1.はじめに
近年の学校現場を取り巻く課題は複雑化・多様化している。文部科学省「児童生徒の問題行 動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば、不登校児童生徒割合について、 平成5年度と平成26年度の比較で、小学校で2.3倍、中学校で2.2倍に増加している。小中学校 で障がいに応じた特別な指導(通級指導)を受ける子どもの人数については、平成5年度と平 成26年度の比較において、小学校で約24倍、中学校で約6倍に増加している。また、TALIS2013 (OECD 国際教員指導環境調査)によれば、日本の中学校教員の1週間当たりの勤務時間は、 加盟34カ国地域で最長の53.9時間となっている。さらに同調査では、 日本では研修へのニーズ が全体に高いが、業務スケジュールと合わないなど、多忙であるがゆえに参加が困難な教員が 86.4%に上るとしている。 一方で、教職課程を履修するが、将来教員を志望しないと考える学生が比較的多く存在する ことが指摘されている。文部科学省(2016)によれば、公立学校教員採用試験の倍率がこの10 年で下っている中で、国立教員養成大学・学部(教員養成課程)卒業者の平成28年3月卒業者 教員就職率は58.9%(内65%が正規採用)であり、この5年間、減少が続いている。公立学校 教員の大量退職は続いており、小・中・高の教員採用数が年々増加の状況にあるにも関わらず、 教員以外の職に就職する者が増加している。教職課程学生の教職志望意識の形成に及ぼす影響
―教師効力感、自己効力感、教職興味の視点から―
丸
岡 俊
之*
Influence on the Formation of a Sense that
Teacher’s Course Students Desire to be a Teacher:
From the Viewpoint of Teacher Efficacy, Self Efficacy
and Teaching Profession Interest
(MARUOKA Toshiyuki)
*近畿大学教職教育部教授 〔キーワード〕教師効力感、自己効力感、教職興味、教職の魅 力、教職の課題
本学の教職課程を履修する学生にあっても、教職志望以外の職を当初から希望する者や、途 中で教職から他職に進路変更をする者など多様な進路実態がある。 こうした背景には、様々な要因があると思われるが、すでに述べた学校現場を取り巻く課題 の複雑化をはじめ、教育課題に対する学校や教師の責任問題が、マスコミを通じ報じられてい ることも、学生の進路選択に影響していることと推察される。 しかし、いつの時代にあっても教育の課題は存在するもので、環境改善への努めは怠っては ならないが、教職には他職にはない魅力が存在することを忘れてはならない。教員養成課程に あっては、現実的課題への対応と同時に、教育という行為の尊さ、やりがいなどを適切に伝え ていく必要がある。 そこで、教職という仕事について学生がどのような感情を持っているのか、また、教職を志 望する意識がどのように形成されるかについての実態を明らかにすることで、教員側の学生へ の指導の際、踏まえるべき前提や事項を明らかにしたい。 本稿では、教職課程を履修する学生を対象に、教師効力感、自己効力感、教職興味の観点か ら質問紙調査を実施し、その結果を分析したものを報告する。今後、教職を志望する学生への 指導に資するものになることを願っている。
2.自己効力感と教職興味
一般に、自己の進路を切り開くにあたって、自己効力感(Self Efficacy)を高めることが有 効であることは、先行研究により明らかになっている。 Bandura(1977)は、 社会的認知理論を提唱したが、 中でも自己効力感を重視し、 これを 「課題に必要な行動を成功裏に行う能力の自己評価」と定義し、自己効力感は、「達成経験(成 功体験)」「代理経験(他者の達成の観察等)」「言語的説得(励ましの受け入れ等)」「生理・情 緒的状態(生理的喚起の情報)」という4つの情報源から影響を受け形成・変容されるとして いる。その後、自己効力感は進路関連領域に応用され、Hackett & Betz(1981)らにより、「自己
効力感は進路選択行動に直接的に影響を与える」とし、この知見は現在のキャリア教育に大い
に活用されている。
さらに、教師教育の領域にも用いられるようになり、Ashton(1985)により教師効力感(teacher
学習や発達に望ましい変化をもたらす教育的行為をとることができるという教師の信念」であ るとし、実際に教師自身の教育的行為を規定するとされている。 先行研究において、 桜井 (1992)は「教師志向者は教師効力感が高い」としている。 今回の調査では、進路選択に関する自己効力感や教師効力感が学生の教職志望の意識形成に 大きな役割を果たすものと仮定し、教職志望への意識形成と強い関係性をもつとされる教職興 味度との関連を検討した。
3.調査の目的と方法
目 的 学生の進路希望別に、教師効力感、自己効力感、教職興味度について、相関関係と有意差を 見る。このことによって、教職興味度という教職志望の意識の形成に、教師効力感や自己効力 感が与える影響度、及び進路希望別に自己効力感や教師効力感の形成状況の相関を調べる。 また、職業適性についても、進路希望別に傾向を調べる。さらに、自由記述により、教職の 魅力、教職という仕事の課題や問題点を問い、意識形成の具体的要素について分析する。 なお、調査上の尺度については、先行研究によるもの、または先行研究を踏まえ加工したも のを使用した。 方 法 ① 調査対象 調査の対象者は、本学教職課程履修者のうちの165名で、平成31年1月に調査を実施した。 内訳を進路希望状況とともに、表1に示す。 表1 対象者の内訳 人数 進路希望状況 計 女子 男子 学年 未定 その他 大学院 企業 教職 21 1 0 17 40 79 17 62 1年 9 1 1 10 25 46 9 37 2年 4 1 1 5 7 18 6 12 3年 0 1 6 12 3 22 2 20 4年 34 4 8 44 75 165 34 131 合計② 調査方法 「教職に関する学生意識調査」として、質問紙調査を行った。 属性については、学年、性別、進路希望状況を、また、教職に関する啓発的経験として、教 育実習、介護等体験、学校インターンシップ、学習ボランティア、塾・家庭教師、部活動支援、 自治体主催教員養成講座等の参加状況について、さらに進路に関するガイダンス等の参加状況 についても問うた。 次に、以下の5点について、5 件法により質問した。 1)自尊感情 尺度は、「心理測定尺度集Ⅰ」山本眞理子編(2001)の10項目を用いた。 2)職業適性 尺度は、ホランドの VPI 職業興味検査の考えを踏まえ18項目を作成した。 3)教職興味 尺度は、若松(1997)による尺度をもとに10項目を作成した。 4)進路に関する自己効力感 尺度は、浦上(1993)による「学生の進路選択に対する自己 効力に関する研究」の30項目をもとに、12項目を作成した。 5)教師効力感 尺度は、山口(2010)らによる尺度をもとに12項目を作成した。 最後に、自由記述により、次の3点についての考えを問うた。 1)教職を目指している人に対して、教職の魅力について 2)教職以外を目指している人に対して、教職の課題や問題点について 3)教育実習の経験者に対して、実習の前後における教職への意識の変化について
4.調査結果
進路希望別職業適性 進路希望先の母数の多かった、教職(教師)志望者、企業志望者、未定者の三者についての 職業適性を、ホランドの職業選択理論に基づきパーソナリティの6タイプに分け、「RIASEC」 モデルを図1のように作成した。各傾向の数値は、3 ~15の間で示される。 吉田(2007)によると、各傾向について次のように考えられている。 R(Realistic)は物や道具、動物などを相手に、はっきりと順序立てた系統的活動を好む。 I(Investigative)は、観察による物理学的、文化的現象の抽象的、創造的な研究活動を好む。 A( Artistic )は芸術的作品をつくるため、形として、言葉として表現し、曖昧且つ体系づけ られない活動を好む。S( Social )は人を訓練、成長させたり、教えたりする活動を好む。E( Enterprise )は組織目標の達成、 または経済的な利益のため人を動かす活動を好む。C ( Conventional )は定まった計画に従って記録データを組み替えたり、データ処理を行うなど 順序だった活動を好む。 今回の調査結果を見ると、教職志望者は、S(社会的)傾向が最も強く13ポイント、次にR (現実的)傾向が続き、比較的低いのが、C(慣習的)であった。Sのソーシャルスキルやサー ビスの適性が高く出て、Cのルーティン的ビジネスの適性が低く出ている事になる。 企業志望者は、他の志望者に比して、C(慣習的)傾向が最も強いが、S(社会的)、I(探 究的)傾向も教職志望者と大きな差異はない。 未定者は、他の志望者に比して、A(芸術的)の項目を除き、いずれの項目も弱く出ている。 特に、E(企業的)項目の管理的ビジネスに関して弱い傾向があった。 山口ら(2010)によれば、教職についての特徴的な傾向を挙げ、小学校教員が「S・R・I」、 中学校教員が「S」、高等学校教員が「S・R・I」であるとしており、 教員に共通する興味 は「S」と予想されるとしている。このことは、今回の調査結果の教職志望者の傾向とほぼ一 致するが、対極にあるとされる「R」も比較的強く出ていることは、学生の所属(理工系学生 図1 進路希望別職業適性
など)の影響などの要素が考えられる。 進路希望別に見た、教師効力感、自己効力感、教職興味の相関関係 ① 教職志望者の相関関係 次に、教職を志望する学生の意識を教職興味として、教師効力感、自己効力感との相関関係 から、意識形成の要素を検討する。 教職志望者を対象とした各質問項目の内部一貫性を、クロンバックα係数で求めたところ、 教師効力感尺度(12項目)のα=0.920、自己効力感尺度(12項目)のα=0.806、教職興味(10 項目)のα=0.806であった。いずれも、0.8を超えていることから、 尺度としての一貫性は高 く妥当性があるものと見ることができる。そのうえで、これらの相関関係を表2に示した。 相関係数の結果から、教職を志望する指標としての「教職興味」は、「教師効力感」「自己効 力感」との間で、極めて強い相関関係にあることがわかる。したがって、自己効力感や教師効 力感を高めることが、教職志望への意識を強くすることがわかる。また、自己効力感と教師効 力感は正のやや緩やかな相関関係にある。 ② 企業志望者及び未定者の相関関係 企業就職希望者の教師効力感尺度のα=0.847であったが、自己効力感尺度、及び教職興味尺 度については、いずれも0.8未満で、尺度としての一貫性は見いだせなかった。また、進路未定 者についても、 教師効力感尺度のα=0.841であったが、 他の尺度については、0.8未満だった ため、これらの相関関係は求めなかった。 表2 教職志望者についての相関関係 教職興味 自己効力感 教師効力感 教職志望者 0.781 0.545 ― 教師効力感 0.791 ― ** 自己効力感 ― ** ** 教職興味 上三角 相関係数:r値 下三角 n.s:p>0.05 *:p<0.05 **:p<0.01
進路希望別の教師効力感についての有意差 「教師効力感」については尺度としての一貫性があることから、 教職志望者、 企業志望者、 未定者の三者についての差をt検定により見たところ、表3、表4、表5のようになった。 表3のとおり、教職を志望する学生の教師効力感は、企業志望者に比して有意に高い数値が 出ていることから、教職に対する自信を比較的高く持っていることがわかる。 表4から、教職志望者は未定者に対しても、 教師効力感を有意に高く持っていることがわ かった。一方で、企業志望者と未定者の間における教師効力感について、有意な差は無かった。 このことから、教職志望者は他の進路希望者に比べ、有意に高い教師効力感を持っていること がわかった。 教職の魅力に関する意識分析 教職を目指している人を対象に、教職の魅力についての考えを自由記述で回答を求めたとこ ろ、64人からの回答があった。 この自由記述文のデータを、KHCoder を用いて読込み、 テキ 表3 教師効力感に関する教職志望者者と企業志望者の差 判定 p値 t値 平均差 企業志望者平均 n=44 SD=0.53 教職志望者平均 n=75 SD=0.67 * 0.046 2.019 0.23 3.43 3.66 教師効力感 n.s:p>0.05 *:p<0.05 **:p<0.01 表4 教師効力感に関する教職志望者者と未定者の差 判定 p値 t値 平均差 未定者平均 n=34 SD=0.50 教職志望者平均 n=75 SD=0.67 * 0.034 2.150 0.27 3.39 3.66 教師効力感 n.s:p>0.05 *:p<0.05 **:p<0.01 表5 教師効力感に関する企業志望者者と未定者の差 判定 p値 t値 平均差 未定者平均 n=34 SD=0.50 企業志望者平均 n=44 SD=0.53 n.s 0.737 0.337 0.04 3.39 3.43 教師効力感 n.s:p>0.05 *:p<0.05 **:p<0.01
ストマイニングを行った。 総抽出語数1,150、うち使用語数522。異なり語数281、うち使用語数205であり、文章92ケー ス、段落64ケースが得られた。 頻出語のうち上位10語(頻度5以上)を表6に示した。 次に、集計単位と抽出語の選択では、語句の最少出現数を3、描画数50と設定し、共起ネッ トワーク・サブグラフ(randam warks)を作成したところ、図2のように示された。 図2を見ると、「教職の魅力」について、最も多い意見が、「自己を高め、子どもの成長に関 わることができる」であり、「近くで支え見守る」や「人との出会いが豊富」などが続く。 こ れらを総合してみると、子どもたちとの直接のかかわりや出会いの中で、成長していく様子に 表6 教職の魅力に関する自由記述の頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 14 生徒 14 人 21 自分 29 子ども 33 成長 5 教える 5 可能 8 人生 8 将来 10 人間 図2 教職の魅力に関する自由記述分析のサブグラフ検出
触れられることへの期待がうかがえる。 次に、「社会を支える人材の育成」や「経験生かし人 生に影響を与える」では、教師という仕事に対する使命感や自らその立場になることの誇りが 見て取れる。さらに、「学校で生徒の考えを知る」「勉強など教えられる」は、学校という場へ の親しみや、子どもたちに教えるという行為に魅力を感じていることがわかる。 学校現場には様々な教育課題があるが、教師志望者が教職の魅力を概ねポジティブに捉え、 積極的に自ら子どもに関わろうとする姿勢を持っていることが分かった。 教職の課題と問題点に関する意識分析 次に、今教職を目指していない学生に対し、教職という仕事の課題と問題点についての考え を自由記述で回答を求めたところ、69人からの回答があった。回答者には進路として、企業や 未定者、その他の学生もいた。この自由記述文のデータを、KHCoder を用いて読込み、 テキ ストマイニングを行った。 総抽出語数1,414、うち使用語数681。異なり語数415、うち使用語数320であり、文章120ケー ス、段落69ケースが得られた。 頻出語のうち上位15語(頻度5以上)を表7に示した。 次に、集計単位と抽出語の選択では、語句の最少出現数を3、描画数50と設定し、共起ネッ トワーク・サブグラフ(randam warks)を作成したところ、図3のように示された。 なお、設問から「教員」「教師」の語は不要と判断し使用しない語とした。 図3を見ると、「教職の課題と問題点」について、最も多い意見が「長い労働時間、自分の 時間無し」である。仕事に取られる時間が多く、プライベートの時間が確保されないと捉えて いる。また「部活動など残業が多い。休みなしでブラック」との意見では、学校現場の過酷な 労働の要因として、 部活動、 モンスターペアレントなどを挙げている。「他職より労働条件が 表7 教職の課題と問題点に関する自由記述の頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 12 多い 13 生徒 15 仕事 17 自分 18 時間 6 授業 7 人 7 教える 8 他 10 子ども 5 残業 5 部活動 6 大変 6 対応 6 少ない
悪い」では、教職の残業代が支払われないことや、残業について限度がなく、現場の状況に応 じて対応しなければならないことへの不満を挙げている。これらは、教職の労働環境の課題と して捉えることができる。 一方で、「授業の自信が無い」「子どもへの不安」「専門性と親の対 応の不安」「大きい責任、立場への不安」は、教職という仕事に対する自分自身の自信の無さ、 不安を挙げたものである。授業で教える専門性の確保や、多様な児童生徒や保護者への的確な 対応、いじめ、不登校などの教育課題への対応など、教師としての責任を全うすることの不安 と捉えることができる。 その他の結果について ① 教育実習経験者の実習前後の意識の変化について 教育実習参加者が少なかったため、主な意見について表8に挙げた。 表8の意見を見ると、自由記述意見分析のの分析結果と重なることがわかる。教育実習 で、教育現場の実態に直面し、教職にやりがいや前向きな意欲を駆り立てられた学生がいる一 方で、課題や問題点を実感し、教職への自信の低下や、適性に疑問を抱く学生もいることがわ かる。 図3 教職の課題と問題点に関する自由記述分析のサブグラフ検出
② 自尊感情に関する調査 自尊感情について、進路別に比較検討したが、有意差を見ることはなかった。
5.おわりに
今回の調査では、進路志望別に見た教師効力感の有意差やその教師効力感が教職興味、自己 効力感とどのような相関関係にあるかの分析、また、学生から見た、教職の魅力・やりがいと 課題・問題点についての自由意見の分析を中心に行った。 教師効力感の調査では、今回は「子どもへの支援・理解」「学級経営」「教科指導」の3領域 を測定の対象として行った。しかし、Bandura(1997)は「教師の職能領域は本来多岐にわた る」 と言っており、中西(1998)は他に「対人関係」「研究運営」「事務処理」などの因子を指 摘している。例えば小学校では今後「プログラミング的思考」の育成という取り組みが必修 化されるが、これなどは論理的思考とともに情報機器の扱いも含まれてくる。これまでの「教 科指導」の範疇として捉えるのか、 新たな職能として捉えるのかによって、調査の領域は異 表8 教育実習経験者の実習前後の意識変容 意見数 教職の魅力・やりがいなど 8 ・子どもにかかわる仕事をしたいと強く感じた。実習では一度も良い授業、学級経営はできな かったが、生徒からの手紙には「先生の授業楽しかった。良い先生になれますよ」などがあり、 子どもたちに響いていたことがうれしかった。 ・授業をする上での知識の大切さ改めて感じた。 ・生徒への教育における責任感が身についた。貴重な時間を使って授業を受けてくれているし、 失敗できないと感じた。 ・大変さや困難さを知れたが、それ以上に生徒との関わりのすばらしさ、授業のやりがいを学 ぶことができた。人間的にも成長できたこともあり教師への気持ちが高まった。 ・より強く教師になろうと思った。大変なこともたくさんあったが、それ以上にうれしいこと や楽しいことがあった。 ・教材研究を深く追求することで楽しい授業づくりができる可能性が広がる。 ・生徒の反応や変化を身近に感じられ教職のやりがいを感じた。 ・拘束時間は長いが結果が目に見えてわかるのが満足。 意見数 教職の課題・問題点など 7 ・授業以外の仕事の方が多く、とても大変な仕事だと思った。 ・一つの授業に対してかかる時間の多さに驚いた。 ・予想以上に難しく大変な仕事だった。やりがいも感じた。 ・自分は生徒を導いていける人間ではないと認識した。 ・必要な能力が多いと思った。 ・自分に向いていると実感したが、「やりたい」と思える仕事かどうかは疑問を抱いた。 ・激務すぎる。仕事内容の過酷さ、休日手当の少なさを問題にしながら改善の動きあまり見ら れないところに絶望を感じる。休みの日が少ないことは趣味の時間や家族と接する時間も少な くなり将来の展望が描けない。なってくる。他に保護者対応や教科の研究、事務を迅速に処理することも求められる。ゆえに 調査領域については、今後研究を重ねていく必要がある。 現時点で、教師効力感が高いことが教職への志向を強くしていることが本調査結果から分 かった。また、相関関係の視点で見れば、自身の教育的行為の信念と言うべき教師効力感と、 教職の魅力ややりがいとしての教職興味は、 強い相関があることから、「なぜ自分は教職を目 指すのか」「なぜ教員をしたいのか」という自身の考えを深化させ、 定着させていくことが、 教職の魅力ややりがいを得ることにつながるものと見ることができる。 「教職の魅力」についての自由意見で、最も意見の多かった、「自己を高め、子どもの成長に 関わることができる」ということが、教師という仕事を目指す最も多い動機であることを示し ていると言えよう。教職の社会的な使命や価値を考える以上に、一番の魅力として、人と人と のふれあいや、触発を強く求めていることが分かる。 一方で、「教職の課題や問題点」の自由意見では、「多忙感」「責任の多さ」「プライベートが ない」と言った意見が多かったが、昨今の報道等から、教育現場の就業時間の過酷さや休日出 勤、教育課題に対する学校や教師の責任問題、こうした状況に対する対価措置がなされてない ことなどが相当に浸透していることをうかがわせる。働き方改革待ったなしである。 今回の調査結果は、学生たちが、教職の持つ魅力を、人間的な触れ合いや切磋琢磨、相互の 成長にあることを理解しつつも、教職の置かれている課題の大きさや、対処することへの自信 のなさなどが、道を阻んでいることを示していると見ることができる。 教員養成課程において、教師効力感や自己効力感を育むことは、容易ではないと言えるが、 本稿の報告結果から見れば、 長年に渡り取り組まれてきた、本学生による自主サークル、「教 職ナビ」の活動は、きわめて意義深いものがある。ここでは、先輩の成功体験に触れたり、学 生相互の意見交換や議論による切磋琢磨、授業や面接の模擬的試行や合宿の実施など、教師効 力感や自己効力感を高める啓発経験の機会を多く得ることができている。我々大学教師も、彼 らの活動のサポート役として、アドバイスを行っているが、あくまでも学生の主体的参加、自 主性が基本であり、この姿勢がなければ効果は現れない。 「なぜ教師を目指すのか」この命題を深め、懸命に答えを出そうとする営みが、 教職興味を 深めることに繋がる。教育は人によってしかなすことはできないのであり、より良き教育のた めには、より良き教師が必要となる。 教職への思いを持って入学した学生が、その思いを継続、拡大し、将来において教育を支え
る一人になることを強く願っている。 参考文献 平成29年度文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410392.htm 平成29年度文部科学省「通級による指導実施状況調査結果」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/__icsFiles/afieldfile/2018/05/14/ 1402845_03.pdf TALIS2013(OECD 国際教員指導環境調査) http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1349189.htm 文部科学省資料 国立教員養成大学・学部関係基礎資料集 H28.9.13 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/077/gijiroku/__icsFiles/ afieldfile/2016/09/21/1377405_9_1_1.pdf
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