人 間身 体 の通 時 的 同一 性 につ いて
-デ
カ ル トと ス ピ ノ ザ の 場
合-松
田
克
進
序 「わ た しの 現 在 の身 体 は一 年 前 と同 じで あ る」 とい う とき、われ われ は、 人 間身 体 の 通 時 的 同 一 性 につ いて か た って い る。 しか し、 そ もそ も、人 間 身 体 が通 時 的 に同 一 で あ る、 と は、 ど う い う ことか。 この 間 に た い して つ ぎの よ う に答 え る ひ とが、 す くな くあ る ま い。 す な わ ち、 人 体 の通 時 的 同一 性 と は、人 体 の 構 成 物 質 の 不 変性 にほか な らな い、 と。 これ は、 た とえ ば、 〈一 年 前 と皮膚 が 同 じ ・筋 肉 が 同 じ ・骨 が 同 じ ・ 他 の 部 分 も同 じ、 ゆ え に一 年 前 と同 じ身 体 〉 とか ん が え る立 場 で あ る。 こ れ を 「物 質 説 」 とよ ぼ う。 物 質 説 は そ の単 純 明瞭 さ ゆ え に魅 力 的 で あ る。 しか し、 この 立 場 に は大 きな 問 題 が あ る。 と い うの も、物 質 代 謝 とい う事 実 を肯 定 す るか ぎ り、 物 質 説 を とれ ば、 人 体 の通 時 的 同 一 性 を肯 定 す る多 くの文 が偽 とな るか らで あ る。 この こ と を、 も うす こ し くわ し くみ よ う。 生 物 は、 生 命 活 動 に必 要 な物 質 を体 外 か ら と り こみ、 古 い物 質 や不 必 要 な物 質 を体 外 にす て る。 これ を 「物 質 代 謝 」 あ る い は た ん に 「代 謝 」 とい う。人 体 で い とな まれ る物 質 代 謝 は きわ め て複 雑 で あ る。 よ く し られ て い る例 を あ げ る と、 タ ンパ ク質 を 合 成 す る た め人 体 は ア ミノ酸 を と り こむ。 タ ンパ ク質 が 内 呼 吸 に よ り分 解 され て生 じる ア ンモ ニ ア は体 外 に す て られ る。 こ の よ うな物 質 代 謝 を人 体 は不 断 にい と な む。 物 質 代 謝 の結 果、 人 体 を構 成 す るす べ て の 分 子 は、 十 年 以 内 に、 文 字 ど お り骨 の髄 ま で入 れ か わ る。 した が って、 現 在 の 人 体 を十 年 前 と比 較 して も、共 通 の 分 子 をみ い だす こ とは で きな い の で あ る。 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て密 教 文 化 さて、 い ま、 「わ た しの現 在 の身 体 は一 年 前 と同 じで あ る」 とい う文 を、 人 体 の 通 時 的 同 一 性 を 肯 定 す る文 の 代 表 と して と りあ げ、 これ を 「文A」 と よぶ。(こ の 「わ た し」 は読 者 自身 を さ し、「現在 」 は読 者 が 本 論 を読 ん で い る瞬 間 を さす と想 定 され た い。) 上 述 の よ うな 物 質 代 謝 を み とめ っ っ 物 質 説 を とれ ば、 文Aは 偽 と な らざ るを え な い。 な ぜ な らば、〈 わ た し〉 の身 体 内 の多 くの 分 子 は 一 年 前 に は そ こ にな か った か らで あ る。 つ ま り、 〈 一年 前 と違 う皮 膚 ・違 う筋 肉 ・違 う骨、 ゆ え に一 年 前 と違 う身 体〉 とか ん が え な け れ ば な らな い。 そ して、 身 体 の通 時 的 同一 性 を肯 定 す る他 の 多 くの文 も、 同様 に偽 とな る。 文A(お よ び そ れ に類 す る文)が 無 条 件 に偽 とな る こ とを わ れ わ れ は承 認 で き るか。 た しか に、 生 理 学 を ま な ぶ場 合 な らば、 文Aを 偽 と して も い い か も しれ な い。 しか しな が ら、生 理 学 と無 縁 の 日常 的 な場 面 で は、 わ れ わ れ は、 文Aは な ん らか の意 味 で真 とな り うる と信 じて い るので はな いか。 しか も、 この信 念 は きわ め て 強 固 な もの で は な いか。 した が って、 文Aが 無 条 件 に偽 と な る こ とを、 わ れ わ れ は承 認 で きな い で あ ろ う。 他 方、 物 質 代 謝 に つ い て の生 理 学 的知 見 を み と め るか ぎ り、物 質 説 を と れ ば文Aは 偽 と な る。 ゆ え に、 人 間身 体 の通 時 的 同 一 性 を考 察 す る と き、 わ れ わ れ は、 っ ぎ の よ うな課 題 に直 面 す る。 つ ま り、〈 文Aが な ん らか の 意 味 で真 と な る可 能 性 を、 物 質 代 謝 を み と めっ っ も保 持 す る よ うな、 物 質 説 に代 わ る立 場 を さ がす 〉 と い う課 題 で あ る。 た だ し、 こ こで 注 意 した い。 物 質 説 の代 替 案 を さが す と い う この 課題 を 遂 行 す る こ と は、 物 質 説 を偽 と み なす こ と を も、 ま た無 効 と み な す こ とを も含 意 しな い。 な ぜ か。 まず 第 一 に、 厳 密 に は物 質 説 は文 で は な い。 それ は、 時 点t1で の 人 体 C1と、 時 点t2で のC1の 分 身C1と にっ いて、 「C1はC2と 同 一 で あ る」 と い う文 の 真 理 条 件 を規 定 す る意 味 論 的 規 則 で あ る。 ゆ え に、 物 質 説 そ の もの は真 で も偽 で も なか ろ う。 第 二 に、 物 質 説 は、生 理学 な ど の 自然 科 学 の 見地 か らす れ ば、 じ ゅうぶ ん 正 当 化 され う る立場 で あ る とお もわ れ る。
したが って、 わ れ わ れ が 直面 す る課 題 は、 物 質 説 を偽 と して す て る とい う破 壊 的 な作 業 で は け っ して な い。 わ れ わ れ の課 題 は あ くま で も、物 質 説 とな らぶ 他 の選 択 肢 を み い だす と い う建 設 的 な作 業 で あ る。
さて、 本 論 で わ た しが 意 図 す る の は、 この よ うな課 題 の 直接 的遂 行 で は な い。 わ た しは哲 学 史 をふ りか え り、 十 七 世 紀 西 欧 の二 人 の哲 学 者 に注 目 した い。 デ カル トRene Descartes(1596-1650)と ス ピ ノ ザBenedictus de Spinoza (1632-1677)で あ る。 本 論 の 目的 は、 人 体 の 通 時 的 同一 性 にっ いて の デ カ ル トと ス ピノ ザ の見 解 を あ き らか に す る こ とに あ る。 か れ らの 対 照 的 な 見 方 は、 人 体 の通 時 的 同一 性 を考 察 す る さい の手 が か り とな ろ う。 I デ カル トは、 人 体 の通 時 的 同 一 性 につ い て の本 格 的 な議 論 を、 一 通 の 書 簡 の な か で 展 開 す る。 それ は、1645年2月9日 付 け の メ ラ ンMesland宛 の書 簡(1)で あ る。 同書 簡 で デ カ ル トは、 物 質 代 謝 と い う事 実 を は っき り とみ とめ、 っ ぎの よ うに い う 「身 体 の量 は、幼 児 の と きか ら増 大 す る。 そ して、 医 者 た ち が一 般 に か ん が え て い る こ とで あ り、 ま た、 うた が い な く事 実 そ うで あ る が、 わ れ わ れ の身 体 の な か に は、 幼 児 の とき と同一 の部 分 はす こ しも な い」 「わ た し自身、 血 液 の循 環 を し らべ た こ とが あ る。 また、 栄 養 摂 取 は、 身 体 の粒 子 が、 外 か ら入 って くる他 の粒 子 に よ って不 断 に交 代 され る こ と に よ って の み 起 こ る と信 じて い る。 わ た しは、 ほん の わ ず か の あ いだ で さえ 数 的 に 同一 の ま ま と ど ま る身 体 部 分 は存 在 しな い とか ん が え て い る」 わ れ わ れ が序 節 で み た とお り、物 質 代 謝 につ い て の この よ うな事 実 を み 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 とめ るか ぎ り、物 質 説 を とれ ば、 人 体 の通 時 的 同一 性 を肯 定 す る多 くの文 が偽 とな る。 この こ とを デ カ ル トもみ とめ る。す な わ ち、 か れ に よ る と、 「人 体le corps d'un homme」 と い う語 で 「物 質 の一 定 部 分une partie deterlninee de la matiere」 を 理 解 す る な らば、 人 体 を 構 成 す る物 質 の 「いか な る小 部 分 を 変 化 させ るだ けで も、 そ の後 わ れ わ れ は、 そ の物 体 が もは や完 全 に は 同一 で は な い、 す な わ ち、 数 的 に は 同 一idem numeroで は な い、 とか ん が え な け れ ば な らな い」 の で あ る。 しか しな が ら、「わ れ わ れ の 身体 は幼 児 期 い らい 同 じで あ る、 と信 じな い もの は ひ と り もい な い」。つ ま り、 人体 が通 時 的 に 同 一 で あ る可 能 性 を 否 定 す る こと は わ れ わ れ の根 本 的 な信 念 に反 す る。 そ こで、 デ カ ル トは、 わ れ わ れ と 同 じ課 題 に直 面 す る。 す な わ ち、 人 体 の通 時 的 同一 性 につ い て 物 質 説 の代 替 案 を み い だす、 と い う課 題 で あ る。 同 書 簡 で デ カ ル トは、 物 質 説 の代 替 案 をっ ぎ の よ う に表 現 す る。 「人 体 が変 化 し増 減 して も、 そ れが 同一 の こ ころ と結 合 し実 体 的 に合 一 し て い るか ぎ りは、 わ れ われ は、 それ は同 一 の人 体 で あ る とか ん が え る」 デ カ ル トの意 図 を整 理 す る と、 っ ぎ の よ うに な る。 す な わ ち、 〈 人 体 の 通 時 的 同 一 性 は、 人 体 と結 合 か っ 合 一 して い る こ こ ろの 通 時 的 同一 性 に ほ か な らな い〉 と。 こ れ は、 人 体 の通 時 的 同 一 性 を こ こ ろの そ れ に帰 着 さ せ る(あ る い は、 す りか え る)着 想 で あ る。 こ の よ うな デ カ ル トの 立 場 を 「精 神 説 」 とよ ぼ う。 精 神 説 の なか の、 「人 体 と結 合 しか っ合 一 して い る こ こ ろ 」 と い う部 分 につ いて 解 説 して お き た い。 デ カ ル トは、 こ の メ ラ ン宛 書 簡 に 数 年 先 立 っ1641年 に公 表 さ れ た主 著 『省 察 』 で、 み ず か らの心 身 論 を確 立 した。 そ の心 身 論 に は っ ぎ の よ う な 主 張 が ふ くまれ て い る。
[1]こ ころ と人 体 と は、実 在 上 別 個 の存 在 で あ る。(心 身 二 元 論)(2) [2]こ こ ろ と人 体 とは、 脳 髄 の一 部 で 因 果 的 に結 合 して い る。(心 身 結 合 説)(3) [3]こ こ ろ は、 み ず か らが 因 果 的 に結 合 して い る人 体 の健 康 を保 持 す る よ うに駆 りた て られ る。(心 身 合 一 説)(4) 精 神 説 の な か の 「人 体 と結 合 か っ合 一 して い る こ こ ろ」 と い うの は、 ま さ し く、 これ ら三 っ の条 件 を す べ て満 た す よ うな心 的 存 在 を意 味 して い る の で あ る。 さて、 ち な み に、 『省 察 』 お よ びそ の他 の 著 述 の なか で デ カ ル トは、 う え の 三 っ 以 外 に も、っ ぎの よ うな主 張 を提 出 して い る よ う にお もわ れ る。 [4]こ こ ろが 身 体 に結 合 して い る の は、 胎 児 期 の一 時点 か ら死 ぬ まで の あ い だ で あ り、 こ の あ い だ、 こ ころ は通 時 的 に同 一 で あ る。(5) 精 神 説 を と り、 か っ[1]・[2]・[3]・[4]を み とめ れ ば、 っ ぎの よ うな帰 結 が た だ ち に導 きだ され る。 す な わ ち、 [5]人 体 は、 胎 児 期 の一 時点 か ら死 ぬ ま で の あ い だ、 っ ね に通 時 的 同 一 性 を た もっ。 [5]に した が え ば、 病 気 や 怪 我 に よ って 人 体 に ど の よ うな 激 変 が 生 じ よ う と も、 そ の 通 時 的 同 一 性 は び くと も しな い こ とに な る。 デ カ ル トは、 同 メ ラ ン宛 書 簡 の なか で こ の よ うな帰 結 を は っ き り とは表 明 して い な い。 が、 精 神 説 と[1]・[2]・[3]・[4]と を 前 提 す るか ぎ り、[5]は ど う して も帰結 す る。 デ カ ル トの体 系 は、[5]と い うい くぶ 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 ん逆 説 的 な主 張 を潜 在 的 に ふ くん で い る よ うにお もわ れ る。 I ス ピノ ザ は、 主 著、『エ テ ィカ』 の第2部 で、 人 体 につ いて い くっ か の要 請(6)を 提 示 す る。 そ の なか の ひ とっ で、 か れ は、 物 質 代 謝 が 人 体 で 不 断 に い と な まれ て い る こ とをっ ぎ の よ うに表 明 す る。 「人 体 は、 み ず か らを維 持 す る た め に きわ めて 多 くの物 体 を 必 要 と し、 こ れ らの物 体 か らた えず い わ ば再 生 さ れ るregeneratur」(7) 他 方、 ス ピノ ザ も、人 体 が 通 時 的 同 一性 を 維 持 す る可 能 性 を もち ろ ん み と あ る。 したが って、 か れ も、 わ れ われ や デ カル トと同様、 人 体 の通 時 的 同 一 性 につ い て物 質 説 の代 替 案 を み い だす と い う課 題 に直 面 す る。 物 質 説 の 代 替 案 と して デ カ ル トは精 神 説 を 提 唱 した。 しか し、精 神 説 を と る こ と は ス ピノ ザ に はで き な い。 なぜ か。 精 神 説 と は、 身 体 の通 時 的 同 一 性 を〈 身 体 に結 合 か っ合 一 して い る こ こ ろ〉 の それ に帰 着 させ る(す りか え る)立 場 で あ る。 そ して、 〈 身 体 に結 合 か つ 合 一 して い る こ こ ろ〉 と は、 前 節 の[1]・[2]・[3]と い う条 件 を満 た す よ う な心 的 存 在 の こ とで あ る。 と こ ろが、 ス ピノザ の心身 論 で は、 これ ら三 っ の 条 件 の うち、 す くな くと も[1]と[2]と は完 全 に否 定 さ れ る。 す な わ ち、 これ らに ま っ こ うか ら対 立 す るっ ぎの よ うな 主 張 を ス ピ ノザ は提 出 す るの で あ る。 [a]こ こ ろ と人 体 と は同 一 物 で あ り、 そ れ が、 思 惟 の 属 性 の も と で は 「こ ころ」 と よ ば れ、 延 長 の属 性 の も とで は 「人 体 」 と よ ばれ る。(心 身 二 重 側面 説)(8) [b]こ こ ろ と人体 と は同一 物 で あ るた め、 そ れ らの あ い だ に 因 果 関 係 は
-74-存 しな い。(9) デ カ ル トの主 張[1]・[2]が[a]・[b]に よ って 否 定 され る以 上、 ス ピノ ザ に と って、 精 神 説 が言 及 す る よ うな 心 的存 在 はみ とめ られ な い。 したが って、 か れ に は、精 神 説 を と ろ うに も と りよ うが な い。 よ うす るに、 ス ピノ ザ の体 系 で は精 神 説 は意 味 を な さな い の で あ る。 そ こで、 ス ピノ ザ は、 独 自 の案 を た て る。『エ テ ィ カ」 で そ れ が 確 立 さ れ る手 順 は、 整 理 す る とっ ぎ の よ うな三 段 階 をふ くむ。(10) (step A)個 体 の 形 相 を、 個 体 の構 成 物 質 の運 動 静 止 比 と して 規 定 す る。 (step B)個 体 の通 時 的 同一 性 の 条 件 を、 個 体 の 構 成 物 質 の 運 動 静 止 比 の通 時 的 同一 性 と して規 定 す る。 (step C)個 体 の特 殊 ケ ー ス と して の人 体 に、(step B)の 結 果 を 適 用 す る。 す な わ ち、 人 体 の通 時 的 同一 性 の条 件 を、 入 体 の構 成 物 質 の 運 動 静 止 比 の通 時 的 同 一 性 と して規 定 す る。 ま ず、(step A)を み よ う。 ス ピノ ザ は、 原 子 論 を み とめ な いが、 実 際 上 不 可 分 な微 小 粒子 を想 定 し、 これ を 「最 単 純 物 体corpora simplicissirna」 と なづ け る。 複 数 の最 単 純 物 体 が、 周 囲 の物 体 か ら圧 力 を う け る こ と に よ って、 「自 己 の 運 動 を あ る 一 定 の 割 合 で 相 互 に伝 達communicareす る」 よ う にな っ て い る場 合、 す
な わ ち、 一 定 の 「運 動 静 止 比motus et quietis ratio」 を 相 互 に も っ よ う にな って い る場 合、 そ れ らの物 体 は 「個 体individuum」 を 組 織 して い る、 とい わ れ る。 最 単 純 物 体 が 集 ま って で き た個 体 が い くっ か集 ま って、 や は り一 定 の運 動 静 止 比 を相 互 に もっ 場 合、 そ れ らの個 体 は 「第 二 種 の個 体」 を組 織 す る。 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 そ して、 同 様 に、 第 二 種 の個 体 が 集 ま って で き る 「第 三 種 の個 体 」 等 々 が か ん が え られ る。 さて、(広 義 の)個 体 は、 も と も とは、 別 々 の最 単 純 物 体 の集 ま り、 あ る い は別 々の 下 位 の 個 体 の集 ま りにす ぎな い。 そ れ らを ひ と ま と あ に 眺 め 一 個 の 個 体 とみ なす 根 拠 は、 そ の構 成 要素 が一 定 の運 動 静 止 比 を相 互 に も っ と い う点 の み に あ る。 っ ま り、 個 体 を個 体 た ら しめ る根 拠 は、 そ れ ら要 素 が な にか、 と い う こ とで はな く、そ れ ら要 素 が ど の よ うな 運 動 静 止 比 を もっ か、 と い う こ とだ けで あ る。 そ こで、 運 動 静 止 比 こそ、 個 体 の 「形 相 forma」 に ほか な らな い、 と ス ピノザ は か ん が え る。 つ ぎ に、(step B)を み よ う。 個 体 の形 相 が運 動 静 止 比 にあ る以 上、 個 体 の運 動 静 止 比 が維 持 されれ ば、 そ の個 体 は通 時 的 に 同一 で あ る。 ま た 同時 に、 個 体 が 通 時 的 に同 一 で あ れ ば、 そ の個 体 の運 動 静 止 比 は維 持 され て い る はず で あ る。 した が っ て、 個 体 の通 時 的 同一 性 は、 そ の運 動 静 止 比 の それ に ほか な らな い。 個 体 の通 時 的 同一 性 が そ の運 動 静 止 比 の それ に帰 着 す る とい う ことか ら、 ス ピ ノザ は、 っ ぎの よ うな定 理 を導 く。 個 体 を構 成 す る要 素 粒 子 の一 部 が 同数 の新 しい粒 子 と た え ず 入 れ か わ る もの の、 運 動 静 止 比 は 「構 成 物 体 の絶 え ざ る変 化 に もか か わ らず保 持 さ れ る」 場 合 を かん が え よ う。 この と き、運 動 静 止 比 す な わ ち形 相 が維 持 さ れ て い る の で あ るか ら、 この個 体 は 「以 前 の ま まの 本 性 を 保 持 す る」 す な わ ち通 時 的 に 同一 で あ る、 とい わ な け れ ば な らな い。 さ い ごに、(step C)を み よ う。 人 体 も一 個 の個 体 で あ る。 よ っ て、(step A)・(step B)で 個 体 一 般 に いわ れ た こと は人 体 に もと うぜ ん あて は ま る。 ゆ え に、 人 体 の形 相 と は、 「そ の諸 部 分 が み ず か らの運 動 を あ る一 定 の比 率 で 相 互 に 伝 達communi-careす る」(11)ことに存 す る。 そ して ま た、 人 体 の通 時 的 同 一 性 は、 そ の運 動 静 止 比 の通 時 的 同 一 性 に帰 着 す る こ と にな る。 さ らに、(step B)で 導 か れ た定 理 は人 体 に もと うぜ ん あ て は ま る。 ゆ
-72-え に、 人 体 を構 成 す る物質 が入 れ か わ る(物 質 代 謝 が い とな まれ る)と し て も、運 動 静 止 比 が 同 じで あ るか ぎ り、人 体 は通 時 的 に同 一 の ま まで あ る と い い う る。 「身 体 は、 運 動 静 止 比 を保 持 す るか ぎ り、 現 に あ る とお り に あ る」(12)ので あ る。 さ て、 わ れ わ れ は、 物 質 説 の代 替 案 を ス ピ ノザ が 提 出 す る道 筋 を以 上 に み た。 か れ の代 替 案 は、 〈 人 体 の通 時 的 同一 性 は、 そ の運 動 静 止 比 の 通 時 的 同 一 性 に ほか な らな い〉 とい う もの で あ る。 これ を 「比 率説 」 と よぼ う。 比 率 説 は、 精 神 説 と こ とな り、人 体 とは実 在 上 別 個 の心 的存 在 に言 及 し な い。 こ の比 率 説 は、 あ くまで も物 質 界 に の み言 及 しっ っ人 体 の通 時 的 同 一 性 を 定 式 化 しよ うとす る。 その 意 味 で、 この立 場 は、 存 在 論 的 に禁 欲 的 か っ 無 難 で あ る。 しか し、比 率 説 につ いて は、 ひ とっ の問 題 がす ぐ さま提 起 さ れ よ う。 す な わ ち、 「運 動 静 止 比 」 とい うス ピ ノザ の語 の 意 味 が きわ め て 曖 昧 で は な い か、 とい う問題 で あ る。 あ る研 究 者 は、 「運 動 静 止 比 」 の明 確 な意 味 を ス ピ ノ ザ 自身 ま だ 確 定 し て い な か った、 と示 唆 す る。(13)すな わ ち、 こ の 語 は ス ピ ノ ザ が ま だ 仕 上 げて い な か った解 剖 学 的 ・生 理 学 的 な分 析 を あ とか ら挿 入 す るた め の〈 場 所 と り記 号placeholder〉 で は な い か、 とい う ので あ る。 この 意 見 は、 お そ ら くた だ しい。 「運 動 静 止 比 」 が 明 確 に規 定 さ れ て い な い と い う こ と は 比 率 説 の最 大 の欠 陥 で あ ろ う。 た だ し、だ か らと い って、 「運 動 静 止 比 」 の大 ざ っぱ な イ メ ー ジが ス ピ ノザ の 著 述 か らえ られ な い わ け で は な い。 ス ピ ノザ に よ る と、 人 体 に は、 流 動 部 分 ・柔 軟 部 分 ・堅硬 部分 の 三 っ が あ る。(14)この そ れ ぞ れ の組 成 につ い て の ス ピ ノ ザ の数 少 な い言 及 な い し 示 唆(15)をま とめ る とっ ぎの よ う に な る。 〈 流 動 部 分 〉 ……精 神 精 気 血 液(リ ンパ や乳 歴) 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 〈 柔 軟 部 分 〉 … …脳 髄 な ど 〈 堅 硬 部 分 〉 … …?(ス ピノ ザ の説 明 な し) これ ら精 神 精 気 ・ リンパ ・乳 魔 ・脳 髄 な ど が特 定 の位 置 関 係 の も とで 特 定 の力 学 的 な 関係 に た って い る こと を ス ピノ ザ は人 間 の形 相 とみ て い るよ うで あ る。 っ ま り、 ス ピノ ザ の 「運 動 静 止 比 」 とは、 これ ら諸 物質 が 相互 に運 動 しあ う と きの空 間 的 ・力 学 的 諸 関 係 の総 体 を意 味 して い る よ う にお もわ れ る。 しか し、 む ろ ん、 これ だ け の規 定 で は ま っ た く不 十 分 で あ る こ と は い う まで もな い。 た とえ ば、 わ た しの身 体 の運 動 静 止 比 は ど の よ うに 特 定 で き る のか、 そ の マ ニ ュ ア ル は ま っ た く与 え られ て い な い の で あ る。 「運 動 静 止 比 」 と い う場 所 取 り記 号 を いか に埋 あ るか、 が比 率説 の大 きな課 題 とな っ て い る ので あ る。 さて、 本 節 の さ い ご に、 ス ピノザ の 思 想 体 系 の なか で、 比 率 説 か ら どの よ う な結 論 が 導 か れ るか を概 観 して お き た い。 す で にみ た よ う に、 ス ピノ ザ に よ る と、 個 体 一 般 の 形 相 は そ の運 動 静 止 比 に あ る。 こ の運 動 静 止 比 が 崩 れ る こ と を、 か れ は その 個 体 の 「破 壊 」 と よぶ。 個 体 の 破 壊 につ いて ス ピノザ はっ ぎ の よ う な公 理 を お く。 「自然 の な か に は、 そ れ よ り も有 力 で 強 大 な 他 の もの が 存 在 しな い よ う な い か な る個 物[個 体]も な い。 む しろ、 どん な もの が 与 え られ て も、 そ の与 え られ た もの を 破 壊 しう る も っ と有 力 な 他 の 個 物[個 体]が 存 在 す る」(16) す な わ ち、 整理 す る と こ うな ろ う。 [c]い か な る個 体 も、 な ん らか の他 の もの の影 響 に よ って そ の運 動 静 止 比 を失 い う る。
-70-人 体 も一 個 の個 体 で あ る以上、 -70-人 体 に か ん して も[c]が 成 立 す る。 ゆ え に、 つ ぎ が導 か れ る。(17) [d]人 体 は、 な ん らか の状 況 下 で は そ の運 動 静 止 比 を 失 う。 人 体 が そ の 運 動 静 止 比 を失 う場 合 と してす ぐか ん が え られ る の は、 〈 生 命 機 能 の 停 止 〉 で あ ろ う。 しか し、 ス ピノ ザ は、 そ れ以 外 の場 合 もあ る、 とい う。 っ ま り、 か れ に よ る と、 「人 体 は、 血 液 循 環 や そ の 他 人 体 が 生 き て い る と され る諸 特 徴 が 維 持 され て いる に もか か わ らず、 その本性 とは ま っ た く こ とな る他 の 本 性 に変 化 しう る」(18)ので あ る。 そ の よ う な場 合 と して ス ピノ ザ は、〈 胎 児 ・小 児 か ら大 人 へ の成 長 〉 ・〈 病 気 に よ る体 質 の 激 変 〉 と い う二 っ を か ん が え て い るよ うで あ る。(19) さて、 以 上 の こ と と比 率 説 とを か ん が え あ わ せ る と、 っ ぎ の帰 結 が 導 か れ る。 す な わ ち、 [e]人 体 は、 〈 胎 児 ・小 児 か ら大 人 へ の成 長 〉 ・〈 病 気 に よ る体 質 の 激 変 〉 ・〈 生 命 機 能 の停 止 〉 の場 合 に、 通 時 的 同一 性 を失 う。 この結 論 は、 胎 児 期 か ら生命 機 能 の停 止 ま で人 体 は通 時 的 に 同 一 で あ る と い うデ カ ル ト的 な 見解 す な わ ち、 前 節 の[5]と 鮮 や か に対 立 す る結 論 で あ る。 ま た、[a]と[e]と か らは、 お そ ら くっ ぎの帰 結 が 導 か れ よ う。 [f]人 間 の こ ころ は、 〈 胎 児 ・小 児 か ら大 人 へ の 成 長 〉 ・〈 病 気 に よ る 体 質 の 激変 〉 ・〈 生 命 機能 の停 止 〉 の場 合 に、 通 時 的 同 一 性 を失 う。 じ じっ、 この よ うな見 解 を ス ピノ ザ は、 『短 論 文 』 の な か で 示 唆 して い る の で あ る。(20) 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 む す び 人 体 の通 時 的 同一 性 に つ い て の デ カ ル トとス ピノ ザ の見 解 を整 理 し、そ れ ぞ れ の短 所 お よ び長 所 を か ん が え て お きた い。 デ カ ル トの立 場(精 神 説)は こ うで あ る。〈 人 体 の通 時 的 同一 性 は、 そ の人 体 が結 合 かっ 合 一 す る こ ころ の通 時 的 同一 性 に ほ か な らな い〉。 こ こ で 「人 体 が結 合か っ 合 一 す る こ ころ」 とは、 人 体 と は実 在 上 別 個 で あ るが 人 体 と因 果 関 係 に立 ち そ の健 康 を保 持 す る よ うに駆 りた て られ る心 的 存在 を意 味 す る。 ス ピノ ザ の立 場(比 率 説)は こ うで あ る。 〈 人 体 の通 時 的 同一 性 は、人 体 の運 動 静 止 比 の通 時 的 同 一 性 に ほ か な らな い〉。 こ こで 「運 動 静 止比 」 と は、 人 体 を構 成 す る諸 物 質 の空 間的 ・力 学 的 関 係 の総 体 を意 味 す る とお もわ れ る。 さ て、 精 神 説 と比 率 説 そ れ ぞ れ の立 場 の短 所 お よ び長 所 と して ど うい う 特 徴 を指 摘 で き るか。 まず、 比 率 説 の 最 大 の 問 題 は、 第II節 で み た よ う に、 「運 動 静 止 比 」 と い う語 が 明 確 に規 定 され て い な い こと で あ ろ う。人 体 の諸 構 成 物 質 の 空 間 的 ・力 学 的 関 係 の 総 体 と い うだ け で は、 ま っ た く不 十 分 で あ る。 した が っ て、 も しわ れ わ れ が 比 率 説 を継 承 す る な らば、 この 「運 動 静 止 比 」 とい う 概 念 を、 「内部 環 境 」(21)や「恒 常 性 」 な ど の生 物 学 的 概 念 に よ って 整 備 し て ゆ く必 要 が あ ろ う。 他 方、 比 率 説 の長 所 と して は、 それ が 存 在 論 的 に無 難 で あ る点 を あ げ る こ とが で き よ う。 す な わ ち、 比 率 説 は、 人 体 と い う一 物 質 の通 時 的 同一 性 を、 物 質 界 にの み言 及 しつ っ 定 式 化 しよ う とす る立 場 で あ り、物 質 界 以 外 の存 在 を 前 提 と しな い の で あ る。 こ の点 で、 比 率 説 は 自然 主 義 的 な 態度 を 堅 持 して い る とい え る。 っ ぎ に、 精神 説 に つ い て は ど うか。 精 神 説 の 強 み は、 そ れ が 依 拠 す る 「(人体 か ら実 在 上 別 個 の)こ こ ろ」 と い う語 が、 「運 動 静 止 比 」 に く らべ
-68-て は るか に明 快 で あ る とい う点 に も とめ られ よ う。 しか し、語 が 明 快 で あ る と い う こ と と、 そ の語 の指 示 対 象 が事 実 存 在 す る とい う こ と と は、 ま っ た く別 で あ る。 入 体 か ら別 個 の こ ころが 存 在 す るか い な か とい う こ と は哲 学 上 の 大 問 題 で あ る。 独 立 存 在 と して の こ こ ろ に精 神 説 が 言 及 して い るか ぎ り、精 神 説 を と る と い うこ と は、 そ の よ うな こ ころ の存 在 を み とめ る と い う態 度 を ふ くん で い る。 この 意 味 で、 精 神 説 を と る こ と は、 存 在 論 的 な ひ と っ の 冒 険 を と もな う。 簡 単 に ま とあ る と、 こ うな る。精 神説 と比 率説 とを く らべ る と、 前 者 は 後 者 よ り も概 念 的 に 明確 で あ るが、 後 者 は前 者 よ り存 在論 的 に無難 で あ る。 人 体 の通 時 的 同一 性 に っ い て考 察 す る と き、 自然 主 義 的 な 態 度 を堅 持 す る の な らば、 わ れ わ れ は、 比 率 説 に よ り近 い方 向 に み ず か らの 解 答 を さ ぐ るべ きで あ ろ う。(了) 註 (一)デ カル トのテキ ス トは以下 のとお り。
AT=Euvres de Descartes, publiees par Ch. Adam et P. Tannery, 13 vols. (Paris, L. Cerf, 1897-1913; reedition, Vrin, 1964-1974).
P=Descartes: (Euvres et Lettres, ed. A. Bridoux (Paris, Gallimard, coll. (Pleiade), 1953).
(二)ス ピノ ザ の テ キ ス トは以 下 の とお り。
G=Spinoza Opera, hrsg. von C. Gebhardt, 4 Bde. (Heidelberg, Carl Winter, 1925).
(三)本 論 文 で 言 及 す る デ カ ル トお よ び ス ピ ノ ザ の 著 作 の 原 題 と 出 版 年 は 以 下 の と お り。
デ カ ル ト 「省 察 』Meditationes de prima philosophia(1641)・ 『哲 学 原 理 』Principia philosophiae(1644)・ 『情 念 論 』Les Passions de l'ame (1649)
ス ピ ノ ザ 『短 論 文 』Korte Verhandeling van God, de Mensche en des zelfs Welstand(c. 1658-1660〔 執 筆 年 〕)・ 『エ テ ィ カ 」Ethica ordine geome-trico demonstrata (1677) (1) AT, IV, pp. 162-170; P, pp. 1172-1176. 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て
密 教 文 化 なお、 同 日づ け メ ラ ン宛 書 簡 は、 フ ラ ンス語 で か か れ た もの と ラ テ ン語 で か か れ た もの の二 通 が あ る。 こ こで問 題 に して い る の は、 フ ラ ン ス語 書 簡 の ほ うで あ る。 (2)「 省 察 』 第6部 第8段 落(AT, W, p. 78; P, p. 324)。 (3)「 省 察 』 第6部 第19・20段 落(AT, 靱, pp. 86-87; P, pp. 331-332)。 (4)『 省 察 」 第6部 第12段 落(AT, W, p. 81; p, p. 326)。 なお、[3]と[2]は 異 な る主 張 で あ る。 この こ と を わ た しは っ ぎ の 拙 論 (と くに、 そ の第H節)で 検 討 した。 「デ カ ル トの 『実 体 的 合 一 』 につ いて 」(『密 教 文 化 』 第182号、 高 野 山 大 学 密 教 研 究 会 編、1993年 発 行)。 (5)こ こ ろが 身 体 に そ の胎 児 期 に結 合 す る と い う考 え は、 『省 察 』 第4答 弁 の な か で しめ され て い る(AT, VII, p. 246; P, p. 462)。 身 体 が 死 ぬ と心 身 結 合 が 解 か れ る と い う考 え は、 『情 念論 』 第1部 第5節 に あ る(AT, XI, p. 330; P, pp. 696-697)。 こ こ ろが っ ね に通 時 的 同 一 性 を 保 つ こ とを デ カル トは明示 的 に 述 べ な い が、 こ れ は、 こ こ ろ が 実 体 で あ る こ と(cf.「 哲 学 原 理 』 第1部54節[AT, VIII-1, p. 25; P, p. 595])、 ま た、 こ ころ が端 的 な一 者 で あ る こ と(cf.「 省 察 』 第6部 第18段 落[AT, W, pp. 85-86; P, p. 330])か ら、帰 結 す る と思 われ る。 (6)「 エ テ ィ カ』 第2部 定 理17備 考(G, II, p. 105)に よ る と、 ス ピ ノ ザ に と っ て 要 請 と は、 明 証 的 な 原 理 か ら演 繹 で きな いが 経 験 に よ って十 分 な 証 拠 が 得 られ る 命 題 の こ とで あ る。 (7)「 エテ ィ カ』 第2部 要 請4(G, H, p. 102)。 な お、 この よ うな 物 質 代 謝 の こ とを ス ピ ノザ は 「外 的事 物 との 交渉[や り とり] commercium」 と表 現 して い る(『エ テ ィカ』第4部 定 理20備 考[G, H, pp. 224-225])。 (8)『 エテ ィ カ』 第3部 定 理2備 考 に っ ぎの よ うに あ る。 「こ ころ と身 体 と は同 一 物 una eademque resで あ り、 そ れ が と きに は思 惟 の属 性 の も とで、 と き に は延 長 の属 性 の も とで か ん が え られ る」(G, H, p. 141)。 (9)『 エ テ ィカ』 第3部 定 理2(G, H, p. 141)。 (10)以 下 は、 お もに、 「エ テ ィカ』 第2部 定 理13の あ と(G, H, pp. 98-103)で ス ピ ノザ が展 開 す る議 論 に も とつ く。 (11)「エ テ ィカ」 第4部 定 理39証 明(G, II, p. 239)。 (12)『短 論 文」 第2部 序(G, 1, p. 52)。
(13) Jonathan Bennett, A Study of Spinoza's Ethics (Cambridge, Cam-bridge UP, 1984), p, 232.
(14)「 エ テ ィ カ 』 第2部 要 請2(G, II, P. 102)。
書 簡(書 簡32)」(G, IV, pp. 169-176)。
vgl. Lewis Robinson, Kommentar zu Spinozas Ethik, Bd. I (Leipzig, Felix Meiner, 1928), S. 315. (16)『エ テ ィカ 』 第4部 公 理(G, H, P. 210)。 (17)『エ テ ィカ 』 第4部 定 理3(G, H, p. 212)。 (18)『エ テ ィカ』 第4部 定 理39備 考(G, II, p. 240)。 (19)『短 論 文 』 第1部 序(G, 1, p. 52)、 「エ テ ィ カ 」 第4部 定 理39備 考(G, II, p. 240)a (20)『短 論 文 」 第2部 序 に、 つ ぎの よ う に あ る。 「身 体 が 変 化 す る度 合 い に した が っ て、 こ ころ もつ ね にそ れ だ け変 化 す る」(G, 1, p. 52)。
(21)「内部 環 境milieu interieur」 とは、19世 紀 の生 理 学 者 ベ ル ナ ー ルC. Bernard (1813-1877)の 用 語 で あ る。 ベル ナ ー ル の 「内 部 環 境 」 は、 ス ピノ ザ の 「運 動 静 止 比 」 とっ ぎの 諸 点 で 類 似 す る。 これ ら両 概 念 の比 較 は ひ じ ょ うに興 味深 い テ ー マ で あ ろ う。 [α]運 動 静 止 比 は生 物 体 の形 相 で あ り、内 部 環 境 は生 物 体 の生 命 様 式 を決 定 す る。 [β]完 全 な個 体 ほ ど運 動 静 止 比 は外 界 の影 響 に左 右 され ず、 高 等 な生 物 ほ ど内 部 環 境 は外 部 環 境 か ら独 立 す る。 [γ]人 間 の運 動 静 止 比 は物 質 代 謝 に もか か わ らず 保 持 さ れ、 生 物 の 内 部 環 境 は 外 部 環 境 との 物 質 交 換 に もか か わ らず 維 持 さ れ うる。
cf. Claude Bernard, Introduction a l'etude de la medecine experimen-tale (Paris, Flammarion, 1984), pp. 103-106.
〈 キ ー ワ ー ド〉 人 間 身 体 ・通 時 的 同 一 性 ・デ カ ル ト ・ス ピ ノ ザ 人 間 身 体 の 通 時 的 同 一 性 に つ い て