米国における秘密信託(Secret Trust)について
著者
浅野 裕司
著者別名
Y. Asano
雑誌名
東洋法学
巻
33
号
2
ページ
35-49
発行年
1990-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003537/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja米国における秘密信託︵G
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浅 野裕 司
はじめに 米国における遺言︵誇け惹εは、遺言信託︵諺富旨①溝鋼蔓鉾蕊榑︶を以って為す場合が多くなってぎているとされ る。遺言の有効な作成に関しては各州法により形式的要件が定められているが、少数の州においては統一遺言検認法 ︵¢鉱幽身導ギoび象ΦO&o︶が採用されている。遺言信託は、遺言によって信託が設定されたものであるが、信託の設 定について頂頭による約束など遺言外の指示によって為され、遺言書の文言上は信託設定文言が全く表明されていな いために当該の遺言によっては信託設定の意図が全く窺知されない遺言信託もあり、これが秘密信託︵ω8曇酔議8 である。この秘密信託は、遺言外で遺言者と受遣者とが儒託について合意していれば、受遺者が信託的に保有するこ とに同意した者のために擬制信託乃至法定信託︵8霧群9牙①怠誘6︶として認められるとするのが一般的な見解であ る。そこで、米国における秘密信託を中心に論究を試みることにするが浅学非才のため愚かなる解釈上の誤りをして 東洋法学 三五米国における秘密信託︵ω①R9浮器汁︶について いるかも知れない。大方の厳しい御叱正と御教示を仰ぐことができれば幸甚である。 三六 米国における遺言信託について 遺言︵一婁惹は︶は、遺言者︵奮韓R︶の死後に実行されるべき意思についての法による表明ということができる。 具体的には死後における財産の分配を指示した文面をいうことになろう。米国における一般的な正式遺言︵8H導亀 ≦白︶に関しては、法的に有効な遺言書作成のための厳重ともいえる形式的要件が定められており、遺言者が通常二 名以上の証人の面前に遺言書を提示して、それが自己の遺言書である旨を告げ、その証人の面前で署名を為し証人が ︵1︶ これにまた署名を為す。証人は、通常、遺言による財産処分に対して利害関係人であってはならず、また、証人は遺 言内容を熟知解読の必要もなく、遺言者の署名と遺言能力を証明するのみである。この様な遺言は法定の要件と手続 きに従って作成し認証されたものであることが必要であり、遺言の署名は不当威圧によって為されたものであっては ならない。遺言が遺言検認裁判所︵留瑛轟簿Φ、の○○毎歴︶に付託された場合、検認は遺言に必要な一切の条件が整って いることを裁判所が確認したとき遺言を有効とする。米国における遺言法は一般に遺言能力を次の様に定義してい る。まず自分自身が遺言を意図していること、自身が遺言により処理を考慮する財産の性質と範囲、法により本来の 受遺老と定められている親族の名前や身許などを自己において理解し得る判断力とみている。こうした遺言能力 ︵誘欝導。馨鋤蔓8短。ξ︶は正常な精神︵8鐸&巨且︶と一定の年齢︵州により多少差があるが一八歳以上となって いる︶が基本となっている。
︵2︶ 遺言信託︵紳霧富営の簿鋤蔓叶議8は、一般に遺言者の家族もしくは被扶養者といった近親関係の者のために為され、 その目的は残余権︵冨導帥ぎα霧︶の設定とみることができる。遺言信託を設定するには、遺言法の要求する要件を充足 し、さらに遺言中に信託を設定するのに必要な信託法上の要件である信託意思の存在、受託物及び受益者の特定が表明 ︵3︶ されていることが必要とされる。遺言信託に関する統一法としての¢鼠癌R琶臼oω欝欝①糞⇔蔓︾段蕎o窃$↓㎏諾富︾9 があり、これまでに四三の州とコpンビア特別区が採択しているが多数の州が同様な制定法を有している。 ︵1︶ 米国における遺書の作成方式等については、石川稔﹁アメリカにおける自筆証書遺言の方式﹂ジュリスト七一五号四五頁 以下、同﹁遺産相続にしひがしくアメリカ篇㈲と国際税務三巻一二頁以下、同﹁アメタカ法における遺言による信託の設 定と遺言書の作成﹂信託法研究第九号六四頁以下が詳しい。 ︵2︶ω8團霧沖寓巴ぴ8ぴU①8留9.菊陰譲韓窃§血↓摸器”︵一。諺︶“↓ぎ§。 。準 弓●2含ωoP欝&ぴ8闘o協浮。い碧o臨≦箆潮 ︵浮α亀。お器︶甲幻oぴ①慧ピ。鋒窪冨戸≦箆。弩山↓摸ω酔ωぎ節2暮ωぼP︵おお︶唇 ︵3︶蒙8獣①”≧︷o鼠俸切曲鈴鼠︾U。8留暮。 。.田鑓虜餌&§霧需ふ爵お。。縛ζ貴男び。募齢。ぎ節鼠餌曙︾峯9①&8”↓ぎ 9類無09a①濤の、国ω蒙8︵お置y︾≦。ω8貸︾ぼ坤凝①露Φ簿無砦o萄≦竃曽墓葺ぎ冨器”㎝㎝繕o o●なお、統一法 までの経緯は、○箆090曙8琵警OρダΩ①<①一参傷る緯護器ωるo 。ρ一霧客戸露O︵お。 。㎝︶の判決以後、遣言外の独立 した意味をもつ事実の法理によって修正された信託への注ぎ込み︵陽霞o︿R嘗霧蝕︶を肯定する判決がでる一方、組み込み の法理︵3。鼠琴亀ぎ8趨o轟詠8ξ誘︷R窪8︶によって注ぎ込みを肯定することが困難であったため、制定法上これに 対処しようとする動きがあらわれ、統一法の作成となったとされる。 二 米国における趣 慶①霞9目崔。 腹酔︵秘密信託︶の概要 遺言者は、その意図された受遺者に財産を直接遺贈するか、 東 洋 法 学 信託の形式をもって遺贈するかの選択をする権利を有 三七
米国における秘密信託︵ωoR簿↓控εについて 三八 ︵1︶ している。遺言者の近親または被扶養者のために遺言で設定される信託が遺言信託︵奮蜜跨。導餌蔓酔議ω紳︶といわれる ものである。遺言者が遺言により財産を他人に遺贈しようとするときに、その不動産や動産の受遺者が特定の信託の もとに財産を保有するであろうということに遺言者と同意しておぎ、しかし信託や信託条項を設定するという遺言者 の意図が遺言の文言中に表示されていない場合、遺言者が意図し創出する信託を遺言信託であるとするのは、遺言法 の要件を充足しないため無効であるということは明白な様に見える。その様な場合、受遺者がその財産を保有するこ とが許容されるか否かという疑問が生じる。もしそうでないとするならば、誰れがその資格を取得するかということ ︵2︶ になろう。このことは当を得た表現ではないが秘密信託︵ω8憲窪5δ︶の一つとしてみることができる。秘密信託は、 他人のために信託を以って保有するという受遺者による明示、もしくは黙示の約束により、遺言者が受遺者に財産を 遺贈する場合の信託であり、信託であるということを遺言書の文言上に全く表示することなしに受遺者に財産を与え た場合、遺言者がその設定しようと意図した信託の内容を受遺者に通知して、その承諾を得たときは、受遺者すなわ ち受託者は信託履行の義務を負うことになる。但し、その場合には、通知と承諾は遺言作成前乃至作成時までに為さ ︵3︶ れることが必要である。こうした秘密信託は、財産が絶対的に受遺者に贈与される完全秘密信託︵︷色器R簿建録ε と、絶対的にでなく信託受託者としての資格で受遺者に付与される半秘密信託︵紹導冨①R露窪門韓R蜜獣器Ω9窪霧紳︶ ︵感︶ とに分かれる。 米国においては、秘密信託は遺言者の意思によって遺言により設定することは認められない。そして、遺言信託が 成立しないとしても、信託による遺贈を受けた受遺者が財産を絶対的に取得することは浬鼠蔓︵衡平法︶に反する
︵5︶ ことになる。米国において、この秘密信託が如何なる信託に類するか、という難しい問題があるが、米国信託法リス ︵6︶ ティトメソト第五五条は、Oo霧縛摸&話建器酔︵擬制信託乃至法定信託︶として、その財産権を保有する、ことを定め ており、また、一般的見解として、遺言外で遺言者と受遺者とが信託について合意を為していれば、受遺者が信託に ︵7︶ 基づいて保有することに同意した者のために法定信託と認めている。ooΦR象↓議。 ・酵を○露鋒8江くo嘗霧けに類するも のとするのは、受遺者の財産取得は不法ではないが、もしもそのまま受遺者に財産を所持させるならば、それは不当 に利得させることになるので、衡平法によってOo匿礎償9等Φ紬議無が成立するものとされると考えられる。こうした ハ︶◎窃霞8江くの轡議ω跨は、わが国では、法定信託、擬制信託、構成信託、推定信託なる表現を以って説明されてきてい ︵8︶ るが、一般には法定信託と訳して説明されている。スコット︵︾・≦・ω8ε教授は﹁8誘窪8訟ぎ#器爵は、財産に 関する権限を保有する者が、それを留保することが許されるならば不当に利得するであろうという理由に基づぎ、そ ︵9︶ れを他人に譲渡すべぎ衡平法上の義務︵㊦名欝鉱①蜜な︶を負う場合に生ずる。﹂としている。一応、ここでは、8霧− 建9α毒紳議鶉は擬制信託乃至法定信託なる訳語を用いておくが、器R9紬讐落の信託分類上における位置づけに関し ては論争のあるところであり、秘密信託における遺言者の明示された意図が受遺者に伝達かつ黙認される点を根拠と して、これを露震霧窪霧汁と解する説と、遺言の外部で受遺者に課せられる衡平法上の義務を中心として、これを 8霧窪8江お窪器けと解する説がある。また、︷巳ぐ器R簿窪霧けにおける対立者は、遺言上の受遺者すなわちXと遺・柵言 者の申立てた受益者であることを論拠にして、完全秘密信託は8器紬旨&誘酵疑舞であるとするものと、露鷺器。翼 叶議。 。けにおける対立者は、秘密受益者と塞巳江お嘗器轡︵復帰乃至帰参信託︶の受益者すなわち遺言者及びその相続人
東洋法学 三九
米国における秘密信託︵の①R露↓歪8について 四〇 であることをみて、半秘密信託はの図賢霧け盛訟︵明示信託︶であるとして分けて考察しているとみられるものもあ る。そこで8霧窪8薯Φ一議巽はω8舅霞霧けに関してはその本来的機能並びに適用範囲からみて、擬制信託の用語 を以ってするのが当を得ていると思料されるが用語のみに拘泥するのは避けたい。
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︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ 水島廣雄﹁信託法史論﹂二六六頁。図儀註p蜜。ぎ巳9炉霧齢男弩鼠o霧餌&ωR≦8。 Q堵お蕊。 摘稿﹁秘密信託︵ω①段98糞。 。瞥︶について﹂東洋法学第二七巻第一号、﹁秘密信託︵ωのR2↓讐8の特異性について﹂東 洋法学第二九巻第二号。 ℃ぼ¢℃●舅評暮F国ぬ鼠なき傷夢oいo毒o隔浮霧葺竈.零ー一〇〇 。い顕きび霞鋤泣鼠鎧留一㊦ざ窯○留導国彊搾ざ一〇艶aこ 窓卜 oOc 。⋮緯9︾霧瓢⇒●譲.ω83ピゆ霜98嶽ω“篭§①ー罷野 U薯峯じ ご.評昏Rき傷︾導ゲ8気瀬裟亀o塞暫↓ぽ窯o号旨ζ≦9↓議器葺げa‘題。o 。O⋮o 。o 。D海原文雄﹁。。。Rg嘗霧酔 ︵秘密信託︶﹂英米商事法辞典所収七一〇頁。 ︾●︸。○簿一①ざOo霧け讐9P︿o臼議茎︵お刈G 。︶︾o 。黛膨oa霧”O導岩鎚落魯導離帥器R。篤c 。o orP菊o︿。旨甜評盈巴舘 ωのR象↓讐。・錺⋮伽U①︿色o℃導o暮ー讐o oO窯&●ダ菊o多鉢 〇一ρ 水島前掲書二七一頁。 男①。 。欝冨導①纂o出艶のい帥名○︷8讐。。葺ω08疑8。伽誤● 海原文雄﹁信託の分類に関する一提言ー復帰信託と法定信託t﹂法政研究第四六巻二・三・四合併号五三九頁以下。わが 国では、この8霧酔摸&話け摸の酔を法定信託と訳していることが多く、その場合の説明は一般的に法定信託は、当事者の信 託設定の意思とは無関係に、衡平と良心の理念に基づいて信託の関係が形成されるもの、また、法定信託とは、不当利得が 存する場合に当事者の意思とは無関係に法の働きにより、利得者を受託者とし、その利益を受益者として信託が成立する ものと擬制する制度である、とするもの、あるいは、法定信託は、当事者の意思にかかわりなく正義の意昧合いから衡平法 裁判所によって推定される信託である、とするものなどがあり、8霧簿8響。霞霧けを構成信託と訳されている場合の説明は、構成信託とは、ある人が財産権を所有している場合、衡平法の概念によりこれが利益を他人に移転する義務を課せられ るという疑制的な信託であって、その本質においては準契約︵ρ器の一8纂目8け︶と変らないとされている。 水島博士は、﹁法定信託の創設﹂について明解に論究され、結果信託又は帰参信託︵器の巳瓜轟塁o簿鍵霧け︶と推定信託 ︵。8馨讐9貯①霧の霞鍵霧貯︶につき、理論上の構成を説明され︵信託法史論一九六頁以下︶、衡平法裁判所に依り創定せら れた結果信託並びに推定信託は、今目英米においてあまねく行われる法定信託であって、⋮⋮とされておられる。 ︵9︶︾≦6ω8F萄≦o隔↓霊器”肇ミO. 三 受遺者による合意 米国信託法リスティトメント︵知のこ 。酔舞①導Φ導鉱昏①い餌名9↓讐ε第五五条は、秘密信託につぎ、ω﹁遺言によっ て財産権の譲渡を受ける者が、その財産権を信託として保有するという合意を為し、その合意を信頼して、遺言者が 財産権を遺贈する場合、受遺者は、合意した信託の受益者のための8霧窪8鼠誘一獲ω久擬制信託乃至法定信託︶とし て、その財産を保有する。﹂③﹁相続人あるいは、より近親の者が無遺言相続によって取得する財産権を信託として 保有する場合、その合意を信頼して、無遺言で死亡した者の相続人あるいは、より近親の者は、合意した信託の受益 ︵1︶ 者のために、その財産権を、8誘霞q鼠お建器酔に基づいて保有する。﹂としている。受遺者による合意については、 最初に遺贈が外面上は完全なる状態にあり、そして、後に信託条項に依ることなく信託を為そうとする意図が遺言中 に明示されている状態を考察するのが一般的であろう。例えば、Aは、BがCのために財産を信託において保有し、 またそれを伝達するというBとの約束を信頼して、財産を遺贈し、そして、Aが死亡したがBはその後、Aとの合意
東洋法学 四一
米国における秘密信託︵ω①R2↓毎3について 四二 を果さないことを仮定してみることにする。Cに、その財産の権利を付与することができるか。また、遺言者の財産 権を付与することはどうなるか。または、Bが、それを保有することが許されるかという問題があろう。仮にBが現 実の詐欺を為すとしたならば、生存者間の譲渡の場合と同様に、その財産をCのために擬制信託乃至法定信託︵以下 においては法定信託としておく︶として保有していると解することはさして困難ではないであろう。意図的に虚偽表 示を通してCが遺贈を期待するのを妨げることによりBはCに対して不法行為を為すことになり、そして衡平法は、 正しくは詐欺に対するのは別として、当事者を以前の状態におくことにより、その不法行為に対して明確な救済を為 すとも考えられる。その様に、BがCのために保有し譲渡するであろうという約束をAとした場合、もしBが遺言者 との約束を実行しようとしなくともBはCのための法定信託の受託者として適用することができる。同様の結果がA がCに対して遺贈を意図しているのを暴力あるいは不当威圧によりBによって妨げられようとしている場合において も適用される。Aの相続人または最近親者が詐欺、強迫あるいは不当威圧により、遺言を作成するのを妨げたり、も しくは受遺者がその様な方法で遺言の撤回を意図するのを妨げる様な場合も同様な結果が齎される。もしも、Bが詐 欺、強迫あるいは不当威圧を為すことなく、Cのために保有し、またはCに譲渡するという約束を唯単に果さないで いるという場合を想定してみることにする。その様な場合に於いても、権限の重大さによりCは、その財産をつまり 動産ばかりでなく、不動産においても取戻す権利が付与される。その様な場合、Bによる単なる約束は不充分である と言えるが、Bが約東した事実あるいは黙示の意思によりBがAに対して、Bに財産を遺贈するようにさせる、換言 すれば、Bの約束あるいは黙示の結果として、もしAがその様にしたいと思わないならばBに財産を遺贈しないであ
ろう。そしてBは、Aの意図するところを実行し、一方、Aは確かにCに財産を遺贈あるいはCの望むところにより 他の処分を為すということが、明らかにこの意味するところの全てである。しかし、若干の場合、現実の詐欺が存在 せず、また遺言者と受遺者の間に秘密の関係がない場合、その意図される受益者が取得する筈がないということが保 持される。勿論Cは遺言者が受遺者に法律上の義務︵一罐鉱oび凝呂8︶を課すという意思の充分な証拠がなければ救 済はされないであろう。意図された受益者に財産を付与することにより、遺言者の意思を強制するための裁判所によ って為される判断理由というものは一般的には不充分である。裁判所は、明示信託︵臼冥霧霞霧梓︶または契約は、 その様に強制可能なものではないと認める。しかしながらBはCのために法定信託において財産を保有すると裁判所 は判断する。普通、裁判所はBが約束の実行をしないことに対して、Bの行為の完全な濫矯は少なくとも、法解釈上 の詐欺であり、詐欺法︵ω$葺冨焦甲霞翻︶や遺言法︵ω欝言富鉱≦白ω︶は、詐欺が惹起されず、また増加させない 様に意図されていると思料し、BはCの授受に関して受託者としては違法行為を為している者とみるべきであると判 断しており、もしもBがその約束を履行する前に死亡し所期の成し遂げる充分な意図をもっていた場合、Bは約束を もし放棄していたならば不正直であったであろう、と言って満足する。Aの意図を実行するにあたり実際の困難なこ とは遺言法の中に存在する。Aは実質的には自分の正式に証明する遺言に、誰が自分の下賜金の受納者になるのかを 示さないで遺言の処理をしている。死の瞬間までAは好むところにより財産を譲渡することに関しては自由である。 その状態は、Aが死亡前に死後の財産の譲渡に関する契約を締結する場合に発生する事柄とは異っている。もしAが 死亡前にBとの間で、Cのために財産を信託する、あるいはCにそれを譲渡するというBの考えのもとに財産をBに
東洋法学
四三米国における秘密信託︵ω①R簿摩霧酔︶について 四四 譲渡の同意をし、また、もしその約束が締結されるならば、Aは遺言の処理をせず、その同意は、詐欺法の条項に違 反するならば、強制可能な契約である。しかし、その状態が、AがBに財産を譲渡するのを同意せず、ただ、もしA がBにそれを譲渡すると、BはCのためにそれを信託し、あるいはCに譲渡するであろうということに同意するのが 普通の状態であるということを想像してみたい。AとBの間に、如何なる契約も理解することはできない様に思料さ れるであろう。唯一、Bの同意で考えられることは、AとBによる財産の移転しかない。そして、それはAが死亡す るまで履行されず、そのときには、もはや相互の受諾はない。しかし、異論は単に技法以上のものがある。譲渡は実 は遺言のものであるか、Aは実質的には財産の有益な権利をCに遺言で遺贈することを試みている。それも、遺言法 の要件に従うことなくしてである。従って、もし財産が動産の場合としても、Cは取得すること認められないであろ う。つまり例え、財産が不動産の場合、Cに如何なる権利も付与されなかった若干の最高裁判所が、動産の場合、C がBに無理にその約束を履行させ、また財産をCに付与するという実際の目的は、詐欺法の中にではなく遺言法の中 に見い出される。また、それ故、不動産の事例の場合、Cは取得すべきである。例えBの約束がBの署名されたメモ により立証されたとしてもその様に考えられる。法律は遺言による遺贈の事例の場合、遺一 柵言者の署名と正式な証明の ある証書を必要とする。Bが署名を為す為さないにしても、Cが不動産か動産のいずれかを取得するのを認めること は、法律により唯一妥当な証拠であると明示するのではなく証拠に対して門戸を開くことである。しかも、もしBが 約束に反し財産を保有するのを許されるなら、Bは不公正に裕福になるであろうことは明確な様に見えるであろう。 その約東とは、遺言者がBに財産の遺贈を強制させることになるものである。
遺言法の趣旨は、それを強制することなしに、出来得る限りそのままの状態に当事者をしておくという目的のため に、Bの約束の証拠を禁止する様に見えないであろう。勿論、不幸にも仮説によりAは死亡し、財産はAに戻される ことは不可能である。しかも、もしAが財産を遺贈しなかったならば、それを取得するであろう者に、それを付与す るのが妥当な様に見えるであろう。換言すれば、遺言者の相続人あるいは最近親者もしくは残余財産受遺者のために Bに法定信託に基づく責任を課すことは妥当な様に見えるであろう。 生存者間の譲渡の場合、その法律の趣旨が、事態の進行を禁ずる場合に不正に富むこと避けるために後戻りを禁ず るべきではないとする意見もある。もしB自身、Aの相続人あるいは最近親者であるならば、そしてCのために信託 を為すこと、もしくはCに譲渡することを約束することにより、BはAに、Cのために財産を遺すという遺言をする のを、強いて控えさせ、しかし、BはAが遺言をするのを強いて控えさせることにおいて詐欺行為をしていない場 合、遺言法の趣旨に反することを除いては、Bが財産を強引に取得することができるという如何なる理論も存しない 様に思料される。 第三者に、臼頭による信託で生存者問の譲渡を為すという事例と、自頭による信託における財産の遺贈の事例との 問に相違点があると論争するのは可能である。前者の場合、譲渡人が生存している限り当事者を正しく現状のままに しておくことはできる。一方、財産の遺贈の場合、欺様な結果は、遺言者の財産権︵①る 。欝審︶に受益権を付与すること により、ほとんど実際に近く成し遂げられることができる。しかし、正確に当事者を現状にしておくことができない ということは、遺言法の目的と趣旨に反することに充分な理由を与えるものではないと信じられている。譲渡が生存 東洋法学 四五
米国における秘密信託︵ωのR禽↓摸3について 四六 者間で行なわれる場合、譲渡人がその後、急死するということは取るに足りないことである。もし譲渡が譲渡人が死 亡前に短期間に為され、当人が死が迫っていることを考慮して譲渡が為されるならば、意図された利益を得るという ︵2︶ 結果に対して判決がある。これは、当事者が、現状でいるということは不可能であるという事実に裁判所がある圧迫 を加えることを示すようにも見える。しかし、権威の重大さにより、生存者間の譲渡の一般的な事例の場合、裁判所 は譲渡人に対し法定信託の義務を課すことはないことは、これまで見てきた通りである。換言すれば、裁判所は例え それが可能であるとしても、当事者を現状におくことはしないで、譲受人がその財産を保有することを認める。それ 故に、目頭による信託に於ける財産の遺贈の事例の場合あるいは生存者間の譲渡の事例の場合の何れかにおいて、死 の瞑想の中で為された意図された受益者のために、如何なる有効な弁論も当事者を現状におく不可能さに根拠をおく ことはできない。例え財産の受遺者が自己の利益のために財産を取得するということが遺言者に記載されていても、 財産の受遺者が第三者に財産を付与する様に述べてある懇願の言葉︵すなわち、明示信託を為すには不充分な文言で あるが︶が用いられたとしても、財産の受遺者が第三者に財産を譲渡することに対し、遺言者に同意した場合、法定 信託が適用されるであろうことは判決されている。 ︵1︶菊。の欝言①纂o翫鋒の富毒o協浮霧貫ω①8鼠&。㎝脇︵一︶● ︵2︶︾。≦。ω83︾ぼ凝§馨。︷鋳のい弩。︷↓霧貫総9。 。・
四 遺言作成後に為される合意 第三者のために信託譲渡させる財産を保有する受遺者による合意は、遺言書作成前か後かということは重要な関係 をもたないことであると判決されている。 もし、その合意が遺言者に前以って為した遺言を取消すのを控える様にさせるならば、それが遺言者に遺言を作成 させると同様に効果がある。相続人あるいは最近親者が遺言者に遺言をする様にさせるのではなく、第三者のため信 託により財産を保有する約束により、遺言をしないで死亡する様な場合にも、同様な状態が持ち上がる。またこの場 ︵1︶ 合、法定信託は、第三者のために適罵されるであろうと判決されている。合意の時期については、受遺者の合意は、 それが遺言者の生前に為されたものであれば、遺言書作成の前であるか、同時であるか、または後であるかというこ とは重要ではないということである。 ︵1︶ ︾妻吟ω83U拶≦o︷↓讐の葺㈱観●斡℃●簿o o● 五 相続人あるいは最近親者との間の合意 ある者の相続人あるいは最近親者が第三者のために信託で財産を保有するという約束をすることによって、遺言者 に遺言をさせるのではなく、遺言なくして死亡した場合、法定信託は第三者のために適用されるであろうとする判決 ︵ま︶ もある。米国信託法リスティトメント第五五条第二項は﹁相続人あるいは最近親者が、無遺言相続によって取得する 東洋法学 四七
米国における秘密信託︵ω①段簿↓讐ω紳︶について 四八 財産権を信託として保有する場合、その合意を信頼して、無遺言で死亡した者の相続人あるいは最近親者は、合意し た信託の受益者のために、その財産権を、法定信託乃至擬制信託︵8窃窪9録奉礎房紬︶に基づいて保有する﹂と規定 ︵2︶ している。これは、遺言書で、信託を設定しようとする死亡者の意思が証明されない場合でも、死亡者の無遺言相続 により相続人あるいは最近親者が取得した財産権を、その者の保有と認めると、その者の保有は認められないことに なる。相続人あるいは最近親者の合意の方法が如何なるものであるかはさして重要とはならない。 ︵1︶ ︾.譲。ω8芦ビ餌名o︷↓摸ω酔の●㎝脇。ω“噂.冨O。 即①。 。欝一鋸①纂o晒簿①ピ拶毒o︷↓賊自馨。 。。ω08鵠儀a●㎝脇︵さo︶。 六 受益者の指定 もしもAがBに財産の遺贈をするのならば︵BはAが死亡後まで、その同一性を知らされないある人のために信託 でその財産を保有あるいはそれを譲渡することに同意している場合︶Bは、Aにより意図された人のために強制的に 保有させられることはできない。しかし、Bがもしその財産を保有することを許されるのであるならば、不正に富む ということにもなるであろうから、BはAの相続人あるいは最近親者のために法定信託の受託者とされるであろう。 これは、受遺者が、自己に遺贈される財産権を遺言者が後日指定する受益者のための信託として保有すること、遺言 者に約束した場合、遺言者が受益者について受遺者に通知せずに死亡すれば、受遺者は、その財産権を意図された信 託受益者のためではなく、遺言者の財産権のため、法定信託の受託者として保有するよう強制されることがあるとい
︵1︶ うことである。 また、意図された受益者の同一性がAの生存中にBに伝達されない限り︵信託を設定する趣旨と同様に︶遺言者の 趣旨は、履行されないであろう。しかし、受益者の名前が遺言者の生存中に、遺言者により財産の受益者に伝達され る証書中に指定されるのなら、また、受遺者がその様に名前を書かれた人のために財産を保有することを同意するな ら、例え、その証書が封印をした封筒の中に入っていて、受遺者が受益者として指定された人の名前を知らなくとも 受益者は回復できると決められている。換言すれば、受遺者がその財産権を遺言者の生前に、遺言者が受遺者に交付 した証書に指定されている者のための信託として保有するという合意を為したときは、例え、その証書が封印された 書状を知り得ないとしても、意図されていた信託受益者は、自己のための法定信託を強制することができる。 ︵i︶ ︾譲.ω8貰い曽零o隔↓霊珠。 。◎伽㎝窃●ト ︵未完︶