修士論文要旨(2006 年度)
河川感潮域における流量観測と水理特性に関する研究
STUDY ON DISCHARGE OBSERVATION AND HYDRAULIC CHARACTERISTICS IN TIDAL RIVER 土木工学専攻 12 号 河津 元 KAWAZU Gen 1. はじめに 流量は治水・利水・環境を考慮した河川計画・管理を行う上で基本となるデータ
現地観測 数値計算
○流量観測精度の向上
○正確かつ安全に流量を測定 する観測技術の開発、確立
重要課題
河川感潮域における
○流量観測精度の向上、流量データの蓄積、流況・流動把握
○水位・流量の変動特性の解明
○河道特性や潮汐が水位,流量に与える影響の把握 目的
河川感潮域の特性
○H-Q式が得られない
○潮汐の影響で流況が複雑
平水時・洪水時ともに 流量観測,流況把握が容易でない
○洪水時:浮子観測によりH-Q式を作成し、流量を算出 測定可能な流速は表面流速のみ
○平水時:可搬式流速計(プロペラ式、電磁式)を用いた観測 測定可能な流速は一点のみ
現状の主な流量観測法
本研究
河川感潮域に適した流量観測法の提案・確立 感潮域を有した流域の水循環解析
感潮域における超音波ドップラー流速計を用いた流量観測 一次元不定流の基本式を用いた河道計算 流量は治水・利水・環境を考慮した河川計画・管理を行う上で基本となるデータ
現地観測 現地観測 数値計算 数値計算
○流量観測精度の向上
○正確かつ安全に流量を測定 する観測技術の開発、確立
重要課題
河川感潮域における
○流量観測精度の向上、流量データの蓄積、流況・流動把握
○水位・流量の変動特性の解明
○河道特性や潮汐が水位,流量に与える影響の把握 目的
河川感潮域の特性
○H-Q式が得られない
○潮汐の影響で流況が複雑
平水時・洪水時ともに 流量観測,流況把握が容易でない
○洪水時:浮子観測によりH-Q式を作成し、流量を算出 測定可能な流速は表面流速のみ
○平水時:可搬式流速計(プロペラ式、電磁式)を用いた観測 測定可能な流速は一点のみ
現状の主な流量観測法
本研究
河川感潮域に適した流量観測法の提案・確立 感潮域を有した流域の水循環解析
感潮域における超音波ドップラー流速計を用いた流量観測 一次元不定流の基本式を用いた河道計算
図-1 研究概念図 著者は感潮域における流量観測の精度向上,流況把握を
目的とし,鶴見川末吉橋 ( 河口から 5.9km) において平水・洪 水時に水平設置型 ADCP(以後 H-ADCP と記す)とともに ADCP( 超音波ドップラー流速計 ) を用いた現地観測を行った.
本研究では,現地観測の結果から感潮域に適した流量観測 法の検討を行うとともに感潮域における流速・流量の変動 特性について考察した.さらに, 1 次元不定流の式を用いた 数値計算を行い,河道特性および潮汐が水位,流量に与え る影響の把握を試みた.本研究の概念図を図-1 に示す.こ れより,本研究が河川感潮域に適した流量観測方法の提 案・確立および感潮域を有する流域の水循環解析に寄与す ることを目指す.
2. 観測概要
観測対象河川は鶴見川 ( 流域面積 235km
2,流路延長 42.5km)である.鶴見川は,河口から 13.8km付近まで潮汐の 影響を受けている.本研究で対象とする ADCP と H-ADCP に よる観測地点は,河口から 5.9kmにある末吉橋直上流に位置 している.
–0.5 –0.4 –0.3 –0.2 –0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
–50 –40 –30 –20 –10 0 10 20 30 40 50 60 70 80
8/10 12:00 8/10 18:00 8/11 0:00 8/11 6:00 8/11 12:00
末吉橋 (5.9km) 水位 ADCP 観測流量 H–ADCP 観測流量
水位 (m) 流量 (m3/s)
: : :
90分 120分110分90分
130分 120分
–0.5
2.1 H-ADCP による流量観測
末吉橋直上流左岸に設置されているH-ADCP は2003 年1 月から計測を開始し,平水時,洪水時においても水位に応 じて自動昇降・回転して 10 分毎の水位,断面流速分布およ
び流量を出力する観測システムである. 図-2 小潮時における水位と流量の時系列 (2004/8/10 12:00-8/11 12:00) 2.2 ADCP による流量観測(移動,定点,橋上操作観測)
–0.8 –0.6 –0.4 –0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
–80 –60 –40 –20 0 20 40 60 80 100 120
9/1 18:00 9/2 0:00 9/2 6:00 9/2 12:00
末吉橋 (5.9km) 水位 ADCP 観測流量 H–ADCP 観測流量
水位 (m) 流量 (m3/s)
: : :
図-3 大潮時における水位と流量の時系列 (2004/9/1 15:00-9/2 15:00) 移動観測 : H-ADCP 観測地点の上流約 50m の断面におい
て ADCP をボートに搭載し,平水時の小潮時 (2004 年 8 月 10-11 日 ) と大潮時 (2004 年 9 月 1-2 日 ) に 24 時間連続の曳航 観測を行った.移動観測では,H-ADCP の観測データと比 較できるように, 10 分間隔で同じ断面を往復し約 5 分間隔 の流速・流量データを得た.
定点観測 :移動観測と同地点の断面において, ADCP 搭 載ボートを断面最深部付近に停泊させ,平水時の小潮時 (2004 年 8 月 12-13 日 ) に 24 時間連続で観測を行った.定点 観測では,断面最深部における 10 秒間隔の鉛直方向の流速 データを 24 時間連続で得た.
橋上操作観測 :末吉橋直下流の断面において 2006 年の洪 水時 (10 月 6-7 日 ) に ADCP 搭載の橋上操作艇 ( 以後リバーボ ートと記す ) を用いた集中観測を行った.橋上操作観測では,
リバーボートを約 20 分間隔で往復することで,約 10 分間 隔の流速・流量データを得た.
3. 観測結果および考察
3.1 平水時における ADCP と H-ADCP の観測結果
図-2および図-3 に末吉橋地点における小潮時と大潮時の ADCP 観測流量と H-ADCP 観測流量および水位の時系列を
示す. ADCP 観測流量と H-ADCP 観測流量を比較すると小潮 時・大潮時ともに観測期間を通じてほぼ同じ値を示してい る.また,流量の増減も両者とも同じ傾向を示している.
これより平水時において,小潮時・大潮時ともにH-ADCP
で ADCP 移動観測法とほぼ同程度の精度で流量観測が可能
であることが示された
1). 小潮時観測期間中に ADCP ,
H-ADCP ともに 90 〜 130 分周期の流量変動が観測された.流
量の変動幅は ADCP 観測期間中の平均流量 7 m
3/s に対し,潮
汐による場合は 50 〜 60 m
3/s であり,短周期の場合は 20 〜 30
m
3/sであった. 2003 年に H-ADCPで観測された流量の時系列
を見た結果 , 年間を通じて短周期の流量変動が確認された .
修士論文要旨(2006 年度)
–0.4 –0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
–60 –40 –20 0 20 40 60 80 100
水位(m) 流量(m3/s)
8/12 12:00 8/12 18:00 8/13 0:00 8/13 6:00 8/13 12:00
:H–ADCP 観測流量
:末吉橋 (5.9km) 水位
–0.6
期間Ⅰ 期間Ⅱ 期間Ⅲ 期間Ⅳ 期間Ⅴ 期間Ⅵ 期間Ⅶ 期間Ⅷ
図-4 定点観測期間中の水位と流量の時系列 (2004/8/12 12:00-8/13 12:00) 大潮時にはこの流量変動は見られなかった.この短周期の
流量変動の発生要因については 3.3 で考察する.
3.2 ADCP 定点観測の結果(感潮域における流速の鉛直構造 と時間変動特性)
図-4 に定点観測期間中における末吉橋の水位と流量の時系 列を示す.この期間中においても小潮時観測期間中に見ら れた短周期の流量変動が確認できる.図-5 に定点観期間中 における主流方向流速の鉛直分布を示す.正の流速は順流,
負の流速は逆流を表す.上げ潮期である期間Ⅰでは,流速 の鉛直分布は水面から水深 2m 付近に向けて強い逆流方向 流速が徐々に減少し,水深 2m 以下では一様に弱い逆流とな っている.満潮時である期間Ⅱでは,流速は同系の鉛直分 布のまま逆流から順流に遷移している.下げ潮期である期 間Ⅲでは,流速の鉛直分布は水面から水深 2m 付近に向けて 主流方向流速が徐々に減少していき,水深 2m 以下の下層部 は一様に弱い順流となっている.干潮時である期間Ⅳでは,
流速は水面から河床に向けて徐々に減少する鉛直分布を保 ちながら,順流から逆流に遷移している.上げ潮期である 期間Ⅴの流速の鉛直分布は,水面からに水深 2.5m 付近に向 けて流速が徐々に減少し,水深 2.5m付近から河床に向けて 流速が徐々に増加する形となっている.満潮時である期間
Ⅵでは, 流速は水深1.5m以上においては常に順流であるが,
2:30 , 3:00 における水深 2.5m 以下の流速はほぼゼロである.
そして,満潮時から下げ潮期に向かうにつれて水深 1.5m 以 下の流速は弱い逆流から順流に遷移する.大きな下げ潮期 である期間Ⅶにおける流速は常に順流であり,水面から河 床に向けて流速が徐々に減少する流速分布となる.干潮時 の期間Ⅷでは, 7:30 〜 9:10 において水深 2m 以下の流速が 徐々に順流から逆流へ遷移する.そして,水位が上昇する につれて河床付近から生じた逆流が下層から上層へ広がっ ていき, 11:40 には鉛直方向全体の流速が逆流となる. 次に,
流速の時間変動について着目すると,期間Ⅰ,Ⅲ,Ⅴ,Ⅶ において流速が鉛直方向にほぼ同じ分布形のまま 90 〜 120 分周期で変動している.以上のことから,末吉橋地点にお ける流速は潮汐の影響により様々な鉛直分布を示すととも に,潮汐による約 12 時間周期の変動と 100 〜 120 分周期の 変動を有する強い非定常性を示すことがわかった.
3.3 短周期の流速・流量変動の発生要因について
H-ADCP 観測流量の時系列データから卓越周期を求める
ため降雨が少ない 2003 年 2 月の流量データを用いてスペク トル解析を行った.その結果,図-6 に示すように卓越周期 は 11.6 時間, 5.2 時間, 1.8 時間であった.次に, 図-7 に鶴 見川河口 (-2.0km) における水位の時系列 (2004 年 10 月 9 日〜
10 日 ) を示す.末吉橋地点で観測された短周期の流量変動と 同様な短周期の水位変動が,鶴見川河口においても確認さ れた.この期間中,非常に強い台風が,東京湾を北東方向 に横断した.この台風の影響によって海水面に外乱が加え られ,東京湾内に約 2 時間の周期を持つセイシュが生じた と考えられる.実際,東京湾内には周期 60 〜 70 分のセイシ ュが発生することがわかっている.そこで, 2003 年 2 月に おける鶴見川河口 (-2.0km) の水位の卓越周期を調べるため,
2003 年 2 月の水位データを用いてスペクトル解析を行った.
その結果,卓越周期は 2003 年 2 月の H-ADCP 観測流量の卓 越周期とほぼ同様に約 12 時間と約 2 時間であった. ここで,
鶴見川感潮域を一方向のみが開いた長方形水域と考えると,
セイシュの固有周期 T
n(h
r) は次式で与えられる.
gh n
L
n
( 2 1 )
4
= −
Τ (1)
ここに, g(m/s
2) :重力加速度, L(m) :感潮域の長さ, h(m) : 平均水深,n(=1, 2,3…):振動のモードを表すパラメータ である. 鶴見川感潮域の長さは 13.8km , 末吉橋における 2003 年 2 月の平均水深は 3.64mであるから,セイシュの固有周期 は n=1 , 2 , 3 に対し, 2.57 , 0.86 , 0.51h
rである. n=1 に対す るセイシュの固有周期は,観測された流量変動の周期およ
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s) 水深(m) :7:30
:8:10 :9:10 :10:40 :11:40
–805 –40 0 40 80
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:13:00 :14:00 :14:50
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:15:40 :16:10 :17:10
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:17:20 :17:50 :19:00
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:20:20 :20:40 :21:30
–40 –20 0 20 40
5 4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:23:30 :0:20 :1:10
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:2:30 :3:00 :3:30
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:5:10 :5:50 :6:30
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s) 水深(m) :7:30
:8:10 :9:10 :10:40 :11:40
–805 –40 0 40 80
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:13:00 :14:00 :14:50
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:15:40 :16:10 :17:10
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:17:20 :17:50 :19:00
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:20:20 :20:40 :21:30
–40 –20 0 20 40
5 4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:23:30 :0:20 :1:10
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:2:30 :3:00 :3:30
–605 –40 –20 0 20 40 60
4 3 2 1 0
流速(cm/s)
水深(m)
:5:10 :5:50 :6:30
図-5 定点観測時期間中における主流方向流速の鉛直分布 ここに示す期間は図-4 中の期間と対応している
(c)期間Ⅲ (d)期間Ⅳ (a)期間Ⅰ (b)期間Ⅱ
(h)期間Ⅷ (f)期間Ⅵ (g)期間Ⅶ
(e)期間Ⅴ
修士論文要旨(2006 年度)
11.6時間
200 400 600 800
-5 -4 -3 -2 -1
NormarizedSpectum
周期(minutes)
1.8時間 5.2時間
11.6時間
200 400 600 800
-5 -4 -3 -2 -1
NormarizedSpectum
周期(minutes)
1.8時間 5.2時間
200 400 600 800
-5 -4 -3 -2 -1
200 400 600 800
-5 -4 -3 -2 -1
NormarizedSpectum
周期(minutes)
1.8時間 5.2時間
図-6 鶴見川末吉橋地点における 流量データ(2003 年 2 月)のスペクトル解析結果 び末吉橋の流量データと鶴見川河口の水位データを用いた
スペクトル解析により得られた卓越周期と概ね対応してい る. 以上のことから,末吉橋地点における短周期の流速・
流量変動は鶴見川河口の水位変動,すなわち東京湾内に発 生するセイシュの影響に生じていると考えられる.
3.4 洪水時における ADCP と H-ADCP の観測結果
図-8 に洪水観測時における鶴見川各水位観測所における 水位と流量の時系列を示す.各水位観測所の水位に着目す ると,亀の子橋の水位の挙動は H-ADCP 流量と対応するが,
末吉橋地点の水位の挙動は,出水による流量 ( ピーク流量 400m
3/s) が流下するにも関わらず鶴見川河口の水位とほぼ 同じ変動をしている.このことから本観測時における末吉 橋の水位は,出水によって流下する流量よりも潮汐の影響 を強く受けていると考えられる.次に, H-ADCP 観測流量と ADCP 観測流量を比較すると, ADCP 観測期間を通じて両者 は定量的,定性的にほぼ同じ値を示していることがわかる.
これよりピーク流量付近 (200m
3/s) においても H-ADCP によ りADCP橋上操作観測法と同程度の精度で観測可能である ことがわかった.
–1 –0.8 –0.6 –0.4 –0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
10/9 12:00 10/9 18:00 10/10 0:00 10/10 6:00 10/10 12:00
水位(m)
90分120分120分100分110分90分
台風通過時刻
–1 –0.8 –0.6 –0.4 –0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
10/9 12:00 10/9 18:00 10/10 0:00 10/10 6:00 10/10 12:00
水位(m)
90分120分120分100分110分90分
台風通過時刻
図-7 鶴見川河口(-2km)の水位の時系列 (2004/10/9 12:00-10/10 12:00)
–1 0 1 2 3 4 5 6
20 10 0
–1 0 1 2 3 4 5 6
–100 0 100 200 300 400
10/5 10/5 10/5 10/5 10/6 10/6 10/6 10/6 10/7 10/7 10/7 10/7 10/8 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
水位(m) 時間降雨強度(mm/h)
:鶴見川河口水位(–2.0km)
:末吉橋水位(5.9km)
:亀の子橋水位(13.8km)
流量(m3/s)
:ADCP観測流量
:H–ADCP観測流量
※雨量は鶴川地点のデータ 総降雨量:189[mm]
最大時間降雨強度:11[mm/h]
図-8 洪水観測時における各水位観測所の 水位と流量の時系列
(2006/10/5 0:00-10/8 0:00) 4. 数値計算
河道特性および潮汐が河川感潮域における水位,流量お よびそれらの変動に与える影響を把握するため,鶴見川下 流域を対象に 1 次元不定流計算を行った.
4.1 計算条件
河道条件としては,平水時の場合は河道長 18.2km (河口 から落合橋まで)に実断面形状を任意の 37 地点にあたえ,
洪水時の場合は河道長 15.8km (河口から亀の子橋まで)に 実断面形状を任意の 34 地点に与えた.実河川では計算に用 いた河道内に 3 支川が流入するが,本計算では支川の影響 を考慮していない.境界条件および粗度係数は表-1 に示す 値を与えた.初期条件は,全てのケースにおいて計算開始 時の上流端流量と下流端水位を一定として計算した後の水 位,流量を河道全体に与えた.
表-1 1 次元不定流解析の計算条件
Case 粗度係数条件 上流端境界条件:流量(m3/s) 下流端境界条件:水位(m) (a)平水時における小潮時の再現計算 0.02、0.03、0.04 16
(2003年2月の平均流量)
鶴見川河口の実測値 (2003年2月9〜12日) (b)平水時における大潮時の再現計算 0.02、0.03、0.04 16
(2003年2月の平均流量) 鶴見川河口の実測値 (2003年2月16〜20日) (c)洪水時の再現計算 0.02、0.03、0.04 亀の子橋地点の実測値
(2003年のH-Q式より算出) 鶴見川河口の実測値 (2003年8月14〜23日) (d)洪水時のシミュレーション 0.02、0.025、0.03亀の子橋地点の実測値の1.5倍
(2003年のH-Q式より算出)
鶴見川河口の実測値 (2003年8月14〜23日) (e)洪水・異常潮位の同時生起
シミュレーション 0.02
亀の子橋地点の実測値の 1.5倍を0〜12時間ずらした値
(2003年のH-Q式より算出)
異常潮位発生時の 鶴見川河口の実測値
(2006年10月6〜11日)
5. 計算結果と考察
5.1 平水時における計算結果
図-9 に小潮時の末吉橋における実測流量と計算流量の時 系列を示す.流量の実測値と計算値は,計算期間を通じて 変動幅,変動周期ともにほぼ一致している.また,小潮時 観測期間中に確認された短周期の流量変動が本計算より再 現された.下流端境界条件として実測水位ではなく 12 時間 周期の正弦関数の水位を与えて計算を行ったが短周期の流 量変動は再現されなかった.これより,末吉橋における短 周期の流速・流量変動は横断面形状などの河道特性に起因 するものではなく鶴見川河口の水位変動に起因するといえ る. 図-10 に大潮時の末吉橋における実測流量と計算流量の 時系列を示す.実測値と計算値を比べると干潮時と満潮時 に約 20 〜 30m
3/s の差異が生じることがあるものの,全体的 には流量変動の挙動を概ね再現できた.
–50 0 50 100
流量(m3/s)
2/10 0:00 2/11 0:00 2/12 0:00
:H–ADCP観測流量 :n=0.02 :n=0.03 :n=0.04
図-9 末吉橋における計算流量と実測流量の時系列 (Case(a))
–100 –50 0 50 100 150
流量(m3/s)
2/17 0:00 2/18 0:00 2/21 0:00
:H–ADCP観測流量 :n=0.02 :n=0.03 :n=0.04
2/20 0:00 2/19 0:00
図-10 末吉橋における計算流量と実測流量の時系列 (Case(b))
5.2 洪水時における計算結果
まずCase(c)の計算結果について述べる.末吉橋地点にお
ける計算流量と実測流量を比較したところ,ハイドログラ
フの形とピーク流量時刻はほぼ一致するが,ピーク流量の
値が実測値は 655m
3/sに対し計算値は 430 m
3/sと大きな差異
があった.この差異は本計算が支川から流入してくる流量
修士論文要旨(2006 年度)
–200 –100 0 100 200 300 400 500 600 700 800
流量(m3/s)
8/14 0:00 8/15 0:00
:n=0.02 :H–ADCP観測流量
:n=0.025 :n=0.03
8/16 0:00 8/17 0:00 8/18 0:00 :浮子観測による流量
図-11 末吉橋における計算流量と実測流量の時系列 (Case(d))
を考慮していないことに起因すると考えられる.そこで,
末吉橋における計算値のピーク流量を実測値に合わせるた め, Case(d) の計算を行った. 図-11 にその結果を示す.計算 値と実測値を比べると,ハイドログラフの形,ピーク流量 の時刻および値はほぼ一致おり,末吉橋における洪水時の 流量変動を良く再現できた.次に, 図-12 に,末吉橋におけ る Case(d) の計算水位と実測水位の時系列を示す.計算値と 実測値を比較すると粗度係数が 0.02 の時,計算値の水位ハ イドログラフ,ピーク値ともに実測値と良く一致している.
他の洪水についても Case(d) と同様の条件で計算した結果,
粗度係数が 0.02 の時,計算水位と実測水位が良く一致した.
この結果より,鶴見川下流域の粗度係数は 0.02 が妥当であ ると考え,その値を用いて次の計算を行った.
–1 –0.5 0 0.5 1 1.5 2
水位(m)
8/14 0:00 8/15 0:00
:n=0.02 :実測値
:n=0.025 :n=0.03
8/16 0:00 8/17 0:00 8/18 0:00
図-12 末吉橋における計算水位と実測水位の時系列 (Case(d))
5.3 洪水・異常潮位の同時生起シミュレーション Case(e) では下流端境界条件に対し上流端境界条件をある 時間だけ遅らせて与えた.遅れ時間が 0,12 時間の時,末 吉橋地点においてピーク流量時と異常潮位期の満潮時が同 時刻となり,遅れ時間が 6 時間の時,ピーク流量時と異常 潮位期の干潮時が同時刻となる. 図-13 に末吉橋における計 算水位の時系列を示す.これより,最高水位は洪水ピーク 流量時と異常潮位期の満潮時が同時刻の場合であり,その
値は 1.93m であった.洪水と異常潮位の同時生起による水
位上昇量 ∆h は次のようになる.
–1.5 –1 –0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
水位(m)
10/8 0:00 10/9 0:00
:ピークの遅れ時間:0時間 :ピークの遅れ時間:2時間
:ピークの遅れ時間:4時間 :ピークの遅れ時間:10時間
:ピークの遅れ時間:12時間 :ピークの遅れ時間:8時間 :ピークの遅れ時間:6時間
10/7 0:00
図-13 Case(e)の計算から得られた水位の時系列
) ,
max(
.max .maxmax
. f s
fs
H H
H h = −
∆ (2)
ここで, H
fs.maxは洪水・異常潮位同時生起時の最高水位, H
f.maxは洪水による最高水位, H
s.maxは異常潮位による最高水位で ある.洪水,異常潮位がそれぞれ独立に起こった場合の末 吉橋における最高水位は 1.39m , 1.49m であるため,∆ h は 44cm であった.また,洪水ピーク流量時と干潮時が同時刻 の場合,末吉橋におけるピーク流量到達時の水位は 1.0m で あるため,ピーク流量時刻が満潮時か干潮時の違いによっ て 93cm の差異が生じた.次に, 図-14 に計算により得られ た流速の時系列を示す.これより,最大流速は,洪水ピー ク流量時と異常潮位期の干潮時が同時刻の場合で,その値 は 1.72m/s となる.洪水ピーク流量時と満潮時が同時刻の場 合の最大流速は 1.37m/s であるため,ピーク流量時刻が満潮 時か干潮時の違いによって 0.35m/s の流速差が生じる. また,
ピーク流量時と満潮時が同時刻の場合,流速は洪水によっ て徐々に増加するが,ある時間になるとほぼ定常状態とな っている.これは,末吉橋より下流側の水位が洪水の最高 水位より大きくなることにより河道内で流量が貯留され,
末吉橋におけるピーク流量到達時前後の水面勾配がほぼゼ ロになったためだと考えられる.
–1 –0.8 –0.6 –0.4 –0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
流速(m/s)
10/8 0:00 10/9 0:00
:ピークの遅れ時間:0時間 :ピークの遅れ時間:2時間 :ピークの遅れ時間:4時間 :ピークの遅れ時間:6時間
:ピークの遅れ時間:8時間 :ピークの遅れ時間:10時間 :ピークの遅れ時間:12時間
10/7 0:00 –1