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名作再読、拾い読み(27)

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Academic year: 2021

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 フィリップ・ロス(Philip Roth, 1933-)は、ソー ル・ベロー、バーナード・マラマッドと並ぶユ ダヤ系作家の一人で、ニュージャージー州ニュー アークの東欧系ユダヤ人移民の子として生まれ ました。バックネル大学を卒業し、シカゴ大学 で文学修士号を取得します。陸軍で2年間兵役を 務めて除隊後、再びシカゴ大学の大学院へ入り、

短期間作文の指導をしました。その後、アイオ ワ大学とプリンストン大学で創作を指導し、ペ ンシルベニア大学では比較文学を講義していま す。

 1959年に『 さ よ う な ら コ ロ ン バ ス 』 で 作 家 デビューし、『ルーシィの哀しみ』(1967)に次 いで発表した『ポートノイの不満』(1969)はベス トセラーになりました。その後も旺盛な執筆活動 を続け、多くの作品を発表しています。全米図書 賞を2回受賞し、全米批評家協会賞も2回受賞、ピュ リッツァー賞は1998年に受賞しました。

 今回は『さようならコロンバス』を紹介します。

青春が眩しく感じられるような瑞々しさに溢れ たストーリーです。

 地元のカレッジを卒業したニールは叔父夫婦 の家に下宿しながら図書館で働いています。会 員制のプールに居た時に、ブレンダから眼鏡を 持っていてと頼まれたことが切っ掛けでブレン ダと付き合うようになりました。夏の間、毎晩 水泳をしたり、散歩をしたり、ドライヴに行っ たりして楽しく過ごします。彼女の両親は貧し いユダヤ人街出身でしたが事業に成功して今は 高級住宅地に住んでいます。ブレンダの父親が 経営する工場が建っている場所は、昔はユダヤ 人貧民街でしたが今は黒人が多く住み着いてい る地域でした。ニールにとってそこは祖父母を 思い出す懐かしい地域です。ブレンダはボスト ンの名門女子大学に進学し、ユダヤ鼻を整形し ています。ブレンダの提案に両親の許可が出て、

ニールは彼女の家で8月末の1週間を過ごすこと になりました。丁度その頃、ブレンダの兄の結 婚が決まったので、結婚披露宴が終わるまでニー ルはもう1週間滞在を延ばすことができました。

愛し合いながらも、ニールは所々で感情の擦れ 違いを感じ、結婚したいという言葉を言い出す 勇気が湧いてきません。夏休みが終わってブレ ンダはボストンの寮に戻りました。秋になり急 激に寒くなり始めた頃、ニールはブレンダが恋

しくなります。ユダヤ教の祭日が近付いてきた 時、彼はブレンダに呼び出されてボストンに会 いに行きました。いつもと様子の違うブレンダ が口にしたのは、家のタンスの引き出しに置き 忘れた避妊具が母親に見付かって、両親から怒 りの手紙が届いたということでした。ニールは ブレンダの不注意をなじり、言い争いになりま す。最後に、二人とも「愛していた」と言う言 葉を口に出して、お互いに過去形で言ったこと に気付いた時に、この恋は終わりました。

 ニールの叔母の変人的言動、ブレンダの叔父 が酔っ払って話し掛けてくる与太話、図書館に ゴーギャンの絵を見に来る黒人少年の動作など がコミカルに描かれていて、読後感はちょっぴ りほろ苦いけれども爽やかです。

 これは階級差のある男女の恋物語として味わ える小説ですが、この中で描かれているユダヤ 人に関心を向けると、かなり根の深い問題だと いうことに気付かされます。

 19世紀から20世紀初めにかけて多くのユダヤ 人が東ヨーロッパやロシアからアメリカに移住 してきました。その中から成功した人と成功か ら取り残された人との階級差が生じ、住む場所 も高級住宅地と環境劣悪な下町とに分極化して いきます。他民族からの迫害を受け続けたユダ ヤ人達は、ユダヤ教の戒律を厳しく守りながら 結束力を強めて集団生活を維持してきたのです が、アメリカに移住して暮らし始めてからその 戒律に反抗したり無関心になったりする人達が 出てきました。アメリカの文化に同化していく か、ユダヤ人としてのアイデンティティーを維 持していくかという問題に悩む人も出てきます。

性に関しても、自由なアメリカ社会と戒律を厳 格に守るユダヤ人家庭という生活習慣の違いが 描かれており、この小説ではストーリーの中に 時代背景がきちんと織り込まれているというこ とが理解されるでしょう。

参考文献

1. Philip Roth “Goodbye, Columbus and five  short stories” (Vintage, 2006)

2. フィリップ・ロス著 佐伯彰一訳『さような  らコロンバス』(集英社、1969)

おざわ ふみひこ(情報サービス課)

名作再読、拾い読み(27)

名作再読、拾い読み(27)

『さようならコロンバス』 ("Goodbye, Columbus")

小澤 文彦

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図書館員の文献紹介

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