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垂 直 的 制 限 に つ い て 田

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(1)

第一章公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準 まえがき

︱一定の取引分野における競争の実質的制限 二﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂の 垂直的制限への適用

︱︱︱製品差別化と﹁一定の取引分野﹂

H

情報の不完全性を改善する垂直的制限

近年の工業製品の垂直的制限 五市場の不完全性と垂直的制限の規制

i t  

社会的デメリット

垂 直 的 制 限 に つ い て 田

五継続的取引と解約︵以上本号︶

第一︱︱章ブランド内競争の実質的制限

大 録

11~1~41 (香法'97)

(2)

(1 ) 

一九九二︑三年に﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂を執筆したが︑

本稿はその続編として執筆したものであり︑前稿が基礎理論編であるのに対し︑本稿はその拡充・応用編に当る︒

( 1 )

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引

一九

九二

︑九

三年

論に関するものである︒

筆者

は︑

これらの考え方は適当だろうか︒ 用すべきであるという議論もある︒ ことはないという議論もある︒

まえがき

近年︑化粧品の対面販売をめぐる訴訟が相次ぎ︑

保護すべき競争は価格競争だけではないから︑対面販売のような販売方法は許されるべきであるという議論もある︒

対面販売や選択的流通制度は︑ それをきっかけに垂直的制限の議論が盛んに行われる︒

メーカーの営業の自由の範囲内であって︑

ドイツや

Eu

の選択的流通制度を導入すべきであるという議論もある︒

また︑米国や

Eu

と同様に︑垂直的制限のようなタテの関係にも︑

これは︑垂直的制限の基礎理 それなりの合理性があれば︑問題になる

カルテル規制である不当な取引制限の規定を適

四九

八︑

00

︑ 五

0

︑五

0

︑五

0

︑五

0

︑五

0

︑五

一五

号︑

17‑1‑42  (香法'97)

(3)

垂 直 的 制 限 に つ い て(1)(大録)

独占禁止法は︑多様な一定の取引分野について︑どこか︱つの一定の取引分野で競争の実質的制限が生ずる場合に︑

(1 )

2

) 

一定の取引分野における競争が実質的に制限されるとして規制の対象にすればよい︒ 分

野﹂

のとり方は極めて多様であって︑一意的に決まるものではない︒

17~1 43 

的に小さい︒

しか

し︑

公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準

まず︑﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂の解釈についてみてみよう︒

従来︑独占禁止法の解釈では︑﹁一定の取引分野﹂を一っさきに決めて︑

一定の取引分野は極めて多様にとることができる︒

例えば︑製品差別化商品について︑

カーにとらわれず︑ ある消費者は

A

社の製品を購入したいと考えたとする︒この消費者は︑

製造する製品間の交叉弾力性は相対的に大きいが︑他社製品との交叉弾力性は相対的に小さい︒別の消費者は︑メー

ある仕様の製品を購入したいと考えたとする︒この消費者は︑

A

社であろうと

B

社であろうと当

該仕様の製品間の交叉弾力性は相対的に大きいが︑例えば︑

各需要者を集計した交叉弾力性を考え︑ かを問題にするというように考えてきた︒ 一定の取引分野における競争の実質的制限

第一章

そこで︑競争の実質的制限が生ずるかどう

A

社の

A

社が製造する別仕様の製品との間の交叉弾力性は相対

それによって︑﹁一定の取引分野﹂を考えることができるが︑﹁一定の取引 ︱つに決める必要はない︒

(香法'97)

(4)

ルテル・談合が行われている範囲を﹁一定の取引分野﹂にとればよい︒この場合︑

引分野﹂にとることができる︒これによって︑基本ルールがなくとも︑

小さくとも︑独占禁止法違反となる︒

﹁競

争の

実質

的制

限﹂

の﹁実質的﹂という文言は︑①市場機能を発揮させることからみて市場に問題になる程度の

影響を与えること及び②単に表に表われていることだけではなく︑参入障壁︑産業内の移動障壁︑寡占の暗黙の協調

等のような裏に隠されたことを考慮して判断することを表わしていると考える︒

カルテルは︑参入障壁や産業内の移動障壁が相当程度大きくないと行われないだろう︵このようなときでなければ︑

カルテルに乗じて新規参入者等が安売等の攻勢をかけるからカルテルは行われない︶︒

ま た

あれ

ば︑

それ

は︑

カルテル参加者のシェアの低い場合や有力なアウトサイダーがいる場合でも︑カルテルが行われているので

カルテルによって競争者の数を減らしてプライスリーダー型や寡占型の暗黙の協調を強めるときに 法違反となる︒ カルテル・談合の場合は︑当事者が ﹁競争を実質的に制限すること﹂とは︑有効な競争が行われていない状態のことである︒

な競争が行われていない状態︶ 簡単に言えば︑﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂を考える場合︑﹁競争を実質的に制限すること﹂︵有効

にと

れば

よい

が生じている範囲を﹁一定の取引分野﹂

﹁一定の取引分野﹂をめぐるさまざまな議論の混乱は︑

一定の取引分野における競争を実質的に制限するという事実上の推定を

﹁一定の取引分野の競争を実質的に制限﹂しようとしているのであるから︑

その範囲が小さくとも﹁一定の取

一回限りの談合であっても︑談合対象物件が

また︑小売業者が特定ブランド商品についてカルテルを行った場合も独占禁止 することができる︒ 次のように︑すべてのカルテル・談合は︑

従来の

この考え方で解決できるように思われる︒

四四

17‑1 ‑ 44  (香法'97)

(5)

垂 直 的 制 限 に つ い て(1)(大録)

( 1

)  

るに過ぎない︒

四五

17‑1 ‑ 45 

記のように統一的に解釈する必要があり︑

ただ

カルテル規制でも︑合併等の規制でも︑根本的に上

に制限すること︵有効な競争が行われない状態︶ 限すること︵有効な競争が行われない状態︶が生じないかどうかを判断していくほかはない︑ 推定をすることはできない︒合併等については︑ れるということはできず︑ カルテル・談合のような事実上の

これに対して︑

合併等︵独占禁止法四章関係︶ カルテルメンバーのシェアが低くとも︑ すべてのカルテル・談合は︑ すべてのカルテルは競争を﹁実質的﹂

アウトサイダーがカルテルに乗じて安売等の攻勢

に制限していると考えることができる︒

一定の取引分野の競争を実質的に制限するために行われるものであるから︑

引分野﹂をカルテル・談合の対象商品に事実上推定することができ︑

4

)

﹁競争の実質的制限﹂も事実上推定することができる︒

﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂

一件

ずつ

合併会社のシェアや参入障壁等から︑

が生ずる場合には︑

につ

いて

競争を実質的に制 そして︑競争を実質的 そのような状態が生ずる範囲を﹁一定の取引分 野﹂と考えればよい︒共同研究開発や共同生産等の共同事業も合併等と同様に考えることができる︒

﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂という概念は︑

両者で事実上の推定が違うために︑現実の運用が異なるように見え

不公

正な

取引

方法

の公

正競

争阻

害性

も︑

何ら

かの

市場

を考

える

必要

があ

ると

し︑

独占

禁止

法の

多く

の問

題の

実質

的判

断を

ロッ

クイ

以上のことから次のことが言える︒ し

たが

って

をかけるからカルテルは行われない︶︒ 行われていると考えることができる

また

︑ は︑必ずしも一定の取引分野の競争を実質的に制限するために行わ

︵そのようなときでなければ︑

﹁一定の取

(香法'97)

(6)

ンによる狭い﹁市場﹂︵一定の取引分野︶の競争制限性でとらえようとする考え方がある

おぼえがき︑ロックイン現象の視角から﹂NBL

0

しかし︑一般的に︑ロックインによる狭い一定の取引分野︵市場︶を考え︑そこでの競争制限性を考えるというのは適当でない︵拙

稿﹁不当な廉売︑差別対価︑抱き合わせ販売の公正競争阻害性について﹂公正取引五三二号五三頁︹注

3

ある相手との取引で転換することが難しいことをした︵不可逆性にコミットした︶ために当該相手としか取引ができなくなってし

まうこと︵ロックイン︶は現実の社会では数多くあることであり︑そのことは通常何ら問題を生ずるものではない︒

例えば消費者が悪徳商法により欺されてホールドアップされるような場合には︑クーリング・オフや情報の開示義務を課すこと等

の方法をとることが必要であるが︑消費者が合理的な判断ができるならば︑ロックインされることは問題はない︒

一般的に言えば︑ロックインされること︑それに伴って何らかの負担を負うこと︑ロックインによる﹁狭い市場﹂が独占されるこ

と︑他と取引することが防げられることに問題はなく︑そのような取引関係に入るときに︑情報不足等のために合理的判断ができず︑

ホールドアップを生じたり取引関係に入るのが阻害されたりするところに問題があるように思われる︒

一般に︑ロックインがあった場合に︑狭い市場︵一定の取引分野︶とそこでの競争制限性を考え︑ロックインを切断し︑この市場

を解放するということにすれば︑多くの有効な取引ができなくなる︒

一九九二年の米国のコダック事件最高裁判決のように︑ロックインされ︑ホールドアップされているときに︑抱き合わせ等を切断

し︑ロックインを切断することが有効なことはある︵日本の東芝昇降機サービス事件︹大阪地判平成ニ・七・三

0

︑大阪高判平成五・

七・三〇︺も︑ロックインやホールドアップが問題になったわけではないが︑本来同様の事案であると考えられる︶︒

しかし︑ロックインによるホールドアップが問題になる場合︑ロックインを切断するのは︱つの方法ではあるけれど︑多くは︑ロ

ックインを切断するのではなくて︑クーリング・オフや情報の開示義務を課して情報の不完全性を改善したり︑下請法のように取引

内容に介入する方が適切である︵優越的地位の濫用規制︶︒

転換することが難しいことにコミットし︑特定の相手としか取引できなくなってしまう︵ロックイン︶場合の一定の取引分野︵市

場︶は︑どう考えればよいだろうか︒

それは︑転換することが難しいことにコミット︵ロックイン︶する場合︑多くの選択肢のなかから︱つを選ぶのであって︑この選

択肢の段階での一定の取引分野︵市場︶を考えるのが適当であり︑ロックインされた後の部分を狭い一定の取引分野︵市場︶と考え ︵白石忠志﹁独禁法上の市場画定に関する

四六

17‑1‑46  (香法'97)

(7)

垂直的制限について(1)(大録)

四 七

るのは適当でないように思われる︒

一定の取引分野︵市場︶は︑取引関係に入る意思決定の段階で考える必要がある︒

不公正な取引方法の公正競争阻害性は︑﹁一定の取引分野﹂を考える必要がないこともある︒

公正競争阻害性には︑一定の取引分野の競争の実質的制限︵又はそのおそれ︶が問題となるような競争の不完全性︵独占.寡占︶

に関する規制と︑ホールドアップ問題︵優越的地位の濫用︶︑ぎまん的顧客誘引︑悪徳商法の規制のような情報の不完全性による市 場の失敗に関する規制とが含まれている︵競争の不完全性の問題には︑一定の取引分野における地位の不当利用の問題もあり得るけ れど︑これは特別の場合を除き︑一般には規制は無理である︒拙稿﹁不当な廉売・差別対価︑抱き合わせ販売の公正競争阻害性につ

いて﹂公正取引五三七号六五︑六六頁参照︶︒

情報の不完全性による市場の失敗に関する規制は︑あえて何らかの具体的な個別の一定の取引分野︵市場︶を考える必要はない︒

情報の不完全性による市場の失敗に関する規制は︑当該商品に関する個別の特定の競争者との競争のような形で︑あえて一定の取 引分野︵市場︶を想定しそこでの公正競争阻害性を考えようとすると過少規制の問題を生ずる︒情報の不完全性による市場の失敗に

関する規制の公正競争阻害性は︑このような一定の取引分野︵市場︶を考えるのでなく︑市場の失敗レベルで考え︑もっと幅広い規制

を可能とする必要がある︵拙稿﹁不当な廉売︑差別対価︑抱き合わせ販売の公正競争阻害性について﹂公正取引五三六号六

0

上記のロックインによるホールドアップに対する不公正な取引方法の規制︵優越的地位の濫用規制︶は︑情報の不完全性による市 場の失敗に関する規制であって︑一定の取引分野の競争の実質的制限︵又はそのおそれ︶が問題となるような類型ではないと思われ

なお︑ロックインという用語は︑上のようなホールドアップが問題となる場合とは全く違った現象についても用いられる︒例えば︑ る ︒

コンピュータソフトは特定のオペレーティングシステム

(O

S)

しか動かせないソフトが蓄積していくと︑後発メーカーがいくら優 秀で安いシステムを開発しても︑ユーザーはいままでのソフトが無駄になるから採用せず︑市場のロックインが行われるという場合 である︒このようなネットワークの経済性によるロックインは︑先のホールドアップのような情報の不完全性による市場の失敗に関 する場合とは全く違って︑一定の取引分野の競争の実質的制限が問題となるものであり︑私的独占の問題となり得る︒︵ただし︑こ の場合︑先行メーカーは先行するメリットだけでなく︑先行するデメリットもあり︑後発メーカーは先行メーカーの標準仕様を採用

すればスムーズにやれるという後発メリットも考慮する必要がある︶︒

17‑1‑47  (香法'97)

(8)

垂直的制限は︑

メーカーによって製品差別化が行われる商品について実施される︒

につ

いて

も︑

また︑差別化された商品

製品差別化商品 ついて考えよう︒

﹁一定の取引分野﹂の﹁一定﹂という文言には︑次のような意味も含まれていると考えられる︒

﹁一定の﹂という文言は︑﹁競争の実質的制限﹂が︑どのような範囲にわたって存在するかも問題にしていると考えられる︒

例えば︑あまりにも小さい一消費者の需要に対してだけであれば︑資源配分上の損失︵経済効率性︑一般消費者の利益︶は大きく

はなく︑それを規制することから得られる社会的利益は︑それに要する費用と比較して著しく小さいだろう︒﹁一定の﹂という文言

は︑このような場合を除外する趣旨も含まれていると解される︒

﹁一定の﹂という文言は︑規制による社会的利益が︑規制に要する費用と比較して上回る程度の︑ある程度の広がりを要求してい

ると考えられる︒

( 3 )

経済学的には︑﹁競争を実質的に制限すること﹂とは︑有効な競争が行われず︑価格と限界費用が著しく乖離した状態のことであ

り︑そのような状態がみられる範囲を﹁一定の取引分野﹂と考えればよい︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性﹂について﹂公正取引五

0

七号四三頁︑四六頁︑四七頁︵注

1)

﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂

表現した概念であり︑ ﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂は︑前記のように解するならば︑独占.寡占の弊害を極めて適確に

これは︑垂直的制限のような不公正な取引方法の問題をも貫くべきものであると考える︒

前節のような﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂ (

4 )

 

( 2 )  

︵財

・サ

ービ

ス︶

︵財・サービス︶をまたがる需要についてもとることができる︒

につ

いて

は︑

一定の取引分野は︑差別化された商品︵財・サービス︶ごとの需要 の解釈をもとにして︑垂直的制限の公正競争阻害性に の垂直的制限への適用

四八

17‑1‑48  (香法'97)

(9)

垂 直 的 制 限 に つ い て(1)(大録)

メーカーによって製品差別化が行われている場合︑プランド間競争も行われ︑あるブランド商品が価格を上げれば

需要の一部は他のブランドの商品に移り需要が減少する︒

ド需要についても︑

度等は︑特定ブランド需要という一定の取引分野における競争︵ブランド内競争︶

題と

なる

メーカーによって製品差別化が行われる商品について実施され︑

(6 ) 

ブランド間をまたがる需要についてもとることができる︒

テリトリー制冨厳格なテリトリー制〗は、後述のように、寡占業界では、寡占企業の戦略的行動を

考えると︑寡占の暗黙の協調を強めるために使われ︑ブランド間競争の実質的制限のおそれも問題となる︶

専売制は︑ブランド間競争という一定の取引分野の競争の実質的制限が問題となる︒

現代の工業製品に関しては︑専売制は次のように考えられる︒

大きなシてアを持つ企業が行う場合は︑参入を阻害し︑ブランド間競争という一定の取引分野における競争を実質 再

販︑

︵ な

お ︑

プリトリー制︵厳格なテリトリー制︶︑ 垂直的制限は︑ 野 ﹂

にとることもできる︒ 需要にとることができるだろう︒

した

がっ

て︑

メーカーによって製品差別化が行われているとき︑あるブランドに固執する消費者にとって︑当該ブランドの商品 は︑他のブランド商品との需要の交差価格弾力性が小さくなるという事態を生ずる︒ある商品が︑

四 九

要の交差価格弾力性が小さいときに当該商品の需要を独立した﹁一定の取引分野﹂ととることができる︒交差価格弾 力性が小さいことは︑当該商品が他の商品とは異なった財と考えられていることを意味する︒

メーカーによって製品差別化が行われている場合には︑﹁一定の取引分野﹂を特定のブランドに対する

したがって︑ブランド間をまたがる需要を﹁一定の取引分

﹁一定の取引分野﹂は︑特定ブラン

一店一帳合制︑卸売業者の販路制限︑対面販売の強制︑選択的流通制

を﹁実質的に﹂制限することが問

ほかの商品との需

17‑1‑49 (香法'97)

(10)

れば︑独占禁止法を統一的に把握することができる︒ しかし︑独占禁止法の﹁一定の取引分野﹂を︑ 一般的・社会的に︑﹁市場﹂という用語はばく然とした広い意味に使われることが多い︒ このことについて説明しよう︒ 定される関係にある︒

すべてのカルテル・談合を独占禁止法違反とすることと︑再販等のような垂直的制限をブランド内競争という一定

の取引分野の競争を実質的に制限すると考えることは︑同じ論理の上に立っていて︑

( 5 )   ( 6 )   ( 7 )  

製品差別化と﹁一定の取引分野﹂ 適当であると思われる︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

七号四四頁参照︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

七号四六頁参照︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

九号四四︑四五頁参照︒

一般的・社会的に使われる﹁市場﹂とは違って︑前述のように解す 一方が否定されれば︑他方も否 的に制限すると考えることができるが︑これにとどまらず︑寡占産業の場合は︑後述のように︑下位企業であっても︑並行的に行われていなくとも︑公正競争阻害性を事実上推定した方がよいと思われる︒

現代の工業製品に関しては︑専売制は︑一定の取引分野の競争を実質的に制限するおそれの段階でも規制した方が

五 〇

17‑1‑50 (香法'97)

(11)

垂直的制限について(1)(大録)

また︑談合参加者の一般的・社会的意味での での﹁市場﹂に占めるシェアが低くとも︑当該物件について︑高ければ価格が高いと他の物件に代替するから入札談合は行われない︶︒

﹁市場﹂に占めるシェアが低くとも談合が行われるのは︑供給しうる にとってそれぞれの物件が別の商品と考えられる

一定の取引分野をとることができる

︵物件の代替性が

17‑1 ‑51 

︵一種の製品差別化である︶

から︑当該物件が一般的・社会的意味

再販等のような垂直的制限は︑ブランド内競争という一定の取引分野の競争の実質的制限が問題になる︒

また︑小売店が︑あるメーカーの商品について小売価格を協定した場合も︑同様に︑

的に

制限

し︑

独占禁止法三条違反︵事業者団体であれば八条一項一号違反︶となる︒

についての一定の取引分野の競争の実質的制限の考え方についても当て ルールが存在しない場合の個々の受注予定者の決定あるいは一回限りの受注予定者の決定について︑次の理由によ

り︑当該物件について一定の取引分野をとることができ︑物件や行為者の一般的・社会的意味での

(8 ) 

一定の取引分野の競争の実質的制限になると考えられる︒

入札談合が問題になるのは︑需要者にとって物件ごとの代替性が少ない場合であり︑ ア

が低

くと

も︑

﹁ 市

場 ﹂

での

シェ

はま

る︒

同じ論理が入札談合︵受注予定者の決定︶ 一定の取引分野の競争を実質 このことによって︑次のことが言える︒ 前述のように考えれば︑で

ある

けれ

ど︑

このようなときには︑需要者 日本の独占禁止法の﹁一定の取引分野﹂は︑経済学的な﹁市場﹂の概念には適合するもの

一般的・社会的に使われる﹁市場﹂とは異なる︒

独占禁止法の﹁一定の取引分野﹂は︑製品差別化商品に関しては︑差別化された商品ごとの需要についても︑

差別化された商品をまたがる需要についてもとることができる︒

ま た

(香法'97)

(12)

四 ( 8

)  

実質的制限に該当するということになる︒ 商品について製品差別化が行われ︑物件に適した供給者が限定される場合であり︑指名競争入札は︑を指名して競争を行わせようとする制度であって︑談合が行われれば一定の取引分野の競争を実質的に制限する件に適した供給者が指名業者以外に容易に見つかるなら︑価格が高ければ需要者は指名業者以外に発注するから入札

これらのことは︑官公需だけでなく︑民間の需要の引き合いについても成立する︒

以上のように︑再販等のような垂直的制限についてプランド内競争という一定の取引分野の競争を実質的に制限す

ると考えることと︑すべてのカルテル・談合を一定の取引分野の競争を実質的に制限すると考えることとは︑同じ論

理の上に立っている︒すべてのカルテル・談合を﹁一定の取引分野における競争の実質的制限﹂に該当すると考えよ

うとすれば︑必然的に︑再販等のような垂直的制限について︑ブランド内競争という一定の取引分野における競争の

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

七号四七頁︵注

1)

事実上の推定の基準 これらの供給者

垂直的制限によって弊害が生ずるのは︑一定の取引分野の競争を実質的に制限することによる

うに︑専売制は一定の取引分野の競争を実質的に制限するおそれの段階で問題にする必要があると思われる︶︒ 談

合は

行わ

れな

い︒

︵ただし︑後述のよ

︵ 物

17‑1 ‑ 52  (香法'97)

(13)

垂匝的制限について(I)(大録)

︑ ︒

きし 評判のメカニズムが慟けば︑ても︑長期的には事業者は信用を失い︑大きな損害を受ける︒一時的な利益のために︑品質内容を落とすことはしない︒したがって︑消費者は信用ある事業者の商品を購入すれば︑品質・内容の低いものを購入することになるという心配がない︒

特に

︵情報の不完全性がある︶財・サービスは︑事業者の信用が重要な意味を持つ︒

ある事業者が品質内容を落とした商品を販売すると︑

サービスは︑消費者に品質・内容がわからないという情報の不完全性の問題が大きい︒

販売に当たって︑販売店の販売サービスが重要な意味を持ち︑販売サービスに関して販売店の品質・内容の管理が

重要である場合を考えよう︒

このような販売サービスは︑消費者に品質・内容がよくわからず︑情報の不完全性が大 このような場合に︑消費者がメーカーのブランドやフランチャイズのブランドを信用すれば︑販売店の販売サ

消費者に品質内容がよくわからない

日 情 報 の 不 完 全 性 を 改 善 す る 垂 直 的 制 限

ただ乗り防止等の社会的メリットが考えられることがある︒

メリットが︑社会的メリットを上回っていることであると考えられる︒

この要件事実について︑事実上の推定の基準について考えてみよう

商品の特性に応じて︑①販売サービスが重要である場合の情報の不完全性を改善する垂直的制限と︑②販売サービ

スがそれ程重要でない近年の工業製品の垂直的制限に分けてみてみよう︒ 垂直的制限の公正競争阻害性は︑

そこで︑長期的な視野に立つ事業者は︑伯用を重視し

︵詳細は次章以下で検討する︶︒

一定の取引分野の競争を実質的に制限する

垂直的制限は︑

一時的には利益があるようにみえ

︵又

はお

それ

のあ

る︶

ことの社会的デ

17‑1‑53  (香法'97)

(14)

な く

ービスも含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ場合がある︒

このような場合︑

メーカーやフランチャイズのブランドの評判が小売店の販売サービスに大きく影響を受ける︒こ

このようなただ乗りを是正する︒ のような商品は︑小売店の努力によりブランドの評判が高まる︒このような商品について︑小売業者は︑ブランドの評判にただ乗りして︑低級品を高級品と偽って販売したり︑販売サービスを減らしたりする誘引が働く︒ブランド内

競争を制限する垂直的制限は︑

このような場合として︑例えば︑次のフランチャイズのケースが考えられる︒

塾・ハンバーガー店・居酒屋等のフランチャイズについて︑

の販売サービスの品質・内容の管理が重要であり︑販売店︵塾︶

関する消費者の情報の不完全性が大きく︑消費者がブランドを信用すれば︑販売店の販売サービスを含めて統一され

た品質・内容のものを購入できるようにするために行われるものである︒

なお︑このような場合︑小売店のサービス提供が本質的な重要性を持っているから︑

一般指定︱二項の再販売価格︵仕入れた商品を転売するときの価格︶

一般指定一三項の不当な拘束条件付取引に該当するかどうかという問題になるだろう︒

上の場合を離れて︑一般的に言えば︑ブランド内競争を制限する垂疸的制限の外部効果︵ただ乗り︶

売店間の水平的外部効果を改善する場合と︑ブランドの評判のただ乗りを改善する場合とが考えられる︒

小売店間の水平的外部効果は︑消費者が小売店で店頭展示を見たり︑簡単な説明を聞いた後︑このような情報提供

を行わないでその分安い小売店から購入すれば︑このような情報提供が行われなくなってしまうという問題である︒

ブランド内競争を制限する垂直的制限は︑ ャイジーに対して課す価格拘束は︑

その弊害と比較すると︑小売店の簡単な説明等の情報提供に関する小売 の是正は︑小 の拘束では フランチャイザーがフランチ 限は︑販売店︵塾︶の販売サービスの品質・内容に フランチャイザーがフランチャイジーに対して課す制

五四

17‑1‑54  (香法'97)

(15)

垂 直 的 制 限 に つ い て(1)(大録)

とが可能となってしまう︒

五 五

17‑1‑55 

ービスが重要でなく︑ 店の水平的なただ乗りの改善は︑後述するように︑重要な問題でないのに対し︑ブランドの評判へのただ乗りの改善

メーカーやフランチャイザーが販売店に対して援助をするときに︑他の

メーカーやフランチャイザーにただ乗りされる外部効果を防ぐため︑専売制は重要な意味を持つ︒

筆者は︑販売店の販売サービスの品質・内容の管理が重要で︑消費者がブランドを信用すれば︑販売店の販売サー ビスも含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ場合︑垂直的制限は︑価格制限であ るか非価格制限であるかを問わず︑社会的メリットが社会的デメリットを上回っており︑独占禁止法で問題になるこ

( l O )  

︵情報の不完全性を改善する垂直的制限︶︒

上のような販売サービスが重要である場合の情報の不完全性を改善する垂直的制限は︑

表的なものであるが︑垂直的な制限が独占禁止法上許容されるかどうかについては︑販売店の販売サービスの品質・

内容の管理がブランドの信用の維持に璽要な意味を持つ商品であるかどうかをメルクマールとすべきであって︑

ンチャイズ形式であるかどうかという形式的なことをメルクマールにすべきではない︒

どうかをメルクマールにすれば︑後述するような近年の通常の工業製品のように︑販売に当たって︑販売店の販売サ

メーカーのブランドの評判が小売店の販売サービスとは切り離されて確立している場合であっ ても︑独占禁止法の規制を免がれるためにフランチャイズの形式をとることによって独占禁止法の規制を脱法するこ

また︑後述するように︑

工業製品であっても︑販売店の販売サービスが本質的に重要であり︑消費者がブランドを 信用すれば︑販売店の販売サービスも含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ場合

フランチャイズ形式であるか とはないと考える 販売店の販売サービスが重要である場合︑ は菫要な問題であると考えられる︒

フラ

フランチャイズの場合が代

(香法'97)

(16)

工業製品が操作が難しく壊れやすく︑小売店の詳細な情報提供やアフターサービスが菫要な場合には︑

販売店の販売サービスを管理し︑

質・内容のものを提供できるようにすることが重要な意味を持つ︒

限はブランドの評判のただ乗りを防ぎ情報の不完全性を改善する︒

例えば︑後述するように︑価格拘束は小売店のブランドの評判へのただ乗りを防止し︑ か

つて

は︑

次に

工業製品は︑操作が難しく壊れやすく︑

メーカーのブランドを信用すれば︑販売店の販売サービスも含めて︑統一された品 工業製品についてみてみよう︒

口 近 年 の 工 業 製 品 の 垂 直 的 制 限

には︑垂直的制限は︑情報の不完全性を改善するものであり︑独占禁止法上許容されるだろう︒

( 9

)

このように︑一般に︑フランチャイズの場合と工業製品とでは︑性格が異なるため︑拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂

︹前掲まえがき注

( 1

) ︺では︑フランチャイズの議論は除外し︑工業製品について︑メーカーが行う垂直的制限に限定して議論を

( 1 0 )

公取委事務局のフランチャイズのガイドライン︵昭和五八年九月二

0

日フランチャイズシステムに関する独占禁止法上の考え方

について︶の5切は﹁実際の販売価格を制限・拘束し︑それを維持させることは一般指定の第︱二項又は第一三項に該当するとされ

. . . .

. .  

ることがあろう﹂としており︑フランチャイズの垂直的制限の公正競争阻害性について︑工業製品より緩い基準を示している︵工業

製品なら︑販売価格の拘束は当然違法となろう︶︒

品質も低いものも多かった︒

このような場合︑ブランド内を管理する垂直的制

一店一帳合制・卸売業者の

五 六

メーカーカ

17‑1‑56 (香法'97)

(17)

垂 直 的 制 限 に つ い て(1)(大録)

現在

では

工業

製品

では

︵後

述の

再販

の議

論参

照︶

五 七

ま た

メーカーのブランドを信用すればよく︑品質のよい

17  1 ‑ 57 

されて確立している︒ このような商品では︑ ︵修理に関しては販 このような工業製品について︑

販路

制限

は︑

このような製品も多かったと思われる︒ 販売店の販売サービスの手抜きの監視のために使われる︒

また︑メーカーが小売店に対する援助をするときの外部効果を防ぐため︑専売制は重要な意味を持つと考えられる︒

メーカーが垂直的制限によって販売店を管理すれば︑消費者は︑

を信用すれば︑優良な販売サービスも受けられる︒

( 1 2 )  

不完全性を改善する垂直的制限に当る︒

日本の高度成長の初期頃までの工業製品は︑

しかし︑近年の工業製品は異なる︒

例えば家電製品は︑

商品を選択するために高級店で買う必要はない

メーカーブランド

これは︑前項で説明した販売サービスが里要である場合の情報の 現代の工業製品は︑操作も容易となり︑故障が少なくなり︑品質も向上し︑販売店の詳細な情報提供やアフターサ

ービス等の販売サービスは不要となり︑故障の修理もメーカーが行えばよい商品が一般的である︒

以前は︑操作も難しく壊れやすく︑小売店の詳細な情報提供やアフターサービスが重要な意味 を持っていた︒しかし現在では︑操作も簡単となり︑小売店の詳細な情報提供は必要無くなり︑また︑商品が故障し

にくくなったため︑小売店のきめ細かいアフターサービスは不要で︑

売店はメーカーに取り次ぐだけである︶︒ メーカー修理で十分である

メーカーのブランドの信用は製品の品質に関するもので︑

メーカーの製品の品質が向上しているため︑消費者は︑

小売店の販売サービスとは切り離 一般に︑販売店の販売サービスはメーカーのブランドの信用に重要な意味を持っておら

(香法'97)

(18)

特に大きくなっている︒ 現在︑交通機関︵特に自動車︶

メーカーのブランドの信用は製品の品質に関するもので︑販売サービスに関する小売店の信用とは別々に存在す

近年の工業製品について︑再販等のブランド内競争制限を考えると︑これにより︑ただ乗り防止が考えられ得るの

は︑販売店の商品説明等の簡単な商品情報提供であり︑小売店間の水平的な外部効果の是正である︒

しかし︑忙しい現代人にとって安い店を探す探索費用が大きい人は多く︑このような情報提供を受けてから安い店

を探して買うために情報提供をする店が大幅に無くなってしまうということは考えられないだろう︒

また︑仮りに︑現在の工業製品では︑

垂直的制限の弊害に比べれば︑

明書

ただ乗りがあって簡単な商品情報提供を行う店が大幅に無くなるとしても︑

たいした問題ではないと考えられる︒それは︑現在の工業製品の品質が高く︑

ま た

︑ どのメーカーの商品も似ており︑小売店の簡単な商品情報提供がなく︑消費者が︑情報誌やメーカーのカタログ︑説 ショールーム等で判断したり︑必要があればメーカーに問い合わせたりして購入したとしても︑消費者の要求

とそんなに大きくはずれず︑だいたい消費者の許容する選択の範囲内に収まるだろうと考えられるからである︒

一般に日本で︑現在の工業製品について︑ブランド内競争を制限する再販やそれと同様と同様の効果を持つ垂直的

制限が行われる最も決定的な理由は︑

メーカーが小売店に自社製品を優先的に顧客に推奨させることであると考えら れる︒このような場合の垂直的制限は︑社会的メリットは考えられず︑小売価格を引き上げ︑小売店が規模の経済性

や範囲の経済性を生かすことを阻害し︑流通の革新を妨げ︑消費者に不利益を与える︒ る ︒ ず ︑

の発達により商圏が拡大し︑流通業界の競争が激しくなっている︒再販やそれと同 様の効果を持つ垂直的制限は︑小売店の安売を阻害し︑流通業界での競争を制限し︑流通の多様性を阻害する弊害が

五八

17‑1‑58 (香法'97)

(19)

垂直的制限について(1)(大録)

考える

︵詳

細は

後述

︶︒

五 九

17‑1‑59 

一般に︑垂直的制限の社会的メリットは大した重要性を持たないのに対し︑ブランド

内競争を制限する垂直的制限やブランド間競争を制限する

きいと考えられ︑公正競争阻害性の要件事実が事実上推定されると考えられる︒

近年の工業製品で販売店の販売サービスが重要で︑販売店の販売サービスも含めて︑ブランドを信用すれば︑統一

された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持ち︑垂直的制限が︑ブランドの信用へのただ乗りを防止

し︑情報の不完全性を改善するのは︑例外的な場合だろう︵このことは化粧品の対面販売で検討しよう︶︒

近年の工業製品については︑垂直的制限は︑一般に次のように考えられる︒

再販︑厳格なテリトリー制︑

会的デメリットが社会的メリットを上回っており︑公正競争阻害性の要件事実が事実上推定されると考えることがで

( 1 6 )  

きる

︵なお︑テリトリー制︹厳格なテリトリー制︺は︑後述するように︑寡占産業では寡占の暗黙の協調を強めるた

めに戦略的に使われ︑ブランド間競争を実質的に制限するおそれも問題となる︶︒

筆者は︑ブランド内競争を実質的に制限する垂匝的制限は︑

っても非価格制限であっても同じように考えられ得るものであり︑

また︑価格維持効果等の社会的デメリットは非価 格制限の方が価格制限よりも弱いということはないから︑価格制限も非価格制限も同じように取り扱う必要があると

現代の工業製品に関しては︑専売制は次のように考えられる︒

専売制は︑大きなシェアを持つ企業が行う場合は︑参入を阻害し︑ブランド間競争という一定の取引分野における

内競争を実質的に制限する垂直的制限は︑ 近年の工業製品については︑

一店一帳合制︑卸売業者の販路制限︑対面販売の強制︑選択的流通制度等のブランド

一般

に︑

︵おそれのある︶専売制は︑社会的デメリットは非常に大

ブランド内競争︵一定の取引分野の競争︶を実質的に制限する社

ただ乗り防止のような社会的メリットは価格制限であ

(香法'97)

(20)

現代の工業製品についてみると︑製品差別化が行われているような寡占産業で︑並行的な専売制の場合を考えると︑

参入者は︑下位企業を当面の競争相手とするだろうから︑上位企業だけでなく下位企業の専売制も違法とした方が参 また︑専売制のもとでは︑関係特殊的な投資が多く行われ︑不可逆性が進行して行き︑専売制を後から違法とした

場合に︑併売店に移行するには企業分割と似たような社会的コストがかかることが多い︒専売制であるが故に行われ

た援助も︑後から並売店になれば︑他メーカーの商品の販売にも使われ︑

的な投資は人質になって併売制に移行するのを妨げもするだろう︒これらのため︑専売制の違法性の判断は︑合併の

違法性の判断と似て︑早い段階で行うのが望ましく︑メーカーのシェアが後で大きくなった︑あるいは︑

われたという理由で︑後から専売制を違法とするのは好ましくない︒

したがって︑寡占産業では︑並行的に行われていなくとも︑下位企業であっても︑契約や専売リベートによる専売 制は︑始めから︑公正競争阻害性の要件事実を事実上推定するのが適当であると思われる

一定の取引分野の競争︵ブランド間競争︶を実質的に制限するおそれのある段階で規制

これは︑専売制について︑

8)   (I  

しようとするものである︒

ただし︑事実上の専売制は︑独占禁止法違反とならない︒事実上の専売制が許されていれば︑上記のように考えて

も︑専売制による規模の経済性は生かされるから︑大きな問題はないと思われる︒ 入を容易にし︑寡占の暗黙の協調を弱める︒ る ︒ 下位企業であっても︑

︵詳

細は

後述

︶︒

競争を実質的に制限し︑違法であると考えることができるが︑これにとどまらず︑寡占企業の場合は︑次の理由から︑

並行的に行われていなくとも︑公正競争阻害性の要件事実を事実上推定した方がよいと思われ

ただ乗りの問題を生ずるだろう︒関係特殊

六 〇

並行的に行

17~1 60  (香法'97)

(21)

垂直的制限について(1)(大録)

『 ‑

( 1 1 )

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

00

号六五︑六六頁参照︒

( 1 2 )

高度な専門知識が必要で︑かつ︑メーカーによって特徴が微妙に異なるような場合には︑個々の販売店では対応できず︑メーカー が匝接に商品の説明やアフターケアを行わざるを得ないだろう︒この場合は︑個々の販売店に対する垂直的制限の問題は生じない︒

専門的知識の必要性がこの程度までいかない場合に︑販売店にサービスを行わせ︑垂直的制限を使う方法が考えられる︒

( 1 3 )

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

五号五

0

頁参照

( 1 4 )

パソコンは︑操作が難しい商品である︒しかし︑このくらい難しくなると︑パソコンの操作に関して︑有料でパソコン教室が開か れ︑操作に関するただ乗りの問題は生じない︑また︑パソコンの商品に関する情報提供サービスについても︑情報提供をする店は︑

買人後も︑ちょっとしたトラプルや不明な点について︑電話等で応対しているようであるから︑このようなことが行われると︑情報 提供のただ乗りは生じない︒このようなサービスが必要な消費者はこのようなサービスを行う店でその分高く購人し︑不要な消費者

は︑このようなサービスを行わない店で安く購入すればよい︒

したがって︑パソコンについても︑垂直的制限の必要はないと思われる︒

( 1 5 )

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

九号四二頁から四五頁参照︒

( 1 6 )

営業上の設償場所を限定するロケーション制は︑ブランド内競争制限性が弱く独占禁止法違反にならないと考えられる︒厳密なテ リトリー制は︑再販と同様︵サービス競争も制限する点ではそれ以上︶のプランド内競争制限性があるが︑ロケーション制は再販ほ

どのブランド内競争制限性はない︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻曹性について﹂公正取引五

0

七号四一頁参照︒

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

七号四一頁︑五

0

九号四四頁参照︒

筆者は︑垂直的制限の公正競争阻害性について︑社会的デメリットが社会的メリットを上回ることであると考える︒

前項で述べた垂直的制限の公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準を要約すれば次のようになる︒

口 要

( 1 8 )

 

( 1 7 )

 

17‑1―‑61  (香法'97)

(22)

垂直的制限の公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準は︑次のように︑商品の特性に応じて分けて考える

( 1 9 )  

必要

があ

る︒

販売店の販売サービスが重要であり︑販売店の販売サービスの品質・内容の管理が重要で︑ブランドを信用すれ

ば︑販売サービスも含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ場合は︑

販売店の販売サービスが重要でなく︑

のように考えられる︒︵現代の工業製品は︑ すべての垂直

せいぜい商品説明等の簡単な商品情報提供程度しか考えられない場合は次

ブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限は︑価格制限であるか非価格制限であるかを問わず︑公正競争阻害

性の要件事実が事実上推定されると考えられる︒

一定の取引分野の競争を実質的に制限するおそれのある場合に︑公正競争阻害性の要件事実が事実上推

定されると考えられる︒寡占産業の場合は︑契約やリベートによる専売制は︑下位企業であっても︑並行的に行われ

ていなくとも︑これに該当し︑公正競争阻害性の要件事実を事実上推定した方がよいと思われる︒

筆者は︑上の基準のように︑ブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限については︑①の場合であっても②の

場合であっても︑価格制限と非価格制限を分けた取扱いをすべきではないと考える︒ブランド内競争を実質的に制限

する垂直的制限は︑非価格制限であっても︑ただ乗り防止等のような社会的メリットや価格維持効果等の社会的デメ

リットは価格制限と同じように考えられるのであるから同じように取扱う必要がある︵詳細は後述︶︒

なお︑上の事実上の推定は挙証責任とは別の議論である︒例えば︑審査官︵公取︶が挙証責任を負っているときで

あっても︑要件事実の事実上の推定をすることができてこれがくつがえらない場合には︑審査官︵公取︶

専売

制は

②  的制限は許容されるだろう︒

① 

1,

. 

一般に︑このような場合に該当すると思われる︒︶

I ‑

は挙証に成

17‑1‑62  (香法'97)

(23)

垂直的制限について(1)(大録)

次章

で︑

( 1 9 )

この基準は︑東芝昇降機サービス事件のように︑機器の販売に修理を抱き合わせる︵修理部品の供給拒否︶場合に参考にすること

機器の販売に修理を抱き合わせる場合次のように考えられる︒

①機器が故障しやすく︑修理サービスの品質・内容の管理が重要で︑メーカーのブランドを信用すれば︑修理サービスも含めて統 一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ場合には︑独占禁止法上許容されるだろう︒

切機器が故障しづらく①に当たらないときには︑次のように考えられる︒

①評判のメカニズムがうまく機能せず︑ホールドアップを生ずる場合には公正競争阻害性があると考えられる②評判のメカニ ズムが機能する場合には︑経済効率性︵一般消費者の利益︶に与える影響を判断するのは難しく︑規制は無理であろう︵拙稿﹁不

当な廉売︑差別対価︑抱き合わせ販売の公正競争阻害性について﹂公正取引五三二号五一一頁参照︶︒

したがって︑機器の販売に修理を抱き合わせることは︑②の①の場合に独占禁止法違反となる︒ただし︑これは国内経済を考えた 場合である︒国際経済を考えると︑独立した修理業者がいた方が輸入や並行輸入を促進する︒これは大変菫要な効果であり︑輸入や 並行輸入が考えられる場合には︑機器が故障しづらく

m

に該当しない場合は︑すべて︑独占禁止法違反とした方がよいと思われる︵後

述の自動車産業についての章参照︶︒

( l

) で紹介したようなロックインされた狭い﹁一定の取引分野﹂︵市場︶という考え方をとるならば︑東芝昇降機サービス事 件は︑﹁一定の取引分野﹂の競争を実質的に制限するから︑私的独占に該当することになる︵村上政博独占禁止法︵弘文堂︶二八

七頁参照︶︒しかし︑ロックインは常に切断するのが適当であるわけではない︒

メーカーが機器の販売と修理を結びつける︵抱き合わせる︶販売方法は︑上のように考慮事項が多く︑このような場合︑不公正な 取引方法の﹁公正競争阻害性﹂で考慮するのが適している︒

化粧品の対面販売の強制について︑ 功したことになる︒

上の公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準を適用してみよ

17‑1 ‑63  (香法'97)

(24)

わけではないという意味で何らかの地域的独占力を持つ︒ し︑消費者は︑

そこから選択すればよいだろう する必要はないだろう︒

したがって︑このような販売方法は︑罰則の担保のある私的独占で規制するよりも罰則のない不公正な取引方法で規制した方が適

筆者は︑ロックインされた狭い﹁一定の取引分野﹂︵市場︶という考え方をとらないから︑上のような事件は︑私的独占に該当す

る余地はないことになる︒

市場の不完全性と垂直的制限の規制

現代の工業製品について︑垂直的制限は︑情報の不完全性︑独占力︑外部性等の市場の不完全性がなければ︑規制

例えば︑再販は︑情報の不完全性や独占力がないなら︑次のように︑規制する必要はないだろう︒

ある生産者は︑再販を行い︑それに同意する流通業者を介して高価格で高い販売サービスの商品を販売し︑別の生

産者は︑再販を行わず︑低価格で販売サービスのない商品を販売すれば︑

︵ 後

述 ︶

サービスと価格の多様な組み合わせが実現

しかし︑再販が行われるような製品差別化商品については︑消費者はその内容を十分把握しているわけではない︵情

報の不完全性︶︒メーカーは当該ブランド需要に対して独占力を持つ︵価格を上げれば需要がなくなってしまうわけで

はない︶︒また︑日本の流通業者は小規模小売業者が多い︒小規模小売店は︑価格を上げれば顧客が無くなってしまう

このような場合︑

メーカーは︑自社製品を︑小売店のたなに置いてもらい︑さらに︑店頭の目立つ所に商品を並べ

六四

17‑1‑64 (香法'97)

(25)

垂直的制限について(1)(大録)

この傾向は強まる︒ ければ︑このとおりとなるだろう︒ 推奨を行わせるという理由が最も重要であると考えられる︒

同様のことが︑専売店制についても言える︒

現代の工業製品について︑市場の不完全性がなければ︑専売店制は規制する必要はないだろう︒

シカゴ学派は︑専売店制について︑流通業者が専売制を提示している

A

メーカーと取引することを選ぶとすれば

A

メーカーの方が他のメーカーより流通業者に対して有利な条件を提供できるからであり︑

い商品を安く供給できるからであって︑結局はメーカー間の流通業者に対する競争の論理は貫徹し︑専売店制が他の メーカーの排除や参入障壁の手段のために使われて経済効率性を損なうことはないと主張した︒市場の不完全性がな

しかし︑流通業者は︑新規参入メーカーの供給が続くには︑

は不十分であり︑他の流通業者も扱ってくれなければならないから︑他の流通業者の行動に確信が持てなければ︵外

部性︶︑既存メーカーの専売制を受け入れ︑新規参入メーカーの商品が優れたものであっても扱わず︑専売制は参入障

壁の効果を持ち得る︵一九八七年AghionとBolton)︒流通業者が規模が小さく商品の知識が不足しているのであれば︑

日本

では

ある

工業製品について︑ ことが︑商品の販売高に大きく影響する︒

六五

メーカーの規模の経済性のために︑自分が扱うだけで

てもらうこと︵これらも顧客への推奨の一方法である︶︑あるいは︑顧客の質問に応じて自社の商品を推奨してもらう

メーカーは小売店の推奨を得るために︑再販のようなブランド内競争の制

限を行って安売を抑え︑小売マージンを維持しようとする︒

このような垂直的制限は消費者に不利益を与えるだけで

一般に︑再販︵及びそれと同様の効果を持つ垂直的制限︶は︑このように小売店に

それは

A

メーカーの方がよ

17~1~65 (香法'97)

(26)

するシステムをとっている︒日本の化粧品の小売店は小規模小売店が多いが︑

資生

堂︑

カネ

ボウ

化粧

品︑

コーセー︑花王等売上高上位の企業は︑

近年

チェーンストア契約をした小売店を通じて販売 化粧品の対面販売の強制が独占禁止法違反になるかどうかについて︑

第二章

化粧品の対面販売の強制

( 2 0 )

 

制は必要であるということになる︒ 企業結合等の規制が必要となる︒

これ

は︑

コンテスタビリティの議論と似ているかもしれない︒ 垂直的制限の議論は︑完全な市場を前提にしたときの議論と︑不完全な市場を前提にしたときの議論とは結論が違う

ので

あっ

て︑

これ

が︑

さまざまの垂直的制限の議論の混乱を招く原因であるように思われる︒

コンテスタビリティの議論では︑参入退出が全く自由ならば︑独占であっても寡占であっても弊害はない︒合併に

よって独占になっても問題はない︒しかし︑現実には参入障壁・退出障壁︵あるいは産業内の移動障壁︶

同様に︑市場は完全ではなく︑情報の不完全性︑独占力︑外部性等の市場の不完全性があるから︑垂直的制限の規

拙稿﹁垂直的制限の公正競争阻害性について﹂公正取引五

0

があるから

ほとんどの小売店がこのチェーンスト

(1 )

2

) 

一連の判決・決定が出されている︒

六六

17‑1‑66 (香法'97)

参照

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26‑1 ・ 2‑162 (香法 2 0 0

23-1•2-lll

優越的地位の濫用は︑契約の不完備性に関する問題であり︑契約の不完備性が情報の不完全性によると考えれば︑

一定の取引分野の競争の実質的要件が要件となっておらず︑ 表現はないと思われ︑ (昭和五 0 年七

17‑4‑672  (香法 ' 9 8 ).. 例えば︑塾は教育︑ という性格のものではなく︑ )ット ~,..

析の視角について付言しておくことが必要であろう︒各国の状況に対する比較法的視点からの分析は︑直ちに国際法

12‑2  ‑209  (香法 ' 9

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