金沢 大学 十全 医学会雑 誌 第1 0 3巻 第2 号 36 9‑3 8 0(1 9 94)
肝細胞癌の結節内に おける ゲ ノ ム D N A の多様 性の 検討
金沢 大 学 医 学 部 内科 学 第一 講 座 (主任: 小 林健 一 教授) 大 阪大 学 細 胞 生 体工学セ ン タ ー
染 色 体 構 造機 能 研 究 分 野 ( 主任: 松 原 謙一 教 授)
佐 伯 理 恵 子
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進 行し た肝 細 胞 癌 (肝 癌) の組 織 学 的 多 様性 (tu mo r hete r oge n eit y) における遺 伝子の変 化を明ら かにする た めに, 申 分 化 型 肝 癌3 例の同一肝 癌 内の結 節 内結 節と その周囲の癌 組 織, さ らに2 例の均一 な高 分化 型 肝癌 内の2部位よ り高 分子 D N A を抽 出し, B 型 肝炎ウ イル スの阻み込み を検 出 するサザンブリッ トハイ プ リ ダ イゼ ー シ ョ ンと, D N A を 2 次 元的に泳 動 する
こと に よ り ゲノ ム構 造を解 析 する リス ト リクシ ョ ソ ラン ドマ ー クゲノ ムス キャ ン (r e strictio n la ndm a rk ge n o mic s c a n ning,
R L G S) 法を 用いて検討した. サザン プロ ッ トハイ プリダ イゼ ー シ ョ ソで B 型肝 炎ウ イルス D N A の組み込み を検 討し え た 1 例
では結 節 内結 節と その周 囲の癌 組 織のB 型 肝 炎ウ イルス の組み込みパ タ ー ソほ同一 で両者は単クロ ー ン由 来である事が示さ れ た. R L G S パ タ ー ンの比 較では, 均一 な高分 化 肝 癌 内の場 合, 離れ た 2部 位の R L G S パ タ ー ンに差 異ほ認め ら れず,肝 癌 細 胞
の保 有する ゲノ ム の不均 一性は証 明さ れ な かった. 一 方, 申分 化 型 肝 癌でほ, 非 癌部との比較でほ 2 箇所の癌 部には明らかに
共 通し た ゲノ ム の変 化が認め られ たことに加え, 結 節 内結 節と 周囲の癌 阻織の間には症例に よ り 4 か ら1 4個のス ポットに強 度
の差が検 出され, ゲノム D N A 構 造の相違が認め られた. し た が って結 節 内結 節と その周 囲の癌 阻 織は単クロ ー ン由 来であり な が ら,
一 部の D N A 構 造に違いを持つ細 胞 集 団であること が 示 さ れ, 肝癌の紅 織 学 的多 様 性ほ遺 伝 子の変 化によ る多 段 階 的 な腫 瘍 進 展の結果と考え ら れ た.
K ey w o rds 肝 細 胞癌, 結節内結 節, 多 段階発癌, R L G S 法
臨 床上問題と な る痛が形 成さ れ る まで にほ イ ニ シ エ ー シ ョ
ン
, プロ モ ー シ ョ ン
, プログレッ シ ョソ といっ た多数の段 階を
経ること が必要である と さ れ ている‑ ) 2). 近 年, 多 段 階 発 癌にお ける が ん遺 伝子 や が ん抑 制 遺伝 子な どの役 割が 同定さ れ分子生 物 学 的 異 常の蓄 積が癌の進 展, 増 悪に大き く 関 与し ていること が明ら か と なっ てきた3 卜 ら). 肝 細 胞 癌 ( 肝 癌) においても 染 色 体
欠 失6 卜 8)や p5 3 遺 伝 子異 常)〜1 2 ) といった分子生物 学 的 異 常が指
摘さ れて いるもの の, 多 段 階 発 育の ステ ップ と分子生物 学 的 異 常の関連につい てほ未だ 不明な点が多 く 残さ れて い る1 3 ).
進行し た肝 癌でほ 1 つ のが ん結 節の中に形態 学 的に異な るコ
ン パ ー トメ ン ト, 結 節 内 結 節 (n odule‑in‑n Odule) が認め ら れ
る1 4 )1 5 ). 一 つの肝 癌 内部では結 節 内 結 節 もその周 囲の癌 組 織 も
元来 同 一細胞の クロ ー ナルな増 生によ る細 胞 集 団であること が 立証さ れてお り1 G) 1 7), こ の魁 織 学 的 多 様 性 (tu m o r hete r oge n ei‑
t y) ほ, 癌 結 節の発 育にともない 一部の癌 細 胞が脱 分 化して新 た な細 胞 集 団(結 節 内結 節) を形 成 する といっ た多 段 階 的な腫 瘍進 展を示し た結 果と して理解さ れて いる1 6) 1 8) 1 g)
. 多段 階進 展は 本 来 同一 であった遺 伝子 が段 階 的に変 化を蓄積した結 果である と考え られて いる た め, 鼠 織 学 的 多 様 性が多 段 階進 展に よ るも
平 成5 年1 2月1 6 日受付, 平 成6 年2 月3 日受理 A b br e viatio n s : [α‑3 2P] d C T P, [3 2P]de o xycy tidin e
のな らば一 つの肝癌 内に存 在する形 態学 的に異なった 2 部 位 間
には遺伝 子 構 造の変 化が認め ら れ るはずである. し か し, これ ま でに肝 癌 同一結 節 内における組 織 学 的多 様 性と遺 伝 子構 造の 変 化を検討した報 告は少ない.
近 年 開発さ れ た ゲノム スキャ ニ ソ グ法であるレ ス トリク シ ョ ソラン ドマ ー クゲノム スキャ ン(r e strictio nla ndm a rk ge n o mic s c a n ning,R L G S) 法2 n 2 =は制 限 酵 素で切 断さ れ た ゲノム D N A を 直接 末 端 標 識し, そ れ を高 分 解 能2次元電気 泳 動 法で分 離 解 析 する という方 法で,
一度に全ゲノム中の2 00 0 〜3 0 0 0箇 所( 全 ゲ ノム の数 %) という広い範 囲にわ た り極めて鋭 敏に ゲノ ム
D N A 構 造の差 異を検 出できること が特 徴である. R L G S 法が
ヒ ト痛のゲノム D N A 構 造の解 析に応用 可能であること は既に 立 証さ れてお り2 1 ),Nagai ら2 2) 2 3)によ る R L G S を 用いた肝 癌と そ の非 癌 部と を比 較し た検 討では 両者にゲノム構 造の差 異が認め られ ること が報 告さ れ ている.
今回, 肝 癌の組 織学 的多 様性に伴う ゲノム D N A 構造の変 化 を検討 する 目的で, 結 節 内 結節と その周 囲の癌 阻 織における ゲ ノム構 造を R L G S 法を 用いて解 析した. ま た,今まで既 成の方 法では遺伝 子 構 造に差を検 出さ れ ていない微 小 高 分化 型 肝癌と
5 '‑triphosphate; [a‑32P]d G T P, [32P]de ocy gu a n o sine
5'‑tripho sphate ; bp, ba s e pair; d CTP[αS], 2㌧de o xycy tidin e 5'‑[a‑thio]tripho sphate; d d A T P[αS], 2 ',31‑
dide o xyaden o sin e 5'‑[α‑thio]tripho sphate ; d d T T P[αS], 2',3'→dide o xy thymi dine 5'→[α‑thio]tripho sphate; dG T P[aS],2,‑de oxy gu a n o sin e 5'‑[α‑thio] tripho sphate; D T T, dithiothr eitol;E D T A , ethylen edia min etetr aac etic