現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
1会社法全面改正と関連して一
池
島 宏 幸
六五四三ニー
﹁株式制度に関する改正試案﹂の公表 ﹁社債発行限度暫定措置法﹂の成立へ コ般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法しの出現 会社法全面改正の展開 戦後部分改正の総括と全面改正への出発点としての七四年︵昭四九︶商法改正 戦後商法の連続・緊急改正から全面・根本改正へまとめにかえて
一 戦後商法の連続・緊急改正から全面・根本改正へ
︵1︶ 戦後︑ほぼ五年おきに行なわれてきた商法改正は︑資本自由化の完了︑ ︵2︶景として全面改正を迎えようとしている︒とくに八○年代を目前にして︑
七〇年代以降の資本蓄積条件の変化等を背
新たな段階をめざして新展開がなされつつ
175
ある︒
戦後の大きな商法改正は︑従来︑大体五年おきになされて︑数次の改正︑しかも連続的かつ緊急改正がなされてき
ていたが︑はからずも改正の成立に七年四か月もかかった七四年改正へとつみかさねられた改正の諸矛盾が集約化
し︑ここに戦後商法改正の総括ともいうべき︑全面かつ抜本改正問題が︑とりあげられることとなった訳である︒
経済的な背景としては︑資本自由化第ニラウンド︵一九六七年︵昭四二︶七月1第一次資本自由化i以後一〇年
間︶最終の第五次資本自由化は︑七三年︵昭四八︶五月に抜本的自由化措置がとられるという経済的背景に︑注目し
なけれぽならず︑とくに同年秋以降のオイル・ショックを経て︑翌七四年︵昭四九︶三月に︑商法改正三法が成立︑
四月二日公布された︒これには即時施行の緊急改正部分と一〇月一日施行の監査制度改正部分とからなる︒
七六年︵昭五一︶五月に︑第ニラウソドが完了︵例外四業種を瞬ぎ一〇〇%が原則化︶し︑本格的な企業自由競争
時代へという世界的背景の下での全面的改正問題である点の把握が必要であろう︒
このような戦後の連続・緊急改正の集約としての商法全面改正の進展の客観的な現状分析と︑その新しい方向性の
めざすものを少しでも浮びあがらせれぽと思っている︒
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注︵1︶ 詳しくは︑池島宏幸・増補商法学の現代的課題︵一九七六年刊︶︑同﹁商法改正の動向と論理﹂法律時報一九七六年一〇
月号︑同﹁経済の変動と会社法改正﹂早稲田社会科学研究十六号︵一九七七年刊︶など︒
︵2︶ 会社法の根本改正については︑日本私法学会商法部会シンポジウムで一九七六年︵昭五一︶から翌七七年︵昭五二︶︑七
八年︵昭五三︶と毎年学会の折にシンポジウムのテーマとして取上げられてきた︒筆者も︑全面改正に多大の関心を持つ
て︑毎回その討論に参加し発言し︑その問題性を指摘してきた︒日本私法学会機関誌・私法三十九号︑四十号︑四十一号︒
現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
二 戦後部分改正の総括と全面改正への出発点としての七四年︵昭四九︶商法改正
七四年︵昭四九︶商法改正は︑衆参両院における国会附帯決議をうけて成立した︒この附帯決議は︑前年の七三年
の石油危機の時に出現した独占的大企業のいわゆる買占め・売おしみという反社会的行動に一定の歯止め1民主的
規制1をかける意図をもつものであった︒
︵1︶もっとも︑この七三年七月三日衆議院本会議附帯決議ならびに翌七四年二月二二日参議院本会議附帯決議は︑国会
での改正に対する条件とか制約が附されたものであり︑あるいは国民的レベルでのそれをも反映させて改正法が成立
したものであったともいえるのである︒
しかし︑この改正法が成立するやいなや︑経済界を代表して︑経団連は︑同七四年七月一日﹁商法改正に関する緊
急董事項﹂一三項夢法面に提出した・・れは・改正法が成立後︑半年もたたない内に︑しかも︑七四年置正法
の主要部分といわれた監査制度改正部分は未だ施行されていない時期に出されたものであり︑資本の側の要求の緊急
性の一端を示すものであった︒そして︑それを物語るごとく︑今日までの三〜四年ばかりの内に︑右=二項目の相当
数の項目が︑全面改正あるいはその後の緊急改正で具体化されつつあるという情況である︵例︑兄ば︑後述の七七年株
式制度改正試案︑七七年社債発行限度暫定措置法などで試案化や立法化︶︒
さらに︑これらの情況をふまえて︑経済界の要望を待ってこれを受けるがごとく︑やはり同年九月に︑法務省は︑
﹁会社法の基本的問題点﹂の検討を開始している︒
そこにみられる一つの姿勢として感じられる点は︑従来の会社法が︑個別企業レベルの規制法として︑いわゆる市
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民法としての会社法であったものが︑それに次第に集団企業︵親子会社︑支配従属企業︶レベルの規制法の側面が附
加されるような形で︑改正・立法作業が進展してゆくようにみうけられることである︒それらのいわば立体的な規制
の必要が︑会社法をして︑﹁市民法的な個別・平面的かつ抽象的会社法﹂から︑﹁集団的・立体的かつ重階層的会社
法﹂へと︑脱皮﹁再編成をめざして︑かなりの速さで急速展開しはじめているといえることであろう︒例えば︑経済
的実態としての企業の階層制が︑形態規定として︑会社法に導入されることとなってゆくのである︵例えば商法二七
四条ノ三の新設︑監査特例法による大会社および小会社の区分と特例の導入など︶︒
注
︵1︶ 池島・前掲書現代的課題二三六頁および二三七頁︑法律時報七六年一〇月号一四四頁︒
︵2︶池島・前掲書現代的課題二四五頁︑法律時報七六年一〇月号一五二頁︒
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三 会社法全面改正の展開
ついに︑法務省法制審議会商法部会による商法とくに会社法全面改正は︑一九七五年︵昭五〇︶六月一二日﹁会社
︵1︶法改正に関する意見照会について﹂︵法務省民事局参事官室︶の公表によって︑スタートを切った︒それは︑現代会社法改正の問題点として︑次の七つの検討項目からなっている︒
ω 企業の社会的責任と会社法
② 株主総会の形骸化と改正の方向
㈹ 取締役会の機能の現状
現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
④ 株式制度の改正点︵額面金額の引き上げ←単位株など︶
㈲ 会社の計算︵連結決算制度など︶とその公開についての改正点
㈲ 結合企業と会社法の立場からの規制
ω 株式会社の大会社と小会社の区分による規制の分化の方向 などである︒
︵2︶
これらの七つの柱のねらいとその問題性については︑すでに拙著で述べたので︑ふれない︒もともと法務省は︑全面改正を七五年︵昭五〇︶からほぼ五年間をメドにして行なうというプログラムを示したも
のであるといわれている︒この﹁意見照会﹂に対応して︑その改正の方向に対しては︑理論的にかつ本格的にあるい
は批判的に検討研究し︑学界への問題提起を含めて︑理論的な従来から行なっている外在的批判とともに︑できれば
内在的批判をも︑あわせ行なってゆく課題をもつとともに︑新たな理論的商法学の形成ないし建設が必要かつ不可欠
と思われる︒この﹁意見照会﹂の分析検討によって︑会社法全面改正の大きなワク組み︵商法にとどまらず証取法︑
経済法︑税財政法︑中小企業論︑企業集団論︑さらには労働法︑行政法までも︑また学際的隣接謁科学の協同による
研究の必要︶を検討することが必要であろう︒
︵3︶ また︑立法作業の進展と商法学界の現状︑さらに法制審商法部会のメンバー構成︵例えば学者グループにおいて
は︑石井︑西原教授の死去︑小町谷︑田中誠二教授のリタイヤーなどから鈴木部会長独走体制?へ との声も︶︑審
議内容の問題性と資料公開め必要︵情報の絶対量の不足ということもあって︶などをも含めて︑検討範囲を相当に広
げることも肝要である︒
・まず﹁意見照会﹂による立法作業では︑﹁第一 企業の社会的責任﹂とその冒頭に︑いわゆる一︐社会的責任論Lを
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受け入れる形式をとりながら︑これを従来の伝統的な商法の全構造からは︑最終的には直接的な規定としては︑これ
を否定する方向が指向されている︒
すなわち︑この問題は︑七三年秋のオイル・ショックの当時の買占め・売おしみの張本人としての責任追及の被主
ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ へ
体としての大企業︑独占大企業の社会的責任論こそ︑その中心的課題であったと思われるのに︑この大企業の大がい
つのまにかはずされて︑一般企業のそれとなっており︑立法作業の審議過程でその第一にとりあげられはしたもの ︵4︶ の内株式会社法の私的性格論でほぼ決着がつけられ︵一般条項よりは個別具体的規定に反映させる等で︶ていること
は︑大きな︑しかも重要な問題点が拡散されているのであって︑誠に遺憾であるといえる︒
︵5︶ また︑﹁第七 最低資本金制度及び大小会社の区分﹂については︑あるいは︑これは︑むしろ全面改正の大前提と
して︑大株式会社法と小株式会社法を指向し︑最低資本金制度も相当な議論︵一千万円から五〇〇万円などなど︶の
後に︑形式上は︑その審議を後にまわしているといわれる︒
しかし︑これらの問題は︑現実には︑一九六九年︵昭四四︶七月一八日株式会社監査制度改正要綱案﹁第十四 大
会社の特例﹂に端を発し︑七四年四月二日公布︑一〇月一日施行の監査特例法︵大会社のそれ︶を経て︑顕在化して ︵6︶ きたものであり︑七七年四月一日に導入された連結決算制度による連結経営︑さらには連結納税制度導入をもめざす
視点をもつものともいわれる︒それは︑法的には︑親子会社法から企業集団法の出現へと図式化されうる︒金融資本
グループ内の管理の強化等につながる︒
このように︑全面改正の審議は︑第一︑第七から﹁第四 株式制度の改善策﹂に移行していった︒これと相前後
して︑商法二九七条←社債法に関する特別法の緊急立法がはかられもすることになる︒
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現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
かくして︑株式会社法の本質的に核心部分である社債法︑株式法について︑商法改正は急展開していったのであ
る︒この部分に︑法制審商法部会がまず手をつけて︑その改正作業がめまぐるしく進展していったが︑これはある意
味では論理必然の一定の方向性を示し︑一方向へ歩み出したといえよう︒ある意味とは︑とくに株式制度は︑株式会
社法の残余の他の部分の基礎を規定するもの︑理論的には全面改正を規定しているともい・兄るという意味である︒そ
の意味で株式制度は株式会社法審議の出発点であり︑かつ終着点でもある︒法制審商法部会委員は︑﹁株式﹂を株式
会社法において︑今はやりの言葉の﹁ルーツ﹂にたとえているほどである︒
社債︑株式は︑企業の資金調達機能をもつといわれる︒と同時に企業の支配機能をも有しているといえよう︒これ
らの指向するものは︑企業金融法制の再編成である︒そこでは︑社債および株式に関する法を軸にした大会社法制と
ともに選別金融制度が展開されようとしている︒
注︵1︶
︵2︶
︵3︶部会長
池 員
〃
〃
〃 池島・前掲書現代的課題二五三頁以下︒池島・前掲書現代的課題二六三頁以下︒商事法務七五〇号︒法制審議会商法部会委員︑幹事名簿︵昭五一
法務省特別顧問
東北大学教授
東京大学教授
東京大学教授
東京大学教授 一〇現在一○印は学者新任者︶
竹箒江服鈴 内 宇部木 昭常 栄竹 夫夫稔三雄
委
〃〃〃〃
員東京大学教授
名古屋大学教授
京都大学教授
神戸大学教授
神戸学院大学教授 矢沢 惇 北沢 正啓
上柳克郎
○河本 一郎○大隅健一郎
181
委 員
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
〃
〃
〃
〃
〃︵4︶
︵5︶ 慶応義塾大学教授成聡大学教授早稲田大学教授弁 護 士弁 護 士 大阪商工会議所常議員
全国中小企業団体中央会専務理事
十条製紙株式会社会長
東洋紡績株式会社会長
東京商工会議所副会頭
東京証券取引所理事長
旭化成工業株式会社取締役社長
東京高等裁判所判事
東京地方裁判所判事
弁護 士 弁護 士
最高裁判所事務総局民事局長
内閣法制局第二部長
大蔵省証券局長
通商産業省産業政策局長
法務省民事局長
池島・前掲会社法改正一ゴニ七頁︒
池島・前掲動向と論理九三頁︒ ○高鳥 谷川○星川 鮫島 鈴木 浅田 稲川
宮敏忠真長 正 雄章一男七久夫
金子佐一郎
河崎 邦夫
佐々木秀一
黙黙安味黒馬小柳枡宮谷 川野井村洋洋川川田崎村 保 牧東恒俊文 一滋誠治郎作治一郎輝樹
幹 事
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
京都大学教授
学習院大学教授
慶応義塾大学教授
早稲田大学教授
株式会社山一証券経済研究所取締役
弁護 士
最高裁判所事務総局民事局第一課長
最高裁判所事務総局民事局付
内閣法制局参事官
大蔵省大臣官房参事官
通商産業省産業政策局企業行動課長
中小企業庁指導部組織課長
法務大臣官房参事官法務大臣官房司法法制調査部司法法制課長法務大臣官房司法法制調査部参事官
法務省民事局第三課長
法務省民事局第四課長
法務省民事局参事官
法務省民事局付検事
法務省民事局付検事
法務省刑事局刑事課長 ○龍田 節
前田 庸鵬
○倉沢康一郎梅池三越二二 田田宅原中巻 晴亮弘国正俊 亮一人馬明雄
長富祐一郎
吉佐慶元稲清加田千松南 田藤田木葉水藤村種田学
蓬鶴伸羅馬難難緕
︵6︶ 池島宏幸﹁連結経営・連結決算と商法・経済法上の問題点﹂労働法律旬報︵一九七七年刊︶九三八号三八頁︒
連結決算・連結経営は︑粉飾決算の予防効果をもつといわれてその実施の緒についている︒本格的導入の及ぼす影響は︑
それのみに止まらず相当広汎に及ぶ︒①独占的大企業にとっては︑企業グル:プ内の管理の強化︑下請.系列化の変動再編
へ連動される可能性が大きい︒②子会社にとっては︑支配が強化される︒③中小・零細企業にとっては︑大企業の親会社か
ら資本の参加による攻勢・攻撃がはかられる︒実際には︑企業損益計算がある場合にはグループで行なわれ︑ある場合には
個別企業レベルのみで行なわれたりして︑使いわけられる︒利益があがるか否かが︑従業員労働者の賃金に対するコンパ:
チブルな政策にもなってゆく︒法人格の使い分けによる親子集団計算による子会社のだき込みあるいは個別企業計算による
子会社はずしなど労使関係の新たな問題ともなるであろう︒
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四 コ焦電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法﹂の出現
不況下の公共企業と関連法に︑商法二九七条の特例として︑七六年︵昭五一︶六月四日公布施行された一般電気.
ガス事業会社の社債発行限度特例法が︑八六年︵昭六一︶三月三一日までの限時法として︑出現し︑独占的大企業へ
資金調達の特権を可能にする方途を切り開いた︒
︵1︶訳である︒
これも︑経団連の先の=二項目の一項目として︑早急な実現をみた
注︵1︶ 基準社債発行限度額を電気会社四倍︑ガス会社二倍に拡大した︒なお︑本法成立の経緯については︑
二六日︑池島・前掲会社法改正二三三頁︒左に参考として同特例法を掲げておく︒ 日経新聞七五年九月
一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法︵昭和五一年六月四日法律第五九号︶
.(?旨︶
ユ83
第一条 この法律は︑電気及びガスの安定供給の確保の重要性にかんがみ︑今後当分の間における一般電気事業会社及び一
般ガス妻会社の設備の設置のための資象而要の増加に対処するため・これらの会社についての社債発行屡に関する特捌
例を定めるものとする︒
︵社債発行限度の特例︶
第二条 一般電気事業会社︵電気事業法︵昭和三十九年法律第百七十号︶第二雨笠二項に規定する一般電気事業者であって
会社であるものをいう︒以下同じ︒︶又は一般ガス事業会社︵ガス事業法︵昭和二十九年法律第五十一号︶第二条第二項
に規定する一般ガス事業者であって会社であるものをいう︒以下同じ︒︶は︑電気事業法第三十九条ただし書又は商法︵明
治三十二年法律第四十八号︶第二百九十七条の規定による制限を超えて社債を募集することができる︒ただし︑社債の総
額は︑基準社債発行限度額︵一般電気事業会社にあっては資本及び準備金の総額又は最終の貸借対照表により一般電気事
業会社に現存する純資産額のいずれか少ない額の二倍の額︑一般ガス事業会社にあっては資本及び準備金の総額又は最終
の貸借対照表により一般ガス事業会社に現存する純資産額のいずれか少ない額をいう︒以下同じ︒︶の二倍を超︑兄てはな
らない︒
︵確認︶
第三条 一般電気事業会社又は一般ガス事業会社は︑前条の規定により電気事業法第三十九条ただし露量は商法第二百九十
七条の規定による制限を超えて社債の募集をしょうとするときは︑その募集をしょうとする年度ごとに︑通商産業省令で
定めるところにより︑当該年度の社債の募集に関する計画を通商産業大臣に提出して︑その社債の募集の総額が次の各号
に適合する旨の確認を受けなければならない︒当該確認に係る社債の募集の総額の変更︵社債の募集の総額の増加に係る
ものに限る︒︶をしょうとするときも︑同様とする︒
一 その一般電気事業会社又は一般ガス事業会社の電気又はガスの安定供給の確保のために必要な限度を超えるものでな
いこと︒
二 その一般電気事業会社又は一般ガス事業会社の財産の状況及び償還能力に照らして過大なものでないこと︒
︵罰則︶
第四条 次の各号の一に該当する者は︑三十万円以下の過料に処する︒
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一 第二条ただし書の規定に違反した者.二 前条の規定に違反した者
附 則
︵施行期日︶
一 この法律は︑公布の日から施行する︒
︵この法律の失効︶
二 この法律は︑昭和六十一年三月三十一日限り︑その効力を失う︒ただし︑その時までにした行為に対する罰則の適用に
ついては︑この法律は︑その時以後も︑なおその効力を有する︒
︵失効後の経過措置︶
三 この法律の失効の時において一般電気事業会社又は一般ガス事業会社の社債の総額が基準社債発行限度額を超︑兄ている
場合においては︑第三条の確認を受けて社債を募集したことにより基準社債発行限度額を超えることとなった額は︑電気
事業法第三十九条ただし書置は商法第二百九十七条の規定の適用については︑この法律の失効後十年間は︑これを社債の
総額に算入しない︒
五 ﹁社債発行限度暫定措置法﹂の成立へ
電気・ガスについで︑一般事業会社について︑とくに鉄鋼︑造船︑電器︑機械︑自動車の各業界も︑同様なワクの
︵1︶拡大を求めた︒基幹企業と関連法に︑社債ワク拡大法が︑翌七七年︵昭五二︶五月二七日に公布即日施行され︑当分
の間二倍に拡大することが認められた︒現在の社債発行会社約三〇〇社中︑この措置の恩恵を受けうる会社は︑約三
〇社のみともいわれる︒例えば六大企業集団につき︑筆算社の基幹企業を中心とする︑いわば選別企業金融制度が形
︵2︶成されることとなった︒いわゆる従来からの社債の格付けによって︑本法の制度をサポートすることが試みられよう
185
としている︒社債の格付けは︑企業の格付けを意味することとなり︑トップ企業の再編成にもつながってゆく︒
186
このように︑特殊会社から巨大会社に対して︑社債発行を容易にするとともに︑これにより独占企業の内的再編成
︵3︶を伴うとともに︑社債発行を否定されるー序したがって差別される中小会社などの二極分化とその規制の多様化が特
徴となる︒
注︵1︶ 日経新聞七七年一月三日︒同一月一八日社説︒同二月六日ーワク超える社債発行企業一内容公開義務付け︒同二月一八日
−法案公表︒同法は︑別名鉄鋼業救済立法とのうわささえあった︒
もっとも従来から︑社債発行限度の規制に対しては︑子会社利用による運用の事例があり︑この制約を乗り越える方法と
して︑子会社が社債を発行し︑この子会社から親会社が借り入れる方法が考え出された︒朝日新聞七六年三月三〇日︒
住友金属工業は︑オランダ領のキュラソー島にある子会社﹁スミトモ・メタル・インダストリーズ.オーバーシーズ﹂
が︑二九日スイスでの一億五千万スイス・フラン︵約一七〇億円︶の社債発行契約に調印し︑この子会社からインパクトロ
ーソ︵使い道を制限されない借り入れ︶の形で︑その資金を導入し︑設備投資資金にあてる︒このような子会社による外債
発行の方式によって︑発行限度ワクをくぐり抜ける︒
この住友金属の事例で︑政府・日銀は︑商法の建前からいうと好ましいことではないとしながらも︑景気回復のテコとな
る設備投資資金対策であることからも︑この追金の資金手当てを黙認する方針とされた︒
この辺の情況からも︑二倍への限度ワクの拡大は︑既定の方針ともなったと推測されうるかもしれない︒
また︑﹁持株会社﹂の禁止の建前から︑⊃QO%子会社しとして許されるものは︑親会社が自己の財産の半分を出資する
場合で︑親会社が子会社・孫会社とそれぞれ順次的に半分出資した場合のそれらの資本額の合計は︑ープラス %プラス
%プラス %プラス⁝⁝イコール︿2であって︑すなわち︑持株会社が禁止されているので︵独禁法九条︶︑コ○○%子会
社﹂形態を利用するとしても︑社債発行ワクの合計は︑親会社の資本額︵純資産額︶の二倍が限度にとどまることが試算予
測されている︒田代・古牟田・一〇〇%子会社の法律・税務︵別冊商事法務三四号︶一〇五頁︒
同法成立は︑左のω︑②︑㈹の順によった︒当初の限時法から商法全面改正に合わせて当分の間の措置法となっていった
ことなどその特徴といえる︒商事法務七五〇号︑七六三号︑後音七七一号︒
ω 社債発行限度改正要綱︵昭和五一年一〇月二七日 法制審議会商法部会決定︶
一 担保附社債︑外国において募集する社債及び転換社債は︑商法第二九七条の規定にかかわらず︑資本及び準備金の総額
︵最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額が資本及び準備金の総額に満たないときはその資産額︶を超えて募集
することができるものとすること︒ただし︑その二倍を超えることはできないものとする︒
二 一の特例は︑昭和六十一年三月三十一日限りその効力を失うものとすること︒
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② 社債発行限度暫定措置法案要綱
第一 社債発行限度
社債は︑担保付社債︑転換社債及び外国で募集する社債に限り︑当分の間︑商法第二百九十七条の規定による制限を
超えて募集することができるものとするが︑その総額は同条の定める限度の二倍を超えることはできないものとするこ
と︒︵第一条関係︶
第二 その他
一 第一の規定によって商法第二百九十七条の規定による制限を超えて募集する社債については︑担保付社債であって
も︑証券取引法要四条第一項によりその社債券の募集又は売出しに関して大蔵大臣に届出をしなければならないものと
すること︒ ︵第二条関係︶
二 この法律の規定は︑他の法律の規定によって商法第二百九十七条の規定による制限を超えて募集することができる社
債については︑適用しないものとすること︒︵第三条関係︶
三 発行限度を超えた社債発行について︑商法第四百九十八条第一項第二十二号に相当する罰則を受けること︒︵第四条
関係︶
㈲ 社債発行限度暫定措置法︵昭和五二年五月二七日法律第四九号︶
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︵社債発行限度︶ 第一条 社債は︑担保付社債︑転換社債及び外国において募集する社債に限り︑当分の間︑商法︵明治三十二年法律第四十 鵬
八号︶第二百九十七条の規定による制限を超えて募集することができる︒ただし︑社債の総額は︑資本及び準備金の総額
又は最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額のいずれか少ない額の二倍を超えてはならない︒
︵社債券の募集又は売出しの届出︶
第二条 証券取引法の一部を改正する法律︵昭和四十六年法律第四号︶附則第四項の規定は︑前条の規定により商法第二百
九十七条の規定による制限を超えて募集する担保付社債については︑適用しない︒
︵適用除外︶
第三条 この法律の規定は︑他の法律の規定により商法第二百九十七条の規定による制限を超えて社債を募集することがで
きる会社が募集する社債については︑適用しない︒
︵罰則︶
第四条 会社が第一条ただし書の規定に違反して社債を募集したときは︑商法第四百九十八条第一項に掲げる者は︑三十万
円以下の過料に処する︒
附 則
この法律は︑公布の日から施行する︒
(提 Uげ錦鯉霧幾縫趾鴻難鶴謬繋暢ため︑当分の問社債の中瀬限度を︶
︵2︶ 朝日新聞七六年一〇月一三日社債格付け基進・︒
例えば︑公社債引受協会による格付けとして︑
公募社債格付け基準及び格付け一覧
①公募社債格付け基準︵昭和五一年八月一日現在︶
現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
格
AA
BB A
B
純 資 産
一︑○○○億円以上
四五〇 〃
〇〇 四六
〃
}
〃
質
的
純資産倍率菅己資査至難置上箋善管
基
準
一︑二倍平均一五%以上
一︑五倍以三二〇%以上 二期平均四%以上
二期平均五%以上
配
当率
六期連続六%以上または二期連続八%以上
六期連続八%以上または二期連続﹈○%以上
②社債発行会社格付け一覧
格
銘
︵昭和五一年八月一日現在︶
柄 銘柄数㎜
AA A
東京交通債券︑放送債券︑新日本製鉄︑川崎製鉄︑日本鋼管︑住友金属工業︑神戸製鋼所︑三菱地所︑国際電信
電話︑東京電力︑中部電力︑関西電力︑中国電力︑北陸電力︑東北電力︑四国電力︑九州電力︑北海道電力︑東
京瓦斯︑大阪瓦斯︑旭硝子︑小松製作所︑久保田鉄工︑日立製作所︑東京芝浦電気︑三菱電機︑松下電器産業︑松下電工︑三菱重工業︑日産自動車︑トヨタ自動車工業︑本田技研工業︑三光汽船︑東レ︑︑武田薬品工業︑ブリ
ヂストンタイヤ
東洋紡績︑日新製鋼︑三井不動産︑近畿日本鉄道︑大和ハウス工業︑積水ハウス︑麟麟麦酒︑味の素︑宇部興
産︑日本電気︑富士通︑三洋電気︑日本電装︑日立造船︑川崎重工業︑石川島播磨重工業︑※いすゴ自動車沸東
洋工業︑ダイハツ工業︑凸版印刷︑日本通運︑日本郵船︑帝人︑旭化成工業︑※三井東圧化学︑※昭和電工︑住
友化学工業︑三菱化成工業︑塩野義製薬︑藤沢薬品工業︑富士写真フイルム︑日本石油︑住友商事︑日商岩井︑
三越
︸呆冷蘇グ・ゼ︑籍誉士紡騒音紡積大和紡懇望紡積・東黎帝国肇淀川製響東
三六三五︐BB
189
BB
洋鋼銀︑大同製鋼︑日立金属︑日本製鋼所︑三井金属鉱業︑三菱金属︑日本鉱業︑住友金属鉱山︑同和鉱業︑トピー工業︑東急不動産︑東武鉄道︑西武鉄道︑相模鉄道︑東京急行電鉄︑京浜急行電鉄︑小田急電鉄︑京王帝都電鉄︑京成電鉄︑西日本鉄道︑阪急電鉄︑阪神電気鉄道︑南海電気鉄道︑京阪電気鉄道︑名古屋鉄道︑三菱倉庫︑三井倉庫︑住友共同電力︑東邦瓦斯︑西部瓦斯︑協和電設︑日本製粉︑日清製粉︑昭和産業︑日本農産工業︑日新製糖︑森永製菓︑明治製菓︑不二家︑明治乳業︑雪印乳業︑森永乳業︑伊藤ハム栄養食品︑サッポロビール︑朝日麦酒︑キッコーマン醤油︑ハウス食品工業︑山陽国策パルプ︑日本パルプ工業︑※日本板硝子︑日本セメント︑住友セメント︑小野田セメント︑大阪セメント︑※日本軽金属︑古河電気工業︑住友電気工業︑藤倉電線︑昭和電線電績︑日立電線︑東洋製缶︑新潟鉄工所︑ヂ上里ル機器︑東芝機械︑豊田自動織機製作所︑豊和工業︑住友重機械工業︑ダイキン工業︑椿本チェイン︑多田野鉄工所︑日本精工︑N・T・N東洋ベアリング︑光洋精工︑富士電機製造︑安川電機製作所︑※神鋼電機︑明電舎︑沖電気工業︑シャープ︑東京三洋電機︑横河電機製作所︑北辰電機製作所︑日本電池︑湯浅電池︑三井造船︑日本ビクター︑日本車輌製造︑日野自動車工業︑日産ディーゼル工業︑萱場工業︑アイシン精機︑鈴木自動車工業︑富士重工業︑島津製作所︑※永大産業︑
コクヨ︑富士急行︑山九運輸機工︑大阪商船三井船舶︑※川崎汽船︑中日新聞社︑日本経済新聞社︑朝日新聞
社︑毎日新聞社︑読売新聞社︑※単二漁業︑日本水産︑大洋漁業︑※ユニチカ︑東邦レーヨン︑※三菱レーヨ
ン︑※クラレ︑王子製紙︑本州製紙︑十条製紙︑三菱製紙︑北越製紙︑大昭和製紙︑日産化学工業︑呉羽化学工
野纏縫懸響耀無籍耀額髄甑靴肇禁糠纏暴糖讐糠一二横難ボ墾
成ゴム︑ダイセル︑日本ゼオン︑日本化薬︑日本油脂︑花王石鹸︑三白な山之内製薬︑第一製薬︑エスエス製薬︑大日本塗料︑日本ペイント︑関西ペイント︑大日本インキ化学工業︑東洋インキ製造︑昭和石油︑※丸善石㎜
油︑※三菱石油︑※大協石油︑横浜ゴム︑東洋ゴム工業︑住友ゴム工業︑中綿実業︑長瀬産業︑高島屋︑大丸︑ 一 一
廷喰違瓠銘㌧灘遍羅召ぺ三兄放速日本一ア︒ビ放送輝日本教育一ア︒ビ︑︒ジーア︒︒ジへ
︸※神栄︑※興和紡績︑関東特殊鋼︑
斐川電気工業︑※日本化学工業
B
山陽電気鉄道︑辰巳倉庫︑大同毛織︑帝人製機︑日新電機︑三重交通︑ 一八二※揖 = ⁝
190
現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
︑A丑 −−一 i!一⁝一⁝!一⁝.︑︐一⁝一.−−一⁝一﹁三巴四川
︵注︶ ※印のついている企業は当該格での発行実績があるが︑現在は格付け基準を満たしていない︒
資料軸公社債引受協会 社債発行会社一覧表
債券格付け確立へi投資家保護︑万全にi日経新聞七七年四月一三日︒同七月五日目
また︑日経新聞が︑転換社債について︑試験的格付けを公表している︒日経新聞七七年八月九日︒
日本経済新聞社によると︑東証上場の転換社債全銘柄を試験的に格付けしたが︑第一ランクのAAAは三越第一回転換社
債︑日産自動車第二回︑第七回など十五銘柄︑壁跡ランクのAAは鹿島建設第一回︑明治製菓第=凹など三十三銘柄︒ま
た︑第三ランクAは七十二銘柄で︑この上位三ランクで全銘柄の四三%を占める︒
ランクの意味
AAA
収益力︑財務内容︑それらの見通し︑信用度︑影響力︑属する業界の安定性︑将来性等︑
が最も高い
AA
安全の度合いが高いが︑第一ランクに比べ劣る要素を持つ
BBB
総合的にみて平均水準を満たしているうえ︑一部それよりすぐれた要素を持つA
平均的水準︒将来にわたり安全と判断するが︑絶えず注視していく必要がある
BB
将来まで考慮すると︑安全の点で心配される要素を持つ
B
総合的に判断して安全の度合い
191
収益力がきわめて低く︑改善もしばらく困離で︑将来の安全を現段階で判断できない
CCC
社債の利払いは行っているが︑債務超過の状態にある︒あるいは︑債権者から金利の減免︑
を受けている
CC
返済猶予等︑特別の救済措置C
社債利払いの遅延︑不払いが生じている
︵3︶ このような中小企業へのアンバランスな対応のゆえに︑同法成立時に左のような︑社債発行限度暫定措置法案に対する附
帯決議︵昭和五二年五月二〇日衆議院法務委員会︶がなされている一商事法務七七〇号四一頁︒
政府は︑本法施行に当り︑社債権者︑一般債権者︑株主及び中小企業等の保護を図るため︑次の諸点について適切な措置
を講ずべきである︒
一︑企業の自己資本の充実を図るため︑財務内容の強化に努めるとともに法制面での措置についても検討すること︒
二︑投資家保護のため︑社債についての公正中立な評価制度が確立されるよう公社債市場の環境整備を図ること︒
三︑中小企業が社債制度をより一層活用できるような方策を検討するとともに金融機関による社債の大量消化が中小企業金
融を圧迫しないよう配慮すること︒
四︑社債の発行条件の弾力化︑流通市場の民主化を図るなど︑公社債市場の育成発展に努めること︒
なお︑同法案は︑七七年三月四日閣議決定︑同日国会提出︑参議院先議で審議︵法務官付託︶︑四月一六日参議院本会議
可決︵反対11社会・公明・共産︶︒衆議院では︑法務委・大蔵委の合同審査︑参考人の意見聴取など︑五月二〇日法務半可
決︵前掲附帯決議︶︑同月二四日本会議可決︑同法成立︒稲葉威雄﹁社債発行限度暫定措置法の解説﹂商事法務七七一号二
頁︒同ジユリスト六四四号︒
日経新聞七七年七月四日社債発行ワク拡大後の課題︒
192
現代株式会社における企業金融法制の新たな展開
六 ﹁株式制度に関する改正試案﹂の公表
法制審商法部会は︑前述の会社法の根本改正についての﹁意見照会﹂による七項目のうち︑まず株式制度に関する
︵1︶問題点から審議を進めることを︑一九七六年︵昭五一︶二月目部会において決定︑以後一年余にわたって検討した結
︵2︶果を︑翌七七年︵昭五二︶五月一四日︵一六日︶︑法務省民事局参事官﹁株式制度に関する改正試案﹂として公表︑
各界に二回目の﹁意見照会﹂を行なった︒
それは︑第︸ 額面株式と無額面株式︑第二 既存会社の株式単位是正︵単位株など︶︑第三 自己株式の取得等︑ ︵3︶第四 株式の相互保有などの四項目からなる︒
ネ ナ
これらは︑新たなる株式法を軸にした大会社法制の展開を︑経済法・独禁法との関連をうらはらにして︑指向する
ものである︒社債法制とともに︑企業の資金調達機能を強化再編成するとともに︑その企業の支配機能に一段と独占
的大企業本位体制が導入されることとなろう︒
注
︵1︶ 株式制度改善へ単位株導入−法務省方針−日経新聞七七年三月四日︒同三月一一日夕刊︒
︵2︶ 日経新聞七七年五月二三日︒朝日新聞同日付︒日経新聞六月一八日竹中正明﹁株式制度改正試案﹂の論点︒
︵3︶ 詳しくは︑商事法務研究会編・株式制度改正試案の論点−昭和五二年法務省試案をめぐって一︵七八年刊︶︒
まとめにかえて
以上︑みてきたように会社法の全面改正は︑現代企業の問題として︑広汎な企業金融の経済的問題を惹起してゆく
であろう︒株式会社法の核心部分である社債法に︑まず︑特例法︑措置法などの形式で︑新たな展開をみた︒それに
193
ついで︑株式法について新たな提案がなされつつある︒とくに商法二九七条の限度ワクを二倍まではずすこととなっ
た社債暫定措置法の出現によって︑従来にも増して︑社債の格付けが大ぎな意味をもってゆくことになる︒独占的大
企業中心の企業資金の配分の方向付けへ向うことが予見される︒とともに︑大企業そのものの格付けによる支配体制
が︑顕在化ぜざるをえなくなるものと思われる︒開放経済体制下︑安定成長経済をめざし︑新会社法は︑いうなれ
ば︑資本輸入︵導入︶型から資本輸出型のそれへと︑多国籍企業体制への対応へと︑その脱皮を求めての改正の方向
が指向されているといえないであろうか︒
それは︑全面改正と平行して︑進行する緊急連続改正の状況にてらして︑会社企業という資本集中体に対する一般
的フレームとしての戦後会社法が果した役割・機能とともに︑例外的かつ特例ないし暫定的措置としてのフレームが
漸次積み重なって来ている状況をどのように分析検討すべきであろうか︒しかし︑一方には︑商法・会社法の適用除
外の特殊会社法や巨大会社法の形成・展開︑他方では中小会社法の残存という二極分化とともに︑その法規定の多様
化の実態は︑極めて不透明である︒商法が民法などとともに資本集中法であり︑会社法が資本集中体法であるという
側面から︑資本のために機能する側面が過半︑いな大部分であるといえても︑﹁法﹂が国会において︑国民的合意の
最大公約数として成立したものである以上は︑少数者の意思︑権利を全く否認しえないという意味で︑その有効な側
面が常に残存しているはずである︒この部分をてこにして︑法総体の運用を変革してゆくことは可能であろう︒
しかし︑それにもまして︑会社法学の当面の最重要課題は︑資本の殿堂へのアクセスによって不透明部分の現状分
析をできる限り行ない︑そのデータを国民に提示することではなかろうか︒今後の改正作業を充分フォローしてゆか
ねばならない︒ ︵一九七八年秋︶
194