ソシオサイエンス Vol.14 2008年3月
論 文
イギリスの土地利用における地役権について
南 部 あゆみ*
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はじめに
土地を有効に活用するには,一定の調整機能 が必要である。特に都市空間においては建物が 密集しがちになるため,良好な生活空間を維持 するには,土地利用を調整する細かなシステム が不可欠である。このシステムは大きく分け て,公法的システムと私法的システムという2 つの手法がある。公法的システムとは,行政が 行う都市計画で,都市間題に対して公共的な立 場から制度設計をするものである。一方で私法 的システムとは,私人と私人の間で生じたトラ ブルを解決するための手段である。全体を規制 する公法的システムと,個々の事例を細やかに 調整する私法的システム,その両方によって土
地利用調整は成り立っていると考えられる。
日本では,公法的システムとしては,主に都 市計画法と建築基準法を中心とした都市計画制 度がある。都市計画法では区域区分や都市基本 計画が定められ,さらに地域地区や地区計画,
開発許可といった手法が用意されている。建築 基準法ではその具体的内容として,建物を建築 する際の基準が定められ,また建築協定などの 手法も置かれている。それ以外にも条例によっ
て地域独自のルールを作ることも可能である。
私法的システムとしては,民法で相隣関係と して,土地利用を相互調整するために所有権の 内容を制限あるいは拡張する制度を設けてい る。また,地役権は他人の土地を自己の土地の 便益に供する権利で,当事者間の設定契約に よって成立し,登記で対抗することができる。
通行地役権や用水地役権,電線路施設のための 地役権,最近では眺望地役権なども認められて いる。
公法が一般的ルールとして最低限の基準を定 めたものであるのに対して,地役権はそれ以上 の基準を設けることが可能である。またその内 容も,公の秩序に関するものに限るという所有 権の限界の規定に反しない限り制限はなく,汎 用性が高い。さらに当事者間で自由に権利内容 を定めることができるという点で,個人が主体 的に自分の土地利用を調整できる制度だと言え るだろう。そこで,地役権の利用をさらに拡大 し,土地利用調整システムとしての役割を高め ることができないか,他国の制度を参考に可能 性を探ることには価値があると考える。
イギリスでは,公法的システムとしては都市 農村計画法を中心とする都市計画制度で,開発
*早稲田大学大学院社会科学総合学術院 助手
許可による調整を行っている。これは事前規制 が原則で,土地建物を開発するには事前に計画 を申請して当局から許可を得なければならな い。そのため初めから全体の秩序を逸脱するよ うな開発は行われないようになっている。しか しそれは一般的な規制であり,たとえ許可され た開発であっても,誰かの権利を侵害する場合 がある。そうした場合に私人間で調整を図るの が私法的システムである。
その1つであるeasement(地役権)は,他人 の土地を利用または支配しうる物権的権利であ る。本論文では,このeasementに関する法制度 をまとめるとともに,他の土地利用調整のため の制度を紹介し,私法的システムの全体像を掴 むことを目的とする。その上で,eaSementのさ らなる利用可能性を探りたい。
1.イギリスの地役権:easement l−1.easementの4つの原則
イギリスにおけるeasementは,日本の地役権 とよく類似している。隣接する要役地(domhant tenement)と承役地(servienttenement)の間で 設定される属地的な権利であり,要役地所有者 は承役地から何らかの便益を得ることができる。
この権利は土地に対して排他的・支配的なもの であるため.承役地の所有者が変わっても.新 しい所有者は引き続きeasementの負担を負うこ とになる。そのためいかなる便益がeasementの 内容として認められるのかが重要となるが,こ れを厳密に定義することは難しい。そこでまず,
easementとなるための要件が問題になる。
ReEllenboroughPark[1956]Ch131.(1)では,
easementの要件として以下の4点を挙げてい る。
① 要役地と承役地が存在すること
② 要役地の便益に供されること
③ 要役地と承役地が異なる者に所有・占有 されること
④ その権利が譲与(grant)の対象となり うること
(丑 easementが成立するには,承役地ととも に要役地が存在しなければならない。これは easementが要役地の土地に従属する権利である ことを意味している。つまり,Aがeasementを 取得できるのは,Aが要役地の所有者だからで あって,要役地の存在なしにAの属人的な権利 として,eaSementを取得することはないのであ る0そのため,イギリスでは人役権(ingross)
は認めないとされている。
② easementは要役地に従属し,また要役地の 便益に供されなければならない。要役地の便益 というからには,要役地と承役地が近接してい る必要がある。必ずしも隣り合っている必要は ないが(要役地と承役地の間に第三者の土地 が挟まれていてもよい),ある程度近接してい なければ,地役権者の利益にはなっても要役地 そのものの(土地としての)便益とはなら疎い からである。そしてその便益は,要役地にとっ て合理的に必要なものでなければならない。も
し安役地にとって必要でないならば,たとえ要 役地の所有者にとって利益となるものであって もeasementとしては認められない(2)。[Cheshire
2000:571−572]
この例として,HiⅡvhpper[1863]159ER 51.が挙げられる。運河会社が運河と河岸を所 有していたが,Hinに艇庫として利用すること を目的として河岸の土地をリースした。この リース契約には,貸借人が運河にプレジャー
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ボートを浮かべる権利も含まれている。しかし Thpperがこの道河にプレジャーボートを浮か べたことから,Hiuは独占してプレジャーボー トを浮かべるeasementを主張した。裁判では,
この権利はeasementではなく立入権(licences)
にすぎないと判断された。というのは,この権 利はビジネスのために取得されたものであっ て,河岸の土地の便益のためではなかったから である。
(診 要役地と承役地が同じ所有者の下にある場 合,eaSementを設定する必要はない。そのため 要役地と承役地が同一人の所有となった場合に は,eaSementは消滅する。また,隣接する2区 画の土地の所有者が,一方の土地のためにもう 一方の土地を利用する場合,それはeasementと はならず,quaSi−eaSement(準地役権)と呼ば れる。これは一方の土地が他者に譲渡された場 合に,初めから地役権があったものとして取 り扱うためである[江口1998:153]。また,2 区画の土地を所有する者が土地の一方を他者に リースした場合,要役地のためにeasementを設 定することができる。これは2区画の土地の所 有者が同一でも,占有者が異なるためである。
[Cheshire2000:572−573J;Riddal11993:289]
(動 全てのeasementは,制定法(statute)によ る場合は別として,捺印証書(deed)による譲 与によって設定されるものでなければならな い。そのため眺望権やプライバシー権といった 曖昧な権利は譲与の対象とならず,eaSementと
して認められないことになる。
この原則は,以下の点を導く。まず,権利 は譲与の対象となりうるよう,範囲が明確に 限定されなければならない。例えば,特定の 窓から光を取り込む採光権がこの基準を満たす
のは,限定された経路を通して光を取り込むか らである。また,承役地を歩き回る権利(right towander)は,明示の譲与により家屋が特定さ れ,隣接する庭園に行使しうる場合には,この 基準を満たすことになる。さらに通風権(right toanowofaの も,建物の通風孔など特定さ れた経路を通る場合にのみeasementとなりう る。一方で,風車や煙突のために全体的な通風 を求める権利(3)や,隣接する建物によって雨 風から建物の壁を守る権利(4)などは,範囲が 限定されないため認められない。[mddau1993:
289−291;NottinghamLawSchool1996:299]
次に,grantee(被譲与者・地役権者)の能力 についてである。eaSementを申し立てるには,
譲与を受ける資格を有する者でなければならな い。つまり,自然人もしくは法人を指す。例 えば村の住民のように構成員が大きく変動す るような場合は,被譲与者となりえないため,
easementは認められない。
さらに,grantOr(譲与者・地役権設定者)
の能力も問題となる。承役地の所有者は,
easementの権利を譲与する資格を法的に有して いなければならない。例えば,制定法によって 法人格を得た鉄道会社に対する申立てが,鉄道 会社が法律上,鉄道を維持し稼動させる権限し か持たず,譲与する権限を有しないために,認 められなかった事例がある(5)。[Cheshire2000:
574]
1−2.easementの種類
easementとなるには以上の要件を満たす必要 があるが,その具体例は多岐にわたる。・そこで どのような事例がeasementとなり,またならな いのか,具体的に見ていくことにする。まず,
典型的にeasementとして認められているものと しては,以下のような権利がある。
通行地役権(rightofway):一般的もしくは特 定の目的のため,承役地を車道・乗馬道・歩 道・家畜道として利用しうる権利。いつでも,
またどのような方法でも利用できる権利を一般 通行地役権,限られた時間(日中のみなど),
また限られた方法(歩行者のみなど)で利用で きる権利を制限通行地役権という。
採光地役権(rightoHight):要役地にある建物 の特定の窓を通して,承役地から光を取り込む 権利。光の経路上に障害物があれば,この権 利は満たされないことになるので,承役地上 の開発について一定の抑制を要求するものと なる。採光量の基準は,一般的な認識として,
住宅ならば快適な(combrtable)程度,倉庫や 店舗などビジネスとしての利用ならば有益な
(bene丘cial)程度となっている(6)。
流水地役権(rightofwater):隣接地へよどみ なく流水を通過させる権利,湛水目的のため流 水を迂回させる権利,隣接地や河川へ排水する 権利,屋根から雨水が落ちることを容認させる 権利など,流水に関する権利。
支持地役権(rightofsupport):承役地の建物 によって要役地の建物を支持する権利。例え ばsemi−detached house(壁を共有する二戸建住 宅)の場合,互いに支持地役権を有することに なる。支持地役権が認められると,要役地所有 者は修繕のために承役地に立ち入ることができ る。そしてその場合,承役地所有者は何らの負 担も負わない(金銭的負担など)。
通風地役権(rightofair):特定の経路を適し て承役地から通風する権利。要役地全体に対す る通風は認められない。
他にも,隣地上の物干綱に洗濯物を干す権 利・電話線を引く権利・壁に看板を取り付ける 権利・海風からの砂を防ぐために石を積む権 利・波止場に対して船のハウスブリットを突き 出す権利・承役地上の台所を利用する権利・手 洗所を利用する権利・郵便受けを利用する権 利・隣地の飛行場を利用する権利など,様々な 権利が新しくeasementとして認められている。
[Megarry1975:872−881]
こうした新たなeasementの特徴としては,以 下の点が挙げられる。
① 承役地所有者が費用を支出する場合 本来,承役地の所有者が費用を支出するよう な場合はeasementとして認められないが,例外
として囲い(丘nc軸)に関する権利がある。こ の場合,承役地の所有者は囲いを維持するため に自ら費用を支出して積極的行動をとることに なる。また,当事者間で承役地所有者が費用を 支出することを明示的・黙示的に同意している
ような場合も,認められることがある。
② 消極的地役権
従来消極的地役権とされた権利は少なく,新 しい権利を認めるのは難しい。Phippsvhars事 件でも消極的地役権としての請求は認められな かったが,同判決内ではこうした権利を制限的 約款(restrictivecovenant) として組み立てるこ
とを提示している。
(彰 独占的・共同的利用である場合
事実上,承役地を独占的・共同的に利用す る者はeasementを取得できない。Copelandv Greenhalf[1952]Ch488.は,自動車修理業者が,
自動車を修理・保管するために利用していた原 告の土地に対するeasementの時効取得を主張し て退けられた事例である。修理業者は制限のな
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い数の自動車を制限のない期間で修理・保管す るeasementを求めており,裁判所はそうした請 求が承役地所有者を排除する必要があったり,
共同的利用を意味するものであるならば,それ は実際にはeasementではなく,承役地の所有や 占有を請求しているに等しいと判断した。しか し他の事例で,同じ独占的利用でも承役地上の 手洗所を利用する権利が認められたのは,権利 者が権利を行使している間は独占的な利用とな るが,その程度が承役地所有者の権利を取り上 げるほどのものではないからである。[Cheshire
2000:577−597]
1−3.positiveeasementとnegativeeasement
easementの分類として,PhippsvPears事件 で提示されたのが,積極的地役権(positive easement)と消極的地役権(negativeeasement)
である。その中で両者は次のように定義づけら れている。「通行地役権のような積極的地役権 は,要役地所有者が隣地に対して何かを行う権 利であり,一方で採光権のような消極的地役権 は,隣人に対してその所有する土地上で何かを 行うことを止めさせる権利である。」
積極的地役権とは,要役地所有者が承役地上 で何か積極的行為を行う権利であり,承役地所 有者に積極的行為を強要するものではない。ま た積極的地役権の具体例としては様々なものが あり,限定されていないため,先例の基準に従 い判断されることになる。例えば,通行地役権 や流水地役権のほか,ガス管や電気ケーブルを 引く権利(これらを調査・修理するために土地 に立ち入る権利も含む),水門を開くために土 地に立ち入る権利などがある。今日では,隣地 に車を駐車する権利や隣地の滑走路で航空機を
走らせる権利なども認められている。しかし,
もしこうした権利が基本的にビジネスとして扱 われるのであれば,財産法ではなく契約法で保 護されることになる。例えば,Hiuvhpper事 件では,独占的にプレジャーボートを浮かべる 権利は,契約によって譲与者を拘束するもので
あり,被譲与者が第三者に対して訴えを提起 することはできないのである。[Lawson1982:
129]
次に消極的地役権についてであるが,これは 承役地での行為を制限するもので,以下の権利 しか認められていない。①採光地役権・②通風 地役権・③支持地役権・④人工水路の水の流れ に対する障害を制限する権利。これらは承役地 の行為を制限するという意味では消極的である が,しかし先に行為を行っているのは要役地所 有者の方である。つまり,窓や通風孔を件った
り,建物を建設したり,人工水路を引いたりと いう行為が要役地で先になされたために,承役 地での行為を制限する必要が生じたのである。
消極的地役権はしばしば承役地の開発を阻害 することになるため,裁判所は新しい権利の 認定を控える傾向にある。PhippsvPears事件で は,当地の建物を雨風から防護するために隣地 の建物の取壊しを止めさせるという請求は,消 極的地役権であるとして認容されなかった。消 極的地役権であることから判断された理由とし
て,判決では法が新しい消極的地役権を設ける ことに対して慎重であるからと述べている。そ してこのような事例の基礎をなす根拠として,
もしこうしたeasementが認められたとしたら,
隣人に対して土地の利用を過度に制限すること になるからであると説明した。建物の取壊しを 止めさせることは望ましい開発を制限すること
になり,全ての者が自らの建物を取り壊す権限 を有することからすれば,もし当地の建物が雨 風にさらされることになったとしても,それは 当人にとって不運なことであって,隣人の責任 ではないのである。
またこの事例については,消極的地役権を,
要役地所有者からの積極的行為を要求しないと いう承役地のための権利であると見るアプロー チもある。このアプローチでは,消極的地役権 がeasementとして認められない理由として,承 役地所有者がeasementが発生することを認識で きない可能性があり,その取得を予防できない からとしている。[Green2001:104]
1−4.easementの取得
easementを取得するには,多くの方法があ る。主な方法としては,捺印証書または遺言に よる譲与をもって取得する方法である。この譲 与には明示・黙示・時効取得による方法があ
り,留保(reserve)による取得も譲与によるも のである。またそれ以外の方法として,制定法
による取得もある。以下,簡単にまとめる。
(力 制定法による取得
制定法による取得は,大抵の場合が特定の 地域のみに関する個別法律(localact)である。
例えば1754年個別法(28Geo.2,C.沌)では,特 定の者に対して,運河へと続く小川の水流を変 える権利を認めた。そうすることで公共の利益 に資するからである。この法律は後に運河支持 権(rightofsupportforthecanal)となった。ま た囲い込み法(InclosureAct)は,土地の入会 権を解除する(入会権者の権利を剥奪する)も のである。
easementと類似する権利に関しては,一般法
で定められる。地方自治体や公共事業の権限者 に,配水管やガス管,電気ケーブルや水道管を 設置する権限を与えるような場合である。こ うした権限は,eaSementの特性を備えた他人の 土地を利用する権利を発生させるが,全ての要 件を満たす必要はなく,例えば要役地の存在は 不要である。lRiddalll993:293;Megarry1975:
827]
② 明示の譲与・留保による取得
明示の譲与による取得は,捺印証書によって 行われる。A地の単純保有権者がB地の単純保 有権者に対してeasementを譲与するという設定 において,①現在権たる絶対単純保有権もしく は絶対定期貸借権と同等の権利が譲与される場 合,また②捺印証書により譲与される場合に は,それはコモンロー上のeasementとなる。一 方で,①の条件を満たさない場合や捺印証書に よらない譲与の場合,これはエクイティ上の easementとなる。
コモンロー上のeasementはまた,明示の留保 によっても発生する。例えば,土地所有者Aが 土地の一部(承役地)を売却する場合,Aは売 地に対して,残された土地の便益のために通 行権などのeasementを留保することができる。
1925年以前は,売主がコモンロー上のeasement を取得するには,買主がeasementを売主へ再び 譲与するという手続きが必要であった。しか し1925年財産権法の制定により,売主は買主 からの譲与なしにコモンロー上のeasementを留 保できるようになったのである。[Green1980:
96−97]
(彰 黙示の譲与・留保による取得
もともと要役地と承役地が同じ所有者の下に あり,要役地が売却された事例を想定する。こ
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の場合,ある条件が満たされると,売主が保有 する承役地にかかるeasementが,黙示の譲与に よって取得されたことになる。その条件は2つ あり,必要による方法(ofnecessity)と共通の 意図による方法(ofcommonintention)である。
[Chappene1992:93−95]
必要柱よる方法:要役地が公道へ直接通じる ルートを持たない袋地であるような場合,買主 は承役地を通るeasementを黙示的に取得する。
共通の意図による方法:要役地が特定の目的の ために譲渡された場合,目的を達成するために 絶対的本質的要素であるeasementが黙示的に譲 与される(7)。
原則として黙示の留保による取得は認められ ないが,上記の2つの方法による場合は,例外 として認められる。その内容は譲与の場合と同 様である。
1925年財産権法では,62条で土地の譲渡とと もに移転する権利が挙げられている。この条文 の目的は,ある区画の土地が現在のeasementを 要役している場合,この要役地の譲渡によっ て,自動的に新しい所有者に権利が移転すると いうことを再確認することである。
④ WheeldonvBurrows[1879]12ChD31.
この事例は,黙示の譲与に関して上記以外の 法理を導いたものである。事例としては以下の 通りである。前所有者(譲与者)が土地を分割 し,一方を原告の夫に(後に受遺),もう一方 を被告に売却した。被告の土地には納屋が建っ ており,窓が3つ付いている。後に原告が,自 分の土地についての制限のない利用を主張する ため(被告の採光権の有無を確認するため),
被告の窓に画する位置に板囲いを設置したとこ ろ,被告がこれを打ち倒した。そこで原告は,
被告の行為が不法侵害であるとして訴えを提起 した。被告は,建物が譲渡された時点で,す でに窓は明らかに継続したeasementを有してお り,こうした窓や採光は譲与者に対して明示 的・黙示的に留保されており,その権利は現在 被告に帰属していると主張した。
この裁判では,新しいルールが提案された。
基本的な原則は,売主が自分の土地の一部を売 却すると,買主はその土地に関するあらゆる権 利や便益を,売主が売却時に利用していたのと 同じ状態で取得することができる,ということ である(これらの権利は売却前はeasementでは
ない。というのは,同じ者が要役地と承役地を 所有していた場合,eaSementとなり得ず,準地 役権となるからである)。このルールでは,① 譲与時に売主によって準地役権が利用されてい たこと・(参この利用が継続的で明白である,も
しくは土地の合理的な利用に必要であること,
が要件となる。このルールはまた,土地所有者 がその土地を分割して同時期に複数の者に売却 するような場合にも適用される。この場合,準 地役権の買主は便益を受け,また義務を負う。
判決では結局,譲与者は土地の一部を売却す る時に,採光権についての留保をしておらず,
そのため被告にも権利は移転しないと結論づけ られた。[Green2001:108]
⑤ 時効による取得
長期間にわたって他人の土地を利用し続ける と,その利用がeasementとして時効取得される ことがある。時効収得は,承役地所有者の黙認
(acquiescence)が基礎となっている。そして法 は,長期間継続した黙認という解釈でもって,
easementの譲与を推定している。
こうした権利の取得には,次のような条件
が課せられる。まず,利用が権利のための利 用(asofright)である必要がある。権利のた めの利用とは,それが強制(brce)によるもの でも,内密に(secredy)行われたものでも,許 可(permission)によるものでもない,という
ことである。柵を取り壊したり,フェンスをよ じ登ったりというのは強制によるものとなる。
内密ではないとは,承役地所有者であり自分の 権利を守るのに勤勉である合理的人間が,(利 用されている)権利を発見する合理的機会を有 している,ということである。そして,利用は 許可や同意によるものであってはならない。た とえ口頭での許可であっても,時効取得は否定 される。しかし許可が取り消された後でも利用 を継続しているような場合には,権利のため の利用となる。[NottinghamLawSchool1996:
315−316]また,利用は継続的なものでなけれ ばならない。そして時効取得できるのは単純保 有権と同じ期間のものだけとなる。
時効取得の方法としては,コモンロー上の時 効取得,授権証書喪失の法理による時効取得
(lostmoderngrant),1832年時効取得法,の3つ がある。
コモンロー上の時効取得:コモンローは時効取 得のための2つの方法を有している。初期の 法理では,権利のための利用が法的記憶の開 始時(1189年に擬制)より行われてきた場合,
easementが時効取得されるとしている。長期利 用(最短で20年)が証明されると,法は1189年 から利用が始まったと推定するのである。
授権証書喪失の法理:コモンローの提示する2 つ日の方法が,授権証書喪失の法理による時効 取得である。申立人による権利のための利用が 20年以上あると証明されたが,その利用が現代
(moderntimes,1189年以降)に開始されたこと が明らかである場合に,裁判所が,その利用が 始まる前にeasementが譲与されており,授権証 書を喪失したと推定する法理である。
1832年時効取得法:この法律では,採光権と 採光権以外のeasementに分けられている。採光 権以外のeasementでは,権利のための利用に ついて,20年もしくは40年の(中断のない)継 続的利用を証明する必要がある。20年の場合,
easementや採取権(採取権は30年)は,便益が 20年という期間より前から利用されてきたとい うことのみを証明すれば認められるが,こうし た権利が現在失われていると証明されると,却 下される。40年(採取権は60年)の利用が認め られた場合,権利は絶対的で取り消すことがで きないものとなる。
採光権の場合,20年間採光を中断なく現実に 利用していた場合に成立する。しかし承役地所 有者が書面により同意していた場合は,申立て は却下される。この利用は,権利のための利用 や,所有者の利益のために必要な利用である必 要はなく,現実の利用で十分である。[Green
1980:99−104]
1−5.easementの消滅
easementは制定法,権製革畢如甲S亘__皐車 混同(unityofseisin)の場合に消滅する。
①制定法による消滅
古い時代では,囲い込み法によりしばしば 権利は消滅した。今日では1965年入会地登記 法(CommonRegistrationAct)で,入会地上で 豚を飼う権利や薪を集める権利はもはや人々に とって死活問題ではなくなっているとして,入 会地の所有者に権利を消滅させることを認め
イギリスの土地利用における地役権について 149
た。1971年都市農村計画法では,開発において 地方自治体がeasementを終わらせることができ る。さらに1990年都市農村計画法では,地方自 治体は計画目的で取得した土地について,それ がいかなるeasementや許可,特権,土地に付加 する権利,自然権としての支持権を含む他の土 地に影響を与える権利を伴っていようと,開発 できるとされた。[Green2001:111;Burn2000:
610−611]
② 権利放棄による消滅
権利放棄による消滅では,明示の権利放棄 と黙示の権利放棄に分けられ,さらに黙示の 権利放棄は,放棄(abandonment),要役地 の変更,承役地の変更,契約目的の達成不能
(frustration)を含む。
明示の権利放棄:捺印証書によって明示的に権 利放棄がなされた場合,権利は消滅する。捺印 証書のない当事者間の同意では,エクイティ上 の強制力を持つにすぎない。
放棄:承役地所有者にとって,放棄の意思を証 明する責任は非常に重いものである。一般原則 として,要役地所有者が権利を放棄しようとし ても,その権利は状況から導き出される適切な 推論によって判断される。必然的に放棄を暗示 するような状況がないならば,単に利用がない というだけでは問題を判断することはできな い。もし利用がないということが,要役地所有 者が自分の権利を放棄する意思を待ったとの推 定により説明できるならば,放棄が認められる が,権利者が自分の権利がまだ有効であると考 える状況であるならば,放棄は認められない。
要役地の変更:easementの権利行使が不可能も しくは不必要となるような要役地の変更は,権 利放棄の意思とみなされる。例えば水流権が水
車場に付随している場合,(水車を取り替える という意思なしに)水車が取り壊されたなら ば,eaSementは黙示的に放棄される。
承役地の変更:承役地所有者は,通行地役権の ルートを変更するような権利について,そうし た権利がeasementを譲与する際の条件であった とか,その後権利が与えられた等の事情がない 限りは,承役地変更権を有しない。しかし,そ うした権利を持たないとしても,変更に対する 合理的な反対がなされない場合は,eaSementへ
の妨害とはみなされない。
契約目的の達成不能:譲与時から状況が変化 し,要役地への便益の提供が止められている場 合には,再び便益が供される実質的可能性がな いならば,eaSementは消滅しうる。[Burn2000:
611−614]
(郭 占有混同による消滅
要役地と承役地の所有権が同じ所有者の下 で統一された場合,全てのeasementは消滅す る。というのは,土地所有者は自分の土地を好 きなように利用でき,以前は他人の土地を利用 するために設定されていたeasementも,当然に 自分の所有権に付随する権利の1つにすぎなく なるからである。しかし,採光権の承役地所有 者が要役地を取得したが,要役地に賃借人がい るなど,所有と占有が分離している場合には,
easementは消滅しない。[Burn2000:614]
1−6.コモンロー上のeasementとエクイ ティ上のeasement:登記との関係 easemenfは法組な権利と_して認められてい る。その権利は1925年財産権法に従い,現在 権たる絶対単純保有権(feesimpleabsolutein possession)または絶対定期賃借権(termof
㌍arSabsolute)の期間と同様になる。そして制 定法,捺印証書による譲与,時効取得のいずれ かによって発生する。もしこうした要件を満た さなければ,それはエクイティ上のeasementと なる。例えば被譲与者が生きている間の権利 であるとか,捺印証書によらない契約により easementを譲与した場合などである。また土地 がコモンロー上の不動産権でない場合も,エク
イティ上のものとなる。こうした区別は,第 三者に対してeasementを強制する場合に重要と
なる。一般的原則に従うと,コモンロー上の easementは全ての者に強制でき,エクイティ上 のeasementは善意有償の第三者には強制できな いことになる。
コモンロー上のeasementは1925年不動産登記 法(LandRegistrationAct)の中で,登記なくし て対抗しうる権利(0Verridinginterests,以下O I)として認められている。これは,登記され ていないにも関わらず土地の譲受人など第三者 に対抗できる権利で,現地調査や照会などの方 法で確認しなければならないものをいう[囲生 1990:38;金光2001:58]。何がOIに当たるか は70条でリストとなっていて,その中の70(1)
(a)に地役権に関するものが挙げられている(8)。
一方でエクイティ上のeasementは1972年土地負 担法(LandChargesAct)により,登記が可能
となった。そのため登記をしていないエクイ ティ上のeasementは,コモンロー上の不動産権 を有償で取得した者に対しては無効となる。
エクイティ上のeasementは1925年法のOIリ ストから除外されるため,長い間OIではない と考えられてきた。こうした考えを基礎とし て,次のようなケースはOIに当たらないとさ れた。①第一登記(nrstregistration)の際に存
在していたが,登記に記入されなかったエクイ ティ上のeasement・②登記された土地について 明示の譲与または留保により取得したが,登記 に記入されなかったた捌こエクイティ上の効果
しか得ることができなかったeasement。
しか しCelsteelLtdvAltonHouseHoldings Ltd[1985]1WLR204.によって,この解釈は 修正された。これは石油会社がガソリンスタン ドに洗車機を設置しようとしたところ,フラッ トの賃借人にその土地の通行権が設定されてい た事例で,通行権がエクイティ上のものである ことからOIとして保護されるか否かが争われ た。この判決で裁判官は,OIリストの「登記 に記入されることにより保護される必要のある エクイティ上のeasementではないその他の地役 権(はOIとなる)」という記述を,他の制定 法の逸走や法原則による場合は,エクイティ上 のeasementは登記に記入されなくても保護され る,と解釈した。そして,1925年土地登記規則 de258に含まれる,つまり要役地に従属する ものとして所有者が公然と権利を行使し利用す るようなエクイティ上のeasementについては,
登記への記入による保護を必要とせず,OI となることができるとした。[LawCommission
1998:71;Barnsley1999:95]
その後2002年に不動産登記法が改正され,
easementの登記に関する規定は大きく変化し た。この法律ではOIの項目が大幅に削減され た。不動産を購入する場合にこうした権利の 有無を調査することが難しく,問題が多発し ていたからである。この中でコモンロー上の easementも,OIリストから外された。そのた めコモンロー上のeasementは,第一登記でもす でに登記されている権限の譲与でも,登記しな
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ければならないことになった。
具体的には,法の施行日までに登記された 土地について設定されているeasementについて は,引き続きOIとして残る。しかし施行日か ら3年以降は,以下のようなルールに従って判 断される。それは次の3つの条件を満たす場合 にOIとして残されるというものである。
(》 土地の取得者が,自分に有利に土地を移転 した際に,eaSementの存在について「実際 に認識」していた場合
(彰 権利の存在が「easementを行使しうる土地 に対する合理的に慎重な調査」によって明 らかな場合
③ easementが1年以内に少なくとも1回は行 使された場合
一方で施行日以降に権利が取得された場合,
明示の譲与により取得されたeasementは登記義 務を負い,登記しなかった場合はエクイティ上 のeasementと同じ効果となる。また,黙示の譲 与もしくは時効により取得されたeasementは,
施行日から3年間は移行期間として自動的にO Iのままとなり,それ以降は上記の3つの条件 のルールに従い判断される。
次にエクイティ上の権利であるが,同法の sch3・Para3・ではコモンロー上の権利のみを対象 としているため,OIではないとされた。法 の施行日までに設定されている権利に関して は,コモンロー上の権利と同様に扱われる。そ して,施行日以降に取得されたエクイティ上の easementは小権利(minorinterests)となり,要 役地所有者が自らの権利を保護するための登記 にnoticeを記入したならば,土地の譲受人を拘 束することができる。
小権利とは,登記に記入されることによって
自由保有権や賃借権を制限できる権利で,こ の記入がなければコモンロー上の不動産権を 取得した者に権利を主張することができない。
制限的約款やエクイティ上の権利がこれであ り,1925年不動産登記法でOIとして認められ なかった権利が小権利とされた。なお,2002年 法では小権利という用語自体は使われていな い。1925年法で認められた小権利にはnotice(告 知)・Caution(予告登記)・inhibition(土地取引 一時差止命令)・reStriction(不動産取引制限)
の4種類があるが,2002年法では2種類となり,
cautionはnoticeの中で保護されることになり,
inhibitionはrestrictionのタイプの1つとして取 り扱われている。
lnethowans2003:6−7;LandRegistrygov.2005:
2−6;Sextion2006:123−124]
2.easement以外の権利 2−1.easementと類似の権利
他人の土地を利用する権利についての事例の 中では,eaSement以外の権利が関わってくるこ とが多くある。そこでeasementと類似の権利を 見ることで,権利内容の類似点と相違点を明ら かにし,それぞれの特徴を検討する。
① 採取権(pro丘tえprendre)
採取権とは,他人の土地からその土地の産物 や土壌の一部を採取する権利をいう。例えば,
魚探りや家畜の放牧,芝を刈り取る権利などが ある。eaSementとよく似た権利ではあるが,要 役地に付随するほか,要役地が存在しない属人 的な(ingross)権利としても使われる。その ため家畜を放牧する者は土地を所有しなくても 採取権を取得することができる。こうした点 で,要役地の存在を要件とするeasementと異な
る。そのため,採取権が要役地に付随する場 合,要役地の便益に供される必要があるので,
easementと同様になる。
また,eaSementのように権利の範囲が十分に 限定される必要があり,承役地全体に対する要 求は認められない。さらに採取権は,法人格 を有しない集団であっても取得することがで きる。公共用地から薪を採取したり家畜を放 牧する権利などで,しばしば入会権(rightof common)と呼ばれる。[Green2001:105]
② 制限的約款(restrictivecovenant)
制限的約款は,ある土地に対して不作為義務 を課す不動産権(9)である。例えば,住宅地内 の土地にビルや工場や大型店を建設しないと いった義務などである。eaSementは消極的地役 権を制限しているため,eaSementでは認められ ない広範な消極的請求を制限的約款で認めるこ とが可能となる。一方で通行地役権のような積 極的地役権は,制限的約款の対象とはならな い。eaSementとの類似点としては,要役地と承 役地の存在を要することがある。
制限的約款は,eaSementとは異なる歴史的経 緯をもつ。制限的約款が承役地所有者に対し て主張できるようになったのが,19世紀中頃で あったのに対し,eaSementは中世にさかのぼ る(10)。また,eaSementや採取権がコモンロー上 もしくはエクイティ上の権利であるのに対し,
制限的約款はエクイティ上の権利のみとなる。
そのため不動産の承継者が善意であった場合,
制限的約款を対抗できないことになるが,一方 でコモンロー上のeasementは善意悪意を問わず 主張できる。さらに,eaSementが土地所有者の 最も基本的な必要性についてのみ要求できるの に対し,制限的約款はアメニティとしての価値
を保護することができ,より広範囲の権利を請 求できる。そのためeasementでは認められない 眺望利益なども制限的約款では便益となりうる のである。
そもそもeasementは土地や建物を適切に利用 するために生まれたものであり,要役地と承役 地という二者間で問題となる。他方で制限的約 款は都市計画の一部として近隣者間で相互に機 能するものであり,土地所有者の行為が近隣地 の市場価値を下げるような場合に必要となっ たのである。[Lawson1982:130−135;囲生1990:
248−256]
③ 立入権(licences)
立入権もeasementと同じような状況で使われ るが,土地の保有と関係なしに利用できる属人 的な権利である。例えばAがBに対して,Aの 土地を通過できる権利を与える場合などで,も しeasementの要件を満たしていれば,この権利 は通行地役権となる。そこでeasementとの相違 点が問題となる。
まず,eaSementは要役地を必要とするが,立 入権は不要である。次に,eaSementはコモン ロー上もしくはエクイティ上の権利であるが,
立入権はエクイティ上の権利のみとなる。また easementを設ける際には形式的なルールに従う ことになるが,立入権にはそのようなものはな い。さらに,eaSementは土地を占有するような 一般的権利を与えることはできないが,立入権 は可能である。例えば,下宿屋の1部屋を占有 する権利は立入権であって,eaSementではない。
[Megarry1975:819−820]
④.自然権(naturalright)
自然権とは土地所有権に付随する一般的権利 の1つで,隣地所有者にその土地上で何らかの
イギリスの土地利用における地役権について 153
行為を差し控えるよう要求するものである。自 然権は自動的に土地所有権から発生するもので
あり,この点で譲与や時効によって取得する easementと異なる。主に支持権と採光権,水流 権がその内容となる。
支持権:支持権とは他人の土地によって自らの 土地が支持される権利をいう。eaSementとして
の支持地役権は特定の要役地所有者の便益のた めに建物を支持することを目的として取得され るが,自然権としての支持権は建物ではなく土 地を支持するためのもので,全ての土地所有者 が有する権利である。
採光・水流:土地は自然な状態においては,上 空を通して光を受け取ることができ,これは不 法行為法によって保護されている。しかし建物 においては自然権は成立しない。水流について は,限定された経路を自然に流れる水流につい ては自然権となる。そのため,流れが妨害され たり進路を変えられた場合,河岸所有者は訴 えることができる。Uackson1978:24;Megarry
1975:814]
⑤ 公衆権(pubhcriか)
公衆権は,公衆のメンバーとして誰でも行使 できる権利である。公道を通る権利や海で魚を 採る権利など,土地の所有を必要としない一般 法による権利である。
⑥ 慣習権(customaryright)
慣習権は,ある地域の住民(限定されず変動 的)に対し,土地所有とは関係なく便益を与え る権利である。例えげ,教会に行くために他人 の土地を通る場合や,漁民が他人の土地で網を 干す場合などである。内容に関してはeasement
と類似するが,主体が変動的であるということ と,それゆえ譲与の対象とならず,譲与によっ
て取得する権利ではない(慣習により取得す る)という点で異なっている。Uackson1978:
25−26]
以上から,eaSementと他権利との類似点およ び相違点に注目すると,要役地の存在・権利内 容の範囲・利益を受ける者の範囲,という3点 が見えてくる。どれもeasementが成立するため の要件であり,eaSementとしては要件を満たさ ず認められない場合に,他の方法によって他 人の土地を利用する権利を考えることができ る。例えば採取権であれば,権利の内容は限定 的であるが,要役地の存在が不要であり,権利 対象者も法人格を有する必要がないという点 でeasementよりも緩やかに解されるため,多く の者が利益を受けることができる。一方で制限 的約款は,要役地が必要で利益を受ける者も 限定的であるが,権利の内容はかなり広範に わたる。そのため,内容が明確に限定される easementでは保護されない権利でも,制限的約 款で認めることが可能なのである。
2−2.制定法
次に,こうした権利が制定法となっている場 合に,どのように扱われているのかを見る。
① 採光権法(RightofLightAct1959)
この法律は1832年時効取得法(Prescription Act)を修正するために作られたものである。
1832年法では,20年もしくは40年の時間の経過 でeasementや入会権,採取権などを時効取得で きる。この中で採光権については,20年間中断 なく利用していた場合に,絶対的で解除条件の ない権利を取得するとされている。
1959年法で修正された背景としては,第二次 世界大戦によりダメージを受けた土地や,大戦
後に課せられた都市計画の規制により開発が制 限された土地について,採光権の時効規定を見 直す要請が出てきたことがある。その中で一時 的規定としては,次のように定められた。戦争 でダメージを受けた建物の再建築については,
隣地所有者がその土地に採光権を取得していた 場合,厳格に阻止される。また一定の条件の下 で,時効期間が20年から27年に延長される。
永久的規定としては,以下の通りである。つ いたてや囲いを妨害物とすることによって採光 を侵害することに代えて(11),承役地所有者が 地方土地負担(locallandcharge)に記入するこ とにより,(現実に妨害物を設置しなくても)
時効を中断することができる。その際土地裁判 所が,この記入によって影響を受ける全ての者 に通知がなされていること,もしくは一時的記 入が特別危機地(exceptionalurgency)になされ ていることを認定する必要がある。この記入で は,承役地と要役地が特定され,承役地に設置 する妨害物の位置とサイズが指定される。こう
した仕組みは,採光を妨害するための囲いを設 置することに対して,計画許可が却下されると いう困難を避けることができた。この記入の 効力は,記入を解除するか失効されない限り は,1年間続く。[Wade1975:864−865;Maurice 1972:150−152;西垣1997:321]
② 近隣地アクセス法(AccesstoNeighbouring LandAct1992)
これは要役地所有者が,承役地に立ち入る easementを有していなくても,要役地の維持や 修繕のために承役地に入ることを可能とする法 律である。要役地の建物が承役地との境界線に 接している場合などに特に有用である。従来は 建物を修繕するためのアクセス権は一般的では
なく,承役地に立ち入るためには隣人の許可が 必要であった。
1992年法はこうした問題を解決したが,しか しこの権利は法定のeasementとして認められた わけではなく,県裁判所(countycourt)の命 令を得て隣地に立ち入る権限を与えられたもの にすぎない。この命令は,承役地への立ち入り が要役地の土地や建物を保護するのに合理的に 必要で,立ち入ることができなければ保護でき
ない,もしくは実質的に保護がより困難となる 場合に許可される。立ち入りが隣人の土地利 用や利益の享受を妨害したり,苦難となるよ
うな場合は,命令は出されない。アクセス命 令が出されると,裁判所は立ち入る日にちや 時間,保険事項などの条件を課すことになる。
[NottinghamLawSchool1996:302]
この法律では建物の修繕以外にも,次のよう な目的が認められる。①配水管や下水管,パイ プやケーブルの清掃・修理・交換・(卦手入れを しないことで損傷や病気にかかったり,根が不 安定になったり,枯死するような垣根・木・そ の他の植物の処置・伐採・移動・交換・③排水 溝の埋立・清掃。
③ 共用壁法(PartyWallsAct1996)
共用壁(partywan)とは,隣接する2つの土 地を隔てる障壁であり,①壁牢畢車型珍隼_・② 壁が完全に一方の土地上にあるが,もう一方 の所有者が壁を利用するeasementや他の権利を 有する場合・③壁が境界線上にありお互いに easementを有している場合などがある。
この法律は,隣接する土地所有者が共用壁を 修理したり取り壊す場合などに,規定された通 知を行うことで隣地に立ち入る権利を与えられ るものである。この通知は近隣地アクセス法に
イギリスの土地利用における地役権について 155
よる手法よりも簡易なものである。通知には住 所や作業内容,作業の開始日などが記載され る。手続きとしては,まず作業開始日の2週間 前までに近隣者に作業を行う旨の通知をし,近 隣者は書面での同意,もしくは異議を唱える。
この同意が得られなければ,作業は開始できな い。また,共用壁を維持することは隣地を保護 することにもなるので,かかった費用について
は補償請求を行うことができる。[Green2001:
113]
④ 農村地帯および通行権法(Countrysideand RightofW呼Act2000)
この法律は,それまでに公衆通行権が設定 されていない農村地帯について,公衆が散策 できる権利(righttoroam)を認めたものであ る。この新しいアクセス権は,開放された農 村や登記された公共用地から成るアクセス地
(accessland)に適用される。対象地について は,CountrysideAgencyが地図を作成する義務
を負う。なお,同法のsch.1で規定されている 例外地(12)はアクセス地に含まれない。またこ の法律は,公衆通行権に関する規定を現代化す
る一方で,野生動物の保護を強化したり,特別 自然美地区の手続きを明らかにするなど,公衆 のアクセス権と土地の保全との調整を図ったも のであると言える。
むすび
イギリスのeasementは成立要件が厳しく定め られており,請求者の範囲や権利内容が明確に 限定されなければならない。そのため,例えば 私法の枠を超えて公共的目的のためにeasement を用いることは許されない。しかし,イギリス ではeasement以外にも他人の土地を利用する権
利が多く確立されており,またeasementの中で もコモンロー上とエクイティ上という区別を用 いることで,状況や要請に応じた細かな保護が 図られている。
このような土地利用調整における全体的な システムの中に,eaSementは位置づけられてい る。他の制度と比べて範囲が厳しく制限される のは,強い権利性が認められるからで,権利性 が強いのはeasementが土地の有効利用のための 本質的要素だからである。一方で,時代が推移 すれば人々の生活様式やビジネスのあり方も変 化する。それに従って求められる権利も多様化 する。eaSementはそうした要請に応じ,新しく 権利を認める柔軟性もまた備えている。変化に
対応するという点で,eaSementはさらなる発展 が望める制度であると言えるだろう。
〔投稿受理日2007.09.21/掲載決定日2007.11.29〕
注
(1)公園に近接する家屋の所有者が,その公園を自 分のとジャーガーデンとして利用する権利を取得 していたが,第二次世界大戦中に政府によって権 利を奪われた事例。法的権利が剥奪された場合,
権利者は補償を受けることができるため,当権利 がeasementとなるか否かが争われた。
(2)BaileYVStephens[1862]12CBNS91.
(3)WebbvBird[1862]13CBNS841.
BrYantVLefever[1879]4CPD172.
坤」坦理SY_P甲苧__[些]」Q畢76. __
(5)MuuinervMidland[1879]11ChD611.
(6)CollinsvHomeandColonialStoresLtd.[1904]
AC179.
(7)例えば,中華料理店を経営するために建物を リースした事例。全ての不快な臭いを除去し,公 衆健康規則に従うという約款を結んでいたが,そ のためには新しい換気装置を設置する必要があり,
裁判所は当事者の共通の意図を認めた。Wongv
Beaumont[1965]1QB173.
(8)入会権,排水権,慣習権(消滅するまで),公衆
権,採取権,羊の放牧権,通行権,流水権,そし て登記に記入されることにより保護される必要の あるエクイティ上のeasementではないその他の地 役権。
(9)covenantの意味から対人的な契約関係と結びつ くが,制限的約款は土地の譲渡とともに移転する ため,不動産権となる。
㈹ 産業革命により都市に人口が流入し,その結果 過密による住環境の悪化を引き起こした。そうし た問題に対応するために制限的約款が生まれたと 言われる。
㈹ 例えば次のような場合。AとBが隣続きに建物 を所有しており,戦争によりBの建物が破壊され 空地となった。そのためAは自分の建物のB側の
_壁に窓を取り付けた。15年が経過した時点で,あ と5年で時効にかかることを認識しているBが,
自分の土地上にAの窓への採光を妨害するための 囲いを設置した。
㈹ 20メートル以内に住宅がある,公園や鉄道,ゴ ルフコースとして使用されている,など。
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