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小学校の学習内容を踏まえた中学校理科「電流単元 」の授業展開

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Academic year: 2021

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小学校の学習内容を踏まえた中学校理科「電流単元

」の授業展開

著者 松村 佳子, 林 真美, 井村 健

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 16

ページ 131‑138

発行年 2007‑03‑31

その他のタイトル Development of Science Class on Electric Current of Junior High School Taking into

Contents of Science Class of Elementary School

URL http://hdl.handle.net/10105/505

(2)

1.はじめに

概念の定着が難しいと言われている、中学校理科の 電流の単元において、教科書の学習内容の流れを組み 変えて電子についてまず学習する方法が効果的であ る、という先行研究がある。1)しかし、現在施行され ている中学校学習指導要領2)では、電子についてはふ れないようになっている。中学校学習指導要領にある

「電流とその利用」の内容をみると、

ア 電流

ア)異なる物質同士をこすり合わせると静電気が起こ り、帯電した物体間では空間を隔てて力が働くこ と及び静電気と電流は関係があることをみいだす こと。

イ)回路をつくり、回路の電流や電圧を測定する実験 を行い、各点を流れる電流や回路に加わる電圧に ついての規則性を見いだすこと。

ウ)金属線に加わる電圧と電流を測定する実験を行い、

電圧と電流の関係を見いだすとともに金属線には 電気抵抗があることを見いだすこと。

となっている。また小学校学習指導要領3)では、第3 学年で

「乾電池に豆電球などをつなぎ、電気を通すつなぎ

方や電気を通すものを調べ、電気の回路についての考 え方をもつようにする。」 第4学年では、

「乾電池や光電池にまめ電球やモーターなどをつな ぎ、乾電池や光電池の働きを調べ、電気の働きについ ての考えをもつようにする。」となっている。これは、

中学校における電流の利用に繋がる内容になってい る。

これらを受けて、様々な教材開発や授業研究に関す る報告がみられる。4)しかし、小学校3学年での学習 と中学校の電流についての学習とがうまく繋がる展開 にはなっていないと思われる。そのためか、中学生が 電流の単元の学習で困難を感じやすい事柄として、八 田等5)

・静電気と日常使用している電気の共通性

・電気を帯びるということの解釈 をあげている。

そこで、私たちは、静電気を帯びることを学ぶとき に電子をまず学ばせ、なるべく多くの実験を導入し、

電子を主体として考えられるような授業を工夫した。

また、小学校で学習した内容を考慮に入れながら、授 業の流れを教科書とは違ったものに組み変えたものを 考えた。そして、その有効性をみるために、今回考え た授業案の流れにそった授業をするグループと教科書 松村佳子・林真美・井村健*

(奈良教育大学理科教育教室 *奈良教育大学附属中学校)

Development of Science Class on Electric Current of Junior High School Taking into Contents of Science Class of Elementary School

Keiko Matsumura  Mami Hayashi  and  Takeshi Imura*

(Department of Science Education , Nara University of Education,

*Attached Junior High School of Nara University of Education)

要旨:理科の学習において、電流とその利用については、電流が直接目で見ることができないためか「電気はわか らない」ということばが生徒からよく出てくる。そこで、本研究では、授業を受ける生徒を2つのグループに分け、

1つは中学校では扱わないことになっている電子をイメージさせることから始め、小学校の学習内容をふまえた授 業を組み、他は現在の教科書にそった授業を行い、両者を比較検討した。比較分析には、授業の前後で単語文節分 析法により、生徒が書いている文章から学習した内容がどのように定着したかを調べた。その結果、電子のイメー ジを取り入れたグループの方が電流や抵抗の概念を身につけている率が高いことがわかった。

キーワード:電流 electric current、電子 electron、電気の概念 electrical concept

(3)

の流れにそった授業をするグループとの比較をした結 果について述べる。

2.授業の流れと授業実践 2.1.授業の流れ

実践する学校で使っている教科書は、「新しい理科」

(東京書籍)6)である。単元「電流」の第1章「電流の 流れ」は、

1、静電気をしらべてみよう

2、電流が流れるのはどんなときか 

教科書では、ストローとテイッシュをこすり合わせ ると、一方の物体の−の電気が、もう一方の物体に移 動するため、それぞれの電気をおびる(はじめは、2 種類の+と−の電気を同数持っているため、電気をお びていない)。と記されている。授業プラン(A)で

3、電流は回路をどのように流れるか  4、電圧は回路の中でどのようにはたらくか  5、電圧と電流にはどんな関係があるか  6、直列回路や並列回路の抵抗はどうなるか で構成されている。これらの内容を9時間の授業で学 習するように計画した。1つは、内容の順序を入れ替 え、小学校のときに学んだ内容との関連を考慮に入れ た授業プラン(A)であり、他の1つは、教科書の流 れにそった授業プラン(B)とした。表1にそれぞれ の授業の流れのあらましを示す。

は、この−の電気のことを「電子」という。として、

「電子」という言葉を導入した。そして、「ストローと テイッシュをこすりあわせると、テイッシュの電子が ストローに移るので、ストローは−の電気をおびてテ イッシュは+の電気をおびる」と説明する。また、放

実践した授業   教科書にそった授業  

第1次   静電気と電子(2時間)  

①   静電気のさまざまな現象をみる  

(ストローとティッシュペーパーで静電気の現象を  見る。 実験① )   

②   静電気の仕組みについて  

(プラスの電気・マイナスの電気→電子)  

③   電流と電子  

(電子の流れを体験する実験『百人脅し』 実験② )    第2次   豆電球を明るくつけるには(2時間)  

①   電気用図記号  

②   回路に挟む物を変えて電流が流れるか流れな  いか。 実験③ 

③   電池の数を変えて豆電球の明るさを確かめる         実験④ 

第3次   電子と電流・電圧(3時間)  

①   電子モデルを使って電流の説明  

②   電子モデルを使って抵抗の説明  

③   電子モデルを使って電圧の説明  

④   オームの法則 実験⑤ 

第4次   回路と電流・電圧の関係(2時間)  

①   直列回路と並列回路 実験⑥ 

②   それぞれの回路と電流 実験⑦ 

③   それぞれの回路と電圧  

第1次   静電気を調べてみよう  

①     静電気の様々な現象を見る。 実験①  第2次   電流は回路をどのように流れるか  

①   電気用図記号  

②   回路(直列回路と並列回路)  

第 3 次   電圧は回路の中でどのようにはたらくか  

①   電流の大きさと回路  

②   直列回路・並列回路に流れる電 流  

(電熱線を流れる電流の関係を調べる。 実験⑥  第4次   電圧と電流にはどんな関係があるか  

①   電圧の大きさと回路  

②   直列回路・並列回路と電圧の関係  

(電熱線にかかる電圧の大きさを調べる。 実験⑦  第 5 次   電圧と電流の関係を調べよう。  

①   電圧と電流の関係を調べよう。 実験⑤ 

②   電気抵抗とオームの法則  

第 6 次   直列回路や並列回路の抵抗はどうなるか  

①   直列回路での抵抗を調べよう。  

②   並列回路での抵抗を調べよう。  

 

表1 実践した授業プラン(A)と教科書にそった授業プラン(B)の比較

(4)

電は、物体に余分な電子を帯びさせたもの、電子を取 り除いて+の電気を帯びたもの(どちらも不安定な状 態のもの)を近づけると、電子が移動して安定な元の 状態に戻ろうとするのだと説明する。

2.2.授業実践と調査

授業は、奈良教育大学付属中学校で平成18年10月27 日から11月22日にかけて、2年生の各クラスで行った。

1学年4クラスなので、1組と2組に対しては、今回 工夫した授業プラン(A)で、3組4組には教科書に

ある流れにそった授業プラン(B)による実践を行っ た。

授業プラン(A)のみで実施した実験。「百人脅し」

及 び 実 験 「「豆電球を光らせよう」について以下に示 す。また、授業プラン(A)では、毎時間授業プリン トを用意した。その1例を図1に示す。図2には、電 気抵抗をモデル化したものを示す。これらによって、

電子の概念や電子の動きを妨げる度合いが電気抵抗に なるということの理解につなげるものである。

  実験② 百人脅し〜放電と電子の流れ〜 

<実験のねらい> 

  静電気が電子の移動によって起こることを学習し、放電の現象についても知った。その得た知識を身をもって体 験し、電子の流れを体で感じ取ってほしいと考えた。この実験は全員で一つの実験を協力して行い、全員で同じ経 験を共有するというものであり、いつもとは違った雰囲気の実験ということで、興味を引きたいと考えた。 

<準備物> 

・ライデン瓶 

・塩ビパイプ 

・ハンドタオル 

<実験手順> 

①塩ビパイプをタオルでこすって静電気を発生させライデン瓶にためる。 

②実験者全員で手をつなぎ一つの輪を作る。一人がライデン瓶を持ち、その隣の人がライデン瓶に触れる。 

 

<実験風景> 

                 

<実験時の生徒の様子> 

  いつもと違った実験の雰囲気に最初は惑っている様子だったが、そのうち今から何がおきるのだろうと興味を示 す生徒が増えてきた。実際に静電気が全員の体を走ると、痛がっている生徒や、何が起きたのかわかっていない様 子の生徒などもいたが、授業後に、「さっきのは僕の体を電子が走ったの?」という質問をしてきた生徒もいた。全 員で一つの実験を行うということで、生徒たちも興味を示していたのではないかと感じた。 

実践した実験Ⅰ「百人脅し」

(5)

回路図  実験③  豆電球を明るく光らせよう 

<実験のねらい> 

小学校で行った実験を通して、小学校で学習した内容を思い出させ、今後の授業につなげていきたい。豆電球が

「つく」・「つかない」で、電流が「流れた」・「流れなかった」の判断をしていた小学校での学習から一歩前進し、

電流計をつなげることで、豆電球はついていないが電流計の針は触れていたり、電流の大きさによって豆電球の明 るさが異なることに目を向かせたい。そこから、この後学習する、抵抗の概念を形成する手がかりとなるようにも っていきたいと考えた。 

<準備物> 

・乾電池 

・豆電球 

・導線 

・電流計 

・回路にはさむもの(シャープペンシルの芯・クリップ・金属板・

紙等) 

<実験手順> 

①回路図のように回路を組み立てる。 

②点線のところに身近なものをはさみ、豆電球がつくか調べる。 

③そのときの電流計の値を読み取る。 

<実験風景> 

               

<授業後の感想> 

・はさむものによって流れる電流の大きさが違ったり、豆電球の明るさが違ったりして驚いた。 

・この実験で豆電球が明るくつくものとそうでないものがわかりました。小学校の実験を思い出せてよかったです。 

・シャーペンの芯でも光ったのが驚いた。豆電球がつくものとつかないものとでは、素材によって電流を流しやす いか流しにくいかによって違うと思った。 

・小学校のときに習ったときはこんなところまで習わなかったので意外なことが多かった。もっと身の回りのいろ いろなものを調べたい。 

実践した実験Ⅱ 豆電球を明るく光らせよう」

(6)

2つの授業プランの比較と評価をするために、第1 章「電流の流れ」の学習に入る前と終わった後とで、

簡単な調査を行った。それは、授業の前後で同じ質問

「電流について知っていることを書いてみよう。」とい う問いについて生徒たちに自由に記述してもらうもの である。そして授業の前後での変化を単語文節分析法7)

と名付けた簡単な方法で分析する。この方法は、被験 者にとっては調査に要する時間が短くて済み、分析す るのもパソコンソフト、一太郎の中にある修太の機能 を使えば手軽に短時間で行えるものである。

 

  抵抗のモデルの木片が少ないも の(左)と多いもの(右)。木片(抵 抗)が少ないほうが電子(電流)

は流れやすい。右側の図のように 木片(抵抗)が多いと電子(電流)

は流れにくい。 

   

  電池を増やすと電圧(電子を流 そうとする力)が大きくなること を示したモデル。電池の数が増え ると抵抗の傾きが急になり、電子 を流そうとする力が大きくなる。 

       

電圧が小さい(電池が少ない)

 

電圧が大きい(電池が多い)

 

電子 抵抗

電圧の大きさ

図2 電気抵抗のモデル 図1 使用したプリント例

(7)

3.結果と考察

「電流の流れ」の学習に入る前と終わった後に生徒 たちに書いてもらったものを、1クラスずつに分けて

総文字数は、1組は授業後に授業前の2倍強に増加 しており、2組についても授業後に書かれたものは約 1.8倍になっている。これに対して、授業プラン(B)

による3組は1/3ほど少なくなっており、4組はわ ずかに増加がみられるのみである。単語については、

どのクラスも(+)、(−)、電流、電圧、電流計、電 圧計、直列、並列などが多く見られた。「電子」につ いては、表に示す通り1、2組と3、4組とで差が見 られた。生徒たちが書いた文章についても、授業プラ ン(A)と授業プラン(B)とで差が見られた。授業 プラン(A)で学習したクラスは、主語と述語がはっ きりとわかるように書かれた文章が多いのに対して、

授業プラン(B)で学習したクラスの生徒が書いたも のには、式や単語を並べたものが多く見られた。

これらのことから、単元の学習内容の順序を入れ替 えること、電流、電圧、抵抗などの理解のために、

「電子」をまず始めに学習すること、そして、小学校 で学習したことをもう1度授業の中でふれることが、

有意味な学習をする手助けになることがわかった。こ のような学習をすることで、電気の単元は苦手である と意識する生徒を減らすこともできると考える。

4.まとめ

小学校では嫌いとされなかった理科の学習が、中学 校以上になると嫌いになる傾向が強いことは一般的に 言われていることである。特に第1分野に関しては、

その傾向が強い。

本研究では、第1分野電流の単元で、生徒たちが有 意味に学ぶことできるような学習プランを考え、その 有効性について検討した。教科書にある学習の流れを 見直し、学習指導要領では扱っていない言葉ではある けれども、教科書の中で概念としてはその言葉が読み 取れる記述になっているので、「電子」を学習の中に 取り入れた。このことにより、生徒たちは学習内容の 理解が進みやすくなったと考えられる。教育内容の選 択と編成及びカリキュラム設計が授業を有意味に進め る上で大切であると考える。大野栄三8)は「理科の教 育内容はそれぞれがバラバラではなく、教え学ぶため のまとまりとして、適切な関連を持って構造化されて いなければなりません。教育内容の系統性を持ったカ リキュラムを設計するには、教育内容が論理的な整合 性をもっているだけでなく、それまでに学んだ内容が 新たに学ぶ内容を理解する上で役立ち、さらに抽象化 した高次の理解にまで到達できるような編成になって いなければなりません。」と述べている。

今回の実践プランは上記のように大野が述べるもの に近い学習プランであり、その有効性が確かめられた と考えている。

ワープロにうちこんで、授業プラン(A)と授業プラ ン(B)について、総文字数や現れる単語および書か れている文章の比較をした。その結果を表2に示す。

学級  1 組  2 組  3組   4組  

前  後  前  後  前  後  前  後 

字数  1041字  2371字  1554字  2765字  1204字  815 字  1427字  1512字 電子  0個   25 個  0個   35 個  0個   1個   0個   2 個 文章  12 人  29 人  7人   21 人  22 人  22 人  21 人  20 人

授 業 後の 回 答 例

 

○  電流は+からマイナスに流れるが、実は、電 子が−から+に流れている。  

○  電流は電子の流れのこと。  電圧とは電流

(電子)を押し出す力のこと。  

○  電流は電子の流れ。電圧は電子を流そうとす る力。抵抗は電子を流れにくくする力。  

○  並列はI=I=I 。直列で I+I=I 。 

○  電流とは電気の流れのこと。 であらわすI 単位はA、mA。+から−へ流れる。  

○  静電気。電圧。直列。並列。直流。交流。 

表2 授業前後での調査結果の比較

(8)

参考文献

1)松村佳子,樫原俊司 「概念間の関連づけを強め る電気学習」 奈良教育大学教育実践指導センタ ー研究紀要 No, 8  1999,  pp.71〜79

2)中学校学習指導要領(平成10年12月)文部省 3)小学校学習指導要領(平成10年12月)文部省 4)例えば:  泉 葉子「誰でもできる実験観察講座:

電気の働き」理科の教育 Vol.55/3 日本理科教育 学会編 2006, pp.40-41,

楳内典明 「もののしくみが見えるようになる教 材」理科の教育 Vol.54/6  日本理科教育学会編 2005, pp.10-13

江崎士郎 「ブラックボックスをホワイトボック スに」

理科の教育 Vol.54/6  日本理科教育学会編 2005, pp.30-31

野瀬薫 「電流の働きの理解を深める教材教具の 工夫」理科の教育 Vol.53/8  日本理科教育学会編 2004,  pp.42-45

5)八田明夫 他 「理科教育学−教師とこれから教 師 に な る 人 の た め に − 」 東 京 教 学 社   2 0 0 4 , pp.75

6)新しい科学 1分野上 東京書籍 平成16年2月 発行

7)三上周治 「消化管のシリコーンレプリカの製作 法とその活用−消化管の学習の改善と提案−」奈 良教育大学大学院2003年度修士論文

8)大野栄三 「授業づくりのための理科教育法」左 巻健男編著 東京書籍 2004 ,  pp.135

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