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著者 辻岡 美延

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(1)

[共同研究] 1. 問題と方法 : 習性水準尺度を出発 尺度とする検査尺度構成について : 大規模項目の 新しい項目分析法

その他のタイトル 1. Problem and methodology

著者 辻岡 美延

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 6

号 1

ページ 5‑14

発行年 1975‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00023191

(2)

1. 

問 題 と 方 法

習性水準尺度を出発尺度とする検査尺度構成について

—大規模項目の新しい項目分析法—

〔問題〕

最近の電算機の普及発達はめざましいものがあり,これによって大規模な質問項目の因子分析 から直接出発する心理テストの尺度構成が多くの人々によって試みられるのが流行のようになっ た。例えば続ら

(1970, 1971), 

肥田野ら

(1971)

の研究が好例である。しかしながら,続らなど の研究ほ,三件法の質問紙法項目の項目得点の相関係数に対してほ,序数尺度間

(1

2

3

点 またほ

0

1

2

点など)の積率相関行列を求め,その相関行列の因子分析によって直ちに項目 分析が行われている。しかし,これらの研究には次のような方法論的な欠陥が含まれており,必

らずしも好ましい結果を与えるものではない。

(1) 

被験者の質問項目への反応は,特殊行動水準

(specificaction level)  (Eysenck  1953,  Guilford 1959)

における反応であり,信頼性が低く, したがって,因子分析における項目変量 の共通性

(communality)

が小さいこと。

(2) 

項目得点は質問項目によって表現される行動傾向の肯定または否定に関する被験者の回答 の強度差に対応した序数尺度に過ぎないこと。

(3) 

因子分析における基本的な問題として,因子数の決定,共通性の推定,因子軸の回転にお いて明確な基準が用いられていないこと。

(4) 

項目選択の基準が因子負荷量(因子と項目との相関)にのみむけられ,合成尺度の方向性 にほ考慮がはらわれていないこと,などである。

本節につづく一連の論文にお

V

ゞてわれわれは, これらの難点をいかに克服するかを考究すると 共に,先に辻岡

(1964)

および

Cattelland Tsujioka (1964)

が提案した市因子的真実性の原 理クによる新しい項目分析法の操作的具体化をはかると共に,それに必要な電算機プログラムの

開発を行いたいと考える。

 .,

〔問題解決の方法〕

そこで,上に挙げた項目変量の因子分析における方法論的難点について,それらを克服する方 法を考えてみよう。

(1) 

因子分析における分析水準について

EysenckゃGuilford

は , 因子分析は,それを行う変量バッテリーによって,抽出される因

(3)

子の水準が自動的に異なることに注意を換起している。すなわち,もし,項目変量のバッテリー が比較的等質的な狭い範囲のものから構成される場合にほ,たとえ操作的には共通因子として抽 出される因子でも,それは人格理論における一次因子水準からみれば特殊因子に相当するような ものが抽出されるというのである。そこでこのような分析水準として,より広範な高次の水準の 因子から順に,類型因子水準

(Typefactorlevel), 

一次因子水準

(Primaryfactorlevel), 

習性水準

(Hexislevel), 

特殊行動水準

(Specificactionlevel)

の四水準を考え,自らの因子 分析によって抽出された因子が如何なる水準に対応するものであるかについての実質科学的な考 察を必要とすることに注意を換起している。

この分析水準の問題ほ,因子分析そのものから結果として得られる情報ではなも多くの因子 分析の経験を重ねた心理学者の実質的判断を必要とする問題であり,また一方被験者側の反応の 分化とも関連するため,柩めて難解な問題である。しかも,これに対する問題解決の手段は現段 階において充分に累積されているとはいえないのである。しかし,この点についての配慮を頭の 中に留めておくことは無反省な盲目的機械的分析に対する重要な反省材料となるであろう。

そもそも,人間の性格にしろ,社会的態度にしろ,興味にしろ,それぞれの質問項目がどの人 格因子なり,態度因子なりに最も深い関連があるのか,また個々の項目変量が因子のどの方向と 正の相関を示すかにつしゞてほ,臨床心理学的に,いかに深奥を極めた心理学者といえどもその相 関関係についての正しい洞察を持ち,これを論理的に解釈しうるとは限らない。何んとなれば人 間の行動には反対構成というやっかいな機制があり, 「逆もまた真なり」ということや「過ぎた るほ及ばざるが如し」というような力動機制があるから,項目と因子との相関は正負"::,ずれの方

向にも解釈が可能となるというやっかいな問題があるからである。また一つの項目尺度の分散は 独立の,あるいは相矛盾する二個以上の因子によって飽和されているということも充分ありうる からでもある。

そこで,このような自由裁量を出来るだけ排除して,項目変量の示す論理的妥当性の観点から 類似な質問項目のグループを集めて,より信頼性の高い尺度を作成するのにもっとも適当な水準 は

Hexislevel

での項目群を作成するということである。なんとなれば高次

(higherorder)

の 人格因子になるほど複雑な機制の働く余地が大きくなるからである。

Hexis level

の項目群として,例えば

a1 

早口でしゃべる

a2

人より早く食事をすます 印動作が早い

a, 

字を書くのが早い

b1

人と広くつき合うのがすきである

b2 

異性の友だちが多い

bs

友達が多い

b, 

人中ではだまっている(‑)

(4)

1.  問 題 と 方 法 ( 辻 岡 )

のような

a,b

二群は,それぞれは別種であり, グループ内ではほとんど同種の項目からなり,

個人の行動における一つの習性的行動群を構成していると大抵の人は承認するであろう。

このように少数の

(4 6

項目)項目群の尺度の因子分析から出発するのを

Cattell

Par celed Factor Analysis

とよんだが, これは電算機の容量の小さかった時代の一つの知恵でも あったけれども,今日的にも一つの重要なメリットを含んでいる。それは,個々の項目変量の持 つ信頼性を

KuderRichardson

あるいは

Spearman‑Brown

の原理に照らして累積し, した がって結果として項目変量の共通因子空間における共通性の増大をはかるものであったからであ る。この操作は,尺度の合成においては,一項目一項目に含まれる特殊行動水準での特殊分散を あまり累積せしめず,一方習性水準における共通性の累積をはかるものであったと考えられる。

Guilford (1956)

は既にこの点に着眼し

69

個の

Hexislevel

での行動群の因子分析から,

14

個 の気質因子を抽出している。これらの

14

個の因子はまさに一次因子水準の人格因子と考えられる。

続ら

(1970, 1971)

が強調した,項目反応の多義性とは,まさに特殊行動水準での多次元性を 意味するものであって,項目変量を合成してテスト尺度を構成して行くわれわれの立場は,この 項目変量の多義性を封じこめる方策を手段化するものである。もし西里

(1972)

の指摘するよう に,項目変量間の 3次以上の相関係数が有意であるならば,われわれの尺度構成は重大な困難に 直面する。それ故,そのような項目間の多次元相関を封じこめるためにも,

Hexis

水準での類似 項目群から因子分析を始めるということは理にかなった方法となるのである。項目変量の多義性 を強調するあまり,信頼性の低い極めて少数の項目からの反応パターンを求めて行く続らの方法 論の欠点については既に別の論文(辻岡

1975)

で詳述したからここでは述べない。

この

Hexis

水準での項目群の因子分析は,単一項目の因子分析と異なり, 因子軸の回転問題 とも関連して,非常に安定した結果が得られると考えられるから,種々の研究者の知見を累積し て,項目群の共通因子空間における布置についての共有知識を心理学者に提供してくれることに なる。例えば現状のように,全く同じ質問項目が Y‑G では劣等感尺度に含まれるものが他の検 査では内省性尺度の中に組込まれたり,またほとんど類似の因子が時には攻撃性と呼ばれたりあ るいは自己主張性とよばれたりすることはテスト利用者に無用の学習を必要とするので,これら についての統一的な合意が今後必要となるであろう。また,それぞれの尺度は,いかなる項目の 組合せによっても,共通因子空間における一次独立な人格次元を構成しうるから,その場合,一 項目一項目が自由な組合せの単位となるよりも,

Hexis

水準での項目群を組合せ単位とする方 が大方の協同作業化や合意が得られ易いと思われる。

また,いくら電算機が大型になったからといって,本来信頼性の低い項目をそのまま集めて,

例えば

300X300

の項目間相関行列をそのまま因子分析するというのは, しかも積率相関のプロ

グラムだけを用いて分析するというのはあまりにも心理学者の側としても工夫を欠いた知恵のな

いわざといわなければならない。

(5)

(2) 

序数尺度の積率相関は項目特性変量間の相関でないこと

質問紙法は二件法,三件法,五件法など種々の方法で被験者から回答を求めることは衆知であ る。これらの回答は,質問への肯定,否定において,同一の回答であっても断定度に強度差があ ることは当然のことである。この問題については藤村の論文において詳述するから,ここでほ述 べないが,その結論として, 序数尺度間の積率相関係数は三件法の場合

Yes,?, No

の反応比率 によって大きなバイヤスをうけ,正しい特性変量間の相関を反映せずこの相関行列の因子分析の 結果は正しくない。したがってあくまで各項目変量を一特性変量として因子分析する場合にほ,

テトラコリック相関か九分相関係数を用いるべきであり, そのための

Fortran

によるコンヒ゜ュ ータプログラムも筆者らによって本論文で開発用意する。テトラコリック相関係数を用いる場合 においても,反応比率によって精度の悪くなる

cosine

ー冗法ではなく

(MP!

研究会

1969),

第六 近似による精度の高いものであるから,相当に二件が歪んだ場合に対しても安心してこれを用い

ることができる。

さて,本論文では,一項目ではなく項目群を変量として因子分析する立場であるから,項目群 の尺度値を求めねばならない。三件法の場合,項目群が

10

個以上になれば序数尺度をそのまま用 いても,正規性を仮定した換算値を用いても結果はほとんどかわらないが,われわれの項目群は 通常

4 6

個からなるので,やはり換算値を用いる方が安全である。計算プログラムとしては,

場合によっては

2 3

項目の項目群尺度からなる場合にも適用可能なように用意しておくことは 好ましいことである。

(3) 

因子分析における因子数の決定,共通性の推定と軸回転問題について

この問題については第

3

節でのべる東村による

ScreeTest

による因子数の決定とそれにとも なう主軸因子法による繰返し推定法についての論文に詳しいから,ここでは重複しない。本邦に おいては,軸回転はほとんどといってよいほど

Varimax

法が好んで用いられるが,この解法は 抽出因子数によってその解の様相が非常に異なり,抽出因子数を確定しないと,その後の項目分 析が大きく変化するという欠点がある。この問題は因子分析における難問題の一つであって,今 日直ちに完全な解決がえられるとは思われない。その意味においてはわれわれの

ScreeTest I

こ よる因子解の自動化プログラムの出現は一つの重要な進歩であろう。

一方,この欠点を補う別な角度からの改善は,

Varimax

解の磨出し

(polishment)

の問題で ある。衆知の通り,

Varimax

解は直交回転であるから,因子軸は直交であるが, そのかわり,

バッテリーの各変量は小さいながらも,大抵の因子にある程度

(0.30.3)

の因子負荷量を持つ

ことが多い。見事な単純構造すなわち

hyperplanecount 

(因子負荷量が土

0.1

以内の変数の

数)が

70%

以上というような解が

Varimax

法によって得られることは先ずありえない。項目の

因子分析では

hyperplanecount

40%

代が通例である。 そこで, 後述の因子得点

(factor scores)

を得ようとすると,ほとんどすべての変量が大なり小なり関連して来て, たとえ因子得

点間の相関がそのデータ内で計算上 0 となっても,その因子得点を得るための重みベクトルの構

(6)

1. 

問題と方法(辻岡)

成は掘めて複雑となり,構成される因子得点の内容につ

V

沢てほ,他のデータ内でも常に独立性が 保証されるとは限らない。

そこで,やはり,因子得点は,テストバッテリーの全てからではなく,一群の変量群から定義 されるような回転法,すなわち,より明確な単純構造から定義される因子得点をうるための回転 法が望ましいということになる。このことは結局,因子軸は斜交回転ということになる。斜交軸 体系によって, もし,見事な単純構造が得られれば

factorpattern

行列

Vfp

‑1  ‑1 

(1)  Vtp=V

=VrsD

によって計算されうるから,

factorpattern

も単純構造を示し, その因子に含まれない変量の 関与は無くなる。このことは,出来上った合成尺度を操作的に追跡することを容易にし,異なる 研究間での共有知識を累積して行く上で利点が大きいと考えられる。一方,これに対し複雑性の 大きい

Varimax

解からは,つねにそこで用いた変量を総動員しなければ因子得点は求まらな

v:i.

ことになり,追試性に制約をうけることになる。

Varimax

解で大きな因子負荷量を示した変量 をそのまま単純合計するというような荒っぽい方法もないではないが,これではいくらたっても

Confirmatory

な因子は求むべくもないし,質の高い項目分析も不可能となる。

そこで,このような目的のための斜交解として最も便利なものは

Promax

(Hendrickson

White 1964)

であると考えられる。 何んとなれば,

Promax

法は従来の

Varimax

解に 引きついで斜交因子解が求まる方法であるからである。勿論,主因子解から直ちに他の斜交回 転法を用いることも不可能ではない。 しかし, 慣用されているすぐれた

Varimax

解とともに

Promax

解を得ることは従来の研究との比較に何かと便利であるというメリットがある。 も し , 更に,

Promax

解から更に

hyperplanecount

を上昇させうる余地があれば, できるだけ因 子軸の角度を狭ばめない方向へ

Rotoplot

法によって多少の軸回転

(10°20

゜以内)をすること はより望ましい事である。しかし, これは初心者には危険な作業であり,ほとんど

Promax

の結果で十分な

polishment

の効果を期待することができるといってよい。

Rotoplot

法につい ては藤村が第

4

節で述べる予定である。

この

Rotoplot

法による回転は,もしそのテストバッテリーについての因子解が既に豊富に得

られているような確認的研究

(confirmatoryapproach)

の場合には,そして特に後に項目分析

の作業を予定している場合には,また同時に交叉妥当化を行う項目分析の場合には相当大胆な軸

回転が許されてよい。すなわち,因子の方向をある尺度群の重心の方へ傾けるというような仮説

演繹的な回転が許される。なんとなれば

Varimax

法にしろ,

Promax

法にしろ,これらは必ず

しも変量選択が必然的ではない所与のテストバッテリーによってたまたま定義された解析的基準

(analytical criterion)

を最大化することによって求められた数量的解法であるからである。し

たがってこれらの解はテストバッテリーそのものについての心理学的内容についての「妥当性基

準」そのものについてほ何ら関知する所ではないからである。その研究領域についての知見がな

(7)

, 予備知識のない白紙の探索的研究

(exploratoryapproach)

の段階ではその解析的基準に 従う以外道はないけれども,既に充分な知見をそなえた確認的研究段階

(confirmatorystage) 

においては,因子構造的に確認された尺度群の重心の方向へ,因子軸を回転することは決して間 違いではないのである。このことは無理矢理に強引な回転を認めるというのではない。あくまで 現実に求められた因子構造に準拠しながらも,過去の知見を利用するという相互循環的な,仮説 演繹的な,ソフトなフィードバックを考えて行く立場である。 とくに既に確立している

Perso nality Inventory

たとえば

Cattell

16PF, Guilford

らの

GZTS,

本邦での

Y‑G

などに ついての研究では既存の豊富な知見が一つの妥当性基準となっているので,この点についての配 慮が必要となる。何んとなればほとんど同じ階位の一次独立な人格の共通因子空閻の内部でやた らに方向を少し変えて別の因子だと呼称してもそれによって再現できる人格因子空間に加えられ る新しい情報の増分はほとんどないからである。この点に関して,因子分析モデルを用いた個人 の因子得点による再現モデルの研究については辻岡・東村

(1974a),

東村・辻岡

(1974)

によっ て,内田クレペリン検査の場合は既に公刊されたが,他の検査領域についての方法論的展開につ いては第

7

節で辻岡が述べる予定であるからここでは省略する。それによって筆者らの構想は操 作主義的に理解されることと考える。

(4) 

因子的真実性の原理

(Principleof factortrueness)

による項目分析

ここでいう因子的真実性

(factortrueness)

の原理とは,辻岡

(1964)

および

Cattelland  Tsujioka (1964)

が従来の内的整合性

(internalconsistency)

の原理に対して呼称した新しい 項目分析の原理である。従来,尺度のために選択される項目は,尺度またほ因子とある一定水準 以上の相関を示す項目であった。しかし,結果として合成される尺度の方向性については何らの 考慮もはらわれなかった。 そこでもし,

Fig. 11

のように, もし,選択される項目群の重心が 欲する因子

(wantedfactor)

の因子軸

W

より

W'

の方向に偏位すれば,たとえ,選ばれた項 目群ほ欲する因子軸と高い相関を示していても,尺度構成の目的にほかなっていないことにな る。そこで合成尺度は欲する因子 W に高い相関を示しなが

らも,他の欲せざる因子

(unwantedfactors)  U1, U2"…•

Um1

に対しては因子パターン

(factorpattern)

の合計が 0 とならなければならない。この公式化については既に辻岡

(1964)

がのべたから, ここでは説明をぬきにして公式だけ を挙げておこう。

すなわち

~ajp=O j

1

e=l, 2n

尺度に含まれる項目数)

p=l, 2

・ ・ ・ ・ ・ ・

m‑1 m

は因子数

‑10‑

W ^   ︐ 

, L .  

Up  Fig. 11 

内的整合性の原理に

よる項目選択

(8)

1. 

問題と方法(辻岡)

この因子パターン

(aip)

ほ斜交因子の場合であるが,直交因子のときは当然因子負荷量となる。

この作業に関しては現在の所,自動化プログラムは完成していないが,欲する因子との相関を 最大にしつつ,欲せざる他の因子の負荷を最小にする項目選択の作業をイテレーションによって コンヒ゜ュータとの対話形式で求めて行く方法は不可能ではない。これについては清水が第 6節で 発表する予定である。

さて,われわれの提案したい項目分析は

300X300と""うような大規模な項目間相関の因子分

析ではなく,数項目からなる習性水準尺度が数十個からなる相関行列の因子分析であったから,

真の因子と項目変量との相関は直接求むべくもない。そこで先ず真の因子得点は

(2) 

^ F=V'fsR‑1Z 

により推定される。この推定の精度は次式により求めることができる。

(3)  r=(i

すなわち, 真の因子得点

F

と推定値

F

の相関は

F

そのものの標準偏差であるから, この値が

0.8

及至

0.9

以上あれば大体推定が成功したものと考えてよい。この推定の成否は元の因子分析の 共通性の水準や因子構造によって決定されるから,正確な因子数と共通性の推定が大切である。

この因子推定値

(factorestimates)

が求まれば, 個人の項目得点(正規化得点)との相関を 求め更に,第

2

節で藤村が述べる広域カテゴリーによる修正をほどこして,各項目変量の

factor structure

の推定値

(rip)

が求まることになる。

さて,

factorpattern

factorstructure

との関係は,

(4)  VJp V1s cr1 

(ここで

Vtp

は推定因子パターン行列,

Vts

ほ推定因子構造行列,

CJ

は因子推定値間相 関行列)

によって計算されるから, 求める

factorpattern

の推定値

a;p

は因子推定値

F

の相互相関が 求まればよい。この相関行列

CJ

(5)  C,=― F'F A  A 

により,求まるから,この;;

jp

の計算は,項目数がいくら大規模であっても容易に分割が可能で あり,大型電算機が利用出来なくてもいくらでも計算が可能となる。

さて,上の

(4)

式で求めた因子パターンほ,真の因子パターンではない。真の因子パターンとの ずれは,因子得点と因子推定値との相関の高さに依存する。ただし,次にのべる「因子的真実性 の原理」を考えない項目分析に比べて,結果として構成される合成尺度の出来ばえは数段とすぐ れたものであり,この方法はまた,操作主義的に合成尺度構成の手続を「後追い」することので きる手続となる。従来の方法では合成尺度の方向が奈辺に行ったかは全く追跡不可能であった。

もし,単純構造をしめさない直交因子(例えば

Varimax

解)から直接,項目分析を行ったり,

あるいは因子得点との相関をたよりに尺度合成を行う粗雑さから見れば,因子推定値の軸方向が,

(9)

わずかに真の因子軸からずれているという程度の欠点はさほど重要な問題ではないのである。

ここで最も重要視さるべきことは,項目分析手続の追試可能性ということである。もし全項目 変量の因子分析を行ったとすれば,因子数の決定を誤った場合,非常に相違した

Varimax

解が 得られ,作成される尺度の様相は一変するであろう。これは大変困った問題になる。

従来慣用されている項目分析の場合, もし得られた

Varimax

解を二因子軸平面毎にプロット した場合多少極端に表現すると

Fig.12

A

図のようになり,

B

図のようなきれいな姿とはな らない。それどころか,少なくとも C 図のようにさえなってくれないのが普通である。テスト構 成者はこのような実際の姿を読者に見せないでキレイ事に話をはこんでしまっているきらいがな いでもない。

Fq 

` 

Fp  Fp  Fp 

Fig. 12 

全項目を因子空間にプロットした図

さて,かようにして最終的に,因子推定軸に対する

factorpattern (factor structure

ではな い)のプロットを

Rotoplot

法で描き,項目の選択を行うわけであるが,この際,軸は元来斜交で あるが作図は直交で描いてもさしつかえない。

むしろ直交のように作図する方が ~aiv=O を達

成するための視察が容易となる。先ず軸に近く, しかも欲する因子に大きく負荷している項目か ら選択を始め, 次いで, スパンを広げて行く。 この際欲せざる因子の軸の正側から一項目を選 べば必らず負側から一つという風に

(m1)

個のすべての

unwantedfactor

の軸に対して検討 を加えなければならない。このことは実際には常にうまく行くとは限らな"¥{'.>ので,最終的には

~8.jp与0 となるような項目の組合せを選択する。この場合,常に項目の内容的妥当性に慎重な配

慮を加えて行く必要がある。単なる数値主義ではなく,それぞれの項目の表現する表面的妥当性 のみならず,その項目が最初の項目群尺度に加えられた「仮説」の原点にもどって,常にその研 究領域に対する深い実質科学上の洞察が必要である。どうしても解釈のつかない項目は,余ほど のことがない限り,選択しない方が好ましい。

もし,このような項目分析の操作が,性別,年令等別々の集団においてなされた場合は,交叉

 

妥当化の観点から,別々に行なわれることが望ましい。そして,各集団より独立にしかも共通に 選択された項目こそ,

hardiness

あるいは

transferability(Cattell Tsujioka 1964)

の高

‑12 ‑

(10)

1.  問題と方法(辻岡)

いすぐれた項目となるのである。このためにも,

Varimax

解ではなし同一の因子解

(factor pattern)

を追求するための斜交解が必要となるのである。斜交解では普通,性別や年令が異な

ると,求まる因子解は同一または類似であるが,因子閻の相関のみかなり異なるという場合がよ くある。このような場合には,

Varimax

解による項目分析では,

hardiness

がきわめて低くな る。しかし,筆者の提案する斜交法では,共通な項目群が選ばれ,結果として構成された合成尺 度は相互相関のみ異なるという極めて集団間安定度の高い一次因子構造がえられる。これについ ては山本が親子関係テストを用いて第 5節で説明する予定である。

何んとなれば

Fig.13

のように

Varimax

解では,仮説上,期待する項目群は無理な因子の

W1  W1 

 

峠 ︶

◎ 

Varimax

解 (A 集団)

W2  Wz 

Varimax

解 (B 集団)

W1 

W2 

W1 

W2 

斜 交 解 (A 集団) 斜 交 解 (B 集団)

Fig. 13 Topological congruency of  factor axes 

‑13‑

(11)

直交性のために必ずしも軸上に位置しないから,因子軸の方向を期待する方向に持って行くこと ができない。したがって

B

集団の結果からは,

W

因子の方向に項目群

A

B

も関係することにな る。しかし,それらの項目群のトボロジカルな序列的布置

(A

B

C)

A, B

両集団共不変 である。このような場合,斜交解では,因子軸はお互いに相関するけれども,独立に,

W1

因子 には項目群

A

を ,

W2

因子には項目群

B

を対応させ,それぞれの中から項目を選ぶこととなって,

項目分析の作業の後追い(追試可能性)がたもたれることとなる。 (ここでの項目分析は因子パ ターンによって行うことに注意されたい。)因子の相関の程度は集団の特性により種々異なるか ら,集団間の変動から相対的に自由な一次独立の人格次元を抽出するという観点からは斜交解が すぐれているといえるのである。

もっともこの論点は, その資料がかなり

confirmatory

な段階にあるという事を度外視して 一般化してはならない。少なくとも交叉妥当化(年令,性別などによる)を考えない段階で自由 気ままにこれが行なわれることは危険である。因子分析といい項目分析というも,所詮はその研 究領域で累積してきた共有知識を枠組みとしているということ,換言すれば,尺度構成とは資料 の論理的整合性の枠組内での統計学的整理学にほかならないということである。もっとも,この ような斜交回転では人格の共通因子空間の一次的独立性

(linearindependency)

を破壊するよ うなことはさけなければならないし,それは因子間相関行列の階位によって検証をうけるべき問 題である。

最後に清水が,これらの項目分析の諸技法を用いた社会的態度尺度の構成法についての一部の 実例を示すであろう。

〔要約〕

質問紙法による性格検査,人間関係検査,態度検査などの尺度構成のためには,幾多の必要に して充分な構成手続が必要であり,かつ追試を可能にするような方法論が用いられねばならない。

そのためには特殊行動水準の項目を変量バッテリーとした項目間相関の因子分析は安定し た結果を生じないこと。その克服法として,習性水準の項目群尺度の因子分析が望ましいこと。

2  項目変量間の相関係数に序数尺度の積率相関係数を用いることほあやまりであること。そ の克服法として九分相関,三系列相関などが望ましいこと。

3  因子分析においては正確な因子数の決定,精度の高い共通性の推定,心理学的配慮をもっ た因子軸の回転が必要であり,また

4  因子的真実性の原理を採用した項目分析が必要であることが述べられた。

( 辻 岡 夏 美 延 )

‑14‑

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