糖尿病の診断
慢性高血糖を確認し,さらに症状,臨床所見,家族歴,体重歴などを参考として総合
判断するa〜f).高血糖の判定区分
空腹時血糖値,75g
経口糖負荷試験(OGTT)2 時間値の組み合わせにより,表 1のごとく糖尿病型,正常型,境界型に分ける.随時血糖値≧200
mg/dL
も糖尿病型とする.また,HbA1c(NGSP)≧6.5%の場合も糖尿病型とする.
糖尿病型と糖尿病の診断
図 1
のごとく別の日に行った検査で糖尿病型が 2 回以上認められれば,糖尿病と診断 できる.ただし,HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする.また,血糖値とHbA1c
が同一採血で糖尿病型を示すことが確認されれば,1 回の検査だけでも糖尿病 と診断するe, f).次の条件のうち 1 つがある場合は,血糖値が糖尿病型を示していれば,1 回の検査だ
けでも糖尿病と診断するe, f).①糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)の存在
1 1
グレード A コンセンサス
グレード A コンセンサス
グレード A コンセンサス
グレード A コンセンサス
2 2
3 3
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013
糖尿病診断の指針
1
診 病 尿 糖 く づ 基 に 拠 根 的 学
科 診療ガイドライン2013
ステートメント テ ー ト メ ス メ ン ト
表 1 空腹時血糖値および 75g 経口糖負荷試験(OGTT)2 時間値の判定基準 (静脈血漿値,mg/dL)
正常域 糖尿病域
空腹時値 < 110 ≧ 126
75g OGTT 2 時間値 < 140 ≧ 200
75g OGTT の判定 両者をみたすものを正常型とする いずれかをみたすものを糖尿病型*とする 正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする
*:随時血糖値≧ 200mg/dL および HbA1c(NGSP)≧ 6.5%の場合も糖尿病型とみなす.
正常型であっても,1 時間値が 180mg/dL 以上の場合には,180mg/dL 未満のものに比べて糖尿病に悪化するリ スクが高いので,境界型に準じた取り扱い(経過観察など)が必要である.また,空腹時血糖値 100 〜 109mg/dL のものは空腹時血糖正常域のなかで正常高値と呼ぶ.
(文献 f より一部改変引用)
②確実な糖尿病網膜症の存在
疫学調査で集団の糖尿病の頻度を調査する場合は,糖尿病型の高血糖が 1 回認められ
れば,糖尿病とみなしてよいe, f).過去に「糖尿病」の証拠がある場合
現時点の血糖値が糖尿病型の基準以下であっても,過去に上記
の条件が満たされた記録があり糖尿病があったと判定される場合は糖尿病として対応するe, f).
反復検査で糖尿病型が再確認できない場合
数ヵ月の間隔で血糖値,OGTT
を反復検査して,経過を観察するe, f).正常型と境界型
正常型では糖尿病型への悪化率は年間 1%未満である
e, f).境界型は糖尿病型への悪化率が高く,動脈硬化性合併症の頻度が増加する.境界型は生
活指導(食事,運動,肥満があればその是正)を行い,定期的に検査するe, f).グレード A コンセンサス
4 4
5 5
グレード A コンセンサス
グレード B コンセンサス
6 6
コンセンサス グレード B
グレード B コンセンサス
血糖値のみ 血糖値とHbA1c 糖尿病型
ともに糖尿病型 HbA1cのみ
糖尿病型
再検査 再検査
(血糖検査は必須)
糖尿病
糖尿病の典型的症状 確実な糖尿病網膜症 のいずれか
なし あり
血糖値とHbA1c ともに糖尿病型
血糖値のみ 糖尿病型
HbA1c 糖尿病型のみ
いずれも糖尿病型 でない
血糖値とHbA1c ともに糖尿病型
血糖値のみ 糖尿病型
HbA1c 糖尿病型のみ
いずれも糖尿病型 でない
糖尿病 糖尿病
糖尿病疑い 糖尿病疑い
3〜6 ヵ月以内に血糖値・HbA1cを再検査 1 ヵ月以内になるべく
糖尿病型:血糖値(空腹時≧126mg/dL,OGTT 2時間値≧200mg/dL,随時≧200mg/dLのいずれか)
HbA1c(NGSP)≧6.5%
図 1 糖尿病の臨床診断のフローチャート
(文献 f より一部改変)
3
3
境界型のうち,メタボリックシンドロームに属するものについては「24.メタボリッ クシンドローム」の項を参照のこと.
空腹時血糖値の正常高値
空腹時血糖値 100〜109 mg/dL
を正常域のなかで正常高値とする.この集団については,OGTTを行って,正常型,境界型あるいは糖尿病型のいずれに属するかを判定す ることが勧められる(図 2)e, f).
糖負荷試験を行う場合
10 時間以上絶食の後,朝食前に 75g
グルコースを含む溶液を服用させる.空腹時,負荷後 30〜60 分おきに採血して血糖値を測定する.空腹時と 2 時間値の測定は必須で,
臨床の場では途中時点の血糖値も調べるのが望ましい.可能であれば空腹時と 30 分後 のインスリン値を測定して,初期インスリン反応を調べる.それは次の理由による.
①正常型であっても,1 時間血糖値が高いものでは糖尿病型に悪化する率が高い.
②正常型,境界型でインスリン分泌指数[0〜30 分のインスリン上昇量(
µ U/mL)と,
血糖上昇量(mg/dL)の比(ΔIRI/ΔPG)]が 0.4 以下のものでは糖尿病型に進展しや すい1).
糖尿病の分類と代謝異常の関係
表 2
に糖尿病および関連する糖代謝異常の成因分類を示す.1 型糖尿病,2 型糖尿病,その他の特定の機序,疾患によるもの,および妊娠糖尿病に大別する.図 3に病型分 類と代謝異常の程度との関係を示すe, f).
糖尿病の病型や合併症の把握
診断にあたっては糖尿病の有無のみならず,病型,代謝異常の程度,合併症の有無や
その程度について把握するように努める.7 7
8 8
9 9
グレード B コンセンサス
グレード A コンセンサス
コンセンサス グレード A
100 1
コンセンサス グレード A
正常域 正常高値
境界域 糖尿病域
空腹時血糖値︵静脈血漿値︶
126
110 100
(mg/dL)
空腹時血糖値 100〜109mg/dL は 正常域ではあるが,正常高値とする.
図 2 空腹時血糖値の区分(2008 年 3 月)
(文献 n より引用)
表 2 糖尿病と糖代謝異常*の成因分類
Ⅰ.1 型(膵β細胞の破壊,通常は絶対的インスリン欠乏に至る)
A.自己免疫性 B.特発性
Ⅱ.2 型(インスリン分泌低下を主体とするものと,インスリン抵抗性が主体で,それにインスリンの 相対的不足を伴うものなどがある)
Ⅲ.その他の特定の機序,疾患によるもの
A.遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの (1)膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常
(2)インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常 B.他の疾患,条件に伴うもの
(1)膵外分泌疾患 (2)内分泌疾患 (3)肝疾患
(4)薬剤や化学物質によるもの (5)感染症
(6)免疫機序によるまれな病態
(7)その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
Ⅳ.妊娠糖尿病
注:現時点では上記のいずれにも分類できないものは分類不能とする .
*:一部には,糖尿病特有の合併症をきたすかどうかが確認されていないものも含まれる.
(文献 e より引用)
図 3 糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の概念
右向きの矢印は糖代謝異常の悪化(糖尿病の発症を含む)を表す.矢印の線のうち, の部 分は,「糖尿病」と呼ぶ状態を示す.左向きの矢印は糖代謝異常の改善を示す.矢印の線のうち,破 線部分は頻度の少ない事象を示す.たとえば 2 型糖尿病でも,感染時にケトアシドーシスに至り,
救命のために一時的にインスリン治療を必要とする場合もある.また,糖尿病がいったん発病した 場合は,糖代謝が改善しても糖尿病とみなして取り扱うという観点から,左向きの矢印は黒く塗り つぶした線で表した.その場合,糖代謝が完全に正常化するに至ることは多くないので,破線で表 した.
(文献 e より引用)
糖尿病の診断
糖尿病の診断にはまず糖尿病の概念がはっきりしていなければならない.糖尿病の概念 には大きくまとめると 3 つの柱がある.
①高血糖で代表される特徴的な代謝異常.
②その原因としてのインスリン作用の不足.
③代謝異常が長く続くと特有の合併症が起こること.
である.糖尿病の診断とは個々の患者がこれらの特徴を備えているかどうかを見極める ことであるa, e, f).
糖尿病診断の目的
糖尿病診断の目的は,何のために糖尿病を治療するのかに直結する.糖尿病治療の目的 は,糖尿病の合併症,特に慢性合併症の予防と治療である.診断の目的は,慢性合併症を 起こすおそれのあるものを早いうちから識別して,早期治療を可能とすることである.
持続性高血糖の確認を重視するのは,高血糖は検査しやすく,糖尿病の最も特徴的な代 謝異常であるだけではなく,高血糖そのものが合併症の成立に深くかかわっていると考え られるからである.糖尿病以外にも種々の病態で一過性に高血糖をきたすことがある.そ れらを区別するため,複数回の測定により高血糖を確認することを基本としている.
2010 年の診断基準の改訂では,慢性的な高血糖を表す指標としての
HbA1c
がより積極 的に糖尿病診断に取り入れられ,血糖値とHbA1c
が同一採血で糖尿病型を示すことが確認 されれば,1 回の検査だけでも糖尿病と診断することが可能となったe).2012 年には 2010 年の国際標準化版を策定したが,「4.糖尿病診断におけるHbA1c
の位置付け」に述べるHbA1c
の国際表示に関すること以外は完全に 2010 年版を踏襲している.血糖基準値
糖尿病型あるいは糖尿病と判定する血糖基準値はどのように定められたか.1979 年の
National Diabetes Data Group,1980 年の WHO
基準が定められたときは,主に 2 つの根拠 があった.糖尿病(2 型糖尿病)の頻度が著しく高い集団では血糖値の分布が二峰性になる ので,その分布を参考とすること,もうひとつは糖尿病特有の細小血管症,特に網膜症の リスクがどの程度の高血糖で増えてくるかである.これによって空腹時血糖値≧140mg/dL,
あるいは 75g OGTT2 時間値≧200
mg/dL
であれば「糖尿病」とするという 1980 年のWHO
基準が定められた.日本糖尿病学会の 1982 年の糖尿病型の定義もこれに準じたa).1990 年代後半になって診断基準の改訂が行われた.米国糖尿病学会b),WHOc),日本糖尿 病学会d)ともカットオフ値としては同じ数値を採用した.OGTT2 時間値の基準値はそのま まとし,空腹時血糖値の基準値を 2 時間値の基準値に対応するように,≧126
mg/dL
に引 き下げた.日本のOGTT
のデータでも 2 時間値 200mg/dL
という基準値に対応する空腹時 血糖値の平均値は約 125mg/dL
であることが示されているg, 2).表 1は 2010 年(2012 国際標準化対応版)の日本糖尿病学会の血糖基準値であり,1999 年 の日本糖尿病学会の血糖基準値を踏襲している.空腹時血糖値,75g OGTT2 時間値それぞ
3 3 2 2 1 1
解 説 説
解
れに正常域と糖尿病域を設け,空腹時と 2 時間値のどちらかが糖尿病域に入れば糖尿病型,
両者とも正常域にあれば正常型,糖尿病型でも正常型でもないものを境界型と定義した.
付帯事項として,随時血糖値が 200
mg/dL
以上の場合を糖尿病型に含めること,正常型で あっても 1 時間値が 180mg/dL
以上の場合は境界型に準じた取り扱いをすることが記して ある.また,2010 年の診断基準の改訂では,HbA1cについて糖尿病型と判定する基準値が 新たに定められたe).糖尿病診断における HbA1c の位置付け
糖尿病の診断には慢性高血糖の確認が不可欠である.診断において
HbA1c
を取り入れる ことは,HbA1cの上昇が慢性高血糖を反映する指標である点から科学的に妥当性があるの みならず,HbA1c
が血糖コントロール指標として使用されており,糖尿病の診断と治療の連 続性が高まる点や,日々の変動が血糖値よりも少なく食事条件に左右されない点,また 1 回の検査で糖尿病と診断することも可能となる点から臨床的に有用である.ただし,糖尿 病型におけるHbA1c
の分布の幅は広いのでHbA1c
単独では糖尿病の診断はできないこと,HbA1c
は血糖値以外に赤血球寿命などの影響を受けることに注意する必要があるe, f, h〜k). 2010 年の診断基準の改訂で,HbA1c(JDS)≧6.1%[HbA1c(国際標準値)≧6.5%]の場合 も糖尿病型と判定することが付け加えられた.ただし,HbA1c(国際標準値)は従来のJapan Diabetes Society
(JDS)値に 0.4%を加えた値で表記されたものであり,米国,欧州,アジア などで用いられてきたNational Glycohemoglobin Standardization Program
(NGSP)値で表 記されたHbA1c
に相当するe).2011 年 10 月わが国の測定法がNGSP
認証を得たことに伴 い,2012 年 4 月 1 日をもって,わが国の日常臨床でもHbA1c
(NGSP)を使用し,HbA1c(JDS)は併記となった.そこで,診断基準も
HbA1c
(NGSP)≧6.5%[HbA1c(JDS)≧6.1%]と表記が変更となった.また,2014 年からは,HbA1c(NGSP)のみを使用することとする.
日本人における空腹時血糖値および
OGTT
2 時間値とHbA1c
との関連をみると,HbA1c(NGSP)6.5%は空腹時血糖値 126
mg/dL
およびOGTT
2 時間値 200mg/dL
にほぼ対応す ることが示されている3).網膜症のリスク
網膜症のリスクは血糖値や
HbA1c
とどのような関係にあるか.日本人における検討で は,網膜症頻度(毛細血管瘤を除く)をHbA1c
別に比較すると,HbA1c(NGSP)4.9%以下 では 0.06%であったが,HbA1cの上昇に伴い網膜症頻度も上昇し,HbA1c(NGSP)6.5〜6.9%では 0.59%と明らかに高率となり,少なくともカットオフ値を
HbA1c
(NGSP)6.5%にすることに矛盾しないと考えられるe, 4).
また,米国糖尿病学会は
HbA1c
と網膜症(moderate nonproliferative diabetic retinopa-thy
以上)との関連を多くの疫学データで検討し,HbA1c(NGSP)≧6.5%では網膜症頻度が 高くなることを根拠に,糖尿病と診断することを提唱しているj, k).一方,横断調査における 10 分位法の内外のデータからみると,網膜症のリスクが著明に 増加するのは空腹時血糖値 140
mg/dL,OGTT
2 時間値 230〜240mg/dL,HbA1c
(NGSP)6.9%程度からであるb, d, 2, 4).すなわち現在の糖尿病型の判定基準値である空腹時血糖値≧
126mg/dL,OGTT2 時間値≧200
mg/dL,HbA1c
(NGSP)≧6.5%というのは網膜症のリ スクという観点からは低めに設定されている.表 1の判定基準値は,①網膜症のリスクが4 4
5
5
著明に高まる以前から治療を開始し血糖値がそこまで上昇するのを防ぐのが望ましい,② 糖尿病(型)と判定する基準値はなるべく国際基準値に合わせる必要があるとの考えのもと に設定されたものであるd, e).
正常型と境界型の基準および境界型の取り扱い
正常型については 1982 年の日本糖尿病学会の基準値は空腹時<110mg/dL,1 時間値<
160mg/dL,2 時間値<120
mg/dL
のすべてを満たすものと定められていた.これは,正常 型とは数年間経過を観察しても糖尿病型に悪化するものがほとんどないという観点から選 ばれた数値だった.現在の判定基準では,1 時間値の基準値を省き,2 時間値の基準値は<120mg/dLから<140mg/dLに引き上げてられている.これによって「正常型」から「糖 尿病型」へ悪化する率は若干増加するが,それでも年間 1%未満にとどまる.ちなみに境 界型から糖尿病型への悪化率は年間 4〜6%である.正常型のなかでも,1 時間値が 180mg/dLを超えると糖尿病型への悪化率が増えるので,注意を要するd).
境界型には糖尿病発病前のもの,糖尿病が改善した状態,何らかの身体的ストレスで健 常者の耐糖能が一次的に悪化したものなど,いろいろな状態が含まれる.境界型は正常型 に比べて糖尿病型に悪化するリスクが高く,動脈硬化性合併症のリスクが高いという特徴 がある5).大血管症にはいろいろなリスク因子があり,血糖値だけからそのリスクを予測す る線を引くことは困難なので,境界型と正常型とを分けるカットオフ値は,糖尿病型への 悪化のリスクを目安にして定められた.
境界型は生活指導(食事,運動,肥満があればその是正)を行って,定期的に体重,血圧,
血中脂質を含めた検査を行い,追跡するのが望ましい.特にメタボリックシンドロームに 属するものは大血管症のリスクが高いと考えられており,積極的に生活指導すべきである
(「24.メタボリックシンドローム」の項参照).
米国糖尿病学会や
WHO
では空腹時血糖値で定義したIFG
(impaired fasting glucose)と 2 時間値で定義したIGT
(impaired glucose tolerance)とを区別しているが,日本糖尿病学会 では両者をまとめて境界型と呼ぶ.個人別ではIFG
とIGT
は一致しないことが多く,両者 は異なる代謝異常を表すとみなされるようになってきた.ちなみに動脈硬化症に関しては,IGT
のほうがIFG
よりもリスクが高いという成績が多い6).日本のデータではIFG
に属す るもののなかにOGTT
では糖尿病型を示すものが 30%以上含まれるので,IFGについてはOGTT
を行って判定するのが望ましいd).米国糖尿病学会は 2003 年に,空腹時血糖値の正常上限値を 110mg/dL未満から 100mg/dL未満に引き下げたg).多くの疫学調査で,これまでの基準による
IFG
の頻度はIGT
より少なく,これはIFG
のカットオフ値が相対的に高かったためと考えられたこと,ROC
曲線(receiver operator characteristic curve)を用いて,のちに糖尿病に悪化するリス クと空腹時血糖値との関係を求めたところ,3 集団のデータで感度と特異性が最も優れた 値は 93〜103mg/dL
だったこと,の 2 つの理由による.しかし,この改訂に対してはいく つかの批判が寄せられた7〜9).基準値引き下げによってIFG
の頻度が 2〜4 倍に増加してし まう(65 歳以上では住民の 43.5%がIFG
になる6)),新たにIFG
に組み入れられたものでは 動脈硬化症のリスク因子を持つものは少ない8, 9)などである.一方で,欧州(European Dia-betes Epidemiology Group:EDEG)は正常域と境界域を区分する空腹時血糖値の基準値を
110mg/dLから 100mg/dL
まで下げるのは,現時点では根拠が十分ではないこと,この変6
6
更により 2〜5 倍程度増加する
IFG
にどう対応するかについて検討されていないことから,当面は 110mg/dLのままにすることを提言したl).WHOはこの立場に立ち,空腹時血糖 値の正常域と境界域を区分する基準値を引き続き 110mg/dLとしているm).このような動 向を踏まえ,日本としても最新のエビデンスに基づいた検討を要すると考えられたn).空腹 時血糖値と糖尿病発症率の関係について,舟形町研究や広島原爆障害対策協議会健康管理 センター研究などの新しいデータによれば,日本においても空腹時血糖値が従来の正常域 の 110
mg/dL
未満であっても,100mg/dL以上の場合は,100mg/dL
未満のものに比べて 糖尿病への移行率が有意に高い.また,集団によって若干の違いはあるものの,OGTTを 行えば空腹時血糖値 100〜109mg/dL
のもののうち 25〜40%が境界型や糖尿病型に属する ので,110mg/dL
から 100mg/dL
に引き下げることによって,これらを見逃す可能性を低 下させることができる.空腹時血糖値 100mg/dL
は,OGTT境界型の 2 時間値の下限であ る 140mg/dL
にほぼ対応する値である.また,境界型や糖尿病のスクリーニングにおける 最適な空腹時血糖値をROC
曲線で求めると,100mg/dL前後になるという報告が多い.一方,もし改訂した場合は,糖尿病に悪化するリスクがそれほど高くないものの空腹時 血糖値が境界域と判定される人が増加する.実際
OGTT
を行えば,従来の基準では 60〜75%が正常型に属するにもかかわらず,これらのものを含めて境界域とすることになる.
空腹時血糖値 100〜109
mg/dL
の領域は,将来の糖尿病への移行やOGTT
時の耐糖能障 害の有無や程度からみて多様な集団である.したがって,現時点では,空腹時血糖値が 100〜109
mg/dL
の者を一律に境界域あるいは空腹時血糖値 100mg/dL
未満と同一の正常域と して取り扱うべきではなく,正常域のなかで正常高値とするのが適切である(図 2)n).この 集団については,OGTTを行うことにより,正常型,境界型あるいは糖尿病型のいずれに 属するか判定することが勧められる.OGTTが行われるまでは,正常高値として観察し,個々の症例の病態や経過に応じて,適切な生活習慣指導や肥満の是正などが行われるべき であるn).
日本糖尿病学会の診断手順
日本糖尿病学会の診断手順では,血糖値と
HbA1c
の同日測定を推奨している.また,糖 尿病型の高血糖が別の日に 2 回確認できれば,糖尿病と診断できる(図 1).ただしHbA1c
(NGSP)≧6.5%の場合や,糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)がある場合,
確実な糖尿病網膜症がある場合は,同時に血糖値が糖尿病型を示していれば 1 回の検査だ けでも糖尿病と診断できるe, f).
過去において糖尿病と診断できる証拠が揃っている場合は,現在の血糖値がそれに達し ていなくても,糖尿病の疑いを持つべきこと,すぐに診断がつかないときは経過観察して 間隔をおいて再検査することを勧めている.図 3のように糖尿病の代謝異常は治療によっ て,あるいは自然経過で変動するからであるe).また,糖尿病の診断にあたっては,糖尿病 があるかどうかだけではなく,その病型や代謝異常の程度,合併症などについても把握す るように努める必要がある.
また,明らかな糖尿病の症状が存在するものを除き,表 3に該当する場合には
OGTT
を 行って耐糖能を確認することが推奨される.日本における多くの解析から,空腹時血糖値 100mg/dL以上の場合やHbA1c
(NGSP)5.6%以上の場合には,①現在糖尿病の疑いが否 定できないグループ,②糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループ,が含ま7
7
れることが明らかにされており,
OGTT
によってこれらを見逃さないことが重要である.こ とに,①の場合にはOGTT
が強く推奨され,②の場合にもなるべく行うことが望ましいe, f).糖尿病や関連する糖代謝異常の分類
糖尿病や関連する糖代謝異常の分類は表 2に示すe).表 2の分類は成因に基づく分類で ある.1 型糖尿病は膵島
β
細胞の破壊性病変によってインスリンの不足が進行するタイプ で,多くの場合インスリンの絶対的欠乏に陥る.自己免疫機序による 1 型糖尿病では種々 の膵島自己抗体が陽性となることが多い.自己抗体が出現しない原因不明のものもある.2 型糖尿病は糖尿病患者の 95%以上を占める,最も多いタイプで,インスリン分泌の低 下とインスリン感受性の低下とが発病にかかわる.
特定の原因によるその他の型の糖尿病は,遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
(A)と,他の疾患,病態に伴うもの(B)に分ける.
妊娠糖尿病は成因分類として独立させるかどうかの議論もあるが,臨床上の重要性,特 別の配慮の必要性により一項目として取り扱う.
いずれの型の糖尿病でも代謝異常の程度(インスリン不足の程度)はさまざまであり,経 過によって病態は変化する.図 3は成因分類と病態の関係を示す.病態は悪化するだけで なく,自然経過や治療によって改善することもある.インスリン欠乏が特に著しい場合,
ケトーシスを防ぎ生命を維持するためにインスリン注射が不可欠となる.この状態を「イ ンスリン依存状態」という.それ以外のすべての場合を「インスリン非依存状態」という.
インスリン非依存状態であってもインスリン欠乏の程度がある程度進むと,血糖コントロー ルのためインスリン注射を必要とするようになる.図 3の説明を参照されたい.
糖尿病の診断基準を適用するうえで配慮すべき点
糖尿病の診断基準を適用するうえで配慮すべき点に触れる(表 4).血糖基準値はひとつ
9 9 8 8
表 3 75g 経口糖負荷試験(OGTT)が推奨される場合
(1)強く推奨される場合(現在糖尿病の疑いが否定できないグループ)
・空腹時血糖値が 110〜125mg/dL のもの ・随時血糖値が 140〜199mg/dL のもの
・HbA1c(NGSP)が 6.0〜6.4%のもの(明らかな糖尿病の症状が存在するものを除く)
(2)行うことが望ましい場合(糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループ:
高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化のリスクを持つものは特に施行が望ましい)
・空腹時血糖値が 100〜109mg/dL のもの ・HbA1c(NGSP)が 5.6〜5.9%のもの
・上記を満たさなくても,濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在するもの
(文献 f より一部改変引用)
表 4 糖尿病の診断基準を適用するうえで配慮すべき事項 1.血糖基準値を金科玉条としない
・血糖測定値,特に OGTT の再現性の問題 2.種々の情報を併せて総合判断する
・病歴,家族歴,体重歴,他の疾患の有無など 3.「糖尿病型」であっても対処の仕方は一様ではない ・年齢,代謝異常の程度,合併症,他疾患など 4.高血糖による合併症の危険度には個人差がある ・合併症の家族歴も参考になる
の目安であって,それのみを金科玉条とすべきものではない.特に高血糖の程度が軽いも のでは家族歴,患者の過去の病歴,体重歴などを参考として総合的に判断する.インスリ ンの測定もよい判断材料になる.糖尿病型であっても年齢,代謝異常の程度,肥満度,合併 症の有無などによって対処の仕方は変わる.詳細は本書のそれぞれの項目を参照されたい.
合併症をきたしやすいかどうかには遺伝素質がかかわっていると考えられている.たと えば,空腹時血糖 145mg/dLは人によっては危険なレベルではなくても,別の人にとって は十分網膜症が進行するレベルかもしれない.現在は個人差を無視して一律に血糖基準値 を決めているが,今後遺伝子検査などによって個人個人の合併症のリスクが予測できるよ うになれば,糖尿病の診断のための血糖基準値もリスクの程度別に配慮する時代が来る可 能性もある.
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【糖尿病の分類・診断基準に関する基本的文献(参考とした諸報告)】
a) 小坂樹徳,赤沼安夫,後藤由夫ほか:糖尿病の診断に関する委員会報告.糖尿病
25:859-866,1982
b)The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus:Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus. Diabetes Care
20:1183-1197, 1997レベル❷ベル❷ レベル❷ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ レベル❷ベル❷
レベル❷ レ
レベル❷ベル❷ レベル❷ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ レベル❷ベル❷
レベル❷ レ
文 献 献
文
c) World Health Organization: Report of a WHO Consultation: Definition, Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus and its Complications. Part 1:Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus. World Health Organization Department of Noncommunicable Disease Surveillance, Geneva, 1999 http://www.staff.ncl.ac.uk/philip.home/who_dmc.htm d)葛谷 健,中川昌一,佐藤 譲ほか:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.糖尿病
42:385-404, 1999
e) 清野 裕,南條輝志男,田嶼尚子ほか:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.糖尿 病
53:450-467, 2010f) 清野 裕,南條輝志男,田嶼尚子ほか:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際 標準化対応版).糖尿病
55:485-504, 2012g)Genuth S, Alberti KG, Bennett P et al:Follow-up report on the diagnosis of diabetes mellitus.
Diabetes Care
26:3160-3167, 2003h)Seino Y, Nanjo K, Tajima N et al:Report of a Committee on the Classification and Diagnostic Criteria of Diabetes Mellitus. Diabetol Int
1:2-20, 2010i) Seino Y, Nanjo K, Tajima N et al:Report of the Committee on the Classification and Diagnos- tic Criteria of Diabetes Mellitus. J Diabetes Invest
1:212-228, 2010j) International Expert Committee: International Expert Committee report on the role of the A1C assay in the diagnosis of diabetes. Diabetes Care
32:1327-1334, 2009k)American Diabetes Association:Diagnosis and classification of diabetes mellitus. Diabetes Care
33(Suppl1):S62-S69, 2010
l) Forouhi NG, Balkau B, Borch-Johnsen K et al:The threshold for diagnosing impaired fasting glucose:a position statement by the European Diabetes Epidemiology Group. Diabetologia
49:822-827, 2006m) World Health Organization/International Diabetes Federation:Report of a WHO/IDF Con- sultatIon: definition and diagnosis of diabetes mellitus and intermediate hyperglycemia.
WHO Document Production Services, Geneva, Switzerland, 2006
http://www.idf.org/webdata/docs/WHO_IDF_definition_diagnosis_of_diabetes.pdf(最 終 アクセス日:2013 年 4 月 9 日)
n)門脇 孝,羽田勝計,富永真琴ほか:糖尿病・糖代謝異常に関する診断基準検討委員会報
告—空腹時血糖値の正常域に関する新区分.糖尿病
51:281-283, 2008アブストラクトテーブル ブ ス ト ラ ア ラ ク ト テ ー ブ ル
1)Kosaka K et al, 1996 コホート研究
2)伊藤千賀子, 1998 横断研究
3)Ito C et al, 2000 横断研究
4)Ito C et al, 2000 横断研究
5)藤島正敏ほか, 1998 コホート研究
6)富永真琴ほか, 1998 コホート研究
7)Davidson MB et al, 2003 横断研究 8) Borch-Johnsen K et al,
2004
横断研究 レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
レベル❹ベル❹ レベル❹ レ
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レベル❹ベル❹ レベル❹ レ レベル❷ベル❷ レベル❷ レ
レベル❷ベル❷ レベル❷ レ
レベル❷ベル❷ レベル❷ レ
健診で 100g OGTT を受けた 者(1,788 人)
原爆被爆者検診(約 2 万人)
原爆被爆者検診(13,174 人)
原爆被爆者検診(12,208 人)
1988 年に 75g OGTT を受け た 40〜 79 歳 の 久 山 町 住 民
(2,424 人)
1990〜1992 年に OGTT で 検診した舟形町住民(2,534 人)
米国の NHANES 1999-2000 のデータ
デンマーク人 6,265 人,およ び中国,インド,フランス,米 国人約 2 万 3 千人
定期的に 100g OGTT で追跡 調査
1965〜1997 年の OGTT デー タ
1980〜1998 年の OGTT デー タと HbA1c の関係
1965〜1997 年の OGTT デー タ・HbA1c と網膜症の関係
8 年間追跡し,心血管病発症 と,最初の耐糖能との関係を調 べた
1996 年末まで追跡し,初回 OGTT の型別に動脈硬化性疾 患死亡率を比較
人種別,年齢階層別の IFG 頻 度の推定.米国糖尿病学会の新 旧に基準値による頻度の比較 米国糖尿病学会の新旧の IFG の基準値を用いて,IFG と IGT の関係,大血管症のリスク因子 を比較
初回検査で IGT の 群で も 非 IGT の群でも,ΔIRI/ΔPG<
0.5 の者は≧0.5 の者に比べて 糖尿病の発症率は 2 倍以上で あった
60 歳以下で,空腹時血糖値 125 mg/dL が 2 時 間 値 200 mg/dL にほぼ対応する.
血糖値で全集団を 10 等分する と,網膜症が有意の増加を示す 群の最小血糖値は空腹時 126
〜145 mg/dL,2 時間値では 198〜235 mg/dL だった.空 腹時血糖値が同程度でも 2 時 間値が高いほうが網膜症は多く 出現した
60 歳以下で,空腹時血糖値と 2 時間値の糖尿病型のカットオ フ 値 に 対 応 す る HbA1c は 6.1%(JDS)[6.5%(NGSP)]
であった
血糖値ないしは HbA1c で全集 団を 10 等分すると,網膜症が 有意の増加を示す群の最小血糖 値 は 空 腹 時 126〜 145 mg/dL,2 時間値では 198〜
235 mg/dL,HbA1c では 6.5
〜 7.2%( JDS)[ 6.9〜 7.6%
(NGSP)]だった
男性では心血管病発生が IGT では 2.4 倍,糖尿病では 2.9 倍に増えた.女性では IGT で は増加はみられず,糖尿病で 1.6 倍に増えた
IGT は動脈硬化性疾患死亡率が 正常型に比して有意に高かった が,IFG ではそのようなことは なかった
IFG 基準値下限の引き下げによ り IFG の頻度は 1.5〜4.6 倍
(全体では 2.6 倍)に増加する IFG の基準値引き下げによりそ の頻度は著しく増える(デン マークでは 11.8%から 37.6
%に増加する).新基準によっ て新たに IFG に加わったもので は大血管症のリスク因子の乏し いものが多い
論文コード 対 象 方 法 結 果
9)Tai ES et al, 2004
①横断研究
②コホート研究
③コホート研究
レベル❹ベル❹ レベル❹ レレベル❷ベル❷ レベル❷ レレベル❷ベル❷ レベル❷ レ
シンガポールの 3 研究のデー
タ,計約 1 万人 ①横断研究による IFG と IGT の関係.②1992〜2000 年の 追跡による糖尿病発症のリスク の調査.③追跡による虚血性心 疾患のリスクの比較
IFG 基準値引き下げによりその 頻度は 3.4 倍に増える.新たに IFG の分類されたものでは大血 管症のリスク因子は少ない.糖 尿病発症予知に関して最適な空 腹 時 血 糖 値 は 100〜 105 mg/dL 程度だったが,糖尿病 発症者の多くは同時に IGT の 基準を満たしていた
論文コード 対 象 方 法 結 果
a)小坂樹徳ほか, 1982
b)The Expert Committee on the Diagnosis and Classifi- cation of Diabetes Mellitus, 1997
c) World Health Organiza- tion, 1999
d)葛谷 健ほか, 1999
e)清野 裕ほか, 2010
f)清野 裕ほか, 2012
g)Genuth S et al, 2003
h)Seino Y et al, 2010 i)Seino Y et al, 2010 j) International Expert Com-
mittee, 2009
1980 年の WHO 専門委員会報告を受けて日本糖尿病学会はそれまでの OGTT の判定基準(1970 年)を改訂した.OGTT の区分は糖尿病型,正常型,境界型に分け,OGTT の判定と糖尿病の診 断との関係について論じた.病型分類は WHO のそれに従った.
米国糖尿病学会による糖尿病の分類と診断基準の改定.分類は成因分類を基本とし,病態(病期)
分類を併用.糖尿病の判定基準として 1980 年の WHO 空腹時血糖値基準値≧140mg/dL を≧
126 mg/dL に引き下げ,かつ空腹時血糖値だけで糖尿病を診断することを提唱した.それまで の IGT に加えて,IFG のカテゴリーを新設した.
内容的には文献 b)の米国糖尿病学会報告に類似するが,糖尿病の診断には空腹時血糖値のみな らず,OGTT 2 時間値も重視している.
日本糖尿病学会の糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.米国糖尿病学会,WHO 委員会
(前記文献 b, c)を参考として 1982 年の日本糖尿病学会報告a)を改訂.分類は成因分類を基本と し,病態(病期)分類を併用する.OGTT 区分で血糖のカットオフ値は米国糖尿病学会b),WHO c)
と同じとするが,判定区分の名称は糖尿病型,正常型,境界型とする.境界型は IGT と IFG を合 わせた群となる.糖尿病の診断に HbA1c の補助的使用を提案.診断の手順を示してある.空腹 時血糖値と 2 時間値との対応や OGTT の区分と HbA1c の関係に関する伊藤のデータ,1 時間血 糖値,2 時間血糖値と糖尿病型への悪化率に関する佐々木,原のデータを示した.
日本糖尿病学会の糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.慢性的な高血糖を表す指標とし ての HbA1c がより積極的に糖尿病診断に取り入れられ,HbA1c(JDS)≧6.1%[HbA1c(国際 標準値)≧6.5%]の場合も糖尿病型と判定することが付け加えられた.ただし,HbA1c(国際標 準値)は従来の Japan Diabetes Society(JDS)値に 0.4%を加えた値で表記されたものであり,
米国,欧州,アジアなどで用いられてきた National Glycohemoglobin Standardization Pro- gram(NGSP)値で表記された HbA1c に相当する.血糖値と HbA1c が同一採血で糖尿病型を 示すことが確認されれば,1 回の検査だけでも糖尿病と診断することを可能とした.HbA1c の みの反復検査による診断は不可とされている.
日本糖尿病学会の糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告の国際標準化対応版.HbA1c
(NGSP)≧6.5%の場合を糖尿病型と判定する.
米国糖尿病学会の 1997 年報告b)の一部修正.空腹時血糖値の正常上限を<110 mg/dL から<
100 mg/dL に引き下げ,IFG は空腹時血糖値 100〜125 mg/dL のものとなった.その根拠は① IGT との対応,②糖尿病への悪化リスクの ROC 曲線による検討である.
文献 e)の日本糖尿病学会英文誌版 文献 e)のアジア糖尿病学会英文誌版
米国糖尿病学会,欧州糖尿病学会,国際糖尿病連合の委員で構成された国際専門委員会は,糖尿 病の診断には NGSP 値で表記された HbA1c を用いることを推奨するという提案を行った.
HbA1c の利点として,糖尿病の特徴である慢性高血糖を表す指標として HbA1c が適している こと,食事による影響を考慮せずに採血できること,日々の変動が血糖値よりも少ないこと,網 膜症のリスクとの関係は血糖値と同等であることなどがあげられている.
論文コード 要 約
【糖尿病の分類・診断基準に関する基本的文献(参考とした諸報告)】
k) American Diabetes Asso- ciation, 2010
l)Forouhi NG et al, 2006
m) World Health Organiza- tion/International Diabetes Federation, 2006 n)門脇 孝ほか, 2008
国際専門委員会の提案f)後に行われた,米国糖尿病学会による糖尿病の分類と診断基準の改定で,
HbA1c が糖尿病診断に取り入れられた.①HbA1c(NGSP)≧6.5%,②空腹時血糖値≧
126 mg/dL,③OGTT 2 時間値≧200 mg/dL,④典型的な高血糖症状がありかつ随時血糖値≧
200 mg/dL のいずれかをみたすものを糖尿病とし,①〜③の場合には(著明な高血糖の場合を除 き)検査を繰り返し,基準値を満たすことを再確認することとされている.
2003 年の米国糖尿病学会の報告が,空腹時血糖値の正常上限を<100 mg/dL に引き下げたのに 対し,EDEG(The European Diabetes Epidemiology Group)ではこれまでの文献を検討し,
このような基準の改訂は IFG の数を 2〜5 倍に激増させる一方,それを十分に正当化するだけの リスクの上昇をもたらすというエビデンスがなく,現時点ではこのような改訂は適切ではないと した.
2003 年の米国糖尿病学会の報告が,空腹時血糖値の正常上限を<100 mg/dL に引き下げたのに 対し,文献 l)の EDEG の報告を支持し,WHO/IDF としても,現時点ではこのような改訂は適 切でないとした.
日本糖尿病学会の 1999 年報告の一部修正.空腹時血糖値 100〜109 mg/dL の領域の者は,将 来の糖尿病への移行や耐糖能異常の有無や程度からみて多様な集団であることから,現時点では,
正常域のなかで正常高値として扱うのが適切であるとした.
論文コード 要 約