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大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響

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静岡大学教育学部研究報告 (人文 。社会科学篇)第 56号 (2006.3)"3〜 214

大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響

Efect of the Political Ser‐ Πicacy On tte Sense of Poll饉cal Dismst arnOng Universiけ Students

Tadashi HARADA

(平 成17年 9月 30日受理)

Abstract

¶℃present study aimed at developing the scale br the Sense of political Self‐ emcacy and investigating its relationship to the sense of political distrust h undergraduates.Varimax rotated factor analySs for me Sense of Poldcal Self‐emcacy revealed lve separate factors narned‖ Powedessness‖ ,'りudgemental Abiliwit

"Knowledge",‖1ぼluencial AbШand‖ Legitimacy‖ respectively。

Multiple variate regression analysis indicated signincant causal erects between■ e Sense of Political Distrust as a criterion varlable and the sense of political self‐ emcacy as explanatory  Ⅵrhbles.

Powerlessnёsゞ:positively explained signiflcantly both factors of the sense of poldcal dismsto HOweve島

Legitinacプ!SOlely had signincant positive erect on the sense of‖ opacity of political proces」 he

effectiveness of the sense ofpolitical動 mcacy as an explanatory varlable on tt sense ofpolitical dism飢 ls discussed.

原田 (2001,2004)は ,大学生の政治不信が 政治過程の不透明性"と 担い手の反役割行動"と命名可 能な 2つ の因子か ら成 り立 っていることを明 らかにし,さ らに,これら2つ の政治不信の構成要素 と政治 的関心 との間にそれぞれ異なった関連性が認め られることを報告 している (原田,2003).す なわち,政 不信の うちで 政治過程の不透明性"を内容 とする不信感は政治的関心 との間に有意な正の,他, 担い 手の反役割行動"は 政治的関心 との間に有意な負の因果的連関を示 していた.

この結果は,一口に大学生の政治不信 といつても,ど の側面・内容に視点を当てた不信感情であるのか によって機能の仕方が異 なるとともに,政 治不信 を感ずる対象や領域が個人間で相違 している可能性 を 示唆 している. 政治過程の不透明性"に関わる不信感情 を多 く抱えている者はi 担い手の反役割行動"に

目を向けた不信感情 を持つ者 に比べて政治に対す る関心が高い傾向があるとい う結果は,政治的関心の 低 さが単純に政治不信の強さと結びついているわけではないことを示 している.

政治過程の不透明性"に起因する政治不信 は,政策決定や予算の配分 と執行,税金の使い道などの政治 的な意志決定 と遂行過程 に関する情報開示が十分ではな く,ど のような政策が どのような根拠で決定 さ れているのか,た とえば税金が果た して本来的に必要な目的のために有効に活用 されているのかなどに ついての十分な説明が政府当局からなされていないという認識に関わつている.このことは,情報開示の

203

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不十分 さが政治一般の信頼感 を失わせ る重要な要因であることを示唆 している.同 時に,情報開示や説明 が十分ではないことが大学生の政治不信の一角を構成するとい うことは,その前提 として政治に関する 重要な動 きであるとか ,政府の政策の方向性 といつた大 まかな流れについて,ある水準以上の興味や関心

を持つこと,言 い換 えれば政治の動 きを一定以上の自我関与対象 として認識 していることが必要 となる.

大学生において政治に対する関心 と 政治過程の不透明性"を内容 とする政治不信 とが正の因果的連関を 示 したことは,政 治不信 を強 く持つ者の中には,必ず しも政治か ら撤退 してぃるわけではな く,ま た無関 心であるわけで もな く,む しろある水準 を超えた興味・関心 を持つ者が多 く含 まれていることを示 してい

.

また,原 (2003)は ,政治不信の うちで 政治過程の不透明性"は,社会か らの撤退志向が弱い者ほど 強 まる一方で, 担い手の反役割行動"の側面に関わつた政治不信は,自 己およびその周辺のことが らに関 心 を限定 した私生活中心主義傾向が強 くなるにつれて強 くなる傾向を見出 した。社会か らの撤退志向 と , 社会一般のことか ら身を引いていたい" 自分か ら進んで社会に参加 しようという気持 ちはない"や

自ら進んで社会のことに関心 を持つ必要はない"な どの項 目か ら構成 され,社 会 と自己 との心理的距離 を遠 くしてお きたいとする心性 を表 している.

以上か ら,政治的関心の高 さと社会か らの撤退志向の弱 さ,すなわち社会 との関係維持志向 とはともに 政治不信の うちで 政治過程の不透明性"と正の関連があることが うかがわれる.このことは,政 治的関 心の高 さと社会 との関係維持志向を示す心理的背景 として,個人が内面 に社会や政治のことが らに対 し てより積極的に関与 しようとする意欲や動機を保持 していると仮定することがで きることを示 している. 換言すれば,政治領域に関する自己効力感が高いことが 政治過程の不透明性"に 注 目した政治不信感情 の生起に影響 を与えている可能性がある.す なわち, 政治過程の不透明性"とい う視点に立った政治不信 が生ずる心理的背景には,政 治的関心の高 さや社会 との関係維持志向で代表 されるような政治に対す る 積極的な行為傾向や信念が存在 していると仮定するこ「とが可能である.

このような政治に対する積極的な構えを生み出す個人内部の動機的要因のことを本稿では政治的 自己

効力感 (Sense of Political Self‐EEcacy)と 呼ぶ こととする.政 治的 自己効力感は新 しい概念であ り,そ

厳密な定義や構造に関 しては今後の検討に委ねざるを得 ないが ,現在の ところは,政治に関与 しようとす る意志の基盤 を構成する個人の能力に関する評価的感情 と考えてお くこととする.端 的に言えば,政 治に 関与 しようとする意志や行動 に関する個人の自己評価的感情のことであある.政 治的 自己効力感 とい う 概念 は,当然の ことなが ら社会的認知理論の中核 をなす概念の一つである自己効力感 (Sense of Self‐

Erlcacy)と 密接 に関連 している.自己効力感 とは,個人がある状況において必要な行動 を効果的に遂行で きる可能性の認知のことである (成田他 ,1995).政 治的 自己効力感は,政 治 とい う領域 に関 して個人が 持 つている効力感 を表 し,政治への関心 を持 った り,社 会 との関わ りを保ち続けるといった行動 を遂行で

きるとい う個人の信念や感情のことを指 している考えることができる.

ところで,政治心理学の領域では,政治的 自己効力感に類似 した概念 として政治的有効性感覚(Sense of

Political E題cacy)と いう概念が用い られてきた。政治的有効性感覚 とは,政府の決定に市民が影響を与え

ることが可能であるとみなす信念 (CaFnpbell et J。 ,1960)の ことを指す。政治的有効性感覚は政治的態度 や行動 に影響 を与える重要な要因であることが指摘 されてきた (Hess&Tomey,・ 1967な ど)が,1970年 代半ば頃から 内的政治的有効性感覚"と 外的政治的有効性感覚"と 2元的構造を持つことが指摘 さ れるようになった (Balch9 1974).内 的政治的有効性感覚 とは, 政治システムの中で何が生 じているのか を理解 した り,政 治 システムに対 して意見 を述べ た り,影 響 力 を行使 す る能力 に関す る 自己認知"

(Smetko&Valkenburg,1998)の ことを指 し,他方 ,外的有効性感覚 とは, 市民の要求が政治システムに

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大学生の政治不信 に及ぼす政治的自己効力感の影響

対 して影響 を与えることがで きるという個人の信念"を意味する(McPhernOn et al。,1977).内 的一外的政 治的有効性感覚の相違は,端 的に言えば個人の認知対象が どこに向かっているのかにあるといえる.内 的 政治的有効性感覚は,政 治 システムや政治過程 に対 して自分 自身が関与することがで きるだけの能力や 資格 を持つ と個人が考える程度 と表現することがで きることか ら,個人の認知対象は自分 自身の内面 に 向けられているといってよい。他方 。外的政治的有効性感覚は,市 民 としての意見や要望 を政治の担い手

(政府や政治家,政,官僚など)や現行の政治 システムが どの程度受容的であるととらえるかに関連 して いることか ら,個人の認知対象は政治の担い手やシステム とい う外部対象 となる。本稿で用いようとす る 政治的自己効力感概念は,こ こでいう内的政治的有効性感覚にきわめて類似 した内容 を持 っている.

原田 (2005)は ,従 来使用 されてきた内的政治的有効性感覚 を測定する尺度項 目をベースに,特性的 自 己効力感尺度 (成田他 ,1995)な どを手がか りとして,政 治に対する関わ りを引 き出すことに寄与すると 考えられる項 目をい くつか加えて政治的 自己効力感尺度の開発 を行 っている.作 成 された尺度は 無力

", 判断力", 知識", 一般的有効感"お よび 正当性"と命名 された 5つ の下位尺度か ら構成 されてい

.政治的自己効力感の どの側面が政治不信の どの側面 と関わ りを持 っているのかについて検討するこ とは,政治不信が生ずる心理的背景や規程因の一端 を明 らかにすることにつながるであろう.そ こで本研 究 においては,政 治的自己効力感および政治不信の測定尺度 を整備するとともに,政 治的 自己効力感の ど の要素が政治不信の どの側面に因果的連関を示 しているのかを明 らかにすることを目的 とする.

1.被 調査者 と調査 日時

静岡県内の国立大学お よび私立大学の 2〜 3年生 197名 (男性 57名,女子 140名)に 対 して,2005年 1月 に質問紙調査 を実施 した.

2.質 問紙の構成

(1)政治不信 :原田 (2003)が 作成 した尺度に若干の加除修正 を行 った 27項 目か らなる尺度である。

政治過程の不透明性"および 担い手の役割違反行動"因子の 2因 子か ら成 り立つことが仮定 されている。

各項 目に対 して そう思わない"か ら そ う思 う"ま での4段階評定 を求め ,順 に 1〜 4点を与えて得点 化 した.

(2)政治的 自己効力感 :これまでの自己効力感に関する測定尺度や既存の政治的有効性感覚尺度 を手が か りとして,18項目に整理 した.因 子分析 の結果, 一般的有効感", 政治的無力感"お よび 判断力",

知識", 正当性"の 5つ の因子か ら成 り立っている。回答は まった くあてはまらない"か ら とて もよ

くあてはまる"ま での4段階評定 によつて求め,順 に 1か ら4点を与えて得点化 した.

(3)政治的関心:原田 (2003)が 作成 した lo項 目か らなる尺度であ り,主因子法 を用いた因子分析の 結果, 政治に対する興味0関"と 政治 との間の主観的距離感"と命名 される 2因 子構造 を持つことが 確かめ られている. 政治に対する興味・関心"は, 今の国の政治動向に対 して関心が強い"や 選挙で 各党の議席が どうなるのか興味がある"と いった一般的な関心・興味 と, で きるだけテ レビやラジオの 政治ニユースを見た り聞いた りしている"や 身の回 りの人 と国の政治問題 について話 し合 う機会があ "のような政治に関する情報に対する接近行動 を表す 7つ の項 目か ら構成 されている。また。政治に対

205

(4)

する主観的距離感"は , どの政党が政権 を担お うとも自分には関係ないと思つている", 政治的な問題 に は関わ りを持たないように している"お よび 友人との会話で政治の話題が出ることはない"の 3項目か ら構成 されている. 政治に対す る興味・関心"お よび 政治に対する主観的距離感"と もに,それぞれの 因子得点 を分析 に使用 した.

(4)簡易版特性的 自己効力感尺度 :成 田他 (1995)が 開発 した特性的自己効力感尺度の うちで因子負荷 量の上位7項目を使用 した. 何かを終える前にあ きらめて しまう (―)", 自分が立てた計画は,う まく で きる自信がある", は じめはうまく行かない仕事で も,できるまでや り続ける"な どである.主 因子法に よる因子分析の結果,一因子性が確認 されている.因 子得点 を特性的 自己効力感の指標 とした.

1.政 治的自己効力感の構造 と諸変数 との関係

Table lは ,政 治的 自己効力感尺度 18項 目に対する評定結果に基づいて,主因子法による因子分析 を行 ,さ らに varimax回 転 した結果

を示す.固 有値の減少傾向か ら5因 子解が適切であると判断 し,負荷量 の大 きさと方向に基づいて各因子の解釈 と命名 を行 つた。なお,こ こでは,原 (2005)のデー タを再分 析 した結果に基づ くこととする.

第 1因 子 は 自分のような若者が積極的に政治 と関わつた としても,政 治のあ り方が変わることはな い"な ど5項目の負荷量が高 く,政治に対する意見や要望の反映が見込めないことを表す内容の項 目から 構成 されているので, 無力感"因子 と命名 した。内容的には政治に関する自己効力感 を欠いた状態 を表 し ていると考えられる.ま,第 2因 子 は 必要 とあれば,自分の政治に対する考え方 をはっきりと表明す ることができる"な ど3項目の負荷量が高 く,自 らの政治的判断能力や見解表明に対する自信 を示す内容 か ら構成 されているので 判断力"因 子 と命名 した。第 3因 子は 各政党の考え方や理念の違いをある程 度説明できる"な ど2項目の負荷量が高 く,主観的ではあるが政治に関する知識が一定 レベル以上あるこ とを自認 している内容の項 目から成 り立っているので, 知識"因子 と命名 した.第 4因 子は 選挙で有権 者が投票する一票は,国の政治を動かす もっとも大 きな力であると思 う"な ど,既存の政治的有効性感覚 尺度に含 まれる項 目で構成 され,ま,自分を含めた市民個々が政治に影響 を与えることがで きるとの確 信 に基づ く考え方であることか ら, 影響力"因子 と命名 した.さ らに第 5因 子は, 自分には国政選挙で投 票す る資格が十分 にあると思 う"な ど3項目の負荷量が高 く,政 治を比較的身近 なもの としてとらえ,政 治 に参加す る資格が 自分 には備わつているとい う考え方 を代表 していると考えられることか ら, 正当 性"因 子 と命名 した。なお,各因子に負荷量が高い項 目の合計値 と個 々の項 目得点 との相関は ,性別・学 年 を問わずすべての因子で1%水準で有意であつた.このことは,各 因子 とそれに含 まれる項 目とが互い

に整合 した関係にあることを示 し,尺度 としての信頼性の傍証 となる.

以上か ら,本研究で用いた政治的 自己効力感尺度は, 無力感", 判断力", 知識", 影響力"お よび 正 当性"と命名可能な因子か ら構成 され,それぞれ満足で きる信頼性 を備えた下位尺度か ら成 り立っている ことが示 された。

これらのうちで第2,3及び第 5因 子は政治に関わる際の個人の能力に対する自信を表 し,他,第 1因 子や第 4因 子は項 目の内容か ら見て,政治システムに対する評価が含 まれていることか ら,これらの間に は若干の意味的な相違が認め られるように思われる.前 者の方が より限定 された意味での政治的自己効 力感 を表 し,後 者は自己効力感 を発揮する領域である政治システムそれ自体が個人的影響力を受け付け

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大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響

Table I Factor analysis for the Sense of Political Self-Efficacy Scale

207

No  項 目 Fl    F2    F3    F4    F5   hi2

18 自分 の よ うな若者 が積極的 に政治 と関わつた  809‑。 018‑。006‑.166‑。 158。708

として も,政治 のあ り方 は変 わ ることはない

16 自分 の よ うな若者 の要望が政治 に反映 され る  695‑。 045 011‑。 145‑.082.512

見込み はない

20 世の 中は少数 の権力者 によつて動 か され てい  667‑.084‑。 141 .069‑。 148.498 ,若者 の声 を政治 に活 かす こ とは難 しい

12 政府や行政機 関には何 を言 つて もむだだ と思 .553‑。 023‑。 226‑。 159 037.384

14 政治 とい うもの♯個人の力ではどうすること  514 .049 .013 .019‑.035.269 もできないと感 じる

17 自分 の政治 に対す る考 えをはっき り表 明で き  .019 .857 .167 .134 2151828

13 国を三分す るよ うな政治問題 に対 して 自分 な  093 .540 .199 .158 .389.515

りの判 断 を下す 自身がある

15 必要 と思 つた ら,権力 を持つ人 に対 して も ど .065 445 .039 .H8‑.032.219

ん どん意見 を述べ るこ とができ る

25 各党の考 え方や理念 の違い をあ る程度説 明で ―。196 .238 876‑.152 .234.941

きる

27 自分 と同 じくらいの年齢 の人 と比べて 自分 は .057 .205 490 071 .397.448

政治 に関す る知識 が豊 富であ る

22 外交 の よ うな身近 に感 じられ ない政治 問題 を  090‑.078 .166‑.542‑.060.339

真貪1に考 えるこ とは意 味がない

21 有権者 の一票 は,国の政治 を動 かす最 も大 き .186 .039 305 466‑.115。 360 な力 で ある と思 う

24 政治 の ことはその道 のプ ロに任せ てお けば よ .013‑.196 .104‑。 408 004。 217 い と考 えてい る

19 世 の 中の仕組み は複雑 だが,みんなが積極 的 .240‑.045 j020 .400 085。 227 に意見 を出せ ば暮 らしよい世 の 中にな る

26 自分 の よ うな人 間には政治 の こ とは遠 くの世 .252 .026‑.187‑.011‑.445.297

界 ので きごとの よ うに見 える

11 自分 には国政選挙で投票す る資格 が十分 ある .020 .259 182 .397 .413.429

と思 う

28 どんなに努力 して も自分 には政治 のあるべ き  104‑.082‑。 010‑。 080‑.395。 180

姿 を考 える力が不足 してい る Eigenvalue

Contributi on(%)

2.38  1.47  1.35  1.22  1。 03 13.24  8.17  7.49  6。 76  5。 73

Fl:「無 力感J,F2:「判断力」,F3:「知識」,F4:「影響 力」,F5:「正 当性」

(6)

るような可変性 を持 った柔軟 な対象であると認識 しているか どうかに関わつている。その点か ら言えば,

第 1因 子 として 無力感"と命名 可能な測定項 目のグループが まとまったことは,大学生における政治的 自己効力感 を考える場合に,現今の政治システムが個人の力では どうすることもで きないほ どの巨大な パ ワーを持ち,個人が無為無力な存在で しかないことを強 く認識 しているという面 を考慮 に入れる必要 があることを示唆 している.ま た,狭義の政治的 自己効力感 を構成 しているのは,政治に関する意志決定 を主体的に遂行 した り,一定 レベル以上の政治に関する知識 を所有 した り,政治に参加する資格が十分あ ることを認識 した りとい うような積極的な行動 を導 き出す 自己信頼感情であることが推測 される.そ の 意味で。個人がある状況において必要な行動 を効果的に遂行で きる可能性の認知 を指す 自己効力感概念 が想定す る内容 に対応 した要素をとくに第 2.3及 び第 5因 子は表現 していると考えられ,内容的には内的 政治的有効性感覚 と同等であると言えよう.

次に,政治的 自己効力感の各下位尺度 と政治に対する興味 。関心 ,政 治に対する主観的距離感および特 性的 自己効力感 との間の相関を算出 した結果 をTable 2に示す.

Table 2  Pearsonis correlations between the Sellse of Political Self‐ Erlcacy and the Political lntere飢, the Suttective Sense ofDistance toward Politics and the Generalized SeliErlcacy

無力感 判断力   影響力 正 当性

政治 に対す る興 味・ 関心 政治 との主観 的距離感

011    .337**  .256**  .313**  .480**

214** .164*  ―。107   ‑.257**  ―。341**

特性 的 自己効力感(簡易版) .017 .394**  .212**  .036    .249**

政治に対する興味・関心"は, 無力感"以 外のすべての政治的 自己効力感の下位尺度 と有意な正の相 関を示 している。逆に, 政治に対する主観的距離感"は ,政 治的自己効力感のうちで 無力感"と は正の,

判断力"な 3つ の下位尺度 とは負め,それぞれ有意な相関を示 している。また,簡易版特性的自己効力 感との間には, 無力感"と 影響力"を除 く政治的自己効力感の下位尺度 と有意な正の相関が得 られている。

政治的自己効力感 を構成する因子の うちで 無力感"を除 く4因 子で政治的関心 との間に正の有意な相 関が示 されたことは,広い意味での政治的行動 に取 り組 もうとする個人の能力に関する肯定的な評価的 感情 は政治に対する関心の高 さと結 びついていることを意味 している.政 治的 自己効 力感 を構成するほ とんどの因子が ,政 治に対する主観的距離感 と期待 された方向での有意な相関を示 したことと合わせて,

本研究で作成 した政治的 自己効力感尺度 には妥当性があると見な しても差 し支えないことが示 された と いえる。なお,政治的自己効力感を構成する因子のうちで 無力感"因 子が政治的関心 と無相関であつた ことは,大学生においては双方の間の関係が独立 していることを示 し,無力感は政治的関心の レベルの如 何 に関係な く存在 していることを示 している。さらに,簡易版特性的自己効力感 と狭義の意味での政治的 自己効力感因子 との間に有意な正の相関が認め られたことは,政 治的 自己効力感が内容的に特性的 自己 効力感 と同質の心理学的傾向を測定可能であることを表 している。

(7)

大学生の政治不信 に及ぼす政治的自己効力感の影響

次 に政治的 自己効力感の各因子得点の性差 と学年差 を調べ るためにt検定 を行 った結果 をTable 3に 示す.

Table 3 Sex and the grade diflerences in the Sense of Political Self-Effrcacy

209

無力感 判断力   影響力 正 当性 男性 (N=57)

女性 (N=140) t値

.012    .273    .176

.。 005   ‑。 109   ‑。 071

‑。 115   2。 578*  1.684

.148    .268

‑.059   .107 1.679   3.421**

2年  (N=135)

34「 (N= 62)

t値

.013 .104

‑.819

.011

‑。 050 .400

.105   ‑。 014   ‑.098

‑。 203    .004    .191 2.095*  .149  ‑2.963**

*・・・pく.05,  **・・・p〈.ol

Table 3か , 判断力"と 正当性│に 関 しては男性の方が有意 に因子得点が大 きく,政 治的な意志決 定 を行 う際に自分が持つ判断力 に自信 を示す とともに,政 治に参加する正当性 をより強 く自覚 している と言える.ま ,2年生の方が3年生 よ りも 知識"得点が高 く,逆 に 正当性"得 点は3年生の方が高 かった.

2.政 治不信の構造

政治不信尺度 についてはすでに原田 (2003,2004)な どで 政治過程の不透明性"と 担い手の反役割 行動"と命名可能な 2つ の因子か ら成 り立っていることが指摘 されているが ,今 回の被験者に関 して も同 様の構造が確認 されるか どうかを確かめるために,政 治不信尺度 27項 目への評定結果に基づいて主因子 法による因子分析 (varimax回転)を 行 った。固有値が1.00を超えることを基準 として因子 を抽出 したと ころ,2つ の因子が見出された (Table 4).

第 1因 子は 国民の要求や願いを真剣 に くみ取 ろうとする政党はない", 選挙の公約 を真剣 に果たそう とする政党はない", 政治家 とは言い訳ばか りが上手で自分の非 を認めない人のことを言 う1, 立場 を悪 用 して汚職など不正な行為 をする政治家ばか りである"な どの項 目で負荷量が高 く,政党や政治家など政 治の担い手が期待 された役割 に違反する行為 をとっているとい う認識 に基づいた不信感情を表 している と解釈可能であるので, 担い手の役割期待違反行動"と命名 した.第 2因 子は, 国の政治に関わる重要事 項が非公開の名の下に国民に隠されている", 「カラ出張」や「官官接待」など,政府のえらい人は税金 を 好 きなように使 つている", 政府は実際にどの ように政策 を具体化 しているのかを国民 に伝 えようとし ていない"な どの項 目で負荷量が高 く,政治の進行過程 に関する情報が開示 されていないことに起因する 不信感情 を表現 していると考えられるので, 政治過程の不透明性"と命名 した.こ れ らの2因子は原 田

(2003,2004)な どで見出された因子 にほぼ対応 している.

なお,政 治不信の各因子得点には性別・学年 とも有意な差は見出されなかった.

(8)

Table 4 Factor analysis for the Sense of Political Distrust Scale

No項 Fl F2   hi2

20 国民の要求や願いを真剣 にくみ取 ろ うとす る政党はない

23 選挙の公約 を真剣 に果たそ うとす る政党はない

28 政治家 とは言い訳ばか りが上手で 自分の非を認めない人のことを 言 う ̲

30 立場 を悪用 して汚職 な ど不正な行為をす る政治家ばか りである

25 国会議員には国民の代表 とい う自覚を欠いた人 しかいない

17 選挙の公約 を守ろ うとす る政治家は必ず存在す る

22 議員の海外視察などは公費のムダ使いにすぎない

21 国の政治 に関わ る重要事項 が非公 開の名 の もとに国民 に隠 されて 217 602 .410 09 い る「カ ラ出張」や 「官官接待」な ど,政府 の え らい人は税金 を好 き .354 .591 .474

なよ うに使つている

19 自分の言動に責任 を持たない政治家が多い

12 政府 は実際にどのよ うに政策 を具体化 しているのかを国民に伝 え よ うとしていない

06 政府 は 自分の失敗のツケを国民に押 しつけてばか りいる

13 政治家は立派なことを言つても公約 を実行 しようとしない

11 政党は選挙に勝つ ことだけが政治だ と思つている

15 国民の 日の届かない ところで税金が使われている

04 名誉や地位のためだけを考えて政治家になろ うとす る人物が多い

18 官僚は政治家や大企業のことばか り考えている

.667  .281  .524 .653  368  .562 .630  .257  .463

610  .335  .484 .578  .324  .439

‑。 516 ‑.050  .269 .503  .268  .326

.395  .520  .426 .101  496  .256 .336  .493  .356 .384  478  376 .342  .475  .343 .153  .472  .247 .363  .452  .336 .362  .428  .314

26 今 あ る どの政党 も世 の 中を よい方 向に変 えることはで きない

29 学歴 がな くて も優れ た政治家 は与野党問わず に存在す る ない

10 政治家 は国民の願 い をかなえる どころか,裏切 るよ うな行為 ばか りしてい る

01 政治家 は 自分の金儲 けのた めに 自分勝手 な ことばか りしてい る

03「諫早湾干拓事業」問題 でわか るよ うに,国は 自分 の責任 を認 め よ うとしない ものだ

08 与党 にな りさえすれ ば よい とい う政党は信用できない

02 どの政党 も似通 つていて大 した違 いはない

05 党の基本政策 を曲げてまで他 の政党 と一緒 になろ うとす る態度 は 問題 だ

14 信念 もな しに ころころ と名 前 を変 える政党 は信頼 できない

16 芸能人や スポー ツ選手 を候補者 に仕 立て人気 を上 げ よ うとす る政 党 は厳 しく批半Jされ るべ きであ る

390  269  225

‑.315  107  .111 .493  .561  .558 .443  .466  .413 .369  .374  .276

‑。 067  .344  123 .064  .312  .101

085  293  .093 .177  .257  .098 .152  .237  .079

Eigenvalue Contribution(%)

7.78 0。 91 28.81 3.35

Fl:「担い手の役割逸脱行動」,F2:「政治過程の不透 明性」

(9)

大学生の政治不信 に及ぼす政治的自己効力感の影響

3.政治的自己効力感 と政治不信 との関連性

政治的 自己効力感の各要素が政治不信の 2つ の側面 にどの ような影響 を与えているのかを明 らかにす るために,政治不信の 2つ の因子得点 を基準変数 ,政 治的自己効力感の 5つ の因子得点 を説明変数 として ステップワイズ方式による重回帰分析 を行 った (Table 5).

Table 5か らは,まず第 1に, 無力感"がいずれの政治不信の要素 とも有意な正の因果的連関を示 して いることが分かる.このことは,政治に対する無力感 を強 く感 じていることが政治不信 を全体 に強 くする

Table 5 The results of the multi-variate regression analysis ( B )

211

担い手 の役割期待違反   政治過程 の不透 明性 無力感

判断力 影響力 正 当性

.459**

.106 .073

‑。 232**

.002

.466**

.056

‑。 025

023

235**

調整済R2 .320** 208**

*・・・p〈.05,  **・・・pく01

方向 に働 いていることを意味す る.すなわち ,大 学生 においては,無力感 を感 じていることが政治不信 の 重要 な原 因 となっている と考 え られる.ま た第2に,政治的 自己効力感 を構成す る因子 の うちで 正 当 "が 政治過程 の不透明性"に対 して正の有意 な効果 を示す一方で, 影響力"が 担 い手の役割期待違 反行動"に負 の有意 な効果 を示 してい ることである。この ことは,部分的ではあるが政治不信 の内容 に応 じて政治的自己効力感が寄与 している役割が質的に異なっていることをうかがわせる。すなわち,政治に 関 して個人的に影響力 を行使することが とて も困難であるとして悲観的な見方 をすることが ,政 治家や 政党など政治の担い手が期待 された役割 を十分に果た していないことか ら生ずる不信感 を部分的に説明 している。また,政治に参加する資格が十分備わ っているとする正当性の感覚を持つことは, 担い手の役 割期待違反行動"を 起因 とする政治不信 にはまった く影響 していないが ,政 治の実行 プロセスに関する情 報開示が不足 していることに視点を当てた政治不信 に対 して統計的に有意な寄与をな している.

以上か ら,本研究で作成 した政治的 自己効力感尺度が政治システムに対する無力感 をも含んだ尺度で あることを前提 として考えた場合, 無力感"が大学生の政治不信 を十分に説明 し,政治不信の重要な原因 となっていることが示唆 される。また,狭義の政治的 自己効力感に関 しては,必ず しも一貫 した結果は示 されなかつたが, 担い手の役割期待違反"に は自己の影響力に関する否定的な認識が影響 を与え,他 方,

政治過程の不透明性"に は自分 自身を政治に参加する資格があると肯定的にとらえている傾向が影響を 与えていて,政 治不信の質的な相違に応 じて異なった形で寄与 している可能性が示唆 されたといえよう.

(10)

1.政 治的自己効力感の構造について

本研究においては,まず ,政治的関心の高 さが政治不信のある側面 と正の因果的連関を示す という先行 研究 (原田,2004な ど)の 結果を手がか りとして,また,政 治心理学 における内的政治的有効性感覚への 着 日とい う流れを受けて,新たに政治的 自己効力感 という概念 を設定 し,測定尺度の作成を第 1の 目的に,

さらに,政治的 自己効力感 と政治不信のそれぞれの要素間の因果的連関の様相 を明 らかにすることを目 指 して来た。

政治的 自己効力感に関 しては, 無力感", 判断力", 知識", 影響力"お よび 正当性"と命名可能な 因子か らなる測定尺度が開発 された.各 因子に含 まれる項 目内容 を検討 したところ,本研究で見出された 因子の うちで'判断力", 知識"お よび 正当性"の3つの因子 は,内的政治的有効性感覚に対応する内 容であ り,これらの集合体が政治的 自己効力感の本来的な内容 を形作 つていると見なす ことがで きる.残 る因子のうちで 影響力"に は外的政治的有効性感覚に近い内容の項 目が含 まれていて,その点では狭義 の政治的自己効力感 とは相対的に区別することが可能である.ま, 無力感"は内容的には政治的自己効 力感の対概念 としての働 きを持 ち,適切 な政治的自己効力感 を保持することを妨げる役割 を果たすので はないか と考えられる.こ のように考えて見るならば,本研究で作成 した政治的 自己効力感尺度は,本 来 の意味での効力感 を測定する部分 とやや異質な意味 を持つ部分 とに分離することがで きるように思われ .このことは,政治的自己効力感の定義 とともに尺度構成についてさらなる検討が必要であることを示 唆する.

また, 無力感"以 外の因子得点が政治に対する興味・関心 との間に正の相関を示 していたことか らう かがえるように,政治的 自己効力感尺度は概ね内容的に妥当な尺度であると見なすことがで きようが,同 時 に自己効力感 という概念か ら見て適切であるとは言い切れない要素 をも含んでいると考えることがで

きる.し たがつて,政治的 自己効力感の定義 を一層明確 にするとともに,よ り妥当性の高い尺度 として新 たに整備することが今後の研究の展開にとつて緊急の課題であると考えられる.

2.政治的自己効力感 と政治不信 との連関について

Tablё 5に示 したように,政 治的 自己効力感 を構成する因子は,政 治不信の内容・領域 に応 じてそれぞ

れ異なる働 きをしていることが明らかにされた.す なわち, 無力感"はいずれの政治不信に対 しても最 も 有力な説明因であ り,他 方, 影響力"は 担い手の役割期待違反"に のみ, 正当性"は 政治過程の不透 明性"に のみ,しか もそれぞれが異なる方向で有意な効果を示 していた。

これらのことか ら, 無力感"が大学生の政治不信 を説明する重要な規定因であると考えられることや, 政治不信の質的な相違 に応 じて政治的 自己効力感が異なつた効果 を与えている可能性 を指摘することが で きる.こ の うち:先述 したように, 無力感"は 厳密 な意味では政治的 自己効力感 とは質的に相違する概 念である可能性が高いことを考えるならば,注目すべ きは 影響力"と 正当性"が正負異 なった形で政 治不信 に影響 を与えている点である. 影響力"に は外的政治的有効性感覚に準ずる内容の項 目が含 まれ ていることか ら,必ず しも明確 な形で述べることはで きないが ,政 治的自己効力感を構成する要素の うち あるものは政治不信の異なった側面にそれぞれ反対方向の寄与をな していることは興味深い.

以上か ら,一日に政治不信 と呼ばれている感情であつても,情報開示の不足に視点を当てた場合に発生 す る不信感情や ,担 い手が期待 に反 した行動 しか とらないと認知することによつて生ずる不信感情 とい うように,内部的には異なる意味 を持 った下位構造 に分離することが可能であ り,その上でそれぞれ異な る意味 を持つ政治不信感情の各要素に対 して政治的 自己効力感の構成要素が部分的にではあるが異 なつ

(11)

大学生の政治不信 に及ぼす政治的自己効力感の影響

た方向の因果的連関を示 していることが明 らかにされた.このことは,政 治不信形成の過程では,政治的 自己効力感が高いことが契機 となって政治不信 を強 く感ずるようになる場合 と,逆 に政治的 自己効力感 が低いことが政治不信 を感 じることを促進する場合 とが混在 しているということを意味する.

本研究で作成 された政治的 自己効力感尺度は政治的関心の高 さお よび政治 との主観的距離の短 さと結 合 していることか ら,高得点者は政治に対する興味・関心が豊富で ,政治 と自己の世界 とが一体になって いるとの実感 を持つ者たちであることが推測 される.彼 らの感ずる政治不信は,政 治の進行過程に関する 情報開示が十分ではな く,不透明さを感ずることに由来する政治不信である.政 治への関わ りを当然視す る態度 を持 っている場合 に,政 治の担 い手の側が意図的か無意図的かであるにかかわらず重要な情報 を 隠蔽 しているかのような印象 を持たされて しまうときに,政治不信感情が容易に発生することになる.近 年政治の世界では, 参加"と 分権"が唱道 されるようにな り,このいずれもが個人の政治に対する関与 とそれに伴 う自己責任 を強調する方向に作用 しつつある.ま た,政治の世界ばか りではな くさまざまな社 会的セクターの活動状況に関する情報開示 と説明責任が次第に浸透 しつつある.こ うした中にあって,か りに政治に関する情報の公開や説明が とりわけ政治家や政党 ,政府 ,官僚機構 といらた政治の担い手の間 で十分 に意識化 され,実 際にさまざまなメデ イアを通 して国民全般 に情報 として提供 されるようになる とすれば, 政治過程の不透明性"に由来する政治不信 は,と くに政治的自己効力感が高い者にとつては政 治不信感情 を払拭する方向に結びつ くことが期待 される。刻々と移 り変わる政治状況にあって,今現在 と い う時点での大学生の政治不信 に関する動向を政治的自己効力感 という観点か ら精査することが必要で あろう.

他方, 担い手の役割逸脱行動"に 端 を発する政治不信は,政治的 自己効力感の うちで 無力感"と は正 , 影響力"と は負の有意な因果的連関を示 していた.一 部についての結果ではあるが, 無力感"や

響力"といった外的政治的有効性感覚に関連する政治的自己効力感の要素が,認知 された政治の担い手の

行為 に対す る否定的評価 に起因す る政治不信 と結 びついていることは興味深い.外的政治的有効性感覚 は政治 システムが個人の要求を受け付 けるような柔軟 な組織であるといったシステムに対する信頼感 を ベース として成立 していることを考えるならば,政 治家や政党など政治の担い手が期待 に反する行為 を とる存在であるとい う不信感情がシステムに対す る不信 とい う形 をとって表れていることは十分 に説明 可能である.

以上の考察 を踏 まえて大学生の政治不信 に政治的 自己効力感が どの ように関わつているかについての 仮説的な構図 を描 くとすれば,政 治過程の不透明性 に由来する政治不信は内的な意味での政治的 自己効 力感が高いことと結びつ き,他方 ,担 い手の役割逸脱 に向か う政治不信は外的な意味での政治的自己効力 感が低いことと結びついていると言えるであろう。政治不信が単体 とい うよ りは不信感情が向けられる 対象や領域 に応 じて異 なった要素に相対的 に分離可能であ り,このことが政治的 自己効力感の下位構造 との因果的連関の相違 という形で間接的 に証明 された と考えることがで きる.政治不信の形成 に関与す る有力な心理的要因として政治的 自己効力感 とい う概念の有効性が確認 された ところに本研究の意義が 存在 しているといえよう.

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213

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Table  3  Sex  and  the grade diflerences  in  the  Sense  of Political  Self-Effrcacy
Table  4  Factor analysis  for the  Sense  of Political Distrust  Scale No項 目 Fl F2   hi2 20  国民の要求や願いを真剣 にくみ取 ろ うとす る政党はない 23  選挙の公約 を真剣 に果たそ うとす る政党はない 28  政治家 とは言い訳ばか りが上手で 自分の非を認めない人のことを 言 う ̲ 30  立場 を悪用 して汚職 な ど不正な行為をす る政治家ばか りである 25  国会議員には国民の代表 とい う
Table  5  The results  of  the  multi-variate  regression  analysis  (  B )

参照

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