え て い た ウ ォー ラー ス テ イ ン に決 定 的 な 影 響 を与 え た の で あ る。

こ の ブ ロ ー デ ル か ら受 け 継 い だ もの で 特 に 重 要 な の は,「 経 済=世 界 」 (economie‑monde)と い う概 念 で あ る 。 これ は,「 経 済 の 世 界 」 とい う意 味 で は な く,「 ひ とつ の 経 済 シス テ ム が ひ とつ 世 界 で あ る よ う な ひ とつ の全 体 」 を さ し て い る。 こ の 概 念 を ウ ォー ラ ー ス テ イ ン は 「世 界=経 済 」(world‑

economy)と 英 訳 し,東 西 分 裂 とい う二 極 対 立 を前 提 と した そ れ まで の発 想 か ら脱 皮 し,全 体 を決 定 す る全 体 的 経 済 シス テ ム とい う概 念 を基 盤 と し た

「世 界 シ ス テ ム」 論 へ と発 展 させ て い っ た。 ア ナ ー ル 学 派 とマ ル クス 主 義 歴 史 観 を 止 揚 した よ うな 世 界 シ ス テ ム 論 の 誕 生 で あ る 。1974年,彼 の 記 念 碑 的 著 作 と も言 うべ き 『近 代 世 界 シ ス テ ム』⑦ の 第 一 巻 が刊 行 され,多 大 な イ

ンパ ク トを も っ て受 け止 め られ て い っ た 。

ウ オー ラ ー ス テ イ ンは歴 史 上 存 在 した社 会 シ ス テ ム を3つ の類 型 で と ら え る。 「ミニ ・シス テ ム」(mini‑systems),「 世 界=帝 国」(world‑empires),そ

して 「世 界=経 済 」(world‑economies)で あ る。 最 初 の ミニ ・シ ス テ ム と は 狩 猟 採 集 経 済 や 単 純 農 業 に も とつ く文 化 的 に一 元 的 な小 規 模 社 会 で あ る が,

(6)

後2者 の 発 展 の 過 程 で 吸 収 され て い っ た 。 「世 界=帝 国 」 と は,単0の 分 業 体 制 の 内 部 で単 一 の政 治 的 支 配 体 制 が 発 展 し,そ の 下 で 複 数 の文 化 シ ス テ ム が 共 存 す る よ う な社 会 で あ る。 中 国 や エ ジ プ ト,ロ ー マ な どの古 代 帝 国 が, そ の 歴 史 的 事 例 とな る。 第3の 「世 界=経 済 」 は,政 治 的 に も文 化 的 に も多 元 的 で あ るが,単 一 の 経 済 シ ス テ ム に よ っ て統 合 され て い る社 会 シ ス テ ム で あ る 。 現 実 に は,15世 紀 半 ば 以 降,ヨ ー ロ ッパ を 中 心 に発 展 した 近 代 資 本 主 義 「世 界 二経 済 」 シス テ ム を指 す 。

「世 界=帝 国 」 は,貢 納 ま た は租税 の 徴 収 に よ っ て 周 辺 部 の 経 済 的 余 剰 を 中 心 部 に 集 約 す るが,「 世 界=経 済 」 は交 換 に基 づ く市 場 の シ ス テ ム に よ っ て 富 の 集 中 を は か る。 後 者 に は,前 者 に不 可 欠 な 巨 大 な官 僚 機 構 を必 要 と し な い 分 だ け,シ ス テ ム の維 持 発 展 に余 剰 が 資 す る こ とに な り,資 本 主 義 市 場 経 済 に基 づ く近 代 世 界 シス テ ム が,や が て世 界 を席 巻 す る よ う に な る とい う

の が,ウ オー ラ ー ス テ イ ンの 基 本 主 張 で あ る 。

か れ は 資 本 主 義 的 な 「世 界=経 済 」 の 基 本 的 性 格 を,「 最 大 利 潤 の 実 現 を 目指 す 市 場 向 け生 産 の た め に成 立 した 世 界 分 業 体 制 」 と と らえ る。 この 規 定 に よれ ば,社 会 主 義 諸 国 の 経 済 も資 本 主 義 的 な 「世 界=経 済 」 シス テ ム の0 部 で しか な い。70年 代 に 登 場 し た ウ オー ラ ー ス テ イ ンの 世 界 シ ス テ ム 論 が 大 きな イ ンパ ク ト与 え た の は,資 本 主 義 か 社 会 主義 か とい うイ デ オ ロギ ー お よび経 済 シ ス テ ム にお け る二 項 対 立 的 な冷 戦 構 造 の まっ た だ 中 で,米 ソ対 立 の メ カニ ズ ム 自体 が 近 代 資 本 主 義 的 「世 界=経 済 」 に よ って 規 定 され て い る の だ と言 い切 っ た 点 に あ る。

90年 代 初 頭 の ソ連 邦 の 崩 壊 に よ る冷 戦 構 造 の 終 焉,ア メ リ カ を 一 極 とす る世 界資 本 主 義 体 制 の 出現 な どを,ソ 連 型 社 会 主 義 経 済 シス テ ム に対 す る西 欧 型 近代 資 本 主 義 シス テ ム の勝 利 と見 る か,ウ ォー ラ ー ス テ イ ンの世 界 シス テ ム論 の ダ イ ナ ミズ ム の 帰 結 で あ る と して,彼 の 主 張 が 立 証 され た と見 るか は見 解 の 相 異 が あ る。 しか し,ソ 連 型 経 済 が 現 実 的 に は 西 欧 型 経 済 の よ う な 効 率 性 を達 成 で きず,生 産 力,そ の帰 結 と して の市 民 生 活 に お け る豊 か さの 達 成 に負 け た こ とが 大 き な要 因 の ひ とつ で あ り,グ ロ ー バ ル な市 場 経 済 に お け る競 争 に負 け た こ と に よる の は 明 らか で あ る。 そ の意 味 で,ウ ォー ラ ー ス テ イ ンの 世 界 シ ス テ ム 論 は,少 な く と も1990年 代 に顕 在 化 した 世 界 資 本 主

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グ ロー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題25

義 体 制 の実 現 に よ っ て現 実 の もの とな っ た とい え る。 世 界 は単0の 経 済 シス テ ム に よっ て 結 合 さ れ て い る事 実 が 顕 在 化 した の で あ り,グ ロ ーバ リゼ ー シ

ョンの 重 大 な一 局 面 が,こ こ に 明 らか と な っ た(8)。

(2)マ イ ヤ ー の 国 民 国 家 の グ ロ ーバ ル ・シ ス テ ム 論

ウ オー ラー ス テ イ ン に よる世 界 経 済 シ ス テ ム 論 か らの マ ル ク ス 主 義 的 な立 論 に対 し,ス タ ン フ オー ド大 学 の 社 会 学 教 授 で あ る ジ ョン ・マ イ ヤ ー とそ の チ ー ム は,近 代 に 成 立 した 「国 民 国 家 群 の グ 「ロー バ ル ・シス テ ム」(global systemofnation‑states)の 成 立 と,そ の相 対 的 自律 性 を重 視 し,こ う した 国 民 国 家 の 存 立 を正 当 化 す る 「世 界 文 化 」(worldculture)が グ ロ ー バ ル に広 が っ て きた とす る議 論 を展 開 して い る。

マ イヤ ー は ウ ォー ラー ス テ イ ンの 「世 界=経 済 」 シス テ ム 論 を正 面 か ら否 定 して い るわ け で は な い が,機 能 的 に一 定 の 自立 性 を もっ た 「世 界=政 体 」 (world‑polity)シ ス テ ム の 出 現 を主 張 す る。 「世 界 の 政 治 シ ス テ ム は,世 の 商 品 経 済 の 興 隆 と拡 張 と に密 接 に リ ン ク して は い るが,そ れ は ま た,こ 経 済 を 組 み 直 し,変 化 させ る こ と もあ り,社 会 生 活 を変 容 させ る こ と も あ る」(9)。これ は,政 治 体 制 が 世 界=経 済 シス テ ム の 単 な る上 部 構 造 で な く, 逆 の 影 響 関 係 もあ る とい う見 解 の表 明 で あ り,結 果 的 に は ウ ォー ラ ー ス テ イ

ンの 立 場 を堀 くず す こ とに な る。 マ イ ヤ ー た ち が 特 に重 視 す る の は,革 命 に よ って 誕 生 した フ ラ ンス 共 和 国 の よ うな 近 代 「国民 国 家 」 で あ る。 この 国家 は非 統 治 者 で あ る 国民 全 体 の 集 合 的 権 威 を体 現 し,福 祉 や 安 全 保 障,教 育, さ らに法 的 規 制 とサ ー ビ ス を担 い,経 済 活 動 を規 制 す る こ と もあ る。 あ る意 味 で 画0化 され た,近 代 的 な こ の 中 央 集 権 国家 は,文 化 的 ま た は歴 史 的 要 因 に よ っ て若 干 の 変 形 は す る もの の,お お む ね 同 形 の構 造 を もっ て 世 界 中 に広 が って い っ た こ とは事 実 で あ る。

マ イ ヤ ー た ち は,膨 大 な実 証 的歴 史 的 デ ー タ を も とに,次 第 に 強 力 な 中央 集 権 国 家 が グ ロ ー バ ル に展 開 して い っ た こ と を 裏 付 け,「 国 民 国 家 群 の グ ロ ーバ ル な シス テ ム」 の形 成 に 関心 を集 中 させ て い っ た 。 そ の 上 で ,こ の シ ス テ ム の 中 で 現 実 に存 立 した各 国家 は変 容 す る が,そ れ は 「世 界=経 済 」 シ ス テ ム上 の位 置 の 反 映 で あ る よ りも,世 界 政 治 にお い て 中核 国家 で あ るか,反

(8)

周 辺 国 家 で あ る か,全 くの 周 辺 国 家 で あ る か とい う政 治 的 な位 置 に よ る こ と を証 明 した の で あ る。 この 点 は 明 らか に ウ オー ラー ス テ イ ンの 否 定 で あ る 。 さ ら に興 味 深 い 点 は,周 辺 国家 で あ れ ば あ る ほ ど中 央 集 権 化 の 度 合 い が 強 い こ と も証 明 され て い る。 発 展 途 上 国 にお い て独 裁 政 治 体 制 が 生 ま れ や す い こ と,ま た 周 辺 国 家 は基 本 的 に社 会 主 義 化 しや す い こ と,ま た は社 会 主 義 諸 国 はそ の 中 央 集 権 化 の 度 合 い が 高 い こ と に よ って,周 辺 国家 で あ る こ と を 自 ら 証 明 して い る よ う な もの で あ る こ と を明 らか に した と もい え る。 この 点 は, 社 会 主 義 諸 国 も近 代 国民 国家 シス テ ム の 周 辺 的 で は あ る が 一 部 で あ る との 断 定 で あ り,ウ オー ラー ス テ イ ン と通 底 して い る。

マ イ ヤ ー た ち の研 究 に お け る も う0つ の重 要 性 は,文 化 の 問題 に踏 み 込 ん で い る 点 に あ る。 単 純 化 して 言 え ば,よ り普 遍 的 な 一 つ の 「世 界=文 化 」 (worldculture)が 形 成 され つ つ あ る と い う主 張 で あ る。 近 代 的 国 民 国家 の 構 造 上 の特 徴 の 一・つ は制 定 さ れ た 成 文 「憲 法 」 を最 高 法 規 とす る法 治 国 家 で あ る こ とだが,こ の 憲 法 に は多 くの場 合,国 民 の権 利 や 平 等 性,そ して 国家 の 目標 と して の 「進 歩 」 や 「豊 か さの 追 求 」 な どが,程 度 の差 は あ れ 盛 り込 まれ て お り,そ れ ぞ れ の 国民 国家 に は,西 洋 近 代 的 な もの で は あ るが,文 的価 値 的 共 通 性 が 前 提 と な っ て い る。 同 時 にそ れ は,こ の 近 代 的 国民 国 家 の あ り方 や存 立 は有 意 義 で あ る と正 当化 す る価 値 や 文 化 もそ こ に共 通 に流 れ て い る の で あ る 。

国 民 国家 の も う一 つ の特 徴 は 「国民 教 育 」 で あ る 。 公 立 学 校 の 設 立 と運 営 を通 して,国 家 は そ の ナ シ ョナ ル ・ア イ デ ンテ ィテ ィー を 国民 に教 化 す る。

しか し なが ら国 民 教 育 の シス テ ム は,必 ず し も国家 に従 属 して い る わ け で は な く,相 対 的 に 自立 して発 展 して い く。 海 外 の 諸 機 関 か らの 援 助 に よ る私 立 学 校 の建 設 な どの例 を考 え る と,国 家 が教 化 し よ う とす る ナ シ ョナ リズ ムや ナ シ ョナ ル ・ア イ デ ンテ ィ テ ィー の み で な く,国 民 は合 理 性 や 人権 意 識,よ

り広 い世 界 観 な ど も学 ん で い くこ とに な る。 マ イ ヤ ー た ち は,こ の 国民 教 育 は第 二 次世 界 大 戦 以 降 に急 速 に広 ま っ た と見 な して研 究 を進 め て お り,近 年 で は,高 等 教 育 の世 界 的展 開 が,民 主 主 義 や 経 済 的 開 発 の 方 法 や 課 題,人 意 識 を,さ らに科 学 や合 理 性 を グ ロ ーバ ル に広 げ て い る と主 張 して い る(10)。

この よ う に 国民 国 家 の構 成 員 も,ま た 各 国 家 の構 造 と文 化 そ れ 自体 も次 第 に

(9)

グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題27

同一 ・同質 の 「世 界=文 化 」 を共 有 して お り,そ れ らが 各 社 会 の近 代 化 の 過 程 を通 して グ ロ ー バ ル に展 開 して きた と論 じる の で あ る。

歴 史 的 に見 て も,基 本 的 に は ヨー ロ ッパ 近 代 の フ ラ ンス 革 命 や ア メ リ カ合 衆 国 の 誕 生 か ら国民 国家 が 始 ま り,植 民 地 主 義 的膨 張 を伴 い なが ら世 界 に広 が っ て い く。 こ の植 民 地 主 義 に よる侵 出 は ア ジ ア に も及 び,そ れ に対 抗 して

日本 は 明 治 維 新 を経 て短 期 聞 の うち に 国 民 国 家 を形 成 して い っ た。 た だ,自 分 た ち の 国 や社 会 を新 しい 近 代 的 な 国 家 と して形 成 して い くべ きだ と考 え た

と して も,ア メ リ カ合 衆 国 と類 似 の もの にす る か,イ ギ リス の よ う な立 憲 君 主 国 家 的 な もの に す るか,選 択 肢 は い くつ か あ る。 そ の 中 を 日本 の場 合 は, 立 憲 君 主 制 的近 代 国 民 国家 に 国家 神 道 的 な もの を結 合 させ た独 特 の相 似 形 を つ く り上 げ て い っ た わ け で あ る 。 そ うい う意 味 で,そ れ ぞ れ の 近 代 的 国民 国 家 も現 実 的 に は土 着 性 や 固 有 性,つ ま りロ ー カ リテ ィー を付 与 しな が らつ く

り上 げ られ て い る。

そ して,そ の よ う な構 造 や 制 度 の 必 要 性 や 有 用 性 を理 解 し,新 しい 国家 デ ザ イ ン を作 り上 げ る人 た ち の 存 在 が,実 際 に は重 要 に な っ て くる。 マ イ ヤ ー や,ま た 後 述 の ロバ ー トソ ン も,そ う した こ とを考 え る宗 教 的,文 化 的 な領 域 で の 国 際 的 な視 野 を持 った エ リー トの 果 た す役 割 が 重 要 に な っ て くる と主 張 して い る点 は注 目す べ きで あ ろ う。

(3)ギ デ ン ズ の 再 帰 的 近 代 化 論

イ ギ リス の社 会 学 者 の ア ン ソ ニ ー ・ギ デ ンズ(AnthonyGxddens,1938‑)

も,近 年,グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ンにつ い て論 じは じめ て お り,そ の著 作 や 理 論 は わが 国 に お い て も,よ く知 られ る よ うに な っ た 。 時 間 と紙 数 の 関係 で, 本 稿 で は彼 の グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ン論 を簡 潔 に ま とめ る に と どめ る。

ギ デ ンズ が グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ンに つ い て,あ る程 度 ま と ま っ た議 論 を展 開 した の は,1990年 に発 刊 され た 『近 代 性 の 帰 結 』(11)にお い て で あ る。 ギ デ ンズ は,こ の本 の表 題 に示 さ れ た とお り,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン と はモ ダ ニ テ ィ(近 代 性)の 必 然 的 結 果 で あ る と と らえ る。 「モ ダ ニ テ ィは,本 来 的 に グ ロ ー バ ル化 して い く傾 向 が あ る一 こ の点 は,近 代 の諸 制 度 が もつ 最 も基 本 的 な特 性 の な か に,と りわ け脱 埋 め 込 み と再 帰 性 とい う0部 の 特 性 の な か

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に明 示 さ れ て い る。 … … 近代 にお い て は,時 空 間 の 拡 大 化 の度 合 は,そ れ以 前 の い ず れ の 時 代 と比 べ て も は る か に激 し くな って お り,し た が っ て,…

グ ロー バ ル化 と は,さ ま ざ ま な社 会 的 状 況 や 地 域 間 の結 びつ きの 様 式 が,地 球 全 体 に網 の 目状 に張 りめ ぐ らさ れ る ほ ど に拡 張 して い く過 程 を,基 本 的 に 指 して い る」(12)。

ギ デ ンズ に よれ ば,従 来 の社 会 学 は,境 界 の 定 ま っ た シ ス テ ム で あ る 「 会 」 を過 度 に研 究対 象 と して きた が,近 代 社 会 や 近 代 的 諸 制 度 を特 徴 づ け る

「モ ダ ニ テ ィ」 は,次 々 と変 化 し拡 張 して い く特 性 を も って お り,そ の ダ イ ナ ミズ ム を生 み だ して い る もの は,「 時 間 と空 間 の分 離 と再 結 合 」 「社 会 シス テ ム の 脱 埋 め 込 み 」 「社 会 関 係 の再 帰 的秩 序 化 と再 秩 序 化 」 で あ る とい う。

か れ は伝 統 社 会 と近 代 社 会 を は っ き りと 区別 し,両 者 の非 連 続 性 を強 調 す る。 そ れ は まず,時 空 間 の 関係 に 明 らか で あ る とい う。 前 近 代 文 化 に お い て も,時 間 の 計 測 手段 は所 有 して い た 。 しか し,日 々 の 生 活 の基 盤 を なす 時 間 は,常 に場 所 と結 びつ け る形 で 行 わ れ て い た の で あ り,ま た 通 例,時 間 の 測 定 は不 正 確,不 安 定 で あ っ た。18世 紀 に始 ま る機 械 時 計 の 発 明 と普 及 に よ っ て,時 間 は空 間 か ら分 離 され た均 一 の 次 元 を表 示 す る もの とな り,そ の 結 果,た と え ば勤 務 時 間 帯 とい う よ う に,一 一日 を 「帯 状 区 分 」 で く くる よ う に 定 量 化 され て い っ た。 そ の結 果,世 界 標 準 時 の 制 定 の よ う にt地 域 や 場 所 を 越 え て,世 界 を時 間 に よっ て 一 元 的 に規 定 し,管 理 す る こ とが 可 能 に な っ た の で あ る。 また 空 間 も,地 図 の 発 明 と さ ま ざ ま な 図法 の 発 達 に よ っ て,あ 空 間 を構 成 単 位 ご とに 別 の空 間 に 置 き換 え られ る よ う に な り,特 定 の場 所 や 境 界 か ら 「分 離 独 立 した 」 存 在 と な っ て い っ た 。

この 時 間 と空 間 の分 離 に よ っ て,さ ま ざ ま な社 会 的 行 為 が 眼 前 の特 定 の社 会 的 文 化 的 脈 絡 へ の 「埋 め 込 み」 か ら解 き放 た れ る こ とが で きた 。 こ れ が

脱 埋 め 込 み」 とい う概 念 で あ る が,ギ デ ンズ は,社 会 関係 を相 互 行 為 の ロ ー カ ル な脈 絡 か ら 「引 き離 し」,時 空 間 の 無 限 の 拡 が りの な か に再 構 築 す る こ とで あ る と定 義 す る 。 この 脱埋 め 込 み の メ カニ ズ ム は,次 の 二 つ の類 型 に よっ て 代 表 され る。 一 つ は 「象 徴 的 通 票 」 の創 造 で あ り,そ れ は,そ れ を所 有 す る個 人 や 集 団 の特 性 に か か わ りな く 「流 通 」 で きる相 互 交 換 の 媒 体 を さ す 。 そ の典 型 は 「貨 幣 」 で あ るが,現 代 に お い て は 自動 車 な どの 商 品 また そ

(11)

グ ーローバ リゼ ー シ ョン論 の再 検 討 と宗 教 問 題29

の ブ ラ ン ド名 な ど も一 例 とな る。 二 つ め は 「専 門 家 シス テ ム 」 の確 立 で あ る。

これ は わ れ わ れ が 暮 ら して い る物 質 的,社 会 的環 境 の広 大 な 領 域 を体 系 づ け る,科 学 技 術 上 の 成 果 や 職 業 にお け る専 門 家 とそ の 知 識 の体 系 を さ して い る 。 こ の シス テ ム も,あ る社 会 関係 を前 後 の 脈 絡 の 直接 性 か ら切 り離 して,別 社 会 に転 移 させ て い く,脱 埋 め 込 み の メ カニ ズ ム で あ る。

近 代 性 の 第3の 特 性 は,再 帰 性 で あ る とい う。 この 再 帰 的 近 代 性(reflec‑

tivemodemity)が ギ デ ンズ に と っ て は 極 め て 重 要 な概 念 と な っ て い る が, 筆 者 に は 必 ず し も 明 解 で は な い 。 この 再 帰 性 と再 帰 的 と和 訳 さ れ る原 語 は reflectivity,reflectiveで あ る が,そ の 意 味 は反 省 的 とか 内 省 的 と い う もの で あ る 。 人 間 はす べ て,行 為 を行 う際 に,そ の 行 為 の 根 拠 を不 断 に確 認 し続 け て い る。 そ れ を ギ デ ンズ は 「行 為 の 再 帰 的 モ ニ タ リ ン グ」 と も表 現 して い る が,つ ま り,人 間 が 行 為 を な す場 合 は常 に,そ の 目的 や 意 味 を 内省 的 に確 認

しな が ら行 動 して い る とい う こ とで あ る。 前 近 代 の 伝 統 文 化 に お い て は,再 帰 性 は伝 統 の 再 解 釈 と明確 化 だ け に ほ ぼ 限 定 され て お り,時 間 の尺 度 で は未 来 よ り も過 去 に よ り多 くの 比 重 を か け て い る。 した が っ て伝 統 的行 為 と は, 伝 統 との 適 合 性 を再 帰 的 に 問 い な が ら,共 同 体 の 時 空 間組 織 と結 び つ け て い

く行 為 とい う こ とに な ろ うか。 しか し近 代 の 到 来 と と もに,再 帰 性 は異 な る 性 質 を示 し,シ ス テ ム の 再 生 産 のOE11そ の もの の な か に入 り込 み,そ の結 果, 思 考 と行 為 とはつ ね に 互 い に 反 照 しあ う よ うに な る とい う。 近 代 的社 会 生 活

の再 帰 性 と は,そ の 営 み に 関 して新 た に得 た 情 報 に よ っ てつ ね に 吟 味 され, 改 善 され,そ の営 み 自体 の 特 性 を本 質 的 に変 え て い く点 に あ る とい う。

つ ま り,前 近 代 社 会 とい うの は,自 分 た ちが 住 ん で い る社 会 が 一 体 ど うい う社 会 な の か,ほ か の社 会 と比 べ て ど うい う違 い が あ る の か とい う こ と を あ ま り考 え なか っ た 。 しか し近 代 社 会 で は,自 分 が 住 ん で い る社 会 の 特 徴 や, そ の 中で 自分 が どの よ う な位 置 に い るか とい う,社 会 と個 人 との対 ・̲一の構 造 を含 め て,反 省 的 に リ フ レク テ ィブ に 自分 自身 の 位 置 を認 識 す る 。 そ の全 体 構 造 を認 識 して い る諸 個 人 が 集 まっ て 社 会 を構 成 して い る。 さ ら に,自 分 の 社 会 が ど うい う方 向 に動 い て い る か,ほ か の 社 会 と比 べ て ど うい う特 徴 が あ る か な ど を,そ の社 会 の構 成 員 で あ る我 々が 考 え よ う と して い る 。 考 え て 内 省 しつ つ,自 分 た ち の社 会 の 方 向性 を決 め よ う と して い る とい う意 味 で,各

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個 人 は社 会 か らデ タ ッチ して い る。 そ の デ タ ッチ した 意 識 を持 っ た個 人 が, 自分 の社 会 の境 界 を超 え て,自 由 に動 く よ う な時 代 が 近 代 社 会 で あ る,と 主 張 して い る と考 え られ る 。 自分 た ち の社 会 につ い て の 内省 的,も し くは認 識 的 な作 業 を とお して デ タ ッチ して い き,場 合 に よっ て は,そ の社 会 が 嫌 い な 場 合 に は ほ か の 社 会 に移 住 ・転 移 して い く こ とが で きる 。個 人 も脱 埋 め 込 み の 単 位 と な りう る の で あ る。

ギ デ ンズ に よれ ば,こ れ ら近 代 を近 代 た ら しめ て い る諸 特 性(modernity) が 徹 底 化 され た のが 現 代 で あ り,そ れ が 全 地 球 的規 模 で 浸 透 して きた の が グ

ロー バ リゼ ー シ ョンで あ る。 最 近 言 わ れ て い た 「ポ ス ト近代 」 と い うの は実 は近 代 の発 展 形 態 に す ぎな い と も主 張 す る。

3.複 合 過 程 と して の グ ロ ーバ リゼ ー シ ョン論 一 ロバ ー トソ ン (1)初 期 の 研 究 と基 本 思 想

ロ ー ラ ン ド ・ロバ ー トソ ンは,既 述 の よ う に,早 い段 階 か らグ ロ ー バ リゼ ー シ ョン の 問 題 に取 り組 ん で い た 社 会 学 者 の 一 人 で あ る。1965年 に,彼 は イ ギ リス ・リ ー ズ 大 学 のJ.P.ネ ッ トル と,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 へ と後 に発 展 して い くテ ー マ で の共 同研 究 を始 め た が,当 時,欧 米 の社 会 科 学 に お け る 研 究 の 焦 点 は 「近 代 化 論 」 で あ り,そ の 単 位 は,西 洋 近 代 に 誕 生 した

「国民 国 家 」 を政 治 的 枠 組 み と した 個 々 の 「近 代 社 会 」 で あ っ た 。 個 々 の 近 代 社 会 ・近 代 国 家 が い か に して前 近 代 的状 況 か ら発 展 して きた か,西 洋 以 外 の 諸 国家 が い か にす れ ば近 代 西 洋 的 な 国 民 国家 に な りう るか とい う議 論 が 中 心 で あ り,近 代 主 義 者 とマ ル ク ス 主 義 者 が 真 っ 向 か ら対 立 して論 争 して い た 。

ロバ ー トソ ンた ち は,そ れ らの論 議 に 欠 け て い る の はfさ ま ざ ま な 国 民 国家 社 会(nationalsocieties)問 相 互 の 具 体 的 な結 合 関係 に つ い て の 適 確 な 認 識 で あ る。19世 紀 以 降 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ネ ッ トワ ー クの 発 展 を通 して, 国家 の エ リー トた ち が他 の諸 社 会 を選 択 的 な模 倣 の モ デ ル と して用 い た の み で な く,個 人 や さ ま ざ ま集 団 が 国境 を越 え て密 接 な相 互 関係 を生 み だ し,ほ ぼ全 地 球 的 な 国 際 シ ス テ ム(anear‑globalinternationalsystem)が 形 成 さ れ て い る(13)。こ の 国 際 シス テ ム との 関 連 の な か で 国 内 政 治 も決 定 さ れ て い く し,そ れ ぞ れ の社 会 も展 開 して い く とい う視 点 が 欠 け て い る と主 張 した の で

(13)

グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問 題31

あ る 。 理 論 的 に は,タ ル コ ッ ト ・パ ー ソ ン ズ の 社 会 シ ス テ ム 論 を 国 家 間 の 関 係 お よ び 諸 社 会 問 の 関 係 の 分 析 へ と発 展 させ よ う と し た と い う こ と が で き る 。

こ の よ う な 主 張 が,1968年 に 刊 行 さ れ た ネ ッ トル と の 共 著 に 表 現 さ れ て お り,ロ バ ー トソ ン が,ウ ォー ラ ー ス テ イ ン や マ イ ヤ ー よ り も 早 く,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン 論 に つ な が る 基 本 的 主 張 し て い た こ と は 注 目 に値 す る 。 しか し,当 時 は 全 体 と し て の 世 界 を 構 成 す る も っ と も顕 著 な 単 位 は 「国 民 国 家 」 で あ り,全 体 世 界 の シ ス テ ム を 「国 際 関 係 」(internationalrelations)と い う 枠 組 み で しか 考 え て い な か っ た の も事 実 で あ る 。 グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン と い う術 語 を 主 題 化 し て 明 確 に 論 じ始 め た の は1980年 代 後 半 か らで あ り,そ ら が ま と ま っ て 刊 行 さ れ た の は92年 で あ る(14)。 彼 の 主 張 の 詳 細 は,邦 訳 も 出 て い る92年 刊 の 著 作 を 参 照 し て い た だ き た い が,本 稿 で は,彼 の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 骨 格 と 意 義 を筆 者 の 解 釈 を も と に 整 理 し て い く。

ロ バ ー トソ ン に よ れ ば,グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と い う概 念 が 意 味 す る も の は,「 世 界 の 圧 縮 」(compressionoftheworld)と 「世 界 は 一 つ の 全 体 で あ る と い う 意 識 の 増 大 」(intensificationofconsciousnessoftheworldasa

whole)で あ り,こ の よ う な 過 程 と行 動 が 何 世 紀 に も わ た っ て 進 行 し て き た 。 そ の 進 行 は 次 第 に 加 速 さ れ,20世 紀 に は い る と,世 界 が 単 一 の 場 」(a singleplace)で あ る か の よ う に,全 体 が ま す ま す 相 互 依 存 的 に な り,「 グ ロ ー バ ル な 全 体 」 と い う 意 識 が 強 ま っ た と と ら え て い る(15)。 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と は,世 界 全 体 が ます ま す 相 互 依 存 的 に な る 全 体 的 か つ 複 合 的 な 過 程 で あ り,そ の 結 果,そ の 用 語 が 国 民 国 家 と し て 構 成 さ れ た 諸 社 会 が 消 滅 す る と い う こ と を 意 味 し な い 限 り に お い て,「 世 界 社 会 」(worldsociety)と 呼 ぶ こ と さ え で き る 「単 一 の 場 」 が 形 成 さ れ る 可 能 性 が あ る と い う。 こ の 意 味 で は,ウ オ ー ラ ー ス テ イ ン の 世 界 シ ス テ ム 論 に 通 底 す る 発 想 が 流 れ て い る と い え る 。

た だ ロ バ ー トソ ン は,ウ オ ー ラ ー ス テ イ ン お よ び ギ デ ン ズ に 対 し て,い つ か 厳 し い 批 判 し て い る 。 そ の 第 一 は,両 者 と も グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン は 基 本 的 に 近 代 以 降 の 過 程 で あ り,ま た は 近 代 の 帰 結 で あ る と い う点 。 第 二 は, 両 者 と も合 理 化 さ れ 世 俗 化 さ れ た 近 代 社 会 を 前 提 と して 議 論 を 展 開 し て お り, グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン に お け る 意 識 や 認 識 の 問 題,お よ び 宗 教 の 役 割 に つ い

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て 十 分 な注 意 を払 っ て い な い か 無 視 して い る点 で あ る 。 ウ ォー ラ ー ス テ イ ン の 世 界 シ ス テ ム論 は,過 去500年 ほ どの資 本 主 義 的 生 産 様 式 の 拡 大 に よ って 単0な 経 済 的 政 治 的 文 化 的 に統 合 され た な 「世 界 シ ス テ ム」 が グ ロー バ ル に 形 成 さ れ る とす る もの で あ り,ギ デ ンズ にお い て も,再 帰 性,転 移,脱 埋 め 込 み とい っ た 近 代 社 会 特 有 の 諸 原 理 の 産 物,「 近 代 性 の帰 結 」 と して グ ロー バ リゼ ー シ ョ ン を と ら えて い る。 ウ オ ー ラー ス テ イ ンの 方 が,よ り長 期 的 な 視 点 か ら捉 え て い る の は確 か で あ る が,そ れ で も近 代 世 界 の 形 成 と して論 じ て い る こ と に変 わ りは ない 。

そ れ に対 して ロバ ー トソ ン は,ウ オ ー ラー ス テ イ ン はマ ル クス 主 義 的傾 向 か ら経 済 シス テ ム を基 盤iに論 じて お り,そ の 上 で 政 治 シス テ ム,社 会構 造 だ け を取 り上 げ れ ば 近 代 にお い て 世 界 シス テ ムが 成 立 した こ と は事 実 で あ るが, 文 化,特 に 宗 教 的 世 界 に視 点 をお い て考 察 して い くと,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ

ンは 人類 史 にお け る も っ と長 い プ ロセ ス の 中 でtか な り古 い段 階 か ら起 こ っ て い る もの だ と主 張 す る。 つ ま り,西 洋 に よる大 航 海 に注 目す る だ け で な く, 仏 教 や キ リス ト教,イ ス ラム の 世 界 へ の伝 播 と興 隆,何 世 紀 も前 の 地 図 の 編 纂 な どは,前 近 代 に お け る グ ロ ーバ リゼ ー シ ョ ンの 活 力 に満 ち た諸 相 で あ り, 大 き な うね りで あ る。 した が っ て,グ ロー バ リゼ ー シ ョ ンは 近 代 化 や 近 代 世 界 の形 成 そ れ 自体 に先 行 す る 過 程 で あ る と論 じるの で あ る。 ギ デ ンズ に対 し

て は さ らに厳 し く批 判 し,「 私 は,18世 紀 の 半 ば ま で 遡 っ て,近 年 の,あ い は近 代 の グ ロ ーバ リゼ ー一シ ョ ンは,西 欧 型 の 近 代 性(moderni#.y)の グ ロ ーバ ル な伝 播 を疑 い も な く容 易 に した け れ ど も,ギ デ ンズ が グ ロー バ リゼ ー シ ョ ンは近 代 性 の 直 接 の 産 物 で あ る と述 べ る こ とは,全 く受 け入 れ 難 い 」 と 述 べ,グ ロー バ リゼ ー一シ ョ ンは む しろ近 代 化 の ため の 条 件 の0つ で あ り,ま

た多 数 の異 な る タ イ プ の 近 代 性 が 存 在 した と強調 す る(16)。

さ らに ロバ ー トソ ンの 立 論 の 重 要 性 は,そ の 過 程 を わ れ わ れ の 「認 識 の 問 題 」 「意 識 の 問 題 」 と して も考 え よ う と して い る点 に あ る 。 わ れ わ れ が,ま

た は あ る社 会 集 団 が 世 界 を どの よ うに と らえ る か とい う,わ れ わ れ 個 人 や 何 らか の 集 団,国 民 な どの 「世 界 認 識 や 意 識 の 問題 」 と して考 え て い か な け れ ば な らな い と主 張 し,そ こか ら,「 世 界 は0つ の場 だ とい う意 識 の 増 大 」 が グ ロ ーバ リゼ ー シ ョンで あ る とい う主 張 に な る 。 この 意 識 を 「グ ロー バ ル な

(15)

グ ロー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問題33

意 識 」(globalconsciousness)(17)と 呼 ぶ こ と もで き る が,筆 者 も,こ の グ ロ ー バ ル な 現 実 ,リ ア リ テ ィ ー を ど の よ う に 認 識 す る か と い う側 面 が 重 要 で あ る と考 え る 。 リ ア リ テ ィ ー と い う の は 客 観 的 な 現 実 で は な く,何 が 現 実 で あ る か,何 が 正 当 な 世 界 で あ る か と い う 主 観 的 な 共 同 認 識,社 会 的 に 共 有 さ れ た 世 界 観 の 問 題 で あ る 。 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン に つ い て 考 察 す る 際 に も,こ の 主 観 的 な 共 同 認 識 の 問 題,グ ロ ー バ ル な 現 実 を どの 集 団 が,ど の よ う に 認 識 し て い る か を,つ ね に 念 頭 に 置 い て お く こ とが 重 要 で あ る 。

な ぜ な ら,世 界 は 一 つ の 場 で あ る とい う認 識 の 増 大 す る こ とで,各 レベ ル で の 相 対 性 」 の 認 識 が ま た 増 大 す る の で あ り,同 時 に,そ れ は セ ル フ ・ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー お よ び ナ シ ョナ ル ・ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー の 再 構 築 を 要 請 す る こ と に な る 。 そ の 際,新 た な ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー の 模 索 と形 成 を,い か な る 「原 理 」 「基 盤 」(fundamentals)を も と に 行 う か と い う,フ ァ ン ダ メ ン タ ル ズ の 再 探 求 が 始 ま る か らで あ る 。

(2)グ ロ ー バ ル ・フ ィ ー ル ド

ロ バ ー トソ ン は,ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン や ギ デ ン ズ を 批 判 しつ つtあ る 部 分 は 受 け 入 れ な が ら,以 上 の 問 題 関 心 を も と に,図 の よ う な,グ ロ ー バ ル 性 の 四 要 素 間 の 相 互 作 用 の 場 と し て 「グ ロ ー バ ル ・フ ィ ー ル ド」(globalfield), ま た 「グ ロ ー バ ル な 人 間 の 条 件 」(global‑humancondition)を 設 定 し,近 以 前 か ら進 展 し た,構 造 的 に も 形 式 的 に も は る か に 複 雑 な 複 合 的 過 程 と して グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン を と ら え る 。 パ ー ソ ニ ア ン と し て の ロバ,̲,̲..トソ ン ら し い マ ト リ ッ ク ス で あ る が,こ れ ま で の 先 行 研 究 の 一 種 の 理 論 的 統 合 で あ る 。 そ し て,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン は 下 記 の 四 要 素 そ れ ぞ れ の 自 己 認 識,ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー の 相 対 化,変 容 と 再 形 成 に 深 く 関 わ る 過 程 で あ る と,グ ロ ー バ ル 化 の 認 識 的 主 観 的 側 面 を 強 調 す る 。

四 要 素 の 第0は,国 民 国 家 的 諸 社 会(nationalsocieties)で あ る 。 ナ シ ョ ナ ル ・ソ サ エ テ ィ ー ズ は 日本 語 に し に くい 術 語 で あ る が,恐 ら くマ イ ヤ ー の 概 念 を 受 け な が ら,ネ ー シ ョ ン ・ス テ ー ツ を 枠 組 み と して 成 立 し て い る さ ま ざ ま な 社 会 を想 定 し て い る と 考 え ら れ る 。 ロ バ ー ト ソ ン は 社 会 学 者 と し て, 国 家 論 で は な く社 会 の 構 造 や 特 徴 に 焦 点 を あ て る こ と を 明 示 す る 意 味 で,こ

(16)

GlobalField(Robertson,1992:27,邦 訳57頁)

National

societies← 一 」璽 璽 一 羅 響

Selves‑Hu〃adnkind

Relativizationofselfidentities

の ナ シ ョ ナ ル ・ソ サ エ テ ィ ー ズ と い う 言 葉 を使 っ て い る 。 日本 語 と して は,

「国 民 国 家 的 諸 社 会 」 と す る 。

図 の 右 上 端 は,「 諸 社 会 の 世 界 シ ス テ ム 」(worldsystemofsocieties)で る。 こ れ は 経 済 活 動 を 基 盤 と し た 「世 界 シ ス テ ム 」 で は な く,全 体 と し て の 社 会 が 複 数 結 合 し て 「世 界 シ ス テ ム 」 が 形 成 さ れ る と の 含 意 が 表 現 さ れ て い る と 考 え ら れ る 。 別 な 箇 所 で は,国 際 関 係(internationalrelations)と い う 表 現 も使 っ て い る(1992:26)。

他 の 二 要 素 は,「 様 々 な 自 己 」(selves)と,「 人 類 」(humankind)で あ る 。 セ ル ブ ス は あ く ま で 現 実 に 生 活 す る 個 々 人(individuals)の こ と を 指 して い る。 個 々 の 自 己(individualselves)と も 表 現 さ れ て い る 。 人 類 と は,種 して の ヒ ト全 体 を 指 して い る よ う で あ り,個 々 の 自 己 を 越 え た 人 類 ま た は 人 間 と し て の 共 同 自 己 意 識 と解 釈 で き る 。

そ の 上 で,こ れ ら グ ロ ー バ ル な 諸 領 域 ・諸 要 素 間 の 複 雑 な 相 互 作 用 を 伴 い な が ら,基 本 的 に は 左 か ら右 に 移 行 し て い く プ ロ セ ス が,グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と考 え ら れ る 。 ロ バ ー トソ ン の 発 想 で は,個 々 の 国 民 国 家 社 会 が 緊 密 に 結 合 し あ っ て 諸 社 会 の 世 界 シ ス テ ム を 構 成 し て い く。 個 々 の 自 己 が 「人 類 」

(17)

グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 の 再 検 討 と宗 教 問題35

あ る い は 「同 じ人 間 」 とい う包 括 的 な共 同 意 識 に発 展 して い く こ と を意 味 し て い る と考 え られ る。

た だ,左 か ら右 に全 部 移 行 して し ま っ て,個 々 の 社 会 や 個 人 が な くな っ て し ま うの で は な く,存 続 しな が ら,世 界 シス テ ム に結 合 され,個 々 人 に 「自 分 は全 体 と して の 人類 の 一 員 で あ る」 とい う意 識 が 強 く芽 生 えて くる,も くは形 成 さ れ て くる 。 そ れ らが 相 互 作 用 し合 い な が ら ます ます 緊 密 に結 合 し あ っ て い く とい う,一 種 の 複 合 的 で ダ イ ナ ミ ッ ク な プ ロセ ス を考 え て い る よ うで あ る。

(3)丁 目文せイヒ

ロバ ー トソ ンが,グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン と は,上 記 四要 素 の そ れ ぞ れ の 自 己 認 識,す な わ ち 「ア イ デ ンテ ィ テ ィー 」 の,「 相 対 化 」 「変 容 と再 形 成 」 に 深 く関 わ る過 程 で あ る と,グ ロ ー バ ル化 の認 識 的 主 観 的側 面 を強 調 した と述 べ たが,そ こ に さ らに宗 教 が 認 知 的 準 拠 枠 の 重 要 な資 源 と して 参 入 す る と と

らえ て い る。 そ の 点 を考 察 す る 上 で 重 要 な の は,図 の左 右 と対 角 線 上 に記 さ れ た相 対 化(relativizaUon)で あ る。 相 対 化 と い う概 念 は,ロ バ ー トソ ンの 中 で重 要 な キ ー ・ター ム の 一 つ で あ る。

諸 社 会 の 相 対 化(relativizationofsocieties)を 例 に とる と,近 代 西 欧 に 出 現 した 国 民 国家 群 は,植 民 地 主 義化 の過 程 を とお して南 北 ア メ リカ や ア フ リ カ の各 地 を包 含 す る一 つ の 世 界 シス テ ム とな っ た 。 こ の 過 程 で,相 互 の社 会 は 緊 密 に結 び つ い て い け ば い くほ ど,自 分 た ち の 国 家 や社 会 につ い て,他 そ れ ら と比 べ た 場 合 の 差 異 また は 同 一性 へ の 関心 が 高 ま る こ とは言 う まで も な い。 そ れ は国 民 と して の 自己 認 識,ナ シ ョナ ル ・ア イデ ンテ ィテ ィー の 再 確 認 また は再 構 成 とい う作 業 へ とつ なが っ て い く し,ま た,自 分 た ち の 国 家 社 会 は 将 来 ど うあ るべ きか とい う論 議 へ と も展 開 す る。 こ う した プ ロセ ス は 一 種 の 自己 相 対 化 の作 業 で あ り,そ れ は避 け る こ との で きな い 過 程 で あ ろ う。

同様 の 過 程 は個 人 の 意 識,認 識 に お い て も生 起 す る。 当 初,個 人 は そ れ ぞ れ の社 会 に お け る0員,国 民 の 一 人 と して の 自己 とい う もの を認 識 して い る が,世 界 シ ス テ ム が 形 成 さ れ交 流 が 緊密 に な れ ば な る ほ ど,世 界 に は様 々 な 社 会 や 国 家 が あ る こ とを 知 り,自 分 た ち の社 会 や,そ れ を構 成 す る 自分 は,

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い か な る特 徴 を持 っ て い る の か とい う形 で,自 分 自身 を も相 対 化 しな が ら, セ ル フ ・ア イ デ ンテ ィ テ ィー を再 形 成 して い く。 そ う した 自 己相 対 化 の プ ロ セ ス が,ワ ー ル ドシ ス テ ム とセ ル ブス の 問 で も起 こ って くる。 ま た,ワ ー ル ドシ ス テ ム の 形 成 に伴 い,わ れ わ れ は 皮 膚 の 色 や 言 葉 こ そ 異 な っ て い て も

「共 通 の 人 類 」 も し くは 「世 界 市 民 」 で あ る とい う考 え方 が 生 まれ,そ れ が 広 く伝 え られ て い く。 そ の意 味 で,こ の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンは 自分 とい う 0個 の 人 間 は世 界 人 類 とい う もの の0人 で あ る と,自 分 自身 の と らえ 方,セ

ル フ ・ア イ デ ン テ ィテ ィ ー に変 容 を迫 っ て い くの で あ る。

もち ろ ん そ の 中 に は い くつ か の位 相 が あ り,自 分 は 日本 人 で あ る とい っ た ナ シ ョナ ル な 自 己 認 識 自分 の 家 族 の 一 員 と して の 自己 認 識 の 枠 組 み もあ り, 私 とい う個 人 を 中 心 に,幾 重 もの 同 心 円 的 な 自己 認 識 の 輪 が 広 が っ て い く。

しか し,い ず れ に して も最 終 的 に は,自 分 は人 類 の一 員 な ん だ とい う意 識 が ど こか に 出 て くる。 そ の 中 で 自 己 を見 つ め 直 して い く,セ ル フ ・ア イ デ ンテ ィテ ィー の 相 対 化 と変 容,再 形 成 の プ ロセ ス が 必 ず 起 こ っ て くる と,ロ バ ー トソ ンは主 張 す る の で あ る。 こ の よ うに,相 対 化 の プ ロ セ ス が 進 行 して い く 中 で,主 観 的 な 認 知 枠 組 み が 常 に検 証 の対 象 と な り,そ れ は場 合 に よ って は

自己 認 識,セ ル フ ・ア イ デ ン テ ィテ ィー の 問題 とな り,ま た は ナ シ ョナ ル ・ ア イ デ ンテ ィ テ ィー の 問 題 と な る。 そ れ らを再 び,ど の よ う に と らえ,再 成 して い くか とい う問題 が つ ね に大 きな テ ー マ とな っ て 追 って くるの で あ る。

結 論 か ら言 う と,そ れ が ゆ え に,自 分 た ち の ネ ー シ ョンや 自分 た ち の 集 団, 社 会 に対 す る一 種 の 自 己 中心 主 義 が 常 に 生 まれ て くる可 能性 も0方 で はあ り,

昨 今 の ナ シ ョナ リズ ム の復 活 も,そ こか ら説 明 で き る。 また,そ う した 相 対 化 プ ロ セ ス に お い て,宗 教 は神 や 永 遠 の真 理 の 前 で個 人 や権 威 者 を 自省 させ,

相 対 化 させ る重 要 な資 源 と して も関 わ っ て くる 可 能 性 が あ る。 また 相 対 化 さ れ た 自分 を も う一 度 再 生 させ,セ ル フ ・ア イ デ ンテ ィテ ィー を再 確 立 して い

く場 合 に も,宗 教 が 重 要 な働 きを して い く可 能 性 が あ る とい え る。

(4)普 遍 主 義ノ個 別 主 義 の 問 題 一 グ ロ ー カ リゼ ー シ ョン論 ヘ

ロ バ ー トソ ンの グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン論 は,さ らに,世 界 の 同 質化 や 諸 国 民 や 諸 民 族 の 個 別 性 の消 滅 とい う単 純 で0元 的 な立 論 を否 定 し,普 遍 主 義 の

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